説明

媒体識別装置

【課題】従来では、運用日数の経過と共に硬貨粉や埃等の汚れにより、良好なカメラ撮像画像を得ることができなくなることで、識別性能が急激に低下するという問題点とその兆候を事前に検知でいないとう問題点があった。本発明は、媒体識別装置において、運用日数の経過と共に識別性能が低下するのを緩和する方法及び識別性能の低下を事前に検知する方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】媒体を識別する媒体識別装置において、媒体を搬送するベルトの汚れによる媒体画像の所定位置の位置ずれを軽減し、撮像装置の撮像面の汚れ位置を検知することで、識別装置の汚れによる識別性能低下を緩和することを特徴とする媒体識別装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨等の表面模様を識別するような媒体識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2009−110325号公報(特許文献1)がある。この公報には、「搬送状態によらず微細な模様が検出可能になり、高精度な媒体識別装置を提供し、また搬送路に異物、埃が搬送されても判別可能な媒体識別装置を提供すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−110325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、運用日数の経過と共に硬貨粉や埃等の汚れにより、良好なカメラ撮像画像を得ることができなくなることで、識別性能が急激に低下する問題点とその兆候を事前に検知でいない問題点があった。
【0005】
本発明は、媒体識別装置において、運用日数の経過と共に識別性能が低下するのを緩和する方法及び識別性能の低下を事前に検知する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明では、媒体を識別する媒体識別装置であって、媒体を搬送する搬送手段と、搬送される媒体を撮像する手段と、媒体の識別に用いる画像である基準媒体画像を予め記憶する手段と、前記基準媒体画像及び前記撮像手段により撮像された媒体の画像である媒体画像の所定位置を検出する手段を備えた媒体識別装置において、媒体を搬送するベルトの汚れによる媒体画像の所定位置の位置ずれを軽減し、撮像装置の撮像面の汚れ位置を検知することで、識別装置の汚れによる識別性能低下を緩和することを特徴とする媒体識別装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、媒体識別装置の汚れによる識別性能の低下を緩和できる。また、媒体識別装置の汚れによる識別性能の低下を事前に検知できるため、事前の清掃や部品交換等により、常に正常な状態で識別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】硬貨識別装置の内部構造図。
【図2】硬貨識別部のブロック図。
【図3】硬貨識別部の内部構造図。
【図4】模様判定部の処理フロー。
【図5−1】撮像画像(通常時)。
【図5−2】媒体中心計算説明図(通常時)。
【図6−1】撮像画像(ベルトエッジ汚れ時)。
【図6−2】媒体中心計算説明図(ベルトエッジ汚れ時)。
【図7】基準媒体画像の特徴領域説明図。
【図8】模様検知部内部の側面図。
【図9】特徴領域の拡大図。
【図10】カバー付き模様検知部のカバー閉状態の図。
【図11】カバー付き模様検知部のカバー開状態の図。
【図12】カバー付き模様検知部のギア付近の断面図。
【図13】カバーとカバー搬送路の断面図。
【図14】硬貨識別装置と識別部の通信処理図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1から図14を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0010】
本実施形態は、銀行等の金融機関に設置される例えばATM(Automated Teller Machine)のような自動取引装置内部さらには、清算機、券売機等の硬貨を取扱う各種機器に内蔵された硬貨の識別装置に関するものである。
【0011】
図1は、本発明に係るATMの内部に設けた硬貨識別装置の内部構造図である。101は硬貨識別装置の筺体であって、その上面の一端側には入出金口102が設けられている。入出金口102には、入金される硬貨が投入され、また出金される硬貨や返却される硬貨が放出される。この入出金口102は、本発明における返却口の一実施形態である。入集金口102の内部には、投入硬貨や放出硬貨を受ける回転自在なパケット102aが設けられている。103は繰出し部であって、パケット102aの回転によって入出金口102から下方へ放出された硬貨を一枚分離機構で1枚ずつ分離して識別部104へ送り出す。識別部104は、入金される硬貨の真偽および金種を識別する。105は一時保留部であって、識別部104で正貨であると識別された硬貨を一時的に保留する。
【0012】
106は入金された硬貨を金種別に収納する金種別スタッカ、111は入金された硬貨を搬送する入金搬送部である。入金取引が成立すると、一時保留部105に保留されている硬貨は、識別部104を通って金種を識別された後、入金搬送部111により金種別スタッカ106に振り分けられる。
【0013】
113は出金搬送部であって、横搬送部112および縦搬送部114からなる。横搬送部112は、硬貨を搬送するベルトと、ベルト上の硬貨を1枚ずつ分離して縦搬送部114へ送り出す分離機構とを備えている。縦搬送部114は、対向するベルト間に硬貨を挟んで搬送する機構となっている。115は水平搬送ベルトであって、出金時に金種別スタッカ106の下部から放出される硬貨をベルト上で受けて、出金搬送部113へ送る。
【0014】
107は硬貨カセットであって、各金種の硬貨が混在して収納されている。116は硬貨カセット107から繰り出される硬貨を搬送し、また硬貨カセット107へ収納される硬貨を搬送する縦搬送ベルトである。硬貨カセット107は、始業時に硬貨識別装置101にセットされ、収納硬貨を繰り出して金種別スタッカ106へ分配する。このとき、繰り出された硬貨は、縦搬送部114から出金搬送部113を通って入出金口102へ放出され、繰出し部103により1枚ずつ繰り出されて識別部104で金種を識別された後、入金搬送部111により金種別スタッカ116に振り分けられる。110は回収カートリッジであって、入出金口102に残っている取り忘れ硬貨や、出金硬貨のうち識別結果が異常と判定されたリジェクト硬貨等を回収する。
【0015】
108は一括スタッカであって、金種別スタッカ106が満杯となった場合に、金種別スタッカ106へ振分けることの出来ない入金硬貨を回収する。この一括スタッカ108には、各金種の硬貨が混在して収納される。また、一括スタッカ108は、金種別スタッカ106の硬貨残量が少なくなると、収納硬貨を繰り出して金種別スタッカ106へ補充する。このとき、繰り出された硬貨は、縦搬送部114から出金搬送部113を通って入出金口102へ放出され、繰出し部103により1枚ずつ繰り出されて識別部104で金種を識別された後、入金搬送部111により金種別スタッカ106に振り分けられる。109は磁気センサからなる出金判別部であって、入出金口102の付近(出金搬送部113の出口)に設けられている。
【0016】
図2は、図1のA部における識別部のブロック図である。バス200に各構成要素が接続されている。制御部201は、各構成要素に指示を出し、図1のA部における識別部の制御を行っている。例えば媒体を搬送する搬送部への制御等がある。記憶部205は、装置毎に倍率等のパラメータと、国内6金種分の硬貨の画像から抽出された特徴情報や硬貨の過電流損から抽出された導電率の情報等のテンプレートを記録している。また、予め基準媒体画像、基準媒体画像の中心位置、基準媒体画像の半径および基準媒体画像の撮像倍率、補正倍率等も記憶している。
【0017】
模様判定部208は、記憶部205に予め登録された硬貨画像の特徴領域と、模様検知部203で撮像された硬貨の画像から抽出された特徴領域とを比較することにより、硬貨の外形と表面の模様に基づく金種、真偽判別を行う。
【0018】
媒体検知部202は硬貨が搬送されてきたかどうかを判別する。媒体検知退避部206は識別時に媒体が搬送されてきたかどうかを判別するために媒体検知部202から一定間隔で入力されるデータを一時的に保持するメモリである。画像退避部207は識別時に撮像された画像を模様判定部208で判別するために一時的に保持するメモリである。
【0019】
磁気判定部209は記憶部205に予め登録された硬貨渦電流損の特徴情報と、磁気検知部204で検出された硬貨の渦電流損から抽出された特徴情報とを比較することにより、媒体の導電率情報について金種、真偽判別を行う。
【0020】
硬貨判定部210は模様判定部208と磁気判定部209から得られた結果から硬貨の識別を行い、該当する硬貨の金種、真偽を識別する。
【0021】
図3は、図1のA部における識別部の内部構造であり、媒体検知部202、模様検知部203、磁気検知部204から構成されている。
【0022】
搬送路301は、ループ上の平ベルトから成り、上記平ベルトを駆動される駆動部(図示しない)で硬貨302が一方向Aに搬送されるように回転させている。硬貨302は、上記搬送路301上に1枚ずつ間隔を設けて分離された状態で搬送され、上記媒体検知部202での検知領域303に到達したタイミングで模様検知部203に撮像を行うよう指示する。そして、模様検知部203は硬貨302の外形および硬貨302表面の模様を検知し、模様判定部208により硬貨302の外形、模様判定を行っている。また、搬送されてきた硬貨302が磁気検知部204を通過するとき、磁気検知部204は、硬貨302の渦電流損を検知し、硬貨302の導電率判定を行っている。
【0023】
図4は、模様判定部の処理フローを示す。以下(1)〜(8)により、各ステップの詳細を説明する。
【0024】
(1)模様検知部203は、中心計算401で撮像した画像から硬貨画像の中心を算出する。中心計算により媒体画像の中心位置を算出する方法を図5−1、図5−2を用いて説明する。
【0025】
図5−1において、500は模様検知部203で撮像した撮像範囲を表す。501は撮像された媒体の画像である媒体画像を表す。502は撮像された媒体の中心を表す。503は識別部搬送路を表す。504は識別部搬送ベルトを表す。なお、撮像手段であるカメラは撮像領域内の所定位置が一致するように設定されており、また、識別部搬送ベルトの幅は識別部搬送路の幅よりも小さい。
【0026】
撮像画像の横軸(X軸)方向の各ラインに対して、一定閾値以上を有する画素の最初の位置511と一定閾値以上を有する画素の最後の位置513との中点を中点位置512として算出し、その各ラインの中心位置512の度数分布514に対して、最も分布の高いところを媒体画像の中心のX座標とする。
【0027】
撮像画像の縦軸(Y軸)方向の各ラインに対して、一定閾値以上を有する画素の最初の位置521と一定閾値以上を有する画素の最後の位置523との中心を中点位置522として算出し、その各ラインの中心位置522の度数分布524に対して、最も分布の高いところを媒体画像の中心Y座標とする。
【0028】
従来はこのようにして、撮像画像の中心位置を決定していたが、運用日数の経過と共に識別部搬送ベルト504が汚れてくると、この方法では誤った媒体画像の中心位置を決定することになる。これにより、以降の半径計算402〜模様判定408の処理が正しい媒体画像の中心位置を前提にしているため、識別性能が低下することになる。識別部搬送ベルト504が汚れた場合に、どのようにして誤った中心位置を決定することになるかの例を図6−1、図6−2を用いて説明する。
【0029】
図6−1において、601は識別部搬送ベルトエッジの汚れを表す。運用日数の結果と共に汚れた識別部を模様検知部203で撮像した場合、識別部搬送ベルトエッジの汚れ601が目立つことが経験的に知られている。このとき前記方法にて媒体画像の中心のX座標を求めると一定閾値以上を有する画素の最初の位置511が識別部搬送ベルトエッジの汚れ601の影響を受け、汚れがない場合に比べて、この場合左の位置を指すことになる。そのため中心位置512が左にずれることで、度数分布611も左にずれ、媒体画像の中心のX座標が実際より左にずれることになる。媒体画像の中心のY座標については、媒体画像から得られる度数分布に比べて、識別部搬送ベルトエッジの汚れは十分に小さいため、最も分布の高いところを媒体画像の中心Y座標としても問題ない。
【0030】
本実施形態では媒体画像の中心X座標を前記方法でなく、次のようにして、Y軸方向の各ラインのみを使用して求める。まず、媒体画像の中心Y座標を前記方法にて求める。次に、このY座標を構成する最初の位置521と最後の位置523の内、円形媒体の円周上の構成要素を抽出する。
【0031】
この円形媒体の円周上の構成要素を抽出するには、まず中心位置522が前記で求めた中心Y座標と一致するものを抽出する。この内、それぞれのX方向に対して一つ左右にずらした位置のラインに最初の位置521と最後の位置523が撮像範囲より内にないものは除外する。更に、この抽出されたものをX軸正方向に順番にチェックし、最初の位置521が単調増加しかつ最後の位置523が単調減少する、または最初の位置521が単調減少しかつ最後の位置523が単調増加する位置を抽出する。これにより、搬送ベルトエッジ汚れ601のような円形媒体の円周上の構成要素に無関係のものを除外する。
【0032】
次に、円形媒体の円周上の構成要素の内、最も離れた2ラインを抽出する。最も離れた2ラインは、円形媒体の円の構成要素の内、X座標の最小値と最大値を選択すればよい。
次にこの2ラインの内、最も離れた2点を抽出する。この2点は2つあるがどちらを選択してもよい。例えばX座標が最小値として選択したラインの最初の位置521とX座標が最大値として選択したラインの最後の位置523を選択する。このようにして円形媒体の円周上の2点が選択できれば、円の性質から、この2点の垂直二等分線が円の中心を通るため、この垂直二等分線と前記で求めた中心Y座標から中心X座標が求まる。ここで、最も離れた2ラインや2点を抽出したのは、計算精度を高めるためである。また、円形媒体の円周上の各点に対して同様の計算を行って平均を求めることで更に計算精度を高めるようにしてもよい。
【0033】
(2)模様検知部203は、半径計算402で、前記で求めた媒体画像の中心502と円形媒体の円周上の各点のユークリッド距離の平均から円形媒体の半径を算出する。
【0034】
(3)媒体検知部203は、媒体中心補正403にて、撮像された媒体画像の中心位置と基準媒体画像の中心位置を一致させる。図7において、扇方領域700は、基準媒体画像701の中心702を中心として扇方に分割した領域である。基準媒体画像の特徴量領域703は、この扇方領域700を用いて予め定義しておく。なお、基準媒体画像の中心位置、基準媒体画像の半径及び基準媒体画像の特徴領域、基準媒体画像の特徴量、基準媒体画像の撮像倍率等は予め記憶部205に記憶している。
【0035】
(4)模様検知部203は、金種判別404にて、模様識別する前処理として、撮像された媒体画像の大きさから、搬送された媒体の種類を判定する。即ち、当該搬送された媒体の種類を予め記憶した媒体の大きさと媒体の種類の関係を示したテーブル等に基づき、半径計算402により算出した媒体の半径から、媒体の種類を判定する処理である。なお、本処理は以降の処理で対象とすべき媒体の種類を絞っているに過ぎず、本処理にて媒体の種類を最終決定しているわけではない。
【0036】
(5)媒体検知部203は、変位量補正405にて、環境、組立、部品、設置等のばらつきにより撮像された媒体画像501と予め記憶部205に記憶された異なる装置で同じ画像である基準媒体画像701の撮像倍率の差異を補正するため媒体中心補正403により、媒体画像の中心の位置を一致させた両媒体画像において、いずれかの中心から特徴領域への変位量に補正倍率を乗算し、両媒体画像の中心から基準媒体画像の特徴領域の変位量と撮像された媒体画像の特徴領域の変位量が一致するようにする。
【0037】
(6)模様検知部203は、画像変換406にて、変位量補正405により撮像された媒体画像が基準媒体画像と同サイズになった後、撮像された媒体画像の中心502を中心として、基準媒体画像701と共に記憶していた各扇形領域700と同サイズで同画素数となるように区分し、各領域にある画素の平均を対応する基準媒体画像の701の扇形領域700の画素数から算出し、当該領域の特徴量となる一つの画素として画像を変換する。なお、基準媒体画像701についても、予め基準媒体画像の扇形領域700にある画素の平均を当該領域の特徴量となる一つの画素として記憶している。
【0038】
(7)模様検知部203は、回転検索407にて、前記画像変換406で変換された媒体画像の特徴領域703を含む扇形領域を図7のA方向に回転していき、基本媒体画像の特徴領域703を含む扇形領域の特徴量との一致度が最も高かった角度をその媒体が搬送された角度と判断し、媒体画像を当該角度に回転させ、媒体画像と基準媒体画像の特徴領域を一致させる補正を行う。
【0039】
(8)模様判定部208は、模様判定408にて、前記回転検索407により検索された角度の画像について、記憶部に予め登録された硬貨の特徴領域内の特徴と比較して、当該硬貨種の模様かどうか判定する。
【0040】
従来はこのようにして、模様判定を行っていたが、運用日数の経過と共に硬貨粉や埃等で模様検知部203が汚れることで模様判定が正しく行えず識別性能が低下することになる。また、事前にその兆候も検知できなかった。ここで、どのようにして模様判定が正しく行えなくなるかを図8、図9を用いて説明する。
【0041】
図8は図2の硬貨識別部の部分構造図であり、硬貨識別装置内に設けた模様検知部203を側面からみた構造図である。模様検知部203の内部には、斜め横から発光素子801が円環状に設けられており、撮像エリア全体を均一に照射している。そして、硬貨302の表面で生じる反射光を取り込むための集光レンズ802を介して反射光を受ける撮像素子803、及び硬貨302の表面で生じる反射光を通すガラス等の透明部材804を備え、硬貨302の表面の凹凸形状(模様や刻印)を光学的に検知している。ここで透明部材804の硬貨側の表面805に硬貨粉や埃等が付着した場合の一例を、図9を用いて説明する。
【0042】
図9は前記、特量領域703の一つを拡大した図である。901は各画素を表し、703は各画素901で構成される特徴領域を表す。902は硬貨粉や埃等の汚れが透明部材表面805に付着することによりできた模様を表す。前記画像変換406により、各画素の平均を当該領域の特徴量とするが、硬貨粉や埃等によりできた汚れ模様902により、本来の特徴量と異なったもので画像変換を行うことになる。これにより、以降の回転検索407で異なった角度を算出することでの識別性能低下や、模様判定408で登録された硬貨の特徴と異なることでの識別性能低下が発生する。
【0043】
これらの問題を解決するために、本実施形態では、予め撮像した画像により、透明部材表面805の汚れ位置を検知することでこの識別性能の低下を緩和する。この仕組みについて、図10〜図14を用いて説明する。
【0044】
図10、図11は、図8で説明した模様検知部203にカメラをカバーする仕組みを付加した図で、図10は撮像部分がカバーされているカバー閉状態を、図11は撮像部分のカバーがないカバー開状態を示している。図12は、図10、図11のギア1003及びカバー検知センサ1004付近を拡大して右側から見た断面図である。図13は図12を下から見た断面図である。図14は、媒体を識別するときの硬貨識別装置と識別部のコマンド/レスポンスを示す。
【0045】
まず、図12、図13を用いてカバーの開閉の仕組みを説明する。カバー1002は、図13のようにカバー搬送路1001に挟まれた状態で搬送される。カバー1002の両端はギア1003に噛み込むように凹凸状になっており、モータ1201を正転、逆転させることでギア1003を介して両方向に搬送することでカバーの開閉動作ができる。また、カバー1002には、カバー開状態とカバー閉状態を検知できる位置の2箇所に検知穴1202があり(図12には検知穴1202は1箇所分しか図示しない)、カバー検知センサ1004で透光状態、遮光状態を検知することでカバー開状態、カバー閉状態で止めることができる。また、撮像範囲は、検知穴1202より内側にあり、撮像への影響はない。また、カバー1002は、例えばOHPシートのような粘弾性のある素材でできており、撮像側はグレー等の均一な色となっている。
【0046】
次にカバーを開閉するタイミングと透明部材804の汚れ位置を検知する方法について、図10、図11、図14を用いて説明する。1005は、模様検知部全体を覆う筐体である。硬貨識別装置1401は、硬貨を扱う取引が発生した時点で識別部に対して、識別準備指示1002のコマンドを発行する。このとき識別部は図10のカバー閉状態で撮像して画像退避部207に保存し、前記で示した方法でモータ1201を動作させることで、図11のようにカバー開状態にする。ここでモータを動作させ始めてすぐにも再度、撮像を行い画像退避部207に保存する。この撮像タイミングは、撮像範囲内にカバーが全面覆われている状態であればいつでもよい。識別部はこの2つの画像を比較し、両方に汚れが検知できた位置を透明部材804の汚れ位置として検知し画像退避部207に保存する。尚、撮像数を増やすことで、カバー1002の汚れの影響を少なくして、より精度よく透明部材804の汚れ位置を検知できるようにしてもよい。識別の準備ができた時点で識別部104は、識別準備完了1403のレスポンスを返す。次に硬貨識別装置は搬送する媒体の準備ができた時点で媒体を搬送する。ここでは2枚搬送した例を示す。識別部は媒体を識別する毎に1枚目識別結果1404、2枚目識別結果1405を返す。硬貨識別装置1401は、搬送すべき媒体がなくなると、識別準備解除指示1406のコマンドを発行する。識別部は前記で示した方法でモータ1201を動作させることで、図10のようにカバー閉状態にして、識別準備状態を解除後、識別準備解除完了1407のレスポンスを返す。尚、ここではカバー1002を利用して透明部材804の汚れ位置を検出したが、カバーなしの場合は硬貨を搬送する搬送路301の汚れが、透明部材804の汚れに比べて非常に汚れており、透明部材の汚れを検知するのは困難である。
【0047】
次に透明部材804の汚れ位置から識別性能を緩和する方法について説明する。前記で説明した通り、図9の汚れ模様902を特徴領域703の平均に加えることで識別性能が低下しているため、透明部材の汚れ位置がわかれば、その位置を平均から除外することで識別性能の低下を軽減できる。尚、除外でなく、汚れ度合いに応じた係数をかけることで影響を少なくする方法をとってもよい。
【0048】
また、この方法によれば、透明部材の汚れ状態がわかるため、事前にその汚れ状態から硬貨識別装置に識別性能が低下し始めるワーニングとして通知することができる。これにより更に上位のATMや監視系システムに同情報を通知することが可能となり、事前に清掃や部品交換等を行うことで装置全体を常に正常な状態で運用することも可能となる。
【符号の説明】
【0049】
101…硬貨識別装置の筺体、102…入出金口、102a…パケット、103…繰り出し部、104…識別部、105…一時保留部、106…金種別部スタッカ、107…硬貨カセット、108…一括スタッカ、109…出金判別部、110…回収カートリッジ、111…入金搬送部、112…横搬送部、113…出金搬送部、114…縦搬送部、115…水平搬送ベルト、116…縦搬送ベルト、200…バス、201…制御部、202…媒体検知部、203…模様検知部、204…磁気検知部、205…記憶部、206…媒体検知退避部、207…画像退避部、208…模様判定部、209…磁気判定部、210…硬貨判定部、301…搬送路、302…硬貨、303…媒体検知領域、401…中心計算、402…半径計算、403…媒体中心補正、404…金種判別、405…変位量補正、406…画像変換、407…回転検索、408…模様判定、500…撮像範囲、501…媒体画像、502…媒体画像の中心、503…識別部搬送路、504…識別部搬送ベルト、511…X軸方向の各ラインの一定閾値以上を有する画素の最初の位置、512…X軸方向の各ラインの中点位置、513…X軸方向の各ラインの一定閾値以上を有する画素の最後の位置、514…X軸方向の中心位置の度数分布、521…Y軸方向の各ラインの一定閾値以上を有する画素の最初の位置、522…Y軸方向の各ラインの中点位置、52…Y軸方向の各ラインの一定閾値以上を有する画素の最後の位置、524…Y軸方向の中心位置の度数分布、601…識別部搬送ベルトエッジ汚れ、611…ベルトエッジ汚れ影響を受けたX軸方向の度数分布、700…扇形領域、701…基準媒体画像、702…基準媒体画像の中心、703…特徴領域、801…発光素子、802…集光レンズ、803…撮像素子、804…透明部材、805…透明部材の硬貨側表面、901…各画素、902…透明部材表面の汚れによりできた模様、1001…カバー搬送路、1002…カバー、1003…ギア、1004…カバー検知センサ、1005…模様検知部筐体、1201…モータ、1202…検知穴、1401…硬貨識別装置、1402…識別準備指示、1403…識別準備完了、1404…1枚目識別結果、1405…2枚目識別結果、1406…識別準備解除指示、1407…識別準備解除完了。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を識別する媒体識別装置であって、媒体を搬送する搬送手段と、
搬送される前記媒体を撮像する手段と、
媒体の識別に用いる画像である基準媒体画像を予め記憶する手段と、
前記基準媒体画像及び前記撮像手段により撮像された媒体の画像である媒体画像の所定位置を検出する手段を備えた媒体識別装置において、
媒体を搬送するベルトの汚れによる媒体画像の所定位置の位置ずれを軽減し、
撮像装置の撮像面の汚れ位置を検知することで、
識別装置の汚れによる識別性能低下を緩和することを特徴とする媒体識別装置。
【請求項2】
前記所定位置の位置ずれの軽減は、媒体搬送方向と垂直な方向のみで媒体の所定位置を決定することを特徴とする請求項1に記載の媒体識別装置。
【請求項3】
前記汚れ位置の検知は、撮像面に対してカバーを備え、カバーの撮像側にはグレー等の均一な色の基準面を備え、媒体識別前に予め撮像装置のカバーを少しずらした画像を複数撮像することで撮像装置の汚れ位置を検知することを特徴とする請求項1に記載の媒体識別装置。
【請求項4】
前記カバーの開閉のタイミングは、媒体識別前にカバー開とし、全ての媒体を識別後にカバー閉とすることを特徴とする請求項3に記載の媒体識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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