説明

媒体発行装置

【課題】磁気カードやICカード等の新規発行や更新発行、さらには書き換え発行を行なうことができる、省スペース対応の媒体発行装置を提供する。
【解決手段】カード状記録媒体2を発行する媒体発行装置1であって、媒体2を発行するための媒体排出口10と、発行前の複数の媒体2を媒体排出口10と略等しい高さの最上位部27よりも下側に積層して収納するとともに、媒体2のうち最低位の媒体2aを1枚毎に繰り出し可能な媒体繰り出し部21を有するホッパー20と、媒体排出口10とホッパー20との間に設けられ、媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を媒体排出口10へ向けて搬送する傾斜搬送路30と、傾斜搬送路30上に設けられ、媒体2に対して所定情報の書き込みを行なう情報書き込み機構である印字装置70とを備える媒体発行装置により、上記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体発行装置に関し、さらに詳しくは、磁気カードやICカード等の新規発行や更新発行、さらには書き換え発行を行なうことができる、省スペース対応の媒体発行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気カードやICカード等の記録媒体が多方面で広く用いられており、商品やサービスの購入代金支払いの際に利用するための一定金額の価値を有するカード型の有価証券であるプリペイドカードが普及している。また、このような記録媒体には、繰り返し貨幣価値を追加(チャージ)して利用できるカードもある。その例としては、鉄道やバスなどの公共交通機関を利用する際に利用できる運賃、乗車回数や利用期間を磁気カードやICカードなどに記録した各種の乗車カードがある。こうした中、各種の記録媒体を新規に発行する装置や、新しい媒体に更新することができる装置が検討されている。
【0003】
例えば下記特許文献1には、多種のカードを、カード毎の処理を行なうユニットに振り分けて搬送する手前の共通搬送路中に、搬送路切替ガイドを回動可能に設け、その搬送路切替ガイドの周囲に、前記各ユニットに連続するユニットガイドを放射状に配置した搬送路切替部を設け、搬送路切替部に一時保留したカードを前記各ユニットガイドに選択的に接続するようにしたカード処理装置が提案されている。さらに、同文献では、カードを搬送する搬送路のインサータユニットのカード走行路の両側にマーク検知センサを配置したカード処理装置も提案されており、カードの挿入方向を間違えても処理できるようにしている。
【0004】
前記のカード処理装置によるカードの新規発行は、積層されたリライタブルカード(書き換え可能カードのこと)をホッパーより1枚毎出し、データ印字し、一旦搬送路切替部で保留し、さらに、カードの種類が磁気カードであるかICカードであるか、即ち、いずれのデータ処理をするかにより、それぞれの書き込み機能部に機能別に振り分け処理し、その書き込み機能部で書き込み処理した後に受け取りゲートまで搬送し、新規カードを発行する。また、カードの更新発行においては、前記受け取りゲートと同じカード挿入ゲートに投入された磁気カード又はICカードを、カードの種類に対応した書き込み機能部に振り分け搬送し、その書き込み機能部で所定のデータを読み書きし、再度受け取りゲートまで搬送して更新発行する。
【特許文献1】特開2005−242435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載のような従来のカード処理装置には以下のような不具合がある。(1)使用期間切れで無効になるなど不要になったカードの廃券処理機能や廃券入れがなく、装置の外で別途に廃券処理が必要であるという不都合がある。(2)搬送路切替部における切替角度が小さく、カードを表裏反転させたり、裏面への印字ができないので、印字等の処理が不能の場合はカード返却となり、利用者に不便である。(3)ホッパーから印字部、搬送路切替部及び受け取りゲートまでが直線的に水平配置されており一定の装置の奥行きが必要で、装置自体が大きくなってしまう。(4)同様に水平配置されているので、ホッパーに収容する媒体量を多くすると装置の高さが必要となり、余分なスペースが発生する。即ち、ホッパーの高さには制限があり、収容する媒体量を多くできない。(5)さらに、同様の直線的な水平配置に対応して、各書き込み機能部までの搬送路が切替部を中心に放射状に配置されているので、装置の外形が異形となり、製作に手間がかかるばかりでなく、装置設置の上でも不都合である。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、磁気カードやICカード等の新規発行や更新発行、さらには書き換え発行を行なうことができる、省スペース対応の媒体発行装置を提供することにある。さらに、処理時間が短く、媒体両面への印字を含む多機能な処理が可能で、ホッパーの収容量も増すことができる媒体発行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の媒体発行装置は、カード状記録媒体を発行する媒体発行装置であって、装置奥側に配置され、前記媒体を積層して収納するとともに、積層された前記媒体のうち最端部位の媒体を1枚毎に繰り出し可能な媒体繰り出し部を有するホッパーと、前記媒体の積層方向に対して鋭角をなす方向へ向けて、前記媒体繰り出し部から繰り出された前記媒体を搬送する傾斜搬送路と、前記傾斜搬送路の前記媒体繰り出し部とは反対側の一端である手前側に配置されて、前記媒体を排出する媒体排出口と、前記傾斜搬送路上に設けられ、前記媒体に対して前記所定情報の書き込みを行なう情報書き込み機構と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、傾斜搬送路は媒体の積層方向と鋭角をなす方向に形成される。すなわち、傾斜媒体搬送路は、装置奥側から手前側に向かって徐々に高くなる方向又は徐々に低くなる方向に形成されるので、ホッパーが備える媒体繰り出し部と、媒体を発行するための媒体排出口とが、傾斜搬送路を間に挟んで装置側面視で対角位置に配置される。(1)傾斜媒体搬送路が装置奥側から手前側に向かって徐々に高くなる場合は、ホッパーの最低位の媒体繰り出し部から媒体が繰り出され、一方、(2)傾斜媒体搬送路が装置奥側から手前側に向かって徐々に低くなる場合は、ホッパーの最上位の媒体繰り出し部から媒体が繰り出される。いずれの場合にも、傾斜搬送路によって、省スペース化や多機能化ユニットの配置をすることができるとともに、装置外形を作製し易い矩形状とすることができる。また、(1)の場合は装置を机の下などに設置する場合に設置上都合がよく、(2)の場合は装置を机の上などに設置する場合に設置上都合がよい。
【0009】
また、そうした対角位置への配置は、ホッパーの高さ方向にスペースを与えることになるので、媒体収納量の大きなホッパーを設けることができる。また、そうした対角位置への配置は、媒体排出口の内側下方又は内側上方にスペースを与えるので、そこに廃券処理機構を設けることも可能になる。また、情報書き込み機構を斜面傾斜路上に設けたので、ホッパーから情報書き込み機構及び媒体排出口までを直線的に水平配置した場合に比して装置長(奥行き)を短くしても、情報書き込み機構に係る処理長を十分な長さに確保することができる。また、上述のように媒体収納量の拡大や廃券処理機構の配置をすることができるので装置全体としての省スペース化(スペースを有効利用)ができる。
【0010】
本発明の媒体発行装置において、前記ホッパーが、積層された前記媒体のうち最低位の媒体を1枚毎に繰り出し可能な媒体繰り出し部を有し、前記媒体排出口が、前記媒体繰り出し部よりも媒体積層方向の上側に対角配置されていることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、媒体排出口がホッパーの媒体繰り出し部よりも媒体積層方向の上側の対角位置に配置されているので、ホッパーの高さ方向にスペースを与え、媒体を上方に積層できる収納量の大きなホッパーを設けることができる。また、媒体排出口の内側下方にスペースを与え、そこに廃券処理機構等を設けることができる。
【0012】
本発明の媒体発行装置において、前記ホッパーが、前記媒体排出口と略等しい高さの最上位部よりも下側に媒体を積層して収納することを特徴とする。
【0013】
本発明の媒体発行装置において、前記情報書き込み機構は、印字装置であることが好ましい。
【0014】
本発明の媒体発行装置において、前記情報書き込み機構は、所定情報の書き込み及び書き換えが可能であって、前記媒体排出口は、前記所定情報を書き換えるべき前記媒体の取り込みが可能であるとともに、前記情報書き込み又は書き換えを完了した前記媒体を排出することが好ましい。
【0015】
この発明によれば、所定情報の書き込み及び書き換えが可能であって、媒体排出口が媒体の取り込み口としても用いられるので、磁気カードやICカード等の新規発行のみならず、更新発行や書き換え発行用の媒体発行装置として用いられる。
【0016】
本発明の媒体発行装置において、前記媒体排出口と前記傾斜搬送路との間に設けられ、前記媒体を回動させてその搬送される方向を切替る第1の媒体回動部と、前記媒体繰り出し部と前記傾斜搬送路との間に設けられ、前記媒体を回動させてその搬送される方向を切替る第2の媒体回動部と、をさらに備えることが好ましい。
【0017】
この発明によれば、媒体排出口と傾斜搬送路との間に第1の媒体回動部が設けられ、スタッカが備える媒体繰り出し部と傾斜搬送路との間に第2の媒体回動部とが設けられるので、第1及び第2の媒体回動部は傾斜搬送路を挟んで装置側面視で対角位置に配置されている。第2の媒体回動部は、媒体繰り出し部から繰り出された媒体を傾斜搬送路に搬送するように回動動作し、また、第1の媒体回動部は、傾斜搬送路から搬送された媒体を媒体排出口に搬送するように回動動作するとともに、媒体排出口が媒体の取り込み口としても用いられる場合には、取り込んだ媒体を傾斜搬送路に搬送するように回動動作する。
【0018】
本発明の媒体発行装置において、前記媒体排出口の内側下方又は内側上方に設けられ、廃棄すべき使用済み媒体を保管する廃棄媒体保管部と、前記第1の媒体回動部から前記使用済媒体を受け取って、前記廃棄媒体保管部に搬送する廃棄媒体搬送部と、をさらに備えることが好ましい。
【0019】
この発明によれば、その媒体排出口の内側下方又は内側上方のスペースに、廃棄すべき使用済み媒体を保管する廃棄媒体保管部と、第1の媒体回動部から使用済媒体を受け取って廃棄媒体保管部に搬送する廃棄媒体搬送部とを設けたので、手間をかけずに迅速に廃券の廃棄処理や更新発行を行なうことができる。
【0020】
本発明の媒体発行装置において、前記媒体排出口の内側に設けられ、前記所定情報の読み取り、書き込み又は書換えのために前記媒体に対して非接触の通信処理を行なう非接触通信部をさらに備え、前記廃棄媒体搬送部は、前記非接触の通信処理の成功を確認するまで前記使用済み媒体を保持する一時保留部であることが好ましい。
【0021】
この発明によれば、所定情報の読み取り、書き込み又は書換えのために媒体に対して非接触の通信処理を行なう非接触通信部が媒体排出口の内側に設けられているので、非接触ICカードに対しても適用することができる。また、廃棄媒体搬送部を、非接触の通信処理の成功を確認するまで使用済み媒体を保持する一時保留部とすることにより、新規媒体を更新発行する場合に、情報書き込み等を確実に行ったのを確認した後に今までの非接触ICカードを廃棄することができる。その結果、非接触ICカードの更新発行においても、迅速且つ確実な処理を行なうことができる。
【0022】
本発明の媒体発行装置において、前記印字装置のクリーニングを行なうクリーニング媒体を収容し、前記クリーニング媒体を前記第1の媒体回動部又は前記第2の媒体回動部との間で授受可能に保持するクリーニング媒体保持部を備えることが好ましい。
【0023】
この発明によれば、例えば対角位置に配置された媒体繰り出し部と媒体排出口とによる第1の媒体回動部の下側(又は上側)や第2の媒体回動部の上側(又は下側)のスペースに、印字装置のクリーニングを行なうクリーニング媒体を収容し、そのクリーニング媒体を第1の媒体回動部又は第2の媒体回動部との間で授受可能に保持するクリーニング媒体保持部を備えるので、印字装置の印字ヘッドや消去ヘッドを定期的又は任意のタイミングでクリーニングすることができる。
【0024】
本発明の媒体発行装置において、前記所定情報が磁気データである場合に、前記第1の媒体回動部又は前記第2の媒体回動部から前記媒体を受け取って、磁気データの読み取り又は書き込み行なう磁気媒体リーダライタを備えることが好ましい。
【0025】
この発明によれば、所定情報が磁気データである場合に、例えば対角位置に配置された媒体繰り出し部と媒体排出口とによる第1の媒体回動部の下側(又は上側)や第2の媒体回動部の上側(又は下側)のスペースに、第1の媒体回動部又は第2の媒体回動部から媒体を受け取って磁気データの読み取り又は書き込み行なう磁気媒体リーダライタを備えるので、磁気データを含む媒体に対しても対応できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の媒体発行装置によれば、磁気カードやICカード等の新規発行や更新発行、さらには書き換え発行を行なうことができる、省スペース対応の媒体発行装置を提供することができる。さらに、処理時間が短く、媒体両面への印字を含む多機能な処理が可能で、ホッパーの収容量も増すことができる媒体発行装置を提供することができる。
【0027】
本発明の媒体発行装置によれば、従来の不具合点を解消でき、次のような利点がある。(i)使用期間切れで無効になるなど不要になったカードの廃券処理機能や廃券入れを確保でき、装置の外で別途に廃券処理する必要がない、(ii)第1の媒体回動部や第2の媒体回動部の回動角度を大きくとって、媒体の表裏反転や裏面への印字を可能にすることができ、(iii)書き込み部を水平配置ではなく傾斜配置とすることにより装置全体の大きさを小さくして省スペース化を図ることができ、(iv)ホッパーの高さ方向にスペースが与えられるのでホッパーを大きくして媒体の収容量を増すことができ、(v)装置全体として矩形状の作り易い形状に設計できる。
【0028】
本発明の媒体発行装置によれば、傾斜媒体搬送路が装置奥側から手前側に向かって徐々に高くなる場合には、例えば装置を机の下などに設置する場合に設置上都合がよく、また、傾斜媒体搬送路が装置奥側から手前側に向かって徐々に低くなる場合には、例えば装置を机の上などに設置する場合に設置上都合がよく、何れの場合も、省スペース化や多機能化ユニットの配置をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の媒体発行装置について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、その技術的特徴を有する範囲において、以下の説明及び図面に限定されるものではない。
【0030】
図1は、本発明の媒体発行装置の実施の形態を示す透視側面図である。本発明の媒体発行装置1は、カード状記録媒体(単に「媒体2」ということがある)を発行する装置であって、装置奥側に配置され、媒体2を積層して収納するとともに、積層された媒体2のうち最端部位の媒体2aを1枚毎に繰り出し可能な媒体繰り出し部21を有するホッパー20と、媒体2の積層方向に対して鋭角をなす方向へ向けて、媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を搬送する傾斜搬送路30と、傾斜搬送路30の媒体繰り出し部21とは反対側の一端である手前側に配置されて、媒体2を排出する媒体排出口10と、傾斜搬送路30上に設けられ、媒体2に対して所定情報の書き込みを行なう情報書き込み機構(例えば印字装置70等)とを少なくとも備えている。
【0031】
図1に示す媒体発行装置1は、媒体排出口10がホッパー20の媒体繰り出し部21よりも媒体積層方向の上側の対角位置に配置されている具体的な実施の形態を示したものであって、ホッパー20が、積層された媒体2のうち最低位の媒体2aを1枚毎に繰り出し可能な媒体繰り出し部21を有し、媒体排出口10が、媒体繰り出し部21よりも媒体積層方向の上側に対角配置されている。
【0032】
媒体発行装置1の全体的な配置構成は、ホッパー20の媒体繰り出し部21と、媒体2を発行するための媒体排出口10とが、傾斜搬送路30を間に挟んで装置側面視(図1を平面視した形態と同じ)で対角位置に配置されている。そのため、情報書き込み機構を配置する十分な長さの搬送路を傾斜搬送路30として確保しつつ、装置1全体の長さ(図1を平面視した場合の左右の長さL)を短縮して装置全体の大きさを小さくすることができ、さらには、装置外形を作製し易く、設置にも好都合な矩形状とすることができる。
【0033】
媒体発行装置1は、ホッパー20の媒体繰り出し部21と、媒体2を発行するための媒体排出口10との対角配置により、ホッパー20の高さ方向にスペースを与えることができる。その結果、媒体収納量が多く、下部に媒体繰り出し部21を有するホッパー20を設けることができる。
【0034】
さらに、媒体発行装置1は、ホッパー20の媒体繰り出し部21と、媒体2を発行するための媒体排出口10との対角配置により、媒体排出口10の内側下方にスペースを与えるので、そこに廃券処理機構としての廃棄媒体保管部50(リジェクトスタッカともいう)を設けることができる。
【0035】
さらに、媒体発行装置1は、情報書き込み機構としての印字装置70等を斜面傾斜路30上に設けている。こうした情報書き込み機構が斜面傾斜路30に設けられているので、装置全体としての省スペース化を確保できる。即ち、ホッパーから情報書き込み機構及び媒体排出口10までを直線的に水平配置した場合に比して装置長Lを短くしても、情報書き込み機構に係る処理長を十分な長さに確保することができるとともに、上述のように媒体収納量の拡大や廃券処理機構の配置をすることができるので、スペースを有効利用できる。
【0036】
上記本発明の媒体発行装置1では、傾斜媒体搬送路30は、図1に示すように装置奥側から手前側に向かって徐々に高くなる方向に形成されていてもよいし、徐々に低くなる方向に形成されていてもよい(図示しない)が、何れにおいても、ホッパー20が備える媒体繰り出し部21と、媒体2を発行するための媒体排出口10とが、傾斜搬送路30を間に挟んで装置側面視で対角位置に配置される。このとき、傾斜媒体搬送路30が装置奥側から手前側に向かって徐々に高くなる場合は、図1に示すようにホッパー20の最低位の媒体繰り出し部21から媒体2aが繰り出される。この形態からなる装置は、例えば装置を机の下などに設置する場合に設置上都合がよい。一方、傾斜媒体搬送路30が装置奥側から手前側に向かって徐々に低くなる場合(図示しない)は、ホッパー20の最上位の媒体繰り出し部から媒体が繰り出される。この形態からなる装置は、例えば装置を机の上などに設置する場合に設置上都合がよい。
【0037】
以下、本実施の形態媒の体発行装置1における各構成について詳しく説明する。図中、「S]はセンサを表している。
【0038】
(ホッパー)
ホッパー20は、スタッカ25と媒体送り出し機構22とより構成され、スタッカ25と媒体送り出し機構22との間には媒体繰り出し部21が形成されている。
【0039】
スタッカ25は、媒体2を積層収納する媒体収納容器で、アルミニウム合金製又はステンレス鋼製の枠体であり、媒体発行装置1の一部としてホッパー20から着脱可能にカセット式媒体収納容器として設けられている。このスタッカ25内には、接触式又は非接触式のICカードや磁気カード等の媒体2が収納される。その媒体2は、例えば図1においては、後述する媒体排出口10と略等しい高さの最上位部27よりも下側に積層して収納されている。なお、そうした媒体2は、利用期限や貨幣価値等の各種情報が完全に記録されていない発行前ものである。また、エンボスの有無は問わない。スタッカ25の下側には、図1に示すように、ゲート部23が設けられており、このゲート部23から、後述する媒体送り出し機構22によって最低位の媒体2aが一枚毎送り出される。このゲート部23は、最低位の媒体2aを一枚のみ送り出すことができる所定の隙間を設けるように、スタッカ25の底板とスタッカ25の側板をなす基準板との間に設けられている。
【0040】
また、スタッカ25には、スタッカ25をホッパー20から脱着したときにゲート部23を塞ぐシャッタ24を有するシャッタ構造(図示しない)が設けられていてもよいし、スタッカ25内に収容される媒体2を上方から押し下げるように作用するおもり26が設けられていてもよい。シャッタ構造は、媒体2を入れたスタッカ25を媒体発行装置1に装着するとき、又はホッパー20から取り外して持ち運ぶときに、ゲート部23から媒体2が落下等するのを防ぐことができる。おもり26は、スライド機構を備えたものでもよいし、チェーン等でスタッカ25に取り付けられていてもよく、何れの場合もおもり26の紛失防止に効果的である。
【0041】
媒体送り出し機構22は、ホッパー20の底部にスタッカ25と対向して配置され、スタッカ25内に収容される複数の媒体2のうち最低位に載置された媒体2aをスタッカ25(即ちホッパー20)の外に送り出す装置である。この媒体送り出し機構22は、スタッカ25の最低位に載置されたカード状媒体2aをゲート部23を経由してスタッカ25(即ちホッパー20)の外に押し出す押出部材221を備えている。この押出部材221には、カード状媒体2aの後端縁に係合してその媒体2aを押し出す爪部が形成されていることが好ましい。
【0042】
押出部材221は、例えば2つのスプロケット223,223間に掛け渡されたチェーン222に取り付けられている。なお、図1においては、2つのスプロケット223,223が用いられているが、3つ以上のスプロケットで構成されたものであっても構わない。このスプロケットは、例えば図1に示すように、ステッピングモータ等の駆動手段224により伝導ベルト225等を介して駆動制御することができ、これにより押出部材221は、カード状媒体2aを押し出すように駆動される。
【0043】
なお、図1に示す形態は、媒体送り出し機構22の一例の概略形態であり、必ずしも図1の形態に限定されるものではない。例えば、チェーン222とスプロケット223により押出部材221を駆動する構成に代えて、押出部材221をリードスクリューに取り付けて、駆動させる構成としてもよい。
【0044】
次に、媒体繰り出し部21は、スタッカ25内に収容される複数の媒体2のうち最低位に載置された媒体2aがスタッカ25(即ちホッパー20)の外に繰り出される部分である。換言すると、スタッカ25の下側に設けられたゲート部23及びその周辺部により構成される。
【0045】
(媒体排出口)
媒体排出口10は、媒体発行装置1から最終的に媒体2を排出するゲートであり、装置前面であり且つ装置上部に設けられている。上記のホッパー20の媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2は、ホッパー20と媒体排出口10との間に設けられた傾斜搬送路30を経由して、媒体排出口10に搬送される。なお、傾斜搬送路30は、媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を媒体排出口10へ向けて搬送する搬送路である。この媒体排出口10は、図1においては媒体発行装置1の上部に設けられているので、その媒体排出口10の装置内側下方には広いスペースを確保することができる。そのスペースには、後述するように、廃棄すべき使用済み媒体を保管する廃棄媒体保管部50等を配置することができる。
【0046】
この媒体排出口10は、媒体2を新規に発行する場合は文字通り媒体排出口となるが、更新発行や書き換え発行する場合は、所定情報を書き換えるべき使用中の媒体がこの媒体排出口10から挿入される媒体挿入口としても機能するとともに、所定情報の書き込み又は書き換えを完了した前記媒体を排出する媒体排出口としても機能する。従って、この媒体排出口10が媒体挿入口及び媒体排出口の両方の機能を有する場合、媒体排出口が媒体の取り込み口としても用いられるので、磁気カードやICカード等の新規発行のみならず、更新発行や書き換え発行用の媒体発行装置として用いられる。
【0047】
また、この媒体排出口10は、図1においては1つ設けられているが、2つ以上であってもよい。媒体排出口10が2つ設けられる場合、一つは、所定情報を書き換えるべき使用中の媒体がこの媒体排出口10から挿入される媒体挿入口として用いることができ、もう一つは、新規発行される媒体、又は挿入された使用中の媒体に所定情報の書き込み又は書き換えを完了した前記媒体を排出する媒体排出口として用いることができる。また、媒体排出口10が3つ設けられる場合、3つめは、例えば廃棄すべき使用済み媒体の排出口として用いることができる。
【0048】
なお、上記の媒体排出口10には、一般的な媒体排出口ないし挿入口に設けられている各種の機能を付加させてもよく、例えば、図1に示すように、シャッタ11とシャッタ用ソレノイド12とを有するシャッタ機構13を備えていてもよい。また、図示しないが、媒体排出口10には、挿入される媒体種の情報を予め読み取るプリヘッドを備えていてもよいし、また、挿入される媒体の幅寸法の適否を検査する幅センサ等が設けられていてもよい。
【0049】
(傾斜搬送路)
傾斜搬送路30は、媒体排出口10とホッパー20との間に設けられ、ホッパー20の媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を媒体排出口10へ向けて搬送する搬送路である。傾斜搬送路30には、媒体2を上下から挟んで所定の方向に搬送する対向した搬送用のローラ(以下、対向ローラともいう)31,32,33が設けられている。上述したように、媒体排出口10は装置上部に設けられ、ホッパー20の媒体繰り出し部21は装置下方に設けられているので、その間に配置されて媒体2の搬送路となる傾斜搬送路30は、装置1の枠体の対角線状に設けられている。対角線状に設けられた傾斜搬送路30は、同じ長さの搬送路が必要な場合、搬送路を水平配置した場合に比してその長さを短くすることができるので、装置全体の大きさ(特に図1における左右方向の長さL)を小さくして省スペース化を図ることができる。
【0050】
この傾斜搬送路30と媒体排出口10との間には、媒体2を回動させて搬送される方向を切替る第1の媒体回動部80が設けられ、また、傾斜搬送路30と媒体繰り出し部21との間には、媒体2を回動させて搬送される方向を切替る第2の媒体回動部60とが設けられていることが望ましい。なお、傾斜搬送路30と媒体排出口10及び媒体繰り出し部21との間は、第1及び第2の回動部に代えて、媒体をガイドしてカーブをなす屈曲した搬送路としてもよい。
【0051】
(情報書き込み機構)
情報書き込み機構は、傾斜搬送路30上に設けられて、媒体2に対して所定情報の書き込みを行なうものであり、図1に示すような印字装置70を例示できる。この情報書き込み機構は、所定の情報の書き込み及び書き換えが可能であることが好ましく、具体的には、図1中の印字装置70に示すように、印字ヘッド71や消去ヘッド72を有することが好ましい。本発明においては、情報書き込み機構を斜面傾斜路30上に設けたので、装置全体としての省スペース化を確保できるとともに、ホッパーから情報書き込み機構及び媒体排出口までを直線的に水平配置した場合に比して装置長Lを短くしても、情報書き込み機構に係る処理長を十分な長さに確保することができる。
【0052】
情報書き込み機構である印字装置70について詳しく説明する。図示の印字装置70は、ホッパー20側から媒体排出口10に向かって、媒体搬送用の対向ローラ31、消去ヘッド72、媒体搬送用の対向ローラ32、印字ヘッド71、媒体搬送用の対向ローラ33の順で配設されている。消去ヘッド72と印字ヘッド71は、それぞれがプラテンローラ34を対向配置し、そのプラテンローラ34との間に媒体2を挟むようにして、媒体2に印字された情報を消去し又は新たな情報を印字する。
【0053】
なお、印字装置70には、媒体表面に対して消去ヘッド72を昇降させる消去ヘッド駆動モータ73が設けられ、また、媒体表面に対して印字ヘッド71を昇降させる印字ヘッド駆動モータ74が設けられていることが望ましい。こうした各ヘッドの駆動モータ73,74は、媒体2に情報を印字することが必要な際又は媒体2に印字された情報を消去することが必要な際にそれぞれ独立に作動し、プラテンローラ34上の媒体2に接触するまで、消去ヘッド72又は印字ヘッド71を降下させる。一方、上記の消去や印字が終了した場合は、プラテンローラ34上の媒体2から離れる方向に消去ヘッド72又は印字ヘッド71を上昇させる。消去や印字が必要でない場合は、各ヘッドの駆動モータ73,74は動作せず、消去ヘッド72及び印字ヘッド71は傾斜搬送路30から退避した位置に保持される。なお、駆動モータ73,74は、図示しないギアやカム等の昇降機構によって、消去ヘッド72及び印字ヘッド71を駆動する。
【0054】
印字装置70は、ユニットとしてワンタッチで着脱可能なように媒体発行装置1に取り付けられている。そのため、印字ヘッドや消去ヘッド等の部品や印字装置が備える媒体の搬送機構に不具合が生じた場合には、ユニットとして交換することができるという利点がある。なお、ユニットとしての印字装置は、搬送路の長手方向の片側を片持ち固定し、他方をフックで固定してもよい。このような片持ち固定とした場合において、傾斜搬送路30の図1中の上側の空きスペースを利用して、そこに消去ヘッド72及び印字ヘッド71を含む印字装置70のユニット部を傾斜搬送路30に対して開閉させることができるので、印字装置70を装置1から取り外さずに簡便にメインテナンスすることができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、傾斜搬送路30上の情報書き込み機構である印字装置70は、感熱式の印字装置であるが、これに代え種々の印字方式とすることもでき、また磁気カードリーダやその他の情報リーダライタを情報書き込み機構としてもよい。
【0056】
(第1の媒体回動部)
第1の媒体回動部80は、図1に示すように、媒体排出口10と傾斜搬送路30との間に設けられ、媒体2を回動させてその搬送される方向を切替るように動作する。この第1の媒体回動部80は、媒体2を保持及び搬送する回動搬送路81と、回動搬送路81の両端近傍に設けられた対向ローラ82,83と、回動搬送路81の長手方向の中央位置を軸中心とする回動軸84とを少なくとも有している。また、この第1の媒体回動部80は、ユニットとしてワンタッチで着脱可能なように媒体発行装置1に取り付けられていることが好ましく、各部品や駆動機構に不具合が生じた場合には、ユニットとして交換することができるという利点がある。なお、回動搬送路81の回動軸84は、第1の媒体回動部80のユニット支持体の外側に突出するように、回動搬送路81と緩衝しないように設けられている。
【0057】
回動軸84は、ベルト86を介して回動軸用モータ85で回動させることができ、回動搬送路81の方向を、傾斜搬送路30と一致接続させるように回動させたり、媒体排出口10に向かうように回動させることができる。また、後述するように、廃棄媒体保管部50が媒体排出口10の下側に設けられる場合には、その廃棄媒体搬送部90の搬送路91と一致させるように回動させることができる。また、後述のように、磁気媒体リーダライタ120が第1の媒体回動部80の下方に設けられる場合には、その磁気媒体リーダライタ120の搬送路121と一致させるように回動させることができる。
【0058】
第1の媒体回動部80を所定の角度回動させるための回動制御は、各種の方法で行なうことができる。例えばステッピングモータとロータリーエンコーダとで回動制御してもよいし、光電センサと所定形状に作製したポジショニングスリット(遮蔽スリットともいう)とで回動制御してもよい。いずれの場合であっても、傾斜搬送路30と一致させる角度と、媒体排出口10に向かう搬送路に一致させる角度の、少なくとも2つの角度に精度良く回動させる。また、さらに複数の角度に制御する場合には、それぞれの角度に精度良く回動させる。第1の媒体回動部80は、右回りに回転させることもできるし左回りに回転させることもできるので、現在の位置から次に回転移動する位置への回転角度が最も小さくなる方向に回転させることが好ましい。そうした回転動作により、媒体2の搬送時間を短縮することができる。さらに、この第1の媒体回動部80は、回動軸84を中心にして回動するので、回動角度を少なくとも180°以上(360°も可能である)に大きくとることができる。
【0059】
この第1の媒体回動部80は、(A)傾斜搬送路30から搬送された媒体2を媒体排出口10に搬送する場合には、第1の媒体回動部80の搬送路81を傾斜搬送路30と同じ角度に傾斜させておき、傾斜搬送路30から搬送された媒体2を対向ローラ82,83により一旦保持し、次いで所定角度回転して媒体排出口10側の搬送路101と一致させ、次いで第1の媒体回動部80から対向ローラ82,83により媒体2を送り出す。また、(B)媒体排出口10から搬送された媒体2を傾斜搬送路30に搬送する場合には、第1の媒体回動部80の搬送路81を媒体排出口10側の搬送路101と一致させておき、媒体排出口10から搬送された媒体2を対向ローラ82,83により一旦保持し、次いで所定角度回転して傾斜搬送路30の角度と一致させ、次いで第1の媒体回動部80から媒体2を送り出す。
【0060】
ここで、対向ローラ82,83の駆動源は、第1の媒体回動部80を駆動する駆動源の回動軸用モータ85とは独立に設けられたA駆動モータ140(詳細は後述する)である。回動軸用モータ85とA駆動モータ140とは独立に駆動されるので、第1の媒体回動部80の回動作動と対向ローラ82,83による媒体2の送り作動は、相互に干渉することがない。このような構成によれば、第1の媒体回動部80による媒体搬送方向の切替制御が簡易且つ確実に行なうことができる。
【0061】
本発明においては、媒体排出口10から搬送された媒体2を傾斜搬送路30に搬送する場合に第1の媒体回動部80を回動させる角度が、媒体排出口10から搬送された媒体2を廃棄媒体保管部50や磁気媒体リーダライタ120に搬送する場合に第1の媒体回動部80を回動する角度に比べて小さいので、媒体2の処理の迅速化に寄与できる。
【0062】
(第2の媒体回動部)
第2の媒体回動部60は、図1に示すように、媒体繰り出し部21と傾斜搬送路30との間に設けられ、媒体2を回動させてその搬送される方向を切替るように動作する。この第2の媒体回動部60は、媒体2を保持及び搬送する回動搬送路61と、回動搬送路61の両端近傍に設けられた対向ローラ62,63と、回動搬送路61の長手方向の中央位置を軸中心とする回動軸64とを少なくとも有している。また、この第2媒体回動部60は、ユニットとしてワンタッチで着脱可能なように媒体発行装置1に取り付けられていることが好ましく、各部品や駆動機構に不具合が生じた場合には、ユニットとして交換することができるという利点がある。なお、回動搬送路61の回動軸64は、第2の媒体回動部60のユニット支持体の外側に突出するように、回動搬送路61と緩衝しないように設けられている。
【0063】
回動軸64は、ベルト66を介して回動軸用モータ65で回動させことができ、回動搬送路61の方向を、傾斜搬送路30と一致接続させるように回動させたり、媒体繰り出し部21と同じ水平方向に回動させることができる。また、後述するように、クリーニング媒体保持部110がこの第2の媒体回動部60の上側に設けられる場合には、そのクリーニング媒体保持部110の搬送路111と一致させるように回動させることができる。
【0064】
第2の媒体回動部60を所定の角度回動させるための回動制御も上記第1の媒体回動部80と同様、各種の方法で行なうことができる。例えばステッピングモータとロータリーエンコーダとで回動制御してもよいし、光電センサと所定形状に作製したポジショニングスリット(遮蔽スリットともいう)とで回動制御してもよい。いずれの場合であっても、傾斜搬送路30と一致させる角度と、媒体繰り出し部21と同じ水平方向の、少なくとも2つの角度に精度良く回動させる。また、さらに他の角度に制御する場合には、その角度に精度良く回動させる。第2の媒体回動部60は、右回りに回転させることもできるし左回りに回転させることもできるので、現在の位置から次に回転移動する位置への回転角度が最も小さくなる方向に回転させることが好ましい。そうした回転動作により、媒体2の搬送時間を短縮することができる。さらに、この第2の媒体回動部60は、回動軸64を中心にして回動するので、回動角度を少なくとも180°以上(360°も可能である)に大きくとることができる。
【0065】
この第2の媒体回動部60は、(A)媒体繰り出し部21から搬送された媒体2を傾斜搬送路30に搬送する場合には、第2の媒体回動部60の搬送路61を媒体繰り出し部21と同じ水平にし、媒体繰り出し部21から搬送された媒体2を対向ローラ62,63により一旦保持し、次いで所定角度回転して傾斜搬送路30と同じ角度にし、次いで第2の媒体回動部60から対向ローラ62,63により媒体2を傾斜搬送路30に送り出す。また、(B)傾斜搬送路30から搬送された媒体2を再び傾斜搬送路30に搬送して媒体2に印字したり印字消去したりする場合には、第2の媒体回動部60の搬送路61を傾斜搬送路30の角度と一致させておき、傾斜搬送路30から搬送された媒体2を対向ローラ62,63により一旦保持し、第2の媒体回動部60を回動させることなく再び傾斜搬送路30に送り出す。
【0066】
ここで、対向ローラ62,63の駆動源は、第2の媒体回動部60を駆動する駆動源の回動軸用モータ65とは独立に設けられたB駆動モータ150(詳細は後述する)である。回動軸用モータ65とB駆動モータ150とは独立に駆動されるので、第2の媒体回動部60の回動作動と対向ローラ62,63による媒体2の送り作動は、相互に干渉することがない。このような構成によれば、第2の媒体回動部60による媒体搬送方向の切替制御が簡易且つ確実に行なうことができる。
【0067】
本発明においては、媒体繰り出し部21から繰り出された媒体2を傾斜搬送路30に搬送する場合に第2の媒体回動部60を回動させる角度が鋭角となっているので、迅速な搬送方向の切替ができる。
【0068】
(廃棄媒体保管部及び廃棄媒体搬送部)
媒体発行装置1には、廃棄媒体保管部50や廃棄媒体搬送部90を設けることができる。廃棄媒体保管部50は、図1においては媒体排出口10の内側下方に設けられ、廃棄すべき使用済み媒体を保管する部材である。本発明においては、上記のように媒体繰り出し部21と媒体排出口10とが装置側面視(図1を平面視した形態と同じ)で対角位置に配置され、その媒体排出口10の装置内側下方にはスペースが与えられるので、そのスペースに廃棄媒体保管部50及び廃棄媒体搬送部90を設けることができる。
【0069】
廃棄媒体保管部50は、上記のスタッカ20と同様、アルミニウム合金製又はステンレス鋼製の枠体であり、媒体発行装置1の一部をなすユニットとして着脱可能に設けられている。この廃棄媒体保管部50内には、一定期間使用後の媒体で、設定された廃棄時期に至った媒体が投入され廃棄のために収容される。なお、廃棄時期の判断は、媒体発行日、有効期限や使用回数などの媒体に記録された情報データを非接触通信部100又は磁気媒体リーダライタ120で読み取ることにより行なうことができる。非接触通信部100又は磁気媒体リーダライタ120の詳細は後述する。
【0070】
廃棄される媒体2は、図1に示すように、廃棄媒体搬送部90から廃棄媒体保管部50に対して斜めの状態で投入されるので、廃棄媒体保管部50の底面51もほぼ同じ角度の傾斜形状であることが好ましい。底面51を例えば30°〜50°程度の傾斜形状にすることにより、投入された廃棄媒体を整然と積み重ね収容することができる。なお、廃棄媒体保管部50内には、廃棄媒体が投入されたことを確認するセンサ52が設けられていることが好ましい。センサ52は、図1に示すような機械式のセンサであってもよいし、光学式のセンサであってもよい。
【0071】
廃棄媒体搬送部90は、第1の媒体回動部80と廃棄媒体保管部50との間に設けられ、第1の媒体回動部80から使用済みの媒体を受け取って、廃棄媒体保管部50に搬送するための部材である。本発明においては、上記のように媒体繰り出し部21と媒体排出口10とが装置側面視(図1を平面視した形態と同じ)で対角位置に配置され、その媒体排出口10の装置内側下方及び第1の媒体回動部80の下方にスペースが与えられるので、そのスペースに廃棄媒体搬送部90を設けることができる。
【0072】
廃棄媒体搬送部90が有する搬送手段は、印字装置70内に設けられているような駆動モータにより駆動する対向ローラ92である。対向ローラ92は、後述するA駆動モータ140により駆動される。その駆動力伝達は、対向ローラ92の一方のローラに設けた電磁クラッチ94により駆動切断及び接続がなされる。
【0073】
電磁クラッチ94の作動即ち対向ローラ92の駆動タイミングの制御は、搬送路91の両端に設けられた媒体2の位置を検知するセンサ95、96が検知した媒体2の位置に基づき行われるようになっている。即ち、センサ96が媒体2を検知した場合に第1の媒体回動部80から搬送路91への取り込みが開始され、センサ95及び96の両方が検知した場合に搬送路91内の媒体2の存在(一時保留)が検知され、センサ96のみによる検知から完全に検知されなくなった場合に廃棄媒体保管部50への媒体2の投入が判断される。なお、センサ95は媒体2のレバーへの接触を検知するレバー式検知センサであり、センサ96は媒体2による遮光を検知するフォトセンサであることが好ましいが、その他の方法で検知するセンサであってもよい。
【0074】
また、その廃棄媒体搬送部90の対向ローラ92から廃棄媒体保管部50側には、徐電ブラシ93が設けられていることが好ましい。その徐電ブラシ93は、廃棄媒体の静電気を除去して、廃棄媒体が廃棄媒体保管部50内の壁面に張り付いたり縦になってしまうのを防ぐことができるので、廃棄媒体を整然と積み重ねることができる。このように廃棄媒体が廃棄媒体保管部50内に整然と積み重ねられることにより、廃棄媒体保管部50内に設けられたセンサ(図示しない)による廃棄媒体量の正確な検出が妨げられることはない。さらにその徐電ブラシ93の廃棄媒体保管部50側のレバー式検知センサ95のレバーは廃棄媒体の後端を上方から下方に押すように機能するので、除電された廃棄媒体を廃棄媒体保管部50内の壁面に張り付いたり縦方向に立たせること無く整然と重ねることができるように作用する。
【0075】
こうした廃棄媒体保管部50と廃棄媒体搬送部90とを設けることにより、従来行われていなかった廃券処理を行なうことができるとともに、第1の媒体回動部80を利用して手間をかけずに迅速に廃棄処理を行なうことができる。また、この廃棄媒体保管部50と廃棄媒体搬送部90とは、それぞれがユニットとしてワンタッチで着脱可能なように媒体発行装置1に取り付けられていることが好ましい。
【0076】
(非接触通信部)
非接触通信部100は、媒体排出口10の内側に設けられ、所定情報の読み取り、書き込み又は書換えのために媒体2に対して非接触の通信処理を行なう部材である。非接触通信部100が設けられていることにより、非接触ICカードに対しても適用することができる。この非接触通信部100は、媒体排出口10から挿入された媒体2を搬送する搬送路101を有し、さらに、その搬送路101の長手方向の両端近傍には媒体を挟んで搬送する対向ローラ102,103が設けられている。搬送路101の中央の一面側(図1において上側)には、非接触での通信を行なうアンテナ部104が設けられている。このアンテナ部104は、非接触ICカードとの間で情報通信を行なうことができ、非接触ICカードに情報の送受を行なう。なお、図1に示すように、必要に応じて、媒体2の有無を検知しアンテナ部104との通信の信頼性を確保するための目的でセンサ105が設けられていてもよい。また、センサ105は媒体2の裏表を検知し、これに応じて、媒体2は第1又は第2の媒体回動部80、60によって、印字装置70や磁気媒体リーダライタ120が、媒体2に対して印字や磁気情報記録を行う所定の向きとなるように回動される。なお、この非接触通信部100は、ユニットとしてワンタッチで着脱可能なように媒体発行装置1に取り付けられていることが好ましい。
【0077】
(磁気媒体リーダライタ)
媒体発行装置1において、第1の媒体回動部80の下に、磁気媒体リーダライタ120を設けてもよい。この磁気媒体リーダライタ120は、媒体2が有する所定情報が磁気データである場合に、第1の媒体回動部80から媒体2を受け取って磁気データの読み取り又は書き込み行なう。また、この磁気媒体リーダライタ120を第1の媒体回動部80の下に設ける代わりに、第2の媒体回動部60の上に設けてもよい。
【0078】
こうした磁気媒体リーダライタ120は、第1の媒体回動部80又は第2の媒体回動部60から媒体2を受け取る搬送路121と、磁気データを媒体2から読み取る磁気ヘッド122を有している。さらに、その磁気媒体リーダライタ120には、媒体2を搬送する対向ローラ123が設けられている。対向ローラ123は、後述するA駆動モータ140により駆動される。その駆動力伝達は、対向ローラ123の一方のローラに設けた電磁クラッチ124により駆動切断及び接続がなされる。また、この磁気媒体リーダライタ120は、ユニットとしてワンタッチで着脱可能なように媒体発行装置1に取り付けられていることが好ましい。なお、磁気媒体リーダライタ120における対向ローラ123は、独立の駆動モータにより駆動されるものであってもよい。
【0079】
(クリーニング媒体保持部)
媒体発行装置1においては、例えば第2の媒体回動部60の上側にスペースが与えられるので、図1に示すように、第2の媒体回動部60の上方にクリーニング媒体保持部110を備えていてもよい。このクリーニング媒体保持部110は、印字装置が有する印字ヘッド71や消去ヘッド72をクリーニングするためのクリーニング媒体114を収容し、そのクリーニング媒体114を第2の媒体回動部60との間で授受可能に保持する。そして、クリーニング媒体114は、第2の媒体回動部60から傾斜搬送路30(印字装置70)へ搬送され、印字ヘッド71や消去ヘッド72のクリーニングを行う。
【0080】
クリーニング媒体保持部110は、第2の媒体回動部60との間でクリーニング媒体114を接受する搬送路111と、クリーニング媒体114を搬送する対向ローラ112が設けられている。対向ローラ112は、後述するB駆動モータ150により駆動される。その駆動力伝達は、対向ローラ112の一方のローラに設けた電磁クラッチ113により駆動切断及び接続がなされる。搬送路111の両端にはセンサS,Sが設けられており、クリーニング媒体114の保持および送り出しの状況が検知及び制御される。例えば、センサS,Sの両方が検知している場合に搬送路111内即ちクリーニング媒体保持部にクリーニング媒体114が保持されていることが検知される。クリーニング作動中は、センサS,Sのいずれもがクリーニング媒体114を検知していないことになる。なお、クリーニング媒体保持部110における対向ローラ112は、独立の駆動モータにより駆動されるものであってもよい。
【0081】
こうしたクリーニング媒体保持部110が収容するクリーニング媒体114により、印字装置70の印字ヘッド71や消去ヘッド72を定期的又は任意のタイミングでクリーニングすることができる。なお、媒体発行装置1においては、第1の媒体回動部80の下側にスペースが与えられるので、このクリーニング媒体保持部110を第2の媒体回動部60の上方に設ける代わりに、第1の媒体回動部80の下に設けてもよい。また、このクリーニング媒体保持部110は、ユニットとしてワンタッチで着脱可能なように媒体発行装置1に取り付けられていることが好ましい。
【0082】
(電源部)
本発明においては、媒体発行装置1を駆動する電源部130が設けられている。電源部130は、図1に示すように、第1の媒体回動部80の下方及び印字装置70の下方のスペースに設けることができる。この電源部130は、ユニットとしてワンタッチで着脱可能なように媒体発行装置1に取り付けられていることが好ましい。
【0083】
(駆動システム)
図2は、本発明の媒体発行装置における駆動方式の実施の形態を示す透視側面図である。本実施の形態の媒体発行装置1は、図2に示すように、主に2つの駆動モータ(A駆動モータ140とB駆動モータ150)により駆動される。
【0084】
A駆動モータ140は、複数のベルトやプーリが組み合わされて、例えば図2に示すように、一時保留部である廃棄媒体搬送部90、第1の媒体回動部80、及び非接触通信部100の各+搬送用の対向ローラを駆動して、媒体の搬送を行なう。
【0085】
廃棄媒体搬送部90における媒体2の搬送を行なうA駆動モータ140の駆動力は、ベルト143を介してプーリ141に伝わる。さらに、プーリ141の回転駆動は、それに連接されたギア142により廃棄媒体搬送部90の対向ローラ92に伝達されこれを駆動させる。そして、対向ローラ92への駆動力伝達が電磁クラッチ94によって接続(電磁クラッチ94がON状態)又は切断(電磁クラッチ94がOFF状態)されることにより、廃棄すべき媒体を一時的に保持する一時保留部である廃棄媒体搬送部90における媒体の保持、第1の媒体回動部80への媒体の戻し、又は、廃棄媒体保管部50への媒体の送り等が行われる。
【0086】
また、プーリ141にかけられた他のベルト144は、第1の媒体回動部80の回動軸84と同軸に回転自在に取り付けられた搬送駆動プーリ145と非接触通信部100の搬送用の対向ローラ103と同軸配置したプーリに掛け渡されている。
【0087】
そして、非接触通信部100を駆動するA駆動モータ140の駆動力は、対向ローラ103と同軸配置したプーリにより対向ローラ103及び対向ローラ103とベルトにより連結されて同期回転する対向ローラ102に伝達される。非接触通信部100は、対向ローラ102及び103によって媒体2を第1の媒体回動部80側に搬送したり、媒体排出口10側に搬送したりする。
【0088】
次に、プーリ141にかけられたベルト144により第1の媒体回動部80の搬送駆動プーリ145に伝達されたA駆動モータ140の駆動力は、第1の媒体回動部80における媒体2の搬送を行なう。即ち、搬送駆動プーリ145の回転は、ギア146を介して対向ローラ82を回転させ、さらにその対向ローラ83は、ベルトとプーリを介して他の対向ローラ83を回転させる。このように第1の媒体回動部80は、A駆動モータ140の駆動力によって、第1の媒体回動部80の対向ローラ82,83を駆動して、媒体2を第1の媒体回動部80内に保持したり、印字装置70、非接触通信部100及び廃棄媒体保管部50との間で媒体の搬送等を行なう。なお、搬送駆動プーリ145の回転は、ギア146に代えてベルトとプーリによって、対向ローラ83へ伝達するようにしてもよい。
【0089】
さらに、第1の媒体回動部80の回動は、その回動軸84にベルト86を介して駆動力を送る回動軸用モータ85により行われる。このとき、回動軸84と同軸に回転自在に取り付けられた搬送駆動プーリ145は、図2に示すように、対向ローラ82にギア146で連結しているとともにベルト144により回転が規制されているので、第1の媒体回動部80を回動させると、搬送駆動プーリ145に対してギア146が相対的に回転して対向ローラ82及び83が回転して搬送路81内で保持された媒体2に対して搬送力が作用する。そこで、駆動モータ85による第1の媒体回動部80の回動に合わせて、上記の搬送力の作用をキャンセルする方向に媒体2を搬送するようにA駆動モータ140が搬送駆動プーリ145を駆動する。
【0090】
B駆動モータ150もA駆動モータ140と同様、複数のベルトやプーリが組み合わされて、例えば図2に示すように、印字装置70、第2の媒体回動部60、及びクリーニング媒体保持部110の各搬送用の対向ローラを駆動して、媒体の搬送を行なう。
【0091】
具体的には、B駆動モータ150の駆動力は、ベルト153を介してプーリ151,152に伝わり、そのプーリ151,152が備えるプーリに同軸状に連接したプラテンローラ34,34を回転させるとともに、そのプラテンローラ34,34からベルトを介して媒体搬送用の対向ローラ31,32,33を回転させる。こうした回転により、印字装置70内での媒体の搬送等が行われる。
【0092】
次に、B駆動モータ150の駆動力は、媒体搬送用の対向ローラ31と同軸状に連接したプーリにかけられた他のベルト156を介してクリーニング媒体保持部110のプーリ154に伝わり、そのプーリ154に連接されたギア157によりクリーニング媒体保持部110の112を駆動させる。そして、電磁クラッチ113が切断(OFF状態)されている場合は、クリーニング媒体保持部110におけるクリーニング媒体の保持がなされ、電磁クラッチ113が接続(ON状態)されている場合には、B駆動モータ150の回転に応じて、第2の媒体回動部60との間でのクリーニング媒体114の授受が行われる。
【0093】
さらに、B駆動モータ150の駆動力は、媒体搬送用の対向ローラ31と同軸状に連接したプーリにかけられた他のベルト156を介して、第2の媒体回動部60の搬送駆動プーリ155を回転させる。この搬送駆動プーリ155は、図示しないギアやベルトとプーリを介して対向ローラ63を回転させ、さらにその対向ローラ63は、図示しないベルトとプーリを介して他の対向ローラ62を回転させる。このように、B駆動モータ150の駆動力は、第2の媒体回動部60の対向ローラ62,63を駆動して、媒体2及びクリーニング媒体114を第2の媒体回動部60内に保持したり、印字装置70との間でやり取りしたり、新規発行される媒体2を媒体繰り出し部21から受け取ったりする。また、クリーニング媒体保持部110との間でのクリーニング媒体114の授受も行われる。
【0094】
なお、第2の媒体回動部60の回動軸64の回動は、その回動軸64にベルトを介して駆動力を送る回動軸用モータ65により行われる。さらに、第2の媒体回動部60の回動は、その回動軸64にベルト66を介して駆動力を送る回動軸用モータ65により行われる。このとき、回動軸64と同軸に回転自在に取り付けられた搬送駆動プーリ155は、第1の媒体回動部80の搬送駆動プーリ145同様に、対向ローラ62等にギア等で連結しているとともにベルト156により回転が規制されているので、第2の媒体回動部60を回動させると、搬送駆動プーリ155に対する相対回転により対向ローラ62及び63が回転して搬送路61内で保持された媒体2(又はクリーニング媒体114)に対して搬送力が作用する。そこで、駆動モータ65による第2の媒体回動部60の回動に合わせて、上記の搬送力の作用をキャンセルする方向に媒体2(又はクリーニング媒体114)を搬送するようにB駆動モータ150が搬送駆動プーリ155を駆動する。
【0095】
以上のように、媒体2の搬送用の駆動モータを用いることにより、媒体の更新発行のように、古い媒体と新しい媒体とを装置内で独立に搬送することができるので、処理時間を短縮することができるとともに、ベルトやプーリ等の削減も可能になるので、小型化と低コストかを実現できる。なお、図1及び図2においては、A駆動モータ140とB駆動モータ150の2つを主に用いているが、一つの駆動モータで構成してもよい。なお、一つの駆動モータで構成する場合は、機械的なクラッチ等で設けることが好ましい。
【0096】
(新規媒体発行動作)
次に、新規発行の動作について説明する。媒体2の新規発行は、ホッパー20内に積層された媒体2のうち最低位の媒体2aを押出部材221の爪部にて繰り出して、第2の媒体回動部60内に搬送した後、第2の媒体回動部60を傾斜搬送路30と同じ角度に回動させて媒体の搬送方向を切替る。次に、第2の媒体回動部60から傾斜搬送路30上に配置された印字装置70内に搬送し、印字装置70が備える印字ヘッド71により媒体表面に所定の情報が印字される。このときの印字ヘッド71は、印字ヘッド駆動モータ74により媒体表面に接触するまで下降し、媒体表面に接触した状態で印字する。印字が終了した後は、印字ヘッド駆動モータ74により印字ヘッド71を元の位置に上昇する。その後、媒体2は、傾斜搬送路30と同じ角度に回動した状態で待機している第1の媒体回動部80に搬送される。媒体2を受け取った第1の媒体回動部80は、媒体2を非接触通信部100に搬送するために水平方向になるまで回動し、その後、非接触通信部100に搬送する。この非接触通信部100においては、アンテナ部104と媒体2との間の非接触通信によって媒体2に内蔵されているICに所定の情報が格納記憶され、最後に、媒体排出口10に媒体2が送られて利用者の手に渡る。なお、必要により、非接触通信部100による処理の前に、第1の媒体回動部80から一端分岐して、磁気媒体リーダライタ120による磁気データの記録処理が行なわれてもよい。
【0097】
(媒体書換え発行動作)
次に、書き換え発行の動作について説明する。書き換え発行は、媒体排出口10に使用中の媒体2が挿入されると、媒体排出口10が備える幅センサ(図示しない)がカード状媒体2を検知し、シャッタ11を開けて非接触通信部100に搬送される。非接触通信部100では、媒体2に内蔵されているICとの間で所定の情報の読み取り及び書き込みが非接触通信により実行され、その後非接触通信部100と同じ水平に保持された第1の媒体回動部80に搬送される。媒体2を受け取った第1の媒体回動部80は、傾斜搬送路30と同じ角度まで回動した後、印字装置70内に媒体2を搬送し、その後、傾斜搬送路30と同じ角度まで回動させておいた第2の媒体回動部60まで媒体2を搬送する。その第2の媒体回動部60から、装置上位からの指示で再度印字装置70内に搬送し、先ず、消去ヘッド72で今までの印字データを消去し、引き続いて、印字ヘッド71で新しい情報を印字する。印字した後は、第1の媒体回動部80、非接触通信部100を経由して、媒体排出口10から利用者の手に返却される。なお、この場合も、必要により、非接触通信部100による処理の後に、磁気媒体リーダライタ120による磁気データの記録処理が行なわれてもよい。
【0098】
(媒体更新発行動作)
次に、更新発行の動作について説明する。更新発行(使用可能期限となった媒体を廃棄し、新たに媒体を発行することをいう)は、媒体排出口10に使用中の媒体2が挿入されると、媒体排出口10が備える幅センサがカード状媒体2を検知し、シャッタ11を開けて非接触通信部100に搬送される。非接触通信部100では、媒体2に対する非接触通信による所定の情報の読み取りみが実行され、この通信結果に基づき更新発行とすることが決定されると、更新のため読み取られた所定の情報は上位装置等に一時保存される。そして、更新される媒体2は非接触通信部100と同じ水平に保持された第1の媒体回動部80に搬送される。第1の媒体回動部80に取り込まれた媒体2は、傾斜搬送路30には搬送されず、第1の媒体回動部80を逆回転により、斜め下方に配置された一時保留部としての廃棄媒体搬送部90に搬送され、廃棄処理待ちの媒体として保持される。次に、上記の新規発行と同じ手順で新しい媒体2が発行される。この新しい媒体2が第1の媒体回動部80を経由して、非接触通信部100に搬送されそこで、上位装置等に一時保存された情報が新しい媒体2に対して書き込まれる。そして、この書き込みが確認され、又は媒体排出口10から利用者の手に新たな媒体2が渡ったことが確認された時点で、一時保留部である廃棄媒体搬送部90に保持された廃棄処理待ちの使用済み媒体2は、更にその斜め下方の廃棄媒体保管部50に除電ブラシ93で除電されて投入される。
【0099】
(媒体廃棄動作)
次に、媒体廃棄の動作について説明する。廃棄媒体保管部50への媒体2の投入(廃棄)は、廃棄媒体搬送部90を経由して行われる。媒体排出口10から投入された媒体2は、すぐ後ろ(装置1の内部側)に配置された非接触通信部100により、又は、第1の媒体回動部80を経由して送られた磁気媒体リーダライタ120により、情報が読み取られて廃棄媒体であるかが判断される。非接触通信部100により廃棄媒体であることが読み取られた場合、その廃棄媒体は、第1の媒体回動部80に搬送され、そこで保持されつつ廃棄媒体搬送部90の角度と同じになるまで第1の媒体回動部80が回転する。次いで、第1の媒体回動部80から廃棄媒体搬送部90に廃棄媒体が搬送される。一方、磁気媒体リーダライタ100により廃棄媒体であることが読み取られた場合、その廃棄媒体は、第1の媒体回動部80に戻され、そこで保持されつつ廃棄媒体搬送部90の角度と同じになるまで第1の媒体回動部80が回転する。次いで、第1の媒体回動部80から廃棄媒体搬送部90に廃棄媒体が搬送される。
【0100】
このとき、廃棄媒体搬送部90に搬送された廃棄媒体は、そこで保持されずに廃棄媒体保管部50に投入されてもよいが、好ましくは新規の媒体を発行するまで、すなわち新規媒体がスタッカ20から発行され、印字装置70で印字され、非接触通信部100で情報通信が完了したのを確認するまで保持(一時保留)されることが好ましい。そして、新規媒体への情報通信が完了したのを確認し、新規媒体2が発行されてから、廃棄媒体を、一時保留部としての廃棄媒体搬送部90から廃棄媒体保管部50に投入することが好ましい。こうした方式をとることにより、新規媒体2を更新発行する場合に、情報書き込み等を確実に行ったのを確認した後に今までの非接触ICカードを廃棄することができ、その結果、非接触ICカードの更新発行においても、迅速且つ確実な処理を行なうことができる。
【0101】
ここで、廃棄媒体搬送部90の作動タイミングについて説明する。廃棄媒体搬送部90が第1の媒体回動部80から媒体2を受け取る場合、センサ96が媒体2を検知すると対向ローラ92が駆動され、廃棄媒体搬送部90の搬送路91に媒体2が取り込まれる。そして、センサ95が媒体2を検知すると、対向ローラ92の駆動が停止され、媒体2は搬送路91内に一時保留される。一時保留状態では、両方のセンサ95、96が媒体2を検知して、搬送路91内の媒体2の存在が判断される。廃棄媒体保管部50に媒体2を投入する場合は、センサ96のみが媒体2を検知した状態から完全に検知しない状態になるまで、対向ローラ92が駆動される。
【0102】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態の媒体発行装置1は、図1に示すように、積層収納された媒体2のうち最低位の媒体2aを1枚毎に繰り出す媒体繰り出し部21を有するホッパー20を装置奥側に備え、その媒体繰り出し部21とは対角位置の装置手前側に媒体排出口10を備えて、ホッパー20と媒体排出口10との間に、装置奥側から手前側に向かって徐々に高くなる方向に延びる媒体の積層方向と鋭角をなす方向に形成された傾斜搬送路30を備えている。しかし、このような場合、装置を机の下などに設置する場合に設置上都合がよいが、机の上などに装置設置する場合には使い勝手が悪い。そこで、最上位の媒体繰り出し部から1枚毎に媒体が繰り出されるホッパーを装置奥側に配置し、媒体排出口を装置手前側の低い位置に配置するならば、装置奥側から側徐々に低くなる方向に傾斜媒体搬送路が形成される。この場合は、装置を机の上などに設置する場合に設置上、使い勝手がよい装置とすることができるとともに、傾斜搬送路によって、省スペース化や多機能化ユニットの配置をすることができる。
【0103】
以上説明したように、本発明の媒体発行装置によれば、磁気カードやICカード等の新規発行や更新発行、さらには書き換え発行を行なうことができる、省スペース対応の媒体発行装置を提供することができる。さらに、処理時間が短く、媒体両面への印字も可能で、ホッパーの収容量も増すことができる媒体発行装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の媒体発行装置の一例を示す透視側面図である。
【図2】本発明の媒体発行装置の駆動方式の一例を示す透視側面図である。
【符号の説明】
【0105】
1 媒体発行装置
2,2a 媒体
10 媒体排出口
11 シャッタ
12 シャッタ用ソレノイド
13 シャッタ機構
20 ホッパー
21 媒体繰り出し部
22 媒体送り出し機構
221 押出部材
222 チェーン
223 スプロケット
224 駆動手段
225 伝導ベルト
23 ゲート部
24 シャッタ
25 スタッカ
26 おもり
27 最上位部
30 傾斜搬送路
31,32,33 対向ローラ
34 プラテンローラ
50 廃棄媒体保管部(リジェクトカセット)
51 底面
52 センサ
60 第2の媒体回動部
61 搬送路
62,63 対向ローラ
64 回動軸
65 回動軸用モータ
70 印字装置
71 印字ヘッド
72 消去ヘッド
73 消去ヘッド駆動モータ
74 印字ヘッド駆動モータ
80 第1の媒体回動部
81 搬送路
82,83 対向ローラ
84 回動軸
85 回動軸用モータ
86 ベルト
90 廃棄媒体搬送部
91 搬送路
92 対向ローラ
93 徐電ブラシ
94 電磁クラッチ
95 レバー部材(センサ)
96 センサ
100 非接触通信部
101 搬送路
102,103 対向ローラ
104 アンテナ部
105 センサ
110 クリーニング媒体保持部
111 搬送路
112 対向ローラ
113 電磁クラッチ
114 クリーニング媒体
120 磁気媒体リーダライタ
121 搬送路
122 磁気ヘッド
123 対向ローラ
124 電磁クラッチ
130 電源部
140 A駆動モータ
141 プーリ
142 ギア
143,144 ベルト
145 搬送駆動プーリ
146 ギア
150 B駆動モータ
151,152,154 プーリ
153,156 ベルト
155 搬送駆動プーリ
157 ギア
S センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード状記録媒体を発行する媒体発行装置であって、
装置奥側に配置され、前記媒体を積層して収納するとともに、積層された前記媒体のうち最端部位の媒体を1枚毎に繰り出し可能な媒体繰り出し部を有するホッパーと、
前記媒体の積層方向に対して鋭角をなす方向へ向けて、前記媒体繰り出し部から繰り出された前記媒体を搬送する傾斜搬送路と、
前記傾斜搬送路の前記媒体繰り出し部とは反対側の一端である手前側に配置されて、前記媒体を排出する媒体排出口と、
前記傾斜搬送路上に設けられ、前記媒体に対して前記所定情報の書き込みを行なう情報書き込み機構と、を備えることを特徴とする媒体発行装置。
【請求項2】
前記ホッパーが、積層された前記媒体のうち最低位の媒体を1枚毎に繰り出し可能な媒体繰り出し部を有し、前記媒体排出口が、前記媒体繰り出し部よりも媒体積層方向の上側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の媒体発行装置。
【請求項3】
前記ホッパーが、前記媒体排出口と略等しい高さの最上位部よりも下側に媒体を積層して収納することを特徴とする請求項2に記載の媒体発行装置。
【請求項4】
前記情報書き込み機構は、印字装置であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の媒体発行装置。
【請求項5】
前記情報書き込み機構は、所定の情報の書き込み及び書き換えが可能であって、前記媒体排出口は、前記所定情報を書き換えるべき前記媒体の取り込みが可能であるとともに、前記情報書き込み又は書き換えを完了した前記媒体を排出することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の媒体発行装置。
【請求項6】
前記媒体排出口と前記傾斜搬送路との間に設けられ、前記媒体を回動させてその搬送される方向を切替る第1の媒体回動部と、
前記媒体繰り出し部と前記傾斜搬送路との間に設けられ、前記媒体を回動させてその搬送される方向を切替る第2の媒体回動部と、をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の媒体発行装置。
【請求項7】
前記媒体排出口の内側下方又は内側上方に設けられ、廃棄すべき使用済み媒体を保管する廃棄媒体保管部と、
前記第1の媒体回動部から前記使用済媒体を受け取って、前記廃棄媒体保管部に搬送する廃棄媒体搬送部と、をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の媒体発行装置。
【請求項8】
前記媒体排出口の内側に設けられ、前記所定情報の読み取り、書き込み又は書換えのために前記媒体に対して非接触の通信処理を行なう非接触通信部をさらに備え、
前記廃棄媒体搬送部は、前記非接触の通信処理の成功を確認するまで前記使用済み媒体を保持する一時保留部であることを特徴とする請求項7に記載の媒体発行装置。
【請求項9】
前記印字装置のクリーニングを行なうクリーニング媒体を収容し、
前記クリーニング媒体を前記第1の媒体回動部又は前記第2の媒体回動部との間で授受可能に保持するクリーニング媒体保持部を備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の媒体発行装置。
【請求項10】
前記所定情報が磁気データである場合に、前記第1の媒体回動部又は前記第2の媒体回動部から前記媒体を受け取って、磁気データの読み取り又は書き込み行なう磁気媒体リーダライタを備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の媒体発行装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−265136(P2007−265136A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90695(P2006−90695)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】