説明

媒体中に混入した物質の存在を判定する際に用いる装置および方法

【課題】リアルタイムで媒体内の不純物の存在を判定するセンサ組立体を提供する。
【解決手段】発電システムとともに用いるセンサ組立体110が提供される。センサ組立体は、マイクロ波放射器206を含む少なくとも1つのプローブ202を含み、マイクロ波放射器は、少なくとも1つのマイクロ波信号から、少なくとも1つの電磁場209を生成するように構成される。さらに、センサ組立体は、プローブに結合される少なくとも1つの信号処理デバイス200を含む。信号処理デバイスは、マイクロ波放射器から受信された周波数における、媒体111の誘電率の変化を検出し、マイクロ波放射器から受信された周波数の予測される電力レベルを、その周波数の実際の電力レベルと比較して、媒体中に混入した少なくとも1つの物質の存在を判定するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は全般に発電システムに関し、より具体的には、マイクロ波放射器を用いて媒体中での物質の存在を判定する際に用いる、センサ組立体および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも一部の既知の発電システムは、時間とともに損傷または摩耗しうる1つまたは複数の構成要素を含む。例えば、少なくとも一部の既知の発電システムは、変圧器を含む。さらに、少なくとも一部の既知の変圧器は油を含み、この油は、変圧器を冷却し電気的な絶縁を実現するために、変圧器の中に格納される。油の品質は時間とともに変化し、油に不純物が混ざることがある。例えば、油は、油に溶解している様々な気体成分に解離しうる。古い油により動作を続けると、変圧器の中の配線など、変圧器に損傷が生じることがあり、かつ/または、変圧器および/もしくはシステムの早期の故障につながることがある。したがって、変圧器の中の油を定期的に検査することが必須である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6630833号明細書
【発明の概要】
【0004】
油の品質を測定する1つの方法は、誘電率を測定することによるものである。例えば、古い油の試料の誘電率が新しい油の試料と比較して変化していることは、溶解した気体、水または粒子のような、油に混入した不純物が存在すること、または、さらなる劣化または酸化のように、油が化学的に変化していることを示しうる。誘電率の変化がある油の試料において検出されると、油の試料中の不純物の種類も検出することができる。例えば、変圧器の中で溶解した気体の存在を検出するために、少なくとも何らかの既知のセンサシステムが使用されうる。そのようなセンサシステムの一部は、インラインプローブ測定を用いて、変圧器の中の溶解した気体の存在を判定することができる。例えば、変圧器の中から油の試料を取得した後で、分光計を用いて油を分析する。より具体的には、分光計は、新しく不純物のない油の試料を含む基準試料に対して、試料を分析する。そのようなセンサシステムは、油の中の様々な気体成分を識別するのに、十分な情報を提供する。しかし、分析は一般に変圧器から離れた場所で行われるため、そのようなシステムは面倒で費用がかかる。さらに、油の試料を他の場所に運ばなければならないため、センサシステムはリアルタイムのデータを提供できない。
【0005】
ある実施形態では、媒体中に混入した少なくとも1つの物質の存在を判定するための方法が、提供される。その方法は、少なくとも1つのマイクロ波信号をマイクロ波放射器に送信するステップを含む。少なくとも1つの電磁場が、マイクロ波放射器によって、マイクロ波信号から生成される。マイクロ波放射器から受信された周波数における、媒体の誘電率の変化が検出される。さらに、マイクロ波放射器から受信された周波数の予測される電力レベルが、その周波数の実際の電力レベルと比較され、媒体中に混入した物質の存在を判定する。
【0006】
別の実施形態では、発電システムとともに用いるセンサ組立体が提供される。このセンサ組立体は、マイクロ波放射器を含む少なくとも1つのプローブを含み、マイクロ波放射器は、少なくとも1つのマイクロ波信号から、少なくとも1つの電磁場を生成するように構成される。さらに、センサ組立体は、プローブと結合される少なくとも1つの信号処理デバイスを含む。信号処理デバイスは、マイクロ波放射器から受信された周波数における、媒体の誘電率の変化を検出し、マイクロ波放射器から受信された周波数の予測される電力レベルを、その周波数の実際の電力レベルと比較して、媒体中に混入した少なくとも1つの物質の存在を判定するように構成される。
【0007】
さらに別の実施形態では、発電システムが提供される。発電システムは、少なくとも1つの変圧器を含む機械を含み、変圧器は媒体を格納する。センサ組立体は、変圧器に近接して位置する。センサ組立体は、マイクロ波放射器を含む少なくとも1つのプローブを含み、マイクロ波放射器は、少なくとも1つのマイクロ波信号から、少なくとも1つの電磁場を生成するように構成される。さらに、センサ組立体は、プローブと結合された少なくとも1つの信号処理デバイスを含む。信号処理デバイスは、マイクロ波放射器から受信された周波数における、媒体の誘電率の変化を検出し、マイクロ波放射器から受信された周波数の予測される電力レベルを、その周波数の実際の電力レベルと比較して、媒体中に混入した少なくとも1つの物質の存在を判定するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】例示的な発電システムのブロック図である。
【図2】図1に示される発電システムとともに用いることができる、例示的なセンサ組立体のブロック図である。
【図3】図2に示されるセンサ組立体により生成されうる、例示的な電力差分応答のグラフである。
【図4】図2に示されるセンサ組立体を用いて、媒体中の物質の存在を判定するのに用いることができる、例示的な方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で説明される例示的な方法、装置、およびシステムは、変圧器用の既知のセンサシステムに関連する少なくとも一部の欠点を克服する。具体的には、本明細書で説明される実施形態は、媒体の誘電率の変化を検出し、誘電率の変化の原因である媒体中の少なくとも1つの物質の存在をリアルタイムに判定する、センサ組立体を提供する。より具体的には、センサ組立体は、マイクロ波放射器を含むプローブと、プローブに結合される少なくとも1つの信号処理デバイスとを含む。信号処理デバイスは、マイクロ波放射器から受信された周波数における媒体の誘電率の変化を検出し、マイクロ波放射器から受信された周波数の予測される電力レベルを、その周波数の実際の電力レベルと比較して、媒体中に混入した少なくとも1つの物質の存在を判定するように構成される。この比較により、センサ組立体は、変圧器の油の中のあらゆる気体成分の存在を判定できるようになる。
【0010】
図1は、限定はされないが、風力発電用タービン、水力発電用蒸気タービン、ガスタービン、および/またはコンプレッサのような、機械102を含む、例示的な発電システム100を示す。例示的な実施形態では、機械102は、発電機のような負荷106に結合された駆動軸104を回転させる。さらに、負荷106は、少なくとも1つの変圧器107に結合される。例示的な実施形態では、変圧器107は、昇圧型と降圧型のいずれかの変圧器であってよい。さらに、本明細書で用いる場合、用語「結合する」は、構成要素間の直接の機械的な接続および/または電気的な接続には限定されず、複数の構成要素間の間接的な、機械的な接続および/または電気的な接続も含みうることに、留意されたい。
【0011】
例示的な実施形態では、駆動軸104は、機械102および/または負荷106の中に収容される1つまたは複数の軸受(図示せず)により、少なくとも部分的に支持される。あるいは、または加えて、軸受は、ギアボックスのような別個の支持構造物108の中に、または、発電システム100が本明細書で説明されるように機能することを可能にする任意の他の構造体の中に、収容されてもよい。
【0012】
例示的な実施形態では、発電システム100は、変圧器107に格納される媒体111を測定および/または監視する、少なくとも1つのセンサ組立体110を含む。例示的な実施形態では、媒体111は、液体の媒体である。より具体的には、例示的な実施形態では、媒体111は油である。あるいは、媒体111は、変圧器107およびシステム100が本明細書で説明されるように機能することを可能にする、任意の他の種類の媒体であってもよい。
【0013】
さらに、例示的な実施形態では、センサ組立体110は、センサ組立体110の構成要素であるマイクロ波放射器(図1には示されない)が媒体111に少なくとも部分的に浸るように、変圧器107に近接して配置される。例示的な実施形態では、センサ組立体110は、媒体111中の、気体成分のような少なくとも1つの物質(図示せず)の存在を、測定および/または監視する。以下でより詳細に説明されるように、例示的な実施形態では、センサ組立体110は、1つまたは複数のマイクロ波信号を用いて、マイクロ波放射器から受信された周波数における、媒体111の誘電率の変化を検出し、マイクロ波放射器から受信された周波数の予測される電力レベルを、その周波数の実際の電力レベルと比較して、媒体111中の任意の気体成分の存在を判定する。例示的な実施形態では、この比較の結果は、センサ組立体110の「電力差分応答」(図1には示されない)と呼ばれる。あるいは、センサ組立体110を用いて、発電システム100の任意の他の構成要素を計測および/または監視することができ、かつ/またはセンサ組立体110は、システム100が本明細書で説明されたように機能することを可能にする、任意の他のセンサ組立体またはトランスデューサ組立体であってよい。本明細書で用いられる場合、用語「マイクロ波」は、周波数が約300メガヘルツ(MHz)から約300ギガヘルツ(GHz)である信号を受信および/または送信する、信号または構成要素を指す。
【0014】
さらに、例示的な実施形態では、発電システム100は、1つまたは複数のセンサ組立体110に結合される、診断システム112を含む。診断システム112は、センサ組立体110により生成される1つまたは複数の信号を処理および/または分析する。本明細書で用いられる場合、用語「処理する」は、信号の少なくとも1つの特性に対し、調整、フィルタリング、バッファリング、および/または修正の操作を実行することを指す。より具体的には、例示的な実施形態では、センサ組立体110は、データコンジット113またはデータコンジット115を介して、診断システム112に結合される。あるいは、センサ組立体110は、ワイヤレスに診断システム112に結合されてもよい。
【0015】
診断システム112がセンサ組立体110から生成された信号を処理および/または分析した後で、次いで診断システム112は、発電システム100に含まれる表示デバイス116に、処理された信号を送信する。表示デバイス116は、データコンジット118を介して、診断システム112に結合される。より具体的には、例示的な実施形態では、信号は、ユーザーに対して表示または電力するために、データコンジット118を介して表示デバイス116に送信される。あるいは、表示デバイス116は、ワイヤレスに診断システム112に結合されてもよい。
【0016】
例示的な実施形態では、動作中、媒体111の経年劣化により、媒体111は例えば、媒体111に溶解する様々な気体成分に解離することがあり、液体の媒体111の共振周波数のずれおよび媒体111の誘電率の変化をもたらす。例示的な実施形態では、センサ組立体110は、液体の媒体111の共振周波数のずれおよび/または液体の媒体111内での電磁的な応答の振幅の変化を、測定および/または監視し、媒体111の誘電率の変化を検出および/または識別する。センサ組立体110は、マイクロ波放射器から受信された周波数の予測される電力レベルと、その周波数の実際の電力レベルとの比較を表す信号(以後、「電力差分信号」と呼ぶ)も生成する。電力レベル信号は、処理および/または分析のために、診断システム112に送信される。診断システム112が電力レベル信号を処理および/または分析した後で、電力レベル信号は次いで、ユーザーに表示または電力するために、表示デバイス116に送信される。電力差分信号により、ユーザーは、媒体111に混入した少なくとも1つの物質の存在を識別することができる。
【0017】
図2は、センサ組立体110の概略図である。例示的な実施形態では、センサ組立体110は、信号処理デバイス200と、データコンジット204を介して信号処理デバイス200に結合されるプローブ202とを含む。あるいは、プローブ202は、ワイヤレスに信号処理デバイス200に結合されてもよい。
【0018】
さらに、例示的な実施形態では、プローブ202は、少なくとも1つの電磁場209を生成するための、プローブ筐体208に結合されかつ/またはその中に位置する放射器206を含む。放射器206は、データコンジット204を介して、信号処理デバイス200に結合される。あるいは、放射器206は、ワイヤレスに信号処理デバイス200に結合されてもよい。さらに、例示的な実施形態では、プローブ202は、媒体111に浸される。より具体的には、例示的な実施形態では、放射器206およびプローブ筐体208は、液体の媒体111に浸される。さらに、例示的な実施形態では、プローブ202は、マイクロ波放射器206を含む、マイクロ波プローブ202である。放射器206は、所定の周波数領域内の複数の周波数成分を含む、少なくとも1つのマイクロ波信号から、電磁場209を生成する。より具体的には、例示的な実施形態では、マイクロ波放射器206は、周波数が約1GHzから約20GHzである信号を受信および/または送信する、広帯域の放射器である。
【0019】
さらに、例示的な実施形態では、信号処理デバイス200は、受信電力検出器214および信号調整デバイス216と結合される、方向性結合デバイス210を含む。さらに、例示的な実施形態では、信号調整デバイス216は、信号発生器218、減算器220、およびメモリデバイス222を含む。
【0020】
例示的な実施形態では、メモリデバイス222は、実行可能命令および/または他のデータのような情報を、格納し取り出せるようにする。メモリデバイス222は、限定はされないが、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ソリッドステートディスク、および/またはハードディスクのような、1つまたは複数のコンピュータ可読媒体を含みうる。メモリデバイス222は、限定はされないが、実行可能命令、構成データ、地理的データ(例えば地形データおよび/または障害物)、公益設備ネットワークの装置データ、および/または任意の他の種類のデータを格納するように構成されうる。
【0021】
より具体的には、例示的な実施形態では、メモリデバイス222は、変圧器107で用いられうる、標準的かつ不純物がなく汚染されていない油の試料の、約1GHzから20GHzの間の各々の周波数レベルでの予測される電力レベルを格納する。さらに、例示的な実施形態では、メモリデバイス222は、ランダムアクセスメモリ(RAM)を含んでもよく、RAMは、非揮発性RAM(NVRAM)、磁気RAM(MRAM)、強誘電体RAM(FeRAM)、および他の形態のメモリを含みうる。メモリデバイス222はまた、読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリおよび/または電気的に消去可能なプログラム可能読み取り専用メモリ(EEPROM)を含みうる。任意の他の適切な磁気メモリ、光学メモリ、および/または半導体メモリが、単体で、または他の形態のメモリと組み合わせて、メモリデバイス222に含まれてもよい。
【0022】
メモリデバイス222はまた、限定はされないが、適切なカートリッジ、ディスク、CD ROM、DVDまたはUSBメモリを含む、着脱可能なメモリまたは取り外し可能なメモリであってもよく、またはそれらを含んでもよい。さらに、メモリデバイス222は、データベースであってもよい。用語「データベース」は一般に、階層データベース、リレーショナルデータベース、フラットファイルデータベース、オブジェクトリレーショナルデータベース、オブジェクト指向データベース、および、コンピュータシステムに格納される記録またはデータの任意の他の構造化された集合体を含む、任意のデータの集合体を指す。上記の例は例示に過ぎないので、データベースという用語の定義および/または意味を限定することは何ら意図していない。データベースの例は、限定はされないが、Oracle(登録商標)Database、MySQL、IBM(登録商標)DB2、Microsoft(登録商標)SQL Server、Sybase(登録商標)およびPostgreSQLを含む。しかし、本明細書で説明されるシステムおよび方法を可能にする、任意のデータベースを用いることができる。(Oracleは、カリフォルニア州レッドウッドショアーズのOracle社の登録商標である。IBMは、ニューヨーク州アーモンクのInternational Business Machines社の登録商標である。Microsoftは、ワシントン州レドモンドのMicrosoft社の登録商標である。Sybaseは、カリフォルニア州ダブリンのSybaseの登録商標である。)
動作中、例示的な実施形態では、信号発生器218は、マイクロ波周波数を有する少なくとも1つの電気信号(以降、「マイクロ波信号」と呼ぶ)を生成する。信号発生器218は、マイクロ波信号を指示結合デバイス210に送信する。より具体的には、例示的な実施形態では、信号発生器218は、マイクロ波信号を指示結合デバイス210に付加的に送信し、送信される最初のマイクロ波信号は、約1GHzの周波数成分を含み、送信される最後のマイクロ波信号は、約20GHzの周波数成分を含む。あるいは、信号発生器218は、センサ組立体110および/または発電システム100(図1に示される)が本明細書で説明されるように機能するように、任意の方式で、マイクロ波信号を指示結合デバイス210に送信することができる。
【0023】
指示結合デバイス210は、次いで、各々のマイクロ波信号を放射器206に送信する。各々のマイクロ波信号が、放射器206を通って送信されると、電磁場209が放射器206から、プローブ筐体208の外に放射される。気体成分(図示せず)が電磁場209に入ると、気体成分と電磁場209の間に電磁的な結合が発生しうる。より具体的には、電磁場209内での気体成分の存在および、標準的かつ不純物がなく汚染されていない油の試料の誘電率とは異なる気体成分の誘電率は、気体成分の誘導性の効果および/または容量性の効果により、電磁場209を乱す。そのような乱れにより、電磁場209の少なくとも一部が、電流および/または電荷としての気体成分に、誘導的にかつ/または容量的に結合しうる。そのような場合、放射器206はデチューンされ(すなわち、放射器206の共振周波数が下がる、かつ/または変化するなど)、負荷が放射器206に誘起される。放射器206に誘起される負荷により、マイクロ波信号の反射(以降、「デチューンされた負荷信号」と呼ぶ)が、データコンジット204を通って指示結合デバイス210に送信される。さらに、例示的な実施形態では、デチューンされた負荷信号が、放射器206を通じて送信された各マイクロ波信号に対して生成されうる。
【0024】
例示的な実施形態では、各々のデチューンされた負荷信号は、マイクロ波信号の電力の振幅および/または位相とは異なる、電力の振幅および/または位相を有する。さらに、例示的な実施形態では、各々のデチューンされた負荷信号の電力の振幅は、媒体111中の各々の気体成分の存在および/または媒体111中の各々の気体成分の品質により決まる。
【0025】
指示結合デバイス210は、各々のデチューンされた負荷信号を、受信電力検出器214に送信する。例示的な実施形態では、受信電力検出器214は、各々のデチューンされた負荷信号に含まれる電力の大きさを測定し、各々の測定されたデチューンされた負荷信号の電力を表す信号(以降、「実際の電力レベル信号」と呼ぶ)を、信号調整デバイス216に送信する。さらに、メモリデバイス222は同時に、変圧器107で用いられうる、標準的かつ不純物がなく汚染されていない油の試料の、約1GHzから20GHzの間の各々の周波数レベルにおける予測される各々の電力レベルを表す信号(以降、「予測される電力レベル信号」と呼ぶ)を、減算器220に送信する。
【0026】
例示的な実施形態では、減算器220は、実際の電力レベル信号および予測される電力レベル信号を受信し、受信された各々の実際の電力レベルと各々の予測される電力レベルとの差を計算する。各々の実際の電力レベルと各々の予測される電力レベルの差がほぼ0である場合、媒体111には誘電率の変化がなく、その結果、媒体111は気体成分を含んでおらず、かつ/または媒体111中に存在する気体成分は非常に少ない。あるいは、各々の実際の電力レベルと各々の予測される電力レベルとの差が0よりも大きい場合、媒体111に誘電率の変化があり、その結果、媒体111に気体成分が存在する。
【0027】
減算器220は、各々の計算された差分を表す信号(すなわち「電力差分信号」)を、診断システム112(図1に示される)に送信する。例示的な実施形態では、電力差分信号の振幅は、電磁場209内の気体成分とプローブ202との共振周波数のずれに実質的に比例し、例えば、反比例し、または指数関数的に比例する。さらに、例示的な実施形態では、減算器220は、診断システム112での処理および/または分析の際に有効になる倍率をかけて、各々の電力差分信号を診断システム112に送信する。減算器220は、アナログ信号処理技術またはデジタル信号処理技術のいずれを利用することができ、さらには、これら2つをハイブリッドに混合した技術を用いることができる。
【0028】
例示的な実施形態では、診断システム112は、ユーザーが、変圧器107で用いられうる、標準的かつ不純物がなく汚染されていない油の試料と比較したときに、媒体111の誘電率の変化を検出および/または識別できるように、コンジット118(図1に示される)を介して、媒体111内の共振周波数のずれおよび/または電磁的な応答の振幅の変化を表す信号を、表示デバイス116(図1に示される)に送信することができる。診断システム112はまた、各々の電力差分信号を、コンジット118を介して表示デバイス116に送信することができる。例示的な実施形態では、表示デバイス116は、各々の周波数のずれおよび/または各々の電力差分信号をグラフにより表現する。そのような表現は、波形、図表、および/またはグラフの形態でユーザーに提供されうる。
【0029】
図3は、センサ組立体110(図1および図2に示される)により生成されうる、例示的な電力差分応答300のグラフである。より具体的には、電力差分応答300は、GHz単位の特定の周波数320(図3の横軸に示される)のマイクロ波信号に含まれる、電力の大きさ310(図3の縦軸に示される)を比較するものである。例示的な実施形態では、信号発生器218(図2に示される)は、約1GHzから約20GHzの周波数領域を含む、所定の周波数帯330内の複数の周波数成分を含む、マイクロ波信号を生成する。例示的な実施形態では、そのような周波数帯330は、第1の周波数帯332、第2の周波数帯334、第3の周波数帯336、および第4の周波数帯338を含む。より具体的には、例示的な実施形態では、第2の周波数帯334は、2の累乗により第1の周波数帯332に比例する。例えば、第1の周波数帯332は、約1GHzから約2GHzの周波数を含み、第2の周波数帯334は、約2GHzから約4GHzの周波数を含む。さらに、第3の周波数帯336は、約4GHzから約8GHzの周波数を含む。さらに、第4の周波数帯338は、約8GHzから約16GHzの周波数を含む。あるいは、ユーザーは、ユーザーの要求に対して適切なかつ/またはふさわしい、対数目盛および/または線形目盛による表現のような、任意の種類の電力差分応答300の電力の表現および/またはグラフによる表現を生成することができる。
【0030】
さらに、例示的な実施形態では、電力差分応答300は、予測される電力レベル応答曲線350を、実際の電力レベル応答曲線360と比較する。予測される電力レベル応答曲線350は、放射器206(図2に示される)から受信される各々の周波数の予測される電力レベルを含み、実際の電力レベル応答曲線360は、放射器206から受信される各々の周波数の実際の電力レベルを含む。各々の実際の電力レベルと各々の予測される電力レベルの差がほぼ0である場合、媒体111(図1および2には示される)は気体成分を含まず、かつ/または媒体111中に存在する気体成分は非常に少ない。あるいは、各々の実際の電力レベルと各々の予測される電力レベルとの差が0よりも大きい場合、媒体111内に気体成分が存在する。さらに、例示的な実施形態では、実際の電力レベル応答曲線360内で発生する振幅370は、媒体111内の気体成分の品質と概ね関連している。
【0031】
図4は、媒体111(図1および図2に示される)内に混入した、気体成分のような物質(図示せず)の存在を判定するためにセンサ組立体110(図1および図2に示される)を用いて実施されうる、例示的な方法400の流れ図である。例示的な実施形態では、少なくとも1つのマイクロ波信号が、マイクロ波放射器206(図2に示される)に送信される(402)。少なくとも1つの電磁場209(図2に示される)が、マイクロ波信号から、マイクロ波放射器206により生成される(404)。気体成分と電磁場209との相互作用によって、負荷がマイクロ波放射器206に誘起される(406)。マイクロ波放射器206から受信された周波数における媒体111の誘電率の変化が、検出される(407)。さらに、マイクロ波放射器206から受信される周波数の予測される電力レベルが、その周波数の実際の電力レベルと比較され(408)、媒体111内の気体成分の存在を判定する。
【0032】
既知のセンサ組立体と比較すると、本明細書で説明された実施形態は、媒体の誘電率の変化を検出し、誘電率の変化の原因である媒体中の少なくとも1つの物質の存在を、リアルタイムで判定する、センサ組立体を提供する。より具体的には、センサ組立体は、マイクロ波放射器を含むプローブと、プローブに結合される少なくとも1つの信号処理デバイスとを含む。信号処理デバイスは、マイクロ波放射器から受信された周波数における、媒体の誘電率の変化を検出し、マイクロ波放射器から受信された周波数の予測される電力レベルを、その周波数の実際の電力レベルと比較して、媒体中に混入した少なくとも1つの物質の存在を判定するように構成される。この比較により、センサ組立体は、変圧器の油の中のあらゆる気体成分の存在を判定できるようになる。
【0033】
媒体中に混入した物質の存在を判定するための、センサ組立体および方法の例示的な実施形態が、上で詳細に説明された。方法およびセンサ組立体は、本明細書で説明された特定の実施形態には限定されず、むしろ、センサ組立体の構成要素および/または方法のステップは、本明細書で説明された他の構成要素および/またはステップとは独立にかつ別々に、利用されうる。例えば、センサ組立体は、他の測定システムおよび方法と組み合わせて使われてもよく、本明細書で説明されたような発電システムのみと実行するように限定はされない。むしろ、例示的な実施形態は、多くの他の測定用途および/または監視用途に関連して、実施および利用されてもよい。
【0034】
本発明の様々な実施形態の具体的な特徴は、いくつかの図面では示され他の図面では示されないことがあるが、これは単に便宜的なものである。本発明の原理にしたがって、図面の任意の特徴を、任意の他の図面の任意の特徴と組み合わせて参照することができ、かつ/または特許請求することができる。
【0035】
この書面による説明は、最良の形態を含めて本発明を開示するために、また、当業者が、任意のデバイスまたはシステムを作成および使用すること、および任意の組み込まれた方法を実行することを含めて、本発明を実行できるようにするために、複数の例を用いる。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲により定義され、当業者が想起する他の例を含みうる。そのような他の例は、特許請求の範囲の言語上の表現とは異ならない構造的な要素を有する場合、または、特許請求の範囲の言語上の表現とは実質的に異ならない等価的な構造的な要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることが意図される。
【符号の説明】
【0036】
100 発電システム
102 機械
103 駆動軸
106 負荷
107 変圧器
108 支持構造物
110 センサ組立体
111 媒体
112 診断システム
113 データコンジット
116 表示デバイス
118 コンジット
200 信号処理デバイス
202 プローブ
204 データコンジット
206 放射器
208 プローブ筐体
209 電磁場
210 指示結合デバイス
214 受信電力検出器
216 信号調整デバイス
218 信号発生器
220 減算器
222 メモリデバイス
300 電力差分応答
310 電力の大きさ
320 特定の周波数
330 周波数帯
332 第1の周波数帯
334 第2の周波数帯
336 第3の周波数帯
338 第4の周波数帯
350 予測される電力レベル応答曲線
360 実際の電力レベル応答曲線
370 振幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電システム(100)とともに用いるセンサ組立体(110)であって、
マイクロ波放射器(206)を含む少なくとも1つのプローブ(202)であって、前記マイクロ波放射器が、少なくとも1つのマイクロ波信号から、少なくとも1つの電磁場(209)を生成するように構成される、プローブと、
前記少なくとも1つのプローブに結合される少なくとも1つの信号処理デバイス(200)であって、前記マイクロ波放射器から受信された周波数における、媒体(111)の誘電率の変化を検出し、前記マイクロ波放射器から受信された周波数の予測される電力レベルを、前記周波数の実際の電力レベルと比較して、前記媒体中に混入した少なくとも1つの物質の存在を判定するように構成される、信号処理デバイスと
を含む、センサ組立体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの物質が、前記少なくとも1つの電磁場(209)と相互作用したときに、負荷が前記マイクロ波放射器(206)に誘起される、請求項1記載のセンサ組立体(110)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのマイクロ波信号が、所定の周波数領域内に複数の周波数成分を含む、請求項1記載のセンサ組立体(110)。
【請求項4】
前記所定の周波数領域が、約1GHzから約20GHzの間である、請求項3記載のセンサ組立体(110)。
【請求項5】
前記マイクロ波放射器(206)が広帯域の放射器である、請求項1記載のセンサ組立体(110)。
【請求項6】
前記マイクロ波放射器(206)が前記媒体(111)に浸される、請求項1記載のセンサ組立体(110)。
【請求項7】
前記媒体(111)が液体の媒体である、請求項1記載のセンサ組立体(110)。
【請求項8】
媒体(111)を格納する少なくとも1つの変圧器(107)を含む機械(102)と、
前記少なくとも1つの変圧器に近接して配置されるセンサ組立体(110)と
を含む、発電システム(110)であって、前記センサ組立体が、
マイクロ波放射器(206)を含む少なくとも1つのプローブ(202)であって、前記マイクロ波放射器が、少なくとも1つのマイクロ波信号から、少なくとも1つの電磁場(209)を生成するように構成される、プローブと、
前記少なくとも1つのプローブに結合される少なくとも1つの信号処理デバイス(200)であって、前記マイクロ波放射器から受信された周波数における、前記媒体の誘電率の変化を検出し、前記マイクロ波放射器から受信された周波数の予測される電力レベルを、前記周波数の実際の電力レベルと比較して、前記媒体中に混入した少なくとも1つの物質の存在を判定するように構成される、信号処理デバイスと
を含む、発電システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの物質が、前記少なくとも1つの電磁場(209)と相互作用したときに、負荷が前記マイクロ波放射器(206)に誘起される、請求項8記載の発電システム(100)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのマイクロ波信号が、所定の周波数領域内に、複数の周波数成分を含む、請求項8記載の発電システム(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−220495(P2012−220495A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−84399(P2012−84399)
【出願日】平成24年4月3日(2012.4.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】