説明

媒体保持手段及び記録装置

【課題】 ロール状記録媒体のセッティングや交換を簡易に行うことができ、ロール状記録媒体の高精度な記録を維持することができる媒体保持手段及びその媒体保持手段を備えた記録装置と液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】 媒体保持手段132の当接部134cは、ロール状記録媒体を抜き差しする際の摩擦力を小さくしても、ロール状記録媒体を回転させる際に生じる軸周り方向の力よりも大きい摩擦力を発生する形状に形成されている。これにより、媒体保持手段に嵌め込まれているロール状記録媒体を引き抜くときは容易に行うことができ、また、媒体保持手段に嵌め込まれているロール状記録媒体の回転中に媒体保持手段からロール状記録媒体が抜けたり空転したりする事態を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状記録媒体を一体的に回転自在に保持する媒体保持手段及びその媒体保持手段を備えた記録装置と液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、従来の記録装置の1つであるインクジェット式プリンタは、記録媒体である例えば記録用のロール紙を供給する給紙部、給紙されたロール紙に情報を記録する記録部、記録されたロール紙を排出する排紙部を備えている。このようなインクジェット式プリンタを使用する場合、ユーザは、ロール紙を給紙部に収納してロール紙の先端部を引き出す。そして、ロール紙の先端部を給紙ガイド上を通し、紙送りローラと従動ローラとの間に挟み込んでインクジェット式プリンタを起動する。すると、インクジェット式プリンタは、紙送りローラを回転させてロール紙をプラテン上に送り出しながら、記録ヘッドのノズルからインク滴を吐出して情報をロール紙上に記録する。そして、排紙ローラを回転させてロール紙を排紙ガイド上を通して用紙受けに排出する。
【0003】
ここで、ユーザがロール紙を給紙部に収納する場合、通常はスピンドルをロール紙の軸芯の中空軸部に挿入して貫通させ、一対のフランジをスピンドルの両端に嵌め込むとともに軸芯の両端に嵌め込み、スピンドルの両端を給紙部の軸受に懸架する。このとき、フランジとロール紙の軸芯との間に働く嵌め込み力が大き過ぎると、フランジからロール紙の軸芯を抜くときに大きな力が必要となるため、ロール紙のセッティング作業や交換作業の効率が悪化する。一方、フランジとロール紙の軸芯との間に働く嵌め込み力が小さ過ぎると、記録中にロール紙の軸芯がフランジから抜けたり、記録中にロール紙に掛かっているバックテンションに負けてロール紙が空転したりして、記録が不可能となるおそれがある。そこで、このような問題を解消する手段として、フランジとロール紙の軸芯との間に働く嵌め込み力を調節するネジやバネを備えたフランジが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】実開昭60−122738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のネジやバネを備えたフランジは、ロール紙の軸芯との間に働く嵌め込み力の調節に手間が掛かり、また、重量が嵩んで取り扱いが困難となり、また、コスト面で割高になるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような種々の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ロール状記録媒体のセッティングや交換を簡易に行うことができ、ロール状記録媒体の高精度な記録を維持することができる媒体保持手段及びその媒体保持手段を備えた記録装置と液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的達成のため、本発明の媒体保持手段では、ロール状記録媒体の中空軸部の両端部にそれぞれ嵌め込まれて当該内周面と当接する当接部を有し、前記ロール状記録媒体を一体的に回転自在に保持する一対の媒体保持手段であって、前記当接部は、前記ロール状記録媒体を抜き差しする際の摩擦力を小さくしても、前記ロール状記録媒体を回転させる際に生じる軸周り方向の力よりも大きい摩擦力を発生する形状に形成されていることを特徴としている。これにより、媒体保持手段に嵌め込まれているロール状記録媒体を引き抜くときは容易に行うことができ、また、媒体保持手段に嵌め込まれているロール状記録媒体の回転中に媒体保持手段からロール状記録媒体が抜けたり空転したりする事態を防止することができる。
【0008】
また、前記当接部は、前記ロール状記録媒体を嵌め込む際に生じる円周方向を軸とする回転モーメントに撓み易く、前記ロール状記録媒体を回転させる際に生じる軸周り方向のモーメントに撓み難い形状に形成されていることを特徴としている。これにより、媒体保持手段の当接部とロール状記録媒体の中空軸部の内周面との間に働く摩擦力を、ロール状記録媒体を回転させる際に生じる軸周り方向の力よりも大きくなるように保ったまま、ロール状記録媒体を抜き差しする力は小さく調節することができる。
【0009】
また、前記当接部は、軸周りに等間隔で複数形成されていることを特徴としている。これにより、媒体保持手段の当接部の当接力をロール状記録媒体の中空軸部の内周面に均等に掛けることができるので、媒体保持手段の軸中心に対するロール状記録媒体の軸中心の偏心を防止することができる。また、前記当接部は、軸方向及び軸周り方向に広がる板状であって、端部の一部が固定された片持ち梁状に形成されていることを特徴としている。これにより、媒体保持手段の当接部はロール状記録媒体を嵌め込む際に生じる円周方向を軸とする回転モーメントに撓み易く、ロール状記録媒体を回転させる際に生じる軸周り方向のモーメントに撓み難くすることができる。
【0010】
上記目的達成のため、本発明の記録装置では、ロール状記録媒体に記録可能な記録装置であって、上記各媒体保持手段を備えたことを特徴としている。上記目的達成のため、本発明の液体噴射装置では、被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射装置であって、上記各媒体保持手段を備えたことを特徴としている。これにより、上記各作用効果を奏する記録装置又は液体噴射装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式プリンタの外観構成の全体を斜め前方から見た斜視図である。このインクジェット式プリンタ100は、例えばJIS規格のA2判やUS・C規格の17インチといった比較的大型のサイズのいわゆるカットされた用紙やロール状の用紙に記録できる卓上型の大型のプリンタであり、全体が幅方向に長く延びる略直方体状のハウジング101で覆われている。
【0012】
このハウジング101の上面には、矩形状の窓部102が形成されている。この窓部102は、透明もしくは半透明の窓カバー103によって覆われている。窓カバー103は、その上部の回動軸を中心に図示矢印a方向に回動可能に取り付けられている。ユーザは、窓カバー103を持ち上げて窓部102を開放することにより、窓部102を通して内部機構のメンテナンス作業等を行うことができる。
【0013】
ハウジング101の前面両側には、複数のインクカートリッジが抜き差しされるカートリッジ収納部104がそれぞれ形成されている。各インクカートリッジは、記録用の各色のインクを貯留している。各カートリッジ収納部104は、透明もしくは半透明のカートリッジカバー105によって覆われている。カートリッジカバー105は、その下部の回動軸を中心に図示矢印b方向に回動可能に取り付けられている。ユーザは、カートリッジカバー105を軽く押して係止部を外しカートリッジ収納部104を開放することにより、インクカートリッジの交換作業等を行うことができる。
【0014】
ハウジング101の前面右側のカートリッジ収納部104の上部には、プリンタ動作を指示する操作部110が配設されている。操作部110は、パワーをオン・オフするパワー系、用紙の頭出し等を操作したりインクのフラッシング等を操作する操作系、画像処理等を行う処理系等のボタン111と、状態を表示する液晶パネル112等を備えている。ユーザは、液晶パネル112を見て確認しながらボタン111を操作することができる。
【0015】
ハウジング101の前面右側のカートリッジ収納部104の下部には、廃液タンク120が抜き差しされるタンク収納部106が形成されている。この廃液タンク120は、記録ヘッド162(図11参照)のクリーニング処理時やインクカートリッジの交換時に廃棄される廃インクを貯留する。ユーザは、廃液タンク120を引き出すことにより、内部に溜まっている廃インクの廃棄作業等を行うことができる。
【0016】
ハウジング101の背面には、本発明の特徴的な部分を含むロール状の用紙を給紙する給紙部130が上部後方に突き出るように配設されている。給紙部130の内部には、1本のロール状の用紙がセット可能な本発明の特徴的な部分であるロール紙ホルダ(媒体保持手段)132(図2等参照)が配設され、給紙部130の前面には、跳ね上げ式の開閉可能なロール紙カバー131がロール紙ホルダ132を覆うように取り付けられている。このロール紙カバー131の上面は、カットされた用紙を手差しで給紙案内することが可能な給紙案内面に形成されている。ユーザは、ロール紙カバー131を持ち上げて給紙部130を開放することにより、ロール状の用紙の取り付け・取り外し作業等を行うことができる。このようなロール紙ホルダ132の詳細構造について、図2〜図7を参照して以下説明する。
【0017】
図2は、上記ロール紙ホルダ132にロール状の用紙がセットされた状態を示す斜視図、図3は、そのセット過程を示す斜視図である。このロール紙ホルダ132は、1本のロール紙スピンドル133と、このロール紙スピンドル133の両端に嵌め込まれる一対のロール紙フランジ134を備えている。ロール紙スピンドル133は、ロール状の用紙Rの中空軸部内に挿入されている。ロール紙フランジ134は、ロール紙スピンドル133が挿入されたロール状の用紙Rの中空軸部の両端部にそれぞれ嵌め込まれている。
【0018】
ユーザは、先ず、図3(A)に示すように、ロール紙スピンドル133に嵌入されている一方のロール紙フランジ134をロール紙スピンドル133の一端から引き抜く。そして、図3(B)に示すように、ロール紙スピンドル133の一端からロール状の用紙Rの中空軸部を挿入して貫通させ、ロール紙スピンドル133の他端側に嵌入されている他方のロール紙フランジ134のボス部134aに嵌め込んでフランジ部134bに当接させる。次に、図3(C)に示すように、引き抜いた一方のロール紙フランジ134をロール紙スピンドル133の一端から嵌入して、ボス部134aをロール状の用紙Rの中空軸部に嵌め込んでフランジ部134bを当接させる。
【0019】
そして、ロール状の用紙Rをロール紙ホルダ132と共に抱え上げ、ロール紙スピンドル133の両端を給紙部130の両端に配設されている図示しない2つのスピンドル受けに懸架する。これにより、ロール状の用紙Rをロール紙ホルダ132と一体的に回転自在に保持することができる。なお、ロール紙スピンドル133の一端には、トルクリミッタ133aが装着されている。これにより、ロール状の用紙Rに一定以上のトルクが掛からない限り、ロール状の用紙Rは回転しないので、ロール紙の巻きが解けてしまうような事態を防止することができる。
【0020】
図4は、上記ロール紙フランジ134の詳細を示す斜視図である。なお、一対のロール紙フランジ134は同一形状であるので、ここでは一方のみを示している。このロール紙フランジ134は、フランジ部134bの一面側にボス部134aが一体的に突出形成された構成となっている。ボス部134aは、中空円筒状に形成されており、外周側にロール状の用紙Rの中空軸部の端部が嵌め込まれ、内周側にロール紙スピンドル133の端部が嵌め込まれるようになっている。
【0021】
ボス部134aの外周面には、ロール状の用紙Rの中空軸部の端部内への嵌入を案内するとともに、端部を内側から保持する軸方向に延びる複数(この例では4つ)のリブ(当接部)134cが、軸周り方向に等間隔をあけて一体形成されている。このような構成のロール紙フランジ134とすることにより、ボス部134aのリブ134cとロール状の用紙Rの中空軸部との間に働く嵌め込み力を適正値とすることができ、以下で図を参照して説明する。
【0022】
図5〜図7は、上記リブ134cの詳細を右方向から見た斜視図、平面図及び左方向から見た斜視図である。このリブ134cは、ボス部134aの外周面において軸方向及び軸周り方向に広がる略矩形板状の基部134dと、この基部134dをボス部134aの外周面から所定間隔で浮かした状態で基部134dの一端部を固定する固定部134eを備えた片持ち梁状に形成されている。
【0023】
すなわち、基部134dの図示左手前下端の一角部は、ボス部134aの先端側において外周面に対し略垂直に起立する固定部134eにより一体化されて固定されている。そして、基部134dの図示右上端の縁部には、ロール状の用紙Rの中空軸部の端部内周面を案内するとともに、その端部内周面を保持する案内保持部134fが外側に突出形成されている。この案内保持部134fの上面には、傾斜した案内面134faと案内面134faよりも傾斜が緩やかな保持面134fbが形成されている。
【0024】
このようなリブ134cは、ロール状の用紙Rの中空軸部の端部を案内保持部134fの上面に沿って嵌め込む際に生じる円周方向を軸とする回転モーメント(図示矢印Ma)に撓み易く、ロール状の用紙Rを使用するために回転させる際に生じる軸周り方向のモーメント(図示矢印Mb)に撓み難い形状に形成されている。このような構造によれば、リブ134cは、ロール状の用紙Rの中空軸部の端部を抜き差しする際の摩擦力は小さく、ロール状の用紙Rを回転させる際に生じる軸周り方向の力よりも大きい摩擦力を発生することができる。
【0025】
つまり、案内保持部134fの案内面134faがロール状の用紙Rの中空軸部の端部内周面を案内し、さらにそのときに基部134dは円周方向を軸とする回転方向に大きく弾性変形するので、ロール状の用紙Rの中空軸部の端部に対する嵌め込みのみならず引き抜きも容易となる。そして、案内保持部134fの保持面134fbがロール状の用紙Rの中空軸部の端部内周面を保持する際には、基部134dは軸周り方向には変位し難いので、ロール状の用紙Rの中空軸部の端部をしっかりと保持して送り誤差を防止する。
【0026】
ハウジング101の前面中央、すなわち一対のカートリッジ収納部104の間には、記録前のカットされた用紙及び記録後のカットされた用紙又はロール状の用紙を積載する給排紙トレイ200が抜き差しされる給排紙部140が形成されている。なお、この給排紙部140は、搬送時に折り曲げることが不可能な厚手の用紙を手差しで給紙することが可能なようにも形成されている。
【0027】
この給排紙部140には、給排紙トレイ200の前部が差し込まれ、給排紙トレイ200の後部が突き出るようにして固定される。給排紙トレイ200は、カセット型に形成されており、内部に記録前の給紙されるカットされた用紙が積層収納され、上部に記録後の排紙されるカットされた用紙又はロール状の用紙が積層載置されるようなっている。このような給排紙トレイ200の詳細構造について、図8〜図10を参照して以下説明する。
【0028】
図8は、上記給排紙トレイ200の外観構成の全体を斜め前方から見た斜視図である。この給排紙トレイ200は、箱状に形成された給紙トレイ210と、この給紙トレイ210の上面を覆う蓋状に形成された排紙トレイ230を備えている。給排紙トレイ200は、給排紙方向に伸縮自在に形成されており、不使用のときはコンパクトに格納しておくことができ、また使用のときは種々のサイズのカットされた用紙に対応可能になっている。
【0029】
図9及び図10は、給排紙トレイ200が装着された給排紙部140を示す斜視図である。カットされた用紙を積層載置する場合は、図9に示すように、ロール紙案内部240は排紙部材239aの上面に格納した状態、すなわち排紙部材239aの上面はフラットな面にする。これにより、排紙ローラ155(図11参照)を通って排紙されるカットされた用紙は、断面がL字状に形成された案内部145の側面及び底面と排紙部材239a〜239dの上面とで形成される排紙受け面上にスムーズに積層載置される。
【0030】
なお、案内部145の底面には、スポンジマット145aが貼着されている。このスポンジマット145aは、1枚目のカットされた用紙を載置した後、2枚目のカットされた用紙が排紙されてきたとき、2枚目のカットされた用紙の先端が1枚目のカットされた用紙を突付いて排紙受け面から突き落としてしまうことを防止するための滑り止めの機能を有している。
【0031】
一方、ロール状の用紙を積層載置する場合は、図10に示すように、排紙部材239aの上面に格納されているロール紙案内部240の第1の案内板241の他長辺側にユーザが指を掛けて後方に向かって旋回させる。すると、第2の案内板242が第1の案内板241に引っ張られて、長手方向の一端側が持ち上げられ、長手方向の他端側が排紙部材239aの上面に形成されている溝239aaに沿って後方に摺動する。そして、第1の案内板241と第2の案内板242とがなす角度が鋭角になるまで、第1の案内板241を旋回させる。
【0032】
これにより、第2の案内板242は、その長手方向の一端側が案内部の側面の頂部に近接して滑り台状になる。このため、排紙ローラを通って排紙されるロール状の用紙がカールしていても、その先端が案内部側に巻き込まれてしまうことはなく、その先端は滑り台状の第2の案内板242上を滑走して排紙部材239a〜239dの上面側に導かれる。したがって、ロール状の用紙は、第2の案内板242と排紙部材239a〜239dの上面とで形成される排紙受け面上にスムーズに積層載置される。
【0033】
図11は、図1のインクジェット式プリンタ100の内部構成の概略を示す断面側面図である。ハウジング101内には、給排紙部140と、搬送部150及び記録部160等が配設されている。給排紙部140には、カットされた用紙を給紙するためのホッパ141、給紙ローラ142、分離部材143、図示していない紙戻しレバー等が配設されている。
【0034】
ホッパ141は、カットされた用紙が載置可能な平板状に形成されており、一端が給紙ローラ142と分離部材143の近傍に位置し、他端が装着されている給排紙トレイ200の給紙トレイ210の底面に近接して位置するように配設されている。そして、ホッパ141は、一端側の裏面にハウジング101の底面に一端が取り付けられた圧縮バネ144の他端が取り付けられており、この圧縮バネ144の伸縮により他端側を中心に一端側が旋回するように配設されている。
【0035】
給紙ローラ142は、断面の一部が切り欠かれたD字状に形成されており、間欠的に回転してホッパ141上のカットされた用紙を摩擦搬送するようになっている。分離部材143は、上面が粗面に形成されており、給紙ローラ142によりカットされた用紙が重送されたときに下層のカットされた用紙を最上層のカットされた用紙から摩擦分離するようになっている。そして、紙戻しレバーが、分離された下層の用紙をホッパ141上へ戻すようになっている。
【0036】
搬送部150には、用紙を搬送するためのサブローラ151とその従動ローラ152a、152b、152c、紙送りローラ153とその従動ローラ154、排紙ローラ155とギザローラ156及び用紙を検知する検知センサ157a、157b等が配設されている。サブローラ151は、給紙トレイ210から給紙されるカットされた用紙を排紙トレイ230に排紙するために、カットされた用紙を従動ローラ152a、152b、152cとともに挟持してU字状に反転搬送させるようになっている。また、サブローラ151は、給紙部130から給紙されるロール状の用紙を排紙トレイ230に排紙するために、ロール状の用紙を従動ローラ152cとともに挟持して搬送させるようになっている。
【0037】
紙送りローラ153は、反転搬送されてきたカットされた用紙もしくは給紙されてくるロール状の用紙を従動ローラ154とともに挟持してプラテン163へ送り出すようになっている。排紙ローラ155は、プラテン163を通過してくる用紙をギザローラ156とともに挟持して排紙トレイ230上へ排紙するようになっている。検知センサ157aは、給紙されてくるカットされた用紙のスキュー取りの際の搬送量を検知するようになっている。検知センサ157bは、反転搬送されてくるカットされた用紙もしくは搬送されてくるロール状の用紙の頭出しの際の搬送量を検知するようになっている。
【0038】
記録部160には、キャリッジ161、記録ヘッド162、プラテン163等が配設されている。キャリッジ161は、図示しないキャリッジベルトに連結されており、図示しないキャリッジ駆動装置によってキャリッジベルトが作動すると、キャリッジベルトの動きに連行され、図示しないガイド軸に案内されて往復移動するようになっている。
【0039】
記録ヘッド162は、例えば2種類のブラックインクを吐出する複数のブラックインク用記録ヘッドと、イエロー、ダークイエロー、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタの6色のインクをそれぞれ吐出する複数のカラーインク用記録ヘッドとを備えている。そして、記録ヘッド162は、圧力発生室とそれに繋がるノズル開口が設けられており、圧力発生室内にインクを貯留して所定圧で加圧することにより、ノズル開口から用紙に向けてコントロールされた大きさのインク滴を吐出するようになっている。
【0040】
プラテン163は、その上面である記録案内面にて、紙送りローラ153及び従動ローラ154から排紙ローラ155及び従動ローラ156に向かって搬送される用紙を支持して案内するようになっている。プラテン163の記録案内面には、縁無し印刷のときに用紙の側端部から外れたインクを吸収する図示しないインク吸収材が配設されている。これにより、無用なインクを回収することができるので、無用なインクによる用紙の汚染を防止することができる。さらに、用紙をプラテン163の記録案内面に吸着する図示しない吸引孔が穿設されている。これにより、記録ヘッド162のノズル形成面と用紙の記録面との距離を一定に保つことができるので、高記録精度を維持することができる。
【0041】
このような構成において、インクジェット式プリンタ100にてロール状の用紙に記録する場合の動作について説明する。先ず、ユーザは、ロール状の用紙をロール紙ホルダ132に装着して給紙部130に装填する。そして、ロール状の用紙の先端を引き出して紙送りローラ153とその従動ローラ154の当接部に突き当てる。そして、ロール状の用紙のスキュー取り及び頭出しを行う。
【0042】
スキュー取り及び頭出しが完了したロール状の用紙は、図示しない紙送りモータにより駆動されている紙送りローラ153とその従動ローラ154に挟持されて記録部160へ搬送される。搬送されるロール状の用紙は、吸引ポンプによりプラテン163上に吸着されて平坦にされ、キャリッジモータとキャリッジベルトにより走査されるキャリッジ161に搭載された記録ヘッド162により記録される。
【0043】
このとき、制御部は、例えばイエロー、ライトイエロー、マゼンタ、ライトマゼンタ、シアン、ライトシアン、ブラックの計7色のインクカートリッジから記録ヘッド162へ各色インクを供給し、各色インクの吐出タイミング及びキャリッジ161や紙送りローラ153の駆動を制御して、高精度なインクドット制御、ハーフトーン処理等を実行する。そして、記録が完了したロール状の用紙はカットされ、図示しない紙送りモータにより駆動されている排紙ローラ155により給排紙部140へ排紙され、給排紙トレイ200の排紙トレイ230上へ積層載置される。
【0044】
以上のように、本実施形態のロール紙ホルダ132によれば、ロール紙フランジ134のボス部134aに一体形成されているリブ134cは、ロール状の用紙を抜き差しする際の摩擦力を小さくしても、ロール状の用紙を回転させる際に生じる軸周り方向の力よりも大きい摩擦力を発生する形状に形成されているので、ロール紙フランジ134のボス部134aに嵌め込まれているロール状の用紙を引き抜くときは容易に行うことができ、また、ロール状の用紙の回転中にロール紙フランジ134のボス部134aからロール状の用紙が抜けたり空転したりする事態を防止することができる。
【0045】
また、リブ134cは、ロール状の用紙を嵌め込む際に生じる円周方向を軸とする回転モーメントに撓み易く、ロール状の用紙を回転させる際に生じる軸周り方向のモーメントに撓み難い形状に形成されているので、リブ134cの上面とロール状の用紙の中空軸部の内周面との間に働く摩擦力を、ロール状の用紙を回転させる際に生じる軸周り方向の力よりも大きくなるように保ったまま、ロール状の用紙を抜き差しする力は小さく調節することができる。
【0046】
また、リブ134cは、軸周りに等間隔で複数形成されているので、リブ134cの当接力をロール状の用紙の中空軸部の内周面に均等に掛けることができ、ロール紙フランジ134の軸中心に対するロール状の用紙の軸中心の偏心を防止することができる。そして、リブ134cには傾斜した案内面134faが形成されているので、ロール状の用紙の中空軸部の内径のばらつきを吸収することができる。さらに、リブ134cは奥に形成された保持面134fbに向かうほど変位し易い構造になっているので、ロール状の用紙の中空軸部の内周面に馴染み易い。
【0047】
また、リブ134cは、軸方向及び軸周り方向に広がる板状であって、端部の一部が固定された片持ち梁状に形成されているので、ロール状の用紙を嵌め込む際に生じる円周方向を軸とする回転モーメントに撓み易く、ロール状の用紙を回転させる際に生じる軸周り方向のモーメントに撓み難くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
媒体保持手段を備えた記録装置であれば、例えばファクシミリ装置、コピー装置等であっても適用可能である。また、記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を液体噴射ヘッドから被噴射媒体に噴射して液体を被噴射媒体に付着させる液体噴射装置の意味として、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ製造に用いる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイや面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等を備えた装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式プリンタの外観構成の全体を斜め前方から見た斜視図である。
【図2】図1のプリンタのロール紙ホルダにロール状の用紙がセットされた状態を示す斜視図である。
【図3】図2のセット過程を示す斜視図である。
【図4】図2のロール紙ホルダのロール紙フランジの詳細を示す斜視図である。
【図5】図4のロール紙フランジのリブの詳細を右方向から見た斜視図である。平面図及び左方向から見た斜視図である。
【図6】図4のロール紙フランジのリブの詳細の平面図である。
【図7】図4のロール紙フランジのリブの詳細を左方向から見た斜視図である。
【図8】図1のプリンタの給排紙トレイの斜視図である。
【図9】図8の給排紙トレイの使用形態を示す斜視図である。
【図10】図8の給排紙トレイの別の使用形態を示す斜視図である。
【図11】図1のプリンタの内部構成の概略を示す断面側面図である。
【符号の説明】
【0050】
100 インクジェット式プリンタ、101 ハウジング、104 カートリッジ収納部、105 カートリッジカバー、110 操作部、111 ボタン、112 液晶パネル、130 給紙部、132 ロール紙ホルダ、133 ロール紙スピンドル、134 ロール紙フランジ、134a ボス部、134b フランジ部、134c リブ、134d 基部、134e 固定部、134f 案内保持部、134fa 案内面、134fb 保持面、140 給排紙部、141 ホッパ、142 給紙ローラ、143 分離部材、150 搬送部、151 サブローラ、152a、152b、152c 従動ローラ、153 紙送りローラ、154 従動ローラ、155 排紙ローラ、156 ギザローラ、160 記録部、161 キャリッジ、162 記録ヘッド、163 プラテン、200 給排紙トレイ、210 給紙トレイ、230 排紙トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状記録媒体の中空軸部の両端部にそれぞれ嵌め込まれて当該内周面と当接する当接部を有し、前記ロール状記録媒体を一体的に回転自在に保持する一対の媒体保持手段であって、
前記当接部は、前記ロール状記録媒体を抜き差しする際の摩擦力を小さくしても、前記ロール状記録媒体を回転させる際に生じる軸周り方向の力よりも大きい摩擦力を発生する形状に形成されていることを特徴とする媒体保持手段。
【請求項2】
前記当接部は、前記ロール状記録媒体を嵌め込む際に生じる円周方向を軸とする回転モーメントに撓み易く、前記ロール状記録媒体を回転させる際に生じる軸周り方向のモーメントに撓み難い形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の媒体保持手段。
【請求項3】
前記当接部は、軸周りに等間隔で複数形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の媒体保持手段。
【請求項4】
前記当接部は、軸方向及び軸周り方向に広がる板状であって、端部の一部が固定された片持ち梁状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の媒体保持手段。
【請求項5】
ロール状記録媒体に記録可能な記録装置であって、
請求項1〜4の何れか一項に記載の媒体保持手段を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射装置であって、
請求項1〜4の何れか一項に記載の媒体保持手段を備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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