説明

媒体処理装置

【課題】搬送中の記録媒体の姿勢矯正を確実に行いながら確実に搬送することができる媒体(カード)処理装置を提供する。
【解決手段】記録媒体C1の表面又は裏面に情報を印刷記録する記録装置を備えた媒体処理装置において、記録媒体C1を記録装置側に搬送する媒体搬送経路P1において、記録媒体C1を搬送方向の上流側にて挟持する第1ローラ対29と、記録媒体C1を媒体搬送経路P1における下流側にて挟持する第2ローラ対30と、前記第1ローラ対29と第2ローラ対30の間に配置され、媒体搬送経路P1における記録媒体C1のスキュー状態を補正するスキュー補正手段100、101と、を備え、第2ローラ対30が記録媒体C1を把持するニップ圧を、第1ローラ対29が記録媒体C1を把持するニップ圧よりも大きく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックカード、厚紙カードなどの記録媒体の表面に画像情報若しくはプリント情報を記録する媒体処理装置に関し、特に、装置内での記録媒体のスキューを矯正することでカード類への画像記録ミスを防止することができる媒体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の媒体処理装置は、各種証明書用カード、決済用カードなどに使用されるカード類に情報を記録する装置が広く知られている。例えば顔写真、氏名、名称などが画像情報やプリント情報の形でカードの表裏面に記録される。このとき画像情報は熱転写装置にて、またプリント情報はプリンタにてカード表面に記録される。
【0003】
このような媒体処理装置において、熱転写装置やプリンタに向けてカードを搬送するときにカードにスキューが生じていると、熱転写装置やプリンタにカードが運ばれた際にカード表面への熱転写やプリントに歪みが生じる等、不具合が発生する恐れがある。
【0004】
そのため、搬送中のカードの姿勢を矯正するスキュー防止装置が設けられたカード処理装置がある。例えば、特許文献1には、カードの搬送方向を規制する一対の基準ガイドを設けて、印刷位置に搬送されたカードを幅寄せ機構により何れか一方の基準ガイドに幅寄せすることにより、カード表面に斜めに印刷されたり、規定の枠内からはみ出して印刷されるなどの印刷ミスを防止するカード取扱装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−271923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の装置を含めてこの種のカード処理装置では、カードはその搬送方向に沿って配置される複数の繰出ローラに繰り出されて移動するのであるが、このとき各繰出ローラは一対のローラによりカードを挟持して搬送するようになっている。
【0007】
したがって、搬送中のカードを幅寄せ機構により一方の基準ガイドに幅寄せすることでスキューを防止しようとしても、カードが繰出ローラにて挟持されている状態では、幅寄せ動作を行っても繰出ローラによるカードの挟持力が強ければ幅寄せによる矯正が不十分となる場合がある。そのため幅寄せ機構のカードへの押し圧力を強くすると、今度はカードが折れ曲がり損傷してしまう原因となる。
【0008】
また、繰出ローラのカードの挟持力を弱めてしまうと、滑りなどでカードの熱転写装置やプリンタへの搬送が不確実となりカード表面への処理タイミングが合わないという問題を生じる。
【0009】
以上の点より本発明は、搬送中のカードのスキューを矯正し正しい姿勢で確実に搬送可能な媒体(カード)処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、記録媒体の表面又は裏面に情報を印刷記録する記録装置を備えた媒体処理装置において、前記記録媒体を前記記録装置側に搬送する媒体搬送経路において、前記記録媒体を搬送方向の上流側にて挟持する第1ローラ対と、前記記録媒体を前記媒体搬送経路における下流側にて挟持して、印刷記録時に前記記録媒体を前記記録装置に向けて搬送する第2ローラ対と、前記第1ローラ対と前記第2ローラ対の間に配置され、前記媒体搬送経路における前記記録媒体のスキュー状態を補正するスキュー補正手段と、を備え、前記第1ローラ対による前記記録媒体を把持するニップ圧が、前記第2ローラ対による前記記録媒体を把持するニップ圧よりも小さく設定されることを特徴とする媒体処理装置を提供する。
【0011】
そして、前記スキュー補正手段は、前記搬送経路における搬送方向の一方の側に沿って設けられたガイド部材と、前記搬送経路における搬送方向の他方の側において前記記録媒体を前記ガイド部材側に押し当てる幅寄せ部材と、から構成されることを特徴とする。
【0012】
尚、前記第1ローラ対と前記第2ローラ対は、前記記録媒体が前記記録装置側への正方向搬送によって前記第2ローラ対によって挟持された後に、前記第2ローラ対の挟持から外れるまで前記媒体搬送経路の上流方向へ前記記録媒体を逆方向搬送し、次いで前記記録媒体を前記記録装置側に正方向再搬送することを特徴とする。
【0013】
ここで、前記記録媒体の前記逆方向搬送時の搬送速度は、前記正方向搬送時の搬送速度より遅く設定されることを特徴とする。
【0014】
また、前記記録媒体の前記逆方向搬送時の移動距離は、前記記録媒体の種類に応じて可変に設定されることを特徴とする。
【0015】
例えば、前記記録媒体の前記逆方向搬送時の移動距離は、前記記録媒体の搬送方向の辺の長さに基づいて可変に設定されることを特徴とする。
【0016】
また、前記記録媒体の前記逆方向搬送時の移動距離は、前記記録媒体の厚さ又は剛性に基づいて可変に設定されることを特徴とする。
【0017】
また、上記課題を解決するための媒体処理装置は、記録媒体の表面又は裏面に情報を印刷記録する記録装置を備えた媒体処理装置において、前記記録媒体を前記記録装置側に搬送する媒体搬送経路において、前記記録媒体を搬送方向の上流側にて挟持する第1ローラ対と、前記記録媒体を前記媒体搬送経路における下流側にて挟持して、印刷記録時に前記記録媒体を前記記録装置に向けて搬送する第2ローラ対と、前記第1ローラ対と前記第2ローラ対の間に配置され、前記媒体搬送経路における前記記録媒体のスキュー状態を補正するスキュー補正手段と、を備え、前記第1ローラ対による前記記録媒体を把持するニップ圧が、前記第2ローラ対による前記記録媒体を把持するニップ圧よりも小さく設定され、前記第1ローラ対で前記記録媒体が把持された状態で前記記録媒体を往復搬送して前記記録媒体のスキューを補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に依れば、記録媒体表面に情報を記録する記録装置を備えた媒体処理装置において、カード類を搬送する上流側に配置された第2ローラ対の前記記録媒体を把持するニップ圧が、下流側に配置された第1ローラ対の前記記録媒体を把持するニップ圧よりも大きく設定することにより、記録装置に搬送されるカードのスキューを矯正し正しい姿勢に整えるために、印刷の歪み等の不具合を防止し記録媒体表面への情報記録を正しく行うことが可能とているのである。
【0019】
また、本発明においては、カード類のスキュー補正の機会を一度ののみならず、複数回繰り返すことにより、どのようなカード類であってもスキュー補正を確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係わる媒体処理装置の一実施形態を示す説明図。
【図2】本発明に係わる媒体処理装置でスキューを矯正する部分を平面から示す説明図。
【図3】本発明に係わる媒体処理装置でスキューを矯正する部分を平面から示す説明図。
【図4】スキューを矯正する動作の流れを模式的に説明する図。
【図5】搬送方向の辺が長いカードのスキューを矯正するときの構成及び動作を模式的に説明する図。
【図6】媒体搬送経路の周辺の構成を示す図。
【図7】図6の状態から遮閉板とデカール機構のユニットフレームをそれぞれ開放した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。図1は本発明に係わる媒体処理装置1の全体構成の説明図である。図1の装置が処理する媒体は各種証明用のIDカード、商取引用のクレジットカードなどであって、カードに情報を電子的に記録する共に、カードの表面には熱転写にて画像情報を記録するカード処理装置である。よって、ハウジング2には、情報記録部Aと画像形成部Bと媒体収容部Cとが備えられる。情報記録部Aは、磁気記録部24と、非接触式IC記録部23と、接触式IC記録部27とで構成される。この情報記録部Aは装置仕様に応じて種々の記録部、例えばバーコード記録部などで構成する。
【0022】
上記媒体収容部Cは、複数枚のカードを収納するカセットで構成する。このカセットは例えば装置ハウジング2にホッパ状のカセットを設けるか、装置ハウジング2から分離したカードカセット3で構成する。このカードカセット3を装置ハウジング2のカセット装着エリアから取り外し可能となっている。
【0023】
尚、本実施形態ではカード供給方向は傾斜しているが、カードカセット3の着脱方向は斜めである必要はなく、装置ハウジング2に対して上方向に引き上げられる構成であればよい。
【0024】
[カード供給部]
装置ハウジング2のカセット装着エリアには媒体収容部Cが設けられ、複数枚のカードを収納するカードカセット3で構成されている。図1に示すカードカセット3は複数のカードを立位姿勢で整列して収納し、同図左端から右端にカードを繰り出す。そしてカードカセット3の先端には分離開口7が設けられ、ピックアップローラ19で最前列のカードから装置内に供給する。
【0025】
[情報記録部の構成]
上述のカードカセット3から送られたカードは搬入ローラ22にて反転ユニットFに送られる。反転ユニットFは装置フレームに旋回動可能に軸受け支持された回転フレーム80と、この回転フレーム80に支持された一対、或いは複数のローラ対で構成される。
【0026】
図示のものは距離を隔てて前後に配置された2つのローラ対20、21が回転フレーム80に回転自在に軸支持されている。そして、回転フレーム80は旋回モータ(パルスモータなど)で所定角度方向に旋回動し、これに取付けられているローラ対20、21は搬送モータで正逆転方向に回転するように構成されている。この駆動機構は図示しないが、1つのパルスモータで回転フレーム80の旋回動と、ローラ対20、21の回転をクラッチで切り換えるように構成しても、回転フレーム80の旋回動とローラ対20、21の回転を別駆動に構成してもよい。
【0027】
したがって、カードカセット3に準備されたカードはピックアップローラ19と分離ローラ(アイドルコロ)9で1枚ずつ分離され下流側の反転ユニットFに送られる。そして反転ユニットFはカードをローラ対20、21でユニット内に搬入し、ローラ対20、21でニップした状態で所定角度方向に姿勢偏向することとなる。
【0028】
上記反転ユニットFの旋回方向外周には、磁気記録部24と、非接触式IC記録部23及び接触式IC記録部27と、リジェクトスタッカ25が配置されている。そして、ローラ対20、21は、これらの情報記録部23、24,27の何れかに向けて搬入する媒体搬入経路65を形成する。尚、図示28はバーコードリーダであり、例えば後述する画像形成部Bで印刷したバーコードを読み取って正誤判別(エラー判別)するためのユニットである。
【0029】
反転ユニットFで所定の角度方向に姿勢偏向されたカードをローラ対20、21にて形成される媒体搬入経路65を通して、磁気記録部24或いは非接触式IC記録部23又は接触式IC記録部27に移送すると、カードには磁気的若しくは電気的にデータ入力することが可能となる。またこれらの情報記録部で記録ミスが生じた場合にはリジェクトスタッカ25に搬出する。
【0030】
図1においては、反転ユニットFは非接触式IC記録部23に向けて旋回しており、カードはローラ対20、21により記録部23に向けて媒体搬入経路65を形成している。非接触式IC記録部23は、ICリーダライタ基板67と、ICリーダライタアンテナ69と、媒体搬送パス68とから構成されており、ICリーダライタアンテナ69は、媒体搬入経路65を通して、媒体搬送パス68に導入されたカードに埋設されているICチップに、ICリーダライタ基板67から送られてくる情報を電波信号で送信する。これにより、ICチップには記録情報が記録されることになる。
【0031】
媒体搬送パス68と媒体搬送経路P1との間に、ICリーダライタアンテナ67からの電波信号を遮閉する遮閉板70を配置することで、媒体搬送経路P1にて搬送途中にある他のカードへの誤記録を防止している。遮閉板70は、シールド材(電波吸収体)で構成するもので、このシールド材としては、特定帯域の電波を吸収して遮断する材料を選択する。
【0032】
上記反転ユニットFの下流側には画像形成部Bが設けられ、この画像形成部Bにカードを移送する媒体搬送経路P1が設けられ、この経路P1に前述の反転ユニットFが配置されている。また、媒体搬送経路P1にはカードを搬送する搬送ローラ29、30(第1ローラ対、第2ローラ対)が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0033】
この搬送ローラ29、30は、正逆転切り換え可能に構成され、反転ユニットFから画像形成部Bにカードを搬送するのと同様に画像形成部Bからカードを反転ユニットFに搬送するようになっている。また、搬送ローラ29、30は、搬送されるカードをそれぞれ上下一対のローラにて挟持しながら繰り出すローラ対である。そして、搬送ローラ29(第1ローラ対)と搬送ローラ30(第2ローラ対)の間には、本発明に係るスキュー補正用のガイド部材100(図2参照)と、幅寄せ部材101とを設けて、画像形成部Bに向けて搬送されるカードのスキューを矯正している。これについての具体的な構成及び動作については後に明らかとなる。
【0034】
上記画像形成部Bの下流側には収容スタッカ60にカードを移送する媒体搬送経路P2が設けられている。媒体搬送経路P2にはカードを搬送する搬送ローラ(ベルトでも良い)37、38が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0035】
搬送ローラ37と搬送ローラ38の間にはデカール機構36が配置され、搬送ローラ37、38間に保持されたカード中央部を押し圧することによって、熱転写により生じたカールを矯正する。このためデカール機構36は図示しない昇降機構(カムなど)で図1に示す上下方向に位置移動可能に構成されている。
【0036】
搬送ローラ37はニップコロ71と、搬送ローラ38はニップコロ72とで、それぞれデカールされるカードをニップしているが、押し圧部74が昇降機構によって押し下げられると、受部73は押し圧部74を受け止めながらニップコロ71、72と共に下方に移動する。これにより、搬送ローラ37とニップコロ71、及び搬送ローラ38とニップコロ72によるカードのニップが解除されるために、整ったカール矯正を行うことが出来る。
【0037】
「画像形成部」
画像形成部Bは、記録カードの表裏面に顔写真、文字データなど画像を形成する。図示の装置は昇華型インクリボンで画像形成する場合を示している。
【0038】
画像形成部Bにはサーマルヘッド40とインクリボン41が配置されている。インクリボン41はカートリッジ42に収納され、このカートリッジ42に操出ロール43と巻取ロール44が収容され、巻取ロール44には図示しないワインドモータMr1が連結されている。
【0039】
そしてプラテンローラ45に対向する位置にサーマルヘッド40が配置されている。このサーマルヘッド40は、ヘッドコントロール用IC(図示せず)により熱制御される。そして、このヘッドコントロール用ICは、画像データに従ってサーマルヘッド40を加熱制御することにより、インクリボン41を後述する転写フィルム46に画像形成する。このためサーマルヘッド40の熱制御と同期して巻取ロール44が回転し、インクリボン41を所定速度で巻き取るように構成されている。図示39はサーマルヘッド40を冷やし装置内に発生した熱を外に出す為の冷却ファンである。
【0040】
上記転写フィルム46は巻取ロール47と操出ロール48に巻回され、この転写フィルム46は熱転写装置であるプラテンローラ31とヒートローラ33に転写画像を移送するように巻装されている。図示49は転写フィルム46の移送ローラであり、その周面にピンチローラ32aと32bが配置され、この移送ローラ49には図示しない駆動モータに連結されている。そして転写フィルム46は、インクリボン41と同一速度で図1反時計方向に移動する。
【0041】
また、ヒートローラ33には、媒体搬送経路P1に配置されているプラテンローラ31に転写フィルム46を介して圧接離間するように昇降機構(不図示)が設けられている。このヒートローラ33は加熱ローラで構成され、内部に配置されている加熱手段で転写フィルム46上の画像を記録カード表面に転写する。尚、図示Se1はインクリボン41の位置検出センサであり、図示Se2は転写フィルム46の有無検出センサである。
【0042】
媒体搬送経路P1においては、媒体搬送経路P1を搬送されるカードは搬送ローラ30にてプラテンローラ31まで搬送されて図6及び図7には図示していないヒートローラ33にて熱転写が行われる。
【0043】
図6及び図7は、上記した情報記録部A及び画像形成部Bにおける媒体搬送経路P1、P2に沿って配置される搬送ローラ29(第1ローラ対)と、スキュー補正用のガイド部材100と、幅寄せ部材101と、搬送ローラ30(第2ローラ対)と、プラテンローラ31、及びデカール機構33の具体的な構成を示している。尚、遮閉板70と上下のユニットが回動自在に分離されているデカール機構36の上側ユニットは上方に開放自在であり、図6が閉止した状態で図6が開放した状態を示し、開放したときに媒体搬送経路P1、P2が現れる。
【0044】
「収容部」
収容部Dは図1に示すように画像形成部Bから送られたカードを収容スタッカ60に収容するように構成されている。この収容スタッカ60は図示しない昇降機構61とレベルセンサで、最上カードを検出し、昇降機構61で図1下側に下降移動するように構成されている。
【0045】
上記した本発明に係わるカード処理装置1の全体構成の中で、画像形成部Bにおいてカードカセット3から搬送されるカードのスキューを媒体搬送経路P1で矯正するための具体的な構成と動作について以下に説明する。
【0046】
図2は媒体搬送経路P1を平面から示している。図2に示す通り、搬送ローラ29(第1ローラ対)と搬送ローラ30(第2ローラ対)の間の媒体搬送経路P1には、スキュー補正手段を設ける。スキュー補正手段は具体的には、ガイド部材100及び幅寄せ部材101から構成される。ガイド部材100は、媒体搬送経路P1のカードの搬送方向に沿って一側に設ける。また、幅寄せ部材101は、媒体搬送経路P1の他側にガイド部材100に対向して配置される。幅寄せ部材101は、カード側面をガイド部材100に媒体搬送経路P1を挟んだ側から押し当てるための押し当て部材102とバネなどからなり、押し当て部材102をガイド部材100側に付勢する付勢部材103とから構成される。このように、幅寄せ部材101は、付勢部材103の押し圧により媒体搬送経路P1を通過するカードをガイド部材100に向けて幅寄せするようになっている。
【0047】
搬送ローラ30のカードに対する挟持力(ニップ圧)は搬送ローラ29のそれと比べて大きい。具体的には、一対のローラ間の寸法やローラ径、ローラ間の付勢力などを調整することにより、カードを画像形成部Bに滑りなどを起こさずに確実に送り出すことができる挟持力が付与されている。
【0048】
一方、搬送ローラ30に比べてカードに対する挟持力(ニップ圧)が小さく設定されている搬送ローラ29は、幅寄せ部材101にてガイド部材100に幅寄せされたときにカードが容易に動き、それにより搬送姿勢が搬送方向と一致するように矯正される程度の挟持力に設定されている。
【0049】
したがって、図3に示す如くカードがスキューしている状態で媒体搬送経路P1に搬送されて来たとき、カードが搬送ローラ29のみで繰出されて搬送ローラ30には到達していない期間では、搬送ローラ29の挟持力が小さいために幅寄せ部材101にて矯正されながら搬送されることになる。そして、スキューが矯正されたカードが搬送ローラ30に到達してこのローラ30にて繰出されると大きな挟持力にて滑りなどを生じることがなく確実にプラテンローラ31とヒートローラ33へ導入される。
【0050】
このとき搬送ローラ29は搬送ローラ30と比べて弱い挟持力であるが、カードが搬送ローラ29のみにて繰り出されるときであっても、カードはガイド部材100にてガイドされているために、搬送方向から左右に揺れることがなく確実に搬送することができる。それでも、搬送ローラ29の挟持力が弱すぎると滑りや、また幅寄せ部材101による押し圧力などの影響もあって正確な搬送が困難となる。したがって、搬送ローラ29の挟持力はある程度確保しておく必要があるが、そうするとスキューの矯正が行われても、カードの位置が大きくずれた状態で搬送されてきた場合には、矯正が不十分に終わることも考えられる。
【0051】
そのため、更に、本発明は、カードC1の搬送を往復させることでスキューの矯正を繰り返すことにより、確実な矯正を図っている。すなわち、プラテンローラ31とヒートローラ33方向へカードC1が搬送(正方向に搬送)される際、図4に示すように、搬送ローラ29の単独による挟持と幅寄せ部材101の幅寄せ動作との共働によりカードの第1回目の矯正が行われ(図4の(A)部)、次にカードが搬送ローラ30に挟持されるまで達するのをセンサSAが検知すると(図4の(B)部)、搬送ローラ29、30が逆転してカードをプラテンローラ31とヒートローラ33から離れる方向に逆向きに搬送する(図4の(C)部)。この逆向きの搬送過程で搬送ローラ29による単独の挟持となったときに第2回目の矯正が行われるが、カードC1の逆搬送時には図4(A)の正方向の搬送時と比べて搬送速度を遅くするような制御を行えば幅寄せ部材101による幅寄せ期間が長くなり、一層の矯正の確実化が図れる。
【0052】
そして、逆向きに搬送されるカードC1をセンサSBが検知してから一定時間が経過すると(図4の(D)部)、再び搬送ローラ29、30は正転しカードC1をプラテンローラ31とヒートローラ33に向けて再度正方向に搬送する。これは、図4の(A)部の繰り返しでありこのモードでも矯正作用が行われる。そして、再び搬送ローラ30にて挟持されるとその強い挟持力にて、矯正後の正しい姿勢が保持されたままカードC1は確実に画像形成部Bにまで搬送される。
【0053】
図4の(D)部に示す逆搬送によるカードC1の移動距離は、当該カードの搬送方向に沿った辺の長さに基づく制御を行うよう設定されている。この場合に、搬送方向に沿った辺が長いカードC1の場合は当然、逆搬送による戻り量を大きくしないと逆搬送によるスキューの矯正が不完全となるために、カードC1の後端部が反転ユニットFの搬送ローラ29まで戻るような図5の(A)部で示すようなことが起きる。このような状態では、反転ユニットF内のローラ対20又はローラ対21にてもカードC1は保持されることになり、搬送ローラ29の単独による挟持と幅寄せ部材101の幅寄せ動作との共働によるカードの姿勢矯正が行うことができなくなる。
【0054】
そこで、反転ユニットFに切欠き部104を設け、スキューの姿勢矯正のためにカードC1を逆搬送するときは、カードC1の後端部が切欠き部104に進出するよう反転ユニットFを図5の(B)部に示す位置まで回転する制御を行う。こうすることにより、搬送方向に沿った辺の長いカードであっても搬送ローラ29による単独での挟持が可能となり、確実にスキューの矯正を行うことができる。
【0055】
このようにローラ対20、21がこのような反転ユニットF内にあれば反転ユニットFに切欠き部104を設けて、反転ユニットFを回転させれば良いが、反転ユニットFが存在しないカード処理装置や、反転ユニットFが存在しても反転ユニットFと搬送ローラ29との間にローラ対20、21に類するローラ対が存在する場合には、そのローラ対を媒体搬送経路P1から退避させるような移動機構を設ければ良い。
【0056】
また、図4(D)部に示す逆搬送によるカードC1の移動距離は、カードC1の厚さ、又は剛性によって決定するよう設定しても良い。すなわち、厚さの薄いカードや剛性の低いカードの場合、幅寄せ部材101の押し圧力が大きいとカードの破損や変形等を招く恐れがあるため、カードC1の厚さや剛性に合わせて幅寄せ部材101の押し圧力は制御されている。しかし、押し圧力を低く設定した場合に幅寄せ部材101によって確実にカードC1のスキューを矯正するためには、幅寄せ部材101の押し圧力が大きい場合よりも長く押し当て部材102をカードC1に押し当てる必要がある。そこで、カードC1の逆搬送距離を長くすることにより、薄いカード、剛性の低いカードでも確実にスキューの矯正を行うことが可能となる。勿論、逆搬送時のカードC1の搬送速度を遅くすることで同様の効果を得ても良い。
【0057】
このように本実施形態では、記録媒体であるカードの表面に画像情報を記録する熱転写装置にカードを繰り出し搬送する一組の搬送ローラ29(第1ローラ対)、30(第2ローラ対)の間に、スキュー補正手段を配置し、搬送ローラ30のカードのニップ圧を搬送ローラ29のニップ圧より大きく設定することで、カードが搬送ローラ29にて単独にて挟持されて繰り出されるとき、ガイド部材100及び幅寄せ部材101の作用にてカードのスキューを矯正している。
【0058】
スキュー補正手段は、媒体搬送経路P1における搬送方向の一方の側に沿って設けられたガイド部材100と、媒体搬送経路P1における搬送方向の他方の側においてカードをガイド部材100側に押し当てる幅寄せ部材101とから構成している。このように、搬送されるカードを媒体搬送経路P1の直交方向から幅寄せすることで、正確なスキュー補正を可能にしている。
【0059】
更に矯正の確実性を高めるために、画像形成部Bのプラテンローラ31に向けて正方向に搬送されたカードが搬送ローラ30に挟持されるまで到達したとき、一旦カードを逆搬送して再び搬送ローラ29にて単独して挟持される状態に戻して再度のスキュー補正手段による矯正を行う。このとき逆搬送速度を正搬送速度より遅くすると、再度の矯正の効果が一層高まる。更に、逆搬送時のカードの移動距離を、カードの搬送方向の辺の長さや、カードの厚さ又は剛性に基づいて可変にすることで、カードの変形や印刷不良を防ぎながら確実にスキューの矯正を行うことが可能となる。
【0060】
そして、矯正後のカードは搬送ローラ30の強いニップ圧にて滑りなどを生じることなく、確実に画像形成部Bのプラテンローラ31とヒートローラ33にまで搬送される。尚、実施形態においては、カード表面に情報を記録する記録装置をプラテンローラ31とヒートローラ33による熱転写装置で説明したが、プリント情報をカード表面に記録するプリンタでも本発明の有用性は同じであり、正しい姿勢に矯正されてカードがプリンタに搬送されるためにカード表面への印刷ミスが防止される。
【0061】
なお、本実施形態ではカードが正方向に供給されて(図4の(A)部)、搬送ローラ30がカードを狭持し(図4の(B)部)、その後搬送ローラ29、30が逆転してカードをプラテンローラ31とヒートローラ33から離れる方向に逆向きに搬送する(図4の(C)部)態様を示したが、カードを一度媒体搬送経路P2まで搬送してから逆搬送をして、搬送ローラ対29及び30に狭持(図4の(B)部)させてもよい。例えば、媒体搬送経路P2(画像形成部Bの下流側)に非接触ICリードライト部がある場合、カードが搬送ローラ29、30を一度通過して非接触ICリードライト処理をした後に逆搬送され、図4(B)の状態になり、その後図4(C)以降のスキュー補正動作を行ってもよい。
【0062】
その際、カードが供給されて媒体搬送経路P2まで搬送されてから、カードを逆搬送してカードが搬送ローラ対29、30に狭持されるまでのカード搬送速度よりも、図4(C)以降のスキュー補正動作時のカード搬送速度を遅くするように制御する。
【0063】
また、本実施形態ではカードの供給と画像形成時のカード搬送方向が同一の態様を示したが、カード供給方向が画像形成時のカード搬送方向と異なっていてもよい。その場合、カードが供給されてから画像形成部Bを通過して搬送ローラ対29、30にカードが狭持されるまでの搬送速度よりも、その後のスキュー補正時のカード搬送速度が遅くなるように制御する。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、プラスチックカード、厚紙カードなどの記録媒体の表面に画像情報やプリント情報を記録する媒体処理装置に係わり、装置内でスキューしたカードの姿勢を矯正することで、カード表面への正確な記録処理を行えるようにしたものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0065】
29 搬送ローラ(第1ローラ対)
30 搬送ローラ(第2ローラ対)
31 プラテンローラ(記録装置)
33 ヒートローラ(記録装置)
100 ガイド部材
101 幅寄せ部材
102 押し当て部材
103 付勢部材
P1 媒体搬送経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の表面又は裏面に情報を印刷記録する記録装置を備えた媒体処理装置において、
前記記録媒体を前記記録装置側に搬送する媒体搬送経路において、前記記録媒体を搬送方向の上流側にて挟持する第1ローラ対と、
前記記録媒体を前記媒体搬送経路における下流側にて挟持して、印刷記録時に前記記録媒体を前記記録装置に向けて搬送する第2ローラ対と、
前記第1ローラ対と前記第2ローラ対の間に配置され、前記媒体搬送経路における前記記録媒体のスキュー状態を補正するスキュー補正手段と、
を備え、
前記第1ローラ対による前記記録媒体を把持するニップ圧が、前記第2ローラ対による前記記録媒体を把持するニップ圧よりも小さく設定されることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記スキュー補正手段は、
前記搬送経路における搬送方向の一方の側に沿って設けられたガイド部材と、
前記搬送経路における搬送方向の他方の側において前記記録媒体を前記ガイド部材側に押し当てる幅寄せ部材と、
から構成されることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記第1ローラ対と前記第2ローラ対は、前記記録媒体が前記記録装置側への正方向搬送によって前記第2ローラ対によって挟持された後に、前記第2ローラ対の挟持から外れるまで前記媒体搬送経路の上流方向へ前記記録媒体を逆方向搬送し、次いで前記記録媒体を前記記録装置側に正方向再搬送することを特徴とする請求項1又は2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記記録媒体の前記逆方向搬送時の搬送速度は、前記正方向搬送時の搬送速度より遅く設定されることを特徴とする請求項3に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記記録媒体の前記逆方向搬送時の移動距離は、前記記録媒体の種類に応じて可変に設定されることを特徴とする請求項3又は4に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記記録媒体の前記逆方向搬送時の移動距離は、前記記録媒体の搬送方向の辺の長さに基づいて可変に設定されることを特徴とする請求項5に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記記録媒体の前記逆方向搬送時の移動距離は、前記記録媒体の厚さ又は剛性に基づいて可変に設定されることを特徴とする請求項5に記載の媒体処理装置。
【請求項8】
記録媒体の表面又は裏面に情報を印刷記録する記録装置を備えた媒体処理装置において、
前記記録媒体を前記記録装置側に搬送する媒体搬送経路において、前記記録媒体を搬送方向の上流側にて挟持する第1ローラ対と、
前記記録媒体を前記媒体搬送経路における下流側にて挟持して、印刷記録時に前記記録媒体を前記記録装置に向けて搬送する第2ローラ対と、
前記第1ローラ対と前記第2ローラ対の間に配置され、前記媒体搬送経路における前記記録媒体のスキュー状態を補正するスキュー補正手段と、
を備え、
前記第1ローラ対による前記記録媒体を把持するニップ圧が、前記第2ローラ対による前記記録媒体を把持するニップ圧よりも小さく設定され、前記第1ローラ対で前記記録媒体が把持された状態で前記記録媒体を往復搬送して前記記録媒体のスキューを補正することを特徴とする媒体処理装置。
【請求項9】
前記スキュー補正手段は、
前記搬送経路における搬送方向の一方の側に沿って設けられたガイド部材と、
前記搬送経路における搬送方向の他方の側において前記記録媒体を前記ガイド部材側に押し当てる幅寄せ部材と、
から構成されることを特徴とする請求項8に記載の媒体処理装置。
【請求項10】
前記記録媒体を前記第1ローラ対のみで往復搬送しているときの搬送速度は、前記記録媒体が前記媒体搬送経路に搬入されるときの搬送速度よりも遅く設定されることを特徴とする請求項8又は9に記載の媒体処理装置。
【請求項11】
前記記録媒体を前記第1ローラ対のみで往復搬送しているときの前記記録媒体の移動距離は、前記記録媒体の種類に応じて可変に設定されることを特徴とする請求項8乃至10の何れかの項に記載の媒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−193009(P2012−193009A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57589(P2011−57589)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】