女性刺激装置
部分的に変形可能な先端部分(16)、フランジ(26)、および前記先端部分から前記フランジへと外向きに延びる中間側壁部分(22)を有する、弾力性装置本体(14)を含む、女性刺激装置(10)。使用に際して、先端部分(16)が圧縮されて、空気を装置本体から押し出し、フランジ(26)は膣壁組織に接触して配置され、その結果クリトリス(39、39’)が装置本体(14)によって包囲される。先端部分(16)の開放変形および復元変形によって、装置本体(14)内部に部分真空が発生し、この真空によって装置が定位置に維持されるとともに、クリトリス(39、39’)が吸引される。中間側壁部分(22)は、外向きに凸形の側壁によって達成できるように、実質的に、先端部分(16)の変形に応じて変形不能であり、それによってクリトリス(39、39’)の有害な捕捉や圧縮を防止する。女性の性的機能をさらに高める目的で、使用中にクリトリスと接触させるための血管作用剤、薬物、および薬剤などの薬理学的に活性な物質を、装置に応用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的には女性に対する性的刺激を増大する装置に関し、より具体的には女性のクリトリスを吸引し、それによって血管充血(vascular engorgement)を起こさせて性的満足を向上させる装置に関する。
【0002】
発明の背景
クリトリス血管充血は、女性の性的興奮および全体的性的満足において重要な役割を果たす。性的興奮によって、平滑筋弛緩(smooth muscle relaxation)およびクリトリス内部の動脈血管拡張(arterial vasodilation)が起こる。結果として生じる血流の増加は、クリトリス亀頭(glans clitoris)の腫脹(tumescence)および性的興奮の向上につながる。様々な疾病、例えば動脈硬化(arteriosclerosis)および糖尿病によって、クリトリス勃起不全およびクリトリス動脈流低下が生じることがある。これによって、特に女性性的興奮不全(FASD:Female Sexual Arousal Disorder)に悩む女性においては、クリトリス腫脹を達成するのが困難または不可能となる可能性がある。FASDは、主観的興奮(subjective excitement)、性器潤滑またはオルガスム機能の欠如として表現することができる。
【0003】
女性の性的反応を刺激するために様々な装置が開発されている。最も一般的な装置は、クリトリスに対して摩擦を生成するバイブレータや機械式張型(dildos)である。特にFASDに悩む女性について、クリトリス充血を増加させるさらに効果的な方法は、吸引の使用によるものである。クリトリス上に配置した部分的な真空によって、収縮期血圧(systolic blood pressure)よりも低い負圧がその器官内に発生する。これは、クリトリス動脈流入を促進し、血管充血と性的興奮を向上させることになる。この効果は、FSADを患う女性において特に顕著である。
【0004】
Taylorに授与された米国特許第5725473号には、ユーザの乳頭および外陰(vulva)上部に配置する吸引カップが記載されている。この吸引カップは、精巧な管の配列を介して、遠隔位置の真空球(vacuum bulb)に接続されている。外部配置された球の圧縮によって、吸引カップ内に真空が導入される。しかしながら、この装置は、着用するのが煩わしく、クリトリスに集中した真空を提供するようには思われない。
米国特許第5693002号には、吸引カップと振動モータを取り付けたペニスリングが記載されている。性交中に、吸引カップは着用者の相手の膣領域を圧迫する。性交の激しい動きを想定すると、このデバイスで達成される吸引は、集中されない、短くかつ断続的であると考えられる。
【0005】
Hockhalterに授与された米国特許第6099463号には、クリトリス上に適合するように寸法決めされて、ユーザの口、真空球、または機械式ポンプなどの外部配置の可変部分真空源に配管を介して接続された、管状吸引チャンバが記載されている。吸引力は逆止弁(check valve)によって制御することが可能であり、この逆止弁は、部分真空を開放するのにも使用される。Hovlanによる国際公開WO/28939号には、外部配置の、ハンドヘルド式電気ポンプに接続された、クリトリス吸引アプリケータを使用する、Hockhalterと類似の装置が記載されている。これらの装置は両方とも、配管を介して、吸入チャンバに接続される外部真空源を必要とする。これらの装置が多重構成要素からなるという観点では、使用が煩わしく、真空がかけられている間、ユーザは装置を保持する必要がある。
【0006】
DannらおよびScaeferらにそれぞれ授与された、米国特許第5755236号および第5908379号は、両者とも、遠位先端部分、フランジおよび中間円錐台側壁(frustoconical side walls)を有する、真空を生成し部分的に変形可能な一体構造の装置であって、中間円錐台側壁はユーザの尿道上に配置すると、尿失禁を防止する。Schaeferらによって記載される装置では、圧縮および開放時に、中間円錐台側壁の崩壊と狭い先端部への尿道の引き込みが起こる。尿道は、先端部分内で圧縮され、それによってストレス性尿失禁(stress urinary incontinence)による尿漏れを防止する。しかしながら、実際には、この装置は、不快感と潜在的な組織傷害を伴う尿道組織の挟み込み(pinching)を起こす可能性がある。Dannらによって記載された装置においては、中間円錐台側壁の長さが、先端部分から尿道までの有効距離を増大させるように選択され、それによって先端部分中への組織の捕捉(entrapment)を最小化するとともに、中間側壁による柔らかな圧縮を利用している。これら装置の両方は、尿道圧縮と閉鎖を生成してストレス性尿失禁を防止するために、中間側壁の内向き変形を利用している。
【0007】
発明の概要
本発明によれば、女性のクリトリスを刺激する装置は、密閉された先端部分、フランジ、および前記先端部分から前記フランジへと外向きに延びる中間側壁部分を有する、弾力性があり少なくとも部分的に変形可能な装置本体を含む。この装置本体は、ユーザのクリトリスを包囲するように寸法決めされており、例示的な一態様においては、装置本体は一体構造である。使用に際して、前記装置本体は、ユーザのクリトリスの上方に設置され、先端部分が変形させられて、前記装置本体によって形成される内部チャンバ内に、真空環境が形成される。この真空環境によって、装置は、クリトリス回りでの確実な密封係合(sealed engagement)を維持する。
【0008】
この配設によって、小型で簡単、かつ効果的な女性クリトリス刺激装置が、クリトリスを吸引し、それによって血管充血と性的興奮を刺激する。有利なことに、この装置は、外部真空源またはそれに関連する配管または接続を必要とせず、使用が簡単であり、ユーザが、気づかれることなく目立たないように着用したままで日常活動を行うことを可能にする。
中間側壁部分は、実質的に、先端部分の変形に応じて変形不能である。そのような例示的側壁部分の1つは、外向きに凸形である。このような配設によって、側壁の当接とそれに関連する組織圧縮または傷害を防止するように、実質的に固定容積の下部真空チャンバがクリトリス上方に形成される。変形に対して抵抗するように下部真空チャンバの構造をさらに強化するために、内部突起(internal protuberance)および/または外部突起を外向きに凸形の中間側壁上に設けてもよい。
【0009】
生体適合性の潤滑剤または接着剤を、真空シールを強化するためにフランジに塗布してもよい。膣の陰唇(labia)が装置を覆い、さらにそれを定位置に固定して、日常の活動中に目立たないように装置を着用することを可能にする。
この装置には、使用に際してユーザのクリトリスと連続的に接触して、クリトリスの血流と性的興奮をさらに向上させるように、血管作用剤(vasoactive agents)、薬物(substances)、薬剤(medications)またはハーブなどの、薬理学的に活性な物質を供給してもよい。一態様においては、薬理学的に活性な物質は、フランジ上に配置される。別の態様においては、薬理学的に活性な物質は、装置本体内に配置されて、先端部分の変形に応じて、クリトリスと接触するように放出される。さらに別の態様においては、薬理学的に活性な物質は、装置の壁の中に埋め込まれる。また、装置の各部の様々な形状について記述してあり、これらの形状はクリトリス上への構造的適合の精度を変化させる。
【0010】
女性に対する性的刺激を増大させる方法は、先端部分、フランジ、および前記先端部分から前記フランジへと延びる中間側壁部分を有する装置本体を、クリトリスの上方に設置して、前記装置本体が、クリトリスを包囲するようにすることを含む。この方法は、前記先端部分を変形させて、それによって前記装置本体内に真空チャンバを生成することをさらに含む。好ましくは、中間側壁部分は、実質的に、先端部分の変形に応じて変形不能である。一態様においては、この効果は、中間側壁に外向きに凸形形状を与えることによって達成される。この配設によって、クリトリスの挟み込みまたは圧縮を防止する簡単な方法で、ユーザのクリトリス上方に真空チャンバが形成される。
【0011】
本発明のさらに別の観点によれば、薬剤送達方法は、使用に際してクリトリスと接触する薬理学的に活性な物質を、装置本体に供給することを含む。一態様においては、薬理学的に活性な物質は、先端部分の変形に応じてユーザのクリトリスに接触するように装置本体に供給され、別の態様においては、薬理学的に活性な物質は、使用に際してユーザのクリトリスに接触するようにフランジ上に供給される。さらに別の態様においては、薬理学的に活性な物質は、装置の壁の中に埋め込まれ、膣粘膜と接触するときに放出される。適当な薬理学的に活性な物質の例としては、血管作用性剤、薬物、薬剤またはハーブなどが含まれる。
【0012】
発明の詳細な説明
前述した本発明の特徴、および本発明の本質は、以下の詳細な説明から明確に理解されるであろう。
図1、1Aおよび1Bを参照すると、女性刺激装置10は、ユーザ身体から遠位にある先端部分16、フランジ26、および先端部分からフランジに延びる、実質的に変形不能な中間側壁部分22を有する、装置本体14を含む。装置本体14は、先端部分16の曲線状外端壁19からフランジ26へと延びる内部真空チャンバ18の境界を定めている。内部真空チャンバ18は、2つのサブチャンバ、すなわち変形可能な真空生成上部チャンバ18aおよび変形不能な真空蓄積下部チャンバ18bからなり、これらのチャンバは、以下で明白になるように、使用においては互いの作用を受ける。フランジ26は、身体接触表面29を含む。
【0013】
先端部分16は、垂直壁17および曲線状外端壁19を含み、実質的に楕円形であり、この先端部分はグリップ部分として機能して、以下に示すような方法で、この装置の取付けと取外しを容易にする。代替態様においては、先端部分16の外端壁19は平坦である。先端部分16の内部は、上方真空チャンバ18aの境界を定める。先端部分16は、真空チャンバ18内部の空気と大気空気圧との間の空気圧差によって、装置10をユーザ身体に対して密封するのに十分な部分真空を内部真空チャンバ18内に生成するために、少なくとも部分的に変形可能または圧縮可能である。
【0014】
中間側壁部分22は、先端部分16の底部からフランジ26へと外向きに延びる。中間側壁部分22の内部は、下部真空チャンバ18bを形成する。
中間側壁部分22は、クリトリスの圧縮を避けるように設計されている。この例示的態様においては、中間側壁部分は、実質的に変形不能であり、先端部分の圧縮によって真空がかけられるときにその形状を維持する。したがって下部真空チャンバ18bの容積は、実質的に一定である。好ましい一態様においては、中間側壁部分22は外向きに凸形である。この配設によって、真空がかけられるときに、中間側壁24が内向きに折り込まれて当接するのが防止される。これによって、下部真空チャンバ18b(図6A)内に位置するクリトリスの挟み込みまたは圧縮が防止される。
【0015】
図2および図2Aに示す、さらに別の態様において、同一参照番号は同一要素を示しており、中間側壁部分22の変形不能の特性は、中間側壁24の内表面21の少なくとも一部分に沿って延びる複数の突起(protuberances)27によって強化されている。突起27は、強化アーチとして機能して、先端部分の変形に応じた中間側壁22の変形に対する抵抗を増大させる。
【0016】
図3および図3Aのさらに別の態様を参照すると、同一の参照番号は同一要素を示しており、複数の強化突起27が、中間側壁24の外表面23に沿って延びている。図2および3の態様においては、好ましくは、約4から8の突起があるが、突起の数、大きさ、形状および場所は変えることができることが認識されるであろう。例えば、突起は、中間側壁24の内表面21と、外表面23との両方に沿って設けることができる。上述のように、中間側壁24の外向き凸形形状を維持することによって、内向き折り込み(folding)、当接ならびに組織の圧迫および捕捉が防止される。
フランジ26の身体接触表面29は、ユーザのクリトリスのまわりに連続シールを形成する。このシールは、水性ゲル、油性ゲル、または親水性の水溶性ポリマーなどの、フランジ26の身体接触表面29に配置される、接着材料または非粘着潤滑剤を使用することによって向上させることができる。
【0017】
通常、装置10は一体構造である。しかしながら、代替的に、装置の部分を別個に構築して、その後に接合してもよい。装置10は、記述したような方法で、人体に適用するのに適当な、弾力性があり、少なくとも部分的に変形可能な任意の材料によって構築することができる。この好ましい態様においては、装置は、シリコーン、熱可塑性エラストマー、ウレタン、またはゴム材料からなる。ここで、中間側壁24は変形可能な材料からなるが、側壁は、その形状(例えば、外向き凸形)によって、また任意選択で、強化突起27(図2および図3)を使用することによって、実質的に、先端部分の変形に応じて変形不能となることが認識されるであろう。さらに認識されるように、側壁24を実質的に、先端部分の変形に応じて変形不能にするための、その他の方法が可能であり、例えば、これに限定はされないが、材料選択、形状、寸法、および強化構造のうち1種または2種以上が含まれる。
【0018】
一般に、装置の寸法は、前方膣前庭(anterior vaginal vestibule)の範囲内でクリトリス上方に快適に適合するように、女性の代表的な解剖学的構造から決められる。この好ましい態様においては、装置の中心から中間側壁部分22の両端部に延びる、外部半径AおよびA’は、楕円形の大きさと鋭さに応じて、0.50〜1.75cmの範囲で変えることができる。先端部分16の半径は、上述の寸法に比例して変化するが、一般的には、それぞれ0.25〜0.75cmの範囲となる。好ましくは、フランジ26の身体接触表面は、クリトリスの外周に隣接する膣組織に接触する。この配設では、装置の効力は、集中真空領域を設けることによって向上する。装置10の高さも変えることができるが、過剰な突出を設けることなく、前方膣前庭の範囲に快適に適合しなくてはならない。この好ましい態様においては、高さは、約2cm程度である。しかしながら、装置10の正確な寸法は、本発明の趣旨から逸脱することなく、変えることができることが認識されるであろう。
【0019】
装置10の形状も、本発明の趣旨から逸脱することなく変えることができる。図1、1Bの態様においては、先端部分16、凸状中間側壁部分22およびフランジ26を含む、装置部分は、実質的に楕円(oval)形または長円(ellipsoid)形である。装置10は、前方膣前庭の範囲内でユーザのクリトリス上に配置され、その長軸が膣円蓋(vaginal vault)の前後軸に平行になるようにされる。この方向においては、クリトリスの性感組織(erogenous tissue)が適当に覆われ、同時に唇褶(labial folds)の垂直長さによって装置が定位置に固定される。
【0020】
図4Aおよび図4Bを参照すると、装置別の10’の別の態様が示してあり、ここで同一の要素は同一の参照番号を有するが、装置10’の参照番号は、図1の同一要素と形状が異なるが機能は異ならないことを示すために、プライム記号をつけてある。すなわち、装置10’は、図のように構成された、先端部分16’、フランジ26’、および実質的に変形不能な中間側壁部分22’を有する、装置本体14’を含む。装置10’は、装置10’の要素が、図のように実質的に円形であることにおいて、装置10(図1)と異なる。装置10’は、クリトリスが実質的にフランジ26’内の中心なるように、ユーザのクリトリス上方に配置される。
【0021】
装置10’’の別の態様を図5に示してあり、この態様は同じ要素を含むが、さらに別の代替形状を有する。装置10’’は、先端部分16’’、フランジ26’’、および実質的に変形不能な側壁部分22’’を有する装置本体14’’を含む。この態様においては、フランジ26’’および側壁部分22’’の形状は実質的に三角形であり、先端部分16’’の形状は実質的に円形または楕円形である。この態様は、前方から接合するときに、唇褶の脚(crus)の範囲内で構造的に緊密に適合するという利点をもたらす。
【0022】
また図6および図6Aを参照すると、装置10(図1)をユーザの体に取り付ける方法を示してある。ユーザは、先端部分16を圧縮し、それによって先端部分を変形させて、内部真空チャンバ18全体の内側の空気量を減少させる。次いで、装置10は、フランジ26の身体接触表面29を、クリトリス39を包囲する前膣円蓋(anterior vaginal vault)組織に接触させて設置した状態で、クリトリス39の上方に快適に装着され、そして先端部分16が開放されて、装置は元の形状に拡張することが可能となる。先端部分の復元的な変形によって、少なくとも部分真空が内部真空チャンバ18内にもたらされる。この真空環境は、クリトリスの充血と性的興奮を向上させる役割を果たし、同時に装置10とユーザとの確実な密封係合を維持する役割をする。周囲の唇褶は、装置10をクリトリス39の方向に、かつ前方膣前庭33の範囲内にさらに固定する。この方法によって、唇褶は、装置10を覆うとともに装置の移動を防止する。これによってユーザは、日常の仕事を行いながら、さらに自身による操作を必要としたり、困惑させられることなく、装置10を目立たないように着用することができる。
【0023】
先端部分16の変形によって、内部真空チャンバ18全体の内部の空気量が減少して、部分真空が生成される。外部大気圧と内部真空チャンバ内の圧力との間の圧力差によって生成される力は、中間側壁24を内向きに真空チャンバの中心に向かわせようとする。中間側壁24が(例えば、平坦または内向きに凹形に)変形可能である場合には、内部真空チャンバ18にかかる十分な真空によって、中間側壁24が内向きに崩壊して、当接関係に向かうか、あるいは当接関係となる。この場合には、一般に膨張性(distensible)のクリトリス39が、変形させられた内部真空チャンバ18に引き込まれて、当接する中間側壁24によって圧縮される。クリトリス組織が、これらの当接する側壁によって捕捉されて挟み込まれる可能性もある。好ましい態様においては、本発明の側壁24の外向きの凸形は、アーチのように作用して、中間側壁24の内向きの移動を防止し、それによってクリトリスの捕捉および/または圧縮を防止する。
【0024】
より正確には、中間側壁24の外向きに凸形形状は、「鐘(bell)」に似た2つの機能チャンバ18a、18bを生成する。外向きに凸形の側壁によって形成される、下部真空チャンバ18bは、実質的に変形不能で、実質的に一定容量真空蓄積室として働き、一方で、先端部分によって形成される、上部真空チャンバ18aは、その側壁変形により真空を生成する役割を果す。このようにして、下部真空チャンバ18bは、クリトリスの組織の圧縮、閉塞または挟み込みを起こすことなく、クリトリス組織に対する吸引力を均一に分布させる。装置の高さは、クリトリスの上部真空チャンバ18a中への膨張を防止するのに十分である。
【0025】
ユーザは、中間真空チャンバ18内の真空の量を、先端部分の圧縮の程度、したがって置換される空気の量を変えることによって変更することが可能である。先端部分に対する手動圧縮の量が大きいほど、置換される空気の量およびその後の真空は大きくなる。このようにして、ユーザは、生理的な反応を生成するために、外部真空源からの事前設定された真空に頼るのではなく、クリトリスの吸引量を有利に調整することが可能である。女性の性的興奮を刺激するのに必要な真空量は、ユーザとその興奮前状態(pre-excitatory state)に応じて変る可能性がある。
【0026】
装置10の効力は、クリトリスの血流、膣の潤滑、および膣感覚を高める、様々な薬理学的に活性な物質のための送達システムとしてこの装置を利用することによって向上させることができる。これらの物質としては、それに限定はされないが、1)血管拡張薬(vasodilators)として作用する、天然および合成両方の血管作用剤、例えば、プロスタグランジン(prostaglandins)、内皮由来弛緩因子(endothelial-derived relaxation factors)、血管作用間質ペプチド作用物質(vasoactive interstitial polypeptide agonists)、平滑筋弛緩薬、ロイコトリエン抑止剤(leukotriene inhibitors)、L‐アルギニン(L-arginine)、その他、および2)クリトリス刺激を増大させる薬剤および薬物、例えばエストロゲン、メチルテストステロン、およびアポモルヒネなどがあげられる。そのような薬理学的に活性な物質40は、図7および図7Aの態様に示すように、内部真空チャンバ18内に供給することができる。
【0027】
ユーザが先端部分16を圧縮するとき、剤は、クリトリスと連続的に接触するように、下方に押される。図7Bに示す別の態様においては、薬理学的に活性な物質40は、フランジ26の身体接触表面29上に配置される。装置10をクリトリスの上方に設置するときに、ユーザは、身体接触表面29でクリトリスに柔らかく接触し、それによって用剤をクリトリス上に配置する。図7Cに示すさらに別の態様においては、薬理学的に活性な物質40は、装置10の壁の中に埋め込まれて、膣粘膜と接触すると放出される。真空と、これらの物質の作用を連続的に受けることを組み合わせることによって、クリトリス血流と性的興奮とがさらに向上する。
【0028】
本発明の好ましい態様について説明したが、当業者には、これらの態様の概念を組み入れたその他の態様を使用できることが明白であろう。これらの態様は、開示した態様に限定すべきではなく、添付したクレームの主旨と範囲によってのみ限定されるべきであると考えられたい。本明細書において引用したすべての刊行物および参考文献は、その全文を参照により本明細書に特別に組み入れてある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による女性刺激装置の側面図である。
【図1A】図1の装置の底面斜視図である。
【図1B】図1の装置の横断面側面図である。
【0030】
【図2】中間側壁部分の内表面上に強化突起が設けられた、本発明の代替態様による女性刺激装置の底面斜視図である。
【図2A】図2の装置の横断面側面図である。
【0031】
【図3】中間側壁部分の外表面上に強化突起が設けられた、本発明のさらに別の態様による女性刺激装置の底面斜視図である。
【図3A】図3の装置の横断面側面図である。
【0032】
【図4】本発明のさらに別の態様による、女性刺激装置の底面斜視図である。
【図4A】図4の装置の横断面側面図である。
【0033】
【図5】本発明のさらに別の態様による女性刺激装置の斜視図である。
【0034】
【図6】ユーザのクリトリスの上方に位置するが、真空環境が存在しないので使用中ではない、図1の装置の横断面側面図である。
【図6A】使用に際してユーザのクリトリスの上方に位置する、図1の装置の横断面側面図である。
【0035】
【図7】装置本体内部に薬理学的に活性な物質を有する、本発明の一態様の横断面側面図である。
【図7A】装置本体内部に薬理学的に活性な物質を有する、本発明の代替態様の横断面側面図である。
【図7B】フランジの身体接触表面上に薬理学的に活性な物質を有する、本発明の一態様の横断面側面図である。
【図7C】装置の壁の中に埋め込まれた薬理学的に活性な物質を有する、本発明の一態様の横断面側面図である。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的には女性に対する性的刺激を増大する装置に関し、より具体的には女性のクリトリスを吸引し、それによって血管充血(vascular engorgement)を起こさせて性的満足を向上させる装置に関する。
【0002】
発明の背景
クリトリス血管充血は、女性の性的興奮および全体的性的満足において重要な役割を果たす。性的興奮によって、平滑筋弛緩(smooth muscle relaxation)およびクリトリス内部の動脈血管拡張(arterial vasodilation)が起こる。結果として生じる血流の増加は、クリトリス亀頭(glans clitoris)の腫脹(tumescence)および性的興奮の向上につながる。様々な疾病、例えば動脈硬化(arteriosclerosis)および糖尿病によって、クリトリス勃起不全およびクリトリス動脈流低下が生じることがある。これによって、特に女性性的興奮不全(FASD:Female Sexual Arousal Disorder)に悩む女性においては、クリトリス腫脹を達成するのが困難または不可能となる可能性がある。FASDは、主観的興奮(subjective excitement)、性器潤滑またはオルガスム機能の欠如として表現することができる。
【0003】
女性の性的反応を刺激するために様々な装置が開発されている。最も一般的な装置は、クリトリスに対して摩擦を生成するバイブレータや機械式張型(dildos)である。特にFASDに悩む女性について、クリトリス充血を増加させるさらに効果的な方法は、吸引の使用によるものである。クリトリス上に配置した部分的な真空によって、収縮期血圧(systolic blood pressure)よりも低い負圧がその器官内に発生する。これは、クリトリス動脈流入を促進し、血管充血と性的興奮を向上させることになる。この効果は、FSADを患う女性において特に顕著である。
【0004】
Taylorに授与された米国特許第5725473号には、ユーザの乳頭および外陰(vulva)上部に配置する吸引カップが記載されている。この吸引カップは、精巧な管の配列を介して、遠隔位置の真空球(vacuum bulb)に接続されている。外部配置された球の圧縮によって、吸引カップ内に真空が導入される。しかしながら、この装置は、着用するのが煩わしく、クリトリスに集中した真空を提供するようには思われない。
米国特許第5693002号には、吸引カップと振動モータを取り付けたペニスリングが記載されている。性交中に、吸引カップは着用者の相手の膣領域を圧迫する。性交の激しい動きを想定すると、このデバイスで達成される吸引は、集中されない、短くかつ断続的であると考えられる。
【0005】
Hockhalterに授与された米国特許第6099463号には、クリトリス上に適合するように寸法決めされて、ユーザの口、真空球、または機械式ポンプなどの外部配置の可変部分真空源に配管を介して接続された、管状吸引チャンバが記載されている。吸引力は逆止弁(check valve)によって制御することが可能であり、この逆止弁は、部分真空を開放するのにも使用される。Hovlanによる国際公開WO/28939号には、外部配置の、ハンドヘルド式電気ポンプに接続された、クリトリス吸引アプリケータを使用する、Hockhalterと類似の装置が記載されている。これらの装置は両方とも、配管を介して、吸入チャンバに接続される外部真空源を必要とする。これらの装置が多重構成要素からなるという観点では、使用が煩わしく、真空がかけられている間、ユーザは装置を保持する必要がある。
【0006】
DannらおよびScaeferらにそれぞれ授与された、米国特許第5755236号および第5908379号は、両者とも、遠位先端部分、フランジおよび中間円錐台側壁(frustoconical side walls)を有する、真空を生成し部分的に変形可能な一体構造の装置であって、中間円錐台側壁はユーザの尿道上に配置すると、尿失禁を防止する。Schaeferらによって記載される装置では、圧縮および開放時に、中間円錐台側壁の崩壊と狭い先端部への尿道の引き込みが起こる。尿道は、先端部分内で圧縮され、それによってストレス性尿失禁(stress urinary incontinence)による尿漏れを防止する。しかしながら、実際には、この装置は、不快感と潜在的な組織傷害を伴う尿道組織の挟み込み(pinching)を起こす可能性がある。Dannらによって記載された装置においては、中間円錐台側壁の長さが、先端部分から尿道までの有効距離を増大させるように選択され、それによって先端部分中への組織の捕捉(entrapment)を最小化するとともに、中間側壁による柔らかな圧縮を利用している。これら装置の両方は、尿道圧縮と閉鎖を生成してストレス性尿失禁を防止するために、中間側壁の内向き変形を利用している。
【0007】
発明の概要
本発明によれば、女性のクリトリスを刺激する装置は、密閉された先端部分、フランジ、および前記先端部分から前記フランジへと外向きに延びる中間側壁部分を有する、弾力性があり少なくとも部分的に変形可能な装置本体を含む。この装置本体は、ユーザのクリトリスを包囲するように寸法決めされており、例示的な一態様においては、装置本体は一体構造である。使用に際して、前記装置本体は、ユーザのクリトリスの上方に設置され、先端部分が変形させられて、前記装置本体によって形成される内部チャンバ内に、真空環境が形成される。この真空環境によって、装置は、クリトリス回りでの確実な密封係合(sealed engagement)を維持する。
【0008】
この配設によって、小型で簡単、かつ効果的な女性クリトリス刺激装置が、クリトリスを吸引し、それによって血管充血と性的興奮を刺激する。有利なことに、この装置は、外部真空源またはそれに関連する配管または接続を必要とせず、使用が簡単であり、ユーザが、気づかれることなく目立たないように着用したままで日常活動を行うことを可能にする。
中間側壁部分は、実質的に、先端部分の変形に応じて変形不能である。そのような例示的側壁部分の1つは、外向きに凸形である。このような配設によって、側壁の当接とそれに関連する組織圧縮または傷害を防止するように、実質的に固定容積の下部真空チャンバがクリトリス上方に形成される。変形に対して抵抗するように下部真空チャンバの構造をさらに強化するために、内部突起(internal protuberance)および/または外部突起を外向きに凸形の中間側壁上に設けてもよい。
【0009】
生体適合性の潤滑剤または接着剤を、真空シールを強化するためにフランジに塗布してもよい。膣の陰唇(labia)が装置を覆い、さらにそれを定位置に固定して、日常の活動中に目立たないように装置を着用することを可能にする。
この装置には、使用に際してユーザのクリトリスと連続的に接触して、クリトリスの血流と性的興奮をさらに向上させるように、血管作用剤(vasoactive agents)、薬物(substances)、薬剤(medications)またはハーブなどの、薬理学的に活性な物質を供給してもよい。一態様においては、薬理学的に活性な物質は、フランジ上に配置される。別の態様においては、薬理学的に活性な物質は、装置本体内に配置されて、先端部分の変形に応じて、クリトリスと接触するように放出される。さらに別の態様においては、薬理学的に活性な物質は、装置の壁の中に埋め込まれる。また、装置の各部の様々な形状について記述してあり、これらの形状はクリトリス上への構造的適合の精度を変化させる。
【0010】
女性に対する性的刺激を増大させる方法は、先端部分、フランジ、および前記先端部分から前記フランジへと延びる中間側壁部分を有する装置本体を、クリトリスの上方に設置して、前記装置本体が、クリトリスを包囲するようにすることを含む。この方法は、前記先端部分を変形させて、それによって前記装置本体内に真空チャンバを生成することをさらに含む。好ましくは、中間側壁部分は、実質的に、先端部分の変形に応じて変形不能である。一態様においては、この効果は、中間側壁に外向きに凸形形状を与えることによって達成される。この配設によって、クリトリスの挟み込みまたは圧縮を防止する簡単な方法で、ユーザのクリトリス上方に真空チャンバが形成される。
【0011】
本発明のさらに別の観点によれば、薬剤送達方法は、使用に際してクリトリスと接触する薬理学的に活性な物質を、装置本体に供給することを含む。一態様においては、薬理学的に活性な物質は、先端部分の変形に応じてユーザのクリトリスに接触するように装置本体に供給され、別の態様においては、薬理学的に活性な物質は、使用に際してユーザのクリトリスに接触するようにフランジ上に供給される。さらに別の態様においては、薬理学的に活性な物質は、装置の壁の中に埋め込まれ、膣粘膜と接触するときに放出される。適当な薬理学的に活性な物質の例としては、血管作用性剤、薬物、薬剤またはハーブなどが含まれる。
【0012】
発明の詳細な説明
前述した本発明の特徴、および本発明の本質は、以下の詳細な説明から明確に理解されるであろう。
図1、1Aおよび1Bを参照すると、女性刺激装置10は、ユーザ身体から遠位にある先端部分16、フランジ26、および先端部分からフランジに延びる、実質的に変形不能な中間側壁部分22を有する、装置本体14を含む。装置本体14は、先端部分16の曲線状外端壁19からフランジ26へと延びる内部真空チャンバ18の境界を定めている。内部真空チャンバ18は、2つのサブチャンバ、すなわち変形可能な真空生成上部チャンバ18aおよび変形不能な真空蓄積下部チャンバ18bからなり、これらのチャンバは、以下で明白になるように、使用においては互いの作用を受ける。フランジ26は、身体接触表面29を含む。
【0013】
先端部分16は、垂直壁17および曲線状外端壁19を含み、実質的に楕円形であり、この先端部分はグリップ部分として機能して、以下に示すような方法で、この装置の取付けと取外しを容易にする。代替態様においては、先端部分16の外端壁19は平坦である。先端部分16の内部は、上方真空チャンバ18aの境界を定める。先端部分16は、真空チャンバ18内部の空気と大気空気圧との間の空気圧差によって、装置10をユーザ身体に対して密封するのに十分な部分真空を内部真空チャンバ18内に生成するために、少なくとも部分的に変形可能または圧縮可能である。
【0014】
中間側壁部分22は、先端部分16の底部からフランジ26へと外向きに延びる。中間側壁部分22の内部は、下部真空チャンバ18bを形成する。
中間側壁部分22は、クリトリスの圧縮を避けるように設計されている。この例示的態様においては、中間側壁部分は、実質的に変形不能であり、先端部分の圧縮によって真空がかけられるときにその形状を維持する。したがって下部真空チャンバ18bの容積は、実質的に一定である。好ましい一態様においては、中間側壁部分22は外向きに凸形である。この配設によって、真空がかけられるときに、中間側壁24が内向きに折り込まれて当接するのが防止される。これによって、下部真空チャンバ18b(図6A)内に位置するクリトリスの挟み込みまたは圧縮が防止される。
【0015】
図2および図2Aに示す、さらに別の態様において、同一参照番号は同一要素を示しており、中間側壁部分22の変形不能の特性は、中間側壁24の内表面21の少なくとも一部分に沿って延びる複数の突起(protuberances)27によって強化されている。突起27は、強化アーチとして機能して、先端部分の変形に応じた中間側壁22の変形に対する抵抗を増大させる。
【0016】
図3および図3Aのさらに別の態様を参照すると、同一の参照番号は同一要素を示しており、複数の強化突起27が、中間側壁24の外表面23に沿って延びている。図2および3の態様においては、好ましくは、約4から8の突起があるが、突起の数、大きさ、形状および場所は変えることができることが認識されるであろう。例えば、突起は、中間側壁24の内表面21と、外表面23との両方に沿って設けることができる。上述のように、中間側壁24の外向き凸形形状を維持することによって、内向き折り込み(folding)、当接ならびに組織の圧迫および捕捉が防止される。
フランジ26の身体接触表面29は、ユーザのクリトリスのまわりに連続シールを形成する。このシールは、水性ゲル、油性ゲル、または親水性の水溶性ポリマーなどの、フランジ26の身体接触表面29に配置される、接着材料または非粘着潤滑剤を使用することによって向上させることができる。
【0017】
通常、装置10は一体構造である。しかしながら、代替的に、装置の部分を別個に構築して、その後に接合してもよい。装置10は、記述したような方法で、人体に適用するのに適当な、弾力性があり、少なくとも部分的に変形可能な任意の材料によって構築することができる。この好ましい態様においては、装置は、シリコーン、熱可塑性エラストマー、ウレタン、またはゴム材料からなる。ここで、中間側壁24は変形可能な材料からなるが、側壁は、その形状(例えば、外向き凸形)によって、また任意選択で、強化突起27(図2および図3)を使用することによって、実質的に、先端部分の変形に応じて変形不能となることが認識されるであろう。さらに認識されるように、側壁24を実質的に、先端部分の変形に応じて変形不能にするための、その他の方法が可能であり、例えば、これに限定はされないが、材料選択、形状、寸法、および強化構造のうち1種または2種以上が含まれる。
【0018】
一般に、装置の寸法は、前方膣前庭(anterior vaginal vestibule)の範囲内でクリトリス上方に快適に適合するように、女性の代表的な解剖学的構造から決められる。この好ましい態様においては、装置の中心から中間側壁部分22の両端部に延びる、外部半径AおよびA’は、楕円形の大きさと鋭さに応じて、0.50〜1.75cmの範囲で変えることができる。先端部分16の半径は、上述の寸法に比例して変化するが、一般的には、それぞれ0.25〜0.75cmの範囲となる。好ましくは、フランジ26の身体接触表面は、クリトリスの外周に隣接する膣組織に接触する。この配設では、装置の効力は、集中真空領域を設けることによって向上する。装置10の高さも変えることができるが、過剰な突出を設けることなく、前方膣前庭の範囲に快適に適合しなくてはならない。この好ましい態様においては、高さは、約2cm程度である。しかしながら、装置10の正確な寸法は、本発明の趣旨から逸脱することなく、変えることができることが認識されるであろう。
【0019】
装置10の形状も、本発明の趣旨から逸脱することなく変えることができる。図1、1Bの態様においては、先端部分16、凸状中間側壁部分22およびフランジ26を含む、装置部分は、実質的に楕円(oval)形または長円(ellipsoid)形である。装置10は、前方膣前庭の範囲内でユーザのクリトリス上に配置され、その長軸が膣円蓋(vaginal vault)の前後軸に平行になるようにされる。この方向においては、クリトリスの性感組織(erogenous tissue)が適当に覆われ、同時に唇褶(labial folds)の垂直長さによって装置が定位置に固定される。
【0020】
図4Aおよび図4Bを参照すると、装置別の10’の別の態様が示してあり、ここで同一の要素は同一の参照番号を有するが、装置10’の参照番号は、図1の同一要素と形状が異なるが機能は異ならないことを示すために、プライム記号をつけてある。すなわち、装置10’は、図のように構成された、先端部分16’、フランジ26’、および実質的に変形不能な中間側壁部分22’を有する、装置本体14’を含む。装置10’は、装置10’の要素が、図のように実質的に円形であることにおいて、装置10(図1)と異なる。装置10’は、クリトリスが実質的にフランジ26’内の中心なるように、ユーザのクリトリス上方に配置される。
【0021】
装置10’’の別の態様を図5に示してあり、この態様は同じ要素を含むが、さらに別の代替形状を有する。装置10’’は、先端部分16’’、フランジ26’’、および実質的に変形不能な側壁部分22’’を有する装置本体14’’を含む。この態様においては、フランジ26’’および側壁部分22’’の形状は実質的に三角形であり、先端部分16’’の形状は実質的に円形または楕円形である。この態様は、前方から接合するときに、唇褶の脚(crus)の範囲内で構造的に緊密に適合するという利点をもたらす。
【0022】
また図6および図6Aを参照すると、装置10(図1)をユーザの体に取り付ける方法を示してある。ユーザは、先端部分16を圧縮し、それによって先端部分を変形させて、内部真空チャンバ18全体の内側の空気量を減少させる。次いで、装置10は、フランジ26の身体接触表面29を、クリトリス39を包囲する前膣円蓋(anterior vaginal vault)組織に接触させて設置した状態で、クリトリス39の上方に快適に装着され、そして先端部分16が開放されて、装置は元の形状に拡張することが可能となる。先端部分の復元的な変形によって、少なくとも部分真空が内部真空チャンバ18内にもたらされる。この真空環境は、クリトリスの充血と性的興奮を向上させる役割を果たし、同時に装置10とユーザとの確実な密封係合を維持する役割をする。周囲の唇褶は、装置10をクリトリス39の方向に、かつ前方膣前庭33の範囲内にさらに固定する。この方法によって、唇褶は、装置10を覆うとともに装置の移動を防止する。これによってユーザは、日常の仕事を行いながら、さらに自身による操作を必要としたり、困惑させられることなく、装置10を目立たないように着用することができる。
【0023】
先端部分16の変形によって、内部真空チャンバ18全体の内部の空気量が減少して、部分真空が生成される。外部大気圧と内部真空チャンバ内の圧力との間の圧力差によって生成される力は、中間側壁24を内向きに真空チャンバの中心に向かわせようとする。中間側壁24が(例えば、平坦または内向きに凹形に)変形可能である場合には、内部真空チャンバ18にかかる十分な真空によって、中間側壁24が内向きに崩壊して、当接関係に向かうか、あるいは当接関係となる。この場合には、一般に膨張性(distensible)のクリトリス39が、変形させられた内部真空チャンバ18に引き込まれて、当接する中間側壁24によって圧縮される。クリトリス組織が、これらの当接する側壁によって捕捉されて挟み込まれる可能性もある。好ましい態様においては、本発明の側壁24の外向きの凸形は、アーチのように作用して、中間側壁24の内向きの移動を防止し、それによってクリトリスの捕捉および/または圧縮を防止する。
【0024】
より正確には、中間側壁24の外向きに凸形形状は、「鐘(bell)」に似た2つの機能チャンバ18a、18bを生成する。外向きに凸形の側壁によって形成される、下部真空チャンバ18bは、実質的に変形不能で、実質的に一定容量真空蓄積室として働き、一方で、先端部分によって形成される、上部真空チャンバ18aは、その側壁変形により真空を生成する役割を果す。このようにして、下部真空チャンバ18bは、クリトリスの組織の圧縮、閉塞または挟み込みを起こすことなく、クリトリス組織に対する吸引力を均一に分布させる。装置の高さは、クリトリスの上部真空チャンバ18a中への膨張を防止するのに十分である。
【0025】
ユーザは、中間真空チャンバ18内の真空の量を、先端部分の圧縮の程度、したがって置換される空気の量を変えることによって変更することが可能である。先端部分に対する手動圧縮の量が大きいほど、置換される空気の量およびその後の真空は大きくなる。このようにして、ユーザは、生理的な反応を生成するために、外部真空源からの事前設定された真空に頼るのではなく、クリトリスの吸引量を有利に調整することが可能である。女性の性的興奮を刺激するのに必要な真空量は、ユーザとその興奮前状態(pre-excitatory state)に応じて変る可能性がある。
【0026】
装置10の効力は、クリトリスの血流、膣の潤滑、および膣感覚を高める、様々な薬理学的に活性な物質のための送達システムとしてこの装置を利用することによって向上させることができる。これらの物質としては、それに限定はされないが、1)血管拡張薬(vasodilators)として作用する、天然および合成両方の血管作用剤、例えば、プロスタグランジン(prostaglandins)、内皮由来弛緩因子(endothelial-derived relaxation factors)、血管作用間質ペプチド作用物質(vasoactive interstitial polypeptide agonists)、平滑筋弛緩薬、ロイコトリエン抑止剤(leukotriene inhibitors)、L‐アルギニン(L-arginine)、その他、および2)クリトリス刺激を増大させる薬剤および薬物、例えばエストロゲン、メチルテストステロン、およびアポモルヒネなどがあげられる。そのような薬理学的に活性な物質40は、図7および図7Aの態様に示すように、内部真空チャンバ18内に供給することができる。
【0027】
ユーザが先端部分16を圧縮するとき、剤は、クリトリスと連続的に接触するように、下方に押される。図7Bに示す別の態様においては、薬理学的に活性な物質40は、フランジ26の身体接触表面29上に配置される。装置10をクリトリスの上方に設置するときに、ユーザは、身体接触表面29でクリトリスに柔らかく接触し、それによって用剤をクリトリス上に配置する。図7Cに示すさらに別の態様においては、薬理学的に活性な物質40は、装置10の壁の中に埋め込まれて、膣粘膜と接触すると放出される。真空と、これらの物質の作用を連続的に受けることを組み合わせることによって、クリトリス血流と性的興奮とがさらに向上する。
【0028】
本発明の好ましい態様について説明したが、当業者には、これらの態様の概念を組み入れたその他の態様を使用できることが明白であろう。これらの態様は、開示した態様に限定すべきではなく、添付したクレームの主旨と範囲によってのみ限定されるべきであると考えられたい。本明細書において引用したすべての刊行物および参考文献は、その全文を参照により本明細書に特別に組み入れてある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による女性刺激装置の側面図である。
【図1A】図1の装置の底面斜視図である。
【図1B】図1の装置の横断面側面図である。
【0030】
【図2】中間側壁部分の内表面上に強化突起が設けられた、本発明の代替態様による女性刺激装置の底面斜視図である。
【図2A】図2の装置の横断面側面図である。
【0031】
【図3】中間側壁部分の外表面上に強化突起が設けられた、本発明のさらに別の態様による女性刺激装置の底面斜視図である。
【図3A】図3の装置の横断面側面図である。
【0032】
【図4】本発明のさらに別の態様による、女性刺激装置の底面斜視図である。
【図4A】図4の装置の横断面側面図である。
【0033】
【図5】本発明のさらに別の態様による女性刺激装置の斜視図である。
【0034】
【図6】ユーザのクリトリスの上方に位置するが、真空環境が存在しないので使用中ではない、図1の装置の横断面側面図である。
【図6A】使用に際してユーザのクリトリスの上方に位置する、図1の装置の横断面側面図である。
【0035】
【図7】装置本体内部に薬理学的に活性な物質を有する、本発明の一態様の横断面側面図である。
【図7A】装置本体内部に薬理学的に活性な物質を有する、本発明の代替態様の横断面側面図である。
【図7B】フランジの身体接触表面上に薬理学的に活性な物質を有する、本発明の一態様の横断面側面図である。
【図7C】装置の壁の中に埋め込まれた薬理学的に活性な物質を有する、本発明の一態様の横断面側面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性のクリトリスを刺激する装置であって、
密閉された先端部分、フランジ、および前記先端部分から前記フランジへと外向きに延びる中間側壁部分を有する、弾力性があり少なくとも部分的に変形可能な装置本体であって、ユーザのクリトリスを包囲するように寸法決めされている前記装置本体を含み、
使用に際して、前記装置本体は、ユーザのクリトリスの上方に設置されて、前記先端部分が変形させられ、それによって前記装置本体によって形成される内部チャンバ内に、真空環境が形成される、前記装置。
【請求項2】
中間側壁部分が、実質的に、先端部分の変形に応じて変形不能である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
中間側壁部分が外向きに凸形である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
先端部分の変形によって、装置本体内部に、第1の変形可能な真空生成上部チャンバと第2の実質的に変形不能の真空蓄積下部チャンバとが形成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
先端部分が上部チャンバの境界を定め、中間側壁部分が下部チャンバの境界を定める、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
上部チャンバおよび下部チャンバが、使用の際に互いの作用を受ける、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
中間側壁部分の内表面上に複数の突起をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
中間側壁部分の外表面上に複数の突起をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
フランジ部分が、ユーザのクリトリスの外周に隣接するユーザの膣組織に接触するように適合されている身体接触表面を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
フランジの身体接触表面上に配置される、接着剤、非粘着性潤滑剤、および親水性の水溶性ポリマーのうち少なくとも1種をさらに含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
先端部分が、装置の取付けと取外しを容易にするためのグリップ部分を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
使用の際にユーザのクリトリスに接触するように配置される薬理学的に活性な物質をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
薬理学的に活性な物質が、先端部分の変形時にユーザのクリトリスに接触するように、内部チャンバに配置された、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
薬理学的に活性な物質がフランジ上に配置された、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
薬理学的に活性な物質が装置の壁に埋め込まれた、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
薬理学的に活性な物質が、血管作用剤、薬剤、またはクリトリス刺激を増大させる薬物の内の、少なくとも1種を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
フランジが、楕円形、長円形、円形、および三角形から選択される形状を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
装置本体が一体構造である、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
女性のクリトリスを刺激する方法であって、
先端部分、フランジ、および前記先端部分から前記フランジへと延びる中間側壁部分を有する装置本体を、クリトリスの上方に設置して、前記装置本体がクリトリスを包囲するようにすること;および
前記先端部分を変形させて、それによって前記装置本体内に真空チャンバを生成することを含む、前記方法。
【請求項20】
中間側壁部分が、実質的に、先端部分の変形に応じて変形不能である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
中間側壁部分を、外向きに凸形の形状にすることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
使用に際してクリトリスの圧縮を防止するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
薬理学的に活性な物質を、先端部分の変形に応じてユーザのクリトリスに接触するように、装置本体内部に供給することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
薬理学的に活性な物質が、血管作用剤、薬剤、またはクリトリス刺激を増大させる薬物の内の、少なくとも1種を含む、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
薬理学的に活性な物質を、使用の際にユーザのクリトリスに接触するように、フランジ上に供給することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
薬理学的に活性な物質が、血管作用剤、薬剤、またはクリトリス刺激を増大させる薬物を含む、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
薬理学的に活性な物質を装置の壁内に埋め込むことをさらに含む、請求項19に記載の装置。
【請求項28】
薬理学的に活性な物質が、血管作用剤、薬剤、またはクリトリス刺激を増大させる薬物を含む、請求項27に記載の装置。
【請求項1】
女性のクリトリスを刺激する装置であって、
密閉された先端部分、フランジ、および前記先端部分から前記フランジへと外向きに延びる中間側壁部分を有する、弾力性があり少なくとも部分的に変形可能な装置本体であって、ユーザのクリトリスを包囲するように寸法決めされている前記装置本体を含み、
使用に際して、前記装置本体は、ユーザのクリトリスの上方に設置されて、前記先端部分が変形させられ、それによって前記装置本体によって形成される内部チャンバ内に、真空環境が形成される、前記装置。
【請求項2】
中間側壁部分が、実質的に、先端部分の変形に応じて変形不能である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
中間側壁部分が外向きに凸形である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
先端部分の変形によって、装置本体内部に、第1の変形可能な真空生成上部チャンバと第2の実質的に変形不能の真空蓄積下部チャンバとが形成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
先端部分が上部チャンバの境界を定め、中間側壁部分が下部チャンバの境界を定める、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
上部チャンバおよび下部チャンバが、使用の際に互いの作用を受ける、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
中間側壁部分の内表面上に複数の突起をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
中間側壁部分の外表面上に複数の突起をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
フランジ部分が、ユーザのクリトリスの外周に隣接するユーザの膣組織に接触するように適合されている身体接触表面を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
フランジの身体接触表面上に配置される、接着剤、非粘着性潤滑剤、および親水性の水溶性ポリマーのうち少なくとも1種をさらに含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
先端部分が、装置の取付けと取外しを容易にするためのグリップ部分を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
使用の際にユーザのクリトリスに接触するように配置される薬理学的に活性な物質をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
薬理学的に活性な物質が、先端部分の変形時にユーザのクリトリスに接触するように、内部チャンバに配置された、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
薬理学的に活性な物質がフランジ上に配置された、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
薬理学的に活性な物質が装置の壁に埋め込まれた、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
薬理学的に活性な物質が、血管作用剤、薬剤、またはクリトリス刺激を増大させる薬物の内の、少なくとも1種を含む、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
フランジが、楕円形、長円形、円形、および三角形から選択される形状を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
装置本体が一体構造である、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
女性のクリトリスを刺激する方法であって、
先端部分、フランジ、および前記先端部分から前記フランジへと延びる中間側壁部分を有する装置本体を、クリトリスの上方に設置して、前記装置本体がクリトリスを包囲するようにすること;および
前記先端部分を変形させて、それによって前記装置本体内に真空チャンバを生成することを含む、前記方法。
【請求項20】
中間側壁部分が、実質的に、先端部分の変形に応じて変形不能である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
中間側壁部分を、外向きに凸形の形状にすることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
使用に際してクリトリスの圧縮を防止するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
薬理学的に活性な物質を、先端部分の変形に応じてユーザのクリトリスに接触するように、装置本体内部に供給することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
薬理学的に活性な物質が、血管作用剤、薬剤、またはクリトリス刺激を増大させる薬物の内の、少なくとも1種を含む、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
薬理学的に活性な物質を、使用の際にユーザのクリトリスに接触するように、フランジ上に供給することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
薬理学的に活性な物質が、血管作用剤、薬剤、またはクリトリス刺激を増大させる薬物を含む、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
薬理学的に活性な物質を装置の壁内に埋め込むことをさらに含む、請求項19に記載の装置。
【請求項28】
薬理学的に活性な物質が、血管作用剤、薬剤、またはクリトリス刺激を増大させる薬物を含む、請求項27に記載の装置。
【図1】
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図3A】
【図4】
【図4A】
【図5】
【図6】
【図6A】
【図7】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図3A】
【図4】
【図4A】
【図5】
【図6】
【図6A】
【図7】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【公表番号】特表2006−511280(P2006−511280A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564043(P2004−564043)
【出願日】平成15年12月23日(2003.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/041240
【国際公開番号】WO2004/058134
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(505239194)
【出願人】(505239208)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月23日(2003.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/041240
【国際公開番号】WO2004/058134
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(505239194)
【出願人】(505239208)
【Fターム(参考)】
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