説明

媒体厚み検知装置

【課題】一部が紙幣に乗り上げたことで可動ローラが傾いたとき、その傾きによる変位量の変化を補正するための手段を提供する。
【解決手段】基準ローラ2と、可動ローラ3と、距離センサ6と、ジャイロセンサ7とを備え、ジャイロセンサ7で検知した傾き量を基に距離センサ6で検知した変位量を補正して、その補正した変位量によって紙幣の厚みを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関の自動取引装置等に備えられ、紙幣等の媒体の厚みを検知する媒体厚み検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の媒体厚み検知装置は、可動ローラが基準ローラに当接するように設けられており、この可動ローラと基準ローラ間に紙幣が進入してくれば、可動ローラが紙幣の厚み分だけ上方向に変位し、その変位量をもとに紙幣の厚みを測定することで紙幣の異物の付着や重送の有無を確認している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開平06−494442号公報(段落「0015」−段落「0017」、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の技術においては、可動ローラと基準ローラとの間で紙幣を挟持したときに、可動ローラの全面が紙幣に掛かっていれば、可動ローラの変位量から正確な紙幣の厚みを測定できるが、搬送されてくる紙幣の位置が搬送路の中央より、搬送方向の左右何れか一方に寄ってしまっていたことで、可動ローラの一部が紙幣に乗り上げた場合は、可動ローラが紙幣の搬送方向に対して左右方向に傾いてしまうために変位量が変化してしまい、正確な紙幣の厚みを測定できず、異物の付着や重送を確認できない等の正確な紙幣の状態を確認できないという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、基準ローラと、該基準ローラとの間に媒体を挟持して媒体の厚み分変位する可動ローラと、該可動ローラの変位量を検知する変位センサとを備えた媒体厚み検出装置において、前記可動ローラの一部が媒体搬送方向と直交する方向の媒体端部に乗り上げることで発生する前記可動ローラの傾き量を検知するジャイロセンサを備え、前記ジャイロセンサで検知した傾き量を基に前記変位センサで検知した変位量を補正して、該補正した変位量によって、前記媒体の厚みを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
これにより、本発明は、ジャイロセンサによって検出した可動ローラの左右への傾きを基にして変位センサによって検出した紙幣の厚みを補正するために、可動ローラが傾いて変位量が変化した場合でも、その変化した分を補正して実際の紙幣の厚みを検出するため、異物の付着や重送を確認でき、より正確に紙幣の状態を確認することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、図面を参照して本発明による媒体厚み検出装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は実施例1の媒体厚み検出装置を示す説明図であり、図2は実施例1の媒体厚み検出装置を示す正面図である。
図1において、1は媒体厚み検出装置であり、図示しない金融機関の自動取引装置等の内部に備えられ、図示しない紙幣搬送路により搬送された紙幣の鑑別処理を行う。
2は基準ローラであり、両端部をフレーム等に固定されているベアリングに回転可能に支持され、図示しない駆動機構により回転駆動する。
【0009】
3は可動ローラであり、基準ローラ2に対して対向配置されており、両端部をブラケット4によって固定され、図示しないバネ部材がブラケット4に取り付けられていることで、基準ローラ2を押圧して基準ローラ2に従動し、基準ローラ2との間に紙幣を挟持する。
4はブラケットであり、一端に可動ローラ3を軸支するための孔を備え、図示しないシャフトが挿通する孔(回転支点5)を他端に備えており、回転支点5にシャフトが挿通することで、回転支点5を中心に一端の孔およびそれに軸支された可動ローラ3が図1の矢印Yで示す回転方向に回動するようになっている。
【0010】
また上記の回転支点5となる孔は、そこに挿通するシャフトの径よりも大きめに作られており、これによって可動ローラ3の一部が紙幣に乗り上げた際に、図2の矢印Xで示す回転方向、つまり紙幣の搬送方向に対する左右方向にブラケット4が傾くようになっている。
6は距離センサ(変位センサ)であり、非接触式の変位センサであって紙幣の面方向で可動ローラ3と対向配置、つまり図1においては可動ローラ3の上方に配されており、基準ローラ2と可動ローラ3との間に挟持した紙幣の厚みによって回転支点5を中心に回転して持ち上がったブラケット4との間隔の変化から、可動ローラ3の変位量を検知する。
【0011】
7はジャイロセンサであり、ブラケット4の上部に取り付けられており、紙幣の搬送方向に対する左右への回転方向、つまり図2の矢印Xで示す回転方向にブラケット4および可動ローラ3が傾いたとき、その回転の角速度に基づく傾き量を検知する。
図3は実施例1の厚み検出手段を示すブロック図である。
図3において、10は制御部であり、図示しない記憶部に格納した制御プログラムに従って媒体厚み検知装置1の各部を制御して紙幣の正損判定処理等を行う。
【0012】
12は距離センサ用アンプであり、距離センサ6と接続して、距離センサ6で検知された変位量を入力とし、その入力された変位量を増幅して出力する機能を有する。
13はA/Dコンバータであり、距離センサ用アンプ12と接続し、距離センサ用アンプ12で増幅されて出力された変位量をデジタル変換する機能を有する。
15はジャイロセンサ用アンプであり、ジャイロセンサ7と接続して、ジャイロセンサ7で検知された角速度を入力とし、その傾き量を増幅して出力する機能を有する。
【0013】
16はA/Dコンバータであり、ジャイロセンサ用アンプ15と接続して、ジャイロセンサ用アンプ15で増幅されて出力された傾き量をデジタル変換する機能を有する。
上述した構成の作用について説明する。
図示しない紙幣搬送路から搬送された紙幣が回転する基準ローラ2と可動ローラ3との間で挟持されると、その紙幣の厚みに応じて可動ローラ3が持ち上がり、ブラケット4と共に変位する。
【0014】
ここで、図4は実施例1の可動ローラの一部が紙幣に乗り上げた様子を示す正面図である。
可動ローラ3の一部が紙幣の搬送方向と直交する方向の端部に乗り上げた状態となったとき、可動ローラ3とブラケット4は、可動ローラ3が紙幣に乗り上げた箇所から持ち上がるために、図4に示すように紙幣の搬送方向に対して左右方向に傾いた状態となる。
【0015】
制御部10は距離センサ6から距離センサ用アンプ12、A/Dコンバータ13を介して出力された可動ローラ3の上方向の変位量を認識するが、ここで、図4に示すような可動ローラ3の一部が紙幣に乗り上げた場合、変位量は紙幣の厚みで可動ローラ3全体が上方向に持ち上がったことによる変位量と、可動ローラ3の左右方向への傾きによる変位量とを合成したものになる。
【0016】
そのため、制御部10はジャイロセンサ7からジャイロセンサ用アンプ15、A/Dコンバータ16を介して出力された傾き量を基にして、上述した上方向の変位量を補正するようにする。
制御部10は、距離センサ6から距離センサ用アンプ12、A/Dコンバータ13を介して出力された可動ローラ3の上方向の変位量をp、変位量pから算出する紙幣の厚み値をα(p)、ジャイロセンサ7からジャイロセンサ用アンプ15、A/Dコンバータ16を介して出力された可動ローラ3の傾き量をq、傾き量qに応じた距離センサ6の出力に基づいて算出する可動ローラ3の変位量をβ(q)、傾き量qに応じた紙幣の厚み値をγ(q)として、実際の紙幣の厚み値Tを下記の式により算出する。
【0017】
T=α(p)−β(q)+γ(q)
このように、可動ローラ3の一部が紙幣に乗り上げたときの距離センサ6の出力を基に算出した変位量から、可動ローラ3の傾き量を考慮した距離センサ6による変位量の分を差し引くと共に、ジャイロセンサ7の出力を基に算出した紙幣の厚み値を加えるようにして実際の紙幣の厚み値を算出するようにしている。
【0018】
以上説明したように、本実施例では、搬送された紙幣の厚みを距離センサにより可動ローラの変位量から測定する厚み検知において、紙幣の厚みに応じて変位する可動ローラを軸支して可動ローラと共に回動するブラケット上にジャイロセンサを設け、そのジャイロセンサの出力を基にした可動ローラの傾き量を用いて、距離センサの出力をもとに算出した紙幣の厚み値を補正するので、より精度よく紙幣の厚みを測定することができる。
【実施例2】
【0019】
図5は実施例2の媒体厚み検出装置を示す説明図である。
なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
図5において、20は回転検知センサ(変位センサ)であり、ブラケット4の上部で紙幣の搬送方向におけるジャイロセンサ7の後方に設置され、紙幣の搬送方向に対する前後への回転方向、つまり図5の矢印Yで示す回転方向にブラケット4が回動したときの角速度に基づく傾き量を検知する。
【0020】
図6は実施例2の厚み検知手段を示すブロック図である。
図6において、22は回転検出センサ用アンプであり、回転検出センサ20と接続して、回転検出センサ20で検知された傾き量を入力とし、その傾き量を増幅して出力する機能を有する。
23はA/Dコンバータであり、回転検出センサ用アンプ22と接続して、回転検出センサ用アンプ22で増幅されて出力された傾き量をデジタル変換する機能を有する。
【0021】
上述した構成の作用について説明する。
図示しない紙幣搬送路から搬送された紙幣を回転する基準ローラ2と可動ローラ3との間で挟持した際に、可動ローラ3の一部が紙幣に乗り上げたとき、可動ローラ3は搬送方向に対して左右方向に傾いた状態となるため、制御部10はジャイロセンサ7により検知された可動ローラ3の左右方向の傾き量と回転検出センサ20により検知されたブラケット4の上方への傾き量を認識する。
【0022】
制御部10は、回転検出センサ20の出力を基に算出するブラケット4の紙幣搬送方向に対する上方の傾き量をs、傾き量sから算出する紙幣の厚み値をσ(s)、ジャイロセンサ7の出力を基に算出する可動ローラ3の紙幣搬送方向に対する左右の傾き量をq、左右の傾き量qから算出する紙幣の厚み補正値をγ(q)として、実際の紙幣の厚み値Tは下記の式で算出する。
【0023】
T=σ(s)+γ(q)
このように、回転検出センサ20の出力を基に算出した紙幣の厚み値に、ジャイロセンサ7によって検出した可動ローラ3の傾き量に基づく紙幣の厚み補正値を加えるようにして、実際の紙幣の厚み値を算出するようにしている。
以上説明したように、本実施例では、紙幣の搬送方向の前後への傾きを検出する回転検出センサを設けることによって、その回転検出センサとジャイロセンサにより可動ローラの2極の傾きを検出して、可動ローラの前後方向の傾きから算出する紙幣の厚み量を、ジャイロセンサの出力を基にした可動ローラの左右方向の傾きから算出する紙幣の厚み補正値を加えることで、より精度よく紙幣の厚みを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1の媒体厚み検出装置を示す説明図
【図2】実施例1の媒体厚み検出装置を示す正面図
【図3】実施例1の厚み検出手段を示すブロック図
【図4】実施例1の可動ローラの一部が紙幣に乗り上げた様子を示す正面図
【図5】実施例2の媒体厚み検出装置を示す説明図
【図6】実施例2の厚み検出手段を示すブロック図
【符号の説明】
【0025】
1 媒体厚み検出装置
2 基準ローラ
3 可動ローラ
4 ブラケット
5 回転支点
6 距離センサ
7 ジャイロセンサ
10 制御部
12 距離センサ用アンプ
13、16、23 A/Dコンバータ
15 ジャイロセンサ用アンプ
20 回転検出センサ
22 回転検出センサ用アンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準ローラと、該基準ローラとの間に媒体を挟持して媒体の厚み分変位する可動ローラと、該可動ローラの変位量を検知する変位センサとを備えた媒体厚み検出装置において、
前記可動ローラの一部が媒体搬送方向と直交する方向の媒体端部に乗り上げることで発生する前記可動ローラの傾き量を検知するジャイロセンサを備え、
前記ジャイロセンサで検知した傾き量を基に前記変位センサで検知した変位量を補正して、該補正した変位量によって、前記媒体の厚みを検出することを特徴とする媒体厚み検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の媒体厚み検出装置において、
前記変位センサとして距離センサを用い、該距離センサは、前記可動ローラの変位方向において前記可動ローラに対向配置され、前記可動ローラとの間隔の変化によって変位量を検知することを特徴とする媒体厚み検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の媒体厚み検出装置において、
一端に前記可動ローラを軸支して、他端を支点に回動可能なブラケットを備え、
前記変位センサとして回転検知センサを用い、該回転検知センサを前記ブラケットに設けて、前記可動ローラが変位したときの前記ブラケットの傾き量を前記回転検知センサによって検知し、その傾き量によって前記可動ローラの変位量を検出することを特徴とする媒体厚み検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−222686(P2009−222686A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70607(P2008−70607)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】