説明

媒体収納装置及び媒体処理装置

【課題】従来と比して一段と正確に異常を検知し得る媒体収納装置及びこの媒体収納装置を備えた媒体処理装置を実現する。
【解決手段】一時保留部4は、リセット動作で紙幣を巻き戻すときに、パルスカウントを用いずに、ドラム12の巻き取り開始位置Paと受け渡しローラ25aと25bのクランプ点Pbとの間で、ジャム検知センサ29のON/OFF監視を行うことで、パルスカウントと紙幣位置とにズレが生じていても、巻き取り開始位置Paとクランプ点Pbの間で発生するジャムを検知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体収納装置及び媒体処理装置に関し、例えば、媒体として紙幣を扱う現金自動取引装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣の入出金を顧客の操作に応じて行う現金自動取引装置として、例えば、入金された紙幣を出金にリサイクルする還流型の現金自動取引装置が知られている。
【0003】
このような現金自動取引装置は、例えば、利用者との間で紙幣の授受を行う接客部と、投入された紙幣の金種及び真偽を鑑別する鑑別部と、投入された紙幣を一時的に収納する一時保留部と、金種ごとに紙幣を保管する紙幣カセットなどにより構成されている。
【0004】
この現金自動取引装置は、入金時、利用者が接客部の紙幣入出金口に紙幣を投入すると、投入された紙幣を鑑別部で鑑別し、正常紙幣と鑑別した紙幣を一時保留部に収納する一方、取引すべきでないと鑑別した紙幣を紙幣入出金口へ戻して利用者に返却する。
【0005】
その後、利用者により入金金額が確定されると、現金自動取引装置は、一時保留部に収納している紙幣の金種を鑑別部で再鑑別し、鑑別した金種に応じて紙幣を各紙幣カセットへ保管する。
【0006】
またこの現金自動取引装置は、出金時、利用者が出金金額を指定すると、各紙幣カセットから出金金額に応じた紙幣を接客部に搬送すると共に、この紙幣を鑑別部で鑑別して、接客部の紙幣入出金口に集積する。
【0007】
ここで、このような現金自動取引装置の一時保留部の構成について、図11を用いて説明する。尚、この図11は一時保留部の側面図である。
【0008】
図11に示すように、この一時保留部100には、筐体101前側下方(図中右下)に紙幣入出口102が設けられ、この紙幣入出口102から紙幣を出し入れするようになっている。
【0009】
またこの一時保留部100には、中央に左右方向(図中奥行き方向)に延在する円筒形状のドラム103が設けられ、このドラム103の後方上側(図中左上)に上側リール104が設けられ、ドラム103の後方下側(図中左下)に下側リール105が設けられている。
【0010】
これらドラム103、上側リール104及び下側リール105は、駆動系(図示せず)を介して巻き取りモータ(図示せず)に接続され回転可能となっている。
【0011】
そしてこの一時保留部100は、これらドラム103、上側リール104、下側リール105を回転させることで、上側リール104から引き出される上側テープ106と、下側リール105から引き出される下側テープ107とを、ドラム103外周の頂上部分を巻取開始位置Pとして、下側テープ107の上に上側テープ106を重ねながらドラム103に巻き取ることができるようになっている。
【0012】
さらにこの一時保留部100には、紙幣入出口102からドラム103の後端までを上から覆うようにして上側可動ガイド108が設けられ、さらにこの上側可動ガイド108の前側下方に、上側可動ガイド108の下面に沿って紙幣入出口102近傍からドラム103近傍まで延びる下側可動ガイド109が設けられている。
【0013】
これら上側可動ガイド108及び下側可動ガイド109は、可動ガイドブラケット110により一定の隙間が空くようにして連結されている。この隙間が、紙幣入出口102とドラム103との間の搬送路111を形成するようになっている。
【0014】
さらに一時保留部100には、ドラム103の前方に、搬送路111を挟んで一組の受け渡しローラ112a、112bが対向して設けられ、さらに受け渡しローラ112a、112bよりも紙幣入出口102寄りに、搬送路111を挟んで一組の搬送ローラ113a及び113bが対向して設けられている。
【0015】
これら受け渡しローラ112a、112b及び搬送ローラ113a、113bは、上述の駆動系とは別の駆動系(図示せず)を介して受け渡しモータ(図示せず)に接続され回転可能となっている。
【0016】
そしてこの一時保留部100は、これら受け渡しローラ112a、112b及び搬送ローラ113a、113bを回転させ、受け渡しローラ112a、112bの間、及び搬送ローラ113a、113bの間に紙幣を通すことで、搬送路111内の紙幣入出口102からドラム103への方向またはその逆方向に紙幣を送り出すことができるようになっている。
【0017】
ここで実際、この一時保留部100に紙幣を収納する場合、ドラム103を図中反時計方向へ回転させながら、受け渡しローラ112a、112bと搬送ローラ113a、113bとを回転させることで紙幣を紙幣入出口102からドラム103へと搬送して上側テープ106と下側テープ107との間に送り込み、紙幣を上側テープ106と下側テープ107との間に挟み込んだ状態でドラム103に押し当てるようにして巻き取っていく。
【0018】
一方、この一時保留部100から紙幣を取り出す場合、ドラム103を図中時計方向へ回転させて上側テープ106及び下側テープ107を、それぞれ上側リール104及び下側リール105に巻き取りながら、紙幣を受け渡しローラ112a、112b、搬送ローラ113a、113bへ送り出す。このとき一時保留部100は、受け渡しローラ112a、112b、搬送ローラ113a、113bを収納時とは逆方向に回転させることで紙幣を紙幣入出口102へと搬送する。
【0019】
一時保留部100は、このようにして紙幣を収納することができ、また収納した紙幣を取り出すことができるようになっている。
【0020】
また一時保留部100は、保守作業時に、ドラム103、上側リール104、下側リール105、受け渡しローラ112a、112b、搬送ローラ113a、113bを、図示しないノブによって手動で回転させることができるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【0021】
さらにこの一時保留部100には、ドラム103に巻き取られている紙幣の有無を検知する残留検知センサ114が設けられている。この残留検知センサ114は、例えば、発光素子と受光素子とを有する光電センサであり、その光軸がドラム103の回転軸と直交するように配置されている。
【0022】
さらにこの一時保留部100には、受け渡しローラ112a、112bと、搬送ローラ113a、113bとの間を通る紙幣の有無を検知する受け渡しセンサ115が設けられている。この受け渡しセンサ115も、光電センサであり、その光軸が受け渡しローラ112a、112bと、搬送ローラ113a、113bとの間の搬送路111を横切るように配置されている。
【0023】
この受け渡しセンサ115は、搬送路111内を通る紙幣によって光軸が遮られている間は「ON」、光軸が遮られていないときには「OFF」するようになっている。
【0024】
さらに一時保留部100は、パルスモータでなる巻き取りモータから得られるパルスカウントを制御部(図示せず)のメモリに記憶するようになっている。制御部は、このパルスカウントをもとに、ドラム103に巻き取られた紙幣が、ドラム103のどの位置に巻き取られているのかを仮想的に把握できるようになっている。
【0025】
実際、例えば2枚の紙幣を連続してドラム103に巻き取る場合、制御部は、図12(A)に示すように、一時保留部100に搬送されてくる1枚目の紙幣BL1が、一時保留部100近傍の所定の位置まで搬送されてきたことを、外部からの通知などにより認識した時点で、巻き取りモータの回転を開始させる(すなわちドラム103の回転を開始させる)と共に、この時点のパルスカウントCs(この時点では例えば「0」)をメモリに記憶する。
【0026】
さらに制御部は、受け渡しセンサ115がONするのを監視(これをON監視とも呼ぶ)して、図12(B)に示すように、紙幣BL1の先端が受け渡しセンサ115の光軸に到達したことにより受け渡しセンサ115がONすると、この時点のパルスカウントC1sをメモリに記憶する。
【0027】
その後、制御部は、受け渡しセンサ115がOFFするのを監視(これをOFF監視とも呼ぶ)して、図12(C)に示すように、紙幣BL1の後端が受け渡しセンサ115の光軸から外れたことにより受け渡しセンサ115がOFFすると、この時点のパルスカウントC1eをメモリに記憶する。
【0028】
さらに、制御部は、再び受け渡しセンサ115のON監視を行い、図13(A)に示すように、紙幣BL2の先端が受け渡しセンサ115の光軸に到達したことにより受け渡しセンサ115がONすると、この時点のパルスカウントC2sをメモリに記憶する。
【0029】
その後、制御部は、受け渡しセンサ115のOFF監視を行い、図13(B)に示すように、紙幣BL2の後端が受け渡しセンサ115の光軸から外れたことにより受け渡しセンサ115がOFFすると、この時点のパルスカウントC2eをメモリに記憶する。
【0030】
その後、制御部は、図13(C)に示すように、紙幣BL2がドラム103に巻き取られた時点で、巻き取りモータの回転を停止させる(すなわちドラム103の回転を停止させる)と共に、この時点のパルスカウントCeをメモリに記憶する。
【0031】
このように制御部は、巻き取りモータの回転を開始させた時点及び停止させた時点のパルスカウントCs及びCeと、紙幣BL1及びBL2の先端が受け渡しセンサ115の光軸に到達した時点のパルスカウントC1s及びC2sと、紙幣BL1及びBL2の後端が受け渡しセンサ115の光軸から外れた時点のパルスカウントC1e及びC2eとをメモリに記憶する。
【0032】
制御部は、このようなタイミングでパルスカウントを記憶するようになっている。そして制御部は、このパルスカウントをもとに、ドラム103の回転量と紙幣が巻き取られている位置とを対応付けて管理する。
【0033】
こうすることで、制御部は、パルスカウントから、ドラム103のどの位置に紙幣が巻き取られているのかを仮想的に把握することができる。
【0034】
さらに、このようにして巻き取った2枚の紙幣BL1及びBL2をドラム103から巻き戻す場合、制御部は、巻き取りモータの回転を停止させたときのパルスカウントCeと、2枚目の紙幣BL2の後端が受け渡しセンサ115の光軸を外れたときのパルスカウントC2eとの差分のパルス数と、巻き取りモータの回転速度とをもとに、図14(A)に示すように、巻き取りモータの回転を開始させてから、図14(B)に示すように、紙幣BL2の先端(巻き取り時の後端)が受け渡しセンサ115に到達するまでの時間(これを予想到達時間とも呼ぶ)を算出する。
【0035】
つまり、制御部は、ドラム103に巻き取られている紙幣BL2の巻き戻しが開始されてから、その先端が受け渡しセンサ115に到達するまでの時間を予想到達時間として算出する。
【0036】
そして制御部は、巻き取りモータの回転を開始させると共に、時間の計測を開始する。その後、制御部は、予想到達時間の前後所定時間、受け渡しセンサ115のON監視を行う。ここで、図14(B)に示すように、紙幣BL2が正常に巻き戻されていれば、予想到達時間の前後所定時間内に受け渡しセンサ115がONすることになる。
【0037】
ゆえに、制御部は、予想到達時間の前後所定時間内に受け渡しセンサ115がONしていれば、紙幣BL2が正常に巻き戻されていると判断するようになっている。
【0038】
一方で、予想到達時間の前後所定時間内に受け渡しセンサ115がONしない場合、制御部は、紙幣BL2が正常に巻き戻されていないと判断して、巻き取りモータの回転を停止させると共にエラーを出力する。
【0039】
また制御部は、紙幣BL2の先端が光軸に到達したときのパルスカウントC2sと紙幣BL1の後端が光軸を外れたときのパルスカウントC1eとの差分のパルス数と、巻き取りモータの回転速度とを元に、図14(C)に示すように、巻き戻されている紙幣BL2の後先端が受け渡しセンサ115の光軸を外れてから、図15(A)に示すように、つづく紙幣BL1の先端が受け渡しセンサ115に到達するまでの予想到達時間を算出するようになっている。
【0040】
そして制御部は、紙幣BL2の後端が受け渡しセンサ115の光軸を外れてから、この予想到達時間の前後所定時間、受け渡しセンサ115のON監視を行う。ここで、図15(A)に示すように、紙幣BL1も正常に巻き戻されていれば、予想到達時間の前後所定時間内に受け渡しセンサ115がONすることになる。
【0041】
ゆえに、制御部は、予想到達時間の前後所定時間内に受け渡しセンサ115がONしていれば、紙幣BL1が正常に巻き戻されていると判断するようになっている。そして制御部は、図15(B)、(C)に示すように、紙幣BL1も正常に巻き戻し終えると、巻き取りモータの回転を停止させる。
【0042】
一方で、予想到達時間の前後所定時間内に受け渡しセンサ115がONしない場合、制御部は、紙幣BL1が正常に巻き戻されていないと判断して、巻き取りモータの回転を停止させると共にエラーを出力する。
【0043】
このようにして、一時保留部100の制御部は、紙幣の巻き戻し動作を制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【特許文献1】特開2011−134222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
ところで、上述した従来の自動取引装置に何らかの障害が発生して自動取引装置が停止したときに、復旧作業として、一時保留部100のドラム103に紙幣が巻き取られた状態のままノブを回してドラム103を手動で回転させてしまうと、巻き取り時にメモリに記憶したパルスカウントと、ドラム103に巻き取られている紙幣位置とにズレが生じ、これらの関係がくずれてしまう。
【0046】
一方、自動取引装置の復旧後に実行されるリセット動作では、一時保留部100の紙幣残留チェックを行い、一時保留部100に紙幣が残っている場合、上述の巻き戻し動作を行って紙幣を巻き戻すようになっている。
【0047】
しかしながら、上述のように、パルスカウントとドラム103に巻き取られている紙幣位置とにズレが生じている状態で、巻き戻し動作を行うと、パルスカウントを用いた受け渡しセンサ115のON監視を正確に行うことができない。
【0048】
実際、このような状態で、受け渡しセンサ115のON監視を行うと、パルスカウントと、ドラム103に巻き取られている紙幣位置とのズレにより、実際には紙幣が正常に巻き戻されているにも関わらず、紙幣が正常に巻き戻されていない(巻き戻しエラー)と誤認識してしまう。
【0049】
そこで、リセット動作時には、受け渡しセンサ115のON監視を行わないようにすることも考えられるが、この場合、例えば、ドラム103と受け渡しローラ112a、112bとの間で、ジャム(紙幣詰まり)が発生してもこれを検知できず、ドラム103を回転させつづけてしまう。
【0050】
すると、例えば、図16に示すように、詰まった紙幣(これをジャム紙幣とも呼ぶ)が、下側可動ガイド109の先端部分に滞留することにより下側テープ107が屈曲してしまい、テープ損傷などの装置故障を引き起こす。
【0051】
このように、従来の一時保留部100は、リセット動作時など特定の状況下で、ジャム(紙幣詰まり)などの異常を正確に検知できなかった。
【0052】
本発明は以上の点を考慮したもので、従来と比して一段と正確に異常を検知し得る媒体収納装置及びこの媒体収納装置を備えた媒体処理装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0053】
かかる課題を解決するため本発明の媒体収納装置においては、媒体を巻き取るドラムと、巻き取り時に、所定の入出口から入ってくる媒体をドラムへと送り出す一方で、巻き戻し時に、ドラムから巻き戻された媒体を入出口へと送り出す受け渡しローラと、巻き取り時に得られたドラムの回転量を表す情報を用いずに、ドラムの巻き取り開始位置と受け渡しローラとの間を通る媒体を監視する監視部とを設けるようにした。
【0054】
こうすることで、例えばリセット動作で媒体を巻き戻す時に、巻き取り時に得られるパルスカウントを用いる場合に生じてしまう巻き戻しエラーの誤認識を無くしつつ、ドラムと受け渡しローラとの間で発生したジャムを検知することができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、例えばリセット動作で媒体を巻き戻す時に、巻き取り時に得られるパルスカウントを用いる場合に生じてしまう巻き戻しエラーの誤認識を無くしつつ、ドラムと受け渡しローラとの間で発生したジャムを検知することができ、かくして従来と比して一段と正確に異常を検知し得る媒体収納装置及びこの媒体収納装置を備えた媒体処理装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施の形態における現金自動取引装置の構成を示す略線図である。
【図2】一時保留部の構成(1)を示す略線図である。
【図3】一時保留部の構成(2)を示す略線図である。
【図4】可動ガイドの動きを示す略線図である。
【図5】紙幣の角部がドラムから浮き上がっている様子を示す略線図である。
【図6】一時保留部の構成(3)を示す略線図である。
【図7】巻き戻し処理手順を示すフローチャートである。
【図8】ジャム検知センサによるON/OFF監視の流れを示す略線図である。
【図9】ジャムの発生を示す略線図である。
【図10】他の実施の形態におけるジャム検知センサの位置を示す略線図である。
【図11】従来の一時保留部の構成を示す略線図である。
【図12】従来の一時保留部による紙幣の巻き取り(1)を示す略線図である。
【図13】従来の一時保留部による紙幣の巻き取り(2)を示す略線図である。
【図14】従来の一時保留部による紙幣の巻き戻し(1)を示す略線図である。
【図15】従来の一時保留部による紙幣の巻き戻し(2)を示す略線図である。
【図16】従来の一時保留部におけるジャムの発生を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、発明を実施するための形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0058】
[1.実施の形態]
[1−1.現金自動取引装置の構成]
図1に、本実施の形態における還流型の現金自動取引装置1の構成例を示す。現金自動取引装置1は、接客部2、鑑別部3、一時保留部4、紙幣カセット5、リジェクトカセット6などのサブユニットと、これらサブユニットを接続して紙幣を搬送する搬送路7と、紙幣の搬送先を切り替えるブレード8と、全体を統括制御するメイン制御部(図示せず)とで構成されている。
【0059】
接客部2は、利用者との間で紙幣の授受を行うようになっており、入金時に利用者が投入した紙幣を1枚ずつ分離して搬送路7へ送り出す分離機構と、出金時に紙幣カセット5から搬送されてくる紙幣を集積する集積機構とを備えている。
【0060】
鑑別部3は、入金時には接客部2から搬送されてくる紙幣を鑑別する一方で、出金時には紙幣カセット5から搬送されてくる紙幣を鑑別し、得られた鑑別結果を制御部に送る。制御部は、この鑑別部3から送られてくる鑑別結果に基づいて、紙幣の搬送先を決定する。
【0061】
一時保留部4は、入金時に鑑別部3により正常紙幣と鑑別された紙幣を一時的に収納し、利用者により入金金額が確認されると、この正常紙幣を1枚ずつ分離して搬送路7へ送り出す。このようにして一時保留部4から搬送路7へ送り出された正常紙幣は、鑑別部3により金種が鑑別され、その金種に応じた紙幣カセット5に保管される。
【0062】
また一時保留部4は、出金時に鑑別部3により異常紙幣と鑑別された紙幣を一時的に収納し、利用者により出金金額が確認されると、これを搬送路7へ送り出す。このようにして一時保留部4から紙幣搬送路7へ送り出された異常紙幣は、リジェクトカセット6に保管される。
【0063】
またこの一時保留部4は、ユニット制御部4aを備え、このユニット制御部4aにより制御されるようになっている。
【0064】
紙幣カセット5は、出金用に補充された紙幣及び入金取引で入金された紙幣を保管するようになっており、接客部2と同様に、分離機構と集積機構とを備えている。
【0065】
リジェクトカセット6は、鑑別部3により異常紙幣と鑑別された紙幣を保管するようになっており、集積機構を備えている。
【0066】
ブレード8は、図示しない回転駆動機構により回転可能となっており、制御部からの指令信号に応じて所定角度回転することで紙幣の搬送先を切り替えるようになっている。
【0067】
[1−2.一時保留部の構成]
【0068】
次に、この現金自動取引装置1の一時保留部4の構成について、図2乃至図6を用いて説明する。尚、図2乃至図6は、一時保留部4のユニット制御部4aを除いた部分の構成を示す図である。
【0069】
図2に示すように、この一時保留部4には、筐体10の前側下方(図中右下)に紙幣入出口11が設けられ、この紙幣入出口11から紙幣を出し入れするようになっている。
【0070】
またこの一時保留部4には、中央に左右方向(図中奥行き方向)に延在する円筒形状のドラム12が設けられ、このドラム12の後方上側(図中左上)に上側リール13が設けられ、ドラム12の後方下側(図中左下)に下側リール14が設けられている。
【0071】
これらドラム12、上側リール13及び下側リール14は、駆動系(図示せず)を介して巻き取りモータ(図示せず)に接続され回転可能となっている。
【0072】
ここで、上側テープ15は、上側リール13からドラム12の上方を通るようにドラム12の前方斜め上に設けられている上側ローラ16に向かって前方に引き出され、さらにこの上側ローラ16によって、ドラム12外周の頂上部分に向かって後方に折り返されている。
【0073】
一方、下側テープ17は、下側リール14からドラム12の下方に設けられている下側第1ローラ18に向かって前方に引き出され、さらにこの下側第1ローラ18によって、ドラム12の前方を通るようにドラム12の前方に設けられている下側第2ローラ19に向かって上方に折り曲げられ、さらにこの下側第2ローラ19によって、ドラム12外周の頂上部分に向かって後方に折り返されている。
【0074】
そして、この一時保留部4は、ドラム12、上側リール13、下側リール14を回転させることで、上側リール13から引き出される上側テープ15と、下側リール14から引き出される下側テープ17とを、ドラム12外周の頂上部分を巻き取り開始位置Paとして、下側テープ17の上に上側テープ15を重ねながらドラム12に巻き取ることができるようになっている。
【0075】
さらにこの一時保留部4には、紙幣入出口11からドラム12の後端までを上から覆うようにして上側可動ガイド20が設けられ、さらにこの上側可動ガイド20の前側下方に、上側可動ガイド20の下面に沿って紙幣入出口11近傍からドラム12近傍の下側第2ローラ19まで延びる下側可動ガイド21が設けられている。
【0076】
これら上側可動ガイド20及び下側可動ガイド21は、可動ガイドブラケット22により一定の隙間が空くようにして連結されている。この隙間が、紙幣入出口11とドラム12との間の搬送路23を形成する。
【0077】
また上側可動ガイド20には、ドラム12のほぼ真上となる位置に巻き取りローラ24が設けられており、この巻き取りローラ24が、ドラム12外周の頂上部分(すなわち巻き取り開始位置Pa)に上から当接するようになっている。
【0078】
さらに一時保留部4には、ドラム12の前方の下側第2ローラ20よりも紙幣入出口11寄りに、搬送路23を挟んで一組の受け渡しローラ25a、25bが対向して設けられ、さらに受け渡しローラ25a、25bよりも紙幣入出口11寄りに、搬送路23を挟んで一組の搬送ローラ26a、26bが対向して設けられている。
【0079】
またこれらのうち、受け渡しローラ25aは、上側可動ガイド20に保持され、受け渡し路ローラ25bと搬送ローラ26bは、下側可動ガイド21に保持されるようになっている。
【0080】
これら受け渡しローラ25a、25b及び搬送ローラ26a、26bは、上述の駆動系とは別の駆動系(図示せず)を介して受け渡しモータ(図示せず)に接続され回転可能となっている。
【0081】
そしてこの一時保留部4は、これら受け渡しローラ25a、25b及び搬送ローラ26a、26bを回転させ、受け渡しローラ25a、25bの間、及び搬送ローラ26a、26bの間に紙幣を通すことで、搬送路23内の紙幣入出口11からドラム12への方向またはその逆方向に紙幣を送り出すことができるようになっている。
【0082】
ここで実際、この一時保留部4に紙幣を収納する場合、ドラム12を図中反時計方向へ回転させながら、受け渡しローラ25a、25bと搬送ローラ26a、26bとを回転させることで紙幣を紙幣入出口11からドラム12へと搬送して、上側テープ15と下側テープ17の間に送り込み、紙幣を上側テープ15と下側テープ17との間に挟んだ状態でドラム12に押し当てるようにして巻き取っていく。
【0083】
一方、この一時保留部4から紙幣を取り出す場合、ドラム12を図中時計方向へ回転させて上側テープ15及び下側テープ17を、それぞれ上側リール13及び下側リール14に巻き取りながら、紙幣を搬送路23へ送り出す。このとき一時保留部4は、受け渡しローラ25a、25b、搬送ローラ26a、26bを収納時とは逆方向に回転させることで紙幣を紙幣入出口11へと搬送する。
【0084】
一時保留部4は、このようにして紙幣を巻き取って収納することができ、また収納した紙幣を巻き戻して取り出すことができるようになっている。
【0085】
尚、図2では、上側リール13、下側リール14、上側テープ15、上側ローラ16、下側テープ17、下側第1ローラ18、下側第2ローラ19として、図中手前側の上側リール13、下側リール14、上側テープ15、上側ローラ16、下側テープ17、下側第1ローラ18、下側第2ローラ19のみを示しているが、実際には、それぞれ図中奥側にもう1個ずつ設けられている。
【0086】
つまり、一時保留部4には、上側リール13、下側リール14、上側テープ15、上側ローラ16、下側テープ17、下側第1ローラ18、下側第2ローラ19のそれぞれが、図中手前側と奥側に(すなわち左右に)1個ずつの計2個ずつ設けられている。
【0087】
ゆえに、一時保留部4は、紙幣の左側を、左側の上側テープ15と下側テープ17とで挟み込み、紙幣の右側を、右側の上側テープ15と下側のテープ17とで挟み込んで、ドラム12に巻き取るようになっている。
【0088】
また同様に、受け渡しローラ25a、25b、搬送ローラ26a、26bについても、図3に示すように、それぞれ左右1個ずつの計2個ずつ設けられており、これらを回転させ、紙幣をこれらの間に通すことで、紙幣を搬送するようになっている。
【0089】
ところで、ドラム12の直径(巻き取った紙幣とテープの厚みも含む)は、ドラム12に巻き取られた紙幣の枚数によって変化する。
【0090】
そこで一時保留部4では、このような変化に追従して、図4に示すように、上側可動ガイド20と下側可動ガイド21が搬送ローラ26bの回転軸と同軸の回転支点で回転することにより、常に巻き取りローラ24がドラム12外周の頂上部分(すなわち巻き取り開始位置Pa)に当接するようになっている。
【0091】
さらにこの一時保留部4は、保守作業時に、ドラム12、上側リール13、下側リール14、受け渡しローラ25a及び25b、搬送ローラ26a及び26bを、図示しないノブによって手動で回転させることができるようになっている。
【0092】
さらにこの一時保留部4には、図2に示すように、ドラム12に巻き取られている紙幣の有無を検知する残留検知センサ27が設けられている。この残留検知センサ27は、例えば、1組の発光素子と受光素子とからなる光電センサであり、その光軸がドラム12の回転軸と直交するように配置されている。
【0093】
さらにこの一時保留部4には、受け渡しローラ25a、25bと、搬送ローラ26a、26bとの間を通る紙幣の有無を検知する受け渡しセンサ28が設けられている。この受け渡しセンサ28も、1組の発光素子と受光素子とからなる光電センサであり、その光軸が受け渡しローラ25a、25bと、搬送ローラ26a、26bとの間の搬送路23を横切るように配置されている。
【0094】
この受け渡しセンサ28は、搬送路23内を通る紙幣によって光軸が遮られている間は「ON」、光軸が遮られていないときには「OFF」するようになっている。
【0095】
さらに一時保留部4は、紙幣の巻き取り時に、パルスモータでなる巻き取りモータから得られるパルスカウントをユニット制御部4a(図1)のメモリに記憶するようになっている。ユニット制御部4aは、このパルスカウントをもとに、ドラム12に巻き取られた紙幣が、ドラム12のどの位置に巻き取られているのかを仮想的に把握するようになっている。
【0096】
尚、この場合の具体的な方法については、図12及び図13を用いて説明した従来の方法と同様であるので、詳しい説明については省略する。
【0097】
すなわち、一時保留部4は、巻き取り時に、受け渡しセンサ28のON/OFF監視を行い、ON/OFFするタイミングでメモリに記憶したパルスカウントをもとに、ドラム12の回転量と紙幣が巻き取られている位置とを対応付けて管理することで、ドラム12に巻き取られた紙幣が、ドラム12のどの位置に巻き取られているのかを仮想的に把握するようになっている。
【0098】
さらに一時保留部4は、紙幣の巻き戻し時に、メモリに記憶したパルスカウントをもとに、紙幣が受け渡しセンサ28に到達する時間を予想し、この時間(予想到達時間)で受け渡しセンサ28のON監視を行うことで、紙幣が正常に巻き戻されているかどうか判断するようになっている。
【0099】
尚、この場合の具体的な方法については、図14及び図15を用いて説明した従来の方法と同様であるので、詳しい説明については省略する。
【0100】
ところで、自動取引装置1に何らかの障害が発生して自動取引装置1が停止したときに、復旧作業として、一時保留部4のドラム12に紙幣が巻き取られた状態でノブを回してドラム12を手動で回転させてしまうと、巻き取り時にメモリに記憶したパルスカウントと、ドラム12に巻き取られている紙幣位置とにズレが生じて、これらの関係がくずれてしまう。
【0101】
この状態のまま、自動取引装置1のリセット動作で紙幣を巻き戻そうとすると、パルスカウントと紙幣位置とのズレにより、パルスカウントを用いた受け渡しセンサ28のON監視を正確に行うことができず、紙幣が正常に巻き戻されているかどうか正確に判断できなくなる。
【0102】
ゆえに、一時保留部4は、リセット動作時には受け渡しセンサ28のON監視を行わないようになっている。しかしながら、このままだと、ドラム12と受け渡しローラ25a、25bとの間にジャムが発生した場合に、これを検知できなくなってしまう。
【0103】
そこで、この一時保留部4には、ドラム12の巻き取り開始位置Paと受け渡しローラ25aと25bの近接点(すなわちクランプ点)Pbとの間で発生するジャムを検知するジャム検知センサ29が設けられている。このジャム検知センサ29も、1組の発光素子と受光素子とで構成される光電センサである。
【0104】
このジャム検知センサ29も、紙幣によって光軸が遮られている間は「ON」、光軸が遮られていないときには「OFF」するようになっている。
【0105】
このジャム検知センサ29は、光軸が下側可動ガイド21の後端部上面とその上方の上側可動ガイド20の下面との間を通るように配置されている。
【0106】
具体的な例としては、一方の素子が下側可動ガイド21の後端部内に設けられていると共に、他方の素子が一方の素子の上方の上側可動ガイド20側に設けられている。
【0107】
このような位置にジャム検知センサ29を配置した理由は、第1に、下側可動ガイド21の後端部が、ドラム12に巻き取られている紙幣と、搬送路23へ送り出される紙幣との分岐部となっており、紙幣を巻き戻すときにジャムが発生し易い場所である点。
【0108】
第2に、ジャム検知センサ29の光軸がドラム12の巻き取り開始位置Paに近すぎると、巻き取られている紙幣によってジャムを誤検出する可能性が高くなってしまう点。
【0109】
第3に、ジャム検知センサ29の光軸が受け渡しローラ25a、25bのクランプ点pbに近すぎると、ドラム12の巻き取り開始位置Paと受け渡しローラ25aと25bのクランプ点Pbとの間で発生したジャム紙幣の先端が、光軸まで到達せず、ジャムを検出できなくな可能性が高くなる点。
【0110】
このような理由から、ジャム検知センサ29の一方の素子を、下側可動ガイド21の後端部内に設け、他方の素子をその上方の上側可動ガイド20側に設けるようになっている。
【0111】
一時保留部4は、このような位置に配置されたジャム検知センサ29を、リセット動作時に、パルスカウントとは切り離して動作させることで、ドラム12の巻き取り開始位置Paと受け渡しローラ25aと25bのクランプ点Pbとの間で発生するジャムを正確に検知できるようになっている。
【0112】
ところで、図5に示すように、巻き取られた紙幣BLがスキューしていると、手前側の上側テープ15及び下側テープ17より外側(手前側)、もしくは奥側の上側テープ15及び下側テープ17より外側(奥側)で、紙幣BLの角部BLxがドラム12から浮き上がり、この角部BLxが下側可動ガイド21の後端部上面の端を通過することがある。
【0113】
この状態は異常ではないので、この状態をジャムと誤検知しないように、ジャム検知センサ29は、図5(A)に示すように、手前側の上側テープ15及び下側テープ17と、奥側の上側テープ15及び下側テープ17との間の中央に配置されるようになっている。
【0114】
尚、下側可動ガイド21の後端部内に配置されているジャム検知センサ29は、図6に示すように、例えば、下側可動ガイド21の後端部に設けられた、光軸を通す半透明なカバー30で保護されている。
【0115】
[1−3.一時保留部によるリセット動作時の巻き戻し処理手順]
次に、図7に示すフローチャートを用いて、一時保留部4によるリセット動作時の巻き戻し処理手順RTについて説明する。尚、この巻き戻し処理手順RTは、一時保留部4のユニット制御部4aにより実行される処理手順である。
【0116】
一時保留部4のユニット制御部4aは、リセット動作時に、残留検知センサ27により一時保留部4内に紙幣が巻き取られたまま残留していることを検知すると、この巻き戻し処理手順RTを開始して、ステップSP1に移る。
【0117】
ステップSP1においてユニット制御部4aは、紙幣を巻き戻す方向に回転するよう、受け渡しモータを起動して、次のステップSP2に移る。この時点で、受け渡しローラ25a及び25b、搬送ローラ26a及び26bのそれぞれが、紙幣を巻き戻す方向に回転を開始することになる。
【0118】
ステップSP2においてユニット制御部4aは、紙幣を巻き戻す方向に回転するよう、巻き取りモータを起動して、次のステップSP3に移る。この時点で、受け渡しローラ25a及び25b、搬送ローラ26a及び26bにくわえて、ドラム12、上側リール13、下側リール14も、紙幣を巻き戻す方向に回転を開始することになる。
【0119】
ステップSP3においてユニット制御部4aは、ジャム検知センサ29のON監視を開始すると共に、時間の計測を開始して、次のステップSP4に移る。
【0120】
ステップSP4においてユニット制御部4aは、ジャム検知センサ29のON監視を開始してから制限時間経過したか否か(すなわちタイムアウトしたか否か)を判定する。ここで設定されている制限時間は、ドラム12が回転しっぱなしになってしまうことを防ぐ為に、ON監視を行う時間に制限を設けるものであり、例えば、ドラム12数十回転分の時間が設定されている。
【0121】
ここで、例えば、図8(A)に示すように巻き取りモータの回転を開始させてから、所定時間内に、図8(B)に示すように、紙幣BL3の先端がジャム検知センサ29の光軸に到達することにより、ジャム検知センサ29がONすると、ユニット制御部4aは、このステップSP4で肯定結果を得て、ステップSP5に移る。
【0122】
ステップSP5においてユニット制御部4aは、ジャム検知センサ29のOFF監視を開始すると共に、再び時間の計測を開始して、次のステップSP6に移る。
【0123】
ステップSP6においてユニット制御部4aは、ジャム検知センサ29のOFF監視を開始してから制限時間経過したか否か(すなわちタイムアウトしたか否か)を判定する。ここで設定されている制限時間は、紙幣が正常にジャム検知センサ29を通過していったかを判断するためのものであり、ドラム12の回転速度に基づく紙幣の搬送速度と、紙幣の搬送方向の長さ(例えば短辺の長さ)で決まる通過時間より若干長い時間が設定されている。
【0124】
ここで、例えば、図8(B)に示すように紙幣BL3の先端がジャム検知センサ29に到達してから、制限時間内に、図8(C)に示すように、紙幣BL3の後端がジャム検知センサ29の光軸から外れることにより、ジャム検知センサ29がOFFすると、ユニット制御部4aは、このステップSP6で肯定結果を得て、ステップSP7に移る。
【0125】
ステップSP7においてユニット制御部4aは、残留検知センサ27により一時保留部4内に紙幣がまだ残留しているか否かを判定する。このステップSP7で肯定結果を得ると、ユニット制御部4aは、再びステップSP3に戻って、再度、ジャム検知センサ29のON監視を開始すると共に、時間の計測を開始する。
【0126】
これに対して、ステップSP7で否定結果を得ると、このことは、残留していた紙幣が全て正常に巻き戻されたことを意味する。このときユニット制御部4aは、ステップSP8に移り、残留していた紙幣が全て正常に巻き戻されたと判断して、次のステップSP9に移る。
【0127】
ステップSP9においてユニット制御部4aは、巻き取りモータを停止して、次のステップSP10に移る。この時点で、ドラム12、上側リール13、下側リール14が、回転を停止する。
【0128】
ステップSP10においてユニット制御部4aは、受け渡しモータを停止することにより、ドラム12、上側リール13、下側リール14にくわえて、受け渡しローラ25a及び25b、搬送ローラ26a及び26bも停止して、この巻き戻し処理手順RTを正常終了する。
【0129】
一方で、上述のステップSP4において、ジャム検知センサ29のON監視を開始してから制限時間経過した(すなわちタイムアウトした)ことにより肯定結果を得た場合、このことは、制限時間経過しても紙幣BL3が巻き戻ってこなかったことを意味する。
【0130】
このときユニット制御部4aは、ステップSP11に移り、装置故障が発生している可能性があると判断して、次のステップSP13に移る。
【0131】
ステップSP13においてユニット制御部4aは、巻き取りモータを停止して、次のステップSP14に移り、ステップSP14において受け渡しモータも停止することにより、ドラム12、上側リール13、下側リール14にくわえて、受け渡しローラ25a及び25b、搬送ローラ26a及び26bも停止して、この巻き戻し処理手順RTをエラー終了する。
【0132】
また一方で、上述のステップSP6において、ジャム検知センサ29のOFF監視を開始してから制限時間経過した(すなわちタイムアウトした)ことにより肯定結果を得た場合、このことは、制限時間経過しても紙幣BL3がジャム検知センサ29を通過しておらず、例えば図9に示すように、ドラム12の巻き取り開始位置Paと受け渡しローラ25aと25bのクランプ点Pbとの間でジャムが発生していることを意味する。
【0133】
このときユニット制御部4aは、ステップSP12に移り、ジャムが発生していると判断して、次のステップSP13に移る。
【0134】
ステップSP13においてユニット制御部4aは、巻き取りモータを停止して、次のステップSP14に移り、ステップSP14において受け渡しモータも停止することにより、ドラム12、上側リール13、下側リール14にくわえて、受け渡しローラ25a及び25b、搬送ローラ26a及び26bも停止して、この巻き戻し処理手順RTをエラー終了する。
【0135】
このような巻き戻り処理手順RTにしたがって、ユニット制御部4aは、リセット動作時の巻き戻しを行うようになっている。
【0136】
[1−4.動作及び効果]
以上の構成において、一時保留部4は、リセット動作で紙幣を巻き戻すときに、巻き取り時に記憶したパルスカウントは用いずに、ジャム検知センサ29によるON/OFF監視を行うことで、パルスカウントと紙幣位置とにズレが生じていても、ドラム12の巻き取り開始位置Paと受け渡しローラ25aと25bのクランプ点Pbとの間で発生するジャムを検知することができる。
【0137】
またこの一時保留部4では、ジャム検知センサ29の光軸が下側可動ガイド21の後端部上面とその上方の上側可動ガイド20の下面との間を通るように、ジャム検知センサ29の一方の素子が下側可動ガイド21の後端部内に設けられていると共に、他方の素子が上方の上側可動ガイド20側に設けられている。
【0138】
すなわち、一時保留部4には、ジャムが発生し易く、且つ発生したジャムを確実に検知できる位置に、ジャム検知センサ29が配置されている。
【0139】
これにより、一時保留部4は、このジャム検知センサ29により、ドラム12の巻き取り開始位置Paと受け渡しローラ25aと25bのクランプ点Pbとの間で発生するジャムを正確に検知することができる。
【0140】
またこのジャム検知センサ29は、左側の上側テープ15及び下側テープ17と、右側の上側テープ15及び下側テープ17との間の中央に配置されるようになっている。
【0141】
これにより、一時保留部4は、巻き取られた紙幣がスキューして、手前側のテープ15、17より外側もしくは奥側のテープ15、17より外側で紙幣の角部が浮き上がり、これが下側可動ガイド21の後端部上面の端を通過しても、これをジャムと誤検知することなく、正確にジャムを検知することができる。
【0142】
以上の構成によれば、一時保留部4は、リセット動作で紙幣を巻き戻すときに、巻き取り時にメモリに記憶したパルスカウントを用いることで生じる巻き戻しエラーの誤検知を無くしつつ、ドラム12と受け渡しローラ25a、25bとの間で発生したジャムを正確に検知することができる。かくして一時保留部4は、従来と比して一段と正確に紙幣巻き取り時の異常を検知することができる。
【0143】
[2.他の実施の形態]
[2−1.他の実施の形態1]
尚、上述した実施の形態では、紙幣を、左側の上側テープ15及び下側テープ17と、右側の上側テープ15及び下側テープ14の上下左右4本のテープで、紙幣の左右両側を挟み込んでドラム12に巻き取る方式の一時保留部4に本発明を適用した。
【0144】
これに限らず、左側の上側テープと右側の上側テープの左右2本のテープとドラムとの間に紙幣を挟みこんで巻き取る方式の一時保留部や、1本の上側テープとドラムとの間に紙幣を挟みこんで巻き取る方式の一時保留部や、上側テープと下側テープの2本のテープで紙幣を挟み込んでドラムに巻き取る方式の一時保留部などに本発明を適用してもよく、また適用することができる。さらに左右方向に3本以上のテープを有する一時保留部に適用してもよく、また適用することができる。
【0145】
ここで例えば、テープが上側に1本のみ、もしくは上下に1本ずつの場合(すなわち左右方向に1本のテープを有する場合)、図10に示すように、ジャム検知センサ40の一方の素子を、下側可動ガイド41の後端部内で、且つテープ42の幅方向の近傍に配置するようにすればよい。
【0146】
この場合、テープ42の左右両側のどちらか一方の側の近傍にジャム検知センサ40の一方の素子を配置するようにしてもよいし、左右両側に配置するようにしてもよい。
【0147】
また、上側テープが左右に1本ずつ、または上側テープと下側テープが左右に1本ずつの場合(すなわち左右方向に2本のテープを有する場合)も、左右のテープの中央に配置するばかりでなく、それぞれのテープの左右両側や、どちらか一方などに配置するようにしてもよい。
【0148】
さらに、左右方向に3本のテープを有する場合も、それぞれのテープの左右両側や、どちらか一方などに配置するようにしてもよい。
【0149】
すなわち、ジャム検知センサの一方の素子の位置は、下側可動ガイド201の後端部内で、且つテープとテープの間、もしくはテープの幅方向の近傍であればよい。
【0150】
またこれに限らず、例えば、テープがジャム検知センサの光軸を通す半透明であるならば、テープ内を光軸が通るようにテープの内側となる位置に、ジャム検知センサの一方の素子を配置するようにしてもよい。
【0151】
尚、ジャム検知センサを複数配置した場合には、例えば、複数のジャム検知センサの1つがジャムを検知したらジャムが発生していると判断してもよいし、複数のジャム検知センサのうちのいくつか(設定された数)がジャムを検知したらジャムが発生していると判断するなどしてもいよい。
【0152】
さらに上述した実施の形態では、ジャム検知センサ29の一方の素子を下側可動ガイド201の後端部内に設け、他方の素子を一方の素子の上方の上側可動ガイド20側に設けるようにしたが、他方の素子を、上側可動ガイド20内に設けるようにしてもよい。
【0153】
このようにすれば、上側可動ガイド20と下側可動ガイド21が回転しても、これらに対してジャム検知センサ29の光軸がずれるようなことはなく、より正確にジャムを検知できる。
【0154】
またこれに限らず、ジャム検知センサ29の光軸が、ドラム12の巻き取り開始位置Paと受け渡しローラ25aと25bのクランプ点Pbとの間の紙幣の搬送路を横切るようになっていれば、発光素子と受光素子をどこに配置してもよい。
【0155】
この場合に、例えば、光軸をプリズムなどの光学系で折り曲げるようにしてもよい。このようにすれば、発光素子と受光素子の位置の自由度が増す。
【0156】
さらに言えば、ジャム検知センサ29は、発光素子と受光素子からなる光電センサでなくてもよく、要は、ドラム12の巻き取り開始位置Paと受け渡しローラ25aと25bのクランプ点Pbとの間の紙幣を監視できるセンサであれば、どのようなセンサであってもよい。
【0157】
[2−2.他の実施の形態2]
また上述した実施の形態では、ドラム12と、ドラム12の巻き取り開始位置Paと受け渡しローラ25aと25bのクランプ点Pbとの間にジャム検知センサ29を設けると共に、受け渡しローラ25a、25bと、搬送ローラ26a、26bとの間に受け渡しセンサ28を設けるようにした。
【0158】
これに限らず、受け渡しセンサ28を省略して、この受け渡しセンサ28の役割を、ジャム検知センサ29に担わせるようにしてもよい。
【0159】
この場合、リセット動作時以外の通常時には、図12乃至図15を用いて説明したようにして、ジャム検知センサ29を受け渡しセンサ28のように動作させることで、受け渡しセンサ28の役割をこのジャム検知センサ29に担わせる。
【0160】
一方、リセット動作時には、巻き戻し処理手順RTで説明したようにして、ジャム検知センサ29を動作させる。
【0161】
このようにすれば、受け渡しセンサ28を省略できる分、一時保留部4の構成を簡略化することができ、生産コストを下げることができる。
【0162】
[2−3.他の実施の形態3]
さらに上述した実施の形態では、巻き取りモータにパルスモータを用いて、受け渡しセンサ28がON/OFFするタイミングでパルスカウントをメモリに記憶させ、このパルスカウントをもとに、ドラム12のどの位置に巻き取られているのかを把握するようにした。
【0163】
これに限らず、巻き取りモータに、パルスモータの代わりにDCモータとエンコーダを用いて、エンコーダの出力として得られる例えば回転角度をパルスカウントの代わりとしてメモリに記憶させるようにしてもよい。
【0164】
またこれに限らず、同様の機能を有するものであれば、これら以外のモータを巻き取りモータに用いるようにしてもよい。
【0165】
[2−4.他の実施の形態4]
さらに上述した実施の形態では、リセット動作で紙幣を巻き戻すときに、ジャム検知センサ29のON/OFF監視を時間で制限するようにしたが、これに限らず、時間の代わりに、巻き取りモータの回転数で制限するようにしてもよい。
【0166】
この場合、制限回転数を示す制限パルス数を設定しておき、巻き取りモータから得られるパルス数がこの制限パルス数に達するまでの間、ON/OFF監視を行うようにすればよい。
【0167】
[2−5.他の実施の形態5]
さらに上述した実施の形態では、巻き戻し処理手順RTのステップSP11において、ユニット制御部4aが、装置故障が発生している可能性があると判断するようにし、またステップSP12において、ジャムが発生していると判断するようにした。
【0168】
ここで、このような判断結果を、ユニット制御部4aが、例えば、自動取引装置1のメイン制御部に送るようにして、メイン制御部が、例えば、保守管理用の表示部(図示せず)に、この判断結果を、エラー状況として表示させるなどしてもよい。
【0169】
このようにすれば、一時保留部4で、どのようなエラーが起きているのかを、保守管理者に的確に知らせることができる。
【0170】
[2−6.他の実施の形態6]
さらに上述した実施の形態では、搬送路23を挟んで1対の受け渡しローラ25a、25bを設けるようにしたが、これに限らず、受け渡しローラをどちらか1個にして、受け渡しローラが回転しながら紙幣を上側可動ガイド20又は下側可動ガイド21との間に挟み込んで送り出すようにしてもよい。このことは、搬送ローラ26a、26bについても同様である。
【0171】
[2−7.他の実施の形態7]
さらに、上述した実施の形態では、媒体収納装置としての一時保留部4に本発明を適用するようにしたが、これに限らず、例えば、紙幣以外の媒体を扱う装置の一時保留部に適用してもよく、要は、ドラムへ媒体を巻き取って収納し、収納した媒体をドラムから巻き戻して取り出すことが可能な媒体収納装置であれば適用することができる。
【0172】
[2−8.他の実施の形態8]
さらに、上述した実施の形態では、具体例として、媒体収納装置としての一時保留部4に、ドラム12の巻き取り開始位置Paと受け渡しローラ25aと25bのクランプ点Pbとの間で紙幣を監視する監視部のセンサとして機能するジャム検知センサ29と、監視部の制御部として機能するユニット制御部4aとを設けるようにしたが、これに限らず、これらジャム検知センサ29やユニット制御部4aと同様に機能するものであれば、これらジャム検知センサ29やユニット制御部4aの代わりに他のセンサや制御部を一時保留部4に設けるようにしてもよい。
【0173】
[2−9.他の実施の形態9]
さらに、上述した実施の形態では、本発明を、媒体処理装置としての現金自動取引装置1に適用したが、本発明は、これに限らず、ドラムへ媒体を巻き取って収納し、収納した媒体をドラムから巻き戻して取り出すことが可能な媒体収納装置を備える媒体処理装置であれば、紙幣以外の媒体を扱うコピー機や、自動販売機、券売機など、種々の装置に適用することができる。
【0174】
[2−10.他の実施の形態10]
さらに、本発明は、上述した実施の形態と、上述した他の実施の形態とに限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した実施の形態と上述した他の実施の形態の一部または全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明は、ドラムへ媒体を巻き取って収納し、収納した媒体をドラムから巻き戻して取り出すことが可能な媒体収納装置を備える現金自動取引装置や、コピー機、自動販売機、券売機などの装置で広く利用することができる。
【符号の説明】
【0176】
1……現金自動取引装置、4、100……一時保留部、4a……ユニット制御部、11、102……紙幣入出口、12、103……ドラム、15、106……上側テープ、17、107……下側テープ、20、108……上側可動ガイド、21、41、109……下側可動ガイド、23、111……搬送路、25a、25b、112a、112b……受け渡しローラ、29、40……ジャム検知センサ、42……テープ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を巻き取るドラムと、
巻き取り時に、所定の入出口から入ってくる媒体を上記ドラムへと送り出す一方で、巻き戻し時に、上記ドラムから巻き戻された媒体を、上記入出口へと送り出す受け渡しローラと、
巻き取り時に得られた上記ドラムの回転量を表す情報を用いずに、上記ドラムの巻き取り開始位置と上記受け渡しローラとの間を監視する監視部と
を備える媒体収納装置。
【請求項2】
上記監視部は、
発光部及び受光部を有するセンサと制御部とでなり、
上記センサは、光軸が上記ドラムの巻き取り開始位置と上記受け渡しローラとの間の媒体の搬送路を横切るように配置され、当該光軸が媒体に遮られることでON/OFFし、
上記制御部は、
上記センサのON/OFFを監視することで、上記ドラムの巻き取り開始位置と上記受け渡しローラとの間で媒体詰まりが発生しているか否かを判断する
請求項1に記載の媒体収納装置。
【請求項3】
さらに上記入出口の近傍から上記ドラムの近傍まで上記媒体をガイドするガイドを備え、
上記受け渡しローラは、
上記ガイドの途中に設けられ、
上記監視部のセンサは、
上記光軸が上記ガイドの上記ドラム近傍の先端部を通るように配置されている
請求項2に記載の媒体収納装置。
【請求項4】
上記媒体を、テープにより上記ドラムに押し当てるようにして当該テープと共に上記ドラムに巻き取る
請求項3に記載の媒体収納装置。
【請求項5】
上記テープは、上記ドラムの軸方向に2本設けられ、当該2本のテープにより上記媒体の一端側と他端側とを上記ドラムに押し当てるようにして、当該2本のテープと共に上記ドラムに巻き取る
請求項4に記載の媒体収納装置。
【請求項6】
上記監視部のセンサは、
上記光軸が上記2本のテープの間を通るように配置されている
請求項5に記載の媒体収納装置。
【請求項7】
上記監視部のセンサは、
上記光軸が、上記テープの幅方向の近傍を通るように配置されている
請求項4に記載の媒体収納装置。
【請求項8】
上記監視部の制御部は、
上記光軸上を上記媒体が設定された制限時間内に通過したか否かにより媒体詰まりが発生しているか否かを判断する
請求項2に記載の媒体収納装置。
【請求項9】
上記制限時間は、
上記媒体の搬送速度と搬送方向の長さとをもとに設定されている
請求項8に記載の媒体収納装置。
【請求項10】
媒体を巻き取るドラムと、巻き取り時に、所定の入出口から入ってくる媒体を上記ドラムへと送り出す一方で、巻き戻し時に、上記ドラムから巻き戻された媒体を、上記入出口へと送り出す受け渡しローラと、巻き取り時に得られた上記ドラムの回転量を表す情報を用いずに、上記ドラムの巻き取り開始位置と上記受け渡しローラとの間を監視する監視部とを有する媒体収納装置
を備える媒体処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2013−84204(P2013−84204A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224973(P2011−224973)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】