説明

妨害信号除去装置、レーダ装置、及び妨害信号除去方法

【課題】他のレーダ装置からの干渉信号を十分に除去可能な妨害信号除去装置を提供する。
【解決手段】パルス圧縮レーダ装置は、妨害信号除去装置と、アンテナと、受信信号処理部と、映像表示部と、を備える。また、妨害信号除去装置は、送信トリガ生成部と、送信周波数設定部と、を備える。送信周波数設定部は、無変調パルス信号P2と、互いに異なる帯域を有する変調パルス信号P0,P1と、に帯域を設定する。アンテナは、無変調パルス信号P2及び変調パルス信号P0,P1を送信するとともに、物標からの反射による受信信号を受信する。受信信号処理部は、アンテナが受信した受信信号に基づいて、自船周辺の物標の位置を示すレーダ映像を生成する。映像表示部は、このレーダ映像を外部の表示器に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、レーダ装置等が備える妨害信号除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置は、通常、回転するアンテナからパルス状の信号を送信し、物標からのエコー信号を受信するように構成されている。この構成により、送信信号を送信してからエコー信号を受信するまでの時間を測定することで物標までの距離を検出することができる。また、アンテナは回転しながら送信信号の送信及びエコー信号の受信を行うため、任意の方向を探知することができる。
【0003】
なお、レーダ装置は、他のレーダ装置からの送信信号を受信し、これがエコー信号と干渉することで装置の性能を低下させる原因となることがある。従って、この種のレーダ装置においては、他のレーダ装置からの送信信号(干渉信号)を除去するための様々な方法が従来から提案されている。
【0004】
以下、レーダ装置が干渉信号を除去するために行う処理の一例について、図9を参照して説明する。図9は、従来の干渉除去処理を説明する図である。また、図9において、縦軸はレーダ装置からの距離を示しており、横軸は送信信号を送信したときの方位を示している。この方位は、所定の方向を基準とした角度を用いて示されている。縦軸と平行に引かれた1本の破線は、角度θnにおける1スイープ分の受信データを示し、それに重なるように描かれた斜線部分は干渉信号を示す。
【0005】
レーダ装置は、干渉信号を除去するための処理として、送信信号の送信間隔(送信周期)を毎回変化させる処理を行っている。従って、レーダ装置は、当該レーダ装置に設定された送信間隔に応じたタイミングでエコー信号を受信する。一方、他のレーダ装置からの干渉信号は、当該他のレーダ装置に設定された送信間隔に応じたタイミングで受信することになる。そのため、エコー信号と干渉信号の受信タイミングが固定的な関係となることはなく、従って、レーダ装置が受信する干渉信号は、図9(a)に示すように、距離方向で一定とならない場所に現れる。
【0006】
ところで、エコー信号は反射波であるため強度が比較的低い一方で、干渉信号は他のレーダ装置から直接受信するため、強度が比較的高くなる。この傾向を利用して、あるスイープの受信データと、前後のスイープの受信データと、を等距離同士で比較し、信号の強度が低い方の受信データを当該スイープの出力値とすることで、干渉信号を除去することができる。例えば図9(a)において、角度θ1,θ2,θ3における計3本のスイープに注目すると、角度θ1及びθ3のスイープの受信データは、角度θ2の受信データと比較して、距離r1の近傍で信号の強度が低い。従って、距離r1の近傍においては、角度θ1又は角度θ3のスイープの受信データを角度θ2のスイープの出力値として用いることで、干渉信号を取り除くことができる。
【0007】
ここで、近年、マグネトロンに代えて(又は加えて)半導体増幅器を用いて変調パルス信号を送信するパルス圧縮レーダ装置が、船舶用レーダ等において実用化され始めている(例えば特許文献1を参照)。パルス圧縮レーダ装置は、マグネトロンを用いたレーダ装置に比べて相当に長い時間幅(パルス幅)の送信信号を送信する。そして、この送信信号に対応するフィルタ処理をエコー信号に施すことによって、このエコー信号のパルス幅を圧縮するとともに信号対雑音電力比(S/N)を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−96337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、他のパルス圧縮レーダ装置からの干渉信号(パルス幅が長い信号)に、フィルタ処理が施されると、この干渉信号の変調態様が自機の送信信号の変調態様と異なっていた場合、干渉信号のパルス幅は圧縮されない。また、マグネトロンを用いた他のレーダ装置からの干渉信号(パルス幅が短い信号)にフィルタ処理が施された場合は、干渉信号のパルス幅が大きくなる。つまり、パルス圧縮レーダが干渉信号を受信した場合、図9(b)に示すように、干渉信号が距離方向に長くなって現れる。
【0010】
従って、干渉信号が距離方向で揃わないように送信信号の送信間隔を変化させるにもかかわらず、上記と同様に等距離同士で比較したときに、多数のスイープにわたって干渉信号が連続する場合が生じることが考えられる(例えば、図9(b)で示す角度θ1から角度θ5の5本のスイープにおける距離r2の近傍部分)。この場合、3本程度の隣り合うスイープを取り出して単純に信号の強度を比較する方法では、干渉信号を適切に取り除くことができない。このように、従来のパルス圧縮レーダ装置においては、スイープ間での単純な信号の強度比較によって干渉信号を除去することが困難であった。
【0011】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、他のレーダ装置からの干渉信号を十分に除去可能なパルス圧縮レーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0013】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の妨害信号除去装置が提供される。即ち、この妨害信号除去装置は、送信周波数設定部を備える。前記送信周波数設定部は、無変調パルス信号に設定する送信帯域と異なる帯域であって互いに異なる2以上の帯域の何れかを変調パルス信号の送信帯域として設定する。また、前記送信周波数設定部は、前記変調パルス信号に設定する送信帯域を切り替える。
【0014】
これにより、本発明の妨害信号除去装置を備える装置は、送信帯域を切り替えながら変調パルス信号を送信することができる。従って、この装置の変調パルス信号の送信帯域と、送信帯域の切替えを行わない他の装置の送信信号の送信帯域と、が一致しにくくなる。従って、他の装置から受信した送信信号(干渉信号)を容易に除去することができる。
【0015】
前記の妨害信号除去装置においては、前記送信周波数設定部は、所定の送信帯域パターンに基づいて、前記変調パルス信号の送信帯域を切り替えることが好ましい。
【0016】
これにより、簡単な構成で、変調パルス信号の送信帯域を切り替えることができる。
【0017】
前記の妨害信号除去装置においては、前記送信周波数設定部は、前記変調パルス信号の送信帯域を、送信回毎に無作為に決定することが好ましい。
【0018】
これにより、変調パルス信号の送信帯域と、他の装置の送信信号の送信帯域と、が一致し続けることを防止できる。
【0019】
前記の妨害信号除去装置においては、前記送信周波数設定部は、所定の周波数帯域より帯域が高い第1送信帯域と、前記所定の周波数帯域よりも帯域が低い第2送信帯域と、を設定することが好ましい。
【0020】
これにより、変調パルス信号の送信帯域と、前記所定の周波数が送信帯域として設定された干渉信号の送信帯域と、が一致することを防止できる。従って、この周波数が送信帯域として設定された他の装置からの干渉信号を除去することができる。
【0021】
前記の妨害信号除去装置においては、前記第1送信帯域と前記第2送信帯域との間の帯域は、9410MHzを含むことが好ましい。
【0022】
これにより、船舶用のレーダ装置において通常使われる帯域を避けることができる。従って、船舶用のレーダ装置からの干渉信号を除去することができる。
【0023】
前記の妨害信号除去装置においては、前記送信周波数設定部は、前記変調パルス信号の送信帯域と、前記無変調パルス信号の送信帯域と、を交互に設定することが好ましい。
【0024】
これにより、無変調パルス信号と、変調パルス信号と、をバランス良く送信できるので、例えばこの妨害信号除去装置を備えたレーダ装置は、物標に関するデータを適切に取得することができる。
【0025】
前記の妨害信号除去装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記送信周波数設定部は、互いに異なる2つの帯域の何れかを前記変調パルス信号の送信帯域として設定する。また、(妨害信号除去装置を備えた装置によって)前記無変調パルス信号と前記変調パルス信号とが交互に送信されるとともに、前記送信周波数設定部によって当該変調パルス信号の送信帯域が前記2つの帯域の一方から他方へ切り替えられる。
【0026】
これにより、無変調パルスと変調パルスとをバランス良く送信しつつ、送信帯域の切替えを行わない他の装置の送信帯域と一致しにくくすることができる。
【0027】
前記の妨害信号除去装置においては、前記送信帯域パターンは前記変調パルス信号のN送信回分を1周期としており、前記送信帯域パターンと、当該送信帯域パターンにおいて1からN−1のうち任意の送信回分だけタイミングをシフトした比較用送信帯域パターンと、を比較したときに送信帯域の連続一致回数が最小となるように、前記送信帯域パターンが構成されることが好ましい。
【0028】
これにより、同様の送信帯域パターンを用いた他の装置が存在する場合においても、装置間で送信信号の帯域があまり連続して一致しない。従って、他の装置からの干渉信号を単純な方法(連続するスイープの受信データ同士の強度比較等)で容易に除去することができる。
【0029】
前記の妨害信号除去装置においては、前記送信周波数設定部は、外部から入力された信号に基づいて、前記送信帯域パターンが適用されるタイミングを変更することが好ましい。
【0030】
即ち、本発明の妨害信号除去装置と同一の送信帯域パターンを他の装置が有しているときは、互いに同一の送信帯域が同様のタイミングで設定され続ける場合がある。この場合、他の装置からの干渉信号を除去することが困難になる。この点、上記の構成では、外部信号(ユーザの操作等により出力される信号)により送信帯域パターンが適用されるタイミングを積極的に変更することができるので、本発明の妨害信号除去装置と他の装置との間において、同一の送信帯域が同様のタイミングで設定され続けることを防止できる。従って、他の装置からの干渉信号を除去することが可能となる。
【0031】
前記の妨害信号除去装置においては、自機において前記送信帯域パターンが適用されるタイミングと、他のレーダ装置において前記送信帯域パターンが適用されるタイミングと、の差を検出する検出部の検出結果に基づいて、前記送信周波数設定部は、前記送信帯域パターンが適用されるタイミングを変更することが好ましい。
【0032】
これにより、本発明の妨害信号除去装置と他の装置との間において、同一の送信帯域が同様のタイミングで設定され続けることを防止できる。また、本構成では、送信帯域パターンが適用されるタイミングの差を検出部によって検出可能であるので、ユーザが監視及び操作を行う手間を軽減することができる。
【0033】
前記の妨害信号除去装置においては、前記変調パルス信号の送信間隔を切り替えることが好ましい。
【0034】
これにより、干渉信号を受信するタイミングが不規則になるので、当該干渉信号をより適切に除去することができる。
【0035】
前記の妨害信号除去装置においては、船舶に搭載されることが好ましい。
【0036】
これにより、上記の効果を船舶用レーダ装置等において実現することができる。
【0037】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成のレーダ装置が提供される。即ち、このレーダ装置は、送信周波数設定部と、アンテナと、受信信号処理部と、表示器と、を備える。前記送信周波数設定部は、無変調パルス信号に設定する送信帯域と異なる帯域であって互いに異なる2以上の帯域の何れかを変調パルス信号の送信帯域として設定する。前記アンテナは、前記送信周波数設定部によって前記変調パルス信号の送信帯域が切り替えられながら当該変調パルス信号及び無変調パルス信号を送信するとともに、物標からの反射による受信信号を受信する。前記受信信号処理部は、前記アンテナが受信した受信信号に基づいて、自機周辺の物標の位置を示すレーダ映像を生成する。前記表示器は、前記レーダ映像を表示する。
【0038】
これにより、このレーダ装置は、送信帯域を切り替えながら変調パルス信号を送信することができる。従って、このレーダ装置の変調パルス信号の送信帯域と、送信帯域の切替えを行わない他のレーダ装置による干渉信号と、が一致しにくくなる。従って、干渉信号を容易に除去することができる。
【0039】
本発明の第3の観点によれば、無変調パルス信号に設定する送信帯域と異なる帯域であって互いに異なる2以上の帯域の何れかが変調パルス信号の送信帯域として設定され、送信帯域を切り替えながら前記変調パルス信号を送信することを特徴とする妨害信号除去方法が提供される。
【0040】
この方法を行うことにより、送信帯域を切り替えながら変調パルス信号を送信することができる。従って、変調パルス信号の送信帯域と、送信帯域の切替えを行わない他のレーダ装置による干渉信号と、が一致しにくくなる。従って、干渉信号を容易に除去することができる。
【0041】
前記の妨害信号除去方法においては、所定の送信帯域パターンに基づいて、前記変調パルス信号の送信帯域を切り替えることが好ましい。
【0042】
この方法を行うことにより、同様の送信帯域パターンを用いた他の装置が存在する場合においても、装置間で送信信号の帯域がある程度しかそれほど連続して一致しない。従って、他の装置からの干渉信号を単純な方法で容易に除去することができる。
【0043】
前記の妨害信号除去方法においては、前記変調パルス信号には、所定の周波数帯域より帯域が高い第1送信帯域と、前記所定の周波数帯域よりも帯域が低い第2送信帯域と、が設定されることが好ましい。
【0044】
この方法を行うことにより、変調パルス信号の送信帯域と、前記所定の周波数が送信帯域として設定された干渉信号の送信帯域と、が一致することを防止できる。従って、他の装置からの干渉信号を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態に係るパルス圧縮レーダ装置の構成を示すブロック図。
【図2】パルス圧縮レーダ装置が送信するパルス信号の種類を説明する概略図。
【図3】送信帯域パターン及び送信帯域パターンに従ってパルス圧縮レーダ装置が送信する送信信号を示す概略図。
【図4】送信帯域パターンを1送信回分ずつシフトして比較した結果を示す表。
【図5】他のレーダ装置からの干渉信号が除去されることを示す図。
【図6】第1変形例において送信帯域パターンを1送信回分ずつシフトして比較した結果を示す表。
【図7】第1変形例において送信帯域パターンを1送信回分ずつシフトして比較した結果を示す表。
【図8】第2変形例に係るパルス圧縮レーダ装置の構成を示すブロック図。
【図9】干渉信号を除去する従来の方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。初めに、図1から図3を参照して、本実施形態のパルス圧縮レーダ装置10の全体構成を説明する。図1は、本実施形態に係るパルス圧縮レーダ装置10の構成を示すブロック図である。図2は、パルス圧縮レーダ装置10が送信するパルス信号の種類を説明する概略図である。図3は、送信帯域パターン及び送信帯域パターンに従ってパルス圧縮レーダ装置10が送信する送信信号を示す概略図である。
【0047】
本実施形態のパルス圧縮レーダ装置10は、船舶用のレーダ装置として構成されている。このパルス圧縮レーダ装置10は、パルス状の送信信号を送信可能であるとともに、自船の周囲にある物標(例えば陸地、海上の他船等)からの反射波をエコー信号として受信するように構成されている。そして、パルス圧縮レーダ装置10は、前記エコー信号を利用して、外部に配置された表示器に物標の位置及び形状(レーダ映像)を表示することができる。
【0048】
このパルス圧縮レーダ装置10は、エコー信号に加え、他のレーダ装置(例えば、自船以外の船舶に搭載されたパルス圧縮レーダ装置)の送信信号を受信することがある。他のレーダ装置からの送信信号は、レーダ映像に乱れが生じる原因となる。そのため、本実施形態のパルス圧縮レーダ装置10は、他のレーダ装置の送信信号を受信した場合でも当該送信信号を除去できるようにするため、後述の処理を行うように構成されている。以下の説明では、パルス圧縮レーダ装置10が受信した他のレーダ装置の送信信号を干渉信号と称する。また、パルス圧縮レーダ装置10が受信した信号(エコー信号及び干渉信号が含まれる)を受信信号と称する。
【0049】
以下、このパルス圧縮レーダ装置10の構成について説明する。パルス圧縮レーダ装置10は、送信信号を送信するための構成として、送信トリガ生成部(送信タイミング決定部)11と、送信周波数設定部12と、送信波形生成部13と、局部発振器14と、周波数変換部15と、アンテナ16と、送受切替器17と、を備える。なお、送信トリガ生成部11及び送信周波数設定部12は、妨害信号除去装置31を構成している。
【0050】
パルス圧縮レーダ装置10は、図略の半導体増幅器を用いて、変調パルス信号(図2に示す変調パルス信号P0,P1)と無変調パルス信号(図2に示す無変調パルス信号P2)を送信可能に構成されている。なお、図2及び後述の図3(b)は、信号の波形を模式的に示したものである。
【0051】
変調パルス信号P0,P1は、図3(b)に示すように、時間幅(パルス幅)が長い(無変調パルス信号P2の数十倍程度)パルス信号である。この変調パルス信号P0,P1については、パルス圧縮レーダ装置10に固有の変調が行われている。また、図2に示すように、変調パルス信号P0の送信帯域(第2送信帯域)は、無変調パルス信号P2の送信帯域(所定の周波数帯域)よりも帯域が低い。一方、変調パルス信号P1の送信帯域(第1送信帯域)は、無変調パルス信号P2の送信帯域よりも帯域が高い。更に、変調パルス信号P0,P1の間において、当該変調パルス信号P0,P1の送信帯域と重ならないように無変調パルス信号P2の送信帯域が設定されている。
【0052】
無変調パルス信号P2は、図3(b)に示すように、パルス幅が短いパルス信号である。この無変調パルス信号P2の送信帯域は、図2に示すように、9410MHzを中心とした帯域となっている。なお、この9410MHzを中心とした帯域は、マグネトロンを用いて信号を生成する船舶用レーダ装置が、通常、送信信号の送信帯域に設定する帯域である。つまり、マグネトロンを用いた他のレーダ装置が送信する送信信号の送信帯域を挟むように、変調パルス信号P0,P1の送信帯域が設定されている。
【0053】
そして、パルス圧縮レーダ装置10は、図3(b)に示すように、無変調パルス信号P2と、変調パルス信号(P0又はP1)と、を交互に送信し、かつ変調パルス信号P0と変調パルス信号P1とを切り替えながらこの送信を行うように構成される。
【0054】
図1に示す送信トリガ生成部11は、送信信号(1組の変調パルス信号及び無変調パルス信号)の送信を開始するタイミング(送信タイミング)を示すトリガパルスを生成する。送信信号は、このトリガパルス毎に送信される。また、送信トリガ生成部11は、トリガパルスを生成する時間間隔を適宜変化させることにより、送信信号の送信間隔をある程度変化させることができる。
【0055】
送信周波数設定部12は、前記トリガパルスが示すタイミングに応じて、変調パルス信号の送信帯域を設定する。この送信帯域の設定は、予め決定された送信帯域パターンに基づいて行われる。
【0056】
送信帯域パターンは、変調パルス信号の送信帯域を、複数の送信帯域から送信回毎にどのように選択するかを定めたものである。本実施形態の送信帯域パターンは、8回(送信信号の8回分)を繰返しの1周期としている。図3(a)には、1周期分の送信帯域パターンが示されている。なお、図3(a)及び後述の図4等において、「0」とは変調パルス信号P0の送信帯域を示し、「1」とは変調パルス信号P1の送信帯域を示すものとする。
【0057】
図3(a)に示す送信帯域パターンは、左側(先に設定される側)から順に、0,1,0,1・・・と定められている。従って、パルス圧縮レーダ装置10の送信信号を送信順に記すと、図3(b)に示すように、無変調パルス信号P2、変調パルス信号P0、無変調パルス信号P2、変調パルス信号P1、無変調パルス信号P2、変調パルス信号P0、無変調パルス信号P2、変調パルス信号P1、・・・となる。なお、この送信帯域パターンの特徴については後述する。
【0058】
送信波形生成部13は、送信周波数設定部12によって設定された送信帯域に従って送信信号の波形を生成する。パルス圧縮レーダ装置10が変調パルス信号P0,P1を送信する場合、例えば、周波数を徐々に変化させたチャープ信号を生成する。この波形は、周波数変換部15に出力される。
【0059】
局部発振器14は、送信波形生成部13が生成した波形を法令等で定められた所定の帯域(無線周波数帯)に変換するための局発信号を生成する。周波数変換部15は、局部発振器14が生成した局発信号を用いて、送信波形生成部13が生成した波形を無線周波数帯に変換して送信信号を生成する。周波数変換部15によって生成された送信信号は、送受切替器17を介して、アンテナ16に出力される。
【0060】
アンテナ16は、送信信号を外部へ送信できるとともに、受信信号を受信できるように構成されている。アンテナ16は水平方向に回転しながらこの送受信を行っているため、自船周囲の全方位の物標を検出することができる。
【0061】
送受切替器17は、パルス圧縮レーダ装置10の送信と受信を切替可能に構成されている。具体的には、パルス圧縮レーダ装置10が送信信号を外部へ送信するときは、周波数変換部15が生成する送信信号をアンテナ16へ出力する。一方、パルス圧縮レーダ装置10が受信信号を受信するときは、アンテナ16が受信した受信信号を後述の周波数変換部18へ出力する。
【0062】
パルス圧縮レーダ装置10は、以上の構成により、所定の送信帯域が設定された送信信号を外部へ送信することができる。
【0063】
なお、周波数変換部15から送受切替器17に出力された送信パルスの強度のうち、殆どの成分はアンテナ16に出力される。しかし、一部の成分はアンテナ16に出力されずに周波数変換部18へ回りこむ。この成分は物標からのエコー信号と比べると極めて強度が高い。また、パルス幅の長い変調パルス信号を送信する際、近距離の物標からのエコー信号がアンテナ16に到達したときに、変調パルス信号の送信が完了していない場合がある。この場合、当該物標からのエコー信号が、周波数変換部15から送受切替器17に出力された送信パルスの強度のうち周波数変換部18へ回りこんだ成分によってマスクされてしまう。従って、近距離の物標をレーダ映像に反映できない。
【0064】
この点、本実施形態のパルス圧縮レーダ装置10は、変調パルス信号の間にパルス幅の短い無変調パルス信号を送信しているため、無変調パルス信号を用いて近距離の物標からのエコー信号を受信することができる。
【0065】
パルス圧縮レーダ装置10は、エコー信号に基づいてレーダ映像を表示するための構成として、周波数変換部18と、受信周波数選択部19と、マッチドフィルタ20と、干渉除去処理部21と、映像表示部22と、を備える。なお、周波数変換部18と、受信周波数選択部19と、マッチドフィルタ20と、干渉除去処理部21と、は、受信信号処理部32を構成している。
【0066】
周波数変換部18は、局部発振器14が生成した局発信号を用いて、受信信号をベースバンド(基底帯域)に変換する。周波数変換部18が変換した受信信号は、受信周波数選択部19へ出力される。
【0067】
受信周波数選択部19は、受信信号のうち、所定の帯域を有する成分のみをマッチドフィルタ20へ出力する。具体的には、無変調パルス信号P2を送信した後のタイミングでは、9410MHzを送信帯域に含んだ成分のみをマッチドフィルタ20に出力する。一方、変調パルス信号P0,P1を送信した後のタイミングでは、送信周波数設定部12が設定した変調パルス信号の送信帯域(P0,P1のうち何れか一方の帯域)と同様の送信帯域を持つ成分のみをマッチドフィルタ20へ出力する。
【0068】
マッチドフィルタ20は、受信周波数選択部19から入力された受信信号にフィルタ処理を施す。送信した変調パルス信号と同様の変調態様を有するエコー信号が受信信号に含まれる場合、このフィルタ処理によってエコー信号のパルス幅が圧縮されるので、信号対雑音電力比(S/N)の良好なエコー信号が得られる。マッチドフィルタ20が出力する信号は、干渉除去処理部21に入力される。
【0069】
干渉除去処理部21は、マッチドフィルタ20が出力した受信信号から干渉信号を除去する処理(干渉信号除去処理)を行う。干渉除去処理部21が行う干渉信号除去処理は、従来技術において説明した処理と同じである。即ち、干渉除去処理部21は、連続する複数のスイープの受信データを等距離同士で比較して、信号の強度が低い方の受信データを出力値とすることにより、干渉信号を除去する。
【0070】
無変調パルス信号P2のエコー信号に着目すると、当該無変調パルス信号P2を送信した後の受信信号からは、9410MHz帯以外の干渉信号が受信周波数選択部19によって除去されている。従って、この場合に問題となる干渉信号としては、他のレーダ装置が送信した9410MHz帯の送信信号(通常は無変調パルス信号)が考えられる。この干渉信号は、従来技術(図9(a))で説明したような干渉除去処理を干渉除去処理部21が行うことで、問題なく除去することができる。
【0071】
一方で、一般的なパルス圧縮レーダで用いる変調パルス信号のエコー信号については、他のレーダ装置が送信する変調パルス信号との干渉が問題になる。この変調パルス信号はパルス幅が長いため、発明の課題で指摘したように、干渉信号は距離方向に長く伸びた形で現れる(図9(b))。しかし、本実施形態のパルス圧縮レーダ装置10は、送信周波数設定部12が送信帯域パターンに基づいて変調パルス信号の送信帯域にP0,P1の何れかを選択するとともに、選択したものと同様の送信帯域を持つ成分だけを受信周波数選択部19からマッチドフィルタ20へ出力するように構成しているため、複数のスイープの受信データを等距離同士で比較したときに干渉信号が連続して表れることを防止できる(詳細は後述する)。そして、干渉除去処理部21は、干渉除去後の受信信号を映像表示部22へ出力する。
【0072】
映像表示部22は、干渉除去処理部21から受信した干渉除去後のデータに基づいてレーダ映像を生成する。そして、映像表示部22は、生成したレーダ映像を外部の表示器に表示する。
【0073】
次に、送信帯域パターンの特徴、及び、当該送信帯域パターンにより干渉信号を除去する仕組みについて、図4及び図5を参照して説明する。図4は、送信帯域パターンを1送信回分ずつシフトして比較した結果を示す表である。図5は、他のレーダ装置からの干渉信号が除去されることを示す図である。
【0074】
図3(a)を参照して説明した本実施形態の送信帯域パターンは、同一の送信帯域パターンを有する他のパルス圧縮レーダ装置からの干渉信号を除去できるように考慮されたものとなっている。具体的には、送信帯域パターンと、1から7までの任意の送信回分だけ当該送信帯域パターンのタイミングをシフトした比較用送信帯域パターンと、を比較したときに、送信帯域パターンと比較用送信帯域パターンとの連続一致回数が最小(本実施形態では2回)となるように、当該送信帯域パターンが構成されている。
【0075】
以下、詳細に説明する。図4(a)から図4(h)までの「自レーダ送信帯域」と記載された行には、本実施形態の送信帯域パターン(2周期分)が示されている。図4(a)から図4(h)までの8つの表は上下方向で対応しており、「自レーダ送信帯域」と記載された行に示される内容は、図4(a)から図4(h)で全て同じである。一方、図4(a)から図4(h)までの「他レーダ送信帯域」と記載された行には、本実施形態の送信帯域パターンを0〜7送信回まで1送信回ずつ(1マスずつ)シフトした送信帯域パターンが示されている。なお、「他レーダ送信帯域」と記載された行では、シフトした数を判り易くするために、送信帯域パターンの1周期分を鎖線で囲んでいる。図4(a)から図4(h)までの「帯域の一致」と記載された行には、自レーダ送信帯域と、他レーダ送信帯域と、の送信帯域が一致している箇所にチェックマークが付けられている。
【0076】
図4に示すように、送信帯域パターンの差(ズレ)が1送信回分以上ある場合(図4(b)から図4(h)の場合)においては、何れも、帯域の一致(チェックマークの部分)が3回以上連続して現れる箇所が全くない(連続一致回数が2回まで)ことが判る。図4では繰返しの2周期分が示されているが、3周期目以降も同様である。なお、送信帯域パターンの繰返しの1周期が送信信号の8回分であって(N=8のとき)送信帯域の候補が2つである場合に、連続一致回数の最小値が2であることは、本願出願人らによって検証済みである。
【0077】
従って、本実施形態の送信帯域パターンをパルス圧縮レーダ装置10及び他のパルス圧縮レーダ装置が有している場合、図4(a)のように送信帯域パターンが適用されるタイミング(適用タイミング)が完全に一致する場合(1/8の確率)を除き、送信信号の送信帯域がレーダ装置間で3回以上連続して一致しない。従って、受信周波数選択部19が他のレーダ装置からの干渉信号を3回以上連続してマッチドフィルタ20に出力することがない。これは、隣り合う3本のスイープの受信データを等距離同士で比較したときに、その中の少なくとも1本には必ず干渉信号なしの受信データが含まれることを意味する。よって、3本のスイープの中から信号の強度が低い受信データを選択して出力値とすることにより、干渉信号を除去することができる。
【0078】
以下、図4(b)に示す場合、即ち、レーダ装置間で送信帯域パターンの適用タイミングが1つだけ差がある場合について具体的に説明する。
【0079】
この例において、パルス圧縮レーダ装置10は、送信帯域パターンの1番目に対応する送信信号(無変調パルス信号P2及び変調パルス信号P0)を角度θ1において送信し、送信帯域パターンの2番目に対応する送信信号(無変調パルス信号P2及び変調パルス信号P1)を角度θ2において送信するものとする。また、角度θ1のエコー信号には、他のパルス圧縮レーダ装置の送信信号(無変調パルス信号P2及び変調パルス信号P0)が含まれ、角度θ2のエコー信号には、他のパルス圧縮レーダ装置の送信信号(無変調パルス信号P2及び変調パルス信号P0)が含まれる。以下、角度θ3以降についても同様である。
【0080】
この場合、パルス圧縮レーダ装置10の送信帯域と、他のパルス圧縮レーダ装置の送信帯域と、が異なるのは、図4(b)に示すように、角度θ2,角度θ3,角度θ4,角度θ7において送信した送信信号である。そのため、パルス圧縮レーダ装置10がこれらの角度θ2,θ3,θ4,θ7において送信したときのスイープについては、他のパルス圧縮レーダ装置からの送信信号を受信周波数選択部19によって除去することができる。
【0081】
従って、干渉除去処理部21には、図5(a)に示すデータがマッチドフィルタ20から入力される。なお、図5(a)において、受信周波数選択部19によって除去された干渉信号を鎖線で示している。
【0082】
図5(a)に示すように、干渉除去処理部21に入力されるデータにおいては、干渉信号を含むスイープが3回以上連続していない。このため、互いに隣り合う任意の3本のスイープの受信データを取り出したときに、干渉信号が含まれないスイープが少なくとも1本は必ず含まれることになる。例えば、角度θ4,θ5,θ6の3本のスイープに注目した場合、そのうち角度θ4のスイープには干渉信号が含まれていない。従って、角度θ5におけるスイープの受信データの値として、例えば距離r3の近傍においては角度θ4のスイープの受信データを用いるように処理することで、干渉信号を除去することができる。
【0083】
なお、上記のように干渉信号を除去できるのは、送信帯域パターンの適用タイミングに1送信回分以上の差があることが前提であって、仮に図4(a)のように差が全く無かった場合は、受信周波数選択部19によって干渉信号を除去することができず、レーダ映像に乱れが生じる。この点、本実施形態のパルス圧縮レーダ装置10は、送信帯域パターンの適用タイミングをその場で強制的に例えば1送信回分だけシフトする処理を実行可能となっている。
【0084】
これにより、レーダ装置間で送信帯域パターンの適用タイミングを異ならせることができるので、受信周波数選択部19による干渉信号の除去が可能となる。そのため、適切なレーダ映像を得ることができる。なお、この適用タイミングをシフトする処理は、例えば以下の2つの場合に行われる。
【0085】
1つ目は、ユーザが所定の操作を行った場合である。この場合、所定の信号が生成されて妨害信号除去装置31(詳細には送信周波数設定部12)へ出力される。この信号を受信した送信周波数設定部12は、上記適用タイミングをシフトする処理を行う。
【0086】
2つ目は、送信帯域パターンの適用タイミングに差がないことを検出して自動的に上記の処理を行う構成である。この構成では、妨害信号除去装置31の内部又は外部に検出部が備えられる。この検出部は、自レーダ装置において送信帯域パターンが適用されるタイミングと、他のレーダ装置において送信帯域パターンが適用されるタイミングと、の差を検出する。そして、送信周波数設定部12は、検出部が検出した差が0又は僅か(1送信回分の時間以下)である場合、上記適用タイミングをシフトする処理を行う。
【0087】
以上に説明したように、本実施形態のパルス圧縮レーダ装置10は、妨害信号除去装置31と、アンテナ16と、受信信号処理部32と、映像表示部22と、を備える。また、妨害信号除去装置31は、送信トリガ生成部11と、送信周波数設定部12と、を備える。送信周波数設定部12は、無変調パルス信号P2と、互いに異なる帯域を有する変調パルス信号P0,P1と、に帯域を設定する。アンテナ16は、無変調パルス信号P2及び変調パルス信号P0,P1を送信するとともに、物標からの反射による受信信号を受信する。受信信号処理部32は、アンテナ16が受信した受信信号に基づいて、自船周辺の物標の位置を示すレーダ映像を生成する。映像表示部22は、このレーダ映像を外部の表示器に表示する。
【0088】
これにより、パルス圧縮レーダ装置10は、送信帯域を切り替えながら変調パルス信号P0,P1を送信することができる。従って、このパルス圧縮レーダ装置10の変調パルス信号P0,P1の送信帯域と、送信帯域の切替えを行わない他のレーダ装置の送信信号の送信帯域と、が一致しにくくなる。従って、他のレーダ装置からの干渉信号を除去することができる。
【0089】
また、本実施形態のパルス圧縮レーダ装置10においては、送信帯域パターンは変調パルス信号の8送信回分を1周期としている。そして、送信帯域パターンと、当該送信帯域パターンにおいて1から7のうち任意の送信回分だけタイミングをシフトした比較用送信帯域パターンと、を比較したときに送信帯域の連続一致回数が最小(上記実施形態では2回)となるように、送信帯域パターンが構成される。
【0090】
これにより、同様の送信帯域パターンを用いた他のレーダ装置が存在する場合においても、レーダ装置間で送信信号の連続一致回数が2回までになる。従って、他のレーダ装置からの干渉信号を単純な方法で容易に除去することができる。
【0091】
次に、図6及び図7を参照して上記実施形態の第1変形例を説明する。なお、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一又は類似する構成については、図面に上記実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。図6及び図7は、第1変形例において送信帯域パターンを1送信回ずつシフトして比較した結果を示す表である。なお、図6及び図7は、図4と同様の図となっているため、詳細な説明を省略する。
【0092】
上記実施形態の送信帯域パターンでは、8送信回で1周期となっているが、本変形例の送信帯域パターンでは、16送信回で1周期(N=16)となっている。図6及び図7には送信帯域パターンを0〜15送信回まで1送信回分ずつシフトした表が示されているが、本変形例の送信帯域パターンでは、図6(a)のように送信帯域パターンの適用タイミングが一致する場合を除いて、送信帯域の一致(チェックマーク)が4回以上連続しない(連続一致回数が3回までである)。従って、連続する複数のスイープの受信データを等距離同士で比較したときに、干渉信号(強度の高い信号)が4回以上連続して検出されることを防止できる。なお、送信帯域パターンの繰返しの1周期が送信信号の16回分であって送信帯域の候補が2つである場合に、連続一致回数の最小値が3であることは、本願出願人らによって検証済みである。
【0093】
本変形例では干渉信号が3回連続して検出されることはあり得るため、本変形例の干渉除去処理部21は、注目するスイープの1つ前及び1つ後だけでなく、注目するスイープの2つ前又は2つ後のスイープを含めて信号の強度を比較している。そして、信号の強度が最も低い受信データを出力値とすることにより、干渉信号を除去することができる。
【0094】
また、上記実施形態では、1/8の確率で、レーダ装置間で送信帯域パターンの適用タイミングが一致することになるが、本変形例では、1/16の確率でしか送信帯域パターンの適用タイミングが一致しない。従って、レーダ装置間で送信帯域パターンの適用タイミングが一致する確率を本実施形態よりも低減することができる。
【0095】
次に、図8を参照して、第2変形例を説明する。図8は、第2変形例に係るパルス圧縮レーダ装置10の構成を示すブロック図である。この変形例では、パルス圧縮レーダ装置10は、局部発振器14に加えて、局部発振器14と異なる局発信号を生成可能な局部発振器24を備えている。また、パルス圧縮レーダ装置10は、この局部発振器14が生成した第1局発信号と、局部発振器24が生成した第2局発信号と、が入力される局発周波数選択部25を備える。
【0096】
局発周波数選択部25には、送信周波数設定部12が設定した送信帯域が入力される。局発周波数選択部25は、この入力された送信帯域に対応する局発信号を第1局発信号及び第2局発信号から選択して、周波数変換部15及び周波数変換部18に出力する。
【0097】
これにより、送信周波数設定部12が設定した送信帯域に応じた変調パルス信号を生成することができる。なお、変調パルス信号の送信帯域を切り替える方法としては、本構成以外にも様々な構成が考えられ、本変形例及び上記実施形態で示した構成に限定されない。
【0098】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0099】
上記で説明した送信帯域パターンは例示であり、上記連続一致回数が最小となるように送信帯域パターンが構成されていれば、他の送信帯域パターンを用いることができる。例えば、上記実施形態及び第1変形例で説明した送信帯域パターンの1と0とを入れ替えた送信帯域パターンを用いることができる。また、変調パルス信号について3つ以上の送信帯域を設定可能なように変更することもできる。
【0100】
また、妨害信号除去装置は、予め定められた送信帯域パターンに基づいて送信帯域を切り替える構成に限られず、例えば、前記変調パルス信号の送信帯域を送信毎に無作為に選択する(擬似的に無作為に選択する場合も含むものとする)構成であっても良い。
【0101】
上記で説明したパルス圧縮レーダ装置10は、船舶用レーダ装置に限らず、他の用途のレーダ装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
10 パルス圧縮レーダ装置
11 送信トリガ生成部
12 送信周波数設定部
13 送信波形生成部
19 受信周波数選択部
20 マッチドフィルタ
21 干渉除去処理部
31 妨害信号除去装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無変調パルス信号に設定する送信帯域と異なる帯域であって互いに異なる2以上の帯域の何れかを変調パルス信号の送信帯域として設定する送信周波数設定部を備え、
前記送信周波数設定部は、前記変調パルス信号に設定する送信帯域を切り替えることを特徴とする妨害信号除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の妨害信号除去装置であって、
前記送信周波数設定部は、所定の送信帯域パターンに基づいて、前記変調パルス信号の送信帯域を切り替えることを特徴とする妨害信号除去装置。
【請求項3】
請求項1に記載の妨害信号除去装置であって、
前記送信周波数設定部は、前記変調パルス信号の送信帯域を、送信回毎に無作為に決定することを特徴とする妨害信号除去装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の妨害信号除去装置であって、
前記送信周波数設定部は、所定の周波数帯域より帯域が高い第1送信帯域と、前記所定の周波数帯域よりも帯域が低い第2送信帯域と、を設定することを特徴とする妨害信号除去装置。
【請求項5】
請求項4に記載の妨害信号除去装置であって、
前記第1送信帯域と前記第2送信帯域との間の帯域は、9410MHzを含むことを特徴とする妨害信号除去装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の妨害信号除去装置であって、
前記送信周波数設定部は、前記変調パルス信号の送信帯域と、前記無変調パルス信号の送信帯域と、を交互に設定することを特徴とする妨害信号除去装置。
【請求項7】
請求項1から5までの何れか一項に記載の妨害信号除去装置であって、
前記送信周波数設定部は、互いに異なる2つの帯域の何れかを前記変調パルス信号の送信帯域として設定し、
前記無変調パルス信号と前記変調パルス信号とが交互に送信されるとともに、前記送信周波数設定部によって当該変調パルス信号の送信帯域が前記2つの帯域の一方から他方へ切り替えられることを特徴とする妨害信号除去装置。
【請求項8】
請求項2に記載の妨害信号除去装置であって、
前記送信帯域パターンは前記変調パルス信号のN送信回分を1周期としており、前記送信帯域パターンと、当該送信帯域パターンにおいて1からN−1のうち任意の送信回分だけタイミングをシフトした比較用送信帯域パターンと、を比較したときに送信帯域の連続一致回数が最小となるように、前記送信帯域パターンが構成されることを特徴とする妨害信号除去装置。
【請求項9】
請求項2又は8に記載の妨害信号除去装置であって、
前記送信周波数設定部は、外部から入力された信号に基づいて、前記送信帯域パターンが適用されるタイミングを変更することを特徴とする妨害信号除去装置。
【請求項10】
請求項2、8、又は9に記載の妨害信号除去装置であって、
自機において前記送信帯域パターンが適用されるタイミングと、他のレーダ装置において前記送信帯域パターンが適用されるタイミングと、の差を検出する検出部の検出結果に基づいて、前記送信周波数設定部は、前記送信帯域パターンが適用されるタイミングを変更することを特徴とする妨害信号除去装置。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の妨害信号除去装置であって、
前記変調パルス信号の送信間隔を切り替えることを特徴とする妨害信号除去装置。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか一項に記載の妨害信号除去装置であって、
船舶に搭載されることを特徴とする妨害信号除去装置。
【請求項13】
無変調パルス信号に設定する送信帯域と異なる帯域であって互いに異なる2以上の帯域の何れかを変調パルス信号の送信帯域として設定する送信周波数設定部と、
前記送信周波数設定部によって前記変調パルス信号の送信帯域が切り替えられながら当該変調パルス信号及び無変調パルス信号を送信するとともに、物標からの反射による受信信号を受信するアンテナと、
前記アンテナが受信した受信信号に基づいて、自機周辺の物標の位置を示すレーダ映像を生成する受信信号処理部と、
前記レーダ映像を表示する表示器と、
を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項14】
無変調パルス信号に設定する送信帯域と異なる帯域であって互いに異なる2以上の帯域の何れかが変調パルス信号の送信帯域として設定され、当該送信帯域を切り替えながら前記変調パルス信号を送信することを特徴とする妨害信号除去方法。
【請求項15】
請求項14に記載の妨害信号除去方法であって、
所定の送信帯域パターンに基づいて、前記変調パルス信号の送信帯域を切り替えることを特徴とする妨害信号除去方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の妨害信号除去方法であって、
前記変調パルス信号には、所定の周波数帯域より帯域が高い第1送信帯域と、前記所定の周波数帯域よりも帯域が低い第2送信帯域と、が設定されることを特徴とする妨害信号除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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