説明

姿勢修正装置

【課題】対向配置された照射部を用いる場合であっても、照射部の一方側から出射されたレーザー光による他方側の光学系の損傷を防止可能な姿勢修正装置を提供する。
【解決手段】対向配置されてヘッド・サスペンション3に両側からレーザー光を照射する一対の照射部27,29を備え、照射部27(29)は、レーザー光のレーザー発振部41と、このレーザー発振部41からのレーザー光をヘッド・サスペンション3に向けて出射する集光レンズ39と、出射されるレーザー光の光軸Aを待機状態から変更して照射位置を調整するガルバノ・ミラー37及び38とを備え、一対の照射部27,29の集光レンズ39,39は、待機状態でのレーザー光の光軸Aが、相手方の集光レンズを通ってレーザー発振部41に至る光路Pから外れて位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハード・ディスク・ドライブに組み込まれるヘッド・サスペンション等の修正対象物に対して姿勢修正を行う姿勢修正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハード・ディスク・ドライブの記録密度が飛躍的に向上し、これに伴い磁気ヘッドを支持するヘッド・サスペンションに対する精度要求が厳しくなってきている。磁気ヘッドは、ディスクの回転時に所定間隔をもって浮上し、ヘッド・サスペンションの微小なロール角やピッチ角の姿勢角が浮上姿勢に大きな影響を及ぼす。
【0003】
このため、製造工程段階では、個々のヘッド・サスペンション毎に、姿勢修正として姿勢角の修正を行うようにしている。
【0004】
従来の姿勢修正装置としては、例えば特許文献1のように、レーザー光を修正対象物であるヘッド・サスペンションに照射し、その照射部分に熱変形を生じさせるものがある。
【0005】
姿勢修正装置は、ヘッド・サスペンションを挟んで対向配置される一対のレーザー光の照射部を備え、ヘッド・サスペンションの両側からレーザー光を照射することで姿勢修正を行う。この姿勢修正装置では、作業時間の短縮を図ることができながら、修正量を大きく取ることができ、且つ修正精度の向上をも図ることができる。
【0006】
しかしながら、かかる従来の姿勢修正装置では、非姿勢修正時の待機状態において、照射部の一方側から意図せず出射されたレーザー光が、対向する他方側に入射して光アイソレータや光源等の光学系が損傷するおそれがあった。
【0007】
特に、ファイバーレーザーの場合は、そのファイバーが高利得であるため、入射したレーザー光が増幅されて光学系の損傷が大きくなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−66427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、対向配置された一対の照射部を用いる場合に、照射部の一方側から出射されたレーザー光によって他方側の光学系が損傷する点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、対向配置された一対の照射部を用いる場合であっても、照射部の一方側から出射されたレーザー光によって他方側の光学系が損傷することを防止するため、修正対象物を挟んで対向配置されて前記修正対象物に両側からレーザー光を照射する一対の照射部からなり、前記レーザー光の照射位置に応じて前記修正対象物の姿勢を修正する修正部を備えた姿勢修正装置であって、前記照射部は、前記レーザー光の光源と、該光源からのレーザー光を前記修正対象物に向けて出射する出射部と、前記出射されるレーザー光の光軸を待機状態から変更して前記照射位置を調整する照射位置調整部とを備え、前記一対の照射部の出射部は、前記待機状態でのレーザー光の光軸が、相手方の出射部を通って前記光源に至る光路から外れて位置することを最も主な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、対向配置された一対の照射部を用いる場合であっても、照射部の一方側から出射されたレーザー光が他方側に入射して光源に至ることを防止でき、他方側の光源を含む光学系の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】姿勢修正装置を示す概念図である(実施例1)。
【図2】図1のレーザー照射装置の概略構成図である(実施例1)。
【図3】図2のレーザー照射装置内の要部構成を示す概念図である(実施例1)。
【図4】図1の姿勢修正装置によるヘッド・サスペンションの姿勢修正を示す概念図である(実施例1)。
【図5】レーザー照射装置の概略構成図である(実施例2)。
【図6】姿勢修正装置を示す概念図である(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
対向配置された一対の照射部を用いる場合であっても、照射部の一方側から出射されたレーザー光によって他方側の光学系が損傷することを防止するという目的を、一対の照射部の出射部が、その待機状態でのレーザー光の光軸を、相手方の出射部を通って光源に至る光路から外れて設定されることで実現した。
【0014】
一対の照射部は、待機状態でのレーザー光の光軸が同一の指向方向であると共にその指向方向に対する交差方向で相互に位置ずれすることが好ましい。
【実施例1】
【0015】
[姿勢修正装置]
図1は、本発明の実施例1に係る姿勢修正装置を示す概念図である。
【0016】
図1のように、姿勢修正装置1は、板状の修正対象物としてのヘッド・サスペンション3の静的姿勢をレーザー光の照射によって修正するものである。具体的には、ヘッド・サスペンション3に取り付けられたフレキシャ5のヘッド部7にレーザー光を照射し、熱変形によってピッチ角及びロール角の姿勢角を修正する。ヘッド部7は、磁気ヘッドが取り付けられる部分及びその周辺を含み、姿勢修正が行われるヘッド部7は、磁気ヘッドの取付前及び取付後の何れのものでもよい。
【0017】
この姿勢修正装置1は、搬送部である搬送装置9に対して、修正部であるレーザー照射装置11、姿勢測定部である姿勢角測定装置13,15、給排装置17,19、及びコントローラ21を備えている。
【0018】
搬送装置9は、搬送ライン23上を走行するサスペンション・セット治具25を有している。この搬送装置9は、サスペンション・セット治具25にヘッド・サスペンション3を支持して、両側の姿勢角測定装置13,15とレーザー照射装置11との各間で往復駆動される。
【0019】
この往復駆動により、搬送ライン23上のヘッド・サスペンション3は、姿勢角測定装置13,15からレーザー照射装置11へ交互に搬送されると共にレーザー照射装置11から姿勢角測定装置13,15へ交互に退避される。
【0020】
姿勢角測定装置13,15は、例えばコリメーターからなり、レーザー照射装置11の両側に配置されている。姿勢角測定装置13,15は、ヘッド部7のピッチ角及びロール角を測定し、その測定結果をコントローラ21へ入力する。ピッチ角及びロール角の測定は、姿勢角測定装置13,15の双方においてヘッド部7の姿勢修正前後で行われる。
【0021】
レーザー照射装置11は、ヘッド・サスペンション3の上下両側からレーザー光を照射するものである。なお、レーザー照射装置11の詳細は後述する。
【0022】
給排装置17,19は、姿勢角測定装置13,15とレーザー照射装置11との各間に配置されている。給排装置17,19は、姿勢修正後のヘッド・サスペンション3を搬送装置9のサスペンション・セット治具25から排出する。また、給排装置17,19は、姿勢修正前のヘッド・サスペンション3をサスペンション・セット治具25に供給する。
【0023】
コントローラ21は、例えばコンピューター等の情報処理装置からなる。コンローラ21は、上記搬送装置9、姿勢角測定装置13,15、給排装置17,19の動作制御の他、姿勢角測定装置13,15からの測定結果に基づいてレーザー照射装置11でのレーザー光の照射制御を行う。
【0024】
レーザー光の照射制御では、姿勢角測定装置13,15で測定されたヘッド部7のピッチ角及びロール角に応じて、ヘッド部7の照射位置にレーザー光の照射を行わせる。なお、照射位置は、予めヘッド・サスペンション3の複数のサンプルから得られたピッチ角及びロール角又はそれらに対する修正量との関係を修正テーブル等に記憶しておき、その修正テーブル等から求められる。
[レーザー照射装置]
図2は、図1のレーザー照射装置の全体構成を示す概略図、図3は、図2のレーザー照射装置内の要部構成を示す概念図である。
【0025】
レーザー照射装置11は、図2及び図3のように、一対の照射部27,29を備えている。照射部27,29は、フレキシャ5(ヘッド・サスペンション3)のヘッド部7を挟んで上下に対向配置され、ヘッド部7に上下両側からレーザー光を照射できるようになっている。
【0026】
照射部27,29は、例えば同一構成のレーザー・マーカーからなっている。各照射部27(29)は、マーカー本体31に、光ファイバー等の導光路33を介してマーカー・ヘッド35が接続されている。この照射部27(29)は、マーカー本体31内でレーザー光を発振し、導光路33を介してマーカー・ヘッド35に伝送する。マーカー・ヘッド35からは、レーザー光がヘッド部7に照射される。
【0027】
なお、マーカー・ヘッド35は、図示しないカメラ等の撮像部を備え、レーザー照射時に撮像画像によってヘッド部7及びその周辺の位置が把握する。ただし、撮像部は、レーザー照射装置11と姿勢角測定装置13,15との各間に単独で設けてもよい。
【0028】
マーカー本体31は、光源としてのレーザー発振部41及び発振制御部43を備えている。レーザー発振部41は、発振媒体(例えばYAG等)をフラッシュランプ、LD(レーザダイオード)等により励起させてレーザー光を発振させる。
【0029】
発振制御部43は、レーザー発振とミラー駆動を同期させてマーカー・ヘッド35のガルバノ・ミラー37及び38を制御する。
【0030】
マーカー・ヘッド35は、照射位置調整部としての一対のガルバノ・ミラー37及び38と、出射部としての集光レンズ39と、光アイソレータ40とを備えている。
【0031】
ガルバノ・ミラー37及び38は、マーカー本体31から伝送されたレーザー光を集光レンズ39側に向けて反射偏向させる。このガルバノ・ミラー37及び38は、XY軸の2軸制御によって集光レンズ39に対する反射方向が調整される。
【0032】
集光レンズ39は、偏向されたレーザー光を、エネルギー密度分布を適切に調整してヘッド部7に向けて出射する。
【0033】
レーザー光の光軸は、その指向方向が非姿勢修正時の待機状態で上下方向に沿っており、姿勢修正時にガルバノ・ミラー37及び38の制御に応じて待機状態から変更される。この変更によりレーザー光は、ヘッド部7に対する照射位置の調整が行われる。
【0034】
一対の照射部27,29の集光レンズ39,39は、待機状態でのレーザー光の光軸Aが、相手方の集光レンズ39を通って後述するレーザー発信部41に至る光路Pから外れて位置する。
【0035】
本実施例において、一対の照射部27,29は、待機状態でのレーザー光の光軸Aが同一の指向方向として上下方向に沿っていると共にその上下方向に対する交差方向で相互に位置ずれしている。この位置ずれは、集光レンズ39,39を相互に位置ずれさせることで設定されている。
【0036】
位置ずれ量としては、レーザー光の光軸A,A間の距離dが10mm程度に設定されている。ただし、位置ずれ量は、照射部27,29の性能に応じて任意に設定でき、姿勢修正が可能な範囲で10mm以上に設定してもよい。
【0037】
この光軸A,Aの位置ずれにより、各レーザー光が相手方の集光レンズ39に入射しても、図3の二点差線のようにガルバノ・ミラー37及び38の反射方向がレーザー発振部41へ至る光路Pとは異なるようになっている。このため、相手方の集光レンズ39に入射したレーザー光は、ガルバノ・ミラー37及び38での反射を通じて光路Pから外れることになる。
【0038】
なお、一対の照射部27,29は、レーザー光を相手方集光レンズ39の有効径の範囲外に指向させてもよい。この場合は、一対の照射部27,29を更に位置ずれさせたり、或いは位置ずれせずにガルバノ・ミラー37及び38の制御によって有効径の範囲外にレーザー光を指向させてもよい。
【0039】
また、照射部27,29自体を傾斜配置させることも可能である。この場合には、照射部がガルバノ・ミラーを有さずに、マーカーヘッド自体を駆動して照射位置を調整するように構成してもよい。この構成では、マーカーヘッドを駆動する電動モータ等の駆動源が照射位置調整部として機能する。
【0040】
光アイソレータ40は、偏光素子やファラデー効果を利用した回転子等の光学部品により構成されている。この光アイソレータ40は、レーザー発振部41と集光レンズ39との間で光路P上に配置され、レーザー発振部41への反射戻り光を阻止する。なお、反射戻り光は、ヘッド・サスペンション3の表面で反射するレーザー光の戻り成分である。
[姿勢修正]
図4(a)〜(d)は、図1の姿勢修正装置によるヘッド・サスペンションの姿勢修正を示す概念図である。なお、図4では、レーザー照射装置11から一方の姿勢角測定装置13までを第1領域、レーザー照射装置11から他方の姿勢角測定装置15までを第2領域として説明する。
【0041】
本実施例の姿勢修正では、図4(a)のように、まず、第1及び第2領域の双方において、搬送ライン23上のサスペンション・セット治具25を姿勢角測定装置13,15とレーザー照射装置11の各間に位置させる。
【0042】
この状態で、給排装置17,19によりサスペンション・セット治具25上に修正前のヘッド・サスペンション3を供給する。
【0043】
次いで、図4(b)のように、搬送装置9を一方側に駆動する。
【0044】
これにより、第1領域では、ヘッド・サスペンション3を姿勢角測定装置13に位置させて、修正前のヘッド部7のピッチ角及びロール角を測定する。
【0045】
なお、第2領域では、ヘッド・サスペンション3が搬送装置9の駆動に応じてレーザー照射装置11に位置するが、ピッチ角及びロール角が測定されていないので、姿勢修正は行われない。
【0046】
次いで、図4(c)のように、搬送装置9を他方側に駆動する。
【0047】
これにより、第1領域では、ヘッド・サスペンション3をレーザー照射装置11に位置させてヘッド部7の姿勢修正を行う。
【0048】
姿勢修正の際は、図2のように、ヘッド部7の照射対象箇所であるアウトリガー44がレーザー照射装置11の照射部27,29間に配置される。このとき、マーカー・ヘッド35は、撮像部によってヘッド部7及びその周辺の画像を撮像する。なお、照射部27,29は、レーザー光の光軸指向方向が待機状態であり、ヘッド部7のアウトリガー44上から外れている。
【0049】
この状態で、照射部27,29は、測定されたピッチ角及びロール角並びに撮像画像に基づくヘッド部7周辺の位置情報に応じ、レーザー光の光軸指向方向が待機状態からアウトリガー44の照射位置に向けて変更される。変更後は、アウトリガー44の照射位置に、レーザー光を上下両側から同時に照射してヘッド部7を目標姿勢にすることができる。
【0050】
なお、レーザー光の照射は、修正テーブル等に基づいて照射位置が連続的に調整され、例えば所定の照射ラインに沿って行われる。また、本実施例では、レーザー光を上下両側から同時に照射しているが、必ずしも同時でなくてもよい。
【0051】
第2領域では、搬送装置9の駆動に応じてヘッド・サスペンション3が他方の姿勢角測定装置15に位置し、修正前のヘッド部7のピッチ角及びロール角が測定される。
【0052】
このように本実施例では、第1領域で姿勢修正を行うと同時に、第2領域で修正前の姿勢測定を行わせることができる。
【0053】
次いで、図4(d)のように、搬送装置9を再度一方側に駆動する。
【0054】
これにより、第1領域では、ヘッド・サスペンション3を姿勢角測定装置13に位置させ、修正後のヘッド部7のピッチ角及びロール角を測定する。
【0055】
第2領域では、搬送装置9の駆動に応じてヘッド・サスペンション3がレーザー照射装置11に位置し、第1領域の場合と同様にヘッド部7の姿勢修正が行われる。
【0056】
このように本実施例では、第1領域で修正後の姿勢測定を行うと同時に、第2領域で姿勢修正を行わせることができる。
【0057】
その後は、搬送装置9を再度他方側に駆動し、図4(a)の状態を経て図4(c)の状態に移行させる。図4(a)の状態では、第1領域に対し、修正後のヘッド・サスペンション3を排出すると共に修正前のヘッド・サスペンション3を供給する。なお、第1領域のヘッド・サスペンション3の再修正が必要な場合は、図4(a)の状態を経ることなく図4(d)に移行すればよい。
【0058】
供給後は、図4(c)の状態において、第1領域の場合と同様に、第2領域での修正後ヘッド部7のピッチ角及びロール角を測定する。
【0059】
その後は、搬送装置9を再度一方側に駆動し、図4(a)の状態を経て図4(b)の状態へ移行する。図4(a)の状態では、第2領域に対し、修正後のヘッド・サスペンション3の排出及び修正前のヘッド・サスペンション3の供給が行われる。なお、第1領域と同様に、ヘッド・サスペンション3の再修正が必要な場合は、図4(a)の状態を経ることなく図4(b)の状態に移行すればよい。
【0060】
以上のような動作を繰り返しながら、複数のヘッド・サスペンション3に対する姿勢修正を迅速に行わせることができる。
[実施例1の効果]
本実施の姿勢修正装置1は、ヘッド・サスペンション3を挟んで対向配置されてヘッド・サスペンション3に両側からレーザー光を照射する一対の照射部27,29からなり、レーザー光の照射位置に応じてヘッド・サスペンション3の姿勢を修正するレーザー照射装置11を備えた姿勢修正装置1であって、照射部27(29)は、レーザー光のレーザー発振部41と、このレーザー発振部41からのレーザー光をヘッド・サスペンション3に向けて出射する集光レンズ39と、出射されるレーザー光の光軸Aを待機状態から変更して照射位置を調整するガルバノ・ミラー37及び38とを備え、一対の照射部27,29の集光レンズ39,39が、待機状態でのレーザー光の光軸Aを、相手方の集光レンズ39を通ってレーザー発振部41に至る光路Pから外れて位置させている。
【0061】
従って、本実施例の姿勢修正装置1では、非姿勢修正時である待機状態で、一対の照射部27,29の一方側から出射されたレーザー光が他方側のレーザー発振部41に入射することを防止できる。
【0062】
また、姿勢修正時には、一対の照射部27,29間にヘッド・サスペンション3が介在するので、照射部27,29の一方側から他方側へのレーザー光の入射を防止できる。
【0063】
従って、本実施例の姿勢修正装置1では、対向配置された一対の照射部27,29を用いる場合であっても、レーザー発振部41を含む光学系の損傷を確実に防止することができる。
【0064】
本実施例では、レーザー発振部41と集光レンズ39との間で光路P上に配置された光アイソレータ40を備えている。このため、本実施例では、反射戻り光を遮断してレーザー発振部41の安定化や損傷を抑制することができるながら、光学系である光アイソレータ40の損傷をも確実に防止することができる。
【0065】
また、一対の照射部27,29は、待機状態でのレーザー光の光軸A,Aが同一の指向方向あると共にこの指向方向に対する交差方向で相互に位置ずれしているので、待機状態でのレーザー光の光軸Aを確実にレーザー発振部41に至る光路Pから外れて位置させることができる。結果として、本実施例では、光学系の損傷を確実に防止することができる。
【0066】
本実施例では、一対の照射部27,29の位置ずれ量が10mmであるので、光学系の損傷を防止しながら、ヘッド・サスペンション3の姿勢修正を確実に行わせることができる。
【0067】
本実施例の姿勢修正装置1では、ヘッド・サスペンション3の両側からレーザー光を照射して姿勢修正を行うので、作業の迅速化を図ることができながら、修正量を大きく取ることができ、且つ修正精度の向上をも図ることができる。
【0068】
また、本実施例の姿勢修正装置1は、レーザー照射装置11の両側に配置されてヘッド・サスペンション3の姿勢を修正前後で測定する姿勢角測定装置13,15と、両側の姿勢角測定装置13,15とレーザー照射装置11との各間で往復駆動され、ヘッド・サスペンション3を両側の姿勢角測定装置13,15からレーザー照射装置11へ交互に搬送すると共にレーザー照射装置11から両側の姿勢角測定装置13,15へ交互に退避させる搬送装置9とを備えている。
【0069】
従って、姿勢修正装置1では、一方で姿勢角測定装置13,15の何れか一方からレーザー照射装置11にヘッド・サスペンション3を搬送して姿勢修正を行いながら、他方でレーザー照射装置11から姿勢角測定装置13,15の他方にヘッド・サスペンション3を退避させて姿勢測定を行わせることができる。
【0070】
従って、姿勢修正装置1では、一のヘッド・サスペンション3に対する姿勢修正の待ち時間を利用して、他のヘッド・サスペンション3の姿勢測定を行わせることができ、作業の迅速化を図ることができる。
【実施例2】
【0071】
図5は、実施例2に係るレーザー照射装置の概略構成図である。なお、実施例2では、実施例1と基本構成が共通するため、対応する構成部分に同符号或いは同符号にAを付加したものを用いて重複した説明を省略する。
【0072】
本実施例は、図5のように、レーザー照射装置11Aの照射部27A,29Aが、それぞれヘッド・サスペンション3の複数の照射対象箇所に対してレーザー光を照射するものである。
【0073】
本実施例では、ヘッド・サスペンション3の両側のアウトリガー44,45に対してレーザー光を照射する。なお、アウトリガー44,45間は、8mm程度の隙間を有して相互に離反している。
【0074】
両アウトリガー44,45へのレーザー光の照射は、ガルバノ・ミラー37及び38の駆動による照射範囲内に両アウトリガー44、45を位置させることで実現している。すなわち、ヘッド・サスペンション3の複数の照射対象箇所が、ガルバノ・ミラー37及び38による照射位置の調整可能範囲内に位置する構成となっている。
【0075】
なお、ガルバノ・ミラー37及び38は高速駆動が可能なため、同時に両アウトリガー44、45に対する姿勢修正を行っても修正時間に与える影響を極めて小さいものとすることができる。
【0076】
かかる実施例2においても、上記実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0077】
加えて、本実施例では、複数位置である両アウトリガー44、45に対しレーザー光を一度期に照射して姿勢修正を行わせることができ、姿勢修正のためのヘッド・サスペンション3の移動回数を削減してタクト・アップを図ることができる。
【実施例3】
【0078】
図6は、実施例3に係る姿勢修正装置を示す概念図である。なお、実施例3では、実施例1と基本構成が共通するため、対応する構成部分に同符号或いは同符号にBを付加したものを用いて重複した説明を省略する。
【0079】
本実施例では、図6のように、一対の姿勢角測定装置13B,15B間で片道走行駆動される搬送装置9Bを備えたものである。
【0080】
すなわち、搬送装置9Bは、サスペンション・セット治具25にヘッド・サスペンション3を支持して、一側の姿勢角測定装置13Bからレーザー照射装置11を介して他側の姿勢角測定装置15Bまでヘッド・サスペンション3を搬送する。
【0081】
姿勢角測定装置13Bは、レーザー照射装置11の搬送方向上流側(一側)で修正前のヘッド・サスペンション3の姿勢測定を行い、姿勢角測定装置15Bは、搬送方向下流側(他側)で修正後のヘッド・サスペンション3の姿勢測定を行う。
【0082】
搬送装置9Bの搬送方向上流側には、姿勢修正前のヘッド・サスペンション3を供給する供給装置47が設けられ、搬送方向下流側には、姿勢修正後のヘッド・サスペンション3を排出する排出装置49が設けられている。
【0083】
本実施例の姿勢修正装置1Bでは、上記実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0084】
加えて、本実施例の姿勢修正装置1Bでは、供給装置47で修正前のヘッド・サスペンション3を供給するだけで搬送しながら修正前姿勢測定、姿勢修正、修正後姿勢測定を連続的に行わせることができる。
【0085】
従って、姿勢修正装置1Bでは、作業の迅速化及び簡素化を図ることができると共に動作制御の簡素化をも図ることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 姿勢修正装置
3 ヘッド・サスペンション(修正対象物)
9 搬送装置(搬送部)
11 レーザー照射装置(修正部)
13,15 姿勢角測定装置(姿勢測定部)
27,29 照射部
37 ガルバノ・ミラー(照射位置調整部)
39 集光レンズ(出射部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
修正対象物を挟んで対向配置されて前記修正対象物に両側からレーザー光を照射する一対の照射部からなり、前記レーザー光の照射位置に応じて前記修正対象物の姿勢を修正する修正部を備えた姿勢修正装置であって、
前記照射部は、前記レーザー光の光源と、該光源からのレーザー光を前記修正対象物に向けて出射する出射部と、前記出射されるレーザー光の光軸を待機状態から変更して前記照射位置を調整する照射位置調整部とを備え、
前記一対の照射部の出射部は、前記待機状態でのレーザー光の光軸が、相手方の出射部を通って前記光源に至る光路から外れて位置する、
ことを特徴とする姿勢修正装置。
【請求項2】
請求項1記載の姿勢修正装置であって、
前記一対の照射部は、前記待機状態でのレーザー光の光軸が同一の指向方向であると共に該指向方向に対する交差方向で相互に位置ずれした、
ことを特徴とする姿勢修正装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の姿勢修正装置であって、
前記修正対象物は、ヘッド・サスペンションであり、
前記位置ずれ量は、10mmである、
ことを特徴とする姿勢修正装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の姿勢修正装置であって、
前記修正対象物の複数の照射対象箇所が前記照射位置調整部による前記照射位置の調整可能範囲内に位置する、
ことを特徴とする姿勢修正装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の姿勢修正装置であって、
前記光源と前記出射部との間で前記光路上に配置された光アイソレータを備えた、
ことを特徴とする姿勢修正装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の姿勢修正装置であって、
前記出射部は、集光レンズであり、
前記照射位置調整部は、前記光源からのレーザー光を前記集光レンズに向けて反射するガルバノ・ミラーである、
ことを特徴とする姿勢修正装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の姿勢修正装置であって、
前記修正部の両側に配置されて前記修正対象物の姿勢を修正前後で測定する姿勢測定部と、
前記両側の姿勢測定部と前記修正部との各間で往復駆動され、前記修正対象物を前記両側の姿勢測定部から前記修正部へ交互に搬送すると共に前記修正部から前記両側の姿勢測定部へ交互に退避させる搬送部とを備えた、
ことを特徴とする姿勢修正装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の姿勢修正装置であって、
前記修正部の両側に配置されて前記修正対象物の姿勢を一側で修正前に測定し他側で修正後に測定する一対の姿勢測定部と、
前記一対の姿勢測定部間で走行駆動され前記一側の姿勢測定部から前記修正部を介して前記他側の姿勢測定部まで前記修正対象物を搬送する搬送部とを備えた、
ことを特徴とする姿勢修正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−238354(P2012−238354A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106358(P2011−106358)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】