説明

媒体搬送装置およびプリンター

【課題】搬送方向で離間する2つの駆動ローラー対で長尺状の記録紙を正方向および逆方向に搬送する際に、記録紙のスキューを防止できるプリンターを提供すること。
【解決手段】プリンター1は、印刷位置Aを規定するプラテン12を経由して延びる搬送経路14に、ラベル用紙2の幅方向の両端に当接するガイド面20、21と、ガイド面20、21の正方向D1の下流側に配置された紙送りローラー対40と、上流側に配置された繰り出しローラー対30を備える。ラベル用紙2を正方向D1に搬送する際には、繰り出しローラー対30を開放状態とし、紙送りローラー対40でラベル用紙2をニップして搬送する。ラベル用紙2を逆方向D2に搬送する際には、紙送りローラー対40を開放状態とし、繰り出しローラー対30でラベル用紙2をニップして搬送する。これにより、ラベル用紙2をガイド面20、21に沿わせて搬送でき、スキューの発生を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送方向で離間する位置に配置された2つの駆動ローラー対によってロール紙から繰り出される長尺状のシート状媒体を正方向および逆方向に搬送する媒体搬送装置およびプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
シート状媒体を搬送経路に沿って正方向および逆方向に搬送する媒体処理装置は特許文献1に記載されている。同文献の媒体処理装置は、搬送方向で離間する位置にシート状媒体をニップして搬送することが可能な2つの駆動ローラー対を備えている。各駆動ローラー対は搬送経路の下側に配置された駆動ローラーと上側に配置された押えローラーを備えており、押えローラーは、駆動ローラーとの間でシート状媒体をニップするニップ位置と、駆動ローラーとの間にシート状媒体の厚さ寸法以上の隙間を形成する開放位置との間を移動可能となっている。シート状媒体が正方向および逆方向に搬送される際には、搬送方向の下流側に位置する一方の駆動ローラー対の押えローラーを開放位置に移動させて当該駆動ローラー対を開放状態とするとともに、上流側に位置する他方の駆動ローラー対の押えローラーをニップ位置に移動させて当該駆動ローラー対をニップ状態とし、上流側に位置する駆動ローラー対を駆動してシート状媒体を搬送している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−3719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、搬送方向で離間する位置に配置された2つの駆動ローラー対を搭載する媒体搬送装置によって、ロール紙から繰り出される長尺状のシート状媒体を正方向および逆方向に搬送することが考えられる。また、この場合に、2つの駆動ローラー対の間に、搬送方向と直交する方向からシート状媒体の幅方向の端縁に当接して当該シート状媒体を搬送方向に案内するガイド面を設け、シート状媒体のスキューを防止することが考えられる。
【0005】
このような媒体搬送装置において、特許文献1のように、シート状媒体を搬送方向の上流側に位置する駆動ローラー対のみでニップして搬送すると、ガイド面を通過するシート状媒体に張力が発生しないので、シート状媒体がガイド面に沿って搬送されず、スキューが発生してしまう。そこで、ガイド面の上流側および下流側に配置された双方の駆動ローラー対でシート状媒体をニップし、双方の駆動ローラーを駆動してシート状媒体を搬送することが考えられるが、この場合には、上流側の駆動ローラー対の回転量と下流側の駆動ローラー対の回転量との間に差が生じると、これら2つの駆動ローラー対の間でシート状媒体が歪んで搬送路上のシート状媒体の位置が不安定となる。この結果、シート状媒体がガイド面に沿って搬送されず、スキューが発生してしまう。
【0006】
本発明の課題は、この点に鑑みて、搬送方向で離間する2つの駆動ローラー対によってロール紙から繰り出された長尺状のシート状媒体を正方向および逆方向に搬送する際に、シート状媒体にスキューが発生することを防止或いは抑制できる媒体搬送装置およびプリンターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、
ロール紙から繰り出される長尺状のシート状媒体を搬送経路に沿って正方向および逆方向に搬送する媒体搬送装置において、
搬送方向と直交する方向から前記シート状媒体の幅方向の端縁に当接して当該シート状媒体を当該搬送方向に案内するガイド面と、
前記搬送方向において前記ガイド面の両側に配置された2つの駆動ローラー対と、
各駆動ローラー対を、前記シート状媒体をニップするニップ状態と前記シート状媒体を開放する開放状態との間で変位させるローラー対変位機構と、
前記シート状媒体を前記正方向および前記逆方向に搬送する際に、前記搬送方向の下流側に位置する一方の前記駆動ローラー対をニップ状態とするとともに上流側に位置する他方の前記駆動ローラー対を開放状態とし、前記下流側に位置する一方の前記駆動ローラー対を駆動して前記シート状媒体を搬送する搬送制御部と、
を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、搬送方向の下流側に位置する一方の駆動ローラー対でシート状媒体を引っ張りながら搬送するので、ガイド面を通過するシート状媒体に張力が発生する。この結果、シート状媒体をガイド面に沿わせて搬送できるので、スキューの発生を防止或いは抑制できる。また、2つの駆動ローラー対のうち搬送方向の上流側に位置する駆動ローラー対は開放状態とされるので、搬送方向の上流側の駆動ローラー対の回転がシート状媒体の搬送に影響を与えることを抑制できる。この結果、2つの駆動ローラー対の回転量の差に起因してシート状媒体が歪んで搬送路上のシート状媒体の位置が不安定になることがないので、シート状媒体をガイド面に沿わせて搬送でき、スキューの発生を防止或いは抑制できる。
【0009】
本発明において、前記ガイド面として、前記シート状媒体の前記幅方向の両端縁に当接可能な一対のガイド面を備えていることが望ましい。このようにすれば、シート状媒体にスキューが発生することをより抑制できる。
【0010】
次に、本発明のプリンターは、
上記の媒体搬送装置を有し、
前記シート状媒体は、記録紙であり、
前記搬送経路は、前記ロール紙が転動可能に装填されるロール紙装填部から印刷ヘッドによる印刷位置を経由して延びており、
2つの前記駆動ローラー対および前記ガイド面は、前記ロール紙装填部と前記印刷位置との間に位置していることを特徴とする。
【0011】
本発明のプリンターによれば、上記の媒体搬送装置を有するので、記録紙が印刷位置に向かって正方向に搬送される際に記録紙のスキューの発生が防止或いは抑制される。また、記録紙上の印刷開始目標位置を印刷ヘッドによる印刷位置に位置合わせするためなどに記録紙を逆方向に向かって搬送する際にも、記録紙のスキューの発生が防止或いは抑制される。従って、記録紙のスキューに起因して印刷ヘッドによる印刷品質が低下することを防止できる。
【0012】
ここで、記録紙がロール紙装填部に装填されたロール紙から繰り出されている構成のプリンターでは、記録紙がロール紙装填部から印刷位置に向かう正方向に搬送される場合に、ロール紙装填部でロール紙が転動する際に記録紙に発生する負荷、例えば、ロール紙とロール紙装填部との間の摩擦力やロール紙に働く慣性力によって、記録紙に張力が付与される。すなわち、記録紙が正方向に搬送される場合にはガイド面よりも搬送方向の上流側で記録紙に張力が付与されているので、搬送方向の上流側に位置する駆動ローラー対を開放状態とした場合でも、ガイド面を通過する記録紙が弛んだり歪んだりすることがなく、記録紙をガイド面に沿わせて搬送できる。この結果、記録紙にスキューが発生することを確実に防止できる。一方、記録紙が印刷位置からロール紙装填部に向かう逆方向に搬送される際には、上記のロール紙およびロール紙装填部のように、ガイド面よりも搬送方向の上流側で記録紙に張力を付与するものがないので、搬送方向の上流側に位置する駆動ローラー対を開放状態とした場合には、ガイド面を通過する記録紙が弛んだり歪んだりする場合を完全に回避することが難しくなる。このため、記録紙をガイド面に沿わせて搬送することができず、記録紙にスキューが発生してしまうことがある。かかる問題に対して、前記印刷位置は、プラテンによって規定されており、前記プラテンは、プラテン表面に形成された吸引口から空気を吸い込んで前記印刷位置を搬送される前記記録紙を当該プラテン表面から浮き上がらないように吸引している吸引プラテンであり、少なくとも前記記録紙が前記印刷位置から前記ロール紙装填部に向かう方向に搬送されるときに吸引によって当該記録紙に張力を付与する構成を備えれば、記録紙が印刷位置からロール紙装填部に向かう逆方向に搬送される際に、ガイド面よりも搬送方向の上流側で記録紙に張力を付与することができる。従って、記録紙が逆方向に搬送される際にも、記録紙にスキューが発生することを確実に防止できる。
【0013】
本発明において、前記印刷ヘッドは、インクジェットヘッドであり、前記印刷位置に停止した状態で当該印刷位置を搬送される前記記録紙に印刷を施すものとすることができる。すなわち、記録紙にスキューが発生すると印刷品質の低下を招き易いラインインクジェットプリンターに上記の媒体搬送装置を搭載すれば、印刷品質を維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の媒体搬送装置によれば、搬送方向で離間する2つの駆動ローラー対によってロール紙から繰り出された長尺状のシート状媒体を正方向および逆方向に搬送する際に、2つの駆動ローラー対の間に配置されたガイド面にシート状媒体を沿わせることができる。よって、搬送経路に沿って搬送されるシート状媒体にスキューが発生することを防止或いは抑制できる。
【0015】
また、本発明のプリンターによれば、印刷位置を搬送される記録紙のスキューが防止或いは抑制されるので、記録紙のスキューに起因して印刷ヘッドによる印刷品質が低下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のプリンターの全体構成およびラベル用紙を示す説明図である。
【図2】ラベル用紙を搬送するための機構の斜視図である。
【図3】ラベル用紙の搬送動作を司る制御系の概略ブロック図である。
【図4】ラベル用紙を正逆方向に搬送する搬送動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したプリンターを説明する。
【0018】
(全体構成)
図1(a)は本発明の実施形態のプリンターの全体構成を示す概略縦断面図であり、図1(b)はプリンターに装填されるラベル用紙の斜視図である。図2はラベル用紙を搬送するための機構をプリンター前方の上方から見た斜視図である。本発明のプリンター1は、複数種類のカラーインクを用いて長尺状のラベル用紙(シート状媒体/記録紙)2に印刷を行うラインインクジェットプリンターである。ラベル用紙2は、図1(b)に示すように、ロール紙3から繰り出される長尺状の台紙4の表面に、その長さ方向に沿って一定の間隔で剥離可能な状態で、一定幅および一定長さのラベル5が貼り付けられているものである。
【0019】
図1(a)に示すように、プリンター1の後側部分にはロール紙3が転動可能な状態で装填されるロール紙装填室(ロール紙装填部)10が設けられている。ロール紙装填室10に装填されたロール紙3から引き出されたラベル用紙2(台紙4およびラベル5)は、インクジェットヘッド11による印刷位置Aを規定しているプラテン12を経由して用紙排出口13に至る搬送経路14に沿って搬送される。
【0020】
ロール紙装填室10の上方にはラベル用紙2のスキューを防止するための用紙ガイド15が配置されている。用紙ガイド15は、図2に示すように、搬送経路14においてロール紙装填室10の上方の搬送経路部分を規定している搬送面16を備えるフレーム部17と、プリンター幅方向から搬送経路14を挟む一対のガイド部18、19を備えている。搬送面16はプリンター前方に向かって僅かに下方に傾斜している。
【0021】
一対のガイド部18、19において対向している内側面は搬送面16に対して垂直なガイド面20、21となっている。一対のガイド面20、21は、ラベル用紙2の幅方向の端縁に搬送方向と直交するプリンター幅方向から当接して当該ラベル用紙2を搬送方向に案内する。本例では、一対のガイド部18、19のうちの一方のガイド部19が、プリンター幅方向にスライド可能な状態でフレーム部17に取り付けられており、当該ガイド部19をプリンター幅方向に移動させることによってガイド面20、21同士が対向する幅寸法を微調整することが可能となっている。
【0022】
フレーム部17の後端部分には負荷ローラー22が設けられている。負荷ローラー22は、プリンター幅方向において一対のガイド面20、21のほぼ中央に位置しており、搬送経路14に引き出されたラベル用紙2を負荷ローラー22とフレーム部17との間に通過させることが可能な状態で、フレーム部17に固定されている。負荷ローラー22の幅寸法は、ガイド面20、21同士が対向している幅寸法の1/6以下となっている。
【0023】
用紙ガイド15のプリンター後方の斜め上方には、繰り出しローラー対(駆動ローラー対)30が配置されている。繰り出しローラー対30は、プリンター幅方向において搬送経路14の中央に位置している。繰り出しローラー対30は、繰り出しモーター31(図3参照)によって正逆方向に回転駆動させられる繰り出しローラー32と、繰り出しローラー32よりも小径で、繰り出しローラー32との間でラベル用紙2をニップ可能な繰り出し押えローラー33を備えている。繰り出しローラー32の幅寸法は、搬送経路14の幅寸法の1/2よりも短い。繰り出し押えローラー33の幅寸法は、繰り出しローラー32の幅寸法よりも短く、負荷ローラー22と同様の寸法となっている。
【0024】
また、繰り出し押えローラー33は、繰り出し押えローラー移動機構(ローラー対変位機構)34によって、繰り出しローラー32との間にラベル用紙2をニップするニップ位置33Aと、繰り出しローラー32との間にラベル用紙2の厚さ寸法以上の空間を形成する開放位置33Bとの間を移動させられる。繰り出し押えローラー33がニップ位置33Aに移動すると、繰り出しローラー対30はラベル用紙2をニップするニップ状態となり、繰り出し押えローラー33が開放位置33Bに移動すると、繰り出しローラー対30はラベル用紙2を開放する開放状態となる。繰り出し押えローラー移動機構34は、繰り出し押えローラー33を移動させるための駆動源として押えローラー移動用モーター35(図3参照)を備えている。繰り出し押えローラー33がニップ位置33Aに配置されると、繰り出し押えローラー33は、プリンター幅方向における繰り出しローラー32の中央部分に押し付けられる。
【0025】
用紙ガイド15のプリンター前方には紙送りローラー対(駆動ローラー対)40が配置されている。紙送りローラー対40は、ラベル用紙2に下側から当接する紙送りローラー41と、ラベル用紙2に上側から当接して紙送りローラー41との間にラベル用紙2をニップ可能な紙送り押えローラー42を備えている。紙送りローラー対40の下側には紙送りローラー41を正逆方向に回転させるための紙送りモーター43が配置されている。紙送りモーター43と紙送りローラー41の間には、紙送りモーター43の回転を減速して紙送りローラー41に伝達する減速機構44が構成されている。
【0026】
紙送りローラー41は、一対のガイド面20、21の間の幅寸法と同様の幅寸法を備えている。紙送り押えローラー42の幅寸法は、紙送りローラー41の幅寸法の1/6以下であり、負荷ローラー22と同様の寸法となっている。紙送り押えローラー42は、紙送り押えローラー移動機構(ローラー対変位機構)45によって、紙送りローラー41との間でラベル用紙2をニップするニップ位置42Aと、紙送りローラー41との間にラベル用紙2の厚さ寸法以上の空間を形成する開放位置42Bの間を移動させられる。紙送り押えローラー42がニップ位置42Aに移動すると、紙送りローラー対40はラベル用紙2をニップするニップ状態となり、紙送り押えローラー42が開放位置42Bに移動すると、紙送りローラー対40はラベル用紙2を開放する開放状態となる。紙送り押えローラー移動機構45は紙送り押えローラー42を移動させるための駆動源として押えローラー移動用モーター46(図3参照)を備えている。紙送り押えローラー42がニップ位置42Aに配置されると、紙送り押えローラー42は、プリンター幅方向における紙送りローラー41の中央部分に押し付けられる。
【0027】
紙送りローラー41のプリンター前方にはプラテン12が配置されている。プラテン12は、プラテン表面12aに形成された複数の吸引口50から空気を吸い込んで印刷位置Aを搬送されるラベル用紙2をプラテン表面12aから浮き上がらないように吸引する吸引プラテンである。
【0028】
プラテン12の上方にはキャリッジ51に搭載されたインクジェットヘッド11が配置されている。インクジェットヘッド11は、ラベル用紙2よりも幅広に形成されており、そのインクノズルは、ラベル用紙2のラベル5(印刷領域)をカバーできる幅の領域に配列されている。インクジェットヘッド11は、キャリッジ51に搭載された状態で、図1に示す印刷位置Aと、搬送経路14からプリンター幅方向の外側に外れたホームポジション(不図示)との間を往復移動するように構成されている。インクジェットヘッド11は、印刷位置Aに停止した状態で搬送経路14を搬送されるラベル用紙2に印刷を施し、印刷が終了するとホームポジションに退避させられて待機する。待機中には、インクジェットヘッド11のインクノズルの目詰まりを防止あるいは解消するためのメンテナンス動作が行なわれる。
【0029】
プラテン12の下方にはインクカートリッジ装着部52が設けられている。インクカートリッジ装着部52には、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色のインクのそれぞれを貯留するインクカートリッジが装着される。インクカートリッジ装着部52にインクカートリッジを装着すると、図示しないインク供給用のポンプ機構がインクカートリッジ内のインクタンクと接続された状態となり、インクジェットヘッド11へのインクの供給が可能となる。
【0030】
ラベル用紙2は、ロール紙3からプリンター後方に向かって上方に引き出された後、繰り出しローラー32に掛け渡され、繰り出しローラー対30を介してプリンター前方に向かって斜め下方に引き出される。さらに、ラベル用紙2は、負荷ローラー22を介して用紙ガイド15の搬送面16に沿う方向に引き出され、用紙ガイド15の一対のガイド面20、21の間を経由した後に、紙送りローラー対40を介して、プラテン表面12aを通過するように配置される。
【0031】
ラベル用紙2が搬送経路14に配置されると、プリンター1は、プラテン表面12aへのラベル用紙2の吸引を開始して、この吸引状態を維持する。また、プリンター1は、紙送りローラー41或いは繰り出しローラー32を駆動して、ラベル用紙2をプリンター前方に向かう正方向D1、或いは、正方向D1とは反対の逆方向D2に搬送し、ラベル用紙2のラベル5のうち印刷対象のラベル5上の印刷開始目標位置を印刷位置Aに位置決めする。
【0032】
そして、外部の機器からプリンター1に印刷指令が供給されると、プリンター1は、紙送りローラー41によってラベル用紙2を正方向D1に搬送する紙送り動作と、インクジェットヘッド11からインクを吐出するインク吐出動作とを並行して行うことにより、印刷位置Aを通過するラベル5に印刷を施す。印刷が終了すると、紙送りローラー41によってラベル用紙2を更に正方向D1に搬送し、印刷が施されたラベル5を用紙排出口13から外側に露出させる。これにより、ユーザーは台紙4からラベル5を剥離することが可能となる。
【0033】
その後、外部の機器からプリンター1に新たな印刷指令が供給されると、プリンター1は、繰り出しローラー32を駆動してラベル用紙2を逆方向D2に搬送し、ラベル用紙2のラベル5のうち、印刷が施されたラベル5の次のラベル5上の印刷開始目標位置を印刷位置Aに位置決めする。しかる後に、紙送りローラー41によってラベル用紙2を正方向D1に搬送する紙送り動作と、インクジェットヘッド11からインクを吐出するインク吐出動作とを並行して行うことにより当該ラベル5に印刷を施す。そして、印刷が施されたラベル5を用紙排出口13から外側に露出させる。
【0034】
(ラベル用紙の搬送動作)
図3はラベル用紙2を搬送する制御系の概略ブロック図である。図4(a)はラベル用紙2を正方向D1に搬送する搬送動作の説明図であり、図4(b)はラベル用紙2を逆方向D2に搬送する搬送動作の説明図である。
【0035】
図3に示すように、プリンター1は、ラベル用紙2の搬送を司る搬送制御部60を備えている。搬送制御部60の出力側には、繰り出しモーター31、紙送りモーター43、押えローラー移動用モーター35、および、押えローラー移動用モーター46が接続されている。搬送制御部60は、繰り出しモーター31を駆動制御することにより繰り出しローラー32を駆動する。搬送制御部60は、押えローラー移動用モーター35を駆動制御することにより繰り出し押えローラー移動機構34を駆動して、繰り出し押えローラー33をニップ位置33Aと開放位置33Bの間で移動させる。さらに、搬送制御部60は、紙送りモーター43を駆動制御することにより紙送りローラー41を駆動する。また、搬送制御部60は、押えローラー移動用モーター46を駆動制御することにより紙送り押えローラー移動機構45を駆動して、紙送り押えローラー42をニップ位置42Aと開放位置42Bの間で移動させる。
【0036】
図4(a)に示すように、ラベル用紙2を正方向D1に搬送する際には、搬送制御部60は、ガイド面20、21の搬送方向の下流側に位置している紙送りローラー対40をニップ状態とし、搬送方向の上流側に位置している繰り出しローラー対30を開放状態とし、紙送りローラー対40によってラベル用紙2を搬送する。より具体的には、紙送りローラー対40の紙送り押えローラー42をニップ位置42Aに移動させるとともに、繰り出しローラー対30の繰り出し押えローラー33を開放位置33Bに移動させる。そして、搬送制御部60は、紙送りローラー41を駆動して、ラベル用紙2を搬送する。
【0037】
ここで、紙送りローラー対40はラベル用紙2を引っ張りながら搬送するので、紙送りローラー対40の搬送方向の上流側においてラベル用紙2には張力が発生する。また、ラベル用紙2の正方向D1への搬送に伴ってロール紙3がロール紙装填室10内で転動する際には、ロール紙3とロール紙装填室10の間の摩擦力やロール紙3の慣性力により発生する負荷F1によって、ラベル用紙2には張力が付与される。これらの結果、ラベル用紙2が正方向D1に搬送される際に、ラベル用紙2の搬送面16上の位置が安定し、ラベル用紙2をガイド面20、21に沿わせることができるので、ラベル用紙2にスキューが発生することを防止或いは抑制できる。また、ガイド面20、21の搬送方向の上流側に位置している繰り出しローラー対30は、繰り出しローラー32と繰り出し押えローラー33との間に空間が形成された開放状態とされ、搬送方向の上流側の繰り出しローラー対30の回転がラベル用紙2の搬送に与える影響が少ない。この結果、紙送りローラー対40と繰り出しローラー対30の回転量の差に起因してラベル用紙2が歪んで搬送面16上のラベル用紙2の位置が不安定になることがないので、ラベル用紙2をガイド面20、21に沿わせて搬送することができ、スキューの発生を防止或いは抑制できる。
【0038】
なお、ラベル用紙2を正方向D1に搬送する際には、繰り出しローラー32を、ラベル用紙2の搬送に伴って共回り可能な状態とする。或いは、紙送りローラー対40によるラベル用紙2の搬送量と同じ搬送量でラベル用紙2を搬送することが可能な回転速度以下で繰り出しローラー32を駆動する。
【0039】
次に、図4(b)に示すように、ラベル用紙2を逆方向D2に搬送する際には、搬送制御部60は、ガイド面20、21の搬送方向の下流側に位置している繰り出しローラー対30をニップ状態とし、搬送方向の上流側に位置している紙送りローラー対40を開放状態とし、繰り出しローラー対30によってラベル用紙2を搬送する。より具体的には、繰り出しローラー対30の繰り出し押えローラー33をニップ位置33Aに移動させるとともに、紙送りローラー対40の紙送り押えローラー42を開放位置42Bに移動させる。そして、搬送制御部60は、繰り出しローラー32を駆動して、ラベル用紙2を搬送する。
【0040】
ここで、繰り出しローラー対30はラベル用紙2を引っ張りながら搬送するので、繰り出しローラー対30の搬送方向の上流側においてラベル用紙2には張力が発生する。また、ガイド面20、21よりも搬送方向の上流側においてラベル用紙2を吸引しているプラテン12は、吸引による負荷F2によってラベル用紙2に張力を付与している。これらの結果、ラベル用紙2が逆方向D2に搬送される際に、ラベル用紙2の搬送面16上の位置が安定し、ラベル用紙2をガイド面20、21に沿わせることができるので、ラベル用紙2にスキューが発生することを防止或いは抑制できる。また、ガイド面20、21の搬送方向の上流側に位置している紙送りローラー対40は、紙送りローラー41と紙送り押えローラー42との間に空間が形成された開放状態とされ、搬送方向の上流側の紙送りローラー対40の回転がラベル用紙2の搬送に与える影響が少ない。この結果、紙送りローラー対40と繰り出しローラー対30の回転量の差に起因してラベル用紙2が歪んで搬送面16上のラベル用紙2の位置が不安定になることがないので、シート状媒体をガイド面20、21に沿わせて搬送でき、スキューの発生を防止或いは抑制できる。
【0041】
なお、ラベル用紙2を逆方向D2に搬送する際には、紙送りローラー41を、ラベル用紙2の搬送に伴って共回り可能な状態にしておく。
【0042】
(その他の実施の形態)
なお、上記の例では、ガイド面として一対のガイド面20、21を備えているが、いずれか一方のガイド面を備えることにより、ラベル用紙2のスキューの発生を抑制することが可能となる。
【0043】
また、上記の例では、用紙ガイド15のフレーム部17の後端部分に負荷ローラー22が設けられているが、搬送経路14において、繰り出しローラー対30から用紙ガイド15を介して紙送りローラー対40に至る搬送経路部分が直線状に形成されている場合には、負荷ローラー22を省略することができる。すなわち、負荷ローラー22を省略しても、ラベル用紙2を用紙ガイド15の搬送面16に沿って搬送することができる。また、プリンター1で使用できる印刷媒体はラベル用紙2に限られるものではなく、長尺状の記録紙がロール紙から繰り出されているものを使用できる。
【符号の説明】
【0044】
1・・プリンター、2・・ラベル用紙(シート状媒体/記録紙)、3・・ロール紙、4・・台紙、5・・ラベル、10・・ロール紙装填室(ロール紙装填部)、11・・インクジェットヘッド(印刷ヘッド)、12・・プラテン、12a・・プラテン表面、13・・用紙排出口、14・・搬送経路、15・・用紙ガイド、16・・搬送面、17・・フレーム部、18・19・・ガイド部、20・21・・ガイド面、22・・負荷ローラー、30・・繰り出しローラー対(駆動ローラー対)、31・・繰り出しモーター、32・・繰り出しローラー、33・・繰り出し押えローラー、33A・・ニップ位置、33B・・開放位置、34・・繰り出し押えローラー移動機構(ローラー対変位機構)、35・・押えローラー移動用モーター、40・・紙送りローラー対(駆動ローラー対)、41・・紙送りローラー、42・・紙送り押えローラー、42A・・ニップ位置、42B・・開放位置、43・・紙送りモーター、44・・減速機構、45・・紙送り押えローラー移動機構(ローラー対変位機構)、46・・押えローラー移動用モーター、50・・吸引口、51・・キャリッジ、52・・インクカートリッジ装着部、60・・搬送制御部、A・・印刷位置、D1・・正方向、D2・・逆方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙から繰り出される長尺状のシート状媒体を搬送経路に沿って正方向および逆方向に搬送する媒体搬送装置において、
搬送方向と直交する方向から前記シート状媒体の幅方向の端縁に当接して当該シート状媒体を当該搬送方向に案内するガイド面と、
前記搬送方向において前記ガイド面の両側に配置された2つの駆動ローラー対と、
各駆動ローラー対を、前記シート状媒体をニップするニップ状態と前記シート状媒体を開放する開放状態との間で変位させるローラー対変位機構と、
前記シート状媒体を前記正方向および前記逆方向に搬送する際に、前記搬送方向の下流側に位置する一方の前記駆動ローラー対をニップ状態とするとともに上流側に位置する他方の前記駆動ローラー対を開放状態とし、前記下流側に位置する一方の前記駆動ローラー対を駆動して前記シート状媒体を搬送する搬送制御部と、
を有することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ガイド面として、前記シート状媒体の前記幅方向の両端縁に当接可能な一対のガイド面を備えていることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の媒体搬送装置を有し、
前記シート状媒体は、記録紙であり、
前記搬送経路は、前記ロール紙が転動可能に装填されるロール紙装填部から印刷ヘッドによる印刷位置を経由して延びており、
2つの前記駆動ローラー対および前記ガイド面は、前記ロール紙装填部と前記印刷位置との間に位置していることを特徴とするプリンター。
【請求項4】
請求項3において、
前記印刷位置は、プラテンによって規定されており、
前記プラテンは、プラテン表面に形成された吸引口から空気を吸い込んで前記印刷位置を搬送される前記記録紙を当該プラテン表面から浮き上がらないように吸引している吸引プラテンであり、少なくとも前記記録紙が前記印刷位置から前記ロール紙装填部に向かう方向に搬送されるときに吸引によって当該記録紙に張力を付与することを特徴とするプリンター。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記印刷ヘッドは、インクジェットヘッドであり、前記印刷位置に停止した状態で当該印刷位置を搬送される前記記録紙に印刷を施すことを特徴とするプリンター。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−60265(P2013−60265A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200263(P2011−200263)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】