説明

媒体分離繰出し機構

【課題】繰出し以降の搬送路などでジャムやエラーの原因を軽減する。
【解決手段】媒体が内側に集積される側面ガイド10と、側面ガイド内に集積される媒体を繰出すピックアップローラ2a〜2dと、ピックアップローラより下流側に配され、外周面に設けられる凹凸がオーバーラップ点31を形成し、ピックアップローラによって繰出された媒体を分離して繰出す分離フィードローラ4a、4b及び分離ゲートローラ5a、5bからなるゲート部と、ゲート部で分離された媒体を接続点14aで挟持して繰出す繰出しフィードローラ3a〜3C及び繰出しローラ6a〜6cとを有し、ゲート部に媒体が到達する際に、媒体のスキュー角度をスキューが増大するとされる限界角度θmax未満にすることにより、オーバーラップ点に媒体が到達することにより発生する該オーバーラップ点で媒体がスキュー角度を増大させる方向に回転することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紙幣等の紙葉類媒体をローラにより1枚ずつ分離して繰出す媒体分離繰出し機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばATMなどで集積された媒体(紙幣)を1枚ずつ分離して繰出すようになされた媒体分離繰出し機構が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、図1〜図3に示すように媒体分離繰出し機構1は、ピックアップローラ2(2a〜2d)、繰出しフィードローラ3(3a〜3c)、分離フィードローラ4(4a、4b)、分離ゲートローラ5(5a、5b)、繰出しローラ6(6a〜6c)、シャフト7、8、9及び側面ガイド10を含む構成とされる。
【0004】
ピックアップローラ2は、図1においてハッチングで示され側面ガイド10の内側で媒体Pが集積される領域(以下、これを集積エリアとも呼ぶ)11の下方で、媒体Pが繰出される方向(以下、これを繰出方向とも呼ぶ)とは直交する方向(以下これを幅方向とも呼ぶ)に並ぶように配されシャフト7に固定される。シャフト7は、図示しない軸受及び固定フレームによって回転可能に支持される。
【0005】
ピックアップローラ2は、外周面の一部にゴムが設けられ、シャフト7を介して図示しないモータなどの駆動部により駆動されて正逆双方向(図中の矢印21a及び21b)に回転する。
【0006】
繰出しフィードローラ3及び分離フィードローラ4は、ピックアップローラ2に対して繰出方向における下流側で、幅方向に沿って、繰出しフィードローラ3a、分離フィードローラ4a、繰出しフィードローラ3b、分離フィードローラ4b及び繰出しフィードローラ3cの順に配されてシャフト8に固定される。
【0007】
シャフト8は、図示しない軸受及び固定フレームによって回転可能に支持される。なお繰出しフィードローラ3a及び3cは、媒体Pを安定して挟持するために、媒体Pを挟持可能な範囲で最も中央からより離れた位置に配される。
【0008】
繰出しフィードローラ3は、外周面にゴムが設けられる。分離フィードローラ4は、周方向にわたって所定幅の溝(凹部)が3つ設けられており、外周面に凹凸部が形成される。分離フィードローラ4は、4つの凸部の外周面における一部にゴムが設けられる。
【0009】
繰出しフィードローラ3及び分離フィードローラ4は、シャフト8を介して図示しないモータなどの駆動部により駆動されて正逆双方向(図中の矢印22a及び22b)に回転する。
【0010】
ピックアップローラ2と、繰出しフィードローラ3及び分離フィードローラ4とは、図示しないベルト等によりシャフト7及び8を介して同期がとられて回転する。
【0011】
分離ゲートローラ5は、分離フィードローラ4の上方で、シャフト9に一方向(図中の矢印23)にだけ回転可能に支持される。なお、分離フィードローラ4と分離ゲートローラ5とを合わせてゲート部12とも呼ぶ。
【0012】
分離ゲートローラ5は、図4に示すように、分離フィードローラ4の凸部に合わせるようにして、該凸部の幅よりも若干広い幅の溝(凹部)が外周面に2つ形成される。
【0013】
そして分離フィードローラ4及び分離ゲートローラ5は、一方の凸部が他方の凹部に入り込む(オーバーラップする)ようにして配される。分離ゲートローラ5は、凸部の外周面にゴムが設けられる。
【0014】
なお、分離フィードローラ4及び分離ゲートローラ5が重なり合っている部分をオーバーラップ部13とも呼ぶ。
【0015】
繰出しローラ6は、分離ゲートローラ5の下流側で繰出しフィードローラ3に接するようにして図示しないシャフトに支持され、該繰出しフィードローラ3と接触する位置(以下、これを接触点とも呼ぶ)14で繰出しフィードローラ3に対して押し付ける力を加える。繰出しローラ6は、繰出しフィードローラ3の回転に連れ回って正逆双方向(図中の矢印24a及び24b)に回転する。
【0016】
媒体分離繰出し機構1は、図5に示すような集積エリア11に集積された媒体Pを繰出す際、ピックアップローラ2を矢印21a方向に回転させる。なお、図5以降において、説明の便宜上、媒体Pは例えば分離ゲートローラや繰出しローラの下方に位置する場合でも常に実線で示し、内部をドットパターンで示す。
【0017】
媒体分離繰出し機構1は、ピックアップローラ2を回転させることにより、図6に示すように、集積エリア11に集積された媒体Pのうちの一番下の媒体P1をゲート部12に繰出す。
【0018】
このとき媒体分離繰出し機構1は、媒体P1とともに媒体P1の上に載置された媒体P2及びP3も、ピックアップローラ2の回転方向に生じる媒体間の摩擦などにより、ずれて重なった状態でゲート部12まで繰出される。
【0019】
ゲート部12は、分離フィードローラ4が矢印22a方向に回転することにより、図7に示すように、媒体Pを繰出す力(以下、これをフィード力とも呼ぶ)41(41a、41b)を媒体P1に加える。
【0020】
ゲート部12は、媒体P1〜P3がずれて重なった状態で通過しようとすると、媒体P2及びP3に分離ゲートローラ5が接触し、媒体P間の摩擦力より媒体Pと分離ゲートローラ5との間の摩擦力が大きくなり、媒体P1のみを通過させる。
【0021】
ゲート部12で1枚に分離された媒体P1は、繰出しフィードローラ3及び繰出しローラ6に接触点14で挟持される。
【0022】
繰出しフィードローラ3及び繰出しローラ6は、それぞれ矢印22a及び24a方向に回転することにより、挟持した媒体P1にフィード力42(42a〜42c)を加え、矢印25方向に該媒体P1を繰出す。
【0023】
ところで媒体分離繰出し機構1では、集積エリア11が媒体Pよりも大きくなるように側面ガイド10が形成されているため、図8に示すように、媒体Pが集積エリア11内で幅方向に対して傾いて(スキューして)集積されることもある。また、媒体Pが幅方向に対してスキューしていない状態で集積されていても繰出し中にスキューしてしまうこともある。
【0024】
媒体分離繰出し機構1では、媒体Pがゲート部12に到達した際に詳しくは後述する限界角度θmaxよりも傾いていない場合、図9に示すように、ピックアップローラ2が矢印21a方向に回転してゲート部12に繰出された媒体Pに、分離フィードローラ4a及び分離ゲートローラ5aに先に挟持されてフィード力41aが加えられる。
【0025】
その後、媒体Pは、図10に示すように、分離フィードローラ4b及び分離ゲートローラ5bに挟持されてフィード力41bが加えられた後、繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aに挟持されてフィード力42aが加えられる。
【0026】
そして媒体Pは、分離フィードローラ4及び分離ゲートローラ5のフィード力41と、繰出しフィードローラ3及び繰出しローラ6のフィード力42とにより矢印25の方向(図2)に繰出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2008−273669公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
ところで、上述したような媒体分離繰出し機構1では、ゲート部12に到達した媒体Pが幅方向に対して限界角度θmaxよりも大きな角度にスキューしている場合、媒体Pを繰出す際にスキューを増大させてしまう恐れがある。
【0029】
ここで、限界角度θmaxについて説明する。媒体分離繰出し機構1において図11(A)に示すように、側面ガイド10の内側における繰出方向の最後端からオーバーラップ部13までの長さL1、及び該オーバーラップ部13から接触点14までの長さL2をそれぞれ求める。
【0030】
そして、長さL1及びL2がそれぞれ直線で表された場合の媒体分離繰出し機構1を考えると、図11(B)に示ように、側面ガイド10の内側における繰出方向の最後端から下流側に長さL1の位置にオーバーラップ部13が位置し、分離フィードローラ4と分離ゲートローラ5の中心が上下方向に並ぶように配される。
【0031】
また、媒体分離繰出し機構1は、オーバーラップ部13から下流側に長さL2の位置に接続点14が位置し、その上方向に繰出しローラ6の中心が位置するように配される。なお、長さL1及びL2の合計を長さL3とする。
【0032】
そして媒体分離繰出し機構1において、図11(C)に示すように、繰出しフィードローラ3及び繰出しローラ6の組のうち、中央から最も離れた組である繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aの接続点14aを選択する。
【0033】
なお、実際には中央から最も離れた組は、繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aの組と、繰出しフィードローラ3c及び繰出しローラ6cの組であるが説明のため繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aの組を用いており、繰出しフィードローラ3c及び繰出しローラ6cの組を用いた場合にも同様となる。
【0034】
また媒体分離繰出し機構1において、分離フィードローラ4及び分離ゲートローラ5の組のうち、繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aの組から最も離れた位置に配される分離フィードローラ4b及び分離ゲートローラ5bを選択する。そして分離フィードローラ4b及び分離ゲートローラ5bのオーバーラップ部13bで最も接続点14aよりの位置をオーバーラップ点31として選択する。
【0035】
そして媒体分離繰出し機構1を上面から見た場合において、接続点14aとオーバーラップ点31と結んだ直線32と、分離フィードローラ4及び分離ゲートローラ5の中心を通り幅方向に水平な直線33とのなす角を限界角度θmaxと定義する。
【0036】
媒体分離繰出し機構1では、媒体Pが幅方向に対して限界角度θmaxより大きな角度θにスキューしてゲート部12に到達した場合、媒体Pがオーバーラップ点31に到達する前に繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aの接続点14aに到達することになる。
【0037】
この場合、媒体Pには、繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aによるフィード力42aと、分離フィードローラ4a及び分離ゲートローラ5aによるフィード力41aが加えられることになる。
【0038】
その後、媒体分離繰出し機構1では、媒体Pがオーバーラップ点31に到達すると、図12に示すように、これらのフィード力41a及び42aによって、オーバーラップ点31を回転中心として媒体Pがスキュー角度をさらに大きくする方向に回転してしまう恐れがある。
【0039】
具体的には、以下のような場合が考えられる。まず、図13に示すように集積エリア11に集積された媒体Pのスキューした角度θが限界角度θmaxより大きい場合について説明する。
【0040】
媒体分離繰出し機構1は、ピックアップローラ2が矢印21a方向に回転してゲート部12に媒体Pを繰出すと、図14に示すように、分離フィードローラ4a及び分離ゲートローラ5aで媒体Pを挟持した後、繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aの接続点14aに媒体Pが到達する。
【0041】
媒体分離繰出し機構1では、図15に示すように、媒体Pがオーバーラップ点31に到達したとき、繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aによるフィード力42aと分離フィードローラ4a及び分離ゲートローラ5aによるフィード力41aとによってオーバーラップ点31を回転中心として媒体Pがスキュー角度をさらに大きくする方向に回転する恐れがある。
【0042】
また別例としては、図16に示すように集積エリア11にスキューしていない状態で集積された媒体Pがピックアップローラ2によりゲート部12に繰出す途中で限界角度θmaxより大きな角度θにスキューした場合について説明する。
【0043】
媒体分離繰出し機構1は、図17に示すように、ピックアップローラ2により媒体Pを繰出す途中で限界角度θmaxより大きな角度θにスキューした媒体Pを分離フィードローラ4a及び分離ゲートローラ5aで媒体Pを挟持した後、繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aの接続点14aに媒体Pが到達する。
【0044】
媒体分離繰出し機構1では、図18に示すように、媒体Pがオーバーラップ点31に到達したとき、繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aによるフィード力42aと分離フィードローラ4a及び分離ゲートローラ5aによるフィード力41aとによってオーバーラップ点31を回転中心として媒体Pがスキュー角度をさらに大きくする方向に回転する恐れがある。
【0045】
このように媒体分離繰出し機構1は、集積エリア11に集積された媒体Pが限界角度θmaxより大きな角度にスキューしている場合、又は繰出される間に媒体Pが限界角度θmaxより大きな角度にスキューしてゲート部12に到達する場合に、媒体Pのスキュー角度を増大させる恐れがある。これにより媒体分離繰出し機構1は、繰出し以降の搬送路などでジャムやエラーの原因を増加させてしまうといった問題があった。
【0046】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、繰出し以降の搬送路などでジャムやエラーの原因を軽減し得る媒体分離繰出し機構を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0047】
かかる課題を解決するため本発明は、紙葉類の媒体が内側に集積される側面ガイドと、側面ガイド内に集積される媒体を繰出すピックアップローラと、媒体が繰出される繰出方向においてピックアップローラより下流側に配され、外周面に設けられる凹凸が互いにオーバーラップしてオーバーラップ部を形成し、ピックアップローラに繰出された媒体を該オーバーラップ部で挟持して1枚ずつに分離して繰出す分離フィードローラ及び分離ゲートローラからなるゲート部と、ゲート部で1枚ずつに分離された媒体を繰出す繰出しフィードローラと、繰出方向においてゲート部より下流側で繰出しフィードローラと接して配され、該繰出しフィードローラと接する接続点で媒体を挟持して繰出す繰出しローラとを有し、繰出方向に直交する幅方向で中央から最も離れた接続点と、該接続点から最も離れたゲート部におけるオーバーラップする凹凸部の最も接続点側の点とを結ぶ直線と幅方向に平行な直線とのなす限界角度よりも、ゲート部に到達する媒体の幅方向に対するスキュー角度が小さくなるように構成される。
【0048】
これにより、繰出しフィードローラ及び繰出しローラで媒体を挟持した後、ゲート部のオーバーラップ点に媒体が到達し、該オーバーラップ点で媒体がスキュー角度を増加させる方向に回転することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、限界角度をより大きな角度にすることができるので、繰出しフィードローラ及び繰出しローラで媒体を挟持した後、ゲート部のオーバーラップ点に媒体が到達し、該オーバーラップ点で媒体がスキュー角度を増加させる方向に回転することを抑制することができ、かくして繰出し以降の搬送路などでジャムやエラーの原因を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来の媒体分離繰出し機構の構成(1)を示す上面図である。
【図2】従来の媒体分離繰出し機構の構成(2)を示す側面図である。
【図3】従来の媒体分離繰出し機構の構成(3)を示す背面図である。
【図4】ゲート部の構成を示す略線図である。
【図5】媒体の分離繰出しの様子(1)を示す略線図である。
【図6】媒体の分離繰出しの様子(2)を示す略線図である。
【図7】媒体の分離繰出しの様子(3)を示す略線図である。
【図8】スキューした媒体の分離繰出しの様子(1)を示す略線図である。
【図9】スキューした媒体の分離繰出しの様子(2)を示す略線図である。
【図10】スキューした媒体の分離繰出しの様子(3)を示す略線図である。
【図11】搬送路を直線で表した場合の従来の媒体分離繰出し機構を示す略線図である。
【図12】媒体のスキュー拡大を示す略線図である。
【図13】限界角度よりスキューして集積された媒体の分離繰出しの様子(1)を示す略線図である。
【図14】限界角度よりスキューして集積された媒体の分離繰出しの様子(2)を示す略線図である。
【図15】限界角度よりスキューして集積された媒体の分離繰出しの様子(3)を示す略線図である。
【図16】搬送中に限界角度よりスキューした媒体の分離繰出しの様子(1)を示す略線図である。
【図17】搬送中に限界角度よりスキューした媒体の分離繰出しの様子(2)を示す略線図である。
【図18】搬送中に限界角度よりスキューした媒体の分離繰出しの様子(3)を示す略線図である。
【図19】従来及び第1の実施の形態の媒体分離繰出し機構の構成を示す略線図である。
【図20】側面ガイドの大きさを示す略線図である。
【図21】スキューして集積された媒体の分離繰出しの様子(1)を示す略線図である。
【図22】スキューして集積された媒体の分離繰出しの様子(2)を示す略線図である。
【図23】スキューして集積された媒体の分離繰出しの様子(3)を示す略線図である。
【図24】スキューして集積された媒体の分離繰出しの様子(4)を示す略線図である。
【図25】搬送中に限界角度よりスキューした媒体の分離繰出しの様子(1)を示す略線図である。
【図26】搬送中に限界角度よりスキューした媒体の分離繰出しの様子(2)を示す略線図である。
【図27】搬送中に限界角度よりスキューした媒体の分離繰出しの様子(3)を示す略線図である。
【図28】搬送中に限界角度よりスキューした媒体の分離繰出しの様子(4)を示す略線図である。
【図29】従来及び第2の実施の形態の媒体分離繰出し機構の構成を示す略線図である。
【図30】従来及び第2の実施の形態における限界角度の比較を示す略線図である。
【図31】第3の実施の形態の媒体分離繰出し機構の構成(1)を示す略線図である。
【図32】第3の実施の形態の媒体分離繰出し機構の構成(2)を示す略線図である。
【図33】従来及び第3の実施の形態の媒体分離繰出し機構の構成を示す略線図である。
【図34】搬送路を直線で表した場合の第3の実施の形態の媒体分離繰出し機構を示す略線図である。
【図35】従来及び第3の実施の形態における限界角度の比較を示す略線図である。
【図36】搬送路を直線で表した場合の第4の実施の形態の媒体分離繰出し機構を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
〔1.第1の実施の形態〕
[1−1.媒体分離繰出し機構の構成]
まず第1の実施の形態について説明する。図19(A)に従来の媒体分離繰出し機構1を示し、図19(B)に第1の実施の形態における媒体分離繰出し機構100を示す。媒体分離繰出し機構100は、従来の媒体分離繰出し機構1と比較して、側面ガイド10が側面ガイド110に代わっているものの、他の構成は同じである。
【0052】
側面ガイド110は、繰出方向の長さL11及び幅方向の長さW11が側面ガイド10より繰出方向の長さL1及び幅方向の長さW1より短い。
【0053】
具体的には側面ガイド110の繰出方向の長さL11及び幅方向の長さW11は以下のようにして決定される。
【0054】
図20に示すように、側面ガイド110の集積エリア111に集積される幅方向に長い長方形の媒体Pの繰出方向、幅方向及び対角線の長さをそれぞれ長さPW、PH及びPDとする。
【0055】
また、媒体Pの1対の対角がそれぞれ側面ガイド110の側面に当接し、かつ側面ガイド110の背面110aに媒体Pの角の1つが当接していて、これ以上スキューしない状態、すなわち媒体Pが集積エリア111において最もスキューしている状態での幅方向に対するスキュー角度を角度θaとする。
【0056】
そして、媒体Pが側面ガイド110の背面110aに当接している位置から、側面ガイド110の側面で該位置から遠い方の側面までを長さW12とし、長さW11から長さW12を減算した値を長さW13とする。
【0057】
この場合、媒体Pと背面110aとのなす角であるθaは下記の式(1)の関係が成り立つ。
θa=θb−θc・・・(1)
【0058】
なお、θbは背面110aに当接している角を通る媒体Pの対角線と背面110aとのなす角であり、θcは媒体Pの対角線と長辺とのなす角である。
【0059】
また、θcは下記の式(2)〜式(5)の関係が成り立つ。
tanθc=PH/PW・・・(2)
θc=tan−1(PH/PW)・・・(3)
sinθc=PH/PD・・・(4)
PD=PH/sinθc・・・(5)
【0060】
式(5)に式(3)を代入すると
PD=PH/sin{tan−1(PH/PW)}・・・(6)
と表される。
【0061】
さらに、θbは下記の式(7)及び式(8)の関係が成り立つ。
sinθb=L11/PD・・・(7)
θb=sin−1(L11/PD)・・・(8)
【0062】
そして、式(8)に式(6)を代入すると
θb=sin−1{L11÷{PH/{sin{tan−1(PH/PW)}}}}・・・(9)
=sin−1{L11×{sin{tan−1(PH/PW)}}÷PH}・・・(10)
と表される。
【0063】
よってθaは、式(1)、式(3)及び式(10)を用いて、
θa=sin−1{L11×{sin{tan−1(PH/PW)}}÷PH}
−tan−1(PH/PW)・・・(11)
と表される。
【0064】
一方、θaは式(12)〜式(15)の関係が成り立つ。
cosθa=W12/PW・・・(12)
W12=PW×cosθa・・・(13)
sinθa=W13/PH・・・(14)
W13=PH×sinθa・・・(15)
【0065】
側面ガイド110の幅方向の長さW11は、
W11=W12+W13・・・(16)
と表されるので、式(16)に式(13)及び式(15)を代入すると、
W11=PW×cosθa+PH×sinθa・・・(17)
と表される。
【0066】
また、θbは式(18)及び式(19)の関係が成り立つ。
sinθb=L11/PD・・・(18)
L11=PD×cosθb・・・(19)
【0067】
式(19)に式(1)を代入すると、
L11=PD×sin(θa−θc)・・・(20)
と表される。
【0068】
式(20)に式(3)を代入すると、
L11=PD×sin(θa−tan−1(PH/PW)・・・(21)
と表される。
【0069】
従って、側面ガイド110は、繰出方向の長さL11と幅方向の長さW11を、媒体Pの繰出方向の長さPHと幅方向の長さPWに基づいてθa<θmaxを満たすように式(17)及び式(21)を用いて決定される。
【0070】
なお、大きさの異なる複数種類の媒体Pが集積エリア111に集積されて繰出される場合、複数種類の媒体Pのうち、最も小さい媒体Pの繰出方向の長さL11及び幅方向の長さW11に基づいて側面ガイド110の繰出方向の長さL11と幅方向の長さW11を決定するようにすればよい。
【0071】
[1−2.媒体の繰出しの動作]
次に、媒体分離繰出し機構100による媒体Pの繰出しの動作について説明する。媒体分離繰出し機構100は、図21に示すように、角度θaだけスキューした媒体Pが側面ガイド110の集積エリア111に集積されている状態で繰出しが開始されると、媒体Pをピックアップローラ2によりゲート部12に繰出す。
【0072】
この時、側面ガイド110の繰出方向の長さL11と幅方向の長さW11がθa<θmaxを満たすように式(17)及び式(21)を用いて決定されているため、媒体Pは、スキュー角度が限界角度θmaxより大きくなってゲート部12に到達することはない。
【0073】
従って、媒体分離繰出し機構100は、図22に示すように、分離フィードローラ4a及び分離ゲートローラ5aで媒体Pを挟持した後、分離フィードローラ4b及び分離ゲートローラ5bで媒体Pを挟持する。
【0074】
その後、媒体分離繰出し機構100は、繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aの接続点14aに媒体Pが到達し、これら繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aで媒体Pを挟持する。
【0075】
すなわち、媒体分離繰出し機構100は、図23に示すように、分離フィードローラ4a及び分離ゲートローラ5aで媒体Pにフィード力41aを加え、次に分離フィードローラ4b及び分離ゲートローラ5bで媒体Pにフィード力42bを加えた後、繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aで媒体Pにフィード力42aを加える。
【0076】
このように、媒体分離繰出し機構100は、分離フィードローラ4b及び分離ゲートローラ5bで媒体Pを挟持する前に繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aで媒体Pを挟持することがないので、オーバーラップ点31で媒体Pがスキュー角度を増大させる方向に回転することを防止することができる。
【0077】
その後、媒体分離繰出し機構100は、図24に示すように、繰出しフィードローラ3b及び繰出しローラ6b、繰出しフィードローラ3c及び繰出しローラ6cにより媒体Pを挟持してそれぞれフィード力42b及び43cを加え、媒体Pを繰出す。
【0078】
次に、集積エリア111にスキューしていない状態で集積された媒体Pがピックアップローラ2によりゲート部12に繰り出される途中でスキューする場合について説明する。
【0079】
媒体分離繰出し機構100は、図25に示すように集積エリア111にスキューしていない状態で集積された媒体Pがピックアップローラ2によりゲート部12に繰出される途中でスキューした場合、図26に示すように、媒体Pの角が側面ガイド110の側面に当接する。
【0080】
媒体Pは、角が側面ガイド110の側面に当接すると、幅方向に対してスキュー角度が最大で角度θaだけスキューする。この場合も、側面ガイド110の繰出方向の長さL11と幅方向の長さW11がθa<θmaxを満たすように式(17)及び式(21)を用いて決定されているため、媒体Pは、スキュー角度が限界角度θmaxより大きくなってゲート部12に到達することはない。
【0081】
従って、媒体分離繰出し機構100は、分離フィードローラ4a及び分離ゲートローラ5aで媒体Pを挟持し、次に分離フィードローラ4b及び分離ゲートローラ5bで媒体Pを挟持した後、繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aで媒体Pを挟持する。
【0082】
すなわち、媒体分離繰出し機構100は、図27に示すように、分離フィードローラ4a及び分離ゲートローラ5aで媒体Pにフィード力41aを加え、次に分離フィードローラ4b及び分離ゲートローラ5bで媒体Pにフィード力42bを加えた後、繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aで媒体Pにフィード力42aを加える。
【0083】
このように、媒体分離繰出し機構100は、分離フィードローラ4b及び分離ゲートローラ5bで媒体Pを挟持する前に繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aで媒体Pを挟持することがないので、該オーバーラップ点31で媒体Pがスキュー角度を増大させる方向に回転することを防止することができる。
【0084】
その後、媒体分離繰出し機構100は、図28に示すように、繰出しフィードローラ3b及び繰出しローラ6b、繰出しフィードローラ3c及び繰出しローラ6cにより媒体Pを挟持してそれぞれフィード力42b及び43cを加え、媒体Pを繰出す。
【0085】
[1−3.効果等]
以上のように、媒体分離繰出し機構100では、側面ガイド110の繰出方向の長さL11と幅方向の長さW11が、媒体Pの繰出方向の長さPHと幅方向の長さPWに基づいてθa<θmaxを満たすように式(17)及び式(21)を用いて決定される。
【0086】
よって媒体分離繰出し機構100は、ゲート部12に媒体Pが到達する際に該媒体Pのスキュー角度を、スキューが増大するとされる限界角度θmax未満にすることができる。
【0087】
これにより、媒体分離繰出し機構100は、分離フィードローラ4a及び分離ゲートローラ5aで媒体Pを挟持し、次に分離フィードローラ4b及び分離ゲートローラ5bで媒体Pを挟持した後、繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aで媒体Pを挟持する。
【0088】
従って媒体分離繰出し機構100は、繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aで媒体Pを挟持した後に分離フィードローラ4b及び分離ゲートローラ5bのオーバーラップ点31に媒体Pが到達することにより発生する該オーバーラップ点31で媒体Pがスキュー角度を増大させる方向に回転することを防止することができる。かくして媒体分離繰出し機構100は、繰出し以降の搬送路などでジャムやエラーの原因を軽減することができる。
【0089】
〔2.第2の実施の形態〕
[2−1.媒体分離繰出し機構の構成]
次に第2の実施の形態について説明する。図29(A)に従来の媒体分離繰出し機構1を示し、図29(B)に第2の実施の形態における媒体分離繰出し機構200を示す。なお、図29(A)及び(B)においては側面ガイド10を説明の便宜上、省略している。また第2の実施の形態の媒体分離繰出し機構200では、側面ガイド10に代えて第1の実施の形態における側面ガイド110を用いてもよい。
【0090】
媒体分離繰出し機構200は、従来の媒体分離繰出し機構1と比較して、繰出しフィードローラ203a及び繰出しローラ206aと、繰出しフィードローラ203c及び繰出しローラ206cがそれぞれ距離D1だけ中央に寄る構成であり、その他の構成は説明の便宜上符号は異なるものの同じである。
【0091】
すなわち媒体分離繰出し機構200は、ピックアップローラ202、繰出しフィードローラ203、分離フィードローラ204、分離ゲートローラ205、繰出しローラ206、シャフト207、208、209及び側面ガイド10を含む構成とされる。
【0092】
媒体分離繰出し機構200では、上述と同様に、中央から最も離れた繰出しフィードローラ203a及び繰出しローラ206aの組の接続点214aとから最も離れた分離フィードローラ204b及び分離ゲートローラ205bの組のオーバーラップ部212で最も接続点214aよりの位置がオーバーラップ点231として選択される。
【0093】
また媒体分離繰出し機構200の限界角度θmaxは、接続点214aとオーバーラップ点231と結んだ直線232と、分離フィードローラ204及び分離ゲートローラ205の中心を通り幅方向に水平な直線233とのなす角となる。
【0094】
ここで、図30に示すように、従来の媒体分離繰出し機構1の限界角度θmax(以下、これをθdとも呼ぶ)と第2の実施の形態における媒体分離繰出し機構200の限界角度θmax(以下、これをθeとも呼ぶ)を比較する。
【0095】
媒体分離繰出し機構200では、繰出しフィードローラ203a及び繰出しローラ206aが従来の媒体分離繰出し機構1における繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aより距離D1だけ中央に近いので下記の式(22)の関係が成り立つ。
θd<θe・・・(22)
【0096】
従って媒体分離繰出し機構200は、従来の媒体分離繰出し機構1と比較して限界角度θmaxをより大きな角度にすることができる。
【0097】
[2−2.効果等]
以上のように媒体分離繰出し機構200は、従来の媒体分離繰出し機構1と比較して、繰出しフィードローラ203a及び繰出しローラ206aと、繰出しフィードローラ203c及び繰出しローラ206cがそれぞれ距離D1だけ中央に寄る構成である。
【0098】
これにより媒体分離繰出し機構200は、従来の媒体分離繰出し機構1と比較して限界角度θmaxをより大きな角度にすることができるので、従来よりも媒体Pのスキュー角度の増加を防止することができ、かくして繰出し以降の搬送路などでジャムやエラーの原因を軽減することができる。
【0099】
ところで従来の従来の媒体分離繰出し機構1では、繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aと、繰出しフィードローラ3c及び繰出しローラ6cが媒体Pを安定して挟持できるようにより中央より離れた位置に配されている。
【0100】
これに対して媒体分離繰出し機構200は、オーバーラップ点231で媒体Pがスキュー角度を増大させる方向に回転することを防止するといった観点から、繰出しフィードローラ203a及び繰出しローラ206aと、繰出しフィードローラ203c及び繰出しローラ206cの配置位置が決定される。
【0101】
〔3.第3の実施の形態〕
[3−1.媒体分離繰出し機構の構成]
次に第3の実施の形態について説明する。図31及び図32に示すように、第3の実施の形態における媒体分離繰出し機構300は、ピックアップローラ302、繰出しフィードローラ303、分離フィードローラ304、分離ゲートローラ305、繰出しローラ306、シャフト307、308、309及び側面ガイド10を含む構成とされる。
【0102】
なお、図32においては側面ガイド10を説明の便宜上、省略している。また第3の実施の形態の媒体分離繰出し機構300では、側面ガイド10に代えて第1の実施の形態における側面ガイド110を用いてもよい。
【0103】
ピックアップローラ302は、側面ガイド10の集積エリア11の下方で、幅方向に並ぶようにシャフト307に配されて固定される。シャフト307は、図示しない軸受及び固定フレームによって回転可能に支持される。
【0104】
ピックアップローラ302は、外周面の一部にゴムが設けられ、シャフト307を介して図示しないモータなどの駆動部により駆動されて正逆双方向(図中の矢印321a及び321b)に回転する。
【0105】
繰出しフィードローラ303及び分離フィードローラ304は、ピックアップローラ302より繰出方向における下流側で、幅方向に沿って、繰出しフィードローラ303a、分離フィードローラ304a、繰出しフィードローラ303b、分離フィードローラ304b及び繰出しフィードローラ303cの順に配されてシャフト308に固定される。シャフト308は、図示しない軸受及び固定フレームによって回転可能に支持される。
【0106】
繰出しフィードローラ303は、外周面にゴムが設けられる。分離フィードローラ304は、外周面には周方向にわたって所定幅の溝(凹部)が2つ設けられており、外周面に凹凸部が形成される。分離フィードローラ304は、凸部の外周面の一部にゴムが設けられる。
【0107】
繰出しフィードローラ303及び分離フィードローラ304は、シャフト308を介して図示しないモータなどの駆動部に駆動されて正逆双方向(図中の矢印322a及び322b)に回転する。
【0108】
ピックアップローラ302と、繰出しフィードローラ303及び分離フィードローラ304とは、図示しないベルト等によりシャフト307及び308を介して同期がとられて回転する。
【0109】
分離ゲートローラ305は、分離フィードローラ304の上方で、シャフト309に一方向(図中の矢印323)にだけ回転可能に支持される。なお、分離フィードローラ304と分離ゲートローラ305とを合わせてゲート部312とも呼ぶ。
【0110】
分離ゲートローラ305は、分離フィードローラ304の凸部に合わせるようにして、該凸部の幅よりも若干広い幅の溝(凹部)が外周面に2つ形成される。
【0111】
そして分離フィードローラ304及び分離ゲートローラ305は、一方の凸部が他方の凹部に入り込む(オーバーラップする)ようにして配される。分離ゲートローラ305は、凸部の外周面にゴムが設けられる。
【0112】
なお、分離フィードローラ304及び分離ゲートローラ305が重なり合っている部分をオーバーラップ部313とも呼ぶ。
【0113】
繰出しローラ306は、分離ゲートローラ305の下流側で繰出しフィードローラ303に接するようにして図示しないシャフトに支持され、接触点314で繰出しフィードローラ303に対して押し付ける力を加える。繰出しローラ306は、繰出しフィードローラ303の回転に連れ回って正逆双方向(図中の矢印324a及び324b)に回転する。
【0114】
このような構成でなる媒体分離繰出し機構301は、図33に示すように、従来の媒体分離繰出し機構1と比較して、分離フィードローラ304及び分離ゲートローラ305の凹凸部が1つずつ少ない。
【0115】
また媒体分離繰出し機構301は、分離フィードローラ304及び分離ゲートローラ305の凹凸部が1つずつ少ない分の長さD2だけ、繰出しフィードローラ303a及び繰出しローラ306aと、繰出しフィードローラ303c及び繰出しローラ306cとが中央に寄っている。
【0116】
媒体分離繰出し機構300において図34(A)に示すように、側面ガイド10の内側における繰出方向の最後端からオーバーラップ部313までの長さL21、及び該オーバーラップ部313から接触点314までの長さL22をそれぞれ定義する。
【0117】
そして、長さL21及びL22がそれぞれ直線で表された場合の媒体分離繰出し機構300を考えると、図34(B)に示ように、側面ガイド10の内側における繰出方向の最後端から下流側に長さL21の位置にオーバーラップ部313が位置し、分離フィードローラ304と分離ゲートローラ305の中心が上下方向に並ぶように配される。
【0118】
また、媒体分離繰出し機構300は、オーバーラップ部313から下流側で長さL22の位置に接続点314が位置し、その上方向に繰出しローラ306の中心が位置するように配される。なお、長さL21及びL22の合計を長さL33とする。
【0119】
そして媒体分離繰出し機構1において、図34(C)に示すように、繰出しフィードローラ303及び繰出しローラ306の組のうち、中央から最も離れた組である例えば繰出しフィードローラ303a及び繰出しローラ306aの接続点314aを選択する。
【0120】
また媒体分離繰出し機構300において、分離フィードローラ304及び分離ゲートローラ305の組のうち、繰出しフィードローラ303a及び繰出しローラ306aの組から最も離れた位置に配される分離フィードローラ304b及び分離ゲートローラ305bを選択する。そして分離フィードローラ304b及び分離ゲートローラ305bのオーバーラップ部313bで最も接続点314aよりの位置をオーバーラップ点331として選択する。
【0121】
そして媒体分離繰出し機構300の限界角度θmaxは、接続点314aとオーバーラップ点334と結んだ直線332と、分離フィードローラ304及び分離ゲートローラ305の中心を通り幅方向に水平な直線333とのなす角である。
【0122】
ここで、図35に示すように、従来の媒体分離繰出し機構1の限界角度θmax(以下、これをθfとも呼ぶ)と第3の実施の形態における媒体分離繰出し機構300の限界角度θmax(以下、これをθgとも呼ぶ)を比較する。
【0123】
媒体分離繰出し機構300では、繰出しフィードローラ303a及び繰出しローラ306aが従来の媒体分離繰出し機構1における繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aより距離D2だけ中央に近いので下記の式(23)の関係が成り立つ。
θf<θg・・・(23)
【0124】
従って媒体分離繰出し機構300は、従来の媒体分離繰出し機構1と比較して限界角度θmaxをより大きな角度にすることができる。
【0125】
[3−2.効果等]
以上のように媒体分離繰出し機構300は、従来の媒体分離繰出し機構1と比較して、分離フィードローラ304及び分離ゲートローラ305の凹凸部が1つずつ少なく、そのぶんの長さD2だけ繰出しフィードローラ303a及び繰出しローラ306aと、繰出しフィードローラ303c及び繰出しローラ306cがそれぞれ中央に寄る構成である。
【0126】
これにより媒体分離繰出し機構300は、従来の媒体分離繰出し機構1と比較して限界角度θmaxをより大きな角度にすることができるので、従来よりも媒体Pのスキュー角度の増加を防止することができ、かくして繰出し以降の搬送路などでジャムやエラーの原因を軽減することができる。
【0127】
〔4.第4の実施の形態〕
[4−1.媒体分離繰出し機構の構成]
次に第4の実施の形態について説明する。図36に示すように、第4の実施の形態における媒体分離繰出し機構400は、ピックアップローラ402、繰出しフィードローラ403、分離フィードローラ404、分離ゲートローラ405、繰出しローラ406、シャフト407、408、409、側面ガイド410及びステージ450を含む構成とされる。
【0128】
ピックアップローラ402は、側面ガイド410の集積エリア411の上方で、幅方向に並ぶように配されてシャフト407に固定される。シャフト407は、図示しない軸受及び固定フレームによって回転可能に支持される。
【0129】
ピックアップローラ402は、外周面の一部にゴムが設けられ、シャフト407を介して図示しないモータなどの駆動部により駆動されて正逆双方向(図中の矢印421a及び421b)に回転する。
【0130】
ステージ450は、側面ガイド410の集積エリア411においてピックアップローラ402の下方に位置し、媒体Pが集積される。ステージ450は、図示しないモータなどの動力源からベルト等を介して上下方向に移動される。
【0131】
ピックアップローラ402は、図示しないスプリングなどの力によりステージ450に集積された媒体Pに押し付けられて該媒体Pに一定の押し付け力を加える。
【0132】
繰出しフィードローラ403及び分離フィードローラ404は、ピックアップローラ402より繰出方向における下流側で、幅方向に沿って、繰出しフィードローラ403a、分離フィードローラ404a、繰出しフィードローラ403b、分離フィードローラ404b及び繰出しフィードローラ403cの順に配されるようにしてシャフト408に固定される。シャフト408は、図示しない軸受及び固定フレームによって回転可能に支持される。
【0133】
繰出しフィードローラ403は、外周面にゴムが設けられる。分離フィードローラ404は、外周面には周方向にわたって所定幅の溝(凹部)が2つ設けられており、外周面に凹凸部が形成される。分離フィードローラ404は、3つの凸部の外周面の一部にゴムが設けられる。
【0134】
繰出しフィードローラ403及び分離フィードローラ404は、シャフト408を介して図示しないモータなどの駆動部に駆動されて正逆双方向(図中の矢印422a及び422b)に回転する。
【0135】
ピックアップローラ402と、繰出しフィードローラ403及び分離フィードローラ404とは、図示しないベルト等によりシャフト407及び408を介して同期がとられて回転する。
【0136】
分離ゲートローラ405は、分離フィードローラ404の下方で、シャフト409に一方向(図中の矢印423)にだけ回転可能に支持される。なお、分離フィードローラ404と分離ゲートローラ405とを合わせてゲート部412とも呼ぶ。
【0137】
分離ゲートローラ405は、分離フィードローラ404の凸部に合わせるようにして、該凸部の幅よりも若干広い幅の溝(凹部)が外周面に2つ形成される。
【0138】
そして分離フィードローラ404及び分離ゲートローラ405は、一方の凸部が他方の凹部に入り込む(オーバーラップする)ようにして配される。分離ゲートローラ405は、凸部の外周面にゴムが設けられる。
【0139】
なお、分離フィードローラ404及び分離ゲートローラ405が重なり合っている部分をオーバーラップ部413とも呼ぶ。
【0140】
繰出しローラ406は、分離ゲートローラ405の下流側で繰出しフィードローラ403に接するようにして図示しないシャフトに支持され、接触点414で繰出しフィードローラ403に対して押し付ける力を加える。繰出しローラ406は、繰出しフィードローラ403の回転に連れ回って正逆双方向(図中の矢印424a及び424b)に回転する。
【0141】
媒体分離繰出し機構400は、集積エリア411に集積された媒体Pを繰出す際、ピックアップローラ402を矢印421a方向に回転させて、集積エリア411に集積された媒体Pをゲート部412に繰出す。
【0142】
ゲート部412は、分離フィードローラ404が矢印422a方向に回転し、分離フィードローラ404及び分離ゲートローラ405で媒体Pを挟持してそのフィード力で最も上側の媒体Pのみを下流に繰出す。
【0143】
ゲート部412から繰出された媒体Pは、繰出しフィードローラ403及び繰出しローラ406に接触点414で挟持される。
【0144】
繰出しフィードローラ403及び繰出しローラ406は、それぞれ矢印422a及び424a方向に回転することにより、挟持した媒体Pにフィード力を加え、矢印425方向に媒体Pを繰出す。
【0145】
このような構成でなる媒体分離繰出し機構400は、従来の媒体分離繰出し機構1と比較して、分離フィードローラ404及び分離ゲートローラ405の凹凸部が1つずつ少ない。
【0146】
また媒体分離繰出し機構400は、分離フィードローラ404及び分離ゲートローラ405の凹凸部が1つずつ少ない分の長さD2だけ、繰出しフィードローラ403a及び繰出しローラ406aと、繰出しフィードローラ403c及び繰出しローラ406cとが中央に寄っている。
【0147】
媒体分離繰出し機構400において、側面ガイド410の内側における繰出方向の最後端からオーバーラップ部413までの長さL31、及び該オーバーラップ部413から接触点414までの長さL32をそれぞれ定義する。
【0148】
そして、長さL31及びL32がそれぞれ直線で表された場合の媒体分離繰出し機構400を考えると、側面ガイド410の内側における繰出方向の最後端から下流側に長さL31の位置にオーバーラップ部413が位置し、分離フィードローラ404と分離ゲートローラ405の中心が上下方向に並ぶように配される。
【0149】
また、媒体分離繰出し機構400は、オーバーラップ部313から下流側に長さL32の位置に接続点414が位置し、その上方向に繰出しローラ406の中心が位置するように配される。なお、長さL31及びL32の合計を長さL33とする。
【0150】
そして媒体分離繰出し機構1において、繰出しフィードローラ403及び繰出しローラ406の組のうち、中央から最も離れた組である例えば繰出しフィードローラ403a及び繰出しローラ406aの接続点414aを選択する。
【0151】
また媒体分離繰出し機構400において、分離フィードローラ404及び分離ゲートローラ405の組のうち、繰出しフィードローラ403a及び繰出しローラ406aの組から最も離れた位置に配される分離フィードローラ404b及び分離ゲートローラ405bを選択する。そして分離フィードローラ404b及び分離ゲートローラ405bのオーバーラップ部413bで最も接続点414aよりの位置をオーバーラップ点431として選択する。
【0152】
そして媒体分離繰出し機構400の限界角度θmaxは、接続点414aとオーバーラップ点431と結んだ直線432と、分離フィードローラ404及び分離ゲートローラ405の中心を通り幅方向に水平な直線433とのなす角である。
【0153】
従って媒体分離繰出し機構400では、繰出しフィードローラ403a及び繰出しローラ406aが従来の媒体分離繰出し機構1における繰出しフィードローラ3a及び繰出しローラ6aより距離D2だけ中央に近いので、従来の媒体分離繰出し機構1と比較して限界角度θmaxをより大きな角度にすることができる。
【0154】
[4−2.効果等]
以上のように媒体分離繰出し機構400は、従来の媒体分離繰出し機構1と比較して、分離フィードローラ404及び分離ゲートローラ405の凹凸部が1つずつ少なく、そのぶんの長さD2だけ繰出しフィードローラ403a及び繰出しローラ406aと、繰出しフィードローラ403c及び繰出しローラ406cがそれぞれ中央に寄る構成である。
【0155】
これにより媒体分離繰出し機構400は、従来の媒体分離繰出し機構1と比較して限界角度θmaxをより大きな角度にすることができるので、従来よりも媒体Pのスキュー角度の増大を防止することができ、かくして繰出し以降の搬送路などでジャムやエラーの原因を軽減することができる。
【0156】
〔5.他の実施の形態〕
上述した実施の形態において媒体分離繰出し機構100、200、300及び400は、ATMに集積された媒体Pを分離して繰出す場合について説明したが、本発明はこれにかぎらず、集積された媒体Pを分離して繰出すものであれば、例えばプリンタや印刷機械などに適応することができる。
【0157】
また上述した実施の形態において媒体分離繰出し機構100、200、300及び400は、集積、分離及び繰出しを行うようにした場合について述べたが、本発明はこれにかぎらず、集積、分離及び繰出しのいずれか1つを行うようにしてもよいし、これらのうちの2つを行うようにしてもよい。
【0158】
また上述した実施の形態において媒体分離繰出し機構100、200、300及び400は、集積エリア11、111及び411に媒体Pがすでに集積されている場合について述べたが、本発明はこれにかぎらず、集積エリア11、111及び411に媒体Pをユーザが集積するようにしてもよい。
【0159】
また上述した実施の形態において媒体分離繰出し機構100、200、300及び400は、ピックアップローラ2、202、302及び402が4つ、繰出しフィードローラ3、203、303及び403が3つ、分離フィードローラ4、204、304及び404が2つ、分離ゲートローラ5、205、305及び405が2つ、繰出しローラ6、206、306及び406が3つ設けられている場合について説明した。本発明はこれにかぎらず、異なるローラ数で構成されていてもよい。
【0160】
例えば、ピックアップローラ2、202、302及び402が1つ、繰出しフィードローラ3、203、303及び403が2つ、分離フィードローラ4、204、304及び404が1つ、分離ゲートローラ5、205、305及び405が1つ、繰出しローラ6、206、306及び406が2つでもよい。
【0161】
また上述した実施の形態において、媒体分離繰出し機構300及び400は、分離フィードローラ304及び404の凸部が3つ、分離ゲートローラ305及び405の凸部が2つ設けられている場合について説明したが、例えば分離フィードローラの凸部が2つ、分離ゲートローラの凸部が1つでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明は、例えば媒体を分離繰出す装置で広く利用することができる。
【符号の説明】
【0163】
1、100、200、300、400……媒体分離繰出し機構、2、202、302、402……ピックアップローラ、3、203、303、403……繰出しフィードローラ、4、104、204、304、404……分離フィードローラ、5、205、305、405……分離ゲートローラ、6、206、306、406……繰出しローラ、10、110、410……側面ガイド、12、212、312、412……ゲート部、13、213、313、413……オーバーラップ部、14、214、314、414……接触点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の媒体が内側に集積される側面ガイドと、
前記側面ガイド内に集積される媒体を繰出すピックアップローラと、
媒体が繰出される繰出方向において前記ピックアップローラより下流側に配され、外周面に設けられる凹凸が互いにオーバーラップしてオーバーラップ部を形成し、前記ピックアップローラに繰出された媒体を該オーバーラップ部で挟持して1枚ずつに分離して繰出す分離フィードローラ及び分離ゲートローラからなるゲート部と、
前記ゲート部で1枚ずつに分離された媒体を繰出す繰出しフィードローラと、
前記繰出方向において前記ゲート部より下流側で前記繰出しフィードローラと接して配され、該繰出しフィードローラと接する接続点で媒体を挟持して繰出す繰出しローラと
を有し、
前記繰出方向に直交する幅方向で中央から最も離れた接続点と、該接続点から最も離れたゲート部におけるオーバーラップする凹凸部の最も接続点側の点とを結ぶ直線と前記幅方向に平行な直線とのなす限界角度よりも、前記ゲート部に到達する媒体の前記幅方向に対するスキュー角度が小さくなるように構成される
媒体分離繰出し機構。
【請求項2】
前記側面ガイドは、
前記限界角度よりも前記ゲート部に到達する媒体の前記幅方向に対するスキュー角度が小さくなるように、繰出方向及び幅方向の長さが決定される
請求項1に記載の媒体分離繰出し機構。
【請求項3】
前記幅方向に中央から最も離れた接前記繰出しフィードローラ及び繰出しローラは、
前記限界角度が大きくなるように中央に寄せられている
請求項1又は2に記載の媒体分離繰出し機構。
【請求項4】
前記ゲート部は、
前記限界角度が大きくなるように分離フィードローラ及び分離ゲートローラの外周面に設けられる凹凸数が少ない
請求項1乃至3のいずれかに記載の媒体分離繰出し機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2013−103770(P2013−103770A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246459(P2011−246459)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】