説明

媒体移送用の装置

【課題】媒体の移送を可能にするように構成されているが、より経済的であり、より実用的であり、より良好な性能を備える装置を提供する。
【解決手段】媒体の移送のための装置が、一方が容器と協働するように構成されている2つの主面17と、主面17の間を延びている側面18とを有するマガジン、ならびにマガジン2の空洞に収容された少なくとも1つのスライドバルブ3を備え、バルブ3に、媒体のための移送ダクト59が形成され、移送ダクト59が、容器と協働するように構成された面17に出現しており、バルブ3が、ダクト59を封じて容器から分離する閉鎖位置と、ダクト59を容器に連通させる開放位置とを有し、バルブ3が、バルブ部材40、バルブ部材40を少なくとも部分的に囲む分離スリーブ41、およびバルブ3が開放位置にあるときにバルブ部材40によって圧縮されるように構成されたばね手段58を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体などの媒体の容器への移送または容器からの移送に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、培養タンクにおける微生物学的な検証の実行、細胞の計数、化学的分析などのために、試料を分析のために採取できることが、特に薬学およびバイオテクノロジの分野において、きわめて重要である。
【0003】
そのような採取は、採取される試料および試料の採取対象である媒体の汚染の恐れを可能な限り少なくしつつ、実行されなければならない。
【0004】
媒体を容器へと移送し、あるいは容器から移送するための装置であって、一方が容器と協働するように構成されている2つの主面と、主面の間を延びている側面とを有するマガジン、ならびにマガジンの空洞に収容されたいくつかのスライドバルブを備える装置が、特に米国特許第7,293,477号からすでに知られている。各々のバルブに、媒体の移送のためのダクトが形成されており、上記ダクトが、容器と協働する面に出現しており、各々のバルブが、そのダクトを封じて容器から分離(隔離)する閉鎖位置と、そのダクトが容器に連通させる開放位置とを有する。
【0005】
さらに、各々のダクトが、容器からバッグへと媒体を移送するために、端部ピースおよび可撓チューブを介してバッグに連通している。
【0006】
各々のバルブを閉鎖位置から開放位置へと移行させるために、作業者が、そのバルブのタブを押してマガジンから解放し、開放位置を占めるように、このマガジンのエラストマで製作された部位に沿ってスライドさせる。この開放位置において、バルブの端部が、容器の内部へと突き出し、このバルブのダクトを容器に連通させる。バルブを閉鎖位置へと戻すために、作業者は、バルブを引いて反対方向にスライドさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,293,477号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、媒体の移送を可能にするように構成されているが、より経済的であり、より実用的であり、より良好な性能を備える装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、媒体を容器へと移送し、あるいは容器から移送するための装置であって、一方が上記容器と協働するように構成されている2つの主面と、上記主面の間を延びている側面とを有するマガジン、ならびに上記マガジンの空洞に収容された少なくとも1つのスライドバルブを備え、上記バルブに、上記媒体のための移送ダクトが形成され、上記移送ダクトが、上記容器と協働するように構成された上記面に出現しており、上記バルブが、上記ダクトを封じて上記容器から分離する閉鎖位置と、上記ダクトを上記容器に連通させる開放位置とを有し、上記バルブが、バルブ部材、上記バルブ部材を少なくとも部分的に囲む分離スリーブ、および上記バルブが開放位置にあるときに上記バルブ部材によって圧縮されるように構成されたばね手段を備えることを特徴とする装置を提供する。
【0010】
本発明による装置においては、スリーブ(マガジンとのシールを提供する)およびバルブ部材(バルブを開閉する)からなる構成が、特に従来技術の装置よりも良好なシールを得ることを可能にする。
【0011】
これは、従来技術の装置においては、マガジンとのシールが、スライドにて平行移動する部品(スライドバルブの本体)によってもたらされる一方で、本発明による装置においては、これらの2つの機能が分離され、バルブ部材の機能がバルブを開閉することだけである一方で、マガジンとのシールは、非可動の分離スリーブによってもたらされ、このことが、スリーブの表面がマガジンにスライドしつつ接触することがないために、より良好な品質のシール(バルブとマガジンとの間の漏れの恐れが少ない)を保証するからである。
【0012】
さらに、バルブに、バルブが開かれるときに圧縮されるばね手段が設けられることで、バルブを作動させられるときまで閉鎖位置に保持することができ、従来技術の装置の固定手段を省略することができ、このことが、このような装置の寸法を最小限にし、従来技術の装置のマガジンと同じ直径のマガジンにより多くのバルブを配置する(したがって、容器からの採取点の数が多くなる)ためのかなりの空間を残すことができる。
【0013】
最後に、ばね手段が存在することで、ひとたび移送が実行された場合、さらなる操作を必要とせずにバルブを閉鎖位置へと自動的に復帰させることができ、このことは、そのような装置の信頼性を高めるだけでなく、より良好な性能ももたらす。
【0014】
欧州特許第0858589号に記載の装置など、マガジンを備えるさらに別の形式の移送装置も存在し、そのような装置が、隔壁を貫く目的の針を有することに、留意されたい。本発明による装置では、そのような針を不要にでき、したがって装置をより単純、より人間工学的、かつより安価にする。
【0015】
製造および使用の両者に関して、単純さおよび便利さの理由で好ましい特徴によれば、上記ダクトが、上記側面にも出現する。
【0016】
移送ダクトがマガジンの側面に出現すること、すなわちスリーブ内でのバルブ部材のスライドの方向に対して半径方向に出現することは、マガジンの容器と協働する面とは反対側の面を手つかずに残すことを可能にし、したがってバルブ部材を動かしてバルブを閉鎖位置から開放位置へと移行させるために、バルブ部材に容易にアクセスすることができる。
【0017】
また、ダクトからの出口を形成するためにマガジンの側面を利用することは、利用可能な有効表面一式を最適化することによって、そのような装置をよりコンパクトにすることに貢献する。
【0018】
さらに別の好ましい特徴によれば、上記空洞が、上記容器と協働するように構成された主面とは反対側の主面に開いている。
【0019】
したがって、この開口が、バルブ部材へのアクセスを直接的にもたらし、バルブ部材の操作を単純かつ容易にする。
【0020】
さらに別の好ましい特徴によれば、上記スリーブが、上記ばね手段を形成する少なくとも1つの弾性的に変形可能な部位を備える。
【0021】
ばね機能を果たすことによって、バルブ部材を閉鎖位置へと弾性的に復帰させるために、さらなる構成部品をバルブに追加する必要がないため、スリーブの弾性的に変形可能な部位は、そのような装置の製造および信頼性を大幅に簡単化することを可能にする。
【0022】
さらに別の好ましい特徴によれば:
・バルブの上記閉鎖位置において、上記マガジンと上記スリーブの上記弾性的に変形可能な部位との間に空間が存在し、この空間が、バルブが開放位置にあるときに圧縮された状態のその部位によって少なくとも部分的に占められ、
・上記バルブ部材が、閉鎖位置において上記スリーブに密に接触し、開放位置においては上記スリーブから離れる頭部と、軸部と、軸部の頭部へとつながった端部とは反対側の端部につながっている本体とを有し、および/または
・上記バルブ部材の本体が、上記開放位置において上記ばね手段に当接するとともに、上記ばね手段との当接の上記表面とは反対側の端部に、上記バルブを閉鎖位置から開放位置へと移行させるための操作面を有する。
【0023】
さらに他の好ましい特徴によれば、上記軸部が、上記スリーブに密に接触する部位、および上記スリーブに接触しない部位を有する。
【0024】
バルブ部材に、スリーブに接する部位および接しない部位が存在することで、バルブ部材とスリーブとの間にシールをもたらすことができるだけでなく、バルブ部材とスリーブとの間に、媒体の移送ダクトの一部を形成するための空間を残すことができる。
【0025】
さらに別の好ましい特徴によれば:
・装置が、上記バルブを閉鎖位置から開放位置へと移行させるために駆動するための手段をさらに備え、
・上記駆動手段が、上記バルブを開放位置に保持するように構成され、
・上記駆動手段が、上記マガジンに回転可能に取り付けられ、
・上記駆動手段が、上記バルブを駆動するためのニップルが設けられた操作輪を備え、
・上記ニップルが、湾曲面および平坦面を有し、
・上記マガジンが、位置決め手段を有し、上記操作輪が、対をなす位置決め手段を有し、上記位置決め手段が、上記操作輪を上記マガジンに対して、上記ニップルで上記バルブ部材を押す位置および上記ニップルを上記バルブ部材から離す位置に位置決めするように構成され、
・上記駆動手段が、上記マガジンの壁に形成された軌道を移動できる突起と、上記マガジン上に回転可能に取り付けられ、上記軌道において上記突起を移動させ、駆動すべき上記バルブ部材に上記突起を直面させるように構成されたリングと、上記突起を介して上記バルブ部材を駆動するように構成されたボタンとを備え、および/または
・上記マガジンが、各々がそれぞれのバルブを収容するいくつかの空洞を備え、上記空洞が、上記マガジンの中心の周囲に配置される。
【0026】
本発明の特徴および利点が、添付の図面を参照しつつ好ましく、限定されない例として提示される以下の説明から、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による装置についての斜視図であり、装置の備える9個のバルブが閉鎖位置に示されている。
【図2】本発明による装置について図1とは違う角度から見た斜視図であり、装置の備える9個のバルブが閉鎖位置に示されている。
【図3】装置の立面図である。
【図4】装置の斜視分解図である。
【図5】図3の線V−Vにおいて得た上記装置の立面断面図であり、閉鎖位置にあるバルブが断面で示されている。
【図6】図5と同様の図であるが、バルブが開放位置に示されている。
【図7】この装置が備える駆動用の操作輪を示している斜視図である。
【図8】この装置が備える駆動用の操作輪を示している下方からの平面図ある。
【図9】この装置が備える駆動用の操作輪を示している図8の線IX−IXにおける立面断面図である。
【図10】容器の壁へと取り付けられ、採取バッグが接続された装置の立面断面図である。
【図11】本発明による装置の第2の実施形態の斜視図である。
【図12】図11と同様の図であるが、装置のいくつかの部品は図示されていない。
【図13】対称の中心面に沿った装置の立面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1から図6に示した移送装置1が、マガジン2、9個のバルブ3、操作輪4、および位置決めフィンガ5(図4)を備える。
【0029】
図10に示されているとおり、この装置1は、シール7を介して容器10の壁9に形成され、マガジンの9個のバルブの各々を容器の内部に連通させることができるように(見えない)開口が形成されているカップリング8へと(例えば、ねじ込みまたは係止によって)組み付けられる。
【0030】
さらに、各々のバルブは、容器からの媒体(例えば、液体)を受け取るために設けられたバッグ72に組み合わせられ、各々のバッグが、チューブ71によってマガジン2に接続される。
【0031】
移送曲線のマガジン2は、2つの主面16および17(図4)と上記主面を連結する側面18とを有する本体15を備える。
【0032】
本体15は、プラスチック材料からなり、片側において面17を画定しており、容器のカップリング8と協働するように構成されているカラー20と操作輪4と協働するように構成されている円柱形部分21とを隔てている凹所19を除き、円柱形の全体形を有する。
【0033】
本体に、中央の空洞25と、傍らの9個の空洞26と、この本体の縁に位置する空洞27とが形成されている。9個の空洞26は、空洞25と同心かつマガジンの中心と外周との間のほぼ中間に位置する円に、並べて配置されている。
【0034】
空洞25(および27それぞれ)は、開口30(および31それぞれ)によって、面16にのみ出現している。
【0035】
各々の空洞26は、開口32によって面16から出現し、開口33(図2)によって面17から出現し、開口34によって側面から出現している。
【0036】
図5および図6に示されているとおり、各々の空洞26は、第1の中空部35、第1の部位35の内径よりも小さな内径の第2の中空部36、および面17の方向に延び、面17の方向に延びるにつれて末広がりになっている中空部37によって画定されている。
【0037】
各々のバルブは、バルブ部材40およびシール用スリーブ41を備える。
【0038】
バルブ部材は、熱可塑性材料からなり、スリーブは、エラストマ材料から形成され、すなわち弾性的に変形可能であって、バルブ部材40およびマガジン2の両者とのシールをもたらすことが可能である。
【0039】
バルブ部材40は、本体42、軸部(シャンク)43、および頭部44を備える。
【0040】
本体42は、空洞の部位35の内径に実質的に等しい外径の中実棒であり、頭部44とは反対側の端部の先端に、後述されるように操作輪によって構成される操作ニップルを受け入れるように構成された碗状の凹所45を備える。
【0041】
軸部43は、第1の円柱形部分47および部位47の直径よりも小さい直径の第2の円柱形部分48を備え、第2の円柱形部分48が、第1の部位47へと、本体42とは反対側の端部において取り付けられている。
【0042】
最後に、頭部は、円錐台形状のカラーの形態であり、円柱形部分48へと、部位47の反対側でつながっている。
【0043】
スリーブ41は、マガジンの中空部36の内面および末広がり部37の内面をそれぞれ支持している第1の筒状部50および末広がり部51を備える。
【0044】
スリーブの筒状部50は、その縁の間のほぼ中間に設けられた開口52を備える。
【0045】
このスリーブが、円錐形の部位51をマガジンの円錐形の部位37に当接させつつマガジンの該当の空洞26に係合し、筒状部50が、空洞の中空部36に収容され、この筒状部の部位58をこの空洞から中空部35へと突き出させており、この部位58とマガジンの部位35との間に、後述されるとおり、スリーブ41が圧縮されたときにスリーブのこの部位の膨張を可能にする遊び55(図5)が存在している。
【0046】
ひとたびスリーブが係合させられると、このスリーブの開口52は、マガジンの該当する開口34に面して位置する(図5および図6)。
【0047】
バルブ部材の頭部44とのシールに加えて、さらにスリーブ41は、このバルブ部材の筒状部47とのシール、ならびにマガジン2の部位36とのシールも提供する。
【0048】
バルブ部材40は、本体42を筒状部50の部位58の縁に当接するように位置させて、スリーブに収容される。軸部43の部位47が、部位58において部位50に密に接触する一方で、部位48は、部位50の内側で部位50から離れており、移送される媒体の通過を可能にする空間を、この部位50とともに画定している。
【0049】
このようにして、空洞26、バルブ部材40、およびスリーブ41が、マガジン2の開口33から開口34へと延び、スリーブ41とバルブ部材の部位48との間に位置する空間ならびにスリーブの開口52とマガジンの開口34との間に位置する空間を含むダクト59(図5および図6)を画定している。
【0050】
図5に示されている各々のバルブ3の閉鎖位置においては、頭部44が、スリーブ50の末広がり部51(マガジンに当接している)に当接し、ダクト59を密封して容器から分離する。
【0051】
この位置において、頭部44のうちの容器の方を向いた表面は、マガジンの表面17と同じレベルに位置している(これにより、特に、開口33の近傍にいかなる障害物も存在させず、したがってこの開口の近傍に液体が停滞する恐れをなくすことができ、容器からの採取が、典型的なリスクを呈さない)。
【0052】
図6に示したバルブ3の開放位置においては、バルブ部材の頭部44が、スリーブの末広がり部51から離れ、容器の内部へと突き出し、移送すべき媒体が開口33によってバルブ部材の頭部44とスリーブの部位51との間をダクト59へと進入でき、開口34によってこのダクトから出ることができるようにしている。
【0053】
図4に示されているフィンガ5が、円筒形部分56および円錐形部分57を備え、マガジンの空洞27に収容される。ばねが、この空洞の最も内側の端部に配置される(図示せず)。
【0054】
次に、図7から図9を参照して、操作輪4を説明する。
【0055】
この操作輪4は、背中60およびその壁を半径方向において囲んでいるカラー61、ジャーナル62、および操作ニップル63を備える。
【0056】
さらに、この操作輪は、カラー61と同じ側において後壁から突き出している環状のリブ70を備え、この環状のリブ70に、18個の行き止まりの位置決め穴69が等間隔で形成されている。
【0057】
カラー61は、一体に結合した9個の壁セグメント68を備え、各々の壁セグメント68が、作業者の指による操作輪の把持を容易にする外向きの凹面64を備える。
【0058】
ニップル63は、湾曲面65および平坦面66を有する。
【0059】
操作輪4は、マガジン2上に回転可能に取り付けられるよう、ジャーナル62をマガジンの中央の収容部25に係合させて、マガジン2の面16に対して配置される。
【0060】
18個の行き止まり穴は、それぞれ、フィンガ5の円錐57を受け入れるために設けられており、したがって、これらの18個の穴が、マガジンに対する操作輪の同じ数の相対の位置決め位置に対応している。
【0061】
これらの位置決め位置のうちの9個において、ニップル63がバルブ部材42に当接し、該当のバルブを開く。待機位置と称される残りの9個の位置においては、ニップル63が2つのバルブ部材42の間に位置し、したがってすべてのバルブが閉じられ、これらの位置は、バルブのうちの1つが開かれる9個の位置と交互である。
【0062】
したがって、操作輪を回転させることで、バルブが順番に開かれる位置と、すべてのバルブが閉じられ、マガジンのすべてのダクト59が容器の内部から分離される位置とを、交互することが可能である。
【0063】
その単純さゆえ、装置1は、それを構成するすべての部材の単純な成形によって得られ、したがって、装置を妥当なコストで1回限り使用(使い捨て)の装置にすることができる。
【0064】
この装置は、1barオーダー、またはそれ以上の強い動作圧力に、耐えることができる。
【0065】
次に、容器の内部の液体などの媒体からの採取作業がどのように実行されるかを、特に図5、図6、および図10を参照して説明する。
【0066】
採取作業に先立ち、装置1が、フィンガ5をすべてのバルブが閉じられる9個の位置のうちの1つに対応する穴69に位置させつつ、図10に示されるとおりに容器のカップリングへと密に固定される。
【0067】
バッグ72(図10)のうちの1つへの採取作業を実行するために、作業者は、操作輪を操作し、時計方向に回転させる。この回転の際、リブ70が、位置決めフィンガを空洞27へと押し込むようにフィンガの円錐57へと力を作用させ、フィンガが収容されていた穴69を隠して、操作輪の回転を可能にする。
【0068】
作業者は、位置決めフィンガ5がばね(図示せず)の弾性的な復帰によって隣の行き止まり穴69に収容されるまで、操作輪4の回転を続ける。
【0069】
動きの際に、ニップル63の湾曲面65が、バルブ部材のうちの1つの本体42に遭遇し、ニップルが本体42の凹所45(図6)に収容されるまで、本体42を押してスライドさせる。
【0070】
ニップルの湾曲面65および先端42の湾曲面が、このニップルの凹所45への係合を容易にしている。
【0071】
この位置において、9個のバルブ3のうちの第1のバルブが開き、液体が、このバルブのダクト59を通り、このダクト59の開口34へと接続されたチューブ71を通り、バッグ72へと達するまで流れることができる(図10)。
【0072】
この位置において、バルブ部材の本体42が、スリーブ41の部位58の縁に当接して押し付けられ、結果として、スリーブのこの部位が圧縮されてわずかに凸状の形状を有し、スリーブが休止(圧縮されていない)状態にある場合に部位58とマガジンの隣接部55との間に残される空き空間55の大部分を占める。
【0073】
この圧縮により、作業者が次の位置への移行を行い、すなわちニップル63をこのバルブ部材から離すときに、スリーブのこの部位58の弾性的な復帰によって、バルブ部材が初期の位置(閉鎖位置)へと自然に復帰することができる。
【0074】
ひとたびこのバルブに取り付けられたバッグ72が充分に満たされると、作業者は、フィンガ5の円錐57が、ニップル63が2つのバルブ部材の間に位置して、すべてのバルブが閉鎖位置となり、いずれのバルブも開いたままにせずに次の採取作業の実行まで待機することができる9個の位置のうちの1つに対応する次の行き止まり穴69に位置するまで、操作輪4を先ほどと同じ方向に再び回転させる。
【0075】
このようにして、ここに示される装置によれば、9回の採取作業を順に、各々の採取作業の間にすべてのバルブが閉じられる位置を有しつつ、実行することが可能である。
【0076】
各々のバッグを満たした後で、チューブ71を(例えば、加熱によって)閉塞させつつすべてを切断するように構成された工具(図示せず)を使用して、そのバッグを回収することが可能である。
【0077】
操作輪が待機位置に位置しているときに、作業者が操作輪を反対の方向に操作しようとした場合、ニップル63の平坦面66が、バルブ部材の本体42に当接し、これまでにすでに開かれたことがあるバルブを再び開くことができないように、操作輪のさらなる回転を阻止する。このことは、採取された液体の異なる試料が互いに混ざり合う恐れを回避する。
【0078】
しかしながら、バルブが開かれている位置からそれまでの待機位置へと戻ることは、この場合にはニップル63がバルブ部材に当接しないため、何ものにも妨げられず、したがって、同じバルブによって何回かの一連の採取作業を実行することができ、各々の採取作業の間にこのバルブを閉じることが可能である。
【0079】
さらに、移動終端当接リブ(図示せず)が存在しており、すべてのバルブが開かれた後の操作輪のさらなる回転を防止し、操作輪をそれまでと同じ方向に回転させることによってそれらバルブのうちの最初のバルブを再び開くことがないようにしている。
【0080】
移送装置の別の実施形態が、図11から図13に示されている。
【0081】
一般的に言うと、類似する部材については、同じ符号が数字100を加えて使用されている。
【0082】
移送装置101が、マガジン102、リング104、および操作ボタン106を備える。
【0083】
さらに、この装置は、マガジン102の上部によって画定された閉じた輪郭の軌道167の内側に、可動突起163を備える(図12)。この可動突起163がリング104と協働することで、作業者がリング104を回転させたとき、リングが突起163に直接作用して、軌道内を移動させ、この突起をバルブ部材140のうちの操作すべきバルブ部材に面するように位置させる。
【0084】
さらに、このリング104は、位置決め手段(見て取ることができない)を備え、マガジンが、各々のバルブ部材140に面するときに突起163を位置決めするために、対をなす位置決め手段(やはり見て取ることができない)を備える。
【0085】
突起163が所望のバルブ部材に面するとき、作業者は、プレート111を介して突起163に当接するように押しボタン106を押し、この突起で該当するバルブ部材を面117に向かってスライドさせ、スリーブ141を圧縮すると同時に、このバルブ部材の頭部をスリーブから離し、このバルブのダクト159の内部を試料の採取が望まれる閉じた空間に連通させる。
【0086】
図示されていない他の実施形態においては、装置の各々のバルブ3が、可撓チューブによって、ただ1つのバッグにではなく、直列に配置されたいくつかのバッグへと接続され、それらのバッグが、液体の移送の際に、先行するすべてのバッグが満たされた旨およびバルブを閉じてもよい旨を作業者に知らせる充てんの指標として機能する最後のバッグを液体が占めるまで、順に満たされる。
【0087】
図示されていない別の実施形態においては、スリーブのばね形成部58が、らせんばねなど、他の任意の種類のばね手段で置き換えられ、バルブ部材が、おそらくは、ばねを移送される媒体から分離するために、Oリングによって囲まれる。
【0088】
図示されていないさらに別の実施形態においては、装置が、マガジンの直径を変更し、あるいは変更せずに、9個よりも多数または少数の採取点を有する。
【0089】
図示されていないさらに別の実施形態においては、装置が、操作輪などの操作手段を備えず、作業者がバルブ部材を直接操作できるよう、面16においてバルブ部材に自由にアクセスすることができる。
【0090】
そのような装置は、分析のために採取される気体、あるいは他の任意の種類の流体媒体など、液体媒体より他の媒体に利用可能である。
【0091】
さらに、本発明による装置が、必ずしも容器からバッグへの媒体の移送だけでなく、例えば媒体であらかじめ満たされたバッグから容器への媒体の移送も実行可能にすることに、留意されたい。
【0092】
本発明による装置はまた、バッグまたはパイプなどといった可撓な壁を有する容器など、タンク以外の任意の形式の容器へと媒体を移送し、あるいはそのような容器から媒体を移送するように意図されており、マガジンと協働するように構成されたコネクタが、それらの容器に取り付けられる。
【0093】
本発明は、上述および図示した実施形態に限られず、それらのあらゆる変化形を包含する。
【符号の説明】
【0094】
1、101 移送装置
2、102 マガジン
3、103 バルブ
4 操作輪
10 容器
16、17、116、117 マガジンの本体の主面
18、118 マガジンの本体の側面
26 マガジンの本体の傍らの空洞
27 マガジンの本体の縁の空洞
40、140 バルブ部材
41、141 シール用スリーブ(分離スリーブ)
42 バルブ部材の本体
43 バルブ部材の軸部
44 バルブ部材の頭部
45 バルブ部材の本体の凹所
47 軸部の第1の円柱形部分
48 軸部の第2の円柱形部分
55 遊び(空間)
58、158 スリーブの筒状部の部位
59、159 ダクト
63 操作輪の操作ニップル
65 ニップルの湾曲面
66 ニップルの平坦面
69 位置決め穴
70 操作輪の環状のリブ
104 リング
106 操作ボタン
163 突起
167 軌道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を容器(10)へと移送し、あるいは容器(10)から移送するための装置であって、一方が前記容器(10)と協働するように構成されている2つの主面(16、17;116、117)と、前記主面(16、17;116、117)の間を延びている側面(18;118)とを有するマガジン(2;102)、ならびに前記マガジン(2;102)の空洞(26)に収容された少なくとも1つのスライドバルブ(3;103)を備え、前記バルブ(3;103)に、前記媒体のための移送ダクト(59;159)が形成され、前記移送ダクト(59;159)が、前記容器(10)と協働するように構成された前記面(17;117)に出現しており、前記バルブ(3;103)が、前記ダクト(59;159)を封じて前記容器(10)から分離する閉鎖位置と、前記ダクト(59;159)を前記容器(10)に連通させる開放位置とを有し、前記バルブ(3;103)が、バルブ部材(40;140)、前記バルブ部材(40;140)を少なくとも部分的に囲む分離スリーブ(41;141)、および前記バルブ(3;103)が開放位置にあるときに前記バルブ部材(40;140)によって圧縮されるように構成されたばね手段(58;158)を備えることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記ダクト(59;159)が、前記側面(18;118)にも出現していることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記空洞(26)が、前記容器(10)と協働するように構成された主面(17;117)とは反対側の主面(16;116)に開いていることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記スリーブ(41;141)が、前記ばね手段を形成する少なくとも1つの弾性的に変形可能な部位(58;158)を備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
バルブ(3)の前記閉鎖位置において、前記マガジン(2)と前記スリーブ(41)の前記弾性的に変形可能な部位(58)との間に空間(55)が存在し、前記空間(55)が、バルブ(3)が開放位置にあるときに圧縮された状態の部位(58)によって少なくとも部分的に占められることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記バルブ部材(40)が、閉鎖位置において前記スリーブ(41)に密に接触し、開放位置においては前記スリーブ(41)から離れる頭部(44)と、軸部(43)と、前記軸部(43)の前記頭部(44)へとつながった端部とは反対側の端部につながっている本体(42)とを有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記バルブ部材(40)の本体(42)が、前記開放位置において前記ばね手段(58)に当接するとともに、前記ばね手段(58)との当接の前記表面とは反対側の端部に、前記バルブ(3)を閉鎖位置から開放位置へと移行させるための操作面(45)を有することを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記軸部(43)が、前記スリーブ(41)に密に接触する部位(47)と、前記スリーブ(41)に接触しない部位(48)とを有することを特徴とする、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記バルブ(3;103)を閉鎖位置から開放位置へと移行させるために駆動するための手段(4、63;104、106、163)をさらに備えることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記駆動手段(4、63)が、前記バルブ(3)を開放位置に保持するように構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記駆動手段(4、63)が、前記マガジン(2)に回転可能に取り付けられていることを特徴とする、請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記駆動手段が、前記バルブ(3)を駆動するためのニップル(63)が設けられた操作輪(4)を備えることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ニップル(63)が、湾曲面(65)および平坦面(66)を有することを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記マガジン(2)が、位置決め手段(5、27)を有し、前記操作輪(4)が、対をなす位置決め手段(69、70)を有し、前記位置決め手段が、前記操作輪(4)を前記マガジン(2)に対して、前記ニップル(63)で前記バルブ部材(40)を押す位置および前記ニップル(63)を前記バルブ部材(40)から離す位置に位置決めするように構成されていることを特徴とする、請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
前記駆動手段(104、106、163)が、前記マガジン(102)の壁に形成された軌道(167)を移動できる突起(163)と、前記マガジン(102)上に回転可能に取り付けられ、前記軌道(167)において前記突起(163)を移動させ、駆動すべき前記バルブ部材(40)に前記突起(163)を直面させるように構成されたリング(104)と、前記突起(163)を介して前記バルブ部材(40)を駆動するように構成されたボタン(106)とを備えることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項16】
前記マガジン(2;102)が、各々がそれぞれのバルブ(3;103)を収容するいくつかの空洞(26)を備え、前記空洞(26)が、前記マガジン(2;102)の中心の周囲に配置されていることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−145398(P2010−145398A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−282420(P2009−282420)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】