説明

女性用採尿器

【課題】 本発明は、衛生的で、簡単に重ねて収納でき、使い捨て可能で、製造コストの安い女性用採尿器を提供する。
【解決手段】 本発明に係る女性用採尿器10は、一体に形成された上部開口部12、底面14、側面16を有し、そして側面16に設けた取っ手18より構成される。上部開口部12は、だいたい楕円形をしており、一方の前縁12aとそれに対向する後縁12bを比較すると、後縁12bよりは前縁12aの方へより長く伸びた形を持つ。前記側面16の上部は上に行くに従って徐々に広がって、上部開口部12の形をとり、側面16のうち、より長く伸びた方の前縁12aの側は、それに対向する後縁12bの側に比べて高く、さらに外側に向かって広がっている。前記上部開口部12は女性局部にフィットするような形となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭、病院、診療所などで、特に女性から尿を採取する際に役立つ女性用採尿器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の女性用採尿器は、基本的には使い捨て用コップで、材質は、紙、発泡スチロール、プラスチック等である。
このようなコップの開口部は、直径が大体6−8cmの円形となっており、女性局部から排出される不規則な尿の流れを受け止めるには不適切な形となっている。
その結果、尿がはじけたりこぼれたりしやすく、手、腿、衣服、そして便座などを汚してしまうことになる。
そのような汚れをきれいにするため多量のトイレット・ペーパーが使われるなど、結局、資源の浪費につながっている。
このように、従来の採尿コップを使用する女性は、非衛生的な状況におかれるのみならず、検尿のたびに赤面し、羞恥心を覚えながら、おどおどして検尿検査を受けている、というのは否めない事実である。
これまでにも採尿を容易にするため、特に女性を対象とした形の工夫が考案されている。以下にその例を挙げる。
米国特許番号6,775,852及び6,358,477の採尿器では、柔らかなシートを便座の縁に取り付けた際、トイレの内側に漏斗の形状ができるようになっており、その漏斗の下に採尿用のコップがついている。
このような構造では、使用者が排尿している間コップを直接手に持つことは避けられるが、シートを便座に取り付けたりはずしたりしなければならないので、手間がかかるのみならず不衛生になりがちである。
米国特許番号4,198,979では、漏斗の形状をした採尿器の一部分を膣に挿入して固定するやり方をとっている。
このタイプの採尿器は、ベッドに寝たきりの女性から継続的に採尿する場合に役立つ。
また、米国特許番号5,125,118では、比較的汚れや不純物の少ない尿を採取するため、尿口の中に直接管を挿入して採尿するやり方をとっている。
しかしながら、これらは直接女性局部や膣に接触するため、装着は非常な違和感や痛み、さらには精神的ストレスを伴う。
米国特許番号6,719,951では、採尿用コップとそのコップを支えて適所に保持するための長い取っ手よりなる採尿器が考案されている。
このような長い取っ手は、尿が入って重量が増したコップを支えるために頑丈な材質で作られることが不可欠なため、使い捨てタイプにするのはむずかしいと考えられる。
さらに、その形状や長さのため、重ねたり収納したりするにも不便がある。
特開2001−99836(特願平11−312829)では、採尿用漏斗が考案され、この漏斗の一方の口は円形ではなく女性局部にフィットするような形状を持ち、他方の口は従来の採尿コップに挿入するようになっている。
一方の口の形状が女性局部にフィットするようになっているため、尿がはじけこぼれる可能性は従来の採尿コップよりも低い。
この採尿器では漏斗の側面につまみが取り付けられているが、使用者が手で持つためのつまみとは考えられない。
なぜなら、もし使用者がそのつまみを持てば、尿の重みで重くなったコップは漏斗から逸脱して落下することになる。
さらに、このつまみは、排尿時コップを保持する際、使用者が体の正面からこのつまみを持つことはできないような位置にある。
以上の考察から、この日本特許出願のつまみは、漏斗をコップに差し込んでずれないようにするためのストッパーのような役割を果たすためのものだと考えられる。
そのため、この日本特許出願の採尿器においては、コップの持ち方は従来の採尿コップと同様であり、やはり尿がこぼれて手などを汚す可能性が高い。
【特許文献1】特開2001−99836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記従来技術に関する問題点を解決し、衛生的で、簡単に重ねて収納でき、使い捨て可能で、製造コストの安い女性用採尿器を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するための手段として、本発明に係る女性用採尿器は、底面と、上部及び下部からなる側面から構成され、側面下部は底面の縁に装着してともに尿を受け取りそれを溜める容器を形成し、側面上部は上へ向かって徐々に外側へ広がりだいたい楕円形の開口を形成し、開口の一方の前縁はそれに対向する後縁よりもさらに外側へ長く伸び、その外側へ長く伸びている方の前縁での高さは、それに対向する後縁での高さよりも高くなっており、全体として開口の形は女性の局部にフィットするような形状となっていることを特徴とする。
右利き、左利き、どちらの使用者も身体の正面から採尿器を保持できるように、前記開口で外側へより長く伸びている方の前縁の真下の位置の前記側面上に取っ手が付いているようにしてもよい。
重ねて収納しやすいように、前記取っ手は折りたたみ可能で、前記側面へと折り畳んだ状態にできるようにしてもよい。
また、前記取っ手は二次元の形を持ち、一枚または一対で装着されていてもよい。
前記底面は円形または楕円形となっていてもよい。
採取した尿の視覚検査が容易にできるように、薄い色の材質を持つようにしてもよい。また、材質は紙、プラスチック、または発泡スチロールにしてもよい。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る女性用採尿器は、従来の採尿コップに比べ、女性局部から排出されるかなり不規則な尿の流れを受け止め、尿のもれを防ぐことが可能である。
このように、女性の場合に特に有効であるが女性に限らず、男性の場合であってもより安定した状態で採尿することができる男女兼用の採尿器として利用できる。
本発明に係る女性用採尿器は、対称的な形になっているため、取っ手を使って左利きの人も右利きの人も身体の正面から簡単に採尿をすることができる。
本発明に係る女性用採尿器は、折りたたみ式の取っ手を側面に畳んで、採尿器を多数個重ねて簡単に収納が可能である。
本発明に係る女性用採尿器は、検査技師が尿を女性用採尿器から試験管やビーカーなどに注ぐ場合に手の力で簡単に女性用採尿器のとがった部分を利用することができ、結果として検査する人たちにも衛生面で好ましい。
本発明に係る女性用採尿器は、製造コストが低いので、使い捨てを前提に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、添付図面に従って実施例を説明する。
図1、2、及び3は、本発明に係る女性用採尿器10の斜視図、平面図、及び側面図である。
前記採尿器10は、一体に形成された上部開口部12、底面14、側面16を有し、そして側面16に設けた取っ手18より構成される。
図2で明らかなように、上部開口部12は、だいたい楕円形をしており、一方の前縁12aとそれに対向する後縁12bを比較すると、後縁12bよりは前縁12aの方へより長く伸びた形を持つ。
前記底面14と前記側面16の下部は、尿を受けそれを溜めるための容器を形どり、側面16の上部は上に行くに従って徐々に広がって、上部開口部12の形をとる。
図3で明らかなように、側面16のうち、より長く伸びた方の前縁12aの側は、それに対向する後縁12bの側に比べて高く、さらに外側に向かって広がっている。
前記取っ手18は、折りたたみ式で側面16に取り付けられており、より長く伸びた方の前縁12aの真下に位置する。
【0007】
図1−3に示されるように、前記上部開口部12は従来の採尿コップのような円形ではなく、女性局部にフィットするような形となっている。
そのため、本発明に係る女性用採尿器は従来の採尿コップに比べ、女性局部から排出されるかなり不規則な尿の流れを受け止め、尿のもれを防ぐことが可能である。
前記取っ手18をつまんで、使用者は前記採尿器10を簡単に保持することができる。
前記採尿器10は対称的な形になっているため、取っ手18を使って左利きの人も右利きの人も身体の正面から簡単に採尿器10を保持することができる。
この取っ手18は、より長く伸びた方の前縁12aの真下に位置しており、側面16のより外側に広がった部分の下に付いているので、たとえ尿がもれたとしても使用者の手にはこぼれにくい。
前記底面14と前記側面16の下部は、尿を受けそれを溜めるための容器を形どり、その形はコップでもよいし、楕円形の底面を持つものであってもよい。
【0008】
図4では、前記採尿器10を多数個重ねて簡単に収納が可能であることを示す。
これは折りたたみ式の取っ手18を側面に畳んで、重ねる際に取っ手18が邪魔にならないようにすることにより実現される。
使用の際には、使用者が取っ手18を適当な位置に広げて使う。
図1−4では、前記取っ手18は対の平たい形となっているが、これは側面に折りたためるならばどんな形でもかまわない。
そして使用者が簡単に広げて持ちやすいものであれば良く、例えば平たい輪状、三角形、四角形などで、一枚でも対でも良い。
前記採尿器10は簡単な構造を持っているため、尿を短時間入れておける程度に強く、しかも形成しやすい柔軟な材質であれば簡単に製造することができる。
例えば、紙、発泡スチロール、プラスチック等が好ましい。
使用材質の色は、尿の視覚によるチェックに支障をきたさない色であればどんな色でもよい。
以上により、本発明に係る採尿器は製造コストが低いので、使い捨てを前提に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例である女性用採尿器の、破線の上部が側面上部で下部が側面下部を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施例である女性用採尿器の平面図である。
【図3】本発明の一実施例である女性用採尿器の側面図である。
【図4】本発明の一実施例である女性用採尿器の取っ手を収納のため側面に折りたたんで重ねる場合と、使用直前に取っ手を広げる場合を示した説明図である。
【符号の説明】
【0010】
10 女性用採尿器
12 開口
12a前縁
12b後縁
14 底面
16 側面
18 取っ手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と、上部及び下部からなる側面から構成され、側面下部は底面の縁に装着してともに尿を受け取りそれを溜める容器を形成し、側面上部は上へ向かって徐々に外側へ広がりだいたい楕円形の開口を形成し、開口の一方の前縁はそれに対向する後縁よりもさらに外側へ長く伸び、その外側へ長く伸びている方の前縁での高さは、それに対向する後縁での高さよりも高くなっており、全体として開口の形は女性の局部にフィットするような形状となっていることを特徴とする女性用採尿器。
【請求項2】
右利き、左利き、どちらの使用者も身体の正面から採尿器を保持できるように、前記開口で外側へより長く伸びている方の前縁の真下の位置の前記側面上に取っ手が付いている請求項1に記載の女性用採尿器。
【請求項3】
重ねて収納しやすいように、前記取っ手は折りたたみ可能で、前記側面へと折り畳んだ状態にできる請求項2に記載の女性用採尿器。
【請求項4】
前記取っ手は二次元の形を持ち、一枚または一対で装着されている請求項3に記載の女性用採尿器。
【請求項5】
前記底面は円形となっている請求項1または2に記載の女性用採尿器。
【請求項6】
前記底面は楕円形となっている請求項1または2に記載の女性用採尿器。
【請求項7】
採取した尿の視覚検査が容易にできるように、薄い色の材質を持つ請求項1または2に記載の女性用採尿器。
【請求項8】
材質は紙、プラスチック、または発泡スチロールである請求項1または2に記載の女性用採尿器。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と、上部及び下部からなる側面から構成され、側面下部は底面の縁に装着してともに尿を受け取りそれを溜める容器を形成し、側面上部は上へ向かって徐々に外側へ広がりだいたい楕円形の開口を形成し、開口の一方の前縁はそれに対向する後縁よりもさらに外側へ長く伸び、その外側へ長く伸びている方の前縁での高さは、それに対向する後縁での高さよりも高くなっており、全体として開口の形は女性の局部にフィットするような形状となっており、右利き、左利き、どちらの使用者も身体の正面から容器を保持できるように前記前縁の真下の側面下部位置に、且つ重ねて収納しやすいように折りたたみ可能で前記側面下部へと折り畳んだ状態にできる取っ手が付いていることを特徴とする女性用採尿器。
【請求項2】
前記取っ手は、二次元の形を持ち、一枚または一対で装着されている請求項1に記載の女性用採尿器。
【請求項3】
前記底面は、円形となっている請求項1に記載の女性用採尿器。
【請求項4】
前記底面は、楕円形となっている請求項1に記載の女性用採尿器。
【請求項5】
前記容器は、採取した尿の視覚検査が容易にできるように、薄い色を持つ請求項1に記載の女性用採尿器。
【請求項6】
前記容器の材質は、紙、プラスチック、または発泡スチロールである請求項1に記載の女性用採尿器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−119117(P2006−119117A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167722(P2005−167722)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(505150822)
【Fターム(参考)】