説明

媒体処理装置

【課題】作業性を格段に高め得るようにする。
【解決手段】現金自動預払機1の一時保留部5は、可動ガイド41における基板51の後ろ側に回動軸55及び56を介して開閉板53及び54を接続した。これにより現金自動預払機1は、取引動作時には開閉板53及び54を閉塞することにより可動ガイド41全体により紙幣BLをドラム31の外周面に押し付けることができる一方、保守作業時には開閉板53及び54を開放することにより外部から内部空間30Aを直接目視できると共に容易にアクセスすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置に関し、例えば現金等の媒体を投入して所望の取引を行う現金自動預払機(ATM)等に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関等で使用される現金自動預払機等においては、顧客との取引内容に応じて、例えば顧客に紙幣や硬貨等の現金を入金させ、また顧客へ現金を出金するようになされている。
【0003】
現金自動預払機としては、例えば顧客との間で紙幣の授受を行う紙幣入出金口と、投入された紙幣の金種及び真偽を鑑別する鑑別部と、投入された紙幣を一時的に保留する一時保留部と、金種ごとに紙幣を格納する金種カセットとを有するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この現金自動預払機は、入金取引において、顧客が紙幣入出金口に紙幣を投入すると、投入された紙幣を鑑別部で鑑別し、正常紙幣と鑑別された紙幣を一時保留部で保留する一方、取引すべきでないと鑑別された紙幣を紙幣入出金口へ戻して顧客に返却する。続いて現金自動預払機は、顧客により入金金額が確定されると、一時保留部に保留した紙幣を鑑別部により金種を再鑑別し、鑑別された金種に応じて各金種カセットへ収納する。
【0005】
例えば図10に示すように、従来の一時保留部100は、上側テープ33及び下側テープ36の間に紙幣BLを短辺方向に沿って整列させるよう挟持し、可動ガイド101により紙幣BLの折れ曲がり等を防ぎながら円筒形状のドラム31に順次巻き付けることにより、多数の紙幣BLを収納するようになされている。
【0006】
また一時保留部100は、上側テープ33及び下側テープ36を図示しないリールにそれぞれ巻き取りながら、ドラム31を収納時とは反対方向に回転させることにより、収納している紙幣BLを放出するようにもなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−2921号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで一時保留部100では、紙幣BLの状態等により、ドラム31に巻き付ける際に紙幣BLの一部が破損する場合がある。破損した紙幣BLの破片(以下これを半券BXと呼ぶ)は、一時保留部筐体30とドラム31との隙間等に蓄積されることになる。
【0009】
このため一時保留部100は、作業者による保守等の際に、内部に蓄積された半券BXを除去する除去作業が行われる。この除去作業においては、可動ガイド101を外方(すなわち図の上方)へ開くことができれば、作業者が一時保留部100内の内部を容易に視認でき、また半券BXを容易に取り出すことができる。
【0010】
しかしながら一時保留部100では、その構造上、上側テープ33が可動ガイド101の上方を走行するため、可動軸45を回動中心とする可動ガイド101を上側テープ33と当接する位置(図中破線101Xで示す)までしか開くことができない。
【0011】
このため一時保留部100は、除去作業において作業者が一時保留部筐体30と可動ガイド101との僅かな隙間から内部を覗き込み半券BXを視認して取り出さなければならず、作業性が悪いという問題があった。
【0012】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、作業性を格段に高め得る媒体処理装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる課題を解決するため本発明の媒体処理装置においては、隔壁により囲まれた内部空間を形成すると共に、当該隔壁が省略された開放部を有する筐体と、矩形状の媒体の長辺よりも短いテープ幅でなるテープが巻き付けられたリールと、開放部を挟んでリールの反対側に設けられ、リールから引き出され開放部を横切ったテープを折り返す折り返し部と、円筒状でなり筐体に対し内部空間内で回転可能に設けられると共に、筐体の外部から短辺方向に沿って供給される媒体を、折り返し部により折り返されたテープと重ねて巻き付けるドラムと、リール及び折り返し部の間を渡るテープよりもドラム側に設けられ、内部空間と外部との間を閉塞すると共にテープ及び媒体をドラムの周側面に押し付ける巻付ガイドと、巻付ガイドの一部分でなり、内部空間と外部との間を閉塞し又は開放する開閉部とを設けるようにした。
【0014】
これにより本発明は、巻付ガイドの開閉板を閉塞したときには当該巻付ガイドにより媒体をドラムに押し付けながら適切に巻き付けることができる一方、巻付ガイドの開閉板を開放したときには筐体内に指先や工具等を容易に挿入することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、巻付ガイドの開閉板を閉塞したときには当該巻付ガイドにより媒体をドラムに押し付けながら適切に巻き付けることができる一方、巻付ガイドの開閉板を開放したときには筐体内に指先や工具等を容易に挿入することができる。かくして本発明は、作業性を格段に高め得る媒体処理装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】現金自動預払機の外観構成を示す略線的斜視図である。
【図2】現金自動預払機の内部構成を示す略線図である。
【図3】一時保留部の外観構成を示す略線的斜視図である。
【図4】一時保留部の内部構成(1)を示す略線的斜視図である。
【図5】一時保留部の内部構成(2)を示す略線図である。
【図6】可動ガイドの構成を示す略線図である。
【図7】他の実施の形態による可動ガイドの構成(1)を示す略線図である。
【図8】他の実施の形態による可動ガイドの構成(2)を示す略線的斜視図である。
【図9】他の実施の形態による可動ガイドの構成(3)を示す略線図である。
【図10】従来の一時保留部の内部構成を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
[1.現金自動預払機の全体構成]
図1に外観を示すように、現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、顧客との間で現金に関する取引を行うようになされている。
【0019】
筐体2は、その前面2A側に顧客が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所、すなわち前面2Aの上部から上面に渡る箇所に、接客部3が設けられている。
【0020】
接客部3は、顧客との間で現金や通帳等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになされており、硬貨入出金口11、紙幣入出金口12、通帳挿入口13、カード挿入口14及び表示操作部15が設けられている。
【0021】
硬貨入出金口11及び紙幣入出金口12は、顧客が入金する硬貨及び紙幣がそれぞれ投入されると共に、顧客へ出金する硬貨及び紙幣がそれぞれ排出される部分である。また硬貨入出金口11及び紙幣入出金口12は、それぞれに設けられたシャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになされている。因みに紙幣は、例えば長方形の紙で構成されており、市場で流通する過程において折り曲げられて扱われる場合もある。
【0022】
通帳挿入口13は、取引で使用される通帳が挿入され、取引が終了すると通帳が排出される部分である。この通帳挿入口13の奥部には、取引内容等を通帳に記録する通帳処理部(図示せず)が設けられている。
【0023】
カード挿入口14は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード挿入口14の奥部には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。
【0024】
表示操作部15は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額などを入力するタッチパネルとが一体化されている。
【0025】
図2は、図1の現金自動預払機1を矢印A方向から見た側面図であり、当該現金自動預払機1の内部構成のうち主に紙幣の処理に関する部分を示している。同図に示したように、現金自動預払機1の内部には、上側に接客部3、紙幣の金種や真偽を判定する鑑別部4及び入金紙幣を一時的に保留する一時保留部5等が設けられており、下側に金種別のカセットでなる紙幣貯蔵部6等が設けられている。図中太線で示す搬送路7は、各部の間で紙幣を短辺方向に沿って搬送する。
【0026】
この現金自動預払機1は、制御部8により全体を統括制御するようになされている。制御部8は、例えば顧客が紙幣を入金する入金取引を行う場合、表示操作部15を介して所定の操作入力を受け付けた後、紙幣入出金口12のシャッタを開いて紙幣を投入させる。
【0027】
続いて制御部8は、投入された紙幣を搬送路7を介して鑑別部4へ搬送して鑑別させ、正常紙幣と鑑別された紙幣を一時保留部5へ搬送して一時的に保留する一方、取引すべきでないと鑑別されたリジェクト紙幣を紙幣入出金口12へ搬送して顧客に返却する。
【0028】
その後制御部8は、表示操作部15を介して顧客に入金金額を確定させ、一時保留部5に保留している紙幣を再び鑑別部4へ搬送して金種を再鑑別させて、鑑別された金種に応じて紙幣貯蔵部6の各カセットへ搬送し収納させるようになされている。
【0029】
ところで筐体2は、前面2A側やその反対側(すなわち背面側)等の一部の側面が開閉可能な扉により構成されている。すなわち筐体2は、顧客との間で現金に関する取引を行う取引動作時には、図1及び図2に示したように各扉を閉塞することにより、紙幣貯蔵部6等に格納している紙幣を保護する。一方筐体2は、作業者等が保守作業を行う保守作業時には、必要に応じて各扉を開放することにより、内部の各部に対する作業を容易に行わせ得る。
【0030】
また現金自動預払機1は、この保守作業時に、背面の扉を開放した上で所定のスライド機構を介して一時保留部5を背面方向へ引き出す(図中破線で示す)と共に、その上面を背面方向へ向けるよう傾けることもできるようになされている。
【0031】
[2.一時保留部の構成]
図3に外観を示すように、一時保留部5は、一時保留部筐体30に各部品が取り付けられた構成となっている。
【0032】
一時保留部筐体30は、現金自動預払機1内に設置された際に前面2A(図1)側となる前側及びその反対の後側、当該前面2A側に対峙した顧客から見て左及び右となる左側及び右側、並びに下側といった外周の大部分を隔壁とすることにより、当該隔壁に囲まれた内部空間30Aを形成している。その一方で一時保留部筐体30は、外周のうち上側の隔壁が省略されてなる開放部30Bを介して外部から当該内部空間30Aへアクセスできるようになされている。
【0033】
また一時保留部筐体30の前側面には、内部空間30A内への紙幣BLの出入り口となる紙幣入出孔30Cが穿設されている。
【0034】
因みに一時保留部筐体30の左側及び右側の隔壁内には、図示しないモータから後述するドラムやローラ等へ駆動力を伝達するためのギヤ等が内蔵されている。また一時保留部筐体30の左側面には、保守作業の際にドラムやローラ等を手動で回転させるための操作ノブ30Dが設けられている。
【0035】
図4は、一時保留部5のうち一時保留部筐体30を省略し、当該一時保留部筐体30に取り付けられた各部品を表した斜視図である。また図5は、図4の一時保留部5を左側から見た側面図である。因みに図中の一点鎖線K1は、一時保留部筐体30の内側面の一部を表している。
【0036】
図4及び図5に示すように、ドラム31は、円筒状に構成されており、一時保留部筐体30の内部空間30A(図3)内において、左右方向に沿った回転軸31Xを中心に巻込方向R1又は巻戻方向R2へ回転し得るように取り付けられている。
【0037】
上側リール32は、糸巻き状に構成されており、ドラム31の上側、すなわち開放部30B(図3)側における後方寄りの箇所に、ドラム31と平行な回転軸32Xを中心に回転するように設けられている。この上側リール32には、テープとしての上側テープ33が巻き付けられている。
【0038】
また上側リール32から見てドラム31よりも前側、すなわち紙幣入出孔30C(図3)側には、ドラム31と平行な回転軸34Xを中心に回転する上側案内ローラ34が設けられている。
【0039】
上側テープ33は、薄いフィルム状の樹脂でなり、そのテープ幅が紙幣BL(図3)の長辺よりも十分に短くなっている。また上側テープ33は、長手方向に十分な長さを有している。
【0040】
上側リール32から引き出された上側テープ33は、開放部30B(図3)を横切るように前方向へ渡された後、上側案内ローラ34を介して引き回されることにより後方向へ折り返される。さらに上側テープ33は、後述する可動部40に設けられた所定のローラによりドラム31に押し当てられ、その先端部が当該ドラム31に固定されている。
【0041】
因みに一時保留部5は、上側リール32をドラム31よりも後方寄りの位置に設けた上で、当該上側リール32と上側案内ローラ34との間で上側テープ33を走行させることにより、上側リール32と現金自動預払機1内の他の機構等との干渉を避けると共に、上側テープ33に所定の張力を加えるようになされている。
【0042】
下側リール35は、上側リール32と同様の糸巻き状に構成されており、当該上側リール32の下方、すなわちドラム31の下側における後方寄りの箇所に、ドラム31と平行な回転軸を中心に回転し得るように設けられている。この下側リール35には、上側テープ33と同様に構成された第2テープとしての下側テープ36が巻き付けられている。
【0043】
また下側リール35の前方には、ドラム31の回転軸と平行な回転軸37Xを中心に回転する下側ローラ37(図5)が設けられている。
【0044】
下側リール35から引き出された下側テープ36は、前方向へ渡された後、下側ローラ37を介して引き回されることにより上方向へ向かう。さらに下側テープ36は、後述する可動部40に設けられた所定のローラを介して後方向へ向かうと共にドラム31に押し当てられ、その先端部が当該ドラム31に固定されている。
【0045】
因みに一時保留部5は、下側リール35についても、上側リール32の場合と同様にドラム31よりも後方寄りの位置に設けたことにより、現金自動預払機1内の他の機構等との干渉を避けると共に下側テープ36に所定の張力を加えるようになされている。
【0046】
ここで下側テープ36は、その先端がドラム31の周側面における左右方向のほぼ中央に固定されている。また上側テープ33は、その先端がドラム31の外周面において当該下側テープ36の外周側に重なるように固定されている。
【0047】
すなわち一時保留部5は、ドラム31を巻込方向R1へ回転させると、その周側面に下側テープ36及び上側テープ33を重ねるようにして巻き付けていく。このとき一時保留部5は、下側テープ36及び上側テープ33の間に紙幣BLを挟んでいれば、当該下側テープ36及び上側テープ33と共に当該紙幣BLをドラム31の周側面に巻き付けることができる。因みにこのとき紙幣BLは、長辺方向の中央部分のみが上側テープ33によりドラム31の周側面に押し付けられた状態となる。
【0048】
一方、可動部40は、上側の可動ガイド41と下側の対向部42とが連結部43を介して一体に連結された構成となっており、可動ガイド41と対向部42との隙間及び当該可動ガイド41の下側面に渡って搬送路44を形成している。
【0049】
可動ガイド41は、全体として前後部分が下方向へ垂れ下がるよう湾曲した板状に構成されており、後述するように複数の部材の組み合わせにより構成されている。
【0050】
搬送路44では、所定のローラの作用により、上側に上側テープ33が露出するように走行すると共に、下側に下側テープ36が露出するように走行する。
【0051】
これにより可動部40は、一時保留部筐体30の紙幣入出孔30Cを介して挿入された紙幣BLを搬送路44に沿って搬送し、上側テープ33及び下側テープ36により当該紙幣BLを上下から挟んだ状態で、ドラム31の周側面近傍まで到達させるようになされている。
【0052】
また可動部40は、一時保留部筐体30(図3)に対し、ドラム31の上方から内部空間30Aを覆うような位置、すなわち開放部30Bを閉塞するような位置に、可動軸45を介して取り付けられている。
【0053】
可動軸45は、左右方向に沿った回動軸、すなわちドラム31の回転軸31Xと平行な回動軸を中心に可動部40全体を回動させ得るようになされている。このため可動部40は、一時保留部筐体30に対し、可動軸45を中心に開方向W1又は閉方向W2へ自在に開閉回動動作することができる。因みに可動部40は、開方向W1への回動範囲を規制することにより可動ガイド41と上側テープ33との接触を防止するようになされている。
【0054】
可動部40は、実際には重力により閉方向W2へ向かう力が作用し、可動ガイド41の下側における当接部41Tをドラム31の周側面に当接させる。このため可動ガイド41は、ドラム31が回転する際に、長辺方向に折れ曲がる恐れを有しながらも中央部分のみが上側テープ33及び下側テープ36により挟持された紙幣BLを、長辺方向に伸ばしながら当該ドラム31の周側面に押し付けるようガイドすることができる。
【0055】
ここでドラム31は、多数の紙幣BLが順次巻き付けられるに連れて、見かけ上の外径が増加していく。これに応じて可動部40は、可動ガイド41がドラム31により上方向へ徐々に持ち上げられることになり、可動軸45を中心に開方向W1へ回動することになる。
【0056】
この結果、可動部40は、可動ガイド41における下側の当接部41Tを常にドラム31に当接させることができ、紙幣BLの搬送方向及び搬送先を当該ドラム31の外周面に追従させることができる。
【0057】
因みに一時保留部5では、ドラム31の外径、ドラム31と一時保留部筐体30との隙間、上側テープ33及び下側テープ36の長さ等がそれぞれ最適化されており、当該ドラム31に約200枚の紙幣BLを順次巻き付けることができる。また可動部40は、ドラム31の外径の変化に応じて、可動ガイド41における当接部41Tの範囲内で当該ドラム31と当接するようになされている。
【0058】
ところで可動ガイド41は、図6に平面図(すなわち上側から見た図)を示すように、前側の部分でなる基板51と、後ろ側の部分のうち上側テープ33の真下の部分でなる中央部52と、その右側及び左側でなる開閉板53及び54とに分割されている。
【0059】
基板51は、図4及び図5に示したように、全体として板状に構成されると共に、前側が下方へ湾曲している。このため基板51は、その下面に沿って紙幣BLを前方から後方へ曲面を描くように搬送する。また基板51の中央近傍には、上側テープ33を上面側から下面側へ貫通させるための貫通孔が設けられている。
【0060】
中央部52、開閉板53及び54は、いずれも前後方向に湾曲した薄板状に構成されており、前後方向に関し、可動ガイド41の約1/3の長さとなっている。
【0061】
中央部52は、基板51の後ろ側に固定されており、上方から見たときに当該基板51と一体に「T」字(図6)を描いている。
【0062】
開閉板53及び54は、左右方向に沿った回動軸55及び56を介して基板51に取り付けられている。回動軸55及び56は、基板51に対し開閉板53及び54を角度θ(図5)の範囲で開方向V1又は閉方向V2へ回動させるようになされている。因みに角度θは、例えば90[°]以上の大きな角度となっている。
【0063】
さらに回動軸55及び56は、内部にばね(図示せず)が組み込まれており、開閉板53及び54を閉方向V2へ付勢するようになされている。
【0064】
このため開閉板53及び54は、外力が加わらない場合、図5に実線で示したように、内部空間30Aの上方を閉塞した状態(以下これを閉塞状態と呼ぶ)に保持し、ドラム31を覆う。
【0065】
一方、開閉板53及び54は、保守作業を行う作業者により開方向V1へ外力が加えられる等した場合、図5に破線で示したように当該開方向V1へ回動し、内部空間30Aの上方を一部開放した状態(以下これを開放状態と呼ぶ)となる。これにより作業者は、外部から内部空間30A内へアクセスすること、すなわち見やすい状態で視認すると共に指先や工具等を容易に挿入して所定の作業を行うことができる。
【0066】
また開閉板53及び54は、可動ガイド41においてドラム31との当接部41Tにかからないような位置に、すなわち当接部41Tよりも後ろ側に設けられている。
【0067】
このため、ドラム31との当接により可動ガイド41に加えられる上方向(すなわち開方向W1)への外力は、開閉板53及び54には加えられず、基板51のみに加えられるようになされている。
【0068】
このように可動ガイド41は、基板51の後ろ側に回動軸55及び56を介して接続された開閉板53及び54を、上側テープ33と干渉させることなく開放し、又は閉塞することができる。
【0069】
[3.動作及び効果]
以上の構成において、現金自動預払機1の一時保留部5は、顧客との間で現金に関する取引を行う取引動作時には、開閉板53及び54を閉塞状態とした可動ガイド41をドラム31の外周面に当接させる。
【0070】
可動ガイド41は、一時保留部5に紙幣BLを一時的に保留すべくドラム31に紙幣BLを巻き付ける際、基板51、中央部52、開閉板53及び54を一体として、当該紙幣BLをドラム31の周側面に沿った形状(すなわち曲面状)に合わせながら押し付ける。
【0071】
このため一時保留部5は、紙幣BLが折り癖等により長辺方向に容易に折れ曲がるようになっていたとしても、可動ガイド41により当該紙幣BLを長辺方向に伸ばすよう押し付けながら、ドラム31に巻き付けることができる。
【0072】
一方、一時保留部5は、作業者等が保守を行う保守作業時には、当該作業者により開閉板53及び54を開方向V1(図5)へ持ち上げるよう回動させて開放状態とする。これにより一時保留部5は、開放部30Bを塞ぐ可動ガイド41のうち開閉板53及び54が開いている部分を通じて、外部から内部空間30Aを見やすい状態で直接目視することができると共に、指先や工具等を容易に挿入させることもできる。
【0073】
この結果、一時保留部5は、一時保留部筐体30の内壁面K1(図5)とドラム31との隙間に紙幣BLの破片(半券)等が蓄積されている場合に、作業者の指先や工具等により容易に取り出させることができるので、保守作業時における作業性を従来よりも格段に高めることができ、保守作業を効率良く短時間で完了させることができる。
【0074】
また一時保留部5は、ドラム31の外径の変化に追従するべく可動ガイド41を回動させるための可動軸45により当該可動ガイド41全体を開閉するのではなく、当該可動ガイド41よりも前後方向に短い開閉板53及び54を開閉させるようにした。
【0075】
これにより一時保留部5は、開閉板53及び54の開閉に必要な空間を必要最小限に抑えることができるので、開閉時における周囲の各部品との干渉を回避して容易且つ確実に開放又は閉塞することができる。
【0076】
特に開閉板53及び54は、可動ガイド41のうち上側テープ33の真下に位置する中央部52を避けるよう設けられている。これにより開閉板53及び54は、解放時に先端側(回動軸55及び56と反対側)を上側テープ33に干渉させることなく、当該上側テープ33よりも高く持ち上げるような角度θ(図5)まで開くことができる。
【0077】
この結果、一時保留部5は、薄い樹脂材料でなる上側テープ33を可動ガイド41との接触による切断から保護しながら、外部と内部空間30Aとの通路を十分に広げることができる。
【0078】
また一時保留部5は、可動ガイド41のうちドラム31との当接部41Tよりも後ろ側に開閉板53及び54を設けたことにより、当該ドラム31から受ける上方向への反力を基板51により受けるため、この反力を当該開閉板53及び54に直接伝えて不用意に開放させることがない。
【0079】
さらに開閉板53及び54は、回動軸55及び56に内蔵されたばねにより閉塞状態を維持することができる。また開閉板53及び54は、取引動作中にドラム31に巻き付けられた紙幣BLが皺や折り曲げ等により当該ドラム31の外径を膨ませて当接した場合等、一時的に外力が加わって開放されたとしても、ばねの復元力の作用により再び閉塞状態に戻ることができる。
【0080】
これにより一時保留部5は、紙幣BLをドラム31の外周面に確実に押し付けることができると共に、内部空間30Aに蓄積されている半券を現金自動預払機1内に散乱させてしまう恐れもない。
【0081】
また一時保留部5では、一時保留部筐体30の隔壁ではなく、可動ガイド41に開閉板53及び54を設けた。これにより一時保留部5は、隔壁内の各種ギア機構や強度の維持に必要な支柱等の構造物との干渉を問題とすることなく、十分に大きい開口面積を確保することができる。
【0082】
以上の構成によれば、現金自動預払機1の一時保留部5は、可動ガイド41における基板51の後ろ側に回動軸55及び56を介して開閉板53及び54を接続した。これにより現金自動預払機1は、取引動作時には開閉板53及び54を閉塞することにより可動ガイド41全体により紙幣BLをドラム31の外周面に押し付けることができる一方、保守作業時には開閉板53及び54を開放することにより外部から内部空間30Aを直接目視できると共に容易にアクセスすることができる。かくして現金自動預払機1は、保守作業時における作業性を従来よりも格段に高めることができる。
【0083】
[4.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、可動ガイド41において開閉板53及び54の前側、すなわち基板51との間に回動軸55及び56を設けるようにした場合について述べた。
【0084】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば図7に示すように開閉板53及び54の後ろ側に回動軸55及び56を設けるようにしても良く、或いは図8及び図9に示すように開閉板53及び54と中央部52との間に前後方向に沿った回動軸55及び56を設けるようにしても良い。さらにこの場合、開閉板53及び54のそれぞれにおいて回動軸55及び56を設ける箇所を互いに相違させても良い。
【0085】
また上述した実施の形態においては、可動ガイド41において回動軸55及び56を中心に開閉板53及び54を回動させることにより、閉塞状態から開放状態とするようにした場合について述べた。
【0086】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば周知のスライド機構や回転機構を用いて開閉板53及び54を基板51に重ねるようほぼ水平に移動又は回転させることにより、閉塞状態から開放状態とするようにしても良い。
【0087】
さらに上述した実施の形態においては、前後方向に関し、開閉板53及び54の長さを可動ガイド41の長さの約1/3とするようにした場合について述べた。
【0088】
本発明はこれに限らず、前後方向に関する開閉板53及び54の長さを、可動ガイド41の長さの約1/2や1/4等のように任意の長さとしても良い。また前後方向に限らず、左右方向等の他の方向に関しても、開閉板53及び54の長さを可動ガイド41よりも短くするようにしても良い。これにより、開口部の面積は狭くなるものの、開閉板53及び54と他の部品等とが干渉する危険性を低減できると共に、当該開閉板53及び54の開閉の操作を容易化することができる。
【0089】
さらに上述した実施の形態においては、可動ガイド41において回動軸55及び56にばねを内蔵することにより、開閉板53及び54を閉方向V2(図5)へ付勢させ、外力が加わらないときには閉塞状態を維持するようにした場合について述べた。
【0090】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば中央部52の側面に微小な突起を設け、開閉板53及び54を当該突起と係合させることにより閉塞状態を維持するようにしても良い。さらには、重力の作用のみにより開閉板53及び54の閉塞状態を維持するようにしても良い。
【0091】
さらに上述した実施の形態においては、可動ガイド41において開閉板53及び54の双方を開閉可能とするようにした場合について述べた。
【0092】
しかしながら本発明はこれに限らず、開閉板53及び54のいずれか一方のみを開閉可能とし、他方を基板51と一体化することにより開閉しないようにしても良い。
【0093】
さらに上述した実施の形態においては、可動ガイド41において当接部41Tよりも後方に回動軸55及び56を設けるようにした場合について述べた。
【0094】
しかしながら本発明はこれに限らず、当接部41Tよりも前方に回動軸55及び56を設けるようにしも良い。この場合、回動軸55及び56に内蔵されているばねの付勢力を強めるなどして、開閉板53及び54がドラム31から受ける力により不用意に開放されないようにすれば良い。
【0095】
さらに上述した実施の形態においては、可動ガイド41において開閉板53及び54が閉塞状態となるときに、図5に実線で示したように、基板51に対する開閉板53及び54の回動角度を固定するようにした場合について述べた。
【0096】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば基板51と中央部52との間に左右方向に沿った回動軸を設け、基板51に対し中央部52を回動できるようにした上で、紙幣BLを巻き付けたドラム31の外径の変化に応じて当該中央部52の先端側(後ろ側)を当該ドラム31の外周に追従して回動させるようにし、当該中央部52と連動して開閉板53及び54の回動角度も変化させるようにしても良い。
【0097】
さらに上述した実施の形態においては、一時保留部筐体30の上側に開放部30Bを設けると共に可動部40をドラム31よりも上側に配置し、重力の作用により可動部40の可動ガイド41をドラム31の外周面に押し付けるようにした場合について述べた。
【0098】
しかしながら本発明はこれに限らず、一時保留部筐体30の前側、後ろ側や下側に開放部30Bを設け、当該開放部30Bを覆うように可動部40をドラム31の前側、後ろ側や下側に配置し、ばね等の付勢手段の作用により可動部40の可動ガイド41をドラム31の外周面に押し付けるようにしても良い。
【0099】
さらに上述した実施の形態においては、一時保留部5に上側テープ33及び下側テープ36を一組のみ設け、解放時に当該上側テープ33と干渉しない箇所に開閉板53及び54を設けるようにした場合について述べた。
【0100】
しかしながら本発明はこれに限らず、一時保留部5に上側テープ33及び下側テープ36を二組以上設け、解放時にいずれの上側テープ33とも干渉しない箇所に開閉板53及び54を設けるようにしても良い。またこの場合、3箇所以上に開閉部を設けるようにしても良い。
【0101】
さらに上述した実施の形態においては、本発明を現金自動預払機1の一時保留部5に適用するようにした場合について述べた。
【0102】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば紙幣の鑑別や計数のみを行う装置等、紙幣BLを上側テープ33及び下側テープ36の間に挟みドラム31に巻き付けて一時的に保留する種々の装置に適用するようにしても良い。
【0103】
さらに上述した実施の形態においては、一時保留部5により上側テープ33及び下側テープ36の間に紙幣BLを挟持した状態で、当該紙幣BLをドラム31の外周面に巻き付けるようにした場合について述べた。
【0104】
本発明はこれに限らず、例えば一時保留部5から下側テープ36及びこれに関連する機構を省略し、上側テープ33の紙幣BLと当接する面に粘着性を持たせ、この粘着性により紙幣BLを上側テープ33に貼り付けて仮止めした状態で、上側テープ33を紙幣BLの外周側に重ねるようにしてドラム31の外周面に巻き付けるようにしても良い。
【0105】
さらに上述した実施の形態においては、現金を取引する現金自動預払機1の一時保留部5において、媒体としての紙幣BLを上側テープ33及び下側テープ36の間に挟みドラム31に巻き付けて保留するようにした場合について述べた。
【0106】
しかしながら本発明はこれに限らず、例えば商品券や金券、入場券等のような薄い紙状の媒体をドラム31に保留する種々の装置に適用するようにしても良い。この場合、媒体の大きさや形状に応じて上側テープ33及び下側テープ36のテープ幅や数等を適宜定めれば良い。
【0107】
さらに上述した実施の形態においては、筐体としての一時保留部筐体30と、リールとしての上側リール32と、折り返し部としての上側案内ローラ34と、ドラムとしてのドラム31と、巻付ガイドとしての可動ガイド41と、開閉部としての開閉板53及び54とによって媒体処理装置としての一時保留部5を構成する場合について述べた。
【0108】
しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる筐体と、リールと、折り返し部と、ドラムと、巻付ガイドと、開閉部とによって媒体処理装置を構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、投入された紙幣等の紙状の媒体を2本のテープの間に挟持しドラムに巻き付けて一時的に保留する種々の装置でも利用できる。
【符号の説明】
【0110】
1……現金自動預払機、2……筐体、3……接客部、5……一時保留部、12……紙幣入出金口、30……一時保留部筐体、30A……内部空間、30B……開放部、30C……紙幣入出孔、31……ドラム、32……上側リール、33……上側テープ、34……上側案内ローラ、35……下側リール、36……下側テープ、40……可動部、41……可動ガイド、41T……当接部、45……可動軸、51……基板、52……中央部、53、54……開閉板、55、56……回動軸、BL……紙幣。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁により囲まれた内部空間を形成すると共に、当該隔壁が省略された開放部を有する筐体と、
矩形状の媒体の長辺よりも短いテープ幅でなるテープが巻き付けられたリールと、
上記開放部を挟んで上記リールの反対側に設けられ、上記リールから引き出され上記開放部を横切った上記テープを折り返す折り返し部と、
円筒状でなり上記筐体に対し上記内部空間内で回転可能に設けられると共に、上記筐体の外部から短辺方向に沿って供給される上記媒体を、上記折り返し部により折り返された上記テープと重ねて巻き付けるドラムと、
上記リール及び上記折り返し部の間を渡る上記テープよりも上記ドラム側に設けられ、上記内部空間と外部との間を閉塞すると共に上記テープ及び上記媒体を上記ドラムの周側面に押し付ける巻付ガイドと、
上記巻付ガイドの一部分でなり、上記内部空間と外部との間を閉塞し又は開放する開閉部と
を具えることを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
上記開閉部は、
上記巻付ガイドのうち、上記内部空間と外部との間を解放した時に上記リール及び上記折り返し部の間を渡る上記テープと干渉しない箇所に設けられた
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
上記巻付ガイドは、
上記ドラムと対向する面の一部により当該ドラムと当接し、
上記開閉部は、
上記巻付ガイドのうち上記ドラムと当接しない箇所に設けられた
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
上記開閉部は、
所定方向に関する辺の長さが上記巻付ガイドよりも短い
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
上記内部空間と外部との間を閉塞する閉塞位置へ上記開閉部を付勢する付勢部
をさらに具えることを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
上記開閉部は、
上記巻付ガイドに対し上記ドラムの回転軸とほぼ平行な開閉部回動軸を中心に回動する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
上記巻付ガイドは、
上記媒体が外部から供給される供給口の近傍に、上記ドラムの回転軸とほぼ平行な巻付ガイド回動軸を有し、
上記開閉部は、
上記巻付ガイド回動軸側に上記開閉部回動軸が設けられた
ことを特徴とする請求項6に記載の媒体処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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