説明

太陽電池

【課題】光電変換効率が高く、かつ長期の使用においても光電変換効率が劣化することがなく、耐久性に優れた太陽電池を提供する。
【解決手段】支持体上に、少なくとも第1電極2と、色素を半導体に担持してなる半導体層6と、重合性化合物を重合して形成される導電性高分子化合物からなる電荷輸送物質を含有する電荷輸送層7と、第2電極8が設けられている太陽電池10において、該電荷輸送層が、リチウム塩及びアニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する太陽電池に関し、さらに詳しくは電荷輸送物質として導電性高分子化合物を用いた色素増感型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池として用いられる光電変換素子には、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等の無機系材料からなる光電変換素子がある。これらの無機系材料からなる光電変換素子は、原料であるシリコンの高度な精製工程が必要であったり、pn接合による多層構造の製造工程が複雑であったりすることから、一般的に製造コストが高かった。
【0003】
一方、製造コストが比較的低い光電変換素子として、有機系材料からなる光電変換素子がある。そのような光電変換素子としては、ガラス基板と、透明導電性膜と、色素が吸着された多孔質の半導体層と、電解質と、対向電極とを有する色素増感型の光電変換素子がある。
【0004】
この光電変換素子では、光が照射されると、多孔質の半導体層に吸着された色素の電子が励起され、励起された電子は半導体層を介して透明導電性膜へ移動する。透明導電性膜へ移動した電子は、外部回路を通じて対向電極へ移動し、電解質のレドックス系を介して色素に電子を供給する。このようなサイクルが繰り返されることで、光が電流に変換される。
【0005】
色素増感型の光電変換素子における電解質は、従来は、ヨウ素を含む電解質を有機溶媒に溶解させた電解液であった。一方、電解液を有する光電変換素子は、耐久性が低く、腐食性が高いという問題があった。そのため、固体の電解質として、固体の電荷輸送層が検討されている。
【0006】
特許文献1には、導電性高分子化合物の一つであるポリチオフェン類を電荷輸送物質に使用し、電解重合法や塗布法により色素を吸着させた半導体微粒子含有層の上に固体の電荷輸送層を形成する技術が開示されている。また、特許文献2には、ポリチオフェン類の一つであるポリエチレンジオキシチオフェンを含有する塗布液を第1電極上に塗布して太陽電池ユニットを作製する技術が開示されている。また、非特許文献1には、電荷輸送層にポリエチレンジオキシチオフェンを用いた色素増感型太陽電池において、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウムなどのリチウム塩をドーパントとして添加し、そのドーパントの種類に応じた特性の変化が開示されている。
【0007】
しかし、ポリチオフェン類を電荷輸送物質として用いた固体の色素増感型太陽電池においても十分な光電変換効率が得られない、あるいは光によって劣化するためその耐久性において必ずしも十分といえるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−106223号公報
【特許文献2】特開2011−009419号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ACCOUNT OF CHEMICAL RESEARCH vol.42,No.11,1827−1838
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、光電変換効率が高く、かつ長期の使用においても光電変換効率が劣化することがなく、耐久性に優れた太陽電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、固体の色素増感型太陽電池において、電荷輸送層にリチウム塩とアニオン性界面活性剤とを含有することによって、光電変換特性及び耐久性が格段に向上することを見出し本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.支持体上に、少なくとも第1電極と、色素を半導体に担持してなる半導体層と、重合性化合物を重合して形成される導電性高分子化合物からなる電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、第2電極が設けられている太陽電池において、該電荷輸送層が、リチウム塩及びアニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする太陽電池。
2.前記アニオン性界面活性剤が、高級脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩及びアルキルエーテル硫酸塩から選択される少なくとも一つであることを特徴とする第1項に記載の太陽電池。
3.前記アニオン性界面活性剤の疎水基が、炭素原子数8個以上18個以下であることを特徴とする第1項1又は第2項に記載の太陽電池。
4.前記導電性高分子化合物が、チオフェン構造を有する高分子化合物であることを特徴とする第1項から第3項のいずれか一項に記載の太陽電池。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記手段により、光電変換効率の高い太陽電池を提供することができる。また、長期間の使用においても光電変換効率が劣化することがなく、高耐久性の太陽電池を提供することができる。
【0014】
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0015】
本発明において、電解重合時にリチウム塩に加えてアニオン性界面活性剤を添加すると、重合性化合物の、多孔質チタニア層表面に対する濡れ性が向上し、チタニア多孔質内への重合液の浸透性が向上する。そのため、導電性高分子化合物は、多孔質内部まで緻密な重合膜として形成される。さらに、界面活性剤が導電性高分子化合物に対するドーパントとして働くことにより、より導電性が向上すると推定している。特にアニオン性界面活性剤が、疎水基の炭素数が8個以上18個以下の場合には、疎水基が導電性高分子化合物に絡まるとともに、他のドーパントの取り込み、導電性高分子化合物に保持するため、界面活性剤が導電性高分子化合物から外れにくくなり、長期間に亘って、ドーピング効果が維持するので、耐久性が向上するものと考えている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の太陽電池の一例を示す模式図である。
【図2】「形状係数FF」の数値と「電圧−電流特性グラフ」の形状との関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の太陽電池は、支持体上に、少なくとも第1電極と、色素を半導体に担持してなる半導体層と、重合性化合物を重合して形成される導電性高分子化合物からなる電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、第2電極が設けられている太陽電池において、該電荷輸送層が、リチウム塩及びアニオン性界面活性剤を含有することを特徴としている。
【0018】
本発明の実施態様として、本発明の効果発現の観点から、前記アニオン性界面活性剤が、高級脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩及びアルキルエーテル硫酸塩から選択される少なくとも一つであることが変換効率向上の効果が得られることから好ましい。
【0019】
さらに、本発明においては、前記アニオン性界面活性剤の疎水基が、炭素原子数8個以上18個以下であることが耐久性向上の効果が得られることから好ましい。
【0020】
さらに本発明においては、前記電荷輸送層が、チオフェン構造を有する導電性高分子化合物であることが高い導電性を得られることから好ましい。
【0021】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明を行う。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0022】
本発明の太陽電池は、支持体上に、少なくとも第1電極と、色素を半導体に担持してなる半導体層と、重合性化合物を重合して形成される導電性高分子化合物からなる電荷輸送物質を含有してなる電荷輸送層と、第2電極が設けられている太陽電池において、該電荷輸送層がリチウム塩及びアニオン性界面活性剤を含有することを特徴としている。
【0023】
本発明に用いられる電荷輸送物質としては、チオフェン若しくはその誘導体を反応して得られる重合体が高い光電変換光率が得られるので好ましい。重合方法としては、重合触媒を用いる化学重合法、少なくとも作用極と対極とを備えて両電極間に電圧を印加することにより反応させる電解重合法、光照射単独あるいは重合触媒、加熱、電解等を組み合わせた光重合法等があるが、電解重合法を用いた重合法が好ましい。
【0024】
電解重合法により重合体を得る場合は、重合体の合成がそのまま前記電荷輸送層の形成につながる。即ち、以下の3,4−エチレンジオキシチオフェンの例に示すような電解重合法が行われる。
【0025】
(リチウム塩)
本発明において、リチウム塩は、電荷輸送物質を電解重合法によって形成する場合の支持電解質として用いられる。具体的には、3,4−エチレンジオキシチオフェンあるいはその二量体を、をアセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミドなどの溶媒(電荷輸送層形成用溶媒)に溶解し、これに支持電解質としてリチウム塩を添加して電解重合液を作製する。また、リチウム塩は、太陽電池作製後は導電性高分子化合物のドーパントとして導電性の付与成分としても働く。
【0026】
本発明の太陽電池の電荷輸送層の形成に用いられるリチウム塩としては、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、N(PhBr)SbCl、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(Li[(CFSON]、(LiTFSI))などが好ましい。これらの中でも、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(Li[(CFSON])が支持電解質としての効果があることからから好ましい。
【0027】
リチウム塩は重合時のモノマー溶液に対して、10mMから1000mM添加することが支持電解質としての効果、伝導度向上効果の点で好ましい。
【0028】
(アニオン性界面活性剤)
本発明においては、アニオン性界面活性剤とは、分子内に、疎水基と親水基を有する化合物であり、親水基が水中で解離したときにアニオンとなるものをいう。親水基としてカルボン酸塩、スルホン酸塩、あるいはリン酸塩等が挙げられる。疎水基としては、置換基を有してもよいアルキル、アリール基、アルコキシ基等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩及びリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0029】
高級脂肪酸塩としては、オクタン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ペルフルオロノナン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、アルファスルホ脂肪酸メチルエステル塩等が挙げられる。
【0030】
アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、トルエンベンゼンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0031】
アルキル硫酸エステル塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェノールスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0032】
アルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0033】
α−オレフィンスルホン酸塩としては、炭素原子数14〜16のオレフィンスルホン酸塩が挙げられ、例えばテトラデセンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0034】
アルカンスルホン酸塩としては、1−ヘキサンスルホン酸ナトリウム、1−オクタンスルホン酸ナトリウム、1−デカンスルホン酸ナトリウム、1−ドデカンスルホン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ペルフルオロブタンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0035】
リン酸エステル塩としては、ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム等が挙げられる。
【0036】
その他のスルホン酸塩としては、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム、ナフタレントリスルホン酸三ナトリウム、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0037】
これらのアニオン性界面活性剤は、電荷輸送層においてドーパントとして機能していると推定している。3,4−エチレンジオキシチオフェン重合体(PEDOT)を始めとする導電性高分子化合物は拡張π共役を有しているがこの状態では電荷の経路は確保されているものの自由に動けるキャリアが存在しないため導電性を発現しない。そこでドーパントの添加により自由に動けるキャリアを注入することで導電性を発現すると考えるためである。すなわち、界面活性剤としての役割とドーパントとしての役割の二つを果たしている。電解重合時にリチウム塩に加えてアニオン性界面活性剤を添加すると、色素が吸着した多孔質チタニア層表面への濡れ性が向上し、チタニア多孔質内への重合液の浸透性が向上する。そのため、多孔質内部まで、緻密な重合膜が形成される。これは、界面活性剤としての役割である。さらに、界面活性剤が導電性高分子化合物に対するドーパントとして働くことにより、より導電性が向上すると推定している。
【0038】
特にアニオン性界面活性剤が、疎水基の炭素数が8個以上18個以下の場合には、疎水基部分が導電性高分子化合物に絡まりを生じるため、界面活性剤が導電性高分子化合物から外れにくくなり、長期間に亘って、ドーピング効果が維持するので、耐久性が向上するものと考えている。
【0039】
本発明の太陽電池においては、アニオン性界面活性剤として、高級脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましく、これらのアニオン性界面活性剤の中でも電解液中での電離のしやすさという観点で、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩が特に好ましく、炭素数8個以上18個以下のアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩が前記耐久性の点で最も好ましい。
【0040】
アニオン性界面活性剤の添加量は、0.05mMから10mM添加することが濡れ性の点で好ましい。
【0041】
本発明に係る電荷輸送層はアニオン性界面活性剤と上記リチウム塩とを含有する。この層の形成方法としては、重合性モノマーあるいはその二量体を、をアセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミドなどの溶媒(電荷輸送層形成用溶媒)に溶解し、これに支持電解質としてリチウム塩とともにアニオン性界面活性剤を添加して電解重合液、すなわち電荷輸送層形成用溶液を作製する。電荷輸送層形成用溶液を半導体層上に塗布法により塗布した後、あるいは、半導体層を前記電荷輸送層形成用溶液に浸漬させたまま重合反応を行うことが好ましいが、電荷輸送層形成用溶液を重合した後、重合体を含有する塗布液などに含有されて半導体層上に供給されてもよい。
【0042】
≪太陽電池の構造≫
次に、本発明の太陽電池の構造について図1を用いて説明する。図1は本発明の太陽電池の構造の一例を模式的に示した断面図である。
【0043】
図1に示す太陽電池10は、基体1、第1電極2、バリヤ層3、半導体層6、電荷輸送層7及び第2電極8、隔壁9等より構成され、図の矢印で示すように、半導体層6に対して基体1や第1電極2が配置されている側より光を入射させるものである。また、半導体層6は半導体5と増感色素4を含有するものであり、電荷輸送層7は後述する化合物に代表される導電性高分子化合物等を電荷輸送物質として含有するものである。さらに、基体1には紫外線吸収層11が設けられていてもよい。
【0044】
太陽電池10は、以下の手順で光電変換が行われて、電池として機能するものである。すなわち、
(1)第1電極2に光が照射されると、半導体層6に含有される増感色素が光を吸収して電子を放出する。このとき、増感色素は酸化体となる。
(2)増感色素4により放出された電子は、半導体層6内の半導体5に移動し、さらに、半導体5より第1電極2へ移動する。
(3)第1電極2へ移動した電子は、対極である第2電極8へ回り、第2電極8で電荷輸送物質を還元する。
(4)前述の増感色素酸化体は、還元された電荷輸送物質より電子を受取り、元の状態(増感色素)に戻る。
(5)上記(1)〜(4)を繰り返すことにより、第1電極2より第2電極8へ電子の移動が繰り返し行われて電気が流れる。
【0045】
このように、図1の太陽電池10では、光照射により増感色素4が励起状態となり電子を放出し、放出された電子は半導体5を経由して第1電極2へ達して外部へ流れる。一方、電子を放出して酸化体となった増感色素4は、第2電極8より供給される電子を電荷輸送層7中の電荷輸送物質より受取り、元の状態に戻る、という仕組みで電子が移動して電池として機能する。
【0046】
≪太陽電池の層構成≫
図1に示す太陽電池について以下順を追って説明する。
【0047】
(基体)
基体1は、太陽電池10の光入射方向側に設けられ、太陽電池に強度を付与し、かつ、良好な光電変換効率を確保する観点から、ガラスや透明樹脂材料等の光透過性の材質で形成されるものである。また、基体1の光透過率は、特に限定されるものではないが、10%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上、80%から100%が特に好ましいものである。ここで、「光透過率」とは、JIS K 7361−1(ISO 13468−1に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定される可視光波長領域における全光線透過率」のことをいうものである。
【0048】
本発明で使用可能な基体1は、公知のものから適宜選択が可能で、石英やガラス等の透明無機材料や以下に挙げる公知の透明樹脂材料が挙げられる。
【0049】
透明樹脂材料の具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、トリメチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアミドイミド、シクロオレフィン重合体、スチレンブタジエン共重合体等がある。上記透明樹脂材料の中でもポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)等は可撓性を有するものが市販され、フレキシブルな太陽電池を作製する上で好ましい。また、基体1の厚さは材料や用途等により適宜設定が可能で、例えばガラス等の透明無機材料のような硬質材料で構成する場合、その平均厚さは0.1〜1.5mmが好ましく、0.8〜1.2mmがより好ましい。また、透明樹脂材料を使用する場合も前記透明無機材料と同じ平均厚さとしてもよいが、可撓性を有する透明樹脂材料を使用する場合は0.5〜150μmが好ましく、10〜75μmがより好ましい。
【0050】
(第1電極)
次に、第1電極2は基体1と半導体層6の間に配置され、半導体層6へ光を効率よく供給するために、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の光到達率を有するものが用いられる。
【0051】
第1電極2は、公知の金属材料や金属酸化物により形成され、金属材料の具体例には、例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム等があり、光透過性を発現し易い形状に加工したものが多く供給されていることから銀が好ましい。例えば開口部を有するグリッドパターン膜、微粒子やナノワイヤを分散させた膜等が多く供給されている。また、金属酸化物の具体例としては、例えばSnO、ZnO、CdO、CTO系、In、CdIn等があり、上記金属酸化物にSn、Sb、F、Alから選ばれる1種又は2種以上の原子をドープしたものが好ましく用いられる。その中でも、ITOと呼ばれるInにSnをドープしたもの、SnOにSbをドープしたもの、FTOと呼ばれるSnOにFをドープした導電性金属酸化物が好ましく、耐熱性の観点からFTOが特に好ましい。なお、前記CTO系の金属酸化物には、例えばCdSnO、CdSnO、CdSnOがある。
【0052】
また、第1電極2は前述の基体1上に設けることも可能であり、基体1上に第1電極2を設けたものは導電性支持体と呼ばれ、導電性支持体の厚さは0.1〜5mmとすることが好ましい。また、導電性支持体の表面抵抗は50Ω/cm以下であることが好ましく、10Ω/cm以下がより好ましい。
【0053】
(半導体層)
次に、半導体層6について説明する。図1に示す太陽電池10は、前述した第1電極2に隣接させて太陽光等の光エネルギーを電気エネルギーに変換する半導体層6を有する。半導体層6は、増感色素4を吸着させた半導体5を含有する層であり、前述した第1電極2を通過した光を受ける個所で、第1電極2との間で電子の授受が行われる。
【0054】
半導体層6における光エネルギーの電気エネルギーへの変換は、以下のような手順で行われるものである。先ず、第1電極2を通過した光が半導体層6に進入し、進入した光が半導体と衝突する。半導体に衝突した光は、任意の方向に乱反射して半導体層6内に拡散し、拡散した光が増感色素に吸収されることにより電子と正孔(ホール)を発生し、発生した電子は第1電極2に向かって移動する。このような仕組みで、半導体層6は光エネルギーを電気エネルギーに変換している。
【0055】
半導体層6の厚さは、特に限定されるものではないが、具体的には0.1〜50μm程度が好ましく、より好ましくは0.5〜25μm程度、特に好ましくは1〜10μm程度である。なお、半導体層6の厚さは、含有される半導体の厚さにほぼ一致するものであり、素子の小型化や製造コストの低減化を実現する観点から層状の形態を有する半導体を用いることが好ましい。
【0056】
(半導体)
半導体層6に使用される半導体5には、例えば酸化チタンや酸化スズ(SnO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、SrTiOやSiO等の金属酸化物がある。また、TiC、Si、SiC、BN、BN等の金属化合物の使用も可能で、これら金属酸化物や金属化合物を1種類又は2種類以上組み合わせて含有させることができる。
シリコンやゲルマニウム等の単体、元素周期表の第3族(3A族)〜第5族(5A族)、第13族(3B族)〜第15族(5B族)に属する原子を有する化合物、金属カルコゲニド、金属窒化物等が使用可能である。ここで、金属カルコゲニドとは、カルコゲン元素と呼ばれる酸素原子や硫黄原子等の元素周期表の第16族(6B族)に属する原子と金属原子とで構成される化合物のことで、金属酸化物や金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物等が該当する。
【0057】
金属カルコゲニドの具体例としては、例えば以下のものがある。
(1)金属酸化物
TiO、TiO、Ti、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb
(2)金属硫化物
CdS、ZnS、PbS、Bi、CuInS
(3)金属セレン化物、金属テルル化物
CdSe、PbSe、CuInSe、CdTe
上記金属カルケニドの中でも、TiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、PbSが好ましく用いられ、その中でも、TiOとNbがより好ましく、二酸化チタンTiOが特に好ましい。二酸化チタンは、良好な電子輸送性を有する他に、光に対して高い感受性を有しており、二酸化チタン自体が光を受けて直接電子を発生する等、高い光電変換効率が期待できることから特に好ましいとされる。また、二酸化チタンは、安定した結晶構造を有するので、過酷な環境下で光照射が行われても経時による劣化が起こりにくく、所定性能を長期にわたり安定して発現可能である。
【0058】
二酸化チタンの結晶構造には、アナターゼ型とルチル型があり、光電変換素子用の半導体材料は、アナターゼ型の結晶構造を主とするもの、ルチル型の結晶構造を主とするもの、両者の混合物を主とするもののいずれも使用が可能である。このうち、アナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタンは、効率のよい電子輸送を行うことができる。また、アナターゼ型とルチル型を混合して使用する場合、アナターゼ型のものとルチル型のものの混合比は特に限定されるものではなく、アナターゼ型:ルチル型=95:5〜5:95とすることが可能で、80:20〜20:80とすることが好ましい。
【0059】
また、半導体に使用可能な金属窒化物としては、例えばTiが代表的なものであり、さらに、GaPやInP等の金属リン化合物、GaAs等の化合物も半導体として使用可能なものである。
【0060】
半導体層6に使用される半導体は、上記化合物を単独で使用するものの他に複数を併用することも可能である。複数の化合物を併用する具体例としては、例えばTiOにTiを20質量%混合させた形態のものや、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,15(1999)に開示のZnOとSnOの複合体等がある。また、金属酸化物若しくは金属硫化物と前記酸化物若しくは硫化物以外の化合物を併用する場合は、当該化合物の含有量を30質量%以下にすることが好ましい。
【0061】
また、半導体層6に使用される半導体には、有機塩基を用いて表面処理を施したものを使用することが可能である。半導体の表面処理は、有機塩基を含有する液槽に半導体を浸漬して行う方法が主に採られ、有機塩基が液体の場合にはそのまま使用し、固体の場合には有機溶媒に溶解させた溶液を使用する。表面処理に使用される有機塩基は、例えばジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、アミジン等があり、これらの中でも、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンが好ましい。
【0062】
また、半導体材料は、衝突した光の乱反射と拡散を促進させて光電変換効率を向上させる観点から、その表面に複数の微細な孔(細孔)を有するものが好ましく、前述の二酸化チタンは表面に細孔を有するので高い光電変換効率を期待することができる。半導体材料の細孔は、例えば空孔率と呼ばれる半導体粒子表面の単位面積あたりに占める孔の面積の比率で規定することができる。すなわち、適度な空孔率を有する半導体材料は、光の乱反射と拡散を促進させる他に、細孔による表面積の増大に伴って半導体材料の外面及び細孔の内面に吸着している増感色素の吸着面積も増大しており光電変換効率のさらなる向上が行える。半導体材料の空孔率は、特に限定されるものではないが、例えば二酸化チタンの場合、5%〜90%が好ましく、より好ましくは15%〜80%、特に好ましくは25%〜70%である。
【0063】
(半導体材料の平均粒径)
また、半導体5の平均粒径は、特に限定されるものではないが、通常、1nmから1μmのものが好ましく、5nmから50nmのものがより好ましい。半導体材料の平均粒径を上記範囲内にすると、ゾル液を形成したときに半導体材料の均一性を向上させ易くなり、均一性の向上により半導体材料の比表面積が揃い、各半導体材料へ増感色素が同等レベルに吸着するので発電効率の向上に寄与する。
【0064】
さらに、半導体5は光増感色素を吸着させた構造を有するものであるが、半導体材料と光増感色素との間で形成される吸着は、例えば分子間引力や静電引力等の物理的作用、あるいは、共有結合や配位結合等の化学結合により実現されるものである。光増感色素は、受光により電子と正孔(ホール)を発生するもので、半導体層6内で光エネルギーを電気エネルギーに実際に変換するものである。すなわち、半導体層6において、光増感色素が存在している領域が電子と正孔を発生する受光領域として機能する場であり、前述したように、増感色素4は半導体5の外面や孔内面に沿って吸着している。そして、増感色素4により発生した電子は、増感色素4と結合している半導体5に移動し、半導体5より第1電極2に向かって移動する。
【0065】
(増感色素)
増感色素4は、公知の方法による増感処理で半導体5へ担持されているもので、光照射により励起して電子を放出するものである。本発明では、太陽電池に使用可能な公知の増感色素を使用することが可能である。太陽電池に使用可能な増感色素には、公知の有機顔料や炭素系顔料、無機顔料、有機あるいは無機の染料がある。
【0066】
先ず、増感色素用の有機顔料には、例えば以下に示すようなフタロシアニン系顔料やアゾ系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料がある。
(1)フタロシアニン系顔料;フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等
(2)アゾ系顔料;ファストイエロー、ジスアゾイエロー、縮合アゾイエロー、ベンゾイミダゾロンイエロー、ジニトロアニリンオレンジ、ベンズイミダゾロンオレンジ、トルイジンレッド、パーマネントカーミン、パーマネントレッド、ナフトールレッド、縮合アゾレッド、ベンズイミダゾロンカーミン、ベンズイミダゾロンブラウン等
(3)アントラキノン系顔料;アントラピリミジンイエロー、アントラキノニルレッド等
(4)キナクリドン系顔料;キナクリドンマゼンタ、キナクリドンマルーン、キナクリドンスカーレット、キナクリドンレッド等
(5)ペリレン系顔料;ペリレンレッド、ペリレンマルーン等。
【0067】
また、上記有機顔料の他に、以下に示す有機顔料も使用可能である。すなわち、銅アゾメチンイエロー等のアゾメチン系顔料、キノフタロンイエロー等のキノフタロン系顔料、イソインドリンイエロー等のイソインドリン系顔料、ニッケルジオキシムイエロー等のニトロソ系顔料。
【0068】
ペリノンオレンジ等のペリノン系顔料、ジケトピロロピロールレッド等のピロロピロール系顔料、ジオキサジンバイオレット等のジオキサジン系顔料等。
【0069】
また、炭素系顔料には、例えばカーボンブラック、ランプブラック、ファーネスブラック、アイボリーブラック、黒鉛、フラーレン等がある。
【0070】
さらに、光増感色素に使用可能な染料の具体例としては、例えばRuLCl、RuL(CN)、ルテニウム535−bisTBA(Solaronics社製)、〔Ru(NCS)O等の金属錯体色素がある。ここで、RuLClとRuL(CN)のLは、2,2−bipyridine、又は、その誘導体を表す。また、前記金属錯体色素の他に、シアン系色素、アゾ系色素等の有機色素や、ハイビスカス色素、ブラックベリー色素、ラズベリー色素、ザクロ果汁色素、クロロフィル色素等の天然物由来の有機色素を使用することも可能である。
【0071】
本発明では、電荷の半導体への効率的な注入の観点から、増感色素はカルボキシ基を有することが好ましい。以下に、本発明に好ましく用いられる増感色素の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
(例示化合物)
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

なお、増感色素4による半導体5への増感処理の具体的な説明は後述する「〔2〕半導体層の形成」の項で説明する。
【0073】
(電荷輸送層)
次に電荷輸送物質を含有する電荷輸送層について説明する。図1に示す太陽電池10に設けられている電荷輸送層7は、光を吸収して励起状態になって電子を放出した増感色素より正孔を受け取り、第2電極8へ向けて正孔を移動させることにより、増感色素を還元して安定化させるものである。言い換えると、前述したように、電荷輸送層7は第2電極8より電子を受け取り、受け取った電子を励起状態になっている半導体層6の増感色素へ渡して増感色素を光照射前の状態に戻すものである。
【0074】
電荷輸送層は、光吸収して電子を半導体に注入した後の色素の酸化体を迅速に還元し、色素との界面で注入された正孔を第2電極に輸送する機能を担う層である。
【0075】
本発明の太陽電池を構成する電荷輸送層は、電荷輸送物質としてチオフェン若しくはその誘導体、あるいはアニリン若しくはその誘導体を反応して得られる重合体が挙げられる。重合体の代表例としては3,4−エチレンジオキシチオフェンやn−ヘキシルチオフェンを反応して得られる重合体などが挙げられ、重合体の繰り返し単位に対応するモノマーは重合の前に、二量体あるいは三量体等の多量体化したもの(オリゴマー化した化合物)を用いても良い。この場合、二量体等の多量体を用いることにより、モノマーを用いる場合に比し、重合体形成時の酸化電位が小さくなり、重合体の合成速度が短縮されて好ましい。
【0076】
好ましい重合体の繰り返し単位としては、以下の下記一般式(1)又は一般式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子材料が挙げられる。
【0077】
【化31】

(R〜Rは水素原子、直鎖あるいは分岐状の炭素鎖長1〜24のアルキル基、炭素鎖長3〜9のシクロアルキル基、炭素鎖長1〜18のアルコキシ基、炭素鎖長1〜18のポリエチレンオシキド基、ハロゲン原子あるいはアリール基のいずれかである。一般式(2)中、nは1〜3の整数であり、mは0〜2n+4の整数である。Rが複数の場合、それぞれが異なっていてもよい。)
前記一般式(1)又は一般式(2)で表される導電性高分子材料は下記一般式(1′)あるいは一般式(2′)で表される単量体又はその多量体を用いて電解重合により形成されることが好ましい。
【0078】
【化32】

(一般式(2′)中、nは1〜3の整数であり、mは0〜2n+4の整数である。Rは水素原子、ハロゲン原子あるいはアルキル基のいずれかであり、Rが複数の場合、それぞれが異なっていてもよい。)
一般式(2)中、nは1〜3の整数であり、mは0〜2n+4の整数である。Rは水素原子、ハロゲン原子あるいはアルキル基のいずれかであり、Rが複数の場合、それぞれが異なっていてもよい。
【0079】
以下に、前記一般式(1)あるいは一般式(2)で表される繰り返し単位に対応するモノマーを例示するが、該モノマーはこれらモノマーに限定されるものではない。
【0080】
なお、上記一般式(1)あるいは一般式(2)で表される繰り返し単位に対応するモノマーとは、前記一般式(1′)あるいは一般式(2′)で表される単量体(モノマー)であり、該一般式(1′)あるいは一般式(2′)で表される単量体構造のR〜R、R等は一般式(1)あるいは一般式(2)で表される繰り返し単位の構造のそれらと同じである。
【0081】
一般式(1)及び一般式(2)で表される繰り返し単位に対応するモノマーとしては例えば以下のものが挙げられる。
【0082】
【化33】

(本願発明に係る重合体の重合法)
本発明に用いられる電荷輸送物質としては、チオフェン若しくはその誘導体を反応して得られる重合体が高い光電変換光率が得られるので好ましい。重合方法としては、重合触媒を用いる化学重合法、少なくとも作用極と対極とを備えて両電極間に電圧を印加することにより反応させる電解重合法、光照射単独あるいは重合触媒、加熱、電解等を組み合わせた光重合法等があるが、電解重合法を用いた重合法が好ましい。
【0083】
電解重合法により重合体を得る場合は、重合体の合成がそのまま前記電荷輸送層の形成につながる。即ち、以下の3,4−エチレンジオキシチオフェンの例に示すような電解重合法が行われる。
【0084】
3,4−エチレンジオキシチオフェンあるいはその二量体を、をアセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネイト、ジクロロメタン、o−ジクロロベンゼン、ジメチルホルムアミドなどの溶媒(電荷輸送層形成用溶媒)に溶解し、これに支持電解質として前述のリチウム塩とアニオン性界面活性剤が添加される。
【0085】
電解重合用液に用いられる電荷輸送層形成用溶媒としては、支持電解質及び前記モノマーあるいはその二量体を溶解できるものであれば特に限定されず単独でも2種以上の混合でもよい。
【0086】
支持電解質としては、イオン電離可能なものが用いられ、特定のものに限定されないが、溶解性が高く、酸化、還元を受けにくいものが好適に用いられるが、本発明においてはリチウム塩を用いることが好ましい。る。次いで、第1電極2、バリヤ層3及び半導体層6を形成した基体1をこの電解重合用液に浸し、半導体層6を作用電極として、白金板などを対極として用い、また、参照極としてAg/AgClなどを用いて、直流電解する方法で行われる。電解重合用液中の前記モノマーあるいはその二量体の濃度は、0.1〜1000ミリモル/リットル程度が好適であり、支持電解質濃度は、0.1〜2モル/リットル程度が好適である。また、印加電流密度としては、1000μA・cm−2以下であることが望ましく、特に1〜500μA・cm−2の範囲であることがより望ましい。電解重合用液の温度範囲は、その溶媒が固化・突沸しない範囲が適当であって一般に−30℃〜80℃である。電解電圧、電解電流、電解時間、温度等の条件は、使用する材料によって左右されるため、また、要求する膜厚に応じて適宜選択することができる。
【0087】
一方、重合触媒を用いて化学重合を行う場合には、3,4−エチレンジオキシチオフェンあるいはその二量体等を以下のような重合触媒を用いて重合する。即ち、塩化鉄(III)(iron(III)chloride)、トリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)(iron(III)tris−p−toluenesulfonate)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III)p−dodecylbenzenesulfonate)、メタンスルホン酸鉄(III)(iron(III)methanesulfonate)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)(iron(III)p−ethylbenzenesulfonate)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)(iron(III)naphthalenesulfonate)及びその水和物等が挙げられる。
【0088】
化学重合において用いられる重合速度調整剤としては、前記重合触媒における三価鉄イオンに対する弱い錯化剤であり、膜が形成できるように重合速度を低減するものであれば特に制限はないが、重合触媒が塩化鉄(III)及びその水和物である場合には、5−スルホサリチル酸(5−sulphosalicylic acid)のような芳香族オキシスルホン酸などが挙げられ、また、重合触媒がトリス−p−トルエンスルホン酸鉄(III)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸鉄(III)、メタンスルホン酸鉄(III)、p−エチルベンゼンスルホン酸鉄(III)、ナフタレンスルホン酸鉄(III)及びその水和物である場合には、イミダゾールなどが挙げられる。
【0089】
重合体は、合成された後、重合体を含有する塗布液などに含有されて半導体層上に供給されてもよいが、半導体層上で重合し、電荷輸送層を形成することが好ましい態様である。
【0090】
その場合、重合体を重合して合成するために、3,4−エチレンジオキシチオフェンあるいはその二量体等を、前記重合触媒、前記重合速度調整剤及びその他の添加剤を含有する電荷輸送層形成用溶液が用いられる。電荷輸送層形成用溶液における、上記各成分の合計の濃度は、用いる3,4−エチレンジオキシチオフェンあるいはその二量体等、前記重合触媒、前記重合速度調整剤及びその他の添加剤のそれぞれの種類、その量比、塗布法に対する条件及び望まれる重合後の膜厚により異なるが、おおむねその濃度は、1質量%〜50質量%の範囲である。
【0091】
前記電荷輸送層形成用溶液を半導体層上に塗布法により塗布した後、あるいは、半導体層を前記電荷輸送層形成用溶液に浸漬させたまま重合反応を行う。
【0092】
重合反応の条件は、3,4−エチレンジオキシチオフェンあるいはその二量体等、前記重合触媒、及び前記重合速度調整剤のそれぞれの種類、その量比、濃度、塗布した段階での液膜の厚み、望まれる重合速度により異なるが、好適な重合条件としては、空気中加熱の場合の加熱温度が25℃〜120℃の範囲、加熱時間が1分〜24時間の範囲が好ましい。
【0093】
電荷輸送層を、塗布により形成する場合は、前記電荷輸送層形成用溶液を塗布液として用いるが、この塗布液に用いる溶媒、すなわち電荷輸送層形成用溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ブチレンオキシド、クロロホルム、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、アセトン、各種アルコールのような極性溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルスホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミドのような非プロトン性溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらの電荷輸送層の形成に用いられる溶媒は単独でも2種以上混合で用いてもよい。
【0094】
電荷輸送層中の重合体の含有量は、50質量%〜100質量%であることが好ましく、さらに90〜100質量%であることが好ましい。
【0095】
本願発明の電荷輸送層の伝導度を高めるために、正孔ドープされている必要があり、重合体の繰り返し単位あたりの正孔ドープ量が0.15〜0.66(個)であることが好ましい。本願の界面活性剤は正孔ドープ剤として一部が寄与していると推定している。
【0096】
電解重合では、重合体に電場をかけて酸化することにより、正孔ドープを行うことができる。
【0097】
電界重合の場合には光を照射して重合することが好ましい。酸化チタン表面に緻密に重合体を形成できるためである。
【0098】
また、半導体層の色素の酸化体を還元するためには、本願発明に係る重合体が色素吸着電極のイオン化ポテンシャルより小さいことが必要であり、そのため使用する色素によって本願発明に係る重合体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、該重合体がドープされた状態で、4.5eV以上5.5eV以下が好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下が好ましい。
【0099】
(第2電極の説明)
次に、第2電極8について説明する。第2電極8は、電荷輸送層7に隣接して層状(平板状)に形成され、その平均厚さは材料や用途等により適宜設定され、特に限定されるものではない。第2電極8は、公知の導電性材料や半導電性材料を用いて形成することが可能である。導電性材料としては、例えば各種イオン導電性材料や、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、銀、金、銅、モリブデン、チタン、タンタル等の金属又はこれらを含む合金、あるいは、黒鉛等の各種炭素材料等が挙げられる。また、半導電性材料としては、例えばトリフェニルジアミン(モノマー、ポリマー等)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、フタロシアニン化合物(例えば銅フタロシアニン等)等又はこれらの誘導体等のp型半導体材料が挙げられる。これら導電性材料や半導電性材料を1種又は2種以上組み合わせて第2電極8を形成することが可能である。
【0100】
(バリヤ層)
図1に示す太陽電池10は、第1電極2と半導体層6の間にバリヤ層3を有するもので、バリヤ層3は短絡の発生を防止するものである。バリヤ層3を設ける場合、その厚さは、例えば0.01μmから10μm程度であり、酸化亜鉛(ZnO)等の公知の金属酸化物等を用いて形成される。
【0101】
(紫外線吸収層)
本発明の太陽電池は紫外線吸収層11を有していてもよい。紫外線吸収層11とは、光が入射する表面から該表面側に位置する電極までに紫外線を吸収する領域を有するものである。ここで、「光が入射する表面から該表面側に位置する電極まで」とは、太陽電池の光入射側表面より該表面側に位置する電極までの領域をいう。例えば後述する図1に示す太陽電池10のように、第1電極側表面より光が入射する場合は、基体1、第1電極2及び紫外線吸収層11が設けられている領域が「光が入射する表面から該表面側に位置する電極まで」に該当するものである。また、光が第2電極側表面から入射する場合は、第2電極からその入射光側の表面に存在する層が設けられている領域が「光が入射する表面から該表面側に位置する電極まで」に該当するものである。
【0102】
紫外線吸収層11には、紫外線吸収剤として使用されるベンゾフェノン系化合物やベンゾトリアゾール系化合物等の公知の有機化合物や無機化合物を用いた市販の紫外線吸収フィルムや紫外線吸収塗料により形成することが可能である。
【0103】
(紫外線吸収剤)
本発明の太陽電池の紫外線吸収層に用いられる紫外線吸収剤としては、例えば以下のベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアジン系化合物が挙げられる。
(1)ベンゾフェノン系化合物
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等
(2)ベンゾトリアゾール系化合物
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−ブチルフェノール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3′−t−ブチル−2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2′−ヒドロキシ−3,5−ジ(1,1−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕等
(3)ベンゾエート系化合物
2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等
(4)トリアジン系化合物
2−〔4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−5−〔(オクチル)オキシ〕フェノール、2−〔4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル〕−5−〔(ヘキシル)オキシ〕フェノール等
紫外線吸収剤として使用可能な上記有機化合物は、溶剤に完全に溶解するので透明度の高い紫外線吸収層を形成する上で有利である。
(5)紫外線吸収剤用無機化合物
また、紫外線吸収剤として使用可能な無機化合物としては、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化セシウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらの中では、酸化亜鉛と酸化チタンが無機化合物の中で高い透明度が得られるので好ましい。
【0104】
≪太陽電池の製造方法≫
次に、本発明の太陽電池の製造方法について一例を挙げて説明する。本発明の太陽電池は、例えば以下に示す〔1〕〜〔5〕の手順により作製が可能である。本発明の太陽電池の作製方法は、以下に示す工程を経て作製されるものに限定されるものではなく、他の公知の方法で作製することも可能である。
【0105】
〔1〕第1電極の形成
均一な厚さを有し、かつ、光透過性を有するガラス製あるいは耐熱性に優れた樹脂製の基体を用意し、パルスレーザ蒸着法等の公知の製膜装置等を用いて当該基体上に第1電極2を形成する。なお、基体に用いられる耐熱性に優れた有機材料としては、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂やポリイミド樹脂等がある。
【0106】
〔2〕半導体層の形成
次に、第1電極の上面に半導体材料を用いて半導体層6を形成する。半導体層6は、例えば半導体が粒子状の場合には第1電極を形成した基体へ半導体5を塗布あるいは吹き付けることで形成が可能である。また、膜状の半導体の場合には第1電極を形成した基体へ半導体を貼り合せることで形成が可能である。半導体層6を形成する際の好ましい態様の1つに半導体粒子を焼成して形成する方法が挙げられる。半導体粒子を焼成して半導体層6を形成する場合、半導体へ行う増感処理は焼成の後に実施することが好ましく、特に、焼成実施後、半導体に水が吸着する前に行うことが好ましい。以下、半導体粒子を焼成して半導体層6を形成する方法について説明する。
【0107】
半導体粒子を焼成して半導体層6を形成する方法は、例えば以下の手順を経て行われるものである。すなわち、
(1)半導体粒子を含有する塗布液の調製
(2)半導体粒子を含有する塗布液の塗布と焼成処理
(3)半導体への増感色素吸着処理
以下、これらについて説明する。
【0108】
(1)半導体粒子を含有する塗布液の調製
この工程は、半導体粒子を公知の溶媒中へ投入、分散させることにより、塗布液を調製するものである。塗布液中の半導体粒子の濃度は、例えば0.1質量%から70質量%が好ましく、0.1質量%から30質量%がより好ましい。半導体粒子は、粒径の小さなものが好ましく、例えば平均1次粒径が1nmから5000nmのものが好ましく用いられ、2nmから100nmのものがより好ましく使用される。
【0109】
また、半導体粒子を分散させる溶媒は、半導体粒子を凝集させずに分散させることが可能なものであれば特に限定されるものでなく、水や公知の有機溶媒、あるいは水と有機溶媒の混合液が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、例えばメタノールやエタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、n−ヘキサンやシクロヘキサン等の炭化水素類等があるが、SP値が17.4以上24.6以下の有機溶媒を少なくとも1種以上用いる。
【0110】
また、塗布液中には、必要に応じて公知の界面活性剤や粘度調整剤を添加することも可能で、粘度調整剤の具体例としては、ポリエチレングリコール等の多価アルコールが代表的なものとして挙げられる。
【0111】
(2)半導体粒子を含有する塗布液の塗布と焼成処理
この工程は、前述の半導体粒子を溶媒中へ分散させて形成した塗布液を第1電極が形成されている基体へ塗布し乾燥させて半導体粒子の層を形成する。そして、空気中あるいは不活性ガス雰囲気下で焼成処理を行うことにより前記基体上へ層状に半導体5を固着させる。この層状に形成された半導体5は半導体層とも呼ばれるものである。塗布により基体上に形成された半導体粒子の層は、支持体との結合力や半導体粒子同士の結合力が弱いものであるが、焼成処理を行うことにより、基体との結合力あるいは半導体粒子同士の結合力が向上して耐久性のある強固な層になる。焼成処理により形成される半導体層の厚さは、少なくとも、10nm以上が好ましく、500nmから30μmがより好ましい。
【0112】
また、焼成処理により半導体層は強固な多孔質構造を形成し、多孔質構造を構成する空隙に電荷輸送物質を存在させることにより光電変換効率を向上させる。このように、多孔質構造の半導体層は、見かけの表面積に対して実際の表面積が大きなものになっているので、光電変換効率をはじめとする各種性能を向上させる上で非常に有効なものである。半導体層の空隙率は、例えば1体積%から90体積%が好ましく、より好ましくは10体積%から80体積%、20体積%から70体積%が特に好ましい。半導体層内に形成される空隙は、層の厚み方向に対して貫通性を有しており、公知の方法による空隙率の測定が可能である。空隙率の代表的な測定手段としては、例えば市販の水銀ポロシメータ「島津ポアサイザー9220型(島津製作所社製)」等がある。
【0113】
また、焼成処理を行う際の温度は、上記空隙率の多孔質構造を形成させる観点から、1000℃よりも低い温度範囲とすることが好ましく、200℃から800℃の温度範囲がより好ましく、さらに300℃から800℃の温度範囲が特に好ましいものである。ところで、樹脂製の基体上に焼成処理した半導体層を形成する場合は、あえて200℃以上で焼成処理を行う必要はなく、代わりに加圧処理を施すことにより半導体粒子同士の固着や基体への固着が可能である。また、マイクロ波を使用して、基体を加熱させることなく半導体層のみを加熱し、焼成処理を行うことも可能である。
【0114】
さらに、後述する増感色素による半導体層への電子注入を効率よく行えるようにするため、焼成処理により形成された半導体層へ公知の化学的あるいは電気化学的方法でめっき処理を施すことも可能である。
【0115】
(3)半導体5への増感色素吸着処理
半導体5への増感処理は、増感色素を溶解させた溶液へ半導体を層状に形成した半導体層(半導体層)が設けられている基体を浸漬して行うものである。半導体層6への増感色素4の総担持量は0.01〜100ミリモル/mが好ましく、0.1〜50ミリモル/mがより好ましく、0.5〜20ミリモル/mが特に好ましい。
【0116】
増感処理は、単独の種類の増感色素を使用する方法と複数種類の増感色素を併用する方法のいずれの方法も可能で、例えば太陽電池用の光電変換素子は光電変換可能な波長域を広く確保するため、吸収波長の異なる複数の色素を併用する方法が好ましい。
【0117】
増感色素を溶解させる溶媒は、増感色素を溶解する一方で、半導体を溶解させて反応するものでなければよく、公知の有機溶媒の使用が可能である。このような有機溶媒としては、例えば以下に挙げるニトリル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒等がある。これらの溶媒を単独あるいは複数種類併用することが可能である。
(a)ニトリル系溶媒;アセトニトリル等
(b)アルコール系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール等
(c)ケトン系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等
(d)エーテル系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等
(e)ハロゲン化炭化水素系溶媒;塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等
上記溶媒の中でも、アセトニトリル、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレンが好ましい。
【0118】
増感色素を含有する溶液への浸漬時間は、半導体層に溶液を深く進入させて半導体への吸着を十分に進行させて半導体を十分に増感させるため、例えば25℃の温度下で3時間から48時間行うことが好ましく、4時間から24時間行うことがより好ましい。また、含有する増感色素が分解しない限り溶液を加熱することも可能で、例えば溶液の温度を25℃から80℃に設定して行うことも可能である。
【0119】
以上の手順により半導体層6を作製することが可能である。
【0120】
〔3〕電荷輸送層の形成
また、導電性高分子化合物を固体の電荷輸送物質として含有する電荷輸送層は、公知の方法により作製が可能である。具体的には、重合体を含有する塗布液を調製し、当該塗布液を半導体層上に公知の方法で塗布して形成する方法がある。電荷輸送層の形成に使用される塗布方法としては、例えばディッピング法、滴下法、ドクターブレード法、スピンコート法、刷毛塗り法、スプレー塗布法、ロールコーター法等がある。また、このような塗布の操作を繰り返し行って積層するようにしてもよい。また、塗布液用の溶媒としては、例えば前述の極性溶媒や非プロトン性溶媒に該当する有機溶媒を用いることができる。
【0121】
また、重合体を含有する塗布液を用いて形成する方法の他に、重合性化合物、重合触媒や重合速度調整剤等を含有する溶液を半導体層上に塗布あるいは浸漬させて重合反応を行って電荷輸送層を形成する方法もある。重合反応の条件は、重合性化合物や重合触媒、重合速度調整剤等の種類や比率、形成する層厚等により異なるが、空気中で加熱して行う場合、加熱温度を25℃から120℃、加熱時間を1分から24時間に設定して行うことが好ましい。
【0122】
本発明では、前述した方法により、電荷輸送物質として導電性高分子化合物を含有する電荷輸送層7を形成することが可能であり、形成された電荷輸送層7は、半導体層6に浸透するように形成されている。
【0123】
〔4〕第2電極の形成
第2電極8は、電荷輸送層7の上面に形成される。第2電極8は、例えば金等で構成される第2電極材料を、蒸着法、スパッタリング法、印刷法等の公知の方法を用いて形成することが可能である。
【0124】
〔5〕紫外線吸収層の形成
本発明では、半導体層6に対して光を入射させる側に紫外線を吸収させる紫外線吸収層11を設けることができる。ここでいう「光が入射する側」とは基体1や第1電極2が設けられている側のことである。紫外線吸収層11を設ける具体的な方法としては、例えば基体1に紫外線を吸収する領域を設ける方法がある。すなわち、市販の紫外線吸収フィルムを基体1へ貼付する方法や基体1へ市販の紫外線吸収剤を塗布する方法により形成が可能である。
【0125】
以上の工程を経て、本発明に係る太陽電池を作製することが可能である。
【実施例】
【0126】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0127】
<太陽電池T−1の作製>
(半導体層)
二酸化チタンペースト(アナターゼ型、一次平均粒径18nm(顕微鏡観察平均)ポリエチレングリコール分散)をフッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電性ガラス基体へスクリーン印刷法(塗布面積5×5mm)により塗布した。塗布後、200℃で10分間及び500℃で15分間焼成を行い、厚さ5μmの二酸化チタン薄膜を得た。
【0128】
前記増感色素(A−4)をアセトニトリルとt−ブチルアルコール(1:1)の混合溶媒に溶解し、5×10−4mol/Lの溶液を調製した。上記二酸化チタンを塗布焼結したFTOガラス基体をこの溶液に室温で3時間浸漬して色素の吸着処理を行い半導体層とした。
【0129】
(電荷輸送層)
n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBSNa)をアセトニトリル溶液にて5mM濃度で超音波分散した後、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)の二量体であるBis−EDOT 1×10−2M、とLi[(CFSON](LiTFSI) 0.1M、DBSNa 0.005Mになるように溶解した。その後、前記の色素を担持させた二酸化チタンを有する半導体層を前記Bis−EDOTとLi[(CFSON]を溶解したアセトニトリル溶液に浸漬した。作用極を前記の半導体層と第1電極(半導体電極)、対極を白金線、参照電極をAg/Ag(AgNO 0.01M)、保持電圧を−0.2Vとした。二酸化チタン層方向から光を照射しながら(キセノンランプ使用、光強度22mW/cm、430nm以下の波長をカット)10分間電圧を保持して、EDOTモノマーユニットを含有する導電性高分子化合物の電荷輸送層を前記二酸化チタン表面に形成した。得られた二酸化チタン層/EDOTモノマーユニットを含有する導電性高分子化合物の電荷輸送層をアセトニトリルで洗浄、乾燥した。なお、ここで得られたEDOTモノマーユニットを含有する導電性高分子化合物の電荷輸送層は溶媒には不溶の重合膜になっている。その後、15mMのLi[(CFSON]、50mMのt−ブチルピリジンを溶解したクロロベンゼン溶液に30分間浸漬した。その後、二酸化チタン層/EDOTモノマーユニットを含有する導電性高分子化合物の電荷輸送層を自然乾燥後、さらに第2電極として真空蒸着法により金を60nm蒸着し本発明の太陽電池T−1を得た。
【0130】
<太陽電池T−2の作製>
太陽電池T−1における電荷輸送層の形成において、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの代わりにオクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用した以外は太陽電池T−1と同様の方法でセルを形成し本発明の太陽電池T−2を作製した。
【0131】
<太陽電池T−3〜T−9の作製>
導電性高分子化合物、リチウム塩、アニオン性界面活性剤の構成を表1のようにして、太陽電池T−1と同様にして、太陽電池T−3〜T−9を作製した。
【0132】
<太陽電池C−1、C−2(比較用)の作製>
導電性高分子化合物、リチウム塩、アニオン性界面活性剤の構成を表1のようにして、太陽電池T−1と同様にして、太陽電池C−1、C−2を作製した。なお、C−1はアニオン性界面活性剤を含まず、C−2はリチウム塩を含まない構成とした。
【表1】

〔太陽電池の評価〕
作製した太陽電池を、ソーラーシミュレータ(英弘精機製)を用い、AMフィルター(AM−1.5)を通したキセノンランプから100mW/cmの擬似太陽光を照射することにより行った。
【0133】
即ち、上記のようにして作製した各々の太陽電池について、I−Vテスターを用いて室温にて電流−電圧特性を測定し、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、及び形状因子(F.F.)を求め、これらから光電変換効率(η(%))を求めた。なお、太陽電池の光電変換効率(η(%))は下記式(A)に基づいて算出した。
【0134】
式(A)
η=100×(Voc×Jsc×F.F.)/P
ここで、Pは入射光強度[mW/cm]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA/cm]、F.F.は形状因子を示す。
【0135】
(光劣化試験後の光電変換効率の測定)
開回路状態で強度100mW/cmのキセノンランプ光を3時間照射した後、光電変換効率(η(%))を求め、光電変換効率低下率、すなわち初期光電変換効率に対する比を算出した。
【0136】
光電変換効率低下率(%)={(初期光電変換効率−劣化試験後光電変換効率)/初期光電変換効率}×100
表2に各太陽電池の特性評価結果を示す。
【表2】

表2の結果から明らかなように、本発明の太陽電池は比較用の太陽電池に比べて、初期の光電変換効率が2.7%以上と高い効率を有する。さらに特に界面活性剤疎水基の炭素数が8個以上18個以下の場合には、耐久性に関しても、劣化試験による劣化度合いが26%以下と小さくなっており、光電変換効率及び変換効率の低下率において特に優れている。
【符号の説明】
【0137】
1 基体
2 第1電極
3 バリヤ層
4 増感色素
5 半導体
6 半導体層
7 電荷輸送層
8 第2電極
9 隔壁
10 太陽電池
11 紫外線吸収層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、少なくとも第1電極と、色素を半導体に担持してなる半導体層と、重合性化合物を重合して形成される導電性高分子化合物からなる電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、第2電極が設けられている太陽電池において、該電荷輸送層が、リチウム塩及びアニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記アニオン性界面活性剤が、高級脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩及びアルキルエーテル硫酸塩から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記アニオン性界面活性剤の疎水基が、炭素原子数8個以上18個以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記導電性高分子化合物が、チオフェン構造を有する高分子化合物であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−89328(P2013−89328A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226354(P2011−226354)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】