説明

媒体上における本体の先端の経路を認識するための方法

角度センサ(3)により本体の方向の角度(θ)を決定することができる。力センサ(4)は、ほぼ連続的な態様で媒体と接触する本体の先端の反力を測定する。媒体の平面に対する反力の方向は、前記センサ(3および4)からの測定データ(S1,S2)によって決定される。媒体の平面内における反力の投影(F4)により、経路に対して接線方向のベクトル(oハット)が決定される。経路は、接線方向ベクトル(oハット)の数学的な積分(F5)により、あるいは、例えば接線方向ベクトル(oハット)の正規化により得られる接線方向の単位ベクトルと加速度計により供給される加速度を表わすデータとのスカラー積によって決定できる接線方向加速度の数学的な二重積分により決定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体上における本体の先端の経路を認識するための方法であって、本体内に配置された少なくとも1つの角度センサにより処理ユニットに対して供給される測定データを処理することによって本体の方向の角度を決定することを含み、本体は、媒体と接触した状態で本体の先端の反力を測定するための力センサを備え、力センサは、ほぼ連続的な態様で反力を表わすデータを処理ユニットに対して供給し、処理ユニットは、角度センサおよび力センサからの測定データにより、媒体の平面に対する反力の方向を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市場におけるデジタルペンは、ペンの先端の動きを認識できるようにする加工媒体(prepared medium)または基準ソース、例えば数値化テーブル、特定のスクリーン、超音波源、電磁波源または特定の紙を必要とするため、ペンの使用が複雑化する。
【0003】
媒体上に書き込まれるトレース(形跡)は、ペンによりコンピュータスクリーン上に書き写される。一般に、デジタルペンは、書き込まれる記号、例えば文字や署名を認識できるようにする。
【0004】
一般に、デジタルペンは、幾つかのセンサ、例えば加速度計型の慣性センサや、例えば磁力計またはジャイロメータ型の角度センサを備えており、また、可能であれば、媒体と接触するペン先端の反力を検出してペンが書き込み媒体と接触しているか否かを認識できるようにする検出器を備えている。書き込み媒体上におけるペン先端の加速度は、センサによって供給される測定データを処理することにより得られる。その後、加速度の関数である量の数学的な二重積分により、書き込み媒体上におけるペン先端の経路のおおよその決定を行なうことができる。データ処理演算は、例えばペン内に配置される処理ユニットによって行なわれる。
【0005】
文献US5548092は、ペンの先端に加えられる力を測定することにより媒体上に書き込まれた情報を視覚化するための方法について記載している。ペンは、媒体に対するペン先端の力を測定するためのセンサを備えている。更なるセンサは、ペンが媒体と接触していない場合であっても媒体に対するペンの動き及び方向を測定できるようにする。ペンの長軸の方向を持つ力は、書き込み平面内に設けられた2つの直交軸に沿って方向付けられた成分を含んでいる。ペンの基準座標系において測定された力は、絶対基準座標系へと変換される。文献は、重力軸に対するペンの傾斜角度と、前記直交軸の一方に対するアジマス角(azimuth angle)とを規定している。摩擦力は、静的成分と速度に依存する動的成分との和によって表わされる。測定された力が長手方向の力と静摩擦係数との積よりも小さい場合に定義によりゼロとなる正味の力を規定するため、この静的成分は、測定された力から差し引かれる。その後、動きの量の時間微分が、正味の力および動摩擦力の関数として表わされる。そして、速度および位置を決定するために微分方程式が解かれる。媒体の平面内におけるペンの位置および速度の成分の計算は、正味の力の対応する成分を考慮して、積分により行なわれる。
【0006】
文献US5548092に記載されたペンの固有の構造に起因して、アジマス角は一定になると考えられ、また、ペンは、書き込み中にユーザがペンを回転させないようにするエッジを備えている。このことは、ペンがユーザの手の中で固定された位置にあることを意味している。この前提は、現実的に非常に制限される。
【0007】
文献WO99/67652は、ペン先端に結合された所定の慣性質量を備える測定装置内に組み込まれた力センサと加速度センサと接触センサとを備えるペンについて記載している。また、ペンは、ペンの傾斜角度を測定するための装置を備えている。測定装置は、測定データを制御ユニットに対して送信する。測定データは、ペンに加えられる力および加速度を決定するために処理される。ペンを使用する方法は、初期化段階と、測定段階と、データ処理段階とを含んでいる。データにより、ペンが書き込み媒体と接触しているか否かを決定することができる。接触が検出された場合には、データが力として解釈される。接触が存在しない場合には、データが加速度として解釈される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、媒体上における本体の先端の経路の認識を簡略化するとともに、ペンの使用を簡略化しつつ特に書き込み媒体上におけるペン先の経路を認識するための経路認識精度を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この目的は、添付の請求項によって達成され、また、特に、媒体の平面内における反力の投影により、経路に対して接線方向のベクトルを処理ユニットが決定し、経路に対して接線方向のベクトルの関数である量の少なくとも1つの数学的積分により経路が決定されるという事実によって達成される。
【0010】
他の利点および特徴は、単なる非限定的な実施例として与えられ且つ添付の請求項に示された本発明の特定の実施形態の以下の説明からより明確に理解できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1において、ペン1は、ペンのケース5内に配置された加速度計2と、角度センサ3と、力センサ4とをペン1の前部に備えている。力センサ4はペンの先端6に対して機械的に接続されており、また、加速度計2は先端6の近傍に位置されていることが有益である。角度センサ3は、3つのジャイロメータの組によって形成されることができ、あるいは、3つの磁力計の組によって形成されることが好ましい。また、ペン1の後部内には、電子回路、特にアナログ・デジタル変換器7、処理ユニット8および送信器9またはトランシーバも配置されている。データ処理は、処理ユニット8によって行なうことができ、あるいは、送信器9を用いてデータを受ける遠隔ステーションによって行なうこともできる。ペン1は、更なる器具を必要とすることなく任意の媒体10上に書き込みを行なうことができる。図1において、ペン1の長軸Lの角度θ、すなわち、ペン1の傾斜角度は、媒体10の平面に対して規定される。媒体は平坦であることが好ましい。しかしながら、僅かな歪みをもった表面を使用することもできる。
【0012】
図2に示される簡略化された第1の実施形態において、ペン1の先端6の経路は、角度センサ3および力センサ4のそれぞれにより処理ユニット8に供給されるデータS1,S2から決定される。認識方法は、書き込み始める前に、媒体10の方向θ0の較正ステップF1を含むことができる。例えば、ペンは、較正ステップF1中に、媒体と垂直な軸に対して所定の角度で配置され、好ましくは媒体10に対して垂直に配置され、そのため、角度センサ3は、媒体10の方向の角度θ0を供給する。媒体10の方向がその後に変更される場合には、較正が更新されなければならない。媒体10が異なる方向を有する幾つかの領域を備えている場合には、ペン1の先端6が領域を変える度に較正を更新することができる。
【0013】
その後、ステップF2において、角度センサ3の測定データS1から、媒体10の方向の角度θ0に対するペン1の角度θの推定が既知の方法で行なわれる。
【0014】
データS2は、ほぼ連続的な態様で力センサ4により処理ユニット8に対して供給される。これらのデータは、媒体10と接触しているペン1の先端6の反力を表わしている。測定値は、3次元であり、反力に比例している。したがって、単純な接触検出ではなく、反力の方向および大きさに関する情報が得られる。反力は、ペン1の基準座標系(基準フレーム)で測定される。媒体10の平面に対する反力の方向は、角度センサ3の測定データS1、特に角度θから、および、力センサ4の測定データS2から決定される。したがって、媒体10の基準座標系における反力が得られる。その後、反力が媒体10の平面に対して投影され(F4)、これにより、ユーザによって加えられた押圧力に対応する媒体10と垂直な成分を排除できる。これは、ペン1の先端6の経路を決定するために重要である。媒体10の平面内の成分、すなわち、投影の結果は、媒体10上のペン1の先端6の摩擦力に起因している。この摩擦力は、媒体10の平面内でのペン1の先端6の動きと逆平行であり、媒体10上のペン1の先端6の経路に対して接線方向にある。したがって、ペン1の先端6の経路に対して接線方向でベクトルoハットが得られ、このベクトルは、媒体の平面内での先端6の速度の方向を表わしている。
【0015】
接線方向ベクトルoハットの単純な数学的積分を含むステップF5において、処理ユニット8は、媒体10上におけるペンの先端6の経路を決定する。
【0016】
なお、文献US5548092によれば、ペンの先端の位置および速度を計算するために使用される正味の力は、(経路に対して接線方向の)速度に比例する量と、(必ずしも接線方向ではない)加速度に比例する量との総和に等しい。したがって、文献US5548092において使用される正味の力は、それが必ずしも経路に対して接線方向ではない加速度ベクトルを含む限りでは、経路に対して接線方向のベクトルに相当しない。
【0017】
図3に示される第2の実施形態において、ペン1の先端6の経路は、角度センサ3と力センサ4と加速度計2とによってそれぞれ処理ユニット8に対して供給されるデータS1,S2およびS3から決定される。
【0018】
加速度計からのデータS3の処理によって、より良好な精度で経路の決定を行なうことができる。
【0019】
加速度計2は、重力によって影響されるため、測定値に対する重力の寄与部分を排除することが望ましい。角度センサ3により供給される測定データにより、加速度計2の測定値に対する重力の寄与部分Gを既知の方法で見積もることができ(F6)、その後、加速度計2によって供給されるデータS3から前記寄与部分Gを排除して(F7)、動きの加速度だけの関数である減じられたデータS4を得ることができる。
【0020】
したがって、減じられたデータS4は、加速度計2の位置における動きの加速度を表わしており、この加速度は基本的にはペン1の先端6の加速度Aとは異なっている。ステップF8においてペン1の先端6の加速度Aを決定するために、ステップF’2においては、角度センサ3の測定データS1から、また、角度θを時間に関して1回微分および2回微分することによりそれぞれ得られる角速度VAおよび角加速度AAから、媒体10の方向の角度θ0に対するペン1の角度θの見積もりが既知の方法で行なわれる。ステップF8を実行するため、加速度計2の位置とペン1の先端6とを結びつけるベクトルを考慮して、従来の機構の動きの合成の法則が使用される。
【0021】
その後、ペン1の先端6の加速度Aを媒体10の平面に対して投影して(ステップF9)、媒体10上におけるペン1の先端6の加速度aハットを得ることができる。したがって、角度センサ3および加速度計2によってそれぞれ供給されるデータS1およびS3から媒体10の平面内の投影を計算することができるとともに、媒体10の方向の角度θ0、方向の角度θ0に対するペン1の角度θ、ペン1の先端6の加速度Aを決定することができる。
【0022】
ステップF’4においては、ステップF4と同様に、ペン1の先端6の経路に対して接線方向のベクトルoハットが得られ、また、更に、接線方向ベクトルoハットの正規化により、ペン1の先端6の経路に対して接線方向の単位ベクトルuハットが得られる。
【0023】
ステップF10において、処理ユニット8は、単位ベクトルuハットと媒体10上のペン1の先端6の加速度aハットとのスカラー積を決定し、これにより、経路に対して接線方向の加速度成分aTを決定することができる。その後、経路は、加速度の接線方向成分aTの数学的な二重積分F11によって決定される。
【0024】
経路に対して接線方向の加速度成分aTは、媒体10の平面内におけるペン1の先端6の加速度Aの投影F9を行なうことなく、単位ベクトルuハットとペン1の先端6の加速度Aとのスカラー積によって決定されても良い。しかしながら、投影ステップF9は、経路と垂直な加速度成分により経路の曲率に関する情報を引き出すことができる。
【0025】
角度センサ3と力センサ4とを組み合わせて使用すると、経路に関与しない力の寄与部分、例えば媒体に対して垂直なペン1の重量または圧力を、加速度aTの測定値から正確に排除することができる。
【0026】
本発明に係る方法を使用すると、特に、署名の記録および認識を効果的に行なうことができる。例えば、ペン1を使用する各人に関して幾つかの署名が記録され、それにより、各人における平均信号が決定される。ペン1が署名認識モードで動作している場合には、一般的に標準化された署名測定値と前に記録された標準化された平均信号との間の二次元距離(quadratic distance)を最小化することを伴う処理により、署名を確実に認識することができる。
【0027】
本発明は、ペン先端経路の認識方法に限定されない。ペン1は、例えば任意のアクチュエータを備える本体、例えばその経路が作動中に決定されるエッチングチップに置き換えることができる。
【0028】
また、本方法は、測定装置、例えば熱センサ、電気センサ、光度センサなどの任意のセンサを備えるフィーラ(接触子)の経路を決定することもできる。したがって、経路認識が行なわれると同時に、本体1に関連付けられたセンサによる物理的な測定が行なわれ、それにより、決定された経路に測定値を関連付けることによって、測定された物理量のマッピングを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来技術に係るデジタルペンを示している。
【図2】機能ブロックアルゴリズムの形態を成す本発明に係る認識方法の特定の実施形態を示している。
【図3】機能ブロックアルゴリズムの形態を成す本発明に係る認識方法の特定の実施形態を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体(10)上における本体(1)の先端(6)の経路を認識するための方法であって、前記本体(1)内に配置された少なくとも1つの角度センサ(3)により処理ユニット(8)へ供給される測定データ(S1)を処理する(F2)ことによって、前記本体(1)の方向の角度(θ)を決定することを含み、前記本体(1)は、前記媒体(10)と接触した状態で前記本体(1)の先端(6)の反力を測定するための力センサ(4)を備え、前記力センサ(4)は、ほぼ連続的な態様で反力を表わすデータ(S2)を前記処理ユニット(8)へ供給し、前記処理ユニット(8)は、前記角度センサ(3)および前記力センサ(4)からの前記測定データ(S1,S2)により、前記媒体(10)の平面に対する反力の方向を決定し(F3)、当該方法は、前記処理ユニット(8)は、前記媒体(10)の平面内における前記反力の投影(F4)により、経路に対して接線方向のベクトル(oハット)を決定し、前記経路は、当該経路に対して接線方向の前記ベクトル(oハット)の関数である量の少なくとも1つの数学的積分(F5,F11)によって決定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
接線方向の前記ベクトル(oハット)の数学的積分(F5)を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記媒体(10)が平坦であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記媒体(10)の較正(F1)及び方向付け(θ0)ステップを含むことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記本体(1)は、前記較正ステップ(F1)中に、前記媒体(10)に対して垂直な軸に関して所定の角度を成して配置されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記本体(1)は、前記較正ステップ(F1)中に、前記媒体(10)に対して垂直に配置されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記角度センサ(3)および前記本体(1)内に配置された少なくとも1つの加速度計(2)により前記処理ユニット(8)へ供給される測定データ(S1,S3)の処理(F8,F’2)によって、前記先端(6)の加速度(A)を決定することを含み、前記処理ユニット(8)は、前記経路に対して接線方向のベクトル(oハット)の正規化(F’4)により前記経路に対して接線方向の単位ベクトル(uハット)を決定するとともに、加速度(A)を表わすデータ(aハット)と前記単位ベクトル(uハット)とのスカラー積(F10)を決定し、それにより、前記本体(1)の先端(6)の接線方向加速度(aT)を表わす前記量を取得し、前記経路は、前記量の数学的な二重積分(F11)によって決定されることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記処理ユニット(8)は、前記加速度計(2)および前記角度センサ(3)によって供給されるデータ(S1,S3)にしたがって前記媒体(10)の平面内における加速度(A)の投影(F9)を決定することにより、前記加速度(A)を表わす前記データ(aハット)を供給することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記加速度計(2)によって供給される測定データに対する重力の寄与部分(G)を推定し(F6)、前記加速度計により供給されるデータ(S3)から前記寄与部分(G)を排除する(F7)ことを含んでいることを特徴とする、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記本体は、物理量の測定値を供給するように設計されたセンサを備え、それにより、測定された経路にしたがって前記物理量のマッピングを可能とすることを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記本体がアクチュエータを備えていることを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−522572(P2007−522572A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552652(P2006−552652)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000212
【国際公開番号】WO2005/088434
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(502142323)コミサリア、ア、レネルジ、アトミク (195)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【Fターム(参考)】