説明

媒体処理装置、媒体処理装置の制御方法、及び、プログラム

【課題】搬送路上に、媒体に記録する記録部と、この記録部の下流に設けられた読取部と、が配置された媒体処理装置について、人為的な手段を介することなく、効率的に、媒体の光学的な読み取り後に、媒体への記録を行うことができるようにする。
【解決手段】複合処理装置1の処理制御部70aは、裏面CISユニット48による媒体の読み取り後、インクジェットヘッド10による媒体への記録を行う場合、読み取りが終了した状態の媒体を搬送方向とは逆方向に搬送を開始し、中間検出器46の検出値に基づいて、少なくとも、媒体における記録領域の先端が、インクジェットヘッド10の上流側に位置するまで媒体を逆方向へ搬送した後、インクジェットヘッド10による記録を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送路上に、媒体に記録する記録部と、この記録部の下流に設けられた読取部と、が配置された媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小切手等の媒体を搬送し、搬送中、媒体に記録すると共に、媒体を光学的に読み取る媒体処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、上述した媒体処理装置のように、媒体の搬送中、媒体に記録すると共に、媒体を光学的に読み取るものでは、記録を行った後の媒体を光学的に読み取りたいとするニーズがある。このため、媒体を搬送する搬送路において、媒体に記録する機構を上流側に、媒体を読み取る機構を下流側に配置し、これにより、媒体のバックフィードを行うことなく、1回の搬送で、記録を行った後の媒体の光学的な読み取りを行えるようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−255393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した媒体処理装置のように、搬送路において、媒体に記録する機構を上流側に、媒体を読み取る機構を下流側に配置したものであっても、例えば、記録前の媒体を光学的に読み取る必要がある場合等、媒体を光学的に読み取った後に、媒体に記録するケースがある。この場合であっても、例えば、ユーザーが媒体を入れ直す等の人為的な手段を介することなく、自動で、媒体の光学的な読み取り、及び、媒体への記録を行うことができれば、顧客満足度の向上、及び、商品としての価値の向上を図ることができる。その際、媒体の光学的な読み取り、及び、媒体への記録の一連の処理を、装置の構造を反映して効率よく行うことにより、当該処理に要する時間を短縮化できれば、より顧客満足度の向上、及び、商品としての価値の向上を図ることができる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、搬送路上に、媒体に記録する記録部と、この記録部の下流に設けられた読取部と、が配置された媒体処理装置について、人為的な手段を介することなく、効率的に、媒体の光学的な読み取り後に、媒体への記録を行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、搬送路上で媒体を搬送する搬送部と、前記搬送路に配置され、前記搬送部により搬送方向に搬送される前記媒体に記録する記録部と、前記搬送路の前記記録部の下流に配置され、前記搬送部により前記搬送方向に搬送される前記媒体を読み取る読取部と、前記搬送路における前記読取部の上流の所定の位置に配置され、前記所定の位置に対応する位置における前記媒体の有無を検出するセンサーと、前記搬送部、前記記録部、及び、前記読取部を制御する処理制御部と、を備え、前記処理制御部は、前記読取部による前記媒体の読み取り後、前記記録部による前記媒体への記録を行う場合、前記読取部による読み取りが終了した状態の前記媒体の前記搬送方向の逆方向への搬送を開始し、前記逆方向に搬送される前記媒体の後端を前記センサーにより検出することによって前記媒体の位置を管理し、少なくとも、前記媒体における記録領域の先端が前記記録部による記録位置の上流側に位置するまで前記媒体を前記逆方向に搬送し、その後、前記搬送部により前記媒体を前記搬送方向に搬送すると共に、前記記録部により記録することを特徴とする。
この構成によれば、読取部による媒体の読み取り後、記録部による媒体への記録を行う場合、読取部による読み取りが終了した状態の媒体の搬送方向と逆方向への搬送(以下、適宜「バックフィード」と表現する。)を開始し、バックフィードされる媒体の後端をセンサーにより検出することによって媒体の位置を管理し、少なくとも、媒体における記録領域の先端が記録部による記録位置の上流側に位置するまで媒体をバックフィードする。このように、バックフィード時に、媒体における記録領域の先端が記録部による記録位置の上流側に位置するまでバックフィードする構成のため、バックフィード時の搬送量が、記録部により媒体に記録するために必要な最小限の搬送量となり、処理効率が向上する。さらに、バックフィード時に、媒体が向かう方向側の端である後端の位置を検出して、媒体の位置を管理する構成のため、後端の位置検出後、媒体の後端と媒体の記録領域の先端との距離を踏まえた所定量だけ媒体をバックフィードさせる、という単純な動作で、媒体の記録領域の先端が記録部による記録位置の上流側に位置するまで媒体をバックフィードさせることが可能となり、処理効率が向上する。そして、上記構成によれば、バックフィード後、媒体を搬送方向に搬送して記録部による記録を行うため、上述したように効率的なバックフィードを実現した上で、媒体の光学的な読み取り後、媒体への記録を行うことができる。
さらに、バックフィードに際し、媒体の全体が、記録部の記録位置の上流に位置するようにすることも考えられるが、搬送路の構造上、媒体のバックフィード時の搬送量に限界がある場合がある。しかしながら、上記構成によれば、バックフィード時の搬送量が必要最小限となるため、媒体のバックフィード時の搬送量に限界がある場合であっても、高い確率で、読み取り後の記録のために必要なバックフィードを行うことが可能となる。
【0006】
また、本発明は、前記記録部は、前記搬送方向に交わる方向であるノズル列方向に延在するノズル列を有するインクジェットヘッドを備え、固定された状態の前記インクジェットヘッドから、一定の速度で前記搬送方向に搬送される前記媒体にインクを吐出して、前記媒体の前記ノズル列方向に延在するノズル列に対応する範囲に画像を記録可能であることを特徴とする。
この構成によれば、媒体のノズル方向の広い範囲に画像を記録可能であるため、媒体のノズル列方向の狭い範囲に画像を記録可能なものと比較して、同一の情報を記録した場合に、当該情報を、搬送方向におけるより狭い範囲で記録可能である。従って、媒体における記録領域の先端と、媒体の後端との距離をより短くすることができ、バックフィードする際に、バックフィード時の搬送量をより短くし、バックフィードに係る作業をより効率化できる。
【0007】
また、本発明は、前記処理制御部は、前記媒体を前記逆方向に搬送する際、前記逆方向に搬送後、前記搬送方向への搬送を開始してから、搬送速度が前記一定の速度となるまでの加速に必要な距離以上、前記媒体を前記逆方向に搬送することを特徴とする。
この構成によれば、記録媒体を一定の速度で搬送しつつ記録するという装置の特性を踏まえて、適切に、バックフィードを実行することができる。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明は、搬送路上で媒体を搬送する搬送部と、前記搬送路に配置され、前記搬送部により搬送方向に搬送される前記媒体に記録する記録部と、前記搬送路の前記記録部の下流に配置され、前記搬送部により前記搬送方向に搬送される前記媒体を読み取る読取部と、前記搬送路における前記前記読取部の上流の所定の位置に配置され、前記所定の位置に対応する位置における前記媒体の有無を検出するセンサーと、を備える媒体処理装置の制御方法であって、前記読取部による前記媒体の読み取り後、前記記録部による前記媒体への記録を行う場合、前記読取部による読み取りが終了した状態の前記媒体の前記搬送方向の逆方向への搬送を開始し、前記逆方向に搬送される前記媒体の後端を前記センサーにより検出することによって前記媒体の位置を管理し、少なくとも、前記媒体における記録領域の先端が前記記録部による記録位置の上流側に位置するまで前記媒体を前記逆方向に搬送し、その後、前記搬送部により前記媒体を前記搬送方向に搬送すると共に、前記記録部により記録することを特徴とする。
この制御方法によれば、読取部による媒体の読み取り後、記録部による媒体への記録を行う場合、読取部による読み取りが終了した状態の媒体のバックフィードを開始し、バックフィードされる媒体の後端をセンサーにより検出することによって媒体の位置を管理し、少なくとも、媒体における記録領域の先端が記録部による記録位置の上流側に位置するまで媒体をバックフィードする。このように、バックフィード時に、媒体における記録領域の先端が記録部による記録位置の上流側に位置するまでバックフィードする構成のため、バックフィード時の搬送量が、記録部により媒体に記録するために必要な最小限の搬送量となり、処理効率が向上する。さらに、バックフィード時に、媒体が向かう方向側の端である後端の位置を検出して、媒体の位置を管理する構成のため、後端の位置検出後、媒体の後端と媒体の記録領域の先端との距離を踏まえた所定量だけ媒体をバックフィードさせる、という単純な動作で、媒体の記録領域の先端が記録部による記録位置の上流側に位置するまで媒体をバックフィードさせることが可能となり、処理効率が向上する。そして、上記構成によれば、バックフィード後、媒体を搬送方向に搬送して記録部による記録を行うため、上述したように効率的なバックフィードを実現した上で、媒体の光学的な読み取り後、媒体への記録を行うことができる。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明は、搬送路上で媒体を搬送する搬送部と、前記搬送路に配置され、前記搬送部により搬送方向に搬送される前記媒体に記録する記録部と、前記搬送路の前記記録部の下流に配置され、前記搬送部により前記搬送方向に搬送される前記媒体を読み取る読取部と、前記搬送路における前記前記読取部の上流の所定の位置に配置され、前記所定の位置に対応する位置における前記媒体の有無を検出するセンサーと、を備える媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、前記制御部を、前記読取部による前記媒体の読み取り後、前記記録部による前記媒体への記録を行う場合、前記読取部による読み取りが終了した状態の前記媒体の前記搬送方向の逆方向への搬送を開始し、前記逆方向に搬送される前記媒体の後端を前記センサーにより検出することによって前記媒体の位置を管理し、少なくとも、前記媒体における記録領域の先端が前記記録部による記録位置の上流側に位置するまで前記媒体を前記逆方向に搬送し、その後、前記搬送部により前記媒体を前記搬送方向に搬送すると共に、前記記録部により記録する処理制御部として機能させることを特徴とする。
このプログラムを実行すれば、読取部による媒体の読み取り後、記録部による媒体への記録を行う場合、読取部による読み取りが終了した状態の媒体のバックフィードを開始し、バックフィードされる媒体の後端をセンサーにより検出することによって媒体の位置を管理し、少なくとも、媒体における記録領域の先端が記録部による記録位置の上流側に位置するまで媒体をバックフィードする。このように、バックフィード時に、媒体における記録領域の先端が記録部による記録位置の上流側に位置するまでバックフィードする構成のため、バックフィード時の搬送量が、記録部により媒体に記録するために必要な最小限の搬送量となり、処理効率が向上する。さらに、バックフィード時に、媒体が向かう方向側の端である後端の位置を検出して、媒体の位置を管理する構成のため、後端の位置検出後、媒体の後端と媒体の記録領域の先端との距離を踏まえた所定量だけ媒体をバックフィードさせる、という単純な動作で、媒体の記録領域の先端が記録部による記録位置の上流側に位置するまで媒体をバックフィードさせることが可能となり、処理効率が向上する。そして、上記構成によれば、バックフィード後、媒体を搬送方向に搬送して記録部による記録を行うため、上述したように効率的なバックフィードを実現した上で、媒体の光学的な読み取り後、媒体への記録を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、搬送路上に、媒体に記録する記録部と、この記録部の下流に設けられた読取部と、が配置された媒体処理装置について、人為的な手段を介することなく、効率的に、媒体の光学的な読み取り後に、媒体への記録を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】複合処理装置の外観斜視図である。
【図2】複合処理装置の内部構造を示す図である。
【図3】複合処理装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】複合処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】複合処理システムの動作を示すフローチャートである。
【図6】図5のステップSB11を説明するため搬送路を模式的に示す図である。
【図7】複合処理装置のメリットを説明するため小切手の裏面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係る複合処理装置1(媒体処理装置)の外観斜視図である。
複合処理装置1は、読取対象媒体であるシート状の小切手4(媒体)や帳票類に対し、この読取対象物に記録された磁気インク文字の読み取り、読取対象物の両面の光学的読み取り、及び、当該読取対象物への画像の記録を行う装置である。また、複合処理装置1は、クレジットカード等のカード型の媒体に記録された磁気情報を読み取るリーダーとしての機能、及び、感熱ロール紙に画像を記録して切断することにより、画像が記録された所定の紙片を発行する機能を備えている。
【0013】
本実施形態では、読取対象物として小切手4を処理する場合を例に挙げて説明する。小切手4は、図1に示すように、所定の模様や装飾が施されたシートに金額、振出人、通し番号、サインなどが記録された帳票である。これら金額、振出人、通し番号、サインなどは表面4aに記録される。小切手4の表面4aには小切手4の長辺方向に延びる磁気インク文字列4cが形成されている。磁気インク文字列4cは、磁気インクで印刷された複数の磁気インク文字(MICR文字)が並んだものであり、磁気的または光学的に読み取ることができる。
小切手4の裏面4bには裏書き欄が設けられている。この裏書き欄には、後述するインクジェットヘッド10によって、裏書きに係る画像が記録される。小切手4の短辺方向及び長辺方向のサイズは規格化されているものの、多様な規格が存在するため、実際には様々なサイズがある。複合処理装置1では、一般的な小切手4のサイズをほぼ包含し得る最大サイズを規定し、この最大サイズ内の小切手4であれば処理できる。
【0014】
<複合処理装置の構成>
複合処理装置1は、本体下部を覆う下部ケース11、及び下部ケース11に被せられるカバー12からなる外装を有し、外装の内部に複合処理装置1の本体13(図2)が収容されている。複合処理装置1の前面には、小切手4を挿入する挿入口14が開口しており、挿入口14の奥には複数の小切手4を積層して収納できるストッカー15が設けられている。このストッカー15は、前面側へ向かって引き出し自在に構成されており、ストッカー15に収納すべき小切手4のサイズに応じてストッカー15を引き出した上で、このストッカー15に小切手4を収納させることが可能である。
また、カバー12には、上面視で略U字形状に、小切手4の搬送路Wとなるスリット18が形成されている。スリット18は、上述したストッカー15に連通すると共に、スリット18は複合処理装置1の前面側に設けられたポケット19に連通している。ストッカー15に収納された小切手4は、後述するように1枚ずつ複合処理装置1の内部に取り込まれ、スリット18を通る間に処理されて、処理後の小切手4はポケット19に排出される。ポケット19には複数の小切手4を収納することができる。
図1に示すように、ストッカー15の側方には、磁気カードリーダーユニット20が設けられている。磁気カードリーダーユニット20は、カバー12に形成されたカードスリット21と、このカードスリット21に対応して設けられたMCRヘッド22(図3)とを備え、カードスリット21を通るカード類に磁気的に記録された情報をMCRヘッド22によって読み取る。
【0015】
図2は、複合処理装置1の外装内部に収容されている本体13の構成を示す平面図である。ストッカー15の一側面にはホッパー25が設けられている。このホッパー25は、ホッパー駆動モーター26(図3)により、図中矢印方向に回動可能に構成されており、ストッカー15に貯留された小切手4を他方の側面側に付勢する。
ストッカー15の他方の側面には、後述するASF(Automatically Sheet Feeder)モーター27(図3)により駆動されるピックアップローラー28が配置されており、ホッパー25がピックアップローラー28側に回動すると、この回動に応じてストッカー15内の小切手4のうち1枚がピックアップローラー28に付勢され、当該ローラーに接触して、当該ローラーの回転に応じて搬送路Wに引き込まれる。
ストッカー15の奥には、一対のローラーで構成されるASFローラー29が配置されている。ASFローラー29の2つのローラーは、搬送路Wの両側に配置され、一方は後述するASFモーター27の動力により回転し、他方のローラーは従動ローラーである。ピックアップローラー28に接した小切手4はASFローラー29に挟まれて、スリット18内を下流側へ搬送される。
【0016】
ストッカー15の所定の位置には、ASF用紙検出器31(図3)が設けられている。ASF用紙検出器31は、例えば透過型光センサーで構成され、ストッカー15における小切手4の有無を検出する。
また、ストッカー15において、ホッパー25の待機位置には、ホッパー位置検出器32(図3)が設けられている。ホッパー位置検出器32は、例えば透過型光センサーで構成され、ホッパー25が待機位置に位置しているか否かを検出する。
ASFローラー29の下流側には、小切手4の表面4aに接して磁気インク文字列4c(図1)を磁気的に読み取るMICR(Magnetic Ink Character Recognition)ヘッド35が配置されている。MICRヘッド35には、MICRローラー36が対向配置される。MICRローラー36はMICRヘッド35側に付勢されており、小切手4をMICRヘッド35に押しつけながら回転して、小切手4を、MICR文字の読み取りに適した定速で搬送する。MICRヘッド35の上流側には、ASFローラー29により繰り出された小切手4をMICRヘッド35に案内する、一対のローラーからなるアシストローラー37が配置されている。
【0017】
また、搬送路W上においてアシストローラー37とMICRヘッド35との間には、用紙長検出器38が配置されている。用紙長検出器38は、例えば反射型光センサーで構成され、搬送路W上を通る小切手4の検出位置における有無を検出することにより、小切手4の先端及び後端を検出する。用紙長検出器38の検出値は後述する制御部70により取得され、この検出値の変化に基づいて小切手4の長さが求められる。
搬送路W上でMICRヘッド35の下流側には、搬送路Wを挟んで対向する一対のローラーを有する第1搬送ローラー40が設けられ、さらに、この第1搬送ローラー40の下流側には第2搬送ローラー41が設けられている。これら第1搬送ローラー40、及び、第2搬送ローラー41は、搬送モーター42(図3)によって回転駆動されるローラーであり、これらローラーによって小切手4はインクジェットプリンターユニット44へ搬送される。
【0018】
インクジェットプリンターユニット44は、インクジェットヘッド10(記録部)を備えている。インクジェットヘッド10は、本体13の前部に収容されているインクカートリッジ45からインクの供給を受けて、小切手4にインクを吐出するインクジェット方式の記録ヘッドである。このインクジェットヘッド10は、いわゆるラインインクジェットヘッドであり、小切手4に対する記録の際は、一定の速度で搬送される小切手4の裏面4bに対して、固定された状態のインクジェットヘッド10からインクが吐出されて、画像が記録される。この小切手4の裏面4bに記録される画像は、いわゆる裏書きと呼ばれる文字や記号等である。
インクジェットヘッド10の上流側であって、インクジェットヘッド10と、第2搬送ローラー41との間には、中間検出器46(センサー)が設けられている。中間検出器46は、例えば反射型光センサーで構成され、検出位置における小切手4の有無を検出する。
【0019】
インクジェットヘッド10の下流には、小切手4を光学的に読み取るCIS(Contact Image Sensor)ユニットが配置されている。このCISユニットは、小切手4の表面4aを読み取る表面CISユニット47(読取部)と、裏面4bを読み取る裏面CISユニット48(読取部)とを有し、小切手4の両面を光学的に読み取り可能である。表面CISユニット47と裏面CISユニット48は搬送路Wを挟んで対向配置されており、これらユニットの上流側には第1CISローラー50が配置され、また、下流側には第2CISローラー51が配置されている。これら第1CISローラー50、及び、第2CISローラー51は、搬送モーター42によって回転駆動されるローラーであり、これらローラーによってCISユニットによって読み取り中の小切手4が安定して搬送される。
第2CISローラー51の下流には、排出検出器52が設けられている。排出検出器52は、例えば反射型光センサーで構成され、検出位置における小切手4の有無を検出する。
【0020】
表面CISユニット47、裏面CISユニット48の下流側には上述したポケット19が設けられている。ポケット19は、メインポケット19aと、サブポケット19bとに区画されており、スリット18が分岐して、それぞれのポケット19に連通している。これらメインポケット19a、及び、サブポケット19bには、それぞれ複数の小切手4を収納できる。
そして、スリット18が分岐した位置には、小切手4を排出すべきポケット19を、メインポケット19aとサブポケット19bとのいずれかに切り替える切替板54が配置されている。切替板54は、メインポケット19aに連通する経路とサブポケット19bに連通する経路のいずれか一方を塞ぐことで小切手4を他方に案内するガイドであり、切替板駆動モーター55(図3)によって駆動される。切替板54からメインポケット19aに繋がる経路には排出ローラー56が設けられ、また、切替板54からサブポケット19bに繋がる経路には排出ローラー57が設けられており、小切手4は、これらローラーにより切替板54に案内されたいずれかのポケット19にスムーズに排出される。
後述するように、複合処理装置1は、MICRヘッド35による磁気インク文字列4cの読み取り結果に基づいて、小切手4が正しくセットされていると判別した場合は、小切手4をメインポケット19aに排出し、一方、小切手4が正しくセットされていないと判別した場合は、サブポケット19bに排出する。
【0021】
また、図1及び図2に示すように、複合処理装置1の中央部には、画像が記録された紙片を発行するサーマルプリンターユニット60が設けられている。
図1に示すように、サーマルプリンターユニット60は、ユニット本体の上部を覆うプリンターカバー61を備えている。このプリンターカバー61は、カバー12に対して開閉自在に取り付けられており、プリンターカバー61を開くと、感熱ロール紙を収容可能な空間であるロール紙収容部62(図3)が露出し、感熱ロール紙の補充や交換が可能となる。プリンターカバー61には、排紙口63が形成されており、ロール紙収容部62に収容された感熱ロール紙は、排紙口63を介して、排出される。
サーマルプリンターユニット60は、ロール紙収容部62に収容した感熱ロール紙を繰り出して搬送路W上を搬送させるローラー状のプラテン(不図示)と、プラテンに対向配置されたサーマルヘッド65(図3)と、搬送方向に対し直交する方向に感熱ロール紙を切断するカッターユニット66とを備えている。紙片の発行に際し、サーマルプリンターユニット60は、プラテンを駆動して感熱ロール紙を搬送方向に搬送しつつ、サーマルヘッド65により感熱ロール紙に画像を記録し、カッターユニット66によって所定の位置で感熱ロール紙を切断することにより、紙片を発行する。
【0022】
図3は、複合処理装置1とホストコンピューター5(制御装置)とを接続して構成される複合処理システム8の機能的構成を示すブロック図である。
複合処理装置1は、複合処理装置1全体を制御するCPU、RAM、フラッシュROM等により構成される制御部70と、インクジェットプリンターユニット44及びサーマルプリンターユニット60を制御するプリンター制御部71と、ヘッド駆動回路72と、モータードライバー73と、読取制御回路74と、センサー駆動回路75と、インターフェイス部76とを有し、これらの各部は相互に通信可能に接続されている。
【0023】
制御部70は、フラッシュROMに記憶されている制御プログラムをCPUにより読み出して実行することにより、複合処理装置1の各部を制御する。制御部70は、処理制御部70aを備えているが、これについては後述する。
プリンター制御部71は、制御部70の制御の下、ヘッド駆動回路72を介してインクジェットヘッド10に駆動電流を供給し、小切手4への記録を行う。また、プリンター制御部71は、制御部70の制御の下、ヘッド駆動回路72を介してサーマルヘッド65に駆動電流を供給し、感熱ロール紙への記録を行う。
モータードライバー73は、ホッパー駆動モーター26に接続され、制御部70の制御に従ってホッパー25を回動させる。また、モータードライバー73は、ASFモーター27、及び、搬送モーター42に接続され、これら各モーターに駆動電流や駆動パルスを出力して、制御部70の制御に従いこれらモーターを動作させて、これらモーターに接続されたローラーを駆動する。
これら制御部70や、モータードライバー73、ホッパー駆動モーター26、ホッパー25、ASFモーター27、搬送モーター42、これらモーターに接続されたローラー、その他の機構、装置が協働して、ストッカー15に収納された媒体を、ストッカー15に連通する搬送路W上を搬送させ、搬送路Wにそれぞれ連通するメインポケット19a、サブポケット19bのいずれかに排出する搬送部として機能する。
また、モータードライバー73は、切替板駆動モーター55に接続され、制御部70の制御の下当該モーターに駆動電流や駆動パルスを出力することによって切替板54を移動させ、小切手4が排出されるポケット19を、メインポケット19a側、又は、サブポケット19b側に切り替える。
【0024】
読取制御回路74は、MCRヘッド22、MICRヘッド35、表面CISユニット47、及び、裏面CISユニット48に接続されている。
読取制御回路74は、制御部70の制御に従って、カードスリット21(図1)にカード類が通される際にMCRヘッド22によって磁気情報を読み取らせ、MCRヘッド22が出力する読取信号をデジタル化して制御部70に出力する。
また、読取制御回路74は、制御部70の制御に従って、MICRヘッド35によって磁気情報を読み取らせ、MICRヘッド35が出力する読取信号をデジタル化して制御部70に出力する。
また、読取制御回路74は、制御部70の制御に従って、表面CISユニット47及び裏面CISユニット48に、小切手4の表面4a及び裏面4bの読み取りを実行させる。
センサー駆動回路75は、ASF用紙検出器31、ホッパー位置検出器32、用紙長検出器38、中間検出器46、及び、排出検出器52に接続され、これらの各検出器に電流を供給して、所定周期で出力値を取得し、取得した出力値をデジタルデータに変換して制御部70に出力する。
インターフェイス部76は、ホストコンピューター5に対して有線または無線で接続され、制御部70の制御に従って、ホストコンピューター5との間で制御データを含む各種データを送受信する。
【0025】
<複合処理装置の基本的動作>
次いで、小切手4を処理する際の複合処理装置1の基本的な動作について説明する。
本実施形態に係る複合処理装置1は、動作モードとして、連続処理モードと、単独処理モードとの2つの動作モードを有している。
まず、連続処理モードについて説明し、次いで、単独処理モードについて説明する。
【0026】
まず、連続処理モードについて説明する。
上述したように、ストッカー15には、複数枚の小切手4を収納可能である。そして、連続処理モードでは、複合処理装置1は、ストッカー15に収納された複数の小切手4について、所定のタイミングで、順次、搬送路W上に繰り出し、以下で説明する一連の処理を、各小切手4について連続して実行可能である。
【0027】
図4は、連続処理モードにおいて、ストッカー15に収納された1枚の小切手4に対して実行される一連の処理を示すフローチャートである。
以下の説明の前提として、ホストコンピューター5から入力された制御コマンドには、処理対象となる1枚の小切手4を処理するために必要なコマンドやデータが、不足無く含まれているものとする。
また、以下の説明において、処理制御部70aは、CPUが制御プログラムを読み出して実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。
ホストコンピューター5から小切手4の処理に係る制御コマンドが入力されると(ステップSA1)、複合処理装置1の制御部70の処理制御部70aは、ホッパー位置検出器32の検出値や、ASF用紙検出器31の検出値を監視しつつ、ホッパー駆動モーター26や、ASFモーター27を駆動して、ストッカー15に収納された小切手4のうち1枚を搬送路Wに送り出して、小切手4の搬送を開始する(ステップSA2)。
以後、処理制御部70aは、小切手4を略一定の速度で搬送しつつ、小切手4に対して各種処理を実行する。
次いで、処理制御部70aは、用紙長検出器38の検出値を監視することにより小切手4の位置を管理しつつ、MICRヘッド35によって、小切手4の磁気インク文字列4cを読み取る(ステップSA3)。
次いで、処理制御部70aは、MICRヘッド35の読み取り結果に基づいて、小切手4が上下逆および裏表逆にセットされることなく、正しくセットされているか否かを判別する(ステップSA4)。詳細には、処理制御部70aは、磁気インク文字列4cを構成する磁気インク文字について、磁気インク文字を読み取って得られる検出波形と、基準波形との比較による磁気インク文字認識を行って、磁気インク文字認識の成否により、小切手4が正しくセットされているか否かを判別する。
【0028】
次いで、処理制御部70aは、ステップSA4の判別結果に基づいて、切替板54を切り替える(ステップSA5)。詳述すると、本実施形態では、小切手4が上下逆および裏表逆にセットされることなく、正しくセットされている場合は、小切手4はメインポケット19aに排出され、一方、小切手4が正しくセットされていない場合は、小切手4はサブポケット19bに排出されるものとされている。ステップSA5において、処理制御部70aは、小切手4が正しくセットされている場合、切替板54をメインポケット19a側に切り替え、小切手4が正しくセットされていない場合、切替板54をサブポケット19b側に切り替える。
【0029】
次いで、処理制御部70aは、中間検出器46の検出値を監視することにより小切手4の位置を監視しつつ、搬送モーター42の駆動により各種モーターを駆動して小切手4をさらに搬送し、インクジェットヘッド10により、小切手4の裏面4bに所定の画像を記録する(ステップSA6)。なお、小切手4が正しくセットされていない場合は、ステップSA7において、画像の記録を行わないようにしてもよい。
次いで、処理制御部70aは、表面CISユニット47によって小切手4の表面4aを光学的に読み取ると共に、裏面CISユニット48によって裏面4bを光学的に読み取り、読み取り結果をホストコンピューター5に出力する(ステップSA7)。なお、小切手4が正しくセットされていない場合は、ステップSA7において、小切手4の読み取りを行わないようにしてもよい。
次いで、処理制御部70aは、排出検出器52の検出値を監視することにより小切手4が正常に排紙されたか否かを監視しつつ、搬送モーター42を駆動することにより各種モーターを駆動して小切手4をポケット19に排出する(ステップSA8)。その際、小切手4は、切替板54に導かれてメインポケット19a、サブポケット19bのうちMICRヘッド35の読み取り結果に応じた適切なポケット19に排出される。
【0030】
次いで、単独処理モードについて説明する。
上述した連続処理モードでは、ストッカー15に収納された小切手4について、一連の処理を連続して実行していた。一方で、単独処理モードでは、1枚の小切手4について単独で以下説明する所定の処理が実行される。
この単独処理モードは、以下のことを目的とする動作モードである。
すなわち、上述した連続処理モードでは、小切手4の裏面4bについて、裏書きに係る画像が記録された後、裏面CISユニット48によってその裏面4bが光学的に読み取られていた。一方で、裏書きに係る画像が記録される前の裏面4bを光学的に読み取った後に、裏面4bに画像を記録したいとするニーズが現実にある。これを踏まえ、単独処理モードは、例えば、ユーザーによる小切手4の入れ直し等の人為的な手段を介することなく、自動で、裏書きに係る画像が記録される前の裏面4bを光学的に読み取った後に、裏面4bに画像を記録することを目的としている。さらに、単独処理モードでは、以下説明するように、複合処理装置1の構造を踏まえ、適切な動作を実行することにより、処理効率を向上し、これにより、顧客満足度の向上、商品価値の向上を実現している。
【0031】
なお、動作モードとして、単独処理モードが設けられたことには、以下の背景もある。
すなわち、本実施形態に係る複合処理装置1は、ある媒体処理装置の後継機として開発されたものである。この従来の媒体処理装置は、搬送路において、上流側に裏面CISユニットが設けられ、下流側にインクジェットヘッドが設けられていた。従って、従来の媒体処理装置によって、小切手4の裏面4bの光学的読み取りをし、その後、裏面4bへの画像の記録をする場合、それに準じて、ホストコンピューターから媒体処理装置に対して、光学的読み取りを実行させる制御コマンド、画像を記録させる制御コマンドが順次入力されていた。
ここで、媒体処理装置を、後継機たる複合処理装置1に置き換えることを考える。この場合、ホストコンピューター5に対する改変(デバイスドライバーの改変、新たなデバイスドライバーのインストール等)を行うことなく、媒体処理装置を、後継機たる複合処理装置1を置き換えることが可能であれば、置き換えに際し、ユーザーが行うべき作業や、また、取得すべき知識が低減し、顧客満足度を向上できると共に、置き換えを促すことができ、販売機会を拡充できる。そして、ホストコンピューター5に対する改変を行うことなく、媒体処理装置が従来と同様の所望の動作するためには、少なくとも、ホストコンピューター5から、小切手4の裏面4bの光学的読み取りを実行させる制御コマンド、及び、裏面4bに画像を記録させる制御コマンドが順次入力された場合、これら制御コマンドに準じて、まず、小切手4の裏面4bの光学的読み取りをし、その後、裏面4bへの画像の記録をすることが可能である必要がある。
以上を踏まえ、本実施形態に係る複合処理装置1では、ホストコンピューター5から、小切手4の裏面4bの光学的読み取りを実行させる制御コマンド、及び、裏面4bに画像を記録させる制御コマンドが順次入力された場合、これら制御コマンドに準じて、まず、小切手4の裏面4bの光学的読み取りをし、その後、裏面4bへの画像の記録をできるよう、単独処理モードが設けられている。
【0032】
図5は、単独処理モードにおける複合処理システム8の動作を示すシーケンス図であり、(A)はホストコンピューター5の動作を、(B)は複合処理装置1の動作をそれぞれ示している。また、(X)は、ユーザーの動作を表している。
以下の説明において、動作の開始時点では、ストッカー15に小切手4が1枚も収容されていないものとする。
単独処理モードにおいて、まず、ホストコンピューター5は、複合処理装置1に対して、小切手4がストッカー15に収納されるために必要な準備(例えば、ホッパー25の待機位置への移動)を行わせると共に、小切手4が収納されるまで待機することを指示する制御コマンドを出力する(ステップSB1)。この制御コマンドに応じて、複合処理装置1の制御部70の処理制御部70aは、ASF用紙検出器31の検出値に基づいて、ストッカー15に小切手4が収納されたか否かを監視しつつ、待機する(ステップSB2)。
次いで、ユーザーにより、ストッカー15に小切手4が収納されると(ステップSX1)、処理制御部70aは、ASF用紙検出器31の検出値に基づいてそのことを検知し、ホストコンピューター5に対して、小切手4が収納された旨のステータスを含むコマンドを出力する(ステップSB3)。当該ステータスを含むコマンドに応じて、ホストコンピューター5は、ステップSB1で指示した準備、及び、待機を終了する旨の制御コマンドを出力する(ステップSB4)。この制御コマンドに基づいて、処理制御部70aは、小切手4の収納に係る準備、及び、待機を終了する(ステップSB5)。
【0033】
次いで、ホストコンピューター5は、複合処理装置1に対して、小切手4の裏面4bの読み取りを実行させるための制御コマンドを出力する(ステップSB6)。なお、小切手4の表面4aも併せて読み取らせるようにしてもよいが、説明の便宜のため、ステップSB6では、ホストコンピューター5は、裏面4bを読み取らせるべく、裏面4bの読み取りを実行させるための制御コマンドを出力するものとする。
この制御コマンドに基づいて、処理制御部70aは、各種センサーを監視しつつ、ホッパー駆動モーター26や、ASFモーター27、搬送モーター42を駆動して、ストッカー15に収納された小切手4を搬送路Wに送り出して、小切手4の搬送を開始すると共に、小切手4を裏面CISユニット48の読み取り位置まで搬送し、当該裏面CISユニット48によって、小切手4の裏面4bを光学的に読み取り、読み取り結果をホストコンピューター5に出力する(ステップSB7)。
このステップSB7において、処理制御部70aは、裏面CISユニット48の読み取り終了後、第2CISローラー51に小切手4の一部が挟持された状態で、小切手4の搬送を停止する。裏面CISユニット48と、第2CISローラー51との位置関係上、裏面CISユニット48による読み取り終了後、すぐに搬送モーター42の駆動を停止して小切手4の搬送を停止することにより、第2CISローラー51に小切手4の一部が挟持された状態を維持しつつ、小切手4の搬送を停止することが可能である。
【0034】
次いで、ホストコンピューター5は、小切手4に対して処理を行う機構を裏面CISユニット48からインクジェットヘッド10に切り替える旨を通知する制御コマンドを出力する(ステップSB8)。この制御コマンドに基づいて、処理制御部70aは、小切手4の裏面4bへの記録を実行することを検出すると共に、インクジェットヘッド10によって画像の記録を行うために必要な処理(例えば、キャッピングの解除や、フラッシング等)を行う(ステップSB9)。
【0035】
次いで、ホストコンピューター5は、小切手4の裏面4bへの画像の記録を行わせる制御コマンドを出力する(ステップSB10)。
この制御コマンドに応じて、まず、処理制御部70aは、小切手4を、インクジェットヘッド10による画像の記録を行うことができる位置までバックフィードする(ステップSB11)。
以下、ステップSB11の処理について説明する。
【0036】
図6は、ステップSB11の処理を説明するための図である。
図6では、搬送路Wの一部を模式的に示すと共に、搬送路Wに設けられたインクジェットヘッド10を模式的に示している。
図6の搬送路Wにおいて、右方向がストッカー15が設けられた方向に対応する方向であり、左方向がポケット19が設けられた方向に対応する方向であり、上述した連続処理モードでは、図中右側から左側へ向かう方向である搬送方向YJ1へ小切手4が搬送されつつ、各種処理が実行される。
図6において、T1は、インクジェットヘッド10に形成されたノズル列Nの位置(インクジェットヘッド10による記録位置)を示し、T2は、中間検出器46によって小切手4の有無が検出される位置を模式的に示している。
また、図6に示すように、本実施形態に係るインクジェットヘッド10では、ノズル列Nが、搬送方向YJ1に交わる方向であるノズル列方向YJ2に延在しており、このノズル列Nにより、小切手4のノズル列方向YJ2の広い範囲(小切手4のノズル列方向YJ2のほぼ全域)に画像を記録可能である。なお、図6では、インクジェットヘッド10に1つのノズル列Nが設けられているが、インクジェットヘッド10に複数のノズル列が設けられていてもよい。
また、インクジェットヘッド10は、駆動回路の態様や、搬送路Wにおける他の装置の状態、その他のソフトウェア的ハードウェア的な要因により、搬送方向YJ1に向かって小切手4を一定速度で搬送している状況でインクを吐出して画像を記録することが可能であり、搬送方向YJ1と逆方向へ向かって小切手4を搬送しつつ画像を記録することはできない。
また、以下の説明において、小切手4の搬送方向YJ1側の端を「小切手先端4d」とし、逆側の端を「小切手後端4e」とし、小切手4の裏面4bにおいて実際に画像が記録される領域である記録領域Rの搬送方向YJ1側の端を「記録領域先端Ra」とし、逆側の端を「記録領域後端Rb」とする。
また、以下の説明において、搬送方向YJ1と逆方向に小切手4を搬送することを、バックフィードという。
【0037】
図6(A)における小切手4の位置は、裏面CISユニット48による裏面4bの読み取りが終了し、搬送が停止されたとき(=ステップSB7の処理が終了したとき)の位置である。
ステップSB11において、まず、処理制御部70aは、搬送モーター42を駆動して、図6(A)の位置にある小切手4のバックフィードを開始すると共に、中間検出器46の検出値の変化に基づいて、小切手4の小切手後端4eが、中間検出器46の検出位置の位置T2に至ったか否かを監視する。
小切手4のバックフィードが進み、小切手4の小切手後端4eが中間検出器46の検出位置の位置T2に至ると(図6(B)に示す状態)、処理制御部70aは、中間検出器46の検出値に基づいて、そのことを検出する。
当該検出後、処理制御部70aは、小切手4を所定距離だけさらにバックフィードし、小切手4の記録領域Rの記録領域先端Raが、ノズル列Nの位置T1よりも上流側に位置する状態とし、バックフィードを終了する。すなわち、処理制御部70aは、小切手4の小切手後端4eを中間検出器46により検出することによって小切手4の位置を管理しつつ、小切手4が所定の位置に位置するまで、小切手4をバックフィードする。
【0038】
以下、中間検出器46による小切手4の小切手後端4eの検出後の動作について、図6(B)、(C)を用いて詳述する。
図6(C)の小切手4の位置は、バックフィード終了時における小切手4の位置である。図6(C)は、バックフィードが終了した時点では、ノズル列Nの位置T1よりもマージンMの距離だけ上流側に小切手4の記録領域Rの記録領域先端Raが位置した状態を示している。このマージンMは、バックフィードの終了後に小切手4の搬送方向YJ1への搬送を開始した場合に、少なくとも、記録領域先端Raが、ノズル列Nの位置T1に至るまでに、小切手4の搬送速度が、記録を行うために必要な一定の速度となるよう加速するために必要なマージンである。
処理制御部70aは、中間検出器46によって小切手4の小切手後端4eを検出すると、小切手後端4e及び記録領域先端Raの離間量L1と、位置T1及び位置T2の離間量L2と、の差である距離L3(図6(B)参照)に、マージンMを加えた搬送量分、小切手4をバックフィードする。なお、ホストコンピューター5から入力される制御コマンドに、小切手4の裏面4bにおける記録領域先端Raの位置を示す情報、及び、小切手4のサイズを示す情報が含まれており、処理制御部70aは、当該情報に基づいて離間量L1を算出する。また、離間量L2は固定値であり、予め制御プログラム上に定義されている。このように、中間検出器46によって小切手4の小切手後端4eが検出された後、距離L3にマージンMを加えた搬送量分バックフィードされることにより、バックフィードが終了した時点では、ノズル列Nの位置T1よりもマージンM分上流側に小切手4の記録領域Rの記録領域先端Raが位置した状態となる。
【0039】
このように、本実施形態では、小切手4をバックフィードする際、小切手4の全てがノズル列Nの位置T1よりも上流側に位置させるのではなく、少なくとも、記録領域先端Raがノズル列Nの位置T1よりも上流側に位置した状態となるように、小切手4をバックフィードさせる。ここで、バックフィードは、インクジェットヘッド10によって記録を行うために行われるものである。そして、記録領域先端Raがノズル列Nの位置T1よりも上流側に位置した状態となれば、ノズル列Nによる記録領域Rへのインクの吐出による画像の記録は可能である。これを踏まえ、本実施形態では、記録を行うために必要な最小限の搬送量分バックフィードされる構成のため、処理効率が向上し、バックフィードに要する時間の短縮化を図ることができる。
また、本実施形態では、小切手4をバックフィードさせるときに使用する第1CISローラー50、第2CISローラー51、第1搬送ローラー40、及び、第2搬送ローラー41が搬送モーター42によって回転する一方、ASFローラー29が搬送モーター42とは別のASFモーター27によって回転するため、バックフィードの際に、小切手4の小切手後端4eが、ASFローラー29を上流側に越えてバックフィードすることはできない。そして、本実施形態では、バックフィードの際に、小切手4の裏面4bに画像を記録するために必要な最小限の搬送量だけバックフィードする構成のため、バックフィードの際に、小切手4の小切手後端4eが、ASFローラー29を越える確率をできるだけ低減することができ、従って、できるだけ人為的な手段を介することなく自動で画像の記録を実行可能である。なお、処理制御部70aは、バックフィードの前に、小切手後端4e及び記録領域先端Raの離間量L1に基づいて、バックフィードした場合に小切手4の小切手後端4eが、ASFローラー29を上流側に越えるか否かを判別し、越える場合は、バックフィードを中止して、その旨、ホストコンピューター5に出力する。
【0040】
さらに、上述したように、本実施形態に係るインクジェットヘッド10では、ノズル列Nがノズル列方向YJ2に延在しており、このノズル列Nにより、小切手4のノズル列方向YJ2の広い範囲(小切手4のノズル列方向YJ2のほぼ全域)に画像を記録可能である。このような構成のため、以下のような効果を奏する。
【0041】
図7は、上記効果を説明するため、小切手4の裏面4bを模式的に示す図であり、(A)は本実施形態に係る複合処理装置1によって裏書きに係る画像を記録したときの裏面4bの一例を示し、(B)は従来の複合処理装置によって裏書きに係る画像を記録したときの裏面4bの一例を示している。
なお、以下の説明では、小切手4を処理した日の日付(図7の例では「2011/01/01」)、振出人等の名称(図7の例では「○○××」)、及び、小切手4を処理した金融機関(図7の例では「AAABank」)の3つの情報が、裏書きとして小切手4に記録されるものとする。
図7(A)に示すように、本実施形態に係る複合処理装置1では、小切手4のノズル列方向YJ2の広い範囲に画像を記録可能であるため、小切手4に記録すべき各情報を、複数行の文字列として記録可能である。
一方で、図7(B)に示すように、従来の複合処理装置は、ノズル列方向YJ2においてノズル列が延在する範囲が狭く、小切手4に記録すべき各情報を、1行の文字列としてしか記録できなかった。
そして、図7(A)と、図7(B)との比較において明らかなように、本実施形態では、複数行の文字列として情報を記録可能なため、画像が搬送方向YJ1に延在する範囲が従来と比較して狭くなり、従って、従来と比較して、記録領域先端Raと小切手後端4eとの離間量L1の長さを小さくすることができる。このため、小切手4をバックフィードする際に、バックフィードすべき搬送量を小さくでき、さらなる処理効率を図れると共に、小切手後端4eが、ASFローラー29を上流側に越えてしまうためバックフィードができない、という事態が発生する確率をより低減することができる。
【0042】
さて、ステップSB11において小切手4をバックフィードした後、処理制御部70aは、小切手4の搬送方向YJ1への搬送を開始し、小切手4を一定の速度で搬送しつつ、インクジェットヘッド10によって小切手4の裏面4bに画像を記録する(ステップSB12)。上述したように、加速を考慮したマージンMを反映してバックフィードが行われるため、搬送方向YJ1への搬送の開始後、記録領域先端Raが、ノズル列Nの位置T1に至るまでに、小切手4が搬送される速度が、所定の速度となるように、小切手4の搬送速度を加速することが可能である。
小切手4への画像の記録後、ホストコンピューター5は、小切手4をポケット19に排出することを指示する制御コマンドを出力する(ステップSB13)。この制御コマンドに基づいて、処理制御部70aは、排出検出器52の検出値を監視することにより小切手4が正常に排紙されたか否かを監視しつつ、搬送モーター42を駆動することにより各種モーターを駆動して小切手4をポケット19に排出する(ステップSB14)。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る処理制御部70aは、裏面CISユニット48による小切手4の読み取り後、インクジェットヘッド10による小切手4への記録を行う場合、中間検出器46の検出値により小切手4の小切手後端4eを検出することによって小切手4の位置を管理し、少なくとも、小切手4における記録領域Rの記録領域先端Raがインクジェットヘッド10による記録位置であるノズル列Nの位置T1の上流側に位置するまでバックフィードした後、小切手4を搬送方向YJ1に搬送して画像を記録する。
これによれば、バックフィード時に、小切手4における記録領域Rの記録領域先端Raが、ノズル列Nの位置T1の上流側に位置するまでバックフィードする構成のため、バックフィード時の搬送量が、インクジェットヘッド10により小切手4に記録するために必要な最小限の搬送量となり、処理効率が向上する。さらに、バックフィード時に、小切手4が向かう方向側の端である小切手後端4eの位置を検出して、小切手4の位置を管理する構成のため、小切手後端4eの検出後、小切手後端4eと記録領域先端Raとの離間量L1を踏まえた所定量だけ媒体をバックフィードさせる、という単純な動作で、小切手4の記録領域先端Raが、位置T1の上流側に位置するまで小切手4をバックフィードさせることが可能となり、処理効率が向上する。
さらに、バックフィードに際し、小切手4の全体が、位置T1の上流側に位置するようにすることも考えられるが、搬送路Wの構造上、本実施形態では、バックフィード時の搬送量に限界がある。しかしながら、上記構成によれば、バックフィード時の搬送量が必要最小限となるため、本実施形態のように小切手4のバックフィード時の搬送量に限界がある場合であっても、高い確率で、読み取り後の記録のために必要なバックフィードを行うことが可能となる。
【0044】
また、本実施形態に係るインクジェットヘッド10には、ノズル列方向YJ2に延在するノズル列Nが形成されており、固定された状態のインクジェットヘッド10から、一定の速度で搬送方向YJ1に搬送される小切手4にインクを吐出して、小切手4のノズル列方向YJ2の広い範囲に画像を記録可能である。
これによれば、小切手4のノズル列方向YJ2の広い範囲に画像を記録可能であるため、小切手4のノズル列方向YJ2の狭い範囲に画像を記録可能なものと比較して、同一の情報を記録した場合に、当該情報を、搬送方向YJ1におけるより狭い範囲で記録可能である。従って、小切手4における記録領域先端Raと、小切手後端4eの離間量L1をより短くすることができ、バックフィードする際に、バックフィード時の搬送量をより短くし、バックフィードに係る作業をより効率化できる。
【0045】
また、本実施形態に係る処理制御部70aは、小切手4をバックフィードする際、バックフィード後、搬送方向YJ1への搬送を開始してから、搬送速度が一定の速度となるまでの加速に必要なマージンMを踏まえて、小切手4をバックフィードする。
これによれば、小切手4を一定の速度で搬送しつつ記録するという装置の特性を踏まえて、適切に、バックフィードを実行することができる。
【0046】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、複合処理装置1は、搬送路W上に、MICRヘッド35、インクジェットヘッド10、及び、CISユニットが順次配置された構造であったが、装置の配置順番や、装置の具体的構造は、これに限らない。すなわち、本発明は、インクジェットヘッド10等の記録に係る機構が搬送路Wの上流側に設けられ、CISユニット等の読み取りに係る機構が搬送路Wの下流側に設けられた装置に対して、広く適用可能である。
また例えば、図3に示す各機能ブロックはハードウェアとソフトウェアの協働により任意に実現可能であり、特定のハードウェア構成を示唆するものではない。
また例えば、制御部70の機能を、複合処理装置1に外部接続される別の装置に持たせるようにしてもよい。
また、外部接続される記憶媒体に記憶させたプログラムを実行することにより、図4で示した各フローチャートの各ステップを実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…複合処理装置、4…小切手、5…ホストコンピューター、10…インクジェットヘッド、26…ホッパー駆動モーター、27…ASFモーター、42…搬送モーター、46…中間検出器、47…表面CISユニット、48…裏面CISユニット、70…制御部、70a…処理制御部、73…モータードライバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路上で媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送路に配置され、前記搬送部により搬送方向に搬送される前記媒体に記録する記録部と、
前記搬送路の前記記録部の下流に配置され、前記搬送部により前記搬送方向に搬送される前記媒体を読み取る読取部と、
前記搬送路における前記読取部の上流の所定の位置に配置され、前記所定の位置に対応する位置における前記媒体の有無を検出するセンサーと、
前記搬送部、前記記録部、及び、前記読取部を制御する処理制御部と、を備え、
前記処理制御部は、
前記読取部による前記媒体の読み取り後、前記記録部による前記媒体への記録を行う場合、
前記読取部による読み取りが終了した状態の前記媒体の前記搬送方向の逆方向への搬送を開始し、前記逆方向に搬送される前記媒体の後端を前記センサーにより検出することによって前記媒体の位置を管理し、少なくとも、前記媒体における記録領域の先端が前記記録部による記録位置の上流側に位置するまで前記媒体を前記逆方向に搬送し、その後、前記搬送部により前記媒体を前記搬送方向に搬送すると共に、前記記録部により記録することを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記記録部は、
前記搬送方向に交わる方向であるノズル列方向に延在するノズル列を有するインクジェットヘッドを備え、固定された状態の前記インクジェットヘッドから、一定の速度で前記搬送方向に搬送される前記媒体にインクを吐出して、前記媒体の前記ノズル列方向に延在するノズル列に対応する範囲に画像を記録可能であることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記処理制御部は、
前記媒体を前記逆方向に搬送する際、前記逆方向に搬送後、前記搬送方向への搬送を開始してから、搬送速度が前記一定の速度となるまでの加速に必要な距離以上、前記媒体を前記逆方向に搬送することを特徴とする請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
搬送路上で媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送路に配置され、前記搬送部により搬送方向に搬送される前記媒体に記録する記録部と、
前記搬送路の前記記録部の下流に配置され、前記搬送部により前記搬送方向に搬送される前記媒体を読み取る読取部と、
前記搬送路における前記前記読取部の上流の所定の位置に配置され、前記所定の位置に対応する位置における前記媒体の有無を検出するセンサーと、を備える媒体処理装置の制御方法であって、
前記読取部による前記媒体の読み取り後、前記記録部による前記媒体への記録を行う場合、
前記読取部による読み取りが終了した状態の前記媒体の前記搬送方向の逆方向への搬送を開始し、前記逆方向に搬送される前記媒体の後端を前記センサーにより検出することによって前記媒体の位置を管理し、少なくとも、前記媒体における記録領域の先端が前記記録部による記録位置の上流側に位置するまで前記媒体を前記逆方向に搬送し、その後、前記搬送部により前記媒体を前記搬送方向に搬送すると共に、前記記録部により記録することを特徴とする媒体処理装置の制御方法。
【請求項5】
搬送路上で媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送路に配置され、前記搬送部により搬送方向に搬送される前記媒体に記録する記録部と、
前記搬送路の前記記録部の下流に配置され、前記搬送部により前記搬送方向に搬送される前記媒体を読み取る読取部と、
前記搬送路における前記前記読取部の上流の所定の位置に配置され、前記所定の位置に対応する位置における前記媒体の有無を検出するセンサーと、を備える媒体処理装置の各部を制御する制御部により実行されるプログラムであって、
前記制御部を、
前記読取部による前記媒体の読み取り後、前記記録部による前記媒体への記録を行う場合、
前記読取部による読み取りが終了した状態の前記媒体の前記搬送方向の逆方向への搬送を開始し、前記逆方向に搬送される前記媒体の後端を前記センサーにより検出することによって前記媒体の位置を管理し、少なくとも、前記媒体における記録領域の先端が前記記録部による記録位置の上流側に位置するまで前記媒体を前記逆方向に搬送し、その後、前記搬送部により前記媒体を前記搬送方向に搬送すると共に、前記記録部により記録する処理制御部として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−73501(P2013−73501A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213329(P2011−213329)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】