説明

姿勢矯正メガネ

【課題】日常生活において特段に支障をきたすことなく普通に安全に使用することが可能でありながら、頭部の不正姿勢を有効に矯正することができる姿勢矯正メガネを提供する。
【解決手段】レンズ10と、使用者が頭部に掛けることでレンズ10を使用者の眼前に保持するフレーム20とを備えた姿勢矯正メガネ1において、レンズの正面側の表面と背面側の表面とのうちの少なくとも一方におけるレンズ10の中心Cから下側にずれた位置に、左右方向に延びてレンズ10を2つの領域に分ける難視領域30を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用のメガネに関し、詳しくは、使用者の視野を調整して使用者の頭部の姿勢を矯正することができる姿勢矯正メガネに係る。
【背景技術】
【0002】
日常生活において、頭部の姿勢が正しくない場合には、種々の障害が発生する。
例えば、長時間のデスクワークや運動不足、全身筋肉の脆弱化等によって、目線が上向きあるいは下向きに固定されると、頭部の位置が本来あるべき位置からずれてしまう。すると、その不自然な位置にある頭部を支える頸椎や脊椎に異常な負荷がかかるとともに、全身の姿勢が崩れてしまい、種々の全身障害を引き起こす原因となる。
【0003】
また、例えば、上向き視線(頭部の下向き姿勢)は、眼圧の上昇を招き、さらに、肺を圧迫することからガス交換不良やこれに伴う熱の排出不良等の呼吸器障害の一因にもなる。
【0004】
また、下向き視線(頭部の上向き姿勢)は、例えば、成長期の子供にあっては、上顎に対する舌圧の低下を招き、その結果、舌圧による上顎の外側への付勢力が不足するため、上顎の正常な前方成長を阻害することになる。
【0005】
また、左向き視線(頭部の右回転姿勢)や右向き視線(頭部の左回転姿勢)は、脊椎の捩じれや、左右一方の筋肉の異常疲労を招きやすい
【0006】
このように、頭部に姿勢の崩れ(不正姿勢)は、眼科だけではなく、歯科、内科、外科に及ぶ全身の疾患の一因となっている。
【0007】
ところで、頭部の姿勢を矯正するためのメガネが種々提案されている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【0008】
このうち特許文献1のものは、レンズにおける上下方向の略中央に、左右方向に延びる帯状の透明領域を設け、この透明領域の上側と下側とは、色付きの領域としている。ゴルフのスイング時に、ボールが帯状の透明領域内に入るようにすることで、頭部の動きを安定させて不要な動きを排除するものである。
【0009】
また、特許文献2のものは、遮光部材によってレンズを構成し、レンズの中心に左右方向に延びるスリットを設け、このスリットを介してボールを見るようにすることで、目線の傾き、方向を簡単に確認することができ、基本姿勢を簡単に身につけるようにするものである。
【0010】
そして、特許文献3のものは、レンズの中央に円形の透光部を設けそれ以外を遮光部とすることで、視界を狭めて、プレーヤーの集中力を高めるとともに、ゴルフ練習時等のヘッドアップ等を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実開平5−63575号公報
【特許文献2】特開平10−165552号公報
【特許文献3】特開平2003−295127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述の特許文献1〜3は、ゴルフの練習等の限られた場面で使用するものであり、視野を積極的に狭めることによって、すなわち、普通に見える範囲を可能な限り狭くすることにより、大きな練習効果をあげるように構成されている。このため、例えば、階段の昇降や外出等を含む日常生活の中で使用することは、不自由であることはもちろん、安全性については、極端な場合には、危険を伴うおそれがある。
【0013】
また、目には3つの筋肉があって、目がニュートラル状態にないとき、例えば、上目づかい、下目づかい、右目づかい、左目づかい等のときには、この3つの筋肉のうちの少なくとも1つに負荷がかかり、眼圧が上がってしまうという、問題もある。
【0014】
すなわち、眼球は、筋により上下左右に回転する構造となっている。それぞれの筋は脳神経12対のうち動眼神経・外転神経・滑車神経と3つの神経支配を受けている。また、眼球の後方部には同じく脳神経12対のうちの1つである視神経があり、眼球は脳神経12対のうち4対、つまり脳神経の3分の1を使用する重要な機関であることが伺える。例えば、上向き姿勢となった場合、前方を見るためには特定の方向に筋が収縮する必要がある。眼球の回転運動は最大±25度程度と言われており、頭部の傾斜角度が25度以上となると眼球は回転限界を超えて多大な歪み力が発生する。これにより視認画像に歪みが生じたり、眼球の変形圧力が増し眼圧の上昇が生じる。眼圧の上昇については、本発明者が実際に眼圧の変化を目線をかえて測定したところ、眼球を回転させた場合眼圧値が18→21、17→24(mmHg)等と変化することを確認した。一般に機械にて眼圧値を測定する場合、額とオトガイ部を固定して水平目線の状態にて計測するため、その個人の日常姿勢での眼圧値と一致しない場合が多々あるのではないかと思われる。同時に眼球形態の歪みにより乱視等の視覚障害や網膜の剥離などが生じる可能性もありうる。また、眼球の回転により神経突起の位置が眼窩内で移動していくが、この際、視神経並びに内在する動静脈血管が共に牽引されることとなる。神経はシナプスにより結合しているため牽引されるとシナプス間隙が大きくなり、伝達不良が生じる。また、血管も牽引されると実長が長くなると同時に内径は減少するため血流抵抗が増大し、血液の循環障害が増すことになる。このように頭位の傾斜に伴う眼球回転により目に関わる様々な機能障害が惹起される可能性が発明者の研究により演繹されている。
【0015】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、日常生活において特段に支障をきたすことなく普通に安全に使用することが可能でありながら、頭部の不正姿勢を有効に矯正することができ、さらに、無理な目づかいを矯正して眼圧の上昇を押えることができる等、目に関わる様々な障害に対する予防並びに治療を行うことができる姿勢矯正メガネを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1) 上記目的を達成するために、本発明は、レンズと、使用者が頭部に掛けることで前記レンズを前記使用者の眼前に保持するフレームとを備えた姿勢矯正メガネにおいて、前記レンズの正面側の表面と背面側の表面とのうちの少なくとも一方における前記レンズの中心からずれた位置に、前記レンズを2つの領域に分ける難視領域を設けた、ことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、使用者が頭部(顔部)に姿勢矯正メガネを掛けると、使用者の視界に難視領域が入り込むため、使用者は違和感を覚える。そして、使用者はおのずと違和感を軽減させて見ようとする。すなわち、レンズの全体領域のうちの、レンズの中心を基準として難視領域が設けてある側とは反対側で物を見ようとする。これにより、頭部の姿勢としては、難視領域がある側に向くことになる。例えば、難視領域がレンズの中心よりも下側にある場合、頭部の姿勢が正しい(真っすぐな)使用者が水平に物を見ると、難視領域が視野の下側に入るため違和感を覚える。そして、違和感を軽減しようとすると、レンズのうちの難視領域がない側、つまり上側を使用して水平に物を見ることになり、おのずと下向き姿勢となる。このように、正しい姿勢の使用者が、レンズの中心よりも下側に難視領域があるメガネを掛けると、下向き姿勢となる。したがって、もともと上向き姿勢の使用者が同様のメガネを掛けると、下向き気味となって姿勢が矯正される。同様に、メガネを使用する使用者は、難視領域がレンズの中心を基準として、上側にあるときは上向き気味に、左側にあるときは左向き(左回転)気味に、そして、右側にあるときは右向き(右回転)気味になる。つまり、レンズの中心からずれて難視領域が設けられている場合、そのメガネの使用者は、難視領域のある方向に向き気味となる。したがって、例えば、レンズの中心に対して難視領域が、下側、上側、左側、右側にずれているメガネを、この順に、上向き姿勢、下向き姿勢、左回転姿勢、右回転姿勢の使用者が使用することにより、それぞれ姿勢を矯正することが可能である。
【0018】
また、難視領域は、中心からずれた領域の全体に設けるのではなく、レンズを2つの領域に分けるように設けられていて、難視領域を基準としてレンズの中心側はもちろん、中心から遠い側にもレンズとして普通に使用できる領域を残しているので、例えば、日常生活等において常時使用する場合であっても高い安全性を確保することができる。つまり、レンズの上下左右の端部近傍にも通常に見える視野を確保することができるので、日常生活において普通のメガネと同様に使用することが可能である。
【0019】
さらに、無理な目づかいを矯正して眼圧の上昇を押えることができる。
(2) 上記構成において、前記難視領域は、前記レンズにおける前記難視領域以外の領域よりも光の透過率が低い領域である、ようにしてもよい。
【0020】
この構成によれば、レンズに、難視領域として光の透過率が低い領域が設けられているので、使用者はこの領域が、視野に入って違和感を覚える。そして、この違和感を和らげるために、同方向を向きがちとなり、これにより、頭部の姿勢が矯正される。
【0021】
(3) 上記構成において、前記難視領域は、前記レンズの中心に近い側の端部が、前記レンズの中心から前記使用者の眼球の水晶体の半径に相当する距離だけずれた位置に配置されるように設けられている、ようにしてもよい。
この構成によれば、難視領域は、レンズの中心を外しながら、中心に比較的近い位置に配置されるので、使用者に適度(必要で十分)な違和感を与える位置として好適である。
【0022】
(4) 上記構成において、前記難視領域は、前記レンズの中心よりも下側において左右方向に延設されて前記レンズを上領域と下領域とに分ける、ようにしてもよい。
この構成によれば、使用者が上向き加減である場合、その使用者は、中心よりも下側に設けられた難視領域が視界に入ることに起因する違和感を軽減しようとして、下向き気味となるので頭部の姿勢が正しく矯正される。
【0023】
(5) 上記構成において、前記難視領域は、前記レンズの中心よりも上側において左右方向に延設されて前記レンズを上領域と下領域とに分ける、ようにしてもよい。
この構成によれば、使用者が下向き加減である場合、その使用者は、中心よりも上側に設けられた難視領域が視界に入ることに起因する違和感を軽減しようとして、上向き気味となるので頭部の姿勢が正しく矯正される。
【0024】
(6) 上記構成において、前記難視領域は、前記レンズの中心よりも左側において上下方向に延設されて前記レンズを左領域と右領域とに分ける、ようにしてもよい。
この構成によれば、使用者が右向き加減である場合、その使用者は、中心よりも左側に設けられた難視領域が視界に入ることに起因する違和感を軽減しようとして、左向き気味となるので頭部の姿勢が正しく矯正される。
【0025】
(7) 上記構成において、前記難視領域は、前記レンズの中心よりも右側において上下方向に延設されて前記レンズを左領域と右領域とに分ける、ようにしてもよい。
この構成によれば、使用者が左向き加減である場合、その使用者は、中心よりも右側に設けられた難視領域が視界に入ることに起因する違和感を軽減しようとして、右向き気味となるので頭部の姿勢が正しく矯正される。
【0026】
(8) 上記構成において、前記難視領域は、前記レンズの前記表面を粗面加工することによって形成されている、ようにしてもよい。
この構成によれば、難視領域がレンズの一部として構成されるので、難視領域が物理的に劣化したりするおそれが低く、外部環境の影響を受けにくい。
【0027】
(9) 上記構成において、前記難視領域は、剥離可能な粘着剤が塗布されて前記レンズよりも光透過率が低いシール状部材を前記レンズの前記表面に貼着することによって形成されている、ようにしてもよい。
【0028】
この構成によれば、レンズに対して難視領域を簡単に設けることができ、また、難視領域の位置変更を容易に行うことができ、さらに、難視領域が不要になった場合には簡単に取り除くことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば(本発明に係る姿勢矯正メガネによれば)、日常生活において特段に支障をきたすことなく普通に安全に使用することが可能でありながら、頭部の不正姿勢を有効に矯正し、ひいては頭部の不正姿勢に起因する全身の種々の疾患を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態1の姿勢矯正メガネ1の正面図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】実施形態2の姿勢矯正メガネ1の正面図である。
【図4】実施形態3の姿勢矯正メガネ1の正面図である。
【図5】実施形態4の姿勢矯正メガネ1の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳述する。なお、各図面において、同じ符号を付した部材等は、同じあるいは似た構成のものであり、これらについての重複説明は適宜省略するものとする。また、各図面においては、説明に不要な部材等は適宜、図示を省略している。なお、以下の説明において、左右の方向は、本発明に係る姿勢矯正メガネを掛ける使用者を基準に定めている。したがって、姿勢矯正メガネを正面から見た図1,図3〜図5においては、これらの図中での左右は、説明文中の左右とは逆になっている。
<実施形態1>
【0032】
図1,図2を参照して、本発明を適用した実施形態1に係る姿勢矯正メガネ1について説明する。ここで、図1は、姿勢矯正メガネ1を正面側から見た図である。また、図2は、図1中のII−II線矢視図である。
【0033】
これらの図に示すように、姿勢矯正メガネ1は、2枚のレンズ10と、フレーム20と、難視領域30を構成するシール状部材31とを備えて構成されている。
【0034】
レンズ10としては、普通に使用されるレンズを使用することができる。ここで、普通に使用されるレンズとは、使用者の視力を矯正するための、近視用、遠視用、遠近両用、乱視用のレンズ、あるいはこれらを適宜組み合わせたレンズをはじめ、使用者の特殊な事情に応じて個別に作製されたレンズや、度の入っていないレンズも含まれるものとする。
【0035】
レンズ10は、フレーム20の一方のリム21の略中央に中心Cを有している。ここで、レンズの中心Cとは、レンズ10の物理的な中心であり、削り出す前の素材としての円形のレンズの中心である。この中心Cは、姿勢矯正メガネ1を作製する際に、使用者が姿勢矯正メガネ1を頭部(顔部)に掛けた状態で、使用者が遠方を見たときの瞳孔の中心に対応するように位置決めされている。なお、以下の説明では、裏表あるレンズ10の外側の面(使用者の眼球から遠い側の面)を正面側の表面11といい、内側の面(使用者の眼球から近い側の面)を背面側の表面12というものとする。
【0036】
フレーム20は、2枚のレンズ10がそれぞれ嵌め込まれる左右のリム21,21と、これら左右のリム21,21を連結するブリッジ22と、リム21,21の内側部分にパッドアーム23,23を介して取り付けられたパッド24,24と、リム21,21の外側部分に開閉自在に連結されたテンプル25とを有している。なお、フレームの材質や形状等については、その機能や使用者の嗜好等に応じて適宜に選択することができる。例えば、金属フレーム、プラスチックフレーム、ナイロンフレーム、枠なしフレーム等から任意のものを選択することができる。
【0037】
難視領域30としてのシート状部材31は、光透過率の低いシートによって構成されている。ここで、光透過率が低いとは、上述のレンズ10と比較した場合に、これよりも光透過率が低いという意味である。シート状部材31としては、例えば、シート自体の光透過率が低いものや、透明のシートに多数のドットや砂地や梨地をプリントしたもの、さらには、多数の斜線や格子柄をプリントしたものを使用することができる。シート状部材31としては、全体として光透過率が低く形成されていて、使用者が姿勢矯正メガネ1を掛けた際に、その視界の中に異物として視認することが可能であれば十分である。
【0038】
シート状部材31は、図示例では、左右方向に長い帯状に形成されていて、一方の面には剥離自在な粘着剤32が塗布されている。シート状部材31は、粘着剤32を介して、レンズ10の背面側の表面12に貼着されている。シート状部材31がプリントによって形成されている場合には、そのプリント面がレンズ10側(粘着剤32が塗布される側)に位置するようにするとよい。レンズ10側の逆側に位置する場合には、プリント面が外側に露出されて、環境等による劣化が進みやすい。シート状部材31は、その長手方向が左右方向を向くように、さらに、長手方向に沿った2つの端縁のうちの上側に位置する上端31aが、中心からAの距離に配置されるように貼着されている。ここで、距離Aは、使用者の眼球の水晶体の半径(不図示)と略等しくなる距離とする。すなわち、レンズ10に貼着された状態のシート状部材31は、上下方向の位置について、使用者が姿勢矯正メガネ1を装着した状態において、上端31aが使用者の水晶体の下端と略一致する位置に配置されるように構成されている。
【0039】
シート状部材31の左右方向の長さLは、例えば、使用者の水晶体の直径よりも長く設定されている。これにより、姿勢矯正メガネ1を装着した使用者が、正面に対して、左側、あるいは右側に視線をずらした場合でも、シート状部材31が有効に使用者の視界に入るようにして、使用者に違和感を覚えさせることが可能となる。
【0040】
シート状部材31の上下方向の長さ(幅)Wは、例えば、数mmに設定するとよい。この幅Wが小さすぎる場合には、使用者の視界に入ったとしても、使用者が異物として認識することができないために、頭部の姿勢の矯正の効果が低くなる。一方、幅Wが大きすぎる場合には、次に説明するレンズ10の下領域10が狭められて、日常生活、例えば、階段の昇降等に支障をきたすおそれがある。なお、この幅Wの好適な寸法については、使用者の個人差があると考えられるため、使用者に合わせて適宜に設定するとよい。さらに、上述のシート状部材31の上下方向の位置についても、一般的な基準として、上述のように、上端31aがレンズ10の中心CからAの位置に設定しておいて、その後の微調整は、使用者に合わせて適宜行うとよい。このような、シート状部材31の使い勝手を考慮すると、シート状部材31を上述のように、粘着剤32を使用して剥離自在の構成しておくことは極めて好ましい。
【0041】
上述のレンズ10は、難視領域30を形成するシート状部材31によって、これよりも上側の上領域10Aと下側の下領域10Bとに分けられる。すなわち、レンズ10全体は、通常の光透過率の上領域10A及び下領域10Bと、これらよりも光透過率が低い難視領域30との3つの領域に分けられることになる。
【0042】
次に、上述構成の姿勢矯正メガネ1の作用・効果を説明する。
難視領域30がレンズ10の中心Cよりも下側に設けられた姿勢矯正メガネ1は、頭部の上向き姿勢(下向き視線)を矯正するためのメガネである。
【0043】
上向き姿勢の使用者が姿勢矯正メガネ1を掛けると、その視界における下方に、難視領域30が異物として認識されて違和感を覚える。このため、使用者は違和感を軽減させるべく無意識のうちに下向き気味となる。そして、このような動作が継続される間に、上向き姿勢が矯正される。さらに、レンズ10は、難視領域30の上側に位置して中心Cを含む上領域10Aはもちろん、難視領域30の下側に位置する下領域10Rも通常のレンズとして作用するので、使用者の視野の範囲を通常のメガネと同様に確保することができ、例えば、レンズ10の下端側を使用しがちな階段の昇降等において特段、支障を感じることはなく、十分な安全性を確保することできる。
<実施形態2>
【0044】
図3を参照して、本発明を適用した実施形態2に係る姿勢矯正メガネ2について説明する。同図に姿勢矯正メガネ2は、下向き姿勢(上向き視線)を矯正するためのメガネである。姿勢矯正メガネ2は、レンズ10における中心よりも上側に、左右方向に長いシート状部材31を貼着することにより、難視領域30を構成している。さらに詳しくは、シート状部材31の下端31bが、中心から使用者の水晶体の半径に対応する距離Aだけ離れた位置に配置されて貼着されている。
【0045】
本実施形態の姿勢矯正メガネ2を、下向き姿勢の使用者が掛けると、その視界における上方に、難視領域30が異物として認識されて違和感を覚える。このため、使用者は違和感を軽減させるべく無意識のうちに上向き気味となる。そして、このような動作が継続される間に、下向き姿勢が矯正される。さらに、レンズ10は、難視領域30の下側に位置して中心Cを含む下領域10Bはもちろん、難視領域30の上側に位置する上領域10Aも通常のレンズとして作用するので、使用者の視野の範囲を通常のメガネと同様に確保することができ、例えば、レンズ10の上端側も頻繁にしようする階段の昇降等において特段、支障を感じることはなく、十分な安全性を確保することできる。
<実施形態3>
【0046】
図4を参照して、本発明を適用した実施形態3に係る姿勢矯正メガネ3について説明する。同図に姿勢矯正メガネ3は、右回転姿勢(左側の斜視)を矯正するためのメガネである。姿勢矯正メガネ3は、レンズ10における中心Cよりも左側に、上下方向に長いシート状部材31を貼着することにより、難視領域30を構成している。さらに詳しくは、シート状部材31の右端31cが、中心Cから使用者の水晶体の半径に対応する距離Aだけ離れた位置に配置されて貼着されている。
【0047】
本実施形態の姿勢矯正メガネ3を、右回転姿勢の使用者が掛けると、その視界における左方に、難視領域30が異物として認識されて違和感を覚える。このため、使用者は違和感を軽減させるべく無意識のうちに左回転気味となる。そして、このような動作が継続される間に、右回転姿勢が矯正される。さらに、レンズ10は、難視領域30の右側に位置して中心Cを含む右領域10Dはもちろん、難視領域30の左側に位置する左領域10Cも通常のレンズとして作用するので、使用者の視野の範囲を通常のメガネと同様に確保することができ、十分な安全性を確保することできる。
<実施形態4>
【0048】
図5を参照して、本発明を適用した実施形態4に係る姿勢矯正メガネ4について説明する。同図に姿勢矯正メガネ4は、左回転姿勢(右側の斜視)を矯正するためのメガネである。姿勢矯正メガネ4は、レンズ10における中心Cよりも右側に、上下方向に長いシート状部材31を貼着することにより、難視領域30を構成している。さらに詳しくは、シート状部材31の左端31dが、中心から使用者の水晶体の半径に対応する距離Aだけ離れた位置に配置されて貼着されている。
【0049】
本実施形態の姿勢矯正メガネ4を、左回転姿勢の使用者が掛けると、その視界における右方に、難視領域30が異物として認識されて違和感を覚える。このため、使用者は違和感を軽減させるべく無意識のうちに右回転気味となる。そして、このような動作が継続される間に、右回転姿勢が矯正される。さらに、レンズ10は、難視領域30の左側に位置して中心Cを含む左領域10Cはもちろん、難視領域30の右側に位置する右領域10Dも通常のレンズとして作用するので、使用者の視野の範囲を通常のメガネと同様に確保することができ、十分な安全性を確保することできる。
【0050】
以上の実施形態1〜4では、この順に、上向き姿勢、下向き姿勢、右回転姿勢、左回転姿勢を矯正する姿勢矯正メガネ1〜4について説明したが、これらの難視領域30を組み合わせて、さらに別のかぎ形の難視領域を有する姿勢矯正メガネを作製することも可能である。例えば、実施形態1と実施形態3の難視領域30を組み合わせれば、上向き姿勢かつ右回転姿勢を矯正する姿勢矯正メガネを作製できる。また、実施形態1と実施形態4の難視領域30を組み合わせれば、上向き姿勢かつ左回転姿勢を矯正する姿勢矯正メガネを作製できる。また、実施形態2と実施形態3の難視領域30を組み合わせれば、下向き姿勢かつ右回転姿勢を矯正する姿勢矯正メガネを作製できる。また、実施形態2と実施形態4の難視領域30を組み合わせれば、下向き姿勢かつ左回転姿勢を矯正する姿勢矯正メガネを作製できる。
【0051】
なお、左右方向に長い難視領域30と上下方向に長い難視領域30とを組み合わせてかぎ形の難視領域を形成するのに代えて、斜めに傾斜した難視領域を形成するようにしてもよい。例えば、図1に示す横長の難視領域30と図4に示す縦長の難視領域30とを形状的にかぎ形に組み合わせるのではなく、これらの作用を考慮して、例えば、レンズ10の中心に対して左斜め45度下方の、Aだけ離れた位置に、45度傾斜した状態の難視領域30A(図4の二点鎖線参照)を設けるようにしてもよい。この場合も、上向き姿勢かつ右回転姿勢を矯正することができる。
【0052】
以上の実施形態1〜4においては、難視領域30を構成するシート状部材31を、レンズ10における背面側の表面12に粘着剤32を使用して貼着する例を説明した。ところで、粘着剤32には、一般に揮発性の有機溶剤が含有されていて、これが、使用者の眼に負担をかけることが考えられる。このような場合には、シート状部材31を、レンズ10における背面側の表面12に代えて、正面側の表面11に貼着するとよい。これにより、目に対する負担を軽減することができる。
【0053】
また、以上では、難視領域30を構成するために、シート状部材31をレンズ10の背面側の表面12又は正面側の表面11に貼着する場合を例に説明したが、これに代えて、例えば、レンズ10の背面側の表面12又は正面側の表面11に直接、グラインダー等を使用して、粗面加工を施し、この粗面によって難視領域を構成するようにしてもよい。この場合には、シート状部材31と異なり、経時変化に伴う物理的な劣化がほとんどないので、例えば、劣化に伴うシート状部材31の交換といった煩雑な作業を行う必要がない。
【0054】
また、以上では、難視領域30が帯状に形成されている場合を例に説明したが、難視領域30の形状に関しては、比較的自由度が高い。例えば、楕円形、長方形、ダイヤモンド形等の形状とすることも可能である。ただし、いずれの形状を採用した場合でも、使用者がその視野の中に異物として認識し、違和感を覚えるものとし、また、これらの形状を、実施形態1,2では横長に、また、実施形態3,4では縦長に使用することが好ましい。
【符号の説明】
【0055】
1 実施形態1の姿勢矯正メガネ
2 実施形態2の姿勢矯正メガネ
3 実施形態3の姿勢矯正メガネ
4 実施形態4の姿勢矯正メガネ
10 レンズ
10A 上領域
10B 下領域
10C 左領域
10D 右領域
11 レンズの正面側の表面
12 レンズの裏面側の表面
20 フレーム
30 難視領域
31 シート状部材
32 粘着剤
A 水晶体の半径に相当する距離
S 水晶体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、使用者が頭部に掛けることで前記レンズを前記使用者の眼前に保持するフレームとを備えた姿勢矯正メガネにおいて、
前記レンズの正面側の表面と背面側の表面とのうちの少なくとも一方における前記レンズの中心からずれた位置に、前記レンズを2つの領域に分ける難視領域を設けた、
ことを特徴とする姿勢矯正メガネ。
【請求項2】
前記難視領域は、前記レンズにおける前記難視領域以外の領域よりも光の透過率が低い領域である、
ことを特徴とする請求項1に記載の姿勢矯正メガネ。
【請求項3】
前記難視領域は、前記レンズの中心に近い側の端部が、前記レンズの中心から前記使用者の眼球の水晶体の半径に相当する距離だけずれた位置に配置されるように設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載の姿勢矯正メガネ。
【請求項4】
前記難視領域は、前記レンズの中心よりも下側において左右方向に延設されて前記レンズを上領域と下領域とに分ける、
ことを特徴とする請求項3に記載の姿勢矯正メガネ。
【請求項5】
前記難視領域は、前記レンズの中心よりも上側において左右方向に延設されて前記レンズを上領域と下領域とに分ける、
ことを特徴とする請求項3に記載の姿勢矯正メガネ。
【請求項6】
前記難視領域は、前記レンズの中心よりも左側において上下方向に延設されて前記レンズを左領域と右領域とに分ける、
ことを特徴とする請求項3に記載の姿勢矯正メガネ。
【請求項7】
前記難視領域は、前記レンズの中心よりも右側において上下方向に延設されて前記レンズを左領域と右領域とに分ける、
ことを特徴とする請求項3に記載の姿勢矯正メガネ。
【請求項8】
前記難視領域は、前記レンズの前記表面を粗面加工することによって形成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の姿勢矯正メガネ。
【請求項9】
前記難視領域は、剥離可能な粘着剤が塗布されて前記レンズよりも光透過率が低いシール状部材を前記レンズの前記表面に貼着することによって形成されている、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の姿勢矯正メガネ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−73485(P2012−73485A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219161(P2010−219161)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(503316776)
【Fターム(参考)】