説明

失禁治療方法

本発明は、薬化学および薬理学的治療の分野に関するものである。より具体的には、本発明は、失禁、下部尿路機能不全に関連する排尿障害および/または尿道−膀胱および肛門括約筋の障害を治療するための組成物および方法に関するものである。本発明は、例えば頻尿、尿意切迫、夜間頻尿または遺尿、真性便失禁、機能性便失禁(FFI)、受動的便失禁、便意切迫および/または糞便漏出の治療に使用できる。本発明は、全ての哺乳動物、特にヒトの予防的または治療的使用に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬化学および薬理学的治療の分野に関するものである。より詳細には、失禁、下部尿路機能不全に関連する排尿障害および/または尿道−膀胱および肛門括約筋の障害を治療するための組成物および方法に関するものである。本発明は特に、頻尿、尿意促迫もしくは切迫、夜間頻尿または遺尿、便意切迫および糞便漏出の治療に使用でき、予防的または治療的使用のために全ての哺乳動物、特にヒトに適用できる。
【0002】
尿を蓄え(排尿抑制)それを排出する(排尿)ためにある下部尿路は、尿管、膀胱、尿道括約筋および尿道で構成されている。男性においては、感染、炎症または前立腺過形成が及ぼし得る頻回の排尿の影響のため、前立腺がこれに関連する。
【0003】
尿失禁は、尿の不随意的排泄と定義され、膀胱および/または尿道括約筋の調節不全に起因する。随意的に放出される排尿時は別であるが、尿道括約筋は、膀胱筋によりもたらされる圧力を封じ込めるために充分に収縮している。尿失禁は、膀胱圧が強すぎる時、または尿道括約筋の収縮が正常な膀胱内圧を封じ込めるには弱すぎる時に起こる。
【0004】
尿失禁は様々な形態:腹圧性失禁、切迫性失禁、混合型失禁、溢流性失禁および機能性失禁で存在する。
【0005】
腹圧性尿失禁は、腹部に圧力がかかった時(運動、咳発作または爆笑)の尿の排泄と表現される。尿道括約筋および尿道の機能不全に関係するこの型の失禁は、主として女性に起こる。
【0006】
切迫性尿失禁は、蓄積の不能、排尿に対する強い衝動と表現され、膀胱の充満容量低下(コンプライアンスの欠如)または膀胱充満相での排尿筋の異常収縮に起因する。これは本質的に高齢者が罹患する。膀胱筋の機能不全の原因が神経学的であるか否かに応じて2種類の病理:排尿筋の反射亢進および排尿筋の不安定性に区別される。排尿筋反射亢進は、神経学的発作、特に多発性硬化症、脊髄損傷、末梢神経障害または脳腫瘍の際に出現する。逆に排尿筋の不安定性は、様々な感染性、炎症性またはホルモン性の原因があり得、前立腺肥大によっても誘発され得る。良性前立腺肥大の症例の75%は、実際に膀胱過活動を伴っている(Scrip Reports, Sept. 2000)。
【0007】
混合型尿失禁では、腹圧性および切迫性失禁の症状が合併している。
【0008】
溢流性尿失禁は、尿滞留後の膀胱からの溢流によって起こる。この形態の失禁は、膀胱からの排出が、前立腺肥大の場合のように閉塞によって損なわれた場合に、または、この排出が膀胱筋の収縮欠如によって不完全になっている場合に起こり得る。この型の失禁は特に糖尿病患者に起こり、それは彼等が末梢神経障害を発症するためである(Scrip Reports, Sept. 2000)。
【0009】
機能性尿失禁は、神経泌尿器学的異常または下部尿路機能不全とは無関係の原因による尿滞留不能に相当する。アルツハイマー病、パーキンソン病といった重大な神経疾患、または脳血管卒中の後遺症に罹患している患者の75%に尿失禁がある(Scrip Reports, Sept. 2000)。
【0010】
尿失禁および排尿障害は、全世界で数百万人が罹患している(Scrip Reports, Sept. 2000)。たとえ生命予後を脅かさないとしても、これらの疾患は患者の生活の質を大幅に変化させる。これらは社会的職業的生活範囲内での本質的な障害となり、深刻な生理的および心理的影響を持つ。
【0011】
尿失禁に加えて、その他の排尿問題または異常、例えば頻尿(殆ど排尿のない頻回の尿意)、尿意促迫もしくは切迫(切迫した尿意)、夜間頻尿(夜間の頻繁な尿意)または遺尿(不随意的排尿または尿を貯めることができない)が、下部尿路構成要素の機能不全に関連している。これらの排尿障害は数多くの病理、特に、膀胱不安定性、膀胱過活動、膀胱炎、間質性膀胱炎、および前立腺疾患(良性前立腺肥大、前立腺過形成、前立腺炎およびプロスタディニア)で出現するが、これらに限定される訳ではない。これらはさらに、糖尿病、脊髄の外傷または脳疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、腫瘍または血管性卒中)の患者に起こり、医原性の原因を持つことさえあり得る(Scrip Reports, Sept. 2000)。
【0012】
今日利用可能な治療はあまり多くない。切迫性失禁に処方される抗コリン作動薬、良性前立腺肥大患者の尿障害に使用されるα遮断薬、ならびに、腹圧性失禁に対して近年欧州で認可された、ノルエピネフリンおよびセロトニン再捕捉の混合型インヒビターであるデュロキセチンの他に、医療用品は、エストロゲン、三環性抗うつ薬およびα−アドレナリン作動性アゴニストの用途を転用することに行き着く。非常に有効である訳ではなく、しばしば許容されにくいため、これらの治療は頻繁に患者のコンプライアンス不良を導き、治療の中断を招くことさえある(Scrip Reports, Sept. 2000)。
【0013】
便失禁(FI)は、清潔を学習した後に便(固体または液体)を我慢できないことと定義される(Cooper Z.R. et al., 2000)。FIは、肛門喪失の性格により肛門失禁(AI)とは区別される。FIが糞便(固体または液体のいずれか)の排泄に関連するだけであるのに対し、AIはガスの排泄にまで拡大している(Macmillan A.K. et al., 2004)。肛門括約筋の調節喪失に関連する「真性便失禁」は、肛門括約筋調節の神経学的または構造的変化が無い、頻回の糞便排泄に対応する機能性便失禁(FFI)とは区別される(Whitehead W.E. et al., 2006)。肛門起源(痔、痔瘻、糞便粘膜の脱出)および腸管起源(緩下剤の乱用、腸管の炎症性または寄生虫疾患)の両者があり得るFFI群の病理。臨床的には、FIには3つのサブタイプ:受動的便失禁(不随意的な便排泄であって知覚がない)、切迫性便失禁または便意切迫(排便を我慢しようとしているにもかかわらず便を排泄してしまう)、および糞便漏出(排便は正常であるが、便漏出)がある(Rao S., 2004)。受動的FIは、内肛門括約筋の機能不全の際、または糞便による直腸閉塞の際に現れる(便秘によって起こる、障害物周囲への液状便横溢の発生)(Kamm M.A., 1998)。切迫性便失禁は外肛門括約筋の罹患または機能不全に起因することもあるが、括約筋は無傷で腸管圧が上昇した結果であることもある(例えば、様々な原因による下痢、過敏性腸症候群)(Engel A.F. et al., 1995)。
【0014】
便失禁は複雑で多因子的な疾患であり、その起源は極めて多岐にわたっている。括約筋の罹患(虚弱から欠損まで)、外陰部神経の神経障害、肛門直腸の感受性変化、直腸コンプライアンスの変化、不完全な排便、が、FI発症の考え得る原因であるが、これらの症状自身が様々な起源を有する(解剖学的、局所または全身的起源)。さらに、FIが複数の原因を持つこともしばしばである(Bharucha A.E., 2003およびCooper Z.R. et al., 2000)。
【0015】
現在、FIの有病率は、人口全体の約2%、65歳を超える自立した人の約7%、そして施設入居または入院している高齢者の25−33%(この集団では尿失禁との関連が極めてしばしばである)とされている(Kamm M.A., 1998)。
【0016】
最近の研究は、尿失禁および便失禁の間にしばしば関連がある事を示している。米国では、50歳を超える混合群において、二重の失禁の有病率は5.9%(男性)および9.4%(女性)である(Roberts R.O. et al., 1999)。同様の有病率(8.4%および8.7%)が欧州の女性について報告された(Griffiths A.N. et al., 2006およびLacima G. et al., 2002)。尿および便失禁が非常にしばしば関連しているという事は、尿道括約筋の手術と肛門括約筋の手術に類似性があることによって説明できる(Leroi and Le Normand, 2005)。動物での膀胱、尿道、肛門直腸複合体および骨盤隔膜間の交差反射の検出もまた、これら両失禁の同時罹患性を、少なくとも部分的に説明するために提出されている(Kappor et al., 2005)。
【0017】
保護おむつ、食事療法、リハビリテーション技術(バイオフィードバック、骨盤リハビリテーション)、種々の医療機器および外科手術(括約筋修復術、筋転位術、人工括約筋、仙骨神経の刺激、人工肛門形成術など)の他に、FIの治療において提起または研究されている薬理学的治療は、今日まであまり多くない。殆どの場合これらは、失禁の疑わしい原因、即ち下痢または便秘に作用することを意図する非特異的治療である(Rao S., 2004、Bharucha A.E., 2003)。
【0018】
尿失禁、排尿障害、便または肛門失禁および/または尿道−膀胱および肛門括約筋の疾患に罹患している非常に多くの患者、そして利用可能な治療の不適当性に直面し、二次的影響のない有効な治療に対する明白な必要性が存在する。
【0019】
そこで本発明は、これらの病理を治療するための新規で有効な方法を提起するものである。意外なことに、その製造および抗鬱活性が特許第EP77427号に開示されているピペリジンの或る誘導体が、膀胱ならびに肛門および尿道筋括約系に対して薬理効果を有することが観察された(それらの機能不全には尿、便または肛門失禁が含まれる)。特に、本出願に開示されている実施例は、予期せぬ事に、静脈内投与されたこれらの化合物が、膀胱容量および横紋筋性肛門括約筋の筋電図活動を増大させる事を示し、後者は尿道括約筋の筋電図活動を代表するということが文献中で明白に認められている(Thor and Muhlhauser, 1999およびWenzel et al., 2006)。さらにインビトロでは、これらの化合物は電気刺激されたヒト膀胱の収縮反応を濃度依存的に阻害し、セロトニンによるラット膀胱の神経原性反応を阻害する(電気刺激に対する収縮反応)。
【0020】
故に本発明の目的は、失禁、下部尿路機能不全に関連する排尿障害および/または尿道−膀胱および肛門括約筋の障害を治療する医薬を製造するための、式(I):
【化2】


[式中、
Rは、水素原子または(C−C)−アルキル、ヒドロキシ−(C−C)アルキル、(C−C)−アルコキシカルボニルまたはベンジル基[これらの基は場合により、好ましくはハロゲン原子および(C−C)−アルコキシ、フェネチルまたはフェニル−3−プロピル基から選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい]を表し、
Xは、1以上の水素もしくはハロゲン原子または(C−C)アルキル、(C−C)−アルコキシ、トリフルオロメチルおよびメチレンジオキシから選ばれる基を表すか、または、Xは、フェニル環と共にナフチル基を形成する]
で示される化合物ならびに薬学的に許容され得るその塩および水和物の使用にある。
【0021】
本発明のもう一つの目的は、上の定義による式(I)の化合物の有効量を患者に投与することを含む、失禁、下部尿路機能不全に関連する排尿障害および/または肛門および尿道−膀胱括約筋の障害を治療する方法に関するものである。
【0022】
本発明の文脈の中で、「失禁」という語は、尿便または肛門失禁を指す。
【0023】
本発明の文脈の中で、「(C−C)−アルキル」という語は、より優先的にメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルおよびブチル基を指す。ヒドロキシ−(C−C)−アルキル基のうち、より具体的にはメトキシおよびエトキシ基を挙げることができる。(C−C)−アルコキシカルボニル基のうち、特にC(O)OCHおよびC(O)OCHCHを挙げることができる。
【0024】
好ましい態様では、RおよびXは同時に水素原子を表さない。このような化合物の例は特に、EP077427に記載の化合物1〜49である。
【0025】
特別な化合物は、Xが、1以上の塩素原子であるか、フェニル環と共にナフチル基を形成するか、または3個のメトキシ基を表す化合物である。最も好ましい化合物は、Xがフェニル環と共にナフチル基を形成する化合物である。
【0026】
好ましい化合物のもう一つの群は、RがHである群である。
【0027】
最も好ましい化合物例は、以下の式(化合物A):
【化3】


で示される4−[(2−ナフタレニル)−メトキシ]−ピペリジンである。
【0028】
薬学的に許容され得る付加塩、特に酸塩の中では、特に安息香酸塩、マンデル酸塩、塩酸塩、クエン酸塩およびフマル酸塩を挙げることができる。
【0029】
上記の化合物は、当業者にとって自体既知の様々な合成技術によって製造できる。この文脈において、本出願の目的のために適用され得る合成法は、特許EP077427に詳細に記載されている。
【0030】
本発明の特別な態様において、使用される化合物はセロトニン再捕捉(セロトニン再取り込み)を阻害する性質を有する。さらに優先的には、これはセロトニン再捕捉の選択的インヒビターである。本発明の意義において、「セロトニン再捕捉の選択的インヒビター」という語は、使用される用量において、ノルエピネフリンまたはドーパミンの再捕捉に何ら実質的影響を持たない化合物を意味する。好都合なことに、セロトニン再捕捉のインヒビターは、阻害率IC50NE/HTおよび/またはIC50DA/HTが30、40、50、60、70または80より高い時、好ましくは50および300の間にある時に選択的である。
【0031】
特に好都合な態様では、本化合物はさらに、5−HT2Cレセプターのアゴニスト(部分的またはそうでない)および/または5−HTレセプターおよび/または5−HTレセプターおよび/または5−HTレセプターのアンタゴニストである。本出願は実際、5−HT2Cレセプターのアゴニスト活性(部分的またはそうでない)および/または5−HTレセプターおよび/または5−HTレセプターのアンタゴニスト活性と共に、セロトニン再捕捉の選択的インヒビターのプロファイルを有する化合物が、尿道圧および膀胱の収縮反応に対して特に好都合な効果を産み、5−HTレセプターに対するアンタゴニスト活性の故に嘔吐のリスクを抑制するという事を示している。「レセプターのアゴニスト」という語は、レセプターと結合でき、そのレセプターの天然リガンドにより誘発される反応を模倣できる化合物を指す。「レセプターのアンタゴニスト」という語は、レセプターと結合でき、そのレセプターの天然リガンドにより誘発される反応を遮断できる化合物を指す。
【0032】
最も好ましい化合物は、前記性質のうち一つ、幾つかまたは全てと共に、ドーパミン作動性レセプターD(即ち、少なくともセロトニンのキャリアに対する親和性と比較して5、10、20または30倍下回る)および/またはアドレナリン作動性レセプター(即ち、少なくともセロトニンのキャリアに対する親和性と比較して5、10、20または30倍下回る)および/またはムスカリンレセプター(即ち、少なくともセロトニンのキャリアに対する親和性と比較して5、10、20または30倍下回る)に対して低い親和性を有する化合物である。実際この選択性によって、現在利用可能な治療がしばしば直面する悪心または心血管(動脈高血圧)および抗コリン性(ゼロストミー)副次効果を誘発しない化合物が取得可能となる。
【0033】
したがって、本発明の特別な目的は、失禁、下部尿路機能不全に関連する排尿障害、および/または肛門および尿道−膀胱、括約筋の障害を治療する医薬、セロトニン再捕捉の選択的インヒビター、5−HT2Cレセプターのアゴニスト(部分的またはそうでない)および/または5−HTレセプターおよび/または5−HTレセプターおよび/または5−HTレセプターのアンタゴニストであってドーパミン作動性レセプターD、アドレナリン作動性レセプターおよびムスカリンレセプターに対して低い親和性を有する化合物を製造するための使用にもある。
【0034】
このような化合物の具体例は、4−[(2−ナフタレニル)−メトキシ]−ピペリジンである。事実、出願人は、この化合物が、ノルエピネフリン(NE)と比較してセロトニン(5−HT)の再補足に関する明らかな選択性(IC50 NE/HT比=89)(Scatton, 1988)、およびアドレナリン作動性レセプターに対する[α(IC50=40μM)、α(IC50=70μM)、およびβ(IC50=100μM)]、そしてムスカリンレセプターに対する(IC50=99μM)極めて低い親和性を有することを示した。この選択性の故に本化合物は、現在利用可能な治療がしばしば直面する心血管(動脈高血圧)および抗コリン性(ゼロストミー)副次効果を惹起しない。さらに、ドーパミン(DA)(IC50 DA/HT比=188)(Scatton, 1988)と比較した時のセロトニン再捕捉に関する4−[(2−ナフタレニル)−メトキシ]−ピペリジンの明らかな選択性、5−HTレセプターに対するアンタゴニスト活性、および動物におけるその制吐性(Angel, 1993)は、デュロキセチンによる治療にしばしば付随する嘔吐を低減または抑制さえするに相違ない。加えて、クローニングされたヒトレセプターとの結合の研究は、4−[(2−ナフタレニル)−メトキシ]−ピペリジンが、5−HT2A、5−HT2B、5−HT2C、5−HT、5−HT4eおよび5−HTレセプターに対してIC50が0.25μMおよび7.2μMの間にあるという著しい親和性を有し、それでいて5−HT1Aおよび5−HT5Aレセプターに対して低い親和性を有するということを示した。さらに、この化合物は、5−HT2Cレセプターの部分アゴニスト(ICが1.5μM)であることが初めて示され、この事は、膀胱の異常活動を含む病理の治療において特別有利な点である(Steers, 1989; Steers, 1992; Guarneri, 1996; Leysen, 1999)。さらに、10μMにおいて観察された、電気刺激された摘出ラット膀胱の、セロトニンによる神経反応強化の予期せぬ阻害は、5−HTレセプターに対するアンタゴニスト活性が関連しているのかも知れず(Palea, 2004)、この事は、ヒト膀胱に5−HTレセプターが存在することから、切迫性尿失禁および混合型尿失禁の治療において興味深い(D'Agostino, 2006)。
【0035】
故に、本発明の最も特別な目的は、失禁、下部尿路機能不全に関連する排尿障害、および/または肛門および尿道−膀胱、括約筋の障害を治療する医薬を製造するための、4−[(2−ナフタレニル)−メトキシ]−ピペリジンまたはその塩の使用にある。
【0036】
本発明は、尿失禁および下部尿路機能不全に関連する排尿障害、そして特に、頻尿、尿意促迫もしくは切迫、夜間頻尿または遺尿の治療に使用できる。これらの排尿障害は数多くの病理、特に、膀胱不安定性、膀胱過活動、膀胱炎、間質性膀胱炎および前立腺疾患(良性前立腺肥大、前立腺過形成、前立腺炎およびプロスタディニア)で出現する。これらはさらに、糖尿病、脊髄の外傷または脳疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、腫瘍または血管性卒中)の患者に起こり、医原性の原因を持つことさえあり得る。
【0037】
これはさらに、肛門および便失禁、特に真性便失禁および機能性便疾患(FFI)の治療に特に好適である。これは同時に、受動的便失禁、切迫性便失禁および糞便漏出の治療にも好適である。
【0038】
本発明の意義において、「治療」という語は、治療的および予防的処置の両者を指す。この用語は、疾患の症状の改善、または当該疾患の外的徴候の低減、そして特にそれらの頻度、苦しみまたは不快感、疼痛の低減、または疾患の完全な消失さえも包含する。この治療は、単独で、または他の活性成分と組み合わせて、同時にもしくは別々にもしくは連続的に使用できる。
【0039】
本発明に記載の治療方法は、この種の治療を必要とする患者に治療有効用量を投与することを含む。「治療有効用量」という語は、失禁を治療するための、または、例えば頻尿、尿意促迫、夜間頻尿、遺尿、便意切迫または糞便漏出から選ばれる症状のうち少なくとも一つの完全または部分的な低減を達成するための、充分な化合物の量を指す。
【0040】
有効用量は変わり得るが、患者を担当する医師によって決定される。この有効用量は、その化合物が塩として投与される場合、特にその塩が大分子量を有する場合には調節を必要とするかも知れない。
【0041】
有効用量の範囲は典型的には0.001および1000mg/日の間にある。この有効用量は適当な医薬製剤に調合され、必要に応じて、日用量の全量を含有するか、または一日の様々な時間に分割投与することができる。
【0042】
本発明によれば、本化合物は、経口、バッカル、舌下、直腸内、腟内、鼻腔内、経皮、非経口、膀胱内、経尿道、または全身経路で投与できる。投与経路は本発明の重要要素ではない。本化合物は消化管で吸収されるため、簡便性の理由から経口投与を優先するが、必要ならば薬学的に許容され得る任意の経路で投与できる。
【0043】
本発明に使用される化合物は、任意の通常の剤型、例えば錠剤(被覆または非被覆)、咀嚼または吸飲する錠剤、トローチ、ゼラチンカプセル剤、軟カプセル剤、液剤、水性または油性懸濁液、エマルジョン、注射用溶液、坐剤、シロップ、顆粒剤、散剤、貼付剤、ゲル、クリーム、軟膏、スプレーおよびエアロゾルとして投与できる。
【0044】
これらの医薬製剤は、固体物、例えば錠剤、または適当な体積の固体調製物、液体または半固体である投薬単位に、日用量または日用量の一部が含有されるように調合することができる。作用の遅延および時間の観点における必要性に応じて、本化合物を制御放出製剤(遅延、延長、計画、パルス型)で投与できる。
【0045】
本化合物の活性は、投与される製剤の組成またはこれら製剤中の本化合物の濃度に依存しない。
【0046】
本製剤は、所望の剤型に応じて、通常の薬学的実務に従って選択される薬学的に許容され得る賦形剤を用いて製造する。固体経口医薬製剤の場合、これらの賦形剤は特に、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、澱粉)、不活性希釈剤(乳糖、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース)、潤滑剤(シリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸)、崩壊剤(澱粉グリコール酸ナトリウム、アルギン酸)、湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウム)および/または被覆もしくはフィルム形成剤(水性または非水性)を包含する。
【0047】
液体製剤には、水性担体(水、水−アルコール混合物、生理食塩水、緩衝液)または非水性担体(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、注射用有機エステル類、例えばオレイン酸エチル)を使用できる。これらは、懸濁剤(ソルビトール、メチルセルロース)、乳化剤(ゴム、レシチン類)、保存剤、香料、色素、および/または甘味料を含有できる。
【0048】
局所用製剤は吸収促進剤を含有できる。
【0049】
したがって本発明のもう一つの目的は、失禁、下部尿路機能不全に関連する排尿障害、および/または肛門および尿道−膀胱括約筋の障害の治療に使用するのが好適な、前記定義による化合物および任意の担体または賦形剤を含む医薬組成物に関するものである。
【0050】
本発明の、他の側面および利点を以下の実施例に開示するが、これらは例示的且つ非限定的であると考えるべきである。
【0051】
実施例
実施例1:希酢酸の膀胱内灌流により誘発した膀胱刺激条件下の、麻酔した雌性ウサギにおける、横紋筋性肛門括約筋の活動および膀胱容量に及ぼす式(I)の化合物のインビボ効果。
【0052】
4−[(2−ナフタレニル)−メトキシ]−ピペリジン(化合物A)およびその溶媒(NaCl 0.9%)が、尿道括約筋の活動のマーカーとして利用される横紋筋性肛門括約筋の筋電図活動(EMG−SAS)に及ぼす効果、および膀胱容量(VC)に及ぼす効果を、希酢酸の膀胱内灌流により誘発した膀胱刺激条件下の、麻酔した雌性ウサギにおいて、インビボで調査した(Perez Martinez et al., 2006およびHaab et al., 2006)。横紋筋性肛門括約筋(SAS)の活動が、実際、尿道括約筋の活動を特に代表するということが文献で認められている(Thor and Muhlhauser, 1999およびWenzel and al., 2006)。ケタミン(25mg/kg)およびシラジン(10mg/kg)の混合物の筋肉内注射で麻酔した16羽の雌性ニュージーランド白ウサギ(2.5−3.5kg)に膀胱瘻設置術を施した。正中切開で開腹した後、膀胱円蓋にカテーテルを導入し、巾着縫合により適切な位置に維持した。カテーテル末端にマルチパーフォラブル(multiperforable)プラグを付け、次いでこのカテーテルを皮下に入れ、絹結紮糸で腹部に付着させた。膀胱切開の3日後、ハロタン(2−3%)で麻酔した動物の膀胱内圧測定を実施した。T管をマルチパーフォラブルプラグに接続し、次いで圧力センサー(Letica、Panlab)と、膀胱の灌流を行うマイクロポンプ(Razel 99、Scientific Instruments)に接続した。膀胱刺激条件下で連続排尿を誘発するため、室温に維持した希酢酸(0.5%)を膀胱内に灌流させた(1.4mL/h)。データ取得系(PowerLab 4/25、PanLab)によって排尿プロファイルを連続的に記録し、膀胱容量(VC)を包含する種々の尿力学的パラメータを決定した。さらに、その筋電図活動(EMG)を測定するため、2本の電極を横紋筋性肛門括約筋に導入した。増幅しフィルタリングした電気シグナル(帯域幅1Hz−5kHz)を、データ取得系によって連続記録した。排尿中に起こる会陰の動きに関連する寄生を排除するため、膀胱充満に向かう相の間EMG−SASを測定した。
【0053】
容量1mLの化合物Aまたはその溶媒(NaCl 0.9%)を投与するため、耳静脈にカテーテルを埋め込んだ。動物を、化合物Aまたはその溶媒を投与する二つの群に分けた。規則的な排尿サイクルを誘発するため、膀胱を灌流する少なくとも60分間の安定時間(SP)の間、2連続用量(1および3mg/kg)の化合物Aまたは溶媒を、40分間隔で静脈内投与した。被験用量の各々について、EMG−SASおよびVCに及ぼす化合物Aおよびその溶媒の効果を、安定時間のパーセンテージとして表した(平均値±平均値の標準誤差)。安定時間の間、両実験群(化合物Aおよび溶媒)で得られたパラメータは同じであった(p>0.05;Kruskal-Wallis試験):EMG−SASに関して、化合物Aおよびその溶媒は1.76±1.04(n=8)および1.41±0.59の活動性ピーク/分(n=8)であり、VCに関しては、化合物Aおよびその溶媒は各々21.63±4.92(n=8)および18.31±2.90mL(n=8)であった。用量1mg/kgにおいて化合物Aは測定パラメータに顕著な効果を誘導しなかったが、用量3mg/kgでは、安定時間に比較して、EMG−SAS[1521.90±966.61%(n=7)、p=0.018(Wilcoxon試験)]およびVC[123.29±11.62%(n=8)、p−0.035(Wilcoxon試験)]に著明な増大を誘発した(図1(A)および1(B)の化合物A群を参照されたい)。同じ条件で試験した時、溶媒はVCおよびEMG−SASに著明な増大を惹起しなかった。VS(1回目および2回目の投与)およびEMG−SAS(1回目の投与)には著明な相違は観察されなかったものの(p>0.05;Wilcoxon試験)、2回目の溶媒投与はEMG−SASの低下を誘発した[−69.59±18.74%(n=8);p=0.035(Wilcoxon試験)](1(A)および1(B)の溶媒群を参照されたい)。
【0054】
実施例2:希酢酸の膀胱内灌流により誘発した膀胱刺激条件下の、麻酔した雌性ラットにおける、膀胱容量に及ぼす式(I)の化合物のインビボ効果。
【0055】
希酢酸の膀胱内灌流により雌性ラットに誘発した膀胱過活動モデルにおける、4−[(2−ナフタレニル)−メトキシ]−ピペリジン(化合物A)およびその溶媒(NaCl 0.9%)の効果をインビボ調査した(Chuang et al., 2004)。19匹の雌性ウィスターラット(200−280g)をウレタン(1.2g/kg)の腹腔内注射で麻酔した。開腹の後、膀胱円蓋に嚢を作り、次いでカテーテルを導入してこの嚢に結紮した。化合物Aまたはその溶媒の投与を可能にするため、カテーテルを頸静脈に埋め込んだ。体温を37℃前後に維持するため前もって加温プレート上に置いたこの動物に、膀胱内圧測定を実施した。膀胱カテーテルの末端に三方向バルブを取り付け、しかる後、膀胱の灌流をさせるためのポンプ(モデル「11」プラス、Harvard Apparatus)および圧力センサー(MX860/866 Novatrans、Medex Medical)に接続した。膀胱刺激条件下で連続排尿を誘発するため、室温に保持した希酢酸(0.3%)を膀胱内に還流させた(3mL/h)。データ取得系(MacLab/8、AD Instruments)によって排尿プロファイルを連続記録し、膀胱容量(VC)を包含する種々の尿力学的パラメータを決定した。10分間の安定時間の後に尿力学的パラメータの基底値を決定した。次に、化合物A(2mg/kg)またはその溶媒を、シリンジポンプ(モデルA−99、Fisher Bioblock Scientific)によって5分以内に容量1mLで静脈注射した。VCに及ぼす化合物Aおよびその溶媒の効果を、投与の20、40および60分後に評価し、基底値の変動パーセンテージとして表した(平均値±平均値の標準誤差)。両実験群(化合物Aおよび溶媒)において、VCの基底値は同じ((p>0.05;分散分析)であった:溶媒(n=11)および化合物A(n=8)について各々0.045±0.005mLおよび0.042±0.006mL。化合物A(2mg/kg、i.v.)は、著明なVCの増大を誘発した[46.25±16.40%、44.61±17.51%および60.34±17.8%。それぞれ投与の20、40および60分後(p<0.05;分散分析)](図2の化合物A群(n=8)を参照されたい)。同じ条件下で試験した時、溶媒は、関係するいずれの測定時間においてもVCに著明な変化を惹起しなかった(p>0.05;分散分析)(図2の溶媒群(n=11)を参照されたい)。
【0056】
実施例3:電気刺激されたヒト排尿筋に及ぼす式Iの化合物のインビトロ効果。
【0057】
尿路上皮癌のため根治的膀胱切除術に従って二人の男性患者(70および62歳)から摘出した膀胱片に及ぼす、化合物Aおよびその溶媒(クレブス溶液)の効果をインビトロで調査した。この組織片を、37℃に加熱しcarbogen(95%Oおよび5%CO)で酸素を送り込んだクレブス溶液を入れた水浴中に、単離した臓器と共に取り付けた。60分間の安定時間の後、80mM KClで収縮させることによって組織片の生存性を試験した。30分間の洗浄および安定化の後、神経性収縮を惹起するため、組織片を電場刺激に付した。使用した電気刺激パラメータは以下のとおりであった:周波数:30Hz、最大電圧、パルス持続時間0.1ms、100秒毎に5秒間のパルス列。神経反応の安定後に(電気刺激開始の約30分後)化合物Aについての様々な累積濃度反応曲線を0.01〜100μMの間で取得した。化合物Aは、電気刺激に対する排尿筋組織片の収縮反応を10μMから濃度依存的に阻害し、阻害パーセンテージは、10μMで20.1±4.7%、30μMで41.7±5.2%、そして100μMで80.8±6.8%である事が示された。同じ条件で試験した時、化合物Aの溶媒は、排尿筋の収縮に対しおよそ10%の阻害効果を有する。これらの結果は、化合物Aが膀胱のコリン作動性収縮反応を低下させ、故に膀胱収縮の増大が存在する切迫性尿失禁の治療に有用となり得る事を示す。
【0058】
実施例4:ヒトセロトニンレセプターに対する結合試験。
【0059】
Mulheron(1994)、Bryant(1996)、Choi(1994)、Hope(1996)、Mialet(2000)、Rees(1994)およびShen(1993)から改変した方法に従い、対応するレセプターに対するリガンドの特異的結合を測定することにより、8つのクローニングされたヒトセロトニンレセプターに対する化合物Aの親和性をインビトロ評価した。化合物Aが著明な親和性を示したレセプターについて決定されたIC50およびKを表1にまとめる。
【0060】
【表1】

【0061】
化合物Aは、5−HT1Aおよび5−HT5Aレセプターに対し著明な親和性を示さなかった(対照の特異的結合の阻害は各々14%および1%)。
【0062】
実施例5:クローニングされたヒトレセプター5−HT2Cについての細胞機能試験
【0063】
Adlersberg(2000)およびCussac(2002)から改変した方法に従い、レセプターの特異的リガンド[35S]GTPγSの結合を定量することにより、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)で発現されたヒト5−HT2Cレセプターに対する化合物Aのアゴニストおよびアンタゴニスト活性を、1nMおよび100μMの間の範囲の濃度でインビトロ評価した。化合物Aは、1nMおよび1μMの間では著明なアンタゴニスト活性が無く、10μMにおいて極めて低いアンタゴニスト活性を示した(18%)。さらに、3.10−5Mおよび10−4Mの間の濃度でアゴニスト活性が44%および42%の間という限界に達しており、化合物Aは5−HT2Cレセプターの部分アゴニストであり、そのIC50は1.5μMである。
【0064】
実施例6:単離されたラット膀胱の5−HTレセプターに関するアンタゴニスト機能試験
【0065】
単離されたラット膀胱のセロトニンによる神経反応強化に対する化合物Aおよびその溶媒(クレブス溶液)の効果をインビトロで調査した。雌性ウィスターラット(250−300g)から摘出した排尿筋組織片を、37℃に加熱しcarbogen(95%Oおよび5%CO)で酸素を送り込んだクレブス溶液を入れた水浴中に、単離した臓器と共に取り付けた。60分間の安定時間の後、80mM KClで収縮させた。30分間の洗浄および安定化の後、神経性収縮を惹起するため、組織片を電場刺激に付した。使用した電気刺激パラメータは以下のとおりであった:周波数:5Hz、最大電圧、パルス持続時間0.3ms、60秒毎に10秒間のパルス列。化合物Aおよびその溶媒を、60分間、電気刺激なしで30分間、そして神経反応安定化のための相の間30分間インキュベートする。安定化後に5−HT累積濃度反応曲線範囲を0.01−100μMの間で取得した。5−HTは、ラット排尿筋の神経反応を濃度依存的に強化し、80mM KClで誘発されたレファランス収縮に対し、最大反応は52.7±7.3%である事が示された(図3、溶媒曲線(n=10)を参照されたい)。10μMの化合物A存在下でインキュベートした後には、80mM KClで誘発されたレファランス収縮に対し、5−HTの最大反応は18.7±3.2%を達成したに過ぎない(図3、化合物Aの曲線(n=6)を参照されたい)。10μMにおいて化合物Aは、単離されたラット膀胱の神経性収縮に及ぼす5−HTの反応に非競合的に拮抗するが、この作用は5−HTレセプターによって仲介されていると思われる(Palea, 2004)。
【0066】
実施例7:単離されたヒト膀胱の5−HTレセプターに関するアンタゴニスト機能試験
【0067】
癌腫のため根治的膀胱切除術を受けた患者から摘出したヒト排尿筋組織片を、37℃に加熱しcarbogen(95%Oおよび5%CO)で酸素を送り込んだクレブス溶液を入れた水浴中に、単離した臓器と共に取り付ける。60分間の安定化の後、80mM KClによる収縮を実施する。30分間の洗浄および安定化の後、神経性収縮を惹起するため、排尿筋組織片を電場刺激に付す。刺激パラメータは以下のとおりである:周波数:10Hz、最大電圧、パルス持続時間0.1ms、60秒毎に5秒間のパルス列。化合物Aおよびその溶媒(クレブス溶液)を、60分間、電気刺激なしで30分間、そして神経反応安定化のための相の間30分間インキュベートする。安定化後に5−HTの累積濃度反応曲線範囲を0.01−10μMの間で取得する。
【0068】
実施例8:本発明化合物の製剤
この実施例は、記載した治療用途に好適な、本発明による化合物の様々な製剤型を提供するものである。
【0069】
1.25mg(ベース)で投与されるゼラチンカプセル剤
化合物A安息香酸塩 1.875mg(1.25mgベース)
微結晶性セルロース 139.575mg
澱粉グリコール酸ナトリウム 7.5mg
ステアリン酸マグネシウム 0.75mg
コロイドシリカ 0.3mg
150mgのゼラチンカプセル剤とする。
【0070】
2.5mg(ベース)で投与されるゼラチンカプセル剤
化合物A安息香酸塩 3.75(2.5mgベース)
微結晶性セルロース 279.15mg
澱粉グリコール酸ナトリウム 15mg
ステアリン酸マグネシウム 1.5mg
コロイドシリカ 0.6mg
300mgのゼラチンカプセル剤とする。
【0071】
5mg(ベース)で投与されるゼラチンカプセル剤
化合物A安息香酸塩 7.5mg(5mgベース)
微結晶性セルロース 136.5mg
澱粉グリコール酸ナトリウム 4.5mg
ステアリン酸マグネシウム 1.5mg
150mgのゼラチンカプセル剤とする。
【0072】
ゼラチンカプセル剤を製造する方法
化合物A、微結晶性セルロース、澱粉グリコール酸ナトリウムを適当な篩で篩過する。
3つの成分を混合する。
ステアリン酸マグネシウムおよびコロイドシリカを篩過する。
混合物を滑らかにし、理論的重量となるまで自動充填機を用いてゼラチンカプセルに充填する。
【0073】
10mg(ベース)で投与されるゼラチンカプセル剤
化合物A安息香酸塩 15mg(10mgベース)
微結晶性セルロース 273mg
カルボキシメチル澱粉ナトリウム 9mg
ステアリン酸マグネシウム 3mg
300mgのゼラチンカプセル剤とする。
【0074】
10mg(ベース)で投与されるLP錠
化合物A安息香酸塩 15mg(10mgベース)
メチルヒドロキシプロピルセルロース 14mg
リン酸二カルシウム 6.2mg
微結晶性セルロースナトリウム 36.11mg
ステアリン酸マグネシウム 1.05mg
コロイドシリカ 0.14mg
72.5mgのゼラチンカプセル剤とする。
【0075】
10〜50mgおよび100〜200mgで投与されるゼラチンカプセル剤
化合物A安息香酸塩 xmg
微結晶性セルロース (94.25−x)%
澱粉グリコール酸ナトリウム 3%
メチルヒドロキシプロピルセルロース 2%
コロイド状二酸化珪素 0.25%
ステアリン酸マグネシウム 0.50%
200mg(用量10〜50mg)または400mg(用量100〜200mg)のゼラチンカプセル剤とする。
【0076】
懸濁剤
化合物A安息香酸塩 50mg
キサンタンゴム 4mg
微結晶性セルロース 40mg
カルボキシメチルセルロース 10mg
メチルパラベン 10mg
サッカロース 1.5g
精製水を加えて5mLとする。
【0077】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】希酢酸の局所灌流により誘発した膀胱刺激条件下の、麻酔した雌性ウサギにおける、化合物Aによる横紋筋性肛門括約筋の活動(A)および膀胱容量(B)の増大。
【図2】希酢酸の局所灌流により誘発した膀胱刺激条件下の、麻酔した雌性ウサギにおける、化合物Aによる膀胱容量の増大。
【図3】ラット摘出膀胱において5−HTにより誘発される神経反応の強化に対する、化合物Aによる拮抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
失禁、下部尿路機能不全に関連する排尿障害、および/または肛門および尿道−膀胱括約筋の障害を治療する医薬を製造するための、式(I):
【化1】


[式中、
Rは、水素原子または(C−C)−アルキル、ヒドロキシ−(C−C)アルキル、(C−C)−アルコキシカルボニルまたはベンジル基[これらの基は場合により置換されていてもよい]を表し、そして、
Xは、1以上の水素またはハロゲン原子、または(C−C)−アルキル、(C−C)−アルコキシ、トリフルオロメチルおよびメチレンジオキシから選ばれる基を表すか、または、Xは、フェニル環と共にナフチル基を形成する]
で示される化合物ならびに薬学的に許容され得るその塩および水和物の使用。
【請求項2】
式(I)において、RおよびXが、同時に水素原子を表さない、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
式(I)において、Xが、1以上の塩素原子を表すか、またはフェニル環と共にナフチル基を形成するか、または3個のメトキシ基を表す、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
式(I)において、Rが、Hである、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
化合物が、4−[(2−ナフタレニル)−メトキシ]−ピペリジンまたはその薬学的に許容され得る塩もしくは水和物である、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
化合物が、セロトニン再捕捉のインヒビター、より優先的にはセロトニン再捕捉の選択的インヒビターである、請求項1〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
化合物が、5−HT2Cレセプターの部分的またはそうでないアゴニスト、および/または5−HTレセプターのアンタゴニスト、および/または5−HTレセプターおよび/または5−HTレセプターおよび/または5−HTレセプターのアンタゴニストである、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
化合物が、ドーパミン作動性レセプターD、アドレナリン作動性レセプターおよびムスカリンレセプターに対して低い親和性を有する、請求項6または7に記載の使用。
【請求項9】
失禁、下部尿路機能不全に関連する排尿障害、および/または肛門および尿道−膀胱括約筋の障害を治療する医薬、セロトニン再捕捉の選択的インヒビター、5−HT2Cレセプターの部分的またはそうでないアゴニストおよび/または5−HTレセプターおよび/または5−HTレセプターおよび/または5−HTレセプターのアンタゴニストであってドーパミン作動性レセプターD、アドレナリン作動性レセプターおよびムスカリンレセプターに対して低い親和性を有する化合物を製造するための使用。
【請求項10】
尿失禁、特に腹圧性失禁、切迫性失禁、混合型失禁、溢流性失禁または機能性失禁を治療するための、請求項1〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
肛門および便失禁、特に真性便失禁、機能性便失禁(FFI)、受動的便失禁、切迫性便失禁および/または糞便漏出を治療するための、請求項1〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
頻尿、尿意促迫もしくは切迫、夜間頻尿または遺尿を治療するための、請求項1〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
化合物が、経口、バッカル、舌下、直腸内、腟内、鼻腔内、経皮、非経口、膀胱内、経尿道または全身経路で投与される、請求項1〜12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
化合物が、錠剤、トローチ、ゼラチンカプセル剤、軟カプセル剤、液剤、水性または油性懸濁液、エマルジョン、注射用溶液、坐剤、シロップ、顆粒剤、散剤、貼付剤、ゲル、クリーム、軟膏、スプレーまたはエアロゾルとして投与される、請求項1〜13のいずれかに記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−520776(P2009−520776A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546554(P2008−546554)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/FR2006/051396
【国際公開番号】WO2007/074291
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(508189201)
【氏名又は名称原語表記】UROSPHERE SAS
【Fターム(参考)】