説明

妻面を有する折り畳み自在な屋根構造体

【課題】軽量で曲げ強度の低い骨組部材を使用した可搬性折り畳み式のテントで、妻面を有するテントを提供する。
【解決手段】2本のバーをX字状に回動自在に連結してパンタグラフ状に折り畳み自在としたシザー組立体2と、幕体支持ポール4a4b及び支柱3等からなる骨組部材において、支柱3の上端に固定される固定ブラケット2aと支柱の途中にスライド自在に挿着されるスライドブラケット2bで支柱3とシザー組立体2を相互に連結する。支柱3の存在しない相互連結部では、幕体支持ポール4bの下端の固定ブラケット2aと幕体支持ポール4bの途中に挿着されるスライドブラケット2bで幕体支持ポール4bとシザー組立体2を相互に連結する。最も外側の幕体支持ポール4aの上端位置と、隣接する幕体支持ポール4bのスライドブラケット2b近接位置との間において、補強フレーム5を着脱自在に調節し係止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、テント、日除け等の骨組を構成する折り畳み自在なテントの屋根構造体であって、特に妻面を有する屋根構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天蓋やタープとも呼ばれる支柱で屋根幕を支える形式のテントには、屋根幕を支柱と紐で緊張させて設置するものや頂点部を中心に傘型に拡がり、その裾野を支柱で支えるもの、或いは屋根幕支持構造を施して、雨水等の重みによる屋根幕の弛みを軽減するように工夫されたものがある。特に、屋根幕支持構造を施してなるテントの代表例として、特許公報第2836956号(特許文献1)に開示されたようなものがあげられる。
【0003】
この従来例のテントは、4本の直立レッグ(支柱)と、該直立レッグ間に架けられるシザー組立体(トラス手段)及び、このテントの頂点部を形成するためのルーフ支持部材によって支持される中央ポストとから構成され、そして四角錐の頂点から底辺部位の各角とを結ぶ斜辺をロープで支持し、また平面図形の辺部をなす屋根幕の縁部を各支柱の上端によって、屋根幕を支持する構造となっている。
【0004】
この為、比較的小型のテントしか作ることが出来ず、大型や長方形等の形状のテントを形成することは困難であった。そこで、特開2005−002699号公報(特許文献2)に示されるようなテントが開発されている。該テントは比較的大型なテントであるが、雨天時の使用に際しては屋根の四方から雨水が滴り落ちてしまうものである。この為、複数のテントを近接して並べたとき、テント間に雨水が落ちてしまい、結果、複数のテントを並べても連続した屋根下空間を確保できないという欠点がある。
【0005】
そこで並べたときに屋根が連続するように、妻面を有する組み立て式テントが望まれる。しかしながらこの種の組み立て式テントは、可搬性を重視するため屋根構造体や支柱に比較的軽量で曲げ強度の低い部材を使用するのが一般的である。したがって、妻面を形成するために屋根構造体からフレームを立設させる構造をとると、張設した幕体の重量が妻面に立設したフレームの頂点にかかり、フレームが屋根構造体中央側へ撓んでしまうという問題が発生する。
【0006】
【特許文献1】特許第2836956号
【特許文献2】特開2005−002699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、屋根構造体や支柱に比較的軽量で曲げ強度の低い部材を使用した可搬性の折り畳み式のテントでありながら、従来のスチールパイプ製の組み立て式テントのように、常に屋根に直行する妻面を有するテントを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのこの発明が採った手段は、2本のバーをX字状に回動自在に連結してパンタグラフ状に折り畳み自在としたシザー組立体と、幕体支持ポール及び支柱等の骨組部材を含み、支柱の上端に固定される固定ブラケットと支柱の途中にスライド自在に挿着されるスライドブラケットで支柱、シザー組立体を相互に連結し、且、支柱が存在しないシザー組立体の相互連結部は、幕体支持ポールの下端に固定される固定ブラケットと幕体支持ポールの途中にスライド自在に挿着されるスライドブラケットで、幕体支持ポールとシザー組立体を相互に連結した屋根構造体において、最も外側に位置する幕体支持ポールと隣接する幕体支持ポールとの間に補強フレームを着脱自在に張設し、該補強フレームの一端は最も外側に位置する幕体支持ポールの上端位置に、補強フレームの他端は隣接する幕体支持ポールに挿着されたスライドブラケットに近接した位置において、幕体支持ポールに係止させることを特徴とする。
【0009】
又、補強フレームは、2本以上のバー部材からなり、伸縮自在であることを特徴とする。
【0010】
更に、補強フレームは、両端に幕体支持ポールの太さと略同一の凹部を有するブラケットを備えており、該凹部で幕体支持ポールを狭持して幕体支持ポールとスライドブラケットの間に張設したことを特徴とする。
【0011】
補強フレームは、一端近傍に内部にスプリングを内蔵したスライド部材を備え、幕体支持ポール間に張設したとき、該スプリングの張力により補強フレームを幕体支持ポールに圧接して係止するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、補強フレームにより妻面を形成する、屋根構造体の内、最も外側の幕体支持ポールが直立状態で支持されるため、妻面を長手方向に沿った2枚の屋根に対し直立した状態に維持することが出来る。この妻面の存在により雨水が妻面側に流れ落ちることを防止でき、これにより折り畳み式のテントを長手方向に複数並べた場合であっても、並べたテント間に雨水が滴り落ちることを防止でき、連続した屋根下空間を有効に使用することが出来るという効果を有する。又、2枚の屋根面をそれぞれ平面に形成することが出来るため、該屋根面に施した模様・広告等を美麗に表示できるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図面を参照しつつ、この発明の好ましい実施の形態を以下に詳細に説明する。図1は設営されたテント(1)を示す斜視図であり、図2は屋根構造体の概要を示す斜視図である。図3は屋根構造体に幕体を被覆した状態における透過図であり、図4は屋根構造体の平面概念図である。図5は補強フレームを示す図である。図6は補強フレームの一端部の透視図である。図7は妻面側の幕体支持ポールと補強フレームとの係止状態を示す図である。図8は妻面に隣接する幕体支持ポールのスライドブラケットと補強フレームとの係止状態を示す図である。図9は従来の折り畳み式テントを示す図である。
【0014】
屋根構造体は、四隅及び中間に垂直に立設される支柱(3)、隣接する2本の支柱を水平に連結するシザー組立体(2)、並びに幕体を展帳する幕体支持ポールから構成される。シザー組立体(2)は、2本のバーを中央でX字状に回動自在に連結してパンタグラフ状に屈伸自在としたものであり、各バーの自由端の一方は支柱(3)の上端に固定され、他の一方は支柱に沿ってスライド自在に支柱(3)に連結される。幕体支持ポール(4)は、下端を支柱間短手方向、即ち妻面(7)と並行する方向に連結されたシザー組立体(2)の下側連結部に固定されると共に、幕体支持ポール(4)に挿着したスライドブラケットを介して上方連結部に固定され、シザー組立体(2)が伸張されるとき、伸張に応じて自動的に上方に持ち上げられる。幕体支持ポール(4)に折り畳み自在な防水性及び耐久性を有し所望の強度を備える合成樹脂製シート、或いは織物からなる幕体(6)を被覆し、テントの屋根を作出する。
【0015】
図3は屋根構造体を伸張し、幕体を被覆した状態の透視図である。図示のようにシザー組立体(2)は一端を支柱(3)の上端に固定ブラケット(2a)を介して固定されつつ、他端をスライドブラケット(2b)を介して支柱に対しスライド自在に固定されている。又、支柱のない連結部においてはシザー組立体(2)の上下端が交差して連結されている。幕体支持ポール(4)は、支柱(3)を上下逆に取り付けたようにシザー組立体に接続されている。すなわち、幕体支持ポール(4)の下端は固定ブラケット(2a)を介してシザー組立体(2)の下方の一端に接続され、スライドブラケット(2b)を介してスライド自在に固定され、シザー組立体(2)の伸張に伴い、上方に持ち上げられるように固定されている。
【0016】
図4に示すように屋根構造体は、長手方向にシザー組立体(2)を4つ、短手方向にシザー組立体(2)を2つ連結した構造とし、中央のシザー組立体(2)同士が連結される位置に前記幕体支持ポール(4)が固定されている。これにより屋根構造体を伸張したとき、長手方向中央列を頂点とする。2枚の屋根面及び妻面(7)を有するテントを展帳することができる。該幕体支持ポール(4)の頂点には幕体(6)を破損させないように保護キャップ(41)が装着されている(図7参照)。尚、シザー組立体(2)、支柱(3)及び幕体支持ポール(4)の数はこれに限定されるものではなく、任意の数を設定することが出来る。
【0017】
従来のテントにあっては、シザー組立体(2)と幕体支持ポール(4a)(4b)(4c)のみで幕体(6)を展帳しようとすると、幕体(6)の重みで妻面(7)を支持する幕体支持ポール(4a)が屋根構造体中央側、すなわち幕体支持ポール(4b)側へ傾斜してしまう。そこで、本発明ではこれを解消するために、図3、4に示すように、幕体支持ポール(4a)の頂点と隣接する幕体支持ポール(4b)の下方に位置するスライドブラケット(2b)に近接した位置に補強フレーム(5)を張設させる。これにより、幕体(6)の重量により幕体支持ポール(4a)が内側に倒れ込んでしまうことを防ぐことが可能となり、屋根面に対し直立する妻面(7)を得ることができる。尚、該補強フレーム(5)は屋根構造体とは別体のものであり、任意に取り外し出来る構造である。
【0018】
図5、6に示すように、補強フレーム(5)は太径バー(51)と、該太径バー(51)内にスライド自在に挿入した細径バー(52)とからなり、両バー(51)(52)の連結部近傍には固定部材(57)が取り付けられ伸縮自在な構造となっている。細径バー(52)の開放端にはスライド部材(53)が挿着されている。該スライド部材(53)は内装したスプリング(54)により、常時細径バー(52)の開放端方向へと付勢されている。細径バー(52)の端部近傍には長手方向に沿った長孔(図示せず)が表裏同じ箇所に穿設されており、ここにスライド部材(53)を貫通するリベット(58)を挿着することで抜け止めがなされ、且、前記長孔の長さ分だけ、スライド部材(53)が細径バー(52)上をスライド可能となっている。但し、スライド部材(53)は前述のとおりスプリング(54)により開放端方向へと付勢されているので、該スプリング(54)に抗する圧力を加えたときのみ、スライド部材(53)のスライドが可能となる。
【0019】
スライド部材(53)の一端には、幕体支持ポール(4a)を狭持し係止するためのブラケット(55a)が固定されている。該ブラケット(55a)は全体がく字状に折曲した形状をなし、且、先端には幕体支持ポール(4a)を挟み込みつつ係止出来るよう略コ字状に加工された係止凹部(55c)が形成されている。又、スライド部材(53)の他端には保護キャップ(56)が固定されている。太径バー(51)の一端にも前記ブラケット(55a)と同形状のブラケット(55b)が固定されている。図示の例ではブラケット(55a)(55b)はネジ止めにより、又、保護キャップ(56)は挿着によって各々固定された状態となっているが、通常の使用で外れてしまうことが無ければ特にこの方法に限定されるものではない。
【0020】
次に補強フレーム(5)の屋根構造体への取り付け方法について説明する。まず補強フレーム(5)を適切な長さにするために、収納状態(図5a)から固定部材(57)を開放して太径バー(51)と細径バー(52)とを互いにスライド可能な状態にした後、細径バー(52)を太径バー(51)より引き出す。規定の長さで固定部材(57)により締結して、両バー(51)(52)を使用状態(図5b)とする。次にこの補強フレーム(5)の細径バー(52)側のブラケット(55a)を、幕体支持ポール(4a)に係止させる。係止は図7に示すように幕体(6)を展帳した状態で幕体支持ポール(4a)の上端を、ブラケット(55a)の係止凹部(55c)で狭持させるように行う。尚、幕体支持ポール(4a)の上端には保護キャップ(41)が固定されているため、係止凹部(55c)は該保護キャップ(41)の下面に当接し、幕体支持ポール(4a)から飛び抜けることなく幕体支持ポール(4a)の上端に係止することが出来る。
【0021】
前記幕体支持ポール(4a)への係止を行った後、太径バー(51)を細径バー(52)側へ向け、スプリング(54)に抗するように押圧しスライドさせる。これにより、スライド部材(53)内に細径バー(52)が入り込み、補強フレーム(5)の全長を短縮させることができる。次に該短縮状態の補強フレーム(5)の他端のブラケット(55b)の係止凹部(55c)を、前記幕体支持ポール(4a)に隣接する幕体支持ポール(4b)のスライドブラケット(2b)近傍を狭持させるようにセットした後、太径バー(51)のスライドを解除する。スライドを解除された補強バー(5)はスプリング(54)の力により全長を復元するため、ブラケット(55b)は幕体支持ポール(4b)に沿って下方へ移動する。この時、支持バー(4b)上に位置するスライドブラケット(2b)に前記ブラケット(55)が当接し、該スライドブラケット(2b)を押し下げつつ係止する。これにより幕体支持ポール(4a)(4b)間に補強フレーム(5)が斜めに張設され、幕体支持ポール(4a)を妻面(7)側へ押し出すことが出来、幕体の重量が幕体支持ポール(4a)にかかっていても妻面(7)を屋根面に対し直立した状態に保つことが出来る。
【0022】
以上の手順により展開されたテント(1)は、図1に示すような長手方向に沿った2枚の屋根面と、該屋根面に対し直立する妻面(7)を有する形状となる。このように屋根面に対し直立した妻面(7)を有するため、雨水が長手方向左右、すなわち妻面(7)以外の2辺にしか流れ落ちることが無い。したがって、テント(1)を長手方向に複数並べた場合であっても、テント間に雨水が落ちることが無く、連続した屋根下空間を使用することができる。又、屋根面を平面に形成することが出来るため、複数のテントにわたって広告等を施した場合であっても、美麗に表示することも可能となる。
【0023】
尚、収納時には前述の手順と逆の手順をとることで容易に可搬状態にすることが出来る。まず補強フレーム(5)の太径バー(51)を細径バー(52)側にスライドさせ、幕体支持ポール(4b)からブラケット(55b)をはずした後、幕体支持ポール(4a)からブラケット(55a)をはずして、補強フレーム(5)を屋根構造体より完全に離脱させる。次に固定部材(57)を操作して補強フレーム(5)を短縮させる。屋根構造体は、四方の支柱(3)を各々中心側へ寄せることで、シザー組立体が圧縮され折り畳まれ収納状態となる。尚、幕体(6)は、屋根構造体に取り付けたまま収納しても、又、外しても良く任意に選択可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のテントの斜視図
【図2】屋根構造体の骨組概要を示す斜視図
【図3】屋根構造体に幕体を被覆した状態における透過図
【図4】屋根構造体の平面概念図
【図5】収納状態と使用状態の補強フレームを示す図
【図6】補強フレームの端部透視図
【図7】妻面側の幕体支持ポールと補強フレームとの係止状態を示す図
【図8】スライドブラケットと補強フレームとの係止状態を示す図
【図9】従来の折り畳み式テントを示す図
【符号の説明】
【0025】
1 テント
2 シザー組立体
2a 固定ブラケット
2b スライドブラケット
3 支柱
4a,4b,4c 幕体支持ポール
41保護キャップ
5 補強フレーム
51 太径バー
52 細径バー
53 スライド部材
54 スプリング
55a,55b ブラケット
55c 係止凹部
56 保護キャップ
57 固定部材
58 リベット
6 幕体
7 妻面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本のバーをX字状に回動自在に連結してパンタグラフ状に折り畳み自在としたシザー組立体と、幕体支持ポール及び支柱等の骨組部材を含み、支柱の上端に固定される固定ブラケットと支柱の途中にスライド自在に挿着されるスライドブラケットで支柱、シザー組立体を相互に連結し、且、支柱が存在しないシザー組立体の相互連結部は、幕体支持ポールの下端に固定される固定ブラケットと幕体支持ポールの途中にスライド自在に挿着されるスライドブラケットで、幕体支持ポールとシザー組立体を相互に連結した屋根構造体において、最も外側に位置する幕体支持ポールと隣接する幕体支持ポールとの間に補強フレームを着脱自在に張設し、該補強フレームの一端は最も外側に位置する幕体支持ポールの上端位置に、補強フレームの他端は隣接する幕体支持ポールに挿着されたスライドブラケットに近接した位置において、幕体支持ポールに係止させることを特徴とする折り畳み自在な屋根構造体。
【請求項2】
補強フレームは、2本以上のバー部材からなり、伸縮自在であることを特徴とする請求項1記載の折り畳み自在な屋根構造体。
【請求項3】
補強フレームは、両端に幕体支持ポールの太さと略同一の凹部を有するブラケットを備えており、該凹部で幕体支持ポールを狭持して幕体支持ポールとスライドブラケットの間に張設したことを特徴とする請求項1又は2記載の折り畳み自在な屋根構造体。
【請求項4】
補強フレームは、一端近傍に内部にスプリングを内蔵したスライド部材を備え、幕体支持ポール間に張設したとき、該スプリングの張力により補強フレームを幕体支持ポールに圧接して係止するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の折り畳み自在な屋根構造体。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate