説明

失禁監視における改善および評価

1以上の被験者の失禁を監視するシステムは、表示手段;ユーザが操作する入力手段;1以上の送信器を備える。各送信器は、1以上の監視される被験者に関連付けられている。1以上の送信器は、1以上の被験者についての失禁関連データを含む信号を送信するように構成されている。失禁関連データは、各被験者が見に付ける吸収材に関連付けられた失禁センサから時間をかけて取得される。システムはさらに、1以上の送信器から信号を受信するように構成された受信器ユニット;少なくとも1つの受信器ユニットと接続された処理手段を備える。処理手段は、受信した信号を処理して表示情報を表示手段へ送信し、1以上の監視される被験者が身に付けている吸収材内の失禁センサから得られた失禁関連情報の視覚表現を表示させるように構成された表示プロセッサを備える。システムは、容積推定器と、例えば推定した湿潤容積とパッドタイプに基づきケア作業者へ湿潤漏れリスクを送信する手段を備える。パッドタイプは、パッドおよび/、あたはパッド/センサの組み合わせに関連付けられたパッドタイプ指標によってシステムに自動送信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、失禁症状を有する被験者を監視する際に用いるシステムに関する。特に、吸収性物品に対応付けられたセンサを用い、センサ信号を処理して失禁に関する情報を視覚化および分析し、失禁患者が身に着けている吸収材の湿気を検出することにより失禁を監視するシステム、方法、およびデバイスに関するが、これのみに限られるものではない。
【背景技術】
【0002】
失禁は、自然排出物を膀胱および/または腸から放出することを制御できない状態である。尿失禁は、膀胱を制御できないことに関連しており、無意識または意図せずに排尿することになる。失禁のうちいくつかの形態、特に尿/膀胱失禁は、比較的広範囲において見られるものの、この状態は通常、高齢者や虚弱者に影響を及ぼし、女性の間でより多く見られる。
【0003】
排泄欲求を予測できないか、または補助なしに排泄行為をできない失禁患者にとっては、監視のない状態におかれると不快に感じ、困惑する場合もある。深刻な場合には、失禁をチェックしないままにしておくと、体液内のバクテリアから引き起こされる感染につながる可能性もある。
【0004】
比較的広範囲に見られるとはいえ、失禁は慎重に取り扱うことが求められる。従来、規制と規則にしたがって、病院、老人ホーム、介護施設、高齢者施設などの養護施設における失禁患者が適切にケアを受けることができるようにするため、スタッフは手作業でこれら患者を定期的にチェックする必要があった。手作業チェックに係る不快感は別にして、このような手法はスタッフリソースにとって重圧となる。失禁の手作業チェックは、患者の休息や睡眠を妨げる可能性もある。
【0005】
失禁指標および検出システムが存在する。しかしこれらは、ケア作業者が手作業で繰り返し患者の失禁をチェックしなければならない現在の状況をわずかに改善したに過ぎない。現在の失禁検出システムは一般に、尿失禁イベントを糞便失禁イベントと区別することができない。現在のシステムはまた、どのような湿気が検出されても、湿気の程度を示すことなくケア作業者にアラートを発する点において不備がある。これは、時間浪費につながる可能性がある。患者が実際にはケア作業者を呼ぶ必要がなかったとしても、ごく少量の尿または汗がアラートを引き起こすからである。これは患者にとっても邪魔になる。
【0006】
失禁監視システムのなかには、複雑な回路を備え、高価で操作が難しいものがある。ほとんどのおむつとパッドは、使い易さと衛生面のため使い捨てになっているので、複雑なセンサシステムは受け入れられておらず、使用されていない。他のシステムは使いにくく、センサはおむつまたはパッドの吸収材収容能力を阻害する可能性がある。他のシステムはまた、一般に現在のケア作業と互換性がなく、追加作業を必要とし、ケア作業を複雑にするかまたは変更する必要がある。そのため、システムが提供する利益を損なわせ、広範に受け入れて使用することを困難にしている。
【0007】
本発明は、これらシステムを改善し、または少なくとも失禁を監視および管理する有効な代替物を提供することを目的とする。
【0008】
文献、活動、題材、デバイス、記事などへの参照を含む本明細書における背景技術は、本発明の前提を説明することを意図している。これは、参照する題材が、特許請求の範囲の優先日における本特許分野において、公開され、公知となり、または公知技術の一部となっていることを認容または示唆するものであると解釈してはならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
1側面から見ると、本発明は1以上の被験者の失禁を監視するためのシステムを提供する。システムは、表示手段;ユーザが操作できる入力手段;1以上の送信器であって、それぞれが1以上の監視される被験者に関連付けられており、前記1以上の被験者についての失禁関連データを含む信号を送信するように構成されており、前記失禁関連データは各前記被験者が身に付けている吸収材に関連付けられた失禁センサから時間をかけて取得される、送信器;前記1以上の送信器から信号を受信するように構成された受信器ユニット;少なくとも前記受信器ユニットと接続された処理手段であって、前記受信した信号を処理して表示情報を前記表示手段へ送信して前記監視される1以上の被験者が身に付けている前記吸収材内の失禁センサから取得した失禁関連情報の視覚表現を表示させるように構成された表示プロセッサを備える、処理手段;を備える。
【0010】
前記処理手段は、単一の処理デバイス内において提供され、または複数の分散したもしくは接続された処理ユニットによって提供され、またはシステムの全体機能を提供する複数の処理機能をそれぞれ実施する処理要素によって提供される。したがって、本明細書の記載により明らかであるが、処理手段の様々な機能をシステムの様々な要素によって提供することができる。実施形態によっては、これには失禁センサに関連付けられた処理要素および/またはシステムの送信器もしくは受信器内に含まれる処理要素、またはシステムを採用した特定サイト内の中央モニタの一部として提供される処理要素が含まれる。さらにはワイドエリアネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネットその他の当該分野において公知なネットワークを介して他の処理要素と有線または無線によって接続された上述した要素の1以上と接続されたものが含まれる。
【0011】
前記処理手段は、前記失禁関連データを規定の数学モデルに適用して前記吸収材内の湿潤容積を推定するように構成された容積推定器を備えることが望ましい。容積推定器は、監視する吸収材内の個々の湿潤イベントの離散容積を推定することができる。離散容積の推定結果は、ミリリットルで実容積として定量化することができる。これに代えて容積推定結果は、個々の湿潤イベントが少量、中量、大量の容積として識別されるように分類することができる。これに代えて/加えて容積推定器は、個々のイベント内の湿潤の識別子を、尿、糞便、これらの組み合わせとして提供することができる。
【0012】
これに代えて/追加して、容積推定器は吸収材内の蓄積湿潤容積を推定することができる。蓄積容積は、ミリリットルで定量化することができる。またはこれに代えて/追加して、蓄積湿潤容積の推定結果は、湿り、濡れ、ずぶ濡れなどのように分類することができる。これに代えて/追加して、蓄積湿潤容積の推定結果は、ユーザに通知する指標を提供することができる。この指標は、パッド内の蓄積湿潤容積が最小閾値未満、最小閾値と最大閾値の間、または最大閾値超であるタイミングを示す。
【0013】
送信器は、システムが実装される実モデルに応じて、低電力デバイスまたは大電力デバイスまたはこれらの組み合わせのいずれかとなる。大電力送信器は、受信器経由で遠隔の処理手段へデータを直接送信(例:無線LANまたはWANを介して)することができる。これに代えて、低電力送信器は近傍の別送信デバイスへ送信することもできる。別送信デバイスは、リピータ経由で処理手段へ信号を送信する、大電力デバイスおよび/またはリピータ(またはリピータ群)である。
【0014】
処理手段は、被験者が身に付けている吸収材内のパッドタイプ指標を自動受信するように構成されていることが望ましい。さらに、パッドタイプ指標と失禁関連データに基づき吸収材からの湿潤漏れリスクを計算する。湿潤漏れリスク計算は、動的であり、かつ時間をかけて(望ましくはリアルタイムで)被験者から取得した失禁関連データに基づいていることが望ましい。望ましい実施形態において、表示手段は監視する被験者が身に付けている給材内の湿潤漏れリスク指標を提供する。
【0015】
パッドタイプ指標は、吸収材上の識別回路の特性を参照することによって判定することができる。例えば、識別回路に関連付けられた抵抗、インピーダンス、キャパシタンス、インダクタンス、共振周波数、搬送周波数、または識別回路から測定することができる電位差もしくは電流値である。1実施形態において、識別回路は吸収材上の検出回路と並行して存在する。1実施形態において、パッドタイプは識別回路内の抵抗値を参照することによって判定される。特定のパッドタイプが特定の抵抗値に割り当てられている。パッドタイプは例えば、システムとともに使用する吸収材の容積性能、または吸収材のモデル番号に関連する。1実施形態において、処理手段はルックアップテーブルを参照し、識別回路上の抵抗値(またはその他の特性)からパッドタイプを確定する。これは特に、パッドがセンサとともに製造工程に統合されて製造される場合において有用である。しかしセンサは、製造後にパッドに取り付けることもできる。この場合センサは、パッドタイプ識別子に基づきパッドに取り付けられる。
【0016】
1実施形態において処理手段は、センサまたはセンサに関連付けられた吸収材が新たにシステムに接続され、または再接続されたかを示すセンサ状態指標を自動受信するように構成されている。センサ状態指標は、新たなセンサ(および新たなパッド)が送信器に接続された時点を指定するために用いることができる。すなわち、被験者がパッド交換するときである。これは、センサ(および関連するパッド)がシステムから切断され、またはシステムに再接続されたこととは区別することができる。すなわち、ケア作業者がセンサを送信器から切断してチェックし、被験者の吸収パッドを交換しなかったときである。
【0017】
センサ状態は、吸収材上のセンサ状態回路の特性を参照することによって判定することが望ましい。センサ状態回路は、識別回路と組み合わせ、または切り離して提供することができる。特性は、センサ状態回路に組み込まれた1以上の素子を参照することによって判定される。素子は、誘導コイル、読取専用メモリとプログラム可能メモリを含むメモリデバイスなどを採用した部品のような、キャパシタ、消耗部品、非接触デバイス、を含むグループから選択することができる。ヒューズのような消耗部品を採用した場合、センサ状態回路は、センサが新たな(未使用)吸収材に関連付けられたことを示すために再使用することができない。これは、センサが最初に使用されたとき(すなわち接続される送信器内のタイプの電力源に接続された)部品が消耗するように設計されているからである。ヒューズが最初に閉じたとき(すなわち損傷していない)、センサ状態は新たに接続されたものとみなされる。センサが使用されたとき(すなわち電力源を有する送信器に接続された)、ヒューズは消耗し、開回路が形成される。これはセンサが使用された(すなわち以前にシステムへ接続された)ことを示す。
【0018】
望ましい実施形態において、センサ状態回路はキャパシタを備える。キャパシタが充電されていない場合、センサ状態は新たに接続された(未使用)ものと判定される。キャパシタが充電されたとき、これは回路がその前に電力源に接続されたことを示す。すなわちセンサが既に使用されたことを示す。1実施形態において、キャパシタサイズ(すなわちファラド)を用いてセンサタイプまたはパッドタイプを指定することができる。センサがセンサを含まないパッドに改造された場合、センサタイプとパッドタイプを区別することができる。センサは異なる機能を有する別タイプであってもよい。この機能には、湿潤またはその代替物を検出する機能に加えて、温度、pH、臭気、生物学的検体、などの1以上を検出することが含まれる。システムは、例えばセンサが最初にシステムに接続されたときのキャパシタ充電時間を識別することにより、キャパシタの定格を判定することができる。
【0019】
ヒューズなどの消耗部品は、使い捨てセンサともにおいてのみ使用することができる。新たな接続状態(未使用)を指定するために1回以上用いることができないからである。その他デバイス、例えばキャパシタは、放電によって再設定することができる。放電は、動的にまたは時間をかけてキャパシタ内の蓄積電荷を放電させることによって実現される。
【0020】
視覚表現は、監視している被験者の吸収材内の1以上の推定失禁容積をタイムスケール上で図式的に示すことが望ましい。さらには、同じタイムスケール上で、監視している被験者固有の1以上の非湿潤イベントの発生を示すことが望ましい。1以上の送信器は、非湿潤イベントデータが必要な時点を識別するデータを処理手段へ送信するように構成されていることが望ましい。処理手段は、入力手段を用いて被験者についての必要な非湿潤イベントデータを入力するようユーザに対して促す、視覚および/または聴覚および/または触覚リマインダーを例えばハンドヘルドデバイスに提供させるように構成されていることが望ましい。非湿潤イベントデータは、例えば送信器をセンサから意図せず切断すること、被験者の手動排泄、新たな吸収材がセンサに関連付けられたこと(これはセンサ状態指標を用いて自動通知されない)、ケア作業者が被験者をケアしたこと、被験者が体位を変えたこと、送信器上のアクチュエータが動作したこと(例:ボタン押下)、データ送信またはセンサ接続状態の変化、被験者が落下したこと、特定の順序でセンサまたは送信イベントが発生したこと、などに関連する。
【0021】
入力手段は、非湿潤イベントデータを手動入力することを促す。これは以下の1以上によってなされる。表示手段上に提示されるアイテムのメニューリスト;送信器上の1以上のアクチュエータ;カードその他の参照ガイドからの光学的、電子的、その他のスキャンコード;コードの手動入力。ハンドヘルドデバイスはこれらをオプションで実施する。
【0022】
処理手段は、ケア作業者が監視する被験者をケアするように、ケア作業者に提示する警告を自動生成するように構成することができる。警告は、以下の1以上によって生じうる。処理手段が計算した湿潤漏れリスク;センサと送信器が切断された;送信が途絶えた;関連する送信器内で低電力が継続した;被験者が落下した可能性がある;データ収集が途絶えた;送信器に取り付けられたセンサが検出したその他の状態;システムが捕捉した様々なデータに関連して内部的に整合しない状態。
【0023】
処理手段は、失禁関連データ内およびオプションで非湿潤イベントデータ内のパターンを、1以上の疾病指標と自動的に相関付け、疾病状態の存在を検査するガイドラインを自動提供するように構成することができる。処理手段は、任意のセンサタイプからの入力を受信するように構成することができる。これは例えば、準備期間において、被験者が身に付けている吸収材に関連付けられた特定センサタイプのセンサから失禁データを収集し;被験者に関連する非湿潤イベントデータを収集し;収集した非湿潤イベントデータとセンサデータを用いて、被験者の失禁を監視するための数学モデルを最適化することによって実現することができる。最適化したモデルは、特定センサタイプのセンサを有する吸収材を身につけている被験者の失禁を監視するために用いられる。
【0024】
1実施形態において、システムは家庭使用目的で構成され、目盛がついた排泄物容器を備える。目盛は、排泄物容器内に置かれた、汚れた吸収材の量を決定する。容器は、目盛によって量が決定されるパッドタイプを自動識別するパッドタイプ識別手段を備えることができる。パッドタイプ識別手段は、以下を1以上用いることができる。吸収材上のパッドタイプ識別回路(例えば上述したような);吸収材の表面上のバーコードをスキャンするスキャン手段;パッド上の非接触送信器からパッドタイプ信号を受信するパッドタイプ受信器;パッドが送信器から切断され、パッドが容器に廃棄される一連のイベント;パッドタイプを決定するパッドタイプ識別子の手動入力。汚れたパッドの量は、処理手段へ自動通知されることが望ましい。
【0025】
望ましい実施形態において、処理手段は、被験者の失禁を監視するためシステムが使用されている複数サイトから得られた複数サイトの失禁関連データを受信する。処理手段はしたがって、複数サイトの失禁関連データを受信するデータコンパイルプロセッサを備える。システムは、複数サイトデータを格納するデータ記憶部と、1以上のサイトをデータコンパイルプロセッサと接続する1以上のネットワーク通信要素を提供することができる。処理手段は、複数サイトから取得したデータを利用して、以下の1以上を自動実施することができる。失禁容積を推定するための数学モデルを検証する;失禁容積を推定および/または分類するための数学モデルを改善または最適化する。
【0026】
データ記憶部は、データコンパイルプロセッサからの分析データを格納することが望ましい。データコンパイルプロセッサは、以下の1以上を含む分析を実施することができる。吸収材の使用傾向を識別する;監視する被験者のケア評価を評定する;ケア作業者行動の傾向を識別する;人集団データを分析する;失禁関連データ、イベントデータ、その他の被験者集団に適用し得る状態の相関を識別する;複数の失禁製品の性能をベンチマークする;複数の失禁ケアモデルの効果をベンチマークする。ケア作業者行動の傾向を識別することには、以下の1以上を評価することが含まれる。ケア作業者効率;応答時間;ケア作業者による非湿潤イベントデータの入力効率;ケア標準への準拠度。
【0027】
データコンパイルプロセッサは、複数サイトから取得したデータを利用して、以下の少なくとも1つを評価することができる。ケア施設の特徴とケア効果;被験者の健康状態;吸収材利用および/または性能。
【0028】
システムは、以下の1以上の作業を実施するケアスタッフをトレーニングするために用いることもできる。適切な吸収材/パッドタイプを選択する;システムを用いて失禁賢者を監視および/または評価する;失禁患者をタイミングよくケアする;失禁患者の状態を評価する;被験者の失禁ケアプランを開発する;失禁ケアプランの有効性を評価する。
【0029】
他の側面から見ると、本発明は、吸収材内の湿潤を検出するためのセンサを提供する。センサは、吸収材に関連付けられたパッドタイプとセンサ状態のいずれか一方または双方を自動識別する識別回路を備える。1実施形態において、識別回路により、特定のパッドタイプを識別することが容易になる。これは、識別回路の特性を参照することによってなされる。この特性は、例えば識別回路に関連付けられた抵抗、インピーダンス、キャパシタンス、インダクタンス、共振周波数、搬送周波数、または回路から測定できる電位差、電流、電磁場浄土である。1実施形態において、パッド上の検出回路と並行して識別回路は存在している。識別回路は、識別回路内の抵抗値を参照することにより、パッドタイプを示すことが望ましい。特定のパッドタイプが特定の抵抗値に関連付けられている。
【0030】
識別回路は、上記に代えて/追加して、センサ状態が「システムへ新たに接続された」「システムに再接続された」と判定することを容易にする。これらは、システムが以前に使用されていないこと、既に使用されたことを示す。センサ状態は、識別回路内に組み込まれた1以上の素子の特性を参照することによって判定することができる。素子は、キャパシタ、消耗部品、非接触デバイス、メモリデバイス(プログラム可能またはプログラム不可)を含むグループから選択することができる。識別回路は、キャパシタを備えることが望ましい。キャパシタが充電されていないとき、センサ状態は新たに接続されたと判定される。1実施形態において、キャパシタ値を用いてセンサタイプおよび/またはパッドタイプを指定することができる。これに代えて識別回路は、ヒューズを備えることができる。ヒューズが損傷していないとき、または閉じているとき、センサ状態は新たに接続されたと判定される。ヒューズが焼け切れたとき、または開いているとき、センサ状態は再接続されたと判定される。これはセンサがシステム内の電力源(例:送信器)に接続された結果である。これは、目視検査または識別回路内の開回路を検出することによって確認することができる。
【0031】
さらに別の側面から見ると、本発明は、送信器に接続された湿潤センサを含む吸収材を身に付けた被験者の失禁を監視する方法を提供する。同方法は、送信器から処理手段へ失禁関連データを送信するステップ;吸収材内の湿潤容積を推定するステップ;処理手段が表示情報を表示手段へ送信して推定した湿潤容積の視覚表現を時間軸上で表示させるステップ;を有する。
【0032】
上記方法は、入力手段を操作して処理手段へ時間マークされた非湿潤イベントデータを提供し、処理手段が視覚表現上で監視する被験者の1以上の非湿潤イベントの時間位置を表示するようにするステップを有する。さらに上記方法は、吸収材のパッドタイプ指標を受信し、吸収材内の湿潤容積の推定結果と吸収材のパッドタイプに基づき吸収材からの湿潤漏れリスクを計算するステップを有する。表示手段上の視覚表現は、湿潤漏れリスクの指標を提供することができる。
【0033】
上記方法は、湿潤漏れリスクが規定の許容リスクをいつ超過するか、および/または吸収材内の湿潤容積の推定結果が規定閾値を超過するかを自動判定し、監視する被験者のケア作業者へ警告を自動送信するステップを有する。
【0034】
上記方法は、失禁関連データを分析プロセッサへ送信するステップを有することが望ましい。分析プロセッサは、複数際とから失禁関連データを受信し、複数サイトデータを、照合、パッケージング、抽出、相関付け、統合、および/または分析して、以下を含む要素が使用できるようにする。この要素は、病院、ケア設備、吸収材の製造者、行政機関、保険業者、研究者、個人を含む。
【0035】
本発明の実施形態を、添付する図面とともに詳細に説明する。これらは非限定的な例として提供するものである。添付する図面の特定部分が本発明の先行記載部分の汎用的特徴に優先するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】施設で用いることを意図した、本発明の1実施形態に係るシステムの概略図である。
【図2】本発明の1実施形態に基づく、排尿量、パッド湿潤、湿気漏れリスクを含む失禁に関する情報の視覚表現を提供するディスプレイの1例である。
【図3】吸収材の層間における本発明のセンサの概略図である。
【図4】家庭で用いることを意図した、本発明の1実施形態に係るシステムの概略図である。
【図5】複数の場所からの失禁に関するデータを、例えば解析および報告のため第2プロセッサに送信する、本発明の1実施形態の概略図である。
【図6a】本発明の1実施形態に係る失禁監視方法におけるステップを示すフロー図である。
【図6b】本発明の1実施形態に係る失禁監視方法におけるステップを示すフロー図である。
【図7】パッドタイプとセンサ状態を認識するために用いる、本発明の1実施形態に係るセンサデバイス上で提供される電子回路の概略図である。
【図8】センサがその監視動作中に取り付けられる監視デバイス内または送信器内で提供される電子回路の概略図である。
【図9】図8に示す監視デバイスから取得される信号データの概略図である。
【図10】本発明の1実施形態に係るシステムが配置されるネットワークアーキテクチャを示す概略図である。
【図11】本発明の他実施形態に係るシステムが配置されるネットワークアーキテクチャを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
ほとんどのケア施設においては、失禁患者を監視する技術は最小限しか用いられていない。むしろ失禁患者(一般に「被験者」と呼ぶ)は通常、手作業による失禁チェックを含む従来の手法を用いてケアされている。この手法は、背景技術で述べたように多くの不都合がある。
【0038】
適切でコスト効果の高いケアを運営することは、多様な失禁製品が市場で入手できることにより、複雑になっている。パッドまたは失禁衣類の複数のブランドは、それぞれ異なる利点と吸収特性を提供することを主張している。ケア施設(または個人)にとって、正しいタイプのパッド/おむつ/挿入物その他の失禁衣類を特定の被験者のために選択することは、ますます困難になっている。施設利用のための失禁衣類を購入することは、製造者の主張と販売員、さらには物品のコストによって明らかにある程度影響を受ける。しかし、これらを身に着ける者、およびパッドがどのように用いられるかという観点の失禁行為に対する考慮はほとんどなされていない。
【0039】
パッド選択を補助するため、製造者はパッドの吸収性能を提示することがある。吸収性能に対する一貫したアプローチを保証するため、国際規格ISO11948−1(ロスウェルメソッド)が発行された。これは、パッドの吸収性能を判定するための標準を定義する研究室手法である。パッド性能の指標としての「パッド容量」による補助がある一方で、脚部弾性、ウエスト弾性、すそ折り返し、超吸収材使用のような、パッド性能に影響する設計特性も存在する。しかしこれらはロスウェルメソッドにおいては考慮されておらず、したがって購入決定の際にも客観的に考慮されていない。
【0040】
個人にとってのパッド選択は通常、以下の組み合わせによって決定される。すなわち、尿失禁の程度(すなわち、個々の失禁の量と頻度)、最もフィットするパッドサイズとデザイン、パッドを交換する難易度である。しかし、失禁レベルを信頼性高く検出し、その行為に実質的にマッチしたパッド選択を促進できるような態様で、被験者の失禁行為を監視することは、長きにわたって困難な課題であった。本発明の1側面は、パッド選択のための意思決定プロセスを補助し、パッドを交換すべき時期の確率的な指標を判定することができるシステムに関するものである。
【0041】
したがって、1側面において、本発明のシステムは、様々な失禁状態を患っている被験者をケアする際に用いるための意思決定ツールを提供する。このツールは、パッドを被験者へ取り付ける際に、ケア作業者を補助することができる。これは、必要なパッドサイズおよびパッドタイプ(例えば容積)を含む。これはケア施設において、対象者の吸収パッドを調達し、供給管理する際に、広範に用いることができる。さらにこのツールは、システムを用いて失禁状態と行動を評価する被験者について最適化した排泄スケジュールを提供することにより、ケア作業者を補助することができる。
【0042】
「備える」「有する」などの用語を本明細書(特許請求の範囲を含む)において用いる場合は、言及した特徴、数値、ステップ、または構成要素が存在することを特定するものであり、1以上のそれら特徴、数値、ステップ、または構成要素あるいはこれらのグループが存在することを排除するものと解釈してはならない。
【0043】
「パッド」または「吸収材」という用語は、本明細書(特許請求の範囲を含む)において用いる場合、被験者が身に着けることができる全ての吸収パッドもしくは吸収材または吸収衣類を指し、おむつ、挿入物、失禁パンツなどを含むものであると解釈されたい。
【0044】
図1は、1以上の被験者106の失禁を監視するためのシステム100の実施形態を示す。システムは、プロセッサ102が制御するディスプレイ103を備える。ディスプレイ103は、被験者106が身に着けている吸収材300において発生する湿潤イベントを監視することにより得られる、失禁に関する情報の視覚表現(図2)を提供する。ディスプレイ103は、例えばケア施設内のナースステーションのような監視ステーションにおいて提供することができる。監視している被験者の健康状態に責任を持つケア作業者は、ディスプレイ103を用いて視覚表現を見ることにより、アラートを受信し、または被験者の失禁状態をチェックする。ディスプレイはまた、特定被験者の失禁状態をチェックするための視覚上のリマインダーを、ケア作業者へ提供することができる。スピーカーは音声キューを提供し、振動素子は触覚通知を提供することができる。ほとんどの施設においては、ケア作業者は1以上の被験者に対して責任があり、場合によっては6名の被験者に対して責任を持つ。ケア作業者は、単一のディスプレイデバイスを用いて、メニューやリスト等から関心のある被験者を選択することにより、これら各被験者の失禁状態を見ることができる。
【0045】
図2に示すように、ディスプレイ103は通常、LCD、LED、その他の、一般的にコンピュータモニタとして用いられているスクリーンである。ただしその他のディスプレイデバイスを用いてもよい。1実施形態において、複数のディスプレイデバイスがプロセッサ102に接続される。プロセッサ102は、システムの処理手段の一部を形成する。1実施形態において、各ケア作業者は無線ハンドヘルドユニット108を所持する。無線ハンドヘルドユニット108は、当該ケア作業者が責任を有する1以上の被験者の失禁状態の視覚表現を提供できるディスプレイ(すなわちスクリーン)103を備える。この実施形態において、プロセッサ102は、表示すべき視覚表現についての信号をハンドヘルドデバイス108へ無線送信する。
【0046】
1実施形態において、受信および処理素子が、入力部品とともにハンドヘルドデバイス108内に配置されている。入力部品により、ケア作業者はデバイスを動作させ、実施形態によってはシステムにデータを入力することができる。イベントデータは、以下に説明するように中央入力手段104を用いてシステムへ提供される場合もあるが、入力データは非湿潤イベントデータを含む場合がある。ハンドヘルドデバイス108は、システムとともに動作するためにカスタマイズすることもできる。これに代えて、デバイスが本発明に係るシステムの一部として動作できるようにする1以上のアプリケーションがインストールされた、携帯情報端末(PDA)または同様のスマートモバイルデバイスを用いてもよい。ハンドヘルドデバイス108は、視覚および/または聴覚および/または触角(例えば振動)キューまたはアラート信号を提供して、当該ケア作業者が監視している被験者が介助(例えばパッド交換、排泄介助、排泄付き添いなど)を必要としていることを示唆するように構成されている。
【0047】
システムはまた、入力手段104を提供する。入力手段104は、キーボード、マウス、バーコードスキャナ、無線デバイスリーダ、タッチスクリーン、スタイラスなどを1以上備えることができる。これによりシステムのユーザは、1以上の被験者の失禁を監視または評価する際に用いる情報を入力することができる。施設において、ユーザは通常、システムを用いて監視する入居者(被験者)についての情報を入力する責任がある、ケア作業者またはスタッフである。システムを最初に用いて被験者の監視を開始するとき、入力手段104を用いて入力された情報は一般に、監視する各被験者の氏名とベッド/部屋の位置を含む。被験者の年齢、性別、受診暦、家族の受診暦などのような人的データも、入力されるかまたはシステムが通信および/または協調動作する既存の電子被験者レコードから自動取得される。
【0048】
入力手段104は、ケア作業者その他のスタッフにより、非湿潤イベントデータを入力するために用いることができる。非湿潤イベントデータは、処理手段が用いる数学モデルをシステムが最適化するため、および排泄スケジュールを準備するために用いる監視データを含む。施設ではない場所(例えば在宅)において、被験者自身が入力手段104への入力を提供することもできる。これに代えて、システムを在宅使用向けに配置した場合、「ケア作業者」の役割を果たし、入力手段104を用いて非湿潤イベントデータを提供する家族が必要になるであろう。
【0049】
1実施形態において、各被験者は送信器Tnを割り当てられる。送信器Tnは、入力手段104とプロセッサ102を用いて、システム内で被験者106nに対応付けられる。送信器Tnは、無線送信器/受信器、プロセッサ、メモリを備え、パッドの最上層の下部(一般的には「乾燥」層)において吸収材に組み込まれまたは取り付け可能なセンサと結びついている。送信器とセンサの間の結び付けは、電気コンタクトを介してなされ、または例えば誘導結合などを用いて非接触とすることができる。
【0050】
プロセッサ102は、1以上の送信器Tnから信号を受信する。各送信器Tnは、システムが監視する被験者106nと対応付けられている。各送信器Tnは、被験者が身につけている吸収材300(図3)に対応付けられた失禁センサ200から継続的に取得される、被験者106nの失禁に関連するデータを含む信号を送信するように構成されている。各送信器は、データを継続的に送信するように構成し、またはセンサからの時刻マークした失禁関連データを保存してプロセッサへ周期的に転送するように構成することができる。
【0051】
プロセッサ102は、受信器112と接続されている。受信器112は、送信器Tnから直接またはリピータR1とR2を介して間接に、信号を受信する。図1に示すように、プロセッサ102は、2つの離れた病棟、病棟1と病棟2内の居住者を監視するケア施設内に配置されている。施設の各病棟または領域は、個々の被験者106に対応付けられた送信器Tnからプロセッサ102へ信号を中継している間の適切な信号強度を保証するため、個々のリピータに適合されている。図示する例において、病棟1はリピータR1を利用し、病棟2はリピータR2を利用して、受信器112への適切な信号強度を保証する。この配置において、送信器Tnは、バッテリ交換または再充電をするためにアクセスする頻度が少ない、低パワー送信器でもよい。
【0052】
プロセッサ102の機能は、例えば病棟などのなかにおける中央ステーションに配置された単一の処理要素内に含めてもよいことを理解されたい。これに代えてプロセッサ102は、一般に携帯情報端末(PDA)その他のハンドヘルドデバイスまたはモバイルコンピュータデバイス内で採用されているモバイルプロセッサデバイスの形態でもよい。さらにこれに代えて、プロセッサ102の機能は、プロセッサ102の中央部と有線または無線接続された、中央および遠隔デバイスの組み合わせにまたがって分散配置してもよい。望ましい実施形態においては、プロセッサ102はWAN(広域ネットワーク)120と接続されている。失禁関連データとイベントデータは、WAN120を介して、データコンパイルプロセッサなどの他デバイスへ送信される。
【0053】
無線通信は例えば、システムが用いられる施設に固有のインフラを有する、ボケベルネットワーク、Wi−Fiネットワーク、またはZigBeeネットワークなどのLAN110をまたがって実装することができる。この配置において、モバイルデバイスまたはハンドヘルドデバイスは、本発明に係るシステムとともに動作するようにカスタマイズすることができる。他の実施形態において、LAN110を用いることに代えて、公衆携帯電話通信網を用いて、プロセッサ102からケア作業者が保持するハンドヘルドユニット108へ信号を送信することもできる。この配置において、ハンドヘルドユニットは一般に販売されている携帯電話でもよい。本発明に係るシステムとともに用いて、被験者データおよびその他の非湿潤イベントデータを入力することができるようにするアプリケーションがインストールされ、被験者の失禁関連情報などの視覚表現を表示する、スマートフォンまたは同様のデバイスを用いることもできる。様々な通信プロトコルを用いて、ケア作業者が使用するハンドヘルドデバイスへ信号を送信することができる。システムが配置される様々なアーキテクチャの例は、以下に説明する。
【0054】
容積推定器は、被験者に対応付けられたセンサからの失禁データとともに、実観察(すなわち、例えば汚れたパッドを交換後に測量することによって判定した実際の湿気量に関連する非湿潤イベントデータ)とこれまで取得したセンサデータとの間の相関から導出した数学モデルを用いて、吸収材内の湿気容積を推定する。容積推定器は、監視している吸収材内で検出された個々の湿潤イベントの容積を推定することができる。個々の容積の推定結果は、実容積としてミリリットルで定量化することができる。これに代えて、個々の湿潤イベントが小中大の容積で識別できるように、推定容積を分類することもできる。さらにこれに代えて/追加して、様々なイベントにおける湿潤が、尿失禁、糞便失禁、またはこれらの混合のいずれであるかを識別できるように、分類を提供することもできる。理想的には、ケア提供者が理解できる用語を用い、特定の状態に応じて居住者に対して適切なアクションを決定するのに役立つ分類により、状態を識別できるようにすることが望ましい。
【0055】
これに代えて/追加して、容積推定器は、吸収材内の累積湿潤容積を推定することができる。累積容積は、ミリリットルで定量化することができる。これに代えて/追加して、累積湿潤容積の推定結果は、湿っている、濡れている、またはびしょ濡れであるといったような分類を、飽和指標または累積容積として提供することができる。これに代えてまたは追加して、累積湿潤容積の推定結果は、パッド内の累積湿潤容積が最小閾値を下回っている時期、最小閾値と最大閾値の間にある時期、または最大閾値以上である時期についての示唆をユーザへ提供することができる。容積推定指標、分類などは、ディスプレイ103上でユーザへ提示することができる。
【0056】
容積推定は、パッドをいつ交換する必要があるか、または交換を必要としそうになっているかについて、ケア作業者をガイドすることができる利点がある。これにより、ケアしている被験者の快適さと安全を改善することに役立つ。パッド内の累積湿潤容積を推定することにより、パッドを将来特定の者に割り当てることを補助することができる。大容積パッドは累積湿潤容積が「小」に分類される被験者にとって必要でなく、より小容積のパッドに変更することによりコストを削減できるからである。反対に、被験者の湿潤漏れリスクおよび/または累積容積が高いかまたは許容閾値を超えている場合、その被験者はより頻繁にパッド交換し、および/または以後はより大容積のパッドを割り当てるべきであると識別することができる。
【0057】
1実施形態において、個々の失禁容積は、個々の失禁間の吸収材内の累積湿潤容積間の差異を判定することにより計算することができる。この手法は、国際特許公報WO2007/128038号に記載されており、その全体は参照によって本明細書に組み込まれる。これに代えて、個々の湿潤イベントの容積は、これら容積を判定できる所定の数学モデルへセンサデータを適用することにより判定することができる。この場合、次第に増加するパッド内の累積湿潤容積を監視しないことが望ましい。容積推定器は、中央監視ステーションに配置されたプロセッサ、または個々の送信器Tn上のプロセッサ、あるいはシステム内の処理機能を提供する他のプロセッサに組み込むことができる。
【0058】
湿潤容積の推定結果は、ディスプレイ手段103上で提供される視覚表現上で図式的に示される。システムは、推定した累積湿潤容積が容積閾値VTHを超過したとき、および/またはプロセッサ102が計算したパッドからの湿潤漏れリスクが規定閾値P(例えば80%)を超過したとき、当該被験者について責任を持つケア作業者へ、アラートを自動送信するように構成することができる。図2は、本発明の実施形態に基づく、視覚表現の概略例である。本例は、センサ200が湿潤イベントの数を検出した後にプロセッサ102が推定した失禁容積を、図式的に示すチャートの形態として提示されている。センサが検出した個々の失禁の発生は円で示され、円領域は容積推定器が判定した推定失禁容積に比例している。例えば3つの円サイズを使用することができる。小(S)円は例えば100mL未満の失禁を指定する。中(M)円は例えば100mL〜200mLの失禁を指定する。大(L)円は200mL超の失禁を指定する。1実施形態において、赤円はセンサ200が判定した吸収材内の失禁を示す。緑円は、観察した排泄イベント(これは手動入力される非湿潤イベント観察データである)であって、その実際の容積がケア作業者(または被験者)により推定または実測され、入力手段104を用いてシステムに入力されたものを示す。
【0059】
ディスプレイ103は、フィルライン354までコンテナを満たす液体352を収容するコンテナ350の視覚表現を示す。コンテナの充填レベルは、被験者のパッドの飽和度を示し、パッドがどの程度充填されているかの視覚的指標をケア作業者に提供する。コンテナは、パッドが飽和するレベル506を示す。このレベルは、例えばパッドの吸収材性能またはパッドを好感するケア作業が必要となる容積閾値を示すことができる。これに代えて視覚表現は、容積閾値VTHを示すことができる。容積閾値VTHは、プロセッサ102が推定したパッド内の累積容積がこれに合致しまたは接近すると、ケア作業者へ送信する、被験者の元へ行ってパッドをチェック/交換すべき旨のアラートを生じさせるものである。ディスプレイ103は、プロセッサ102が計算したリスクに応じて動く針502を有するゲージ500の形態で、「湿潤漏れリスク指標」の例を示す。望ましい実施形態において、ゲージまたはその一部は、漏れリスクを確認する際にケア作業者を補助するため、色付けされている。したがって、パッドからの漏れリスクが低い場合はゲージは緑に色付けまたは整形され、漏れリスクが高いかまたは深刻である場合はゲージは赤に色付けまたは整形される。これに代えて、図示するように文字情報を用いることもできる。
【0060】
システムとともに用いる各パッドは、プロセッサが湿潤漏れリスクを計算するために用いる、既知の「タイプ」を有する。パッドタイプは通常、例えばロスウェルメソッドを用いて定義される、パッドのサイズ(すなわち吸収材性能)を示す。特定パッドについてのパッドタイプ指標を、例えばケア作業者が入力手段104を用いてパッドブランドとサイズ(例えば小中大)を入力することにより、プロセッサ102へ手動提供することができる。これに代えてプロセッサ102は、メモリ107内のルックアップテーブルその他の参照ファイルを用いて、使用するパッドの吸収材性能を確認することができる。しかし望ましい実施形態において、パッドタイプはプロセッサ102へ自動的に通知することもできる。
【0061】
図3は、本発明に係るシステムとともに用いられる吸収材200の層300a、bの間に配置されるセンサ200の実施形態の概略図である。図示する実施形態において、センサは、ポリエステル基板204にプリントされた一連の銀検出電極202を備える抵抗センサである。センサ200は、システムを用いて監視する被験者が身に着ける吸収材の最上(「乾燥」)層と吸収層300a、bの間に挿入される。センサ200は、梱包され流通する前に、吸収材の製造プロセスの一部として、これら層間に挿入されることが望ましい。しかしセンサは、これに代えて、製造後に吸収材に合わせることもできる。センサ200を吸収材300に設置する作業は、挿入ツールを用いるか、または基板204の接着背面をはがすか、あるいは自動挿入装置を用いて、製造後に手作業で実施することができる。コネクタ208は、センサを送信器Tに取り付けるため、パッド300から突出している。コネクタ208は、検出電極202と接続してセンサ信号をプロセッサ102へ送信し、または送信器T内で処理するための内部回路を有する。センサ200と送信器Tの間の非接触結合を採用することも可能である。
【0062】
図2に示すセンサ200は、電極202間の抵抗変化を監視し、吸収材300内の湿潤の存在を認識する。吸収材が実質的に乾燥しているとき、センサ内の電極間の抵抗は最大となる。湿潤イベントが発生すると、パッド内の体液からの湿気が電極間の導電回路を形成し、回路の抵抗は減少する。抵抗の変化量とその変化の速度および時間は、センサと接続した送信器Tにより検出することができる。送信器Tは、失禁関連データ信号をプロセッサ102へ送信する。しかしセンサは、その他の指標を用いて失禁関連データ信号を生成することもできる。これらは、例えば温度変化、キャパシタンス変化、インダクタンス変化、インピーダンス変化、生物的物質の存在の変化、ガスの変化、などを含むことができる。
【0063】
望ましい実施形態において、失禁センサ200は特定パッドタイプとともに用いるように設計されており、プロセッサ102がそのパッドタイプを自動的に認識するための識別回路206を備える。図示する実施形態において、識別回路206は検出電極202と並列に配置され、パッドタイプ指標と相関した特性値(例えば抵抗)を有する。
【0064】
識別回路206の特性値は、例えばプロセッサ102に対応付けられたメモリ107内に格納されたルックアップテーブルその他の参照内で参照することができ、これによりそのパッドタイプの吸収材性能を確認することができる。これに代えて特性値は、製造者が参酌する国内標準、国際標準、または産業標準内で参照することもできる。したがって、特定の吸収材性能(例えばロスウェルメソッドを用いて定義された)を有する任意のパッド製造者は、その識別回路内に組み込まれた抵抗値が指定されていると仮定することができる。手動挿入するセンサについては、センサ200はパッドのタイプ(すなわち吸収材性能)に応じて選択される。
【0065】
図2に示す識別回路206は指定されたパッドタイプの所定抵抗値を有するが、その他の回路特性を採用してパッドタイプを指定できることを理解されたい。これらは例えば、回路から測定できるインピーダンス、キャパシタンス、インダクタンス、失禁センサ内の識別回路に対応付けられた共振周波数またはキャリア周波数、および/または電位差、電流強度または電磁界強度を含む。
【0066】
望ましい他実施形態において、失禁センサ200は、パッドが新たにシステムへ接続されたとき自動識別するためのセンサ状態識別器を備える。これは、既にシステムとともに使用され/接続されているパッドが再接続されたときと区別するものである。これによりパッド交換をいつ実施したかを示すデータをケアスタッフが手動入力することに関連する問題を解決することができる。ケア作業者は非常に忙しく、データ入力の適合レベルは低い可能性がある。したがってケアスタッフは、以下の傾向がある。(a)被験者に取り付けた新しいパッドを示す入力をシステムへ提供することを忘れる。(b)「実施後に」このデータを入力するとき、新しいパッドを取り付けた時刻を誤って入力する。この種のエラーのあるまたは省略されたデータは、システムから得られる排泄スケジュールの精度が低下すること、システムが提供する膀胱記録のエラー、容積推定器が提供する容積推定結果のエラー(新しいパッドを被験者に取り付けると累積容積がゼロにリセットされるため)、およびデータがシステムによって用いられる数学モデルの最適化に用いられた際の最適化エラーにつながり得る。センサ状態指標のさらなる利点は、意図せずまたは断続的にセンサがシステム(例えば送信器)から切断されても、誤った「パッド交換」データをシステムが収集しないことである。
【0067】
1実施形態において、センサ状態は、センサに接続されたセンサ状態回路の特性を参照することにより判定される。この特性は、センサ状態回路に組み込まれた1以上の素子によって判定することができる。この素子は例えば、キャパシタ、ヒューズのような消耗部品、非接触デバイス、メモリデバイスなどである。
【0068】
図7に、本発明の実施形態において用いる、センサ状態回路と組み合わせた識別回路の例を示す。この回路は、コネクタP1のピン1、2、4の間に示されている。ピンP1はセンサ(およびタイプ/状態識別回路)を送信器に接続する。この回路において、抵抗器R1は各パッドタイプに応じて変わる。パッドタイプは、システムとともに用いる吸収材の容積またはモデルを指定することができる。図示するR1の抵抗値330kΩは、例えば200mL容積を有するパッドタイプの1例である。
【0069】
キャパシタC1は、例えばパッドタイプまたはセンサタイプに応じて変わる(センサはパッド内に製造プロセスの一部として埋め込まれていない)。異なるセンサが異なる機能を提供し、異なる価格で提供されている実施形態においては、以下のために用いることができるセンサ識別子を提供することが望ましい。(a)適切なセンサタイプを特定のパッドタイプへ適用するため確実に選択されるようにする。(b)被験者のケアに対して自動課金または資金提供し、あるいは分析に資金提供する。図7に示す実施形態において、C1は22マイクロファラドを有する。これは1つの適切なキャパシタ値を例示する。
【0070】
図7に示すパッドタイプおよび状態識別を組み合わせた回路は、監視デバイスとともに用いることを意図している。監視デバイスは、望ましい実施形態において、送信器T内に組み込まれている。監視デバイスは、図8のコネクタP1のピン3と4間に示すタイプの回路を含むことが望ましい。この配置において、図8の監視デバイス回路は、図7のパッドタイプおよび状態識別回路を組み合わせた回路と、下記表1に示す態様でインターフェースをとる。
【表1】

【0071】
図9は、パッドタイプ/センサ状態指標の組み合わせ回路における変化(符号Sで示す)を示す信号値を表すタイミング図である。図9において、Rはセンサが接続されている監視デバイス/送信器の参照電圧を表し、Cはセンサが接続されているか切断されているかの状態を監視デバイスが検出した結果を示す信号を表し、Sは監視デバイスの入力において受信したパッド検出信号を表す。Sは、接続されているパッド/センサが使用されているか非使用であるか(すなわち、新たに接続されたのか、または再接続されたのか)を検出するために用いられる。
【0072】
センサに接続する前に、監視デバイスのピン4へのパッド検出入力は、1.5ボルトにバイアスされる。これは3ボルトの参照電圧を抵抗R1とR2で分割したものである。接続前に、C1は放電される(0ボルト)。パッドに対応付けられたセンサが、監視デバイスを含む送信器へ新たに接続されると(図9のT1でマークされた20秒時)、C1はピン4へのパッド検出入力を0ボルトに引き下げる。C1が充電されると、パッド検出入力における電圧はゆっくりと増加し、C1両端の電圧降下(パッド検出入力において測定できる)は、監視デバイスの抵抗R1、R2とセンサ回路のR1を有する抵抗網をまたがって測定できる安定電圧へ接近する。図示する実施形態において、キャパシタが充電されると、残部電圧は図9のT2で示す約2.4ボルトとなる。
【0073】
パッド検出入力が残部電圧に到達するのにかかる時間(すなわちT2−T1)は、C1の値を変えることによって変化し得る。図示する実施形態において、T2−T1は約30秒である。充電時間は、センサタイプを指定するために用いることができる(例えば、高価なセンサまたは廉価なセンサ、湿潤を検出する専用のセンサ、尿/糞便内の温度、pH、ガス、または特定の物質を検出するセンサ)。
【0074】
システムは、パッド検出ラインを処理していつ新たにセンサ/新パッドがシステムに接続されたかを認識する処理手段を備えるのが理想的である。これは、監視デバイス/送信器上のプロセッサが実行するソフトウェアによって実現するのが理想的である。ただし、この検出は監視デバイス/送信器上のハードウェアによって実現するか、またはベースステーションその他システム内の任意箇所に配置された、プロセッサに対応付けられているソフトウェアもしくはハードウェアを用いて実現してもよいことを理解されたい。
【0075】
望ましい実施形態において、監視デバイス/送信器上のプロセッサは、T1において発生する1.5ボルト未満の電圧降下を認識する。これは、新品のパッドがシステムへ新たに接続されたことを示す(電圧降下は、あらかじめ充電されていないキャパシタC1が充電開始されたことによって生じるので)。監視デバイスプロセッサは次に、2.4ボルトの残部電圧から、パッドタイプを判定する。残部電圧は、センサ回路のR1の値(および一定である監視デバイスのR1、R2とともに)によって判定されるからである。異なるセンサ回路上の異なるR1の値は、概ねT2において到達する残部電圧を変化させる。これは、異なるパッドタイプがシステムに接続されたことを示す。
【0076】
センサがシステムから切断されたことは、図9のT3において示されている。パッド検出入力は再び1.5ボルトのバイアス電圧に低下している。これは、監視デバイス内(その他任意の場所)のプロセッサが検出することができ、センサ(およびこれに対応付けられたパッド)がシステムから切断されたと認識することができる。この切断は、不注意によるものである場合があり、またはケア作業者がパッドをチェックするためのものである場合があり、またはセンサを送信器へ不正確に取り付けた結果である場合がある。T4におけるパッド検出入力の次の変化は、使用されているパッド/センサの組み合わせが接続されていること(すなわち、同じパッド/センサが再接続されていること)、または新たな未使用のパッド/センサが接続されていることを示す。T4で示されている例において、電圧は約2.4ボルトの休止電圧へ直接上昇している。バイアス電圧未満の電圧降下はないので、監視デバイス上のプロセッサは、パッド/センサが既に使用されていることを確認し、また休止電圧に達することによりパッドタイプも確認することができる。これは同じパッドがシステムに再接続されたことを示唆している。同じセンサはT5において切断され、T6において再接続されている。これら切断と接続は、監視デバイスプロセッサによって分析され、いつパッド/センサが交換されたかおよびパッドまたはパッド/センサの組み合わせタイプを示す失禁データをシステムへ提供するために用いられる。
【0077】
図7〜図9とともに記載されている回路は、キャパシタを自然放電させることもできるし意図的に放電してセンサ状態回路を再設定することもできる点において、再設定可能な回路である。自然放電は、センサが電力源に接続されていないとき、例えば約24時間にわたって生じる。したがって自然放電は、被験者に使用している間の回路性能に影響しないと思われる。
【0078】
パッドタイプ識別回路とセンサ状態識別回路の1例を詳細に説明したが、異なるアクティブ部品およびパッシブ部品を採用した他の回路を用いることもできることを理解されたい。1構成例において、センサが監視デバイスに接続されたとき識別回路が小電流を受け取ると焼け切れて開回路を形成するヒューズまたは低定格抵抗器を採用することができる。ヒューズまたは抵抗器を焼き切る動作は、監視デバイスによって制御することができる。監視デバイスは、焼け切れたヒューズ/抵抗器が形成した開回路を検出すると、取り付けられている未使用のパッド/センサを処理する。再接続時、開回路は開いた状態のままである。これにより監視デバイスは、パッド/センサが先に使用されたことを検出することができる。
【0079】
センサと送信器/監視デバイスの間が非接触接続される別構成例において、センサ上のP1コネクタは誘導コイルと交換することができ、監視デバイスは近距離磁気誘導技術を用いてセンサを監視デバイスへ接続することができる。この構成例において、キャパシタが充電すると、誘導コイル内の電流は、使用されているパッド/センサのサイズまたはタイプと相関がある値へ増加する。
【0080】
さらに別の構成例において、センサ上でメモリデバイスを用いることができる。メモリデバイスは例えば読取専用メモリであり(例:PROM、EPROM、EEPROMなど)、各パッド/センサの組み合わせに一意の識別コードを提供することにより、未使用または使用済パッド/センサの組み合わせがいつシステムに接続されたかを識別するために用いられる。各センサについて、製造者はメモリに固有識別コードをあらかじめプログラムする。この識別コードは、パッドタイプを示す情報を含む。識別コードのヘッダは例えば製造者を示し、他のセグメントは容量またはモデル番号を示す。監視デバイスは、センサが接続されたときセンサ上のメモリと通信し、一意の識別コードを取得する。識別コードは、請求または制御のため、遠隔のプロセッサへ送信することもできる。取得した識別コードを有するセンサとの接続を監視デバイスが例えば72時間以内に検出しなかった場合、監視デバイスはそのパッド/センサが使用されていないと認識する。その期間において監視デバイスが識別コードを取得した場合、そのパッド/センサの組み合わせは使用されているとみなされる。
【0081】
一意の識別コードは、製品の使用を追跡する情報および販売後調査のために利用することもできるし、規制要件に合致させるために用いることもできる。一意の識別コードは、特定のコードタイプを有する製品のみが監視デバイスおよびシステムのその他構成要素と動作することができる場合において、システムへの制御アクセスのために用いることもできる。
【0082】
他の実施形態において、一意識別のため、センサ上で電子プログラム可能メモリ(例:EEPROM、フラッシュ、など)を用いることができる。この構成例において、メモリは製造工程において一意の識別コードと空のセキュリティコードを初期プログラムされる。一意の識別コードはパッドタイプに関する情報を含み、さらに例えば製造者、モデル番号、バッチ番号などを識別することもできる。監視デバイスは、センサに接続されたときにメモリと通信する。セキュリティコードが空である場合、監視デバイスはパッド/センサが使用されていないと認識する。監視デバイスは次に、一意のセキュリティコードをセンサ上のメモリへ書き込む。切断/接続のサイクルを実施した後に監視デバイスがセキュリティコードを認識した場合、監視デバイスはパッド/センサが「使用されたデバイス」であると認識する。すなわち、以前にシステムへ接続されたものであると認識する。一意の識別コードは、読取専用メモリデバイスが採用する識別コードについて先に説明したようなパッド/センサの状態およびタイプを監視することに加え、様々な目的で用いることができる。
【0083】
センサ状態識別子とタイプ識別子および先に説明した特定の回路構成は、様々な製品、特にヘルスケアなどにおける様々な環境において採用される消耗品へ応用し得ることを理解されたい。例えば状態識別は、患者モニタが医療デバイスまたはモニタの電極その他の身体接触素子が以前に使用されていないこと、または殺菌および再設定されたこと(例:キャパシタを放電またはプログラム可能メモリを再設定することにより)を確認するために利用することができる。同様の手法を用いて、別の患者へ割り当てるとき洗浄する必要があるベッドやテーブルのような患者設備を補足することができる。特に、そのような備品の状態および/またはタイプを非接触判定することは、当該分野において有用である。
【0084】
患者ケア業界外においては、状態情報は任意の消費者製品へ用いることができる。1例として、1回のみ使用するコーヒーカプセルがある。コーヒーマシーンは、このようなコーヒーカプセル上の状態識別回路を用いて、カプセルが新品または使用された時点を自動識別することができる。
【0085】
パッドタイプ識別子および特定の被験者がパッドを見につけている間に収集された失禁関連データに基づき、プロセッサ102は吸収材からの湿潤漏れリスクを計算する。湿潤リスクは、フィッティングセンサデータおよび非湿潤データによって例えば下記のようなロジスティックモデルを用いて評価することができる。
logit(p)=α+βu+γ+γ+・・・γ
はパッドnが尿量uについて漏れ無しの確率である。logit(p)は、漏れ無しについての確率p/(1−p)の自然対数である。xn1,xn2,・・・xnkは、パッドnについて、接続されている製品の特性kを示す。例えばxn1=ロスウェル容量、xn2=ロスウェル容量測定の係数、などである。係数α,β,γ,γ,・・・γは、特定パッドタイプの漏れ性能について医療評価手法を用い、ロジスティックモデルを下記のような式から得られるデータへ適用して推定およびテストされるパラメータである。
logit(p)=α+βu
【0086】
上記に代えて、センサデータプロファイルおよび特定パッドタイプの複数ユーザのパッド漏れ性能の実測定結果と相関する実験的手法により、湿潤漏れリスクを評価する数学モデルを直接決定することができる。年齢、性別、健康指標などのような人的情報は、数学も出るに影響する要因となり得る。したがって湿潤漏れリスクは、通常は確率的指標となる。この指標は、既知のパッド性能(パッドタイプ識別子から確定する)および容積推定器が推定したパッド内に蓄積している湿潤容積に基づき、被験者がいつパッド交換を必要とするかをケア作業者が識別するためのガイドとして用いることができる。ケア作業者はこれを用いて、自身が許容できるパッド漏れリスクレベルに基づき、適切なパッドサイズを選択することができる。
【0087】
プロセッサ102が計算する湿潤漏れリスクは、被験者が見につけている吸収材内のセンサからリアルタイムで取得した失禁関連データを用いて動的に計算されることが望ましい。したがって計算したリスクは、その被験者に関連付けられている送信器から新たなデータを受信すると変更される。
【0088】
湿潤漏れリスクの指標を提供することは、定量的なガイドを提供するという点で、湿潤イベントが発生したときケア作業者へ単に警告を送信する(この警告システムは本発明において実装することもできるが)よりも有用である。漏れリスクが低いことが示唆されている場合(例:10%未満)、ケア作業者はパッドをチェックまたは交換しないことを選択する。漏れリスクが高いことが示唆されている場合(例:70%超)、ケア作業者は手作業でパッドを検査および/または交換することを選択する。
【0089】
送信器Tnは、センサ200から失禁関連データ信号を送信するとともに、非湿潤イベントデータが必要な時点を示すデータ(すなわち、非湿潤イベントデータ信号)をプロセッサ102へ送信するように構成されている。これは、タイムスタンプがついた失禁関連データ信号とは異なる信号をプロセッサ102へ送信することによって実現することができる。これに代えて、非湿潤イベントデータが必要な被監視期間における時間を識別する非湿潤イベント識別子で、失禁関連データ信号をマークすることもできる。
【0090】
非湿潤イベントデータは、センサ以外から派生するデータであり、監視されている被験者に関連し、多くの場合、その被験者の失禁行為に影響する傾向がある。非湿潤イベントデータは通常、入力手段104を用いて(ハンドヘルドユニット108または中央入力手段を用いて)、ケア作業者によってシステムへ提供される。非湿潤イベントデータは、失禁ケアの向上、評価、および管理のため、観察データおよび監視されている被験者106固有の要因とともに、センサ200および/または送信器Tの性能を含むことができる。非湿潤イベントデータは例えば、パッド交換後にパッドを取り付ける前に計量することによって推定される、汚れたパッド量を含む。プロセッサはパッド量を用いて、ケア作業者が入力する前に、パッド内の湿潤の実容積を判定する。パッドを計量することによって判定される実容積は、容積推定器が監視中の放出容積を推定するために用いる数学モデルをシステム内の処理手段が最適化するために用いることができる。したがって計量を実施する必要はない。
【0091】
1実施形態において、各送信器Tnは、センサから切断されたときシステムへ自動通知するように構成されている。これは、パッドが交換されたこと、またはセンサ200と送信デバイスTの間で断続的接続が生じていることを示す。断続的接続は、送信イベントのシーケンスに基づき自動判定することができる。例えば、送信器T内のプロセッサデバイスが60秒内にセンサ200との切断/接続を5回検出した場合、送信器Tはプロセッサ102へ通知を自動送信し、および/または時間マークされた要求されている非湿潤イベント信号に当該送信器/センサ接続が緩いか信頼性が低い旨を示すマーカを付加する。送信器Tは、送信状態または接続状態が変化した箇所をプロセッサ102へ自動通知することが望ましい。
【0092】
望ましい実施形態において、各被験者の視覚表現は、送信器Tnから取得した、必要な非湿潤イベントデータの時点についての視覚マーカを1以上含む。これは望ましくは上述の推定した湿潤容積と同じタイムスケールである。非湿潤イベントの時点は、図2においてE1、E2、E3で表されている。プロセッサ102は、送信器Tnからの必要な非湿潤イベントデータ信号を用いて、視覚および/または聴覚リマインダーをケア作業者へ提供し、監視している被験者についての必要なイベントデータを入力するよう促す。このリマインダーは、ポケベルまたはハンドヘルドユニット108へ送信し、デバイスを振動および/またはリマインダーメッセージを表示させ、および/または音声メッセージ/キューを提供させることによって提供することができる。これに代えて、プロセッサ102またはシステム処理手段の様々なタスクを実施する処理デバイスを収容している中央監視ステーション内のディプレイ103にリマインダーを表示することもできる。これに代えて/追加して、ポケベルその他のモバイル通信デバイス/システムを用いてリマインダーをケア作業者へ送信することができる。リマインダーは、リアルタイムでケア作業者へ送信し、またはケア作業者にとって都合の良いときに見ることができる。例えば、交代前のシフト終了時、暇な時間帯(在住者が休憩または就寝しているとき)、などである。非湿潤イベントデータが必要である旨のリマインダーを受信した後、ケア作業者はシステムへデータを提供する義務がある。
【0093】
ケア作業者(または在宅の場合における被験者自身)は、非湿潤イベントデータを手入力するため、入力手段104を用いることができる。これは、例えばマウスおよび/またはキーボードおよび/またはタッチスクリーンデバイスを用いることによって実現することができる。入力手段104を用いて、ディスプレイ103上に表示されているアイテムを選択し、データを入力することができる。例えば、ケア作業者が視覚表現上の非湿潤イベントマーカ(例:E1)を選択すると、ケア作業者がイベントの性質(例:患者の体位変化)を選択するドロップダウンメニューが表示される。これに代えてケア作業者は、共通的なイベント(例:液体吸収のE2、手動排泄およびパッド交換のE3)に割り当てられた、デバイス上のボタンを押下する順序により、イベントデータを送信器Tへ直接提供することもできる。これに代えて/追加して、ケア作業者はハンドヘルドデバイス108を用いてイベントデータをリアルタイムで入力することができる。例えば、デバイス上でスタイラスペンやタッチスクリーンを用いる。イベントデータは、リストから選択し、またはユーザが定義する(またはこれらを組み合わせる)ことができる。入力手段104は、上記に代えて/追加して、光学的、電気的、その他の手段により、一般的なイベントをリストしたカードその他の参照ガイドからコードをスキャンするデバイスを備えることができる。同様にケア作業者は、ハンドヘルドデバイス108上のキーパッドなどまたは中央監視ステーションの入力手段104を用いて、特定イベントタイプに対応するコードを手入力することができる。
【0094】
送信器Tは、被験者が手動排泄した時点をプロセッサ102へ通知することができる。送信器Tはこの場合、ケア作業者または被験者が手動排泄を終了して送信器T上のボタンその他のアクチュエータを押下したとき、時間マークされた非湿潤イベント信号へマーカを付加する。ケア作業者が実施するその他動作の時刻も、ボタン押下または入力手段104へのその他入力によって記録することができる。これら動作は、食物または液体の摂取、薬剤摂取、移動検知、被験者の位置移動、訪問者の入室(または退室)、ケア設備から出ること、などを含む。
【0095】
望ましい実施形態において、センサ200は、被験者の健康状態を示す指標を検出する手段を備える。この手段は、被験者体液内の生体的指標、温度、および例えば被験者の移動を検出する手段を含む。これに代えてまたは追加して、送信器Tを検出手段に適合させて被験者の健康状態をさらに監視することもできる。したがって送信器Tは、例えば位置追跡デバイス(例えばGPS)および/または加速度計や圧力トランスデューサのように被験者の動作の指標を提供する1以上の動き検出器を備えることができる。これら検出器は、徘徊や落下(例えば高速移動を識別することにより)を検出するように構成することができる。これらの存在は、リアルタイムでプロセッサ102へ送信してケア作業者へ通知することができる。送信器Tはまた、ECG、血糖メータ、肺活量計、血圧モニタ、パルス酸素濃度計、などの生体信号を監視する手段を備えることができる。これら条件が早期に検出されケア作業者に通知されると、ケア作業者は必要に応じて被験者を迅速にケアすることができる。
【0096】
プロセッサ102は、ケア作業者が携帯するモバイルデバイス108へ、特定の状況下で監視されている被験者106nをケアするよう促す警告を自動送信するように構成されていることが望ましい。こうした状況には例えば、プロセッサが計算した湿潤漏れがケア計画またはケア作業標準に基づき許容し得る閾値リスクをいつ超過するかが含まれる。許容閾値リスクは、例えば50%、60%、70%、80%である。許容されるリスクは、被験者毎に異なる場合がある。これに代えて、被験者または被験者集団に対して適用し得るケアレベルに基づき許容リスクを判定することもできる。さらにプロセッサ102は、センサ200と送信器Tが切断されたと送信器T(またはプロセッサ)が判定したとき、または送信器からプロセッサ102への送信が途切れたとき、ケア作業者のハンドヘルドデバイス108へ警告を送信することができる。同様に、送信器に電力を供給するバッテリが低電圧になったとき、または特定の送信器Tからのデータ収集が途絶えたことをプロセッサ102が検出したとき、警告を送信することができる。1実施形態において、送信器Tは、被験者がいつ落下または落下しそうになっているかを判定するために用いる信号を生成する動き検出器を備える。このシナリオにおいてプロセッサ102は、ケア作業者のデバイス108へ警告を送信する。プロセッサ102は、送信器Tに接続されたセンサが検出する任意の規定状態を検出したとき、ケア作業者へ警告を送信するように構成することができる。
【0097】
望ましい実施形態において、プロセッサ102は、ケア作業者がシステムに提供したイベントデータの完全性をチェックするように構成されている。例えば、ケア作業者が2pmにパッド交換をしたことを示唆したとする。しかしセンサデータは、2pmにパッド内湿潤があり、3.30pmにはこれがなくなりセンサが切断されたことを示している。これは、ケア作業者によるイベントデータ入力が不正確であることを示唆している。センサデータは、パッド交換が3.30pmに実施され、2pmではないことを示しているからである。1実施形態において、プロセッサは訂正のためのエラーフラグを立てる。
【0098】
望ましい実施形態において、システムに関連付けられた処理手段が設けられ、失禁関連データとオプションイベントデータ内のパターンを、1以上の病状指標と自動的に相関付け、さらに検査して病状の存在を確定するためのガイドラインを自動提供する。非限定的な例として、処理手段が失禁関連データと相関付ける病状は、以下の1以上を含む:尿路感染、便秘、滞留、腹圧性失禁、夜間頻尿、など。表2は、失禁関連パターン(およびイベントデータ)と、これらパターンに関連付けられる病状の例を提供する。
【表2】

【0099】
システムは、センサの動作に基づき数学モデルを最適化することにより、被験者の失禁を監視するために用いる任意のセンサタイプからの入力を受信するように構成することができる。これは、準備期間の間に特定タイプのセンサを用いて1以上の被験者について失禁関連データを収集し、その被験者について非湿潤イベントデータ(パッド交換時刻と汚れたパッドの重量)を収集することにより、実現することができる。例えば1、2、3(もしくはこれ以上)ヶ月または10、20、30、またはこれ以上の評価期間(失禁ケアプランを作成するためのもの)のような準備期間の間または最後において、イベントデータをセンサからの失禁関連データとともに用いて、失禁被験者を監視している間に容積推定器が用いる数学モデルを最適化する。特定センサタイプについての最適なモデルは、プロセッサが設定されているセンサタイプを用いて、被験者の実監視および評価の間に用いられる。1実施形態において、最適モデルは被験者の年齢、性別、健康状態(例:処方された薬剤)などのような人的情報を用いる。
【0100】
システムは、複数のセンサタイプを同時に用いて被験者の失禁を監視するように構成することができる。センサタイプは、自動または手動でプロセッサ102へ通知することができる。プロセッサ102は、適切なモデルを選択して湿潤容積推定および漏れリスク評価を実装する。センサタイプを自動通知する際に、上述したパッドタイプ識別回路と同種のセンサ識別回路が用いられる。
【0101】
図6aと6bのフローチャートは、システムを用いて被験者の失禁を監視する方法のステップを示す。ステップ602において、送信器Tは監視する被験者106に関連付けられる。ステップ604において、送信器Tはパッド300内のセンサ200に接続され、パッドはステップ606において被験者106に取り付けられる。送信器Tは、センサ値をサンプリングする(ステップ608)。ステップ610において、送信器状態情報(接続強度、バッテリおよびネットワーク状態など)は送信器Tからプロセッサ102へ送信される。
【0102】
図6bは、図6aからの続きである。ステップ612において、サンプリングしたセンサ読取値は送信器Tからプロセッサ102へ送信される。プロセッサ102は同時に、監視する他の送信器からの信号を受信し、当業者にとって既知の信号多重化その他の手法を用いて、信号を受信および処理する。プロセッサ102はステップ614で、センサが送信器にまだ接続されていることおよびセンサがパッド内の湿潤を検出したか否かを確定する(ステップ616)。図2に示しているタイプの抵抗センサの場合、データ信号の前縁を識別することによりこれを実現する。湿潤が検出されなかった場合、何も実施せず監視を継続する。湿潤が検出された場合、容積推定器は湿潤の累積容積を推定する(ステップ618)。ステップ620において、プロセッサは、タイムラインチャート上に湿潤イベントをプロットすることにより、容積推定の視覚表現をディスプレイ103上に表示させる(図2参照)。
【0103】
ステップ622において、容積推定器は、視覚表現内に提示されている個々の失禁イベントの容積を推定する(ステップ620)。ステップ624において、プロセッサはパッド内の総容積が閾値容積VTHを超過しているか否かを確定する。総容積が閾値を超過している場合、ステップ628においてプロセッサはケア作業者へ被験者がケアを必要としている旨の警告を送信する。同時にプロセッサは、ステップ630においてパッドからの湿潤漏れのリスクを判定する。漏れリスクが規定の許容リスクレベルを超過していない場合、何も実施することなくシステムは被験者からの失禁関連データを監視し続ける。リスクが許容レベルを超過した場合、プロセッサはステップ628において警告をケア作業者へ送信する。警告を受信すると、ケア作業者はステップ632において被験者のパッドを交換する。ケア作業者はステップ634において、モデル最適化のために用いる非湿潤イベントデータとして入力するため、廃棄の前に汚れたパッドを計量することもできる。送信器は新たなパッドセンサに接続され(ステップ604)、フローチャートは継続する。適当な時点(例えばシフトの最後または時間が空いているとき)でケア作業者は入力手段104を用いて非湿潤イベントデータをシステムへ入力する。このシナリオにおいて、イベントデータは観察データ(例えばパッド交換、汚れたパッド量)その他の関連データを含む。これは例えば、液体摂取、処方した薬剤、移動観察、被験者の物理状態の変化、などである。
【0104】
図6aと6bのフローチャートは、3〜5日の評価期間の間、継続する。評価期間の最後において、システムは、数学モデルを実行する容積推定器が識別したイベントデータとセンサデータの間の相関に基づき、被験者の排泄スケジュールの形態で、ケアプランを提供する。評価期間の後には1〜2日程度の評定期間が続き、または評定期間をもって評価期間が終了する。評定期間において、ケアプランに基づき被験者をケアするが、システムは監視を継続し、ケアプランの精度を確定する。被験者の通常の失禁パターンと行動に関連しているからである。またシステムは、ケアプランにおいて割り当てられている被験者の排泄時間が吸収材内の失禁回数および/または容積を減少させたか否かを検証する。
【0105】
先に述べた議論において、本発明は設備環境における一般用語を用いて説明した。しかし、システム、方法およびセンサは、家庭において用いることもできる(例えば在宅環境)。図4は、家庭において用いるシステム400の構成要素を示す概略図である。プロセッサ102は、ディスプレイ103および入力デバイス104と接続されている。
【0106】
システムは、目盛404が付いた排泄物容器402を備える。目盛404は、排泄物容器402内に置かれた使用済パッド302の量を自動的に決定する。排泄物容器402は、廃棄されたパッドのタイプを識別するパッドタイプ識別手段406を備えていることが望ましい。パッドタイプ識別手段は、システムの設備利用において説明したように、吸収材302上のパッドタイプ指標回路を利用して、パッドタイプを自動判定することができる。これに代えてスキャナを使用して、例えば容器402内に廃棄された吸収材302表面(望ましくは外表面)のバーコードをスキャンすることもできる。これに代えて、RFIDタグのような非接触デバイスを用いてパッドタイプをプロセッサに通知することもできるし、上述のようにその他の識別回路を用いることもできる。これに代えて、被験者またはケア作業者が入力手段104を用いてパッドタイプを手動で提供するか、またはパッドの廃棄直前に生じる特定パッドタイプの切断に基づきシステムがパッドタイプを推定することもできる。
【0107】
目盛404とパッドタイプ識別手段406は、それぞれ容器402上の接続素子を介して直接または間接に、プロセッサ102と接続され、これにより実際の失禁容積を判定することができる(廃棄前の汚れたパッド302と新品パッド300の間の重量差を計算することにより)。これにより、失禁容積を正確かつ衛生的に自動判定することができる。またこの手法は、評価する被験者が最小限協力するのみでよい。ヘルスケアサービスプロバイダは、システム400の家庭内バージョンを用いて、評価対象の個人に排泄物容器402をその評価期間中に供給し、これには費用がかかることも考えられる。評価フェーズまたは評定フェーズの最後において、容器はヘルスケアサービスプロバイダへ返却され、サービスプロバイダはこれを洗浄して他の評価対象顧客へ提供する。
【0108】
望ましい実施形態において、プロセッサ102はWAN(Wide Area Network)120と接続されている。失禁関連データとイベントデータは、WAN120を介して別のプロセッサ150に中継され、別の場所で監視または分析することができる。これに代えてプロセッサ102は、失禁関連データと非湿潤イベントデータの一部または全部を複数の別プロセッサへ配信し、共有監視および分析をすることができる。この場合は別プロセッサ150が2以上存在する。これに代えて、家庭使用中に得られたデータをプロセッサ102のメモリ107内に格納しておき、システム400がヘルスケアサービスプロバイダに戻ってきた後にダウンロードすることもできる。
【0109】
望ましい実施形態において、システム100、400は、図5に示すように複数の場所で使用できるように構成されている。図5において、サイト1〜5はそれぞれ、図1と図4に示す、設備における監視システム100または家庭における監視システム400を表している。プロセッサ150は、遠隔に配置された演算デバイスであり、サイト1〜5それぞれから失禁関連データを受信する。ただし、数百または数千程度のより多くのサイトを、通信ネットワーク120として一般的に示したネットワーク接続要素経由でプロセッサ150と接続し得ることも考えられる。プロセッサ150は、プロセッサ150が複数サイトから受信したデータを格納するデータ記憶部152と接続されている。これに加えて、データ記憶部152は、プロセッサ150が複数サイトから取得したデータに基づき実施した分析結果を格納する。
【0110】
プロセッサ150は、任意の遠隔接続ソフトウェアを用いて、複数サイトのプロセッサ102と接続しデータを抽出することができる。これに加えてプロセッサ150は、各サイトのプロセッサ102上で実行されているプロセスや格納されているデータを見ることができるのが望ましい。複数サイトのプロセッサからのデータは、通信ネットワーク120を用いてバッチ送信し、またはリアルタイム送信することができる。データは生データのままで送信することもできるし、個々のサイトにおいてプロセッサ102が事前処理して送信が必要なデータ量を削減することもできる。
【0111】
事前処理は、例えば失禁関連データファイルからゼロデータ(すなわち送信器がセンサに接続されていない間に収集されたデータ)を除去することを含む。さらに、乾燥パッドデータを区切ることもできる。パッドが乾燥していることが検出されている間は、連続的に値を読み取る必要はないからである。分析目的の関連するセンサデータは、パッドがいつ被験者に取り付けられたかおよび湿潤イベントがいつあったかに関する。評価および監視中にケア作業を促進するために用いられるが失禁評価または分析のために必要でない技術的データも、望ましくはピーク期間を避けて別プロセッサ150へ送信するためデータ圧縮する前に、サイトプロセッサ102が除去することができる。個々のサイトにおけるプロセッサ102(例:プッシュ型送信)、別プロセッサ150(オンデマンドプル型送信)、またはこれらの組み合わせにより、送信を実施することができる。
【0112】
サイトプロセッサ102は、データの完全性をチェックすることが望ましい。すなわちプロセッサ102は、ケア作業者が提供する非湿潤イベントデータと送信器から取得したセンサデータが一致していることを自動チェックする。したがって、センサデータと矛盾する(例:湿潤がないことを示すセンサデータが続いた後に、パッド交換を示す非湿潤イベントデータ)非湿潤イベントデータが入力された場合、別プロセッサ150へ送信する前に訂正またはデータから除去するため、その旨のフラグが付与される。
【0113】
別プロセッサ150は、アウトソース評価モデルにおいて利用することができる。これは、被験者のセンサとイベントデータを遠隔の別プロセッサ150に送信し、ケアプラン作成、膀胱日誌作成、などのために用いるものである。アウトソース評価のため、データはリアルタイムもしくはやや遅れて連続的に、または評価期間の最後に送信される。
【0114】
別プロセッサ150は、複数サイトデータを用いて、1以上の容積推定器が個々の被験者の失禁容積を推定するために実行する数学モデルを、検証および最適化する。サイトプロセッサ102も、当該サイトからのデータを用いて数学モデルを検証および最適化することを理解されたい。しかし、複数サイトからのデータを用いて、より強力な検証および最適化を実現することができる。同様にプロセッサ150は、複数サイトデータを用いて、精度が十分でないモデルを識別し、これを最適化することができる。最適化後、別プロセッサ150は、各サイトにおける失禁評価のためのネットワークを介して、最適化されたモデルを個々のサイトプロセッサ102へ送信する。
【0115】
システムは、複数サイトから取得したデータを様々な目的で利用し、統計その他の技術を適用して、例えば薬剤、ケア技術、既存および新たな不満と状態、失禁パターン、パッド選択、パッド利用、などの間の相関を自動識別することができる。
【0116】
例えばシステムをプログラム可能にして、複数サイトから取得した拡張データに基づき複数の分析成果を提供し、吸収材/パッドの使用傾向を識別することができる。この傾向により、特定パッドタイプがよく使用されている地理的領域、またはあるパッドタイプがより普及している人的情報を識別することができる。設備、行政機関、パッド製造者は、これを用いて発注と製造量を調整し、将来の利用のために計画と予算を効率化することができる。
【0117】
システムはまた、複数サイトから取得したイベントデータを利用して、ケア作業者の行動傾向を識別することができる。大手ケアプロバイダ、行政機関、研究者は、これを用いて、ケア作業者が適切なトレーニングを受けていること、ヘルスケア標準に準拠していること、ヘルスケア標準を修正して患者の進行やコスト効率を改善することができる場所、などを確定することができる。システムが受信した複数サイトデータを用いて、監視している被験者の一般的な健康状態とケア作業(失禁ケアプランを含む)を評価することもできるし、特定層のヘルスケアを一般的に報告することもできる。
【0118】
望ましい実施形態において、患者履歴や家族データを含む人的データを複数サイトからシステム内の処理手段へ送信し、ある人的属性を有する人集団において広まっている状態を示す関心要因に関連する人集団データを分析することができる。もちろん患者識別情報は、秘密性を確保するため、保護またはデータから除外される。これら要因には、システムを用いて監視している被験者の、失禁、水分補給、認知症、怪我および床擦れケア、尿路感染、膀胱感染、尿力学、腸状態、落下リスクまたは落下頻度、慢性疾患(肥満、心疾患、糖尿病、ぜんそくなど)が例として含まれる。これら要因を用いて、失禁とその他の状態または社会人類学的指標の相関を識別し、ヘルスケア、ヘルスケアおよび患者評価に関する標準を開発または再開発することができる。
【0119】
システムが取得するデータを利用して、パッド、センサ、パッド/センサの組み合わせについての製品性能を評価することができる。したがって複数サイトデータを用いて、複数の失禁製品の性能および複数の失禁ケアモデルに関するベンチマーク指標を提供することができる。これら指標は、製品設計、製品選択と取り込み、および複数の失禁ケアモデルに影響を及ぼす。
【0120】
一般にシステムは、様々なデータを収集することが望ましい。これには、複数サイトにおける監視する被験者の人的データ;その被験者の一般的健康評価に関するデータ、監視中に得られる被験者の手動観察を含む非湿潤イベントデータ、被験者から収集されるセンサデータ、が含まれるが、これらに限定するものではない。センサデータは湿潤データを含むが、被験者の移動、温度、検尿などに関して自動取得されたデータも含む場合がある。医師が入力デバイス104を用いて被験者の状態に関する診察その他の情報をシステムに入力するとき、この情報は被験者の物理的および/または精神的状態の変化に関するデータとともに、設備サイトから遠隔の処理手段へ送信することもできる。システムは、複数サイトからケアプラン(すなわち排泄スケジュール)を収集し、入手できるのであれば被験者の投薬計画詳細を収集することが望ましい。
【0121】
これらデータは収集された後に統合され、様々な指標と状態の相関を示す有用なレポートを提供する。データ内の傾向、データと特性状態の相関、パッド使用傾向、ケア作業者行動、などを様々な人集団において識別することにより、データを分析することができる。分析結果を用いて、ケア作業者行動およびケア作業者行動の傾向についての測定基準を識別することができる。この測定基準には、例えばケア作業者効率、応答時間、手動観察の能率(または精度)、被験者をケアする能率、ケア作業者がイベントデータを入力するときの徹底度、ケア作業標準に対する準拠度、が含まれる。これら測定基準を用いて、作業トレーニングを評価し、将来のトレーニング要件についてのガイドを得ることができる。
【0122】
さらにシステムは、複数サイトからのデータを利用して、ケア設備の効果を、ケアの品質とコストの観点で評価することができる。このとき、設備の場所、空間のレイアウト、ケア作業者の資格、ケア手順、スタッフと被験者の比率、ケアのレベルとタイプ、その他設備に関するカテゴリについて、考慮に入れることができる。
【0123】
システムが受信するデータを分析して、被験者の健康状態の指標を提供することができる。被験者の健康状態は、監視している間における、体調の進行具合、生活品質の進行具合、失禁関連データの変化によって判定することができる。健康状態のその他指標としては、例えば落下リスク、徘徊リスクなどのような、被験者リスクプロファイルに関するものがある。
【0124】
システムが受信するデータは、パッド製造者、製造者/販売者、およびシステム内で用いられるその他消耗品の購入者へ指標を提供するために利用することができる。このデータを分析して、使用にともなうパッドそのものに関する要因を識別および評価することができる。これら要因は、身に着けたときのパッドの動的性能、快適指標、製品の可動範囲、吸収性能(例:国際標準または製造者規格に沿って測定したもの)、漏れ性能、パッド容量を判定するためのロスウェルメソッドの精度、などを含むが、これらに限られるものではない。製品製造者は、サプライチェーンマネジメントにおいてこれら要因を用いて価格と供給コストを調整することができる。これらによって製品開発戦略を促進し、ユーザにとってのトレーニング要件を識別および開発することができる。発注と利用計画などを比較するため、設備に代わって収集したデータを分析することもできる。
【0125】
失禁患者のケアにおける法定/規制要件に準拠していることをケア作業者自身がチェックできるようにすることにより、システムからのデータを、失禁ケアに関する品質イニシアティブの管理において使用することができる。これにより、ケア提供における品質プログラム(品質保証)の検証および継続的な改善プログラムとケア手順の改善を促すことができる。システムからのデータは、適切なケアが提供されている証拠として信頼することができ、および/またはデータによりさらなるサポートおよび/またはトレーニングが必要なエリアを識別することができる。
【0126】
本発明のシステムを用いて取得したデータを用いて、システムを用いて実装および評価可能な、スキル評価およびコンピテンシーベーストレーニングプログラムを開発することができる点は重要である。
【0127】
システムは、評価期間において被験者を監視し、評価期間の最期に、より能率的で効果的な失禁ケアを実施するためケア作業者が用いるケアプランまたは排泄スケジュールを提供するように構成されている。システムから得られる排泄スケジュールを採用することによって実現される能率効果は、手動チェックが減少することによる時間節約とパッド交換回数減少の双方に関連する。また、排泄スケジュールにより被験者は実際の排泄行動によって排泄するようになるので、パッド交換にともなう面倒が減少し、精神的健康と生活品質が向上することにつながる。システムから排泄スケジュールが得られた後は、評価期間を設けてスケジュールの精度を確認し、必要に応じて修正することが望ましい。
【0128】
失禁患者のケアに必要な作業を実施するケアスタッフのトレーニングにおいて、システムを採用することもできる。これら作業は例えば、評価期間において判定される被験者の失禁行動、および被験者が受忍する(またはケア標準にしたがって受信し得る)漏れリスクレベルに基づき、特定患者の適切なパッドタイプ/サイズを選択することを含む。システムはまた、システムを使用して失禁患者を監視し失禁状態を評価するケア作業者を訓練する、トレーニングモジュールを備える。システムを用いてスタッフを訓練し、システムが考案した特定被験者についてのケアプランの効果を評価することができる。スタッフトレーニングにおいてシステムを用いて、被験者を確実にタイミングよくケアするようにすることができる。このトレーニング手法は、システムの自動警告とイベントログ機能を利用する。これらを用いて、例えばケア作業者のシフト終了時に、ケア提供の適性度に関するレポートを生成することができる。
【0129】
特許請求の範囲において定義されている本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正、追加、および/または変更を、これまで説明した部分に対してなすことができることを理解されたい。
【0130】
システムの実施形態を実装し得る様々なアーキテクチャを説明する。
【0131】
図10は、本発明のシステムを実装することができるハードウェアアーキテクチャの1例を示す概略図である。各被験者は、デバイス(符号T)に関連付けられている。デバイスは処理機能を有し、ゲートウェイGを介してセンサ信号をSIMステーション1002に配置されたシステム処理手段へ送信するリピータRと無線通信する。SIMステーション1002はさらに、ローカルエリアネットワーク(LAN)、Wi−Fiその他の通信ネットワーク120bを介して、他の処理手段1004と通信することができる。処理手段1002、1004は、インターネットゲートウェイ1600と通信ネットワーク120aを介して、ケア作業者1100が保持するハンドヘルドユニット108と通信する。図示する実施形態において、ユニットは一般的な電話ハンドセットまたは本発明のシステム専用の電話機である。ケア作業者1100は、ハンドヘルドユニット108へ送信された警告を受信し、SIMステーション1002または他の処理手段1004とともに提供される入力手段を用いて、システムへ入力を提供する。インターネットまたはその他の通信ネットワーク10aを介して、システムサポート1500を提供することができる。このアーキテクチャにより、本発明のシステムが提供されるプラットフォームを良好に制御することができる。しかし、必要なインフラを設置するのに多大な経費が必要となる。
【0132】
上記に代えて、ハンドヘルドユニット108は、ケア作業者1100がデータを直接入力し、システムからケア作業者へ警告を送信することができる、携帯情報端末(PDA)またはスマートフォンでもよい。ケア作業者によるPDA108への入力は、無線インターネットと3G通信ネットワーク120aを介して、SIMステーション1002および関連するプロセッサ1004へ送信される。PDA108b上で提供されるディスプレイ103は、失禁関連情報の視覚表現(例:図2において示した種類のチャート)を提供する。ケア作業者1100は、デバイスを所持しているときはこれをいつでも見ることができる。したがってケア作業者は、中央SIMステーション1002へ戻ってチャートをチェックし、または湿潤漏れリスク指標を見る必要がない。さらに、PDA上のデータ入力のための機能は、ケア作業者がさらに標準準拠すること、およびより一層の使い易さにつながる。この変形例は、コミュニティ内の個々の家庭における固定設備外のシステム適用に対応することができる。
【0133】
他の変形例は、PDAデバイス108が通信ネットワーク120bと通信できるがインターネット/3Gネットワーク120aと通信できないというものである。ネットワーク120bは、被験者を監視するサイト内において、Wi−Fiによって提供されるLAN、イーサネット(登録商標)、その他のローカルネットワークである。このアーキテクチャにより、サードパーティがアクセスを管理するためコスト高なモバイル電話網に依拠することがなくなる。代わりにシステムは、局所的にインストールされ制御されるネットワークを介して動作する。このアーキテクチャモデルにより、利用データコストは小さくなる。
【0134】
他の変形例において、モバイルデバイス108は、デバイスを所持しているケア作業者が被験者の近くにいるとき、送信器(T)との直接接続を確立することができる。これにより、被験者が確実にケアを受けているか検証することができる。これは、送信器上のボタンその他のアクチュエータを押下して送信器に時間マークした指標を処理手段へ送信させ、これにより処理手段がケア作業者へ被験者観察データを入力するよう促すリマインダー警告を送信する、という基本的な機能を置き換える。
【0135】
図11は、図10に示すアーキテクチャのさらなる変形例を示す概略図である。この構成例において、リピータRは除去されている。各被験者は、吸収材内のセンサに接続された送信器Tを保持する。送信器Tは、ネットワーク120b(Wi−Fiまたはイーサネット(登録商標)LAN)と直接通信するためのゲートウェイGを提供する無線デバイスに対するアクセスを割り当てられている。データは、低電力送信器Tを用いてセンサから取得し、高電力デバイスを介して処理手段(SIMステーション1002および/またはプロセッサ1004)へ送信することが望ましい。ゲートウェイGは、携帯デバイスである必要はない。これに代えてゲートウェイは、被験者のベッドサイドに配置し、または主電源(その他の電力源)のある壁に取り付けることができる。LANに対する携帯アクセスが必要な場合、ゲートウェイをチャージドックから取り外し、被験者のポケットに配置し、または被験者が所持することができる。このアーキテクチャは、簡易なインフラが望ましい遠隔サイトによりよく適合している。
【0136】
他の構成例(図示せず)において、ゲートウェイGは被験者(または被験者が居住する部屋)に割り当てられない。これに代えてゲートウェイは、被験者(ケア作業者ではない)が所持するハンドヘルドユニット内に組み込まれている。ハンドヘルドユニットは例えば、iPad、iPodタッチ、iPhoneその他同様にデバイスのような、Wi−Fiまたは同様のLAN上で動作できるスマートモバイルデバイスである。これによりケア作業者1100は、ハンドヘルドデバイス上で視覚表現を監視することができ、さらには被験者が自身の失禁関連データと視覚表現を見て自身のデバイス上でシステムへ入力を提供する(例えば食物や液体の摂取、移動データ、排泄データなど)ことができる。この構成例は、既存のWi−Fiその他のLANインフラを利用し、一般的ハードウェアの使用をシステムに適合させることができる。各被験者を自動識別することができる。ハンドヘルドデバイスは特定被験者に割り当てられているので、このデバイスからのデータはシステムが自動的に当該個人と対応付けることができる。被験者のハンドヘルドデバイスが、3Gその他のネットワークのような無線WAN接続を介してSIMステーション1002および/または他のプロセッサ1004と通信する、他実施形態も考えられる。ただし、サードパーティが所有するネットワークを介したデータ送信コストは高い。実施形態によっては、被験者のハンドヘルドデバイス上で処理を実施するものもある。例えばハンドヘルドデバイスは、数学モデルを保持しており、監視中の容積推定結果と湿潤漏れリスクを計算する。この構成例において、ほぼ全ての処理機能を被験者のモバイルデバイス内に保持させ、および/またはSIMステーション1002と通信してケア作業者がレビューすることができる。
【0137】
送信器Tのバッテリ寿命が増加またはより効率的になった場合、送信器はLANまたは3Gネットワークのような既存のネットワークと直接通信することができる。これにより追加インフラに投資する必要性が減少し、送信器T、ハンドヘルドユニット108、SIMステーション1002が全て、低コストで提供されるネットワークインフラ上で通信できるようにネットワークトポロジーを簡易化して、本発明のシステムをより普遍的かつ非排他的に実装することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の被験者の失禁を監視するシステムであって、
a.表示手段;
b.ユーザが操作できる入力手段;
c.1以上の送信器であって、それぞれが1以上の監視される被験者に関連付けられており、前記1以上の被験者についての失禁関連データを含む信号を送信するように構成されており、前記失禁関連データは各前記被験者が身に付けている吸収材に関連付けられた失禁センサから時間をかけて取得される、送信器;
d.前記1以上の送信器から信号を受信するように構成された受信器ユニット;
e.少なくとも前記受信器ユニットと接続された処理手段であって、前記受信した信号を処理して表示情報を前記表示手段へ送信して前記監視される1以上の被験者が身に付けている前記吸収材内の失禁センサから取得した失禁関連情報の視覚表現を表示させるように構成された表示プロセッサを備える、処理手段;
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記処理手段は、前記失禁関連データを規定の数学モデルに適用して前記吸収材内の湿潤容積を推定するように構成された容積推定器を備える
ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記処理手段は、被験者が身に付けている吸収材についてのパッドタイプ指標を自動受信し、前記パッドタイプ指標と、前記被験者が前記吸収材を身に付けている間に収拾した前記失禁関連データに基づき、前記吸収材からの湿潤漏れリスクを計算するように構成されている
ことを特徴とする請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
前記処理手段は、前記パッドタイプ指標と前記容積推定器を用いて、前記吸収材からの前記湿潤漏れリスクを計算する
ことを特徴とする請求項2に追加した請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記湿潤漏れリスクの計算は、動的でありかつ前記被験者から時間をかけて取得した失禁関連データに基づいている
ことを特徴とする請求項3または4記載のシステム。
【請求項6】
前記パッドタイプ指標は、前記失禁センサに関連付けられた識別回路の特性を参照することによって判定される
ことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
前記特性は、前記識別回路に関連付けられた抵抗、インピーダンス、キャパシタンス、インダクタンス、共振周波数または搬送周波数、または前記識別回路から測定することができる電位差もしくは電流値を含むグループから選択される
ことを特徴とする請求項6記載のシステム。
【請求項8】
前記識別回路は、前記失禁センサに関連付けられた検出回路と並行して存在する
ことを特徴とする請求項6または7記載のシステム。
【請求項9】
前記パッドタイプは、前記識別回路内の抵抗値を参照することによって判定され、特定の前記抵抗値には特定の前記パッドタイプが割り当てられている
ことを特徴とする請求項6記載のシステム。
【請求項10】
前記処理手段は、センサまたはセンサに関連付けられた吸収材が、
a.前記システムに新たに接続された;または
b.前記システムに再接続された
ことを示すセンサ状態指標を自動受信するように構成されている
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載のシステム。
【請求項11】
前記センサ状態は、前記吸収材上のセンサ状態回路の特性を参照することによって判定され、前記特性は前記センサ状態回路に組み込まれた1以上の素子を参照することによって判定され、前記素子は、
a.キャパシタ
b.消耗部品
c.費接触デバイス
d.読取専用メモリデバイス
e.プログラム可能メモリデバイス
を含むグループから選択される
ことを特徴とする請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記センサ状態回路はキャパシタを備え、前記センサ状態は前記システムに新たに接続されるとその旨を判定される
ことを特徴とする請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記センサ状態回路は、関連付けられているセンサタイプを自動識別するように構成されており、割り当てられたセンサタイプは特定のキャパシタンス値に関連付けられている
ことを特徴とする請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記センサ状態回路はヒューズを備え、前記ヒューズが最初に閉じられると前記センサ状態は前記システムに新たに接続されたものと判定される
ことを特徴とする請求項11記載のシステム。
【請求項15】
前記容積推定器は、
a.前記吸収材内の累積湿潤容積
b.前記吸収材内の個々の湿潤イベントの容積
のいずれかまたは双方を推定する
ことを特徴とする請求項2から13のいずれか1項記載のシステム。
【請求項16】
前記容積推定器は、容積推定結果を、少量、中量、大量、湿り、濡れ、ずぶ濡れのなかから1以上に分類するように構成されている
ことを特徴とする請求項14記載のシステム。
【請求項17】
前記視覚表現は、1以上の推定した前記監視される被験者の吸収材内の失禁容積をタイムスケール上で図式的に示す
ことを特徴とする請求項1から16のいずれか1項記載のシステム。
【請求項18】
前記視覚表現は、同じタイムスケール上で、前記監視される被験者固有の1以上の非湿潤イベントの発生を示す
ことを特徴とする請求項17記載のシステム。
【請求項19】
前記表示手段は、監視される被験者が身に付けている吸収材についての湿潤漏れリスク指標を提供する
ことを特徴とする請求項1から18のいずれか1項記載のシステム。
【請求項20】
前記1以上の送信器は、非湿潤イベントデータが必要になる時点を示すデータを前記処理手段へ送信するように構成されている
ことを特徴とする請求項1から19のいずれか1項記載のシステム。
【請求項21】
前記処理手段は、ユーザに提示され、前記入力手段を用いて前記必要な非湿潤イベントデータを入力するよう促す、視覚および/または聴覚および/または触覚リマインダーを生成するように構成されている
ことを特徴とする請求項20記載のシステム。
【請求項22】
非湿潤イベントデータは、
a.送信器が関連するセンサから切断された
b.前記被験者の手動排泄
c.新たしい吸収材がセンサに関連付けられた
d.ケア作業者が被験者をケアした
e.前記被験者が体位を変えた
f.送信器上のアクチュエータが動作した
g.データ送信またはセンサ接続状態が変化した
h.前記被験者が落下した
i.特定順序のセンサまたは送信イベント
j.新たなセンサおよび/またはパッドが前記システムに接続された
k.ECG、血糖、肺活量測定、血圧、パルス酸素濃度測定のうち1以上を監視することによって前記被験者から検出されたイベント
を含むグループから選択されたイベントを示す
ことを特徴とする請求項20または21記載のシステム。
【請求項23】
前記処理手段は、
a.前記処理手段が計算する湿潤漏れリスク
b.前記センサと送信器が切断された
c.送信が途絶えた
d.関連する送信器内で低電力が継続した
e.前記被験者が落下した可能性がある
f.データ収集が途絶えた
g.送信器に取り付けられたセンサが他の状態を検出した
h.前記システムが取得したデータに関する内部的に整合しない状態
のいずれか1以上を原因として、ケア作業者が受信する自動警告を生成するように構成されている
ことを特徴とする請求項1から22のいずれか1項記載のシステム。
【請求項24】
前記入力手段は、
a.前記表示手段上で提示されるアイテムのメニューリスト
b.関連付けられた送信器上の1以上のアクチュエータ
c.カードその他の参照ガイドから、光学的、電子的、その他の手段によってスキャンするコード
d.コードの手入力
のうちいずれか1以上によって、非湿潤イベントデータの手入力を促す
ことを特徴とする請求項20から23のいずれか1項記載のシステム。
【請求項25】
前記処理手段は、失禁関連データ内および予備的に非湿潤イベントデータ内のパターンと1以上の病状指標を自動的に相関付け、前記病状の存在を調査するためのガイドラインを自動提供するように構成された、分析要素を備える
ことを特徴とする請求項1から24のいずれか1項記載のシステム。
【請求項26】
前記処理手段は、吸収材に関連付けられた任意のセンサタイプからの入力を受信して被験者の失禁を監視するように構成することができる
ことを特徴とする請求項1から25のいずれか1項記載のシステム。
【請求項27】
前記処理手段は、準備期間において、
a.被験者が身に付けている吸収材に関連付けられた特定センサタイプのセンサから失禁データを収集する
b.前記被験者に関連する非湿潤イベントデータを収集する
c.収集した非湿潤イベントデータとセンサデータを用いて、前記処理手段が被験者の失禁を監視するため実行する数学モデルを最適化する
ことによって特定センサタイプからの入力を受信するように構成することができ、
前記数学モデルは、前記特定センサタイプのセンサを有する吸収材を身に付けた被験者の失禁を監視するために用いられる
ことを特徴とする請求項26記載のシステム。
【請求項28】
前記1以上の送信器は、前記センサからの時間マークされた失禁関連データを格納し、前記データを周期的に前記処理手段へ送信するように構成されている
ことを特徴とする請求項1から27のいずれか1項記載のシステム。
【請求項29】
目盛を有する排泄物容器を備え、前記目盛は、前記排泄物容器内に置かれた、汚れた吸収材の量を決定する
ことを特徴とする請求項1から28のいずれか1項記載のシステム。
【請求項30】
前記排泄物容器は、前記目盛が量を決定するパッドタイプを識別するパッドタイプ識別手段を備える
ことを特徴とする請求項29記載のシステム。
【請求項31】
前記パッドタイプ識別手段は、
a.前記吸収材上のセンサに関連付けられたパッドタイプ識別回路
b.前記吸収材の表面上のバーコードをスキャンするスキャン手段
c.前記パッド上の非接触送信器からパッドタイプ信号を受信するパッドタイプ受信器
d.前記送信器から前記パッドが接続され、前記パッドが前記排泄物容器に廃棄される、一連のイベント
e.パッドタイプ識別子の手入力
のうち1以上を用いてパッドタイプを判定する
ことを特徴とする請求項30記載のシステム。
【請求項32】
前記決定された、汚れたパッドの量は、前記処理手段へ自動送信される
ことを特徴とする請求項29から31のいずれか1項記載のシステム。
【請求項33】
前記処理手段は、
前記システムが用いられる複数サイトから複数サイト失禁関連データを受信し、被験者の失禁を監視するデータコンパイルプロセッサと、
前記複数サイトデータを格納するデータ記憶部と、
前記1以上のサイトと前記データコンパイルプロセッサを接続する1以上のネットワーク通信要素と、
を備えることを特徴とする請求項1から32のいずれか1項記載のシステム。
【請求項34】
前記処理手段は、前記複数サイトから取得したデータを利用して、
a.失禁容積を推定するための数学モデルを検証する
b.失禁容積を推定するための数学モデルを改善する
のうち1以上を自動実行する
ことを特徴とする請求項33記載のシステム。
【請求項35】
前記データコンパイルプロセッサは、
a.吸収材の使用傾向を識別する
b.監視される被験者のケア評価を評定する
c.ケア作業者の行動傾向を識別する
d.人集団データを分析する
e.失禁関連データ、イベントデータ、その他被験者集団に適用できる状態の相関を識別する
f.複数の失禁製品の性能をベンチマークする
g.複数の失禁ケアモデルの性能をベンチマークする
のうち1以上を含む分析を実施する
ことを特徴とする請求項33または34記載のシステム。
【請求項36】
ケア作業者の行動傾向を識別することは、
a.ケア作業者の能率
b.応答時間
c.ケア作業者が入力した非湿潤イベントデータの有効性
d.ケア標準への準拠
のうち1以上を評価することを含む
ことを特徴とする請求項35記載のシステム。
【請求項37】
前記データコンパイルプロセッサは、前記複数サイトから取得したデータを利用して、
a.ケア設備とケアへの影響
b.被験者の健康状態
c.吸収材の利用および/または性能
のうち少なくとも1つを評価する
ことを特徴とする請求項35または36記載のシステム。
【請求項38】
a.適切な吸収材/パッドタイプを選択する
b.前記システムを用いて失禁患者を監視および/または評価する
c.失禁患者をタイミングよくケアする
d.失禁患者の状態を評価する
e.被験者の失禁ケアプランを開発する
f.失禁ケアプランの有効性を評価する
のうち1以上を含む作業を実施するケアスタッフのトレーニングにおいて用いる
ことを特徴とする請求項1から37のいずれか1項記載のシステム。
【請求項39】
吸収材内の湿潤イベントを検出するセンサであって、
a.前記吸収材に関連付けられたパッドタイプ
b.センサ状態
のうち一方または双方を自動識別する識別回路を備える
ことを特徴とするセンサ。
【請求項40】
前記識別回路は、前記識別回路から測定することができる、抵抗、インピーダンス、キャパシタンス、インダクタンス、共振周波数または搬送周波数、電位差、電流値または電磁界強度を含むグループから選択された前記識別回路の特性を参照することにより、特定パッドタイプの識別を容易にする
ことを特徴とする請求項39記載のセンサ。
【請求項41】
前記識別回路は、検出回路と並行に存在する
ことを特徴とする請求項39記載のセンサ。
【請求項42】
前記識別回路は、前記識別回路内の抵抗値を参照することによりパッドタイプを示し、特定のパッドタイプが特定の前記抵抗値に割り当てられている
ことを特徴とする請求項39から41のいずれか1項記載のセンサ。
【請求項43】
前記識別回路は、
a.新規接続
b.再接続
のうちいずれかのセンサ状態を判定することを容易にする
ことを特徴とする請求項39から42のいずれか1項記載のセンサ。
【請求項44】
前記センサ状態は、前記識別回路内に組み込まれた1以上の素子の特性を参照することにより判定され、前記素子は、
a.キャパシタ
b.消耗部品
c.非接触デバイス
d.読取専用メモリデバイス
e.プログラム可能メモリデバイス
を含むグループから選択される
ことを特徴とする請求項43記載のシステム。
【請求項45】
前記識別回路はキャパシタを備え、前記キャパシタが充電されていないとき前記センサ状態は新たに接続されたものと判定される
ことを特徴とする請求項43または44記載のシステム。
【請求項46】
前記キャパシタの値は、パッドタイプとセンサタイプの一方または双方に割り当てられている
ことを特徴とする請求項45記載のシステム。
【請求項47】
前記識別回路はヒューズを備え、前記ヒューズが閉じているとき前記センサ状態は未使用と判定される
ことを特徴とする請求項43から46のいずれか1項記載のシステム。
【請求項48】
送信器に接続された湿潤センサを有する吸収材を身に付けた被験者の失禁を監視する方法であって、
a.前記送信器からプロセッサへ失禁関連データを送信するステップ
b.前記吸収材内の湿潤容積を推定するステップ
c.前記プロセッサが表示手段へ表示情報を送信して推定した湿潤容積の視覚表現を時間軸で表示させるステップ
を有することを特徴とする方法。
【請求項49】
入力手段を操作して前記プロセッサへ時間マークされた非湿潤イベントデータを提供して、監視される被験者の1以上の非湿潤イベントの時点を前記プロセッサに前記視覚表現内で表示させるステップを有する
ことを特徴とする請求項48記載の方法。
【請求項50】
吸収材のパッドタイプ指標を受信するステップ、
前記吸収材内の推定した湿潤容積と前記吸収材のパッドタイプに基づき吸収材からの湿潤漏れリスクを計算するステップ、
を有することを特徴とする請求項48または49記載の方法。
【請求項51】
前記表示手段上で前記計算した湿潤漏れリスクを示す視覚表現を提供するステップを有する
ことを特徴とする請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記湿潤漏れリスクが規定の許容可能リスクをいつ超過するかを自動判定して監視される被験者に対応するケア作業者へ警告を自動送信するステップを有する
ことを特徴とする請求項50または51記載の方法。
【請求項53】
吸収材内の推定した湿潤容積が規定の閾値容積をいつ超過するかを自動判定して監視される被験者に対応するケア作業者へ警告を自動送信するステップを有する
ことを特徴とする請求項48から52のいずれか1項記載の方法。
【請求項54】
複数サイトから失禁関連データを受信する分析プロセッサへ失禁関連データを送信し、病院、ケア設備、吸収材の製造者、行政機関、保険業者、研究者、個人を含むグループから選択された要素が使用するため、前記複数サイトからのデータを照合、パッケージング、抽出、相関付け、統合、および/または分析するステップを有する
ことを特徴とする請求項48から53のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−509280(P2013−509280A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537266(P2012−537266)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001471
【国際公開番号】WO2011/054045
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(512115243)フレッド バーグマン ヘルスケア ピーティーワイ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】