説明

媒体鑑別装置

【課題】正負の符号を考慮して微分フィルタによるフィルタ処理を媒体の画像に施すことによって、貼(は)り合わせの特徴と折れじわの特徴とを正確に識別することができ、貼り合わせ券を確実に判別することができるようにする。
【解決手段】媒体11の画像を取得する画像取得部21と、正負の符号を考慮して微分フィルタによるフィルタ処理を前記画像に施すフィルタ処理部22とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体鑑別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行、信用金庫、郵便局、消費者金融会社等の金融機関の支店等に配設されたATM(Automatic Teller Machine:現金自動預払機)、CD(Cash Dispenser:現金自動支払機)等の自動取引装置や両替機、また、商店や路上に配設された自動販売機等には、紙幣等の有価証券の真偽を判別したり、媒体の種別を判別するための媒体鑑別装置が配設されている。該媒体鑑別装置が紙幣等の媒体の真偽を判別することによって、偽造紙幣等の不正な媒体を排除することができる。
【0003】
近年では、本物の媒体の一部を切り取って部分的に偽物の券を貼(は)り合わせた偽造紙幣、すなわち、貼り合わせ券の流通が増加している。そこで、メカ的な方法で媒体を貼り合わせるテープ等の付着物の厚みを検出することによって、多様な媒体の真偽を判別することができる媒体鑑別装置に関する技術が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【特許文献1】特開2006−226859号公報
【特許文献2】特開2002−303679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の媒体鑑別装置においては、メカ的な方法で媒体を貼り合わせる付着物の厚みを検出するようになっているので、付着物として細いテープや薄いテープが使用された貼り合わせ券を確実に判別することは困難である。また、海外紙幣のように印刷の凹凸が大きい媒体、厚さにばらつきのある媒体、セキュリティスレッドが厚い媒体等を鑑別の対象にした場合も、貼り合わせ券を確実に判別することは困難である。
【0005】
さらに、メカ的な方法で貼り合わせ券を検出することができない場合には媒体の画像を取得して貼り合わせ券を検出しようとすることも考えられるが、一般に海外紙幣は痛みが激しくて折れじわが多く存在するので、画像を解析しても貼り合わせと折れじわとを識別することが困難である。
【0006】
本発明は、前記従来の媒体鑑別装置の問題点を解決して、正負の符号を考慮して微分フィルタによるフィルタ処理を媒体の画像に施すことによって、貼り合わせの特徴と折れじわの特徴とを正確に識別することができ、貼り合わせ券を確実に判別することができる媒体鑑別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明の媒体鑑別装置においては、媒体の画像を取得する画像取得部と、正負の符号を考慮して微分フィルタによるフィルタ処理を前記画像に施すフィルタ処理部とを有する。
【0008】
本発明の他の媒体鑑別装置においては、さらに、前記フィルタ処理部によってフィルタ処理が施されたフィルタ処理画像を格納するフィルタ処理画像格納部と、前記フィルタ処理画像に対して垂直方向に特徴値を累積して特徴波形を取得する垂直方向特徴累積部と、前記特徴波形の振幅を特徴値として抽出する振幅特徴抽出部と、判定閾(しきい)値を格納する判定閾値格納部と、前記特徴値を前記判定閾値と比較して、前記媒体が折れじわ券であるか否かを判定する判定部とを有する。
【0009】
本発明の更に他の媒体鑑別装置においては、さらに、前記フィルタ処理部によってフィルタ処理が施されたフィルタ処理画像を格納するフィルタ処理画像格納部と、前記フィルタ処理画像に対して垂直方向に特徴値を累積して特徴波形を取得する垂直方向特徴累積部と、前記特徴波形の変化の方向を特徴値として抽出する変化方向抽出部と、判定閾値を格納する判定閾値格納部と、前記特徴値を前記判定閾値と比較して、前記媒体が折れじわ券であるか否かを判定する判定部とを有する。
【0010】
本発明の更に他の媒体鑑別装置においては、さらに、前記フィルタ処理部によってフィルタ処理が施されたフィルタ処理画像を格納するフィルタ処理画像格納部と、前記フィルタ処理画像に対して垂直方向に特徴値を累積して特徴波形を取得する垂直方向特徴累積部と、前記特徴波形のピーク幅を特徴値として抽出するピーク幅特徴抽出部と、判定閾値を格納する判定閾値格納部と、前記特徴値を前記判定閾値と比較して、前記媒体が折れじわ券であるか否かを判定する判定部とを有する。
【0011】
本発明の更に他の媒体鑑別装置においては、さらに、前記フィルタ処理部によってフィルタ処理が施されたフィルタ処理画像を格納するフィルタ処理画像格納部と、前記フィルタ処理画像に対して水平方向に特徴値を累積して特徴波形を取得する水平方向特徴累積部と、前記特徴波形の振幅を特徴値として抽出する振幅特徴抽出部と、判定閾値を格納する判定閾値格納部と、前記特徴値を前記判定閾値と比較して、前記媒体が折れじわ券であるか否かを判定する判定部とを有する。
【0012】
本発明の更に他の媒体鑑別装置においては、さらに、前記フィルタ処理部によってフィルタ処理が施されたフィルタ処理画像を格納するフィルタ処理画像格納部と、前記フィルタ処理画像に対して水平方向に特徴値を累積して特徴波形を取得する水平方向特徴累積部と、前記特徴波形の変化の方向を特徴値として抽出する変化方向抽出部と、判定閾値を格納する判定閾値格納部と、前記特徴値を前記判定閾値と比較して、前記媒体が折れじわ券であるか否かを判定する判定部とを有する。
【0013】
本発明の更に他の媒体鑑別装置においては、さらに、前記フィルタ処理部によってフィルタ処理が施されたフィルタ処理画像を格納するフィルタ処理画像格納部と、前記フィルタ処理画像に対して水平方向に特徴値を累積して特徴波形を取得する水平方向特徴累積部と、前記特徴波形のピーク幅を特徴値として抽出するピーク幅特徴抽出部と、判定閾値を格納する判定閾値格納部と、前記特徴値を前記判定閾値と比較して、前記媒体が折れじわ券であるか否かを判定する判定部とを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、媒体鑑別装置においては、正負の符号を考慮して微分フィルタによるフィルタ処理を媒体の画像に施すようになっている。これにより、貼り合わせの特徴と折れじわの特徴とを正確に識別することができ、貼り合わせ券を確実に判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の第1の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示すブロック図である。
【0017】
図において、10は本実施の形態における媒体鑑別装置であり、ATM、CD等の自動取引装置、自動販売機、両替機、ゲーム機等の装置に配設され、媒体11の真偽を判別するために使用される。ここで、該媒体11は、例えば、紙幣であるが、ビール券、ギフト券、商品券等の金券、トラベラーズチェック、小切手、株券等の有価証券、入場券等の施設利用券、切符、帳票、カード、通帳等であってもよく、いかなる種類のものであってもよい。
【0018】
ここでは、説明の都合上、前記媒体11が紙幣である場合について説明する。この場合、前記媒体鑑別装置10は、真正媒体と偽造媒体とを貼り合わせた媒体11としての貼り合わせ券における貼り合わせの特徴と、長期間に亘(わた)る使用、折り畳みの繰り返し、乱雑な取り扱い等によって折れじわが生じた媒体11としての折れじわ券における折れじわの特徴とを識別することにより、媒体11が貼り合わせ券であるか折れじわ券であるかを判別するものであるが、媒体11の大きさ、形状、姿勢等を認識することができるものであってもよいし、さらに、認識した媒体11の大きさ等に基づいて、該媒体11の種類を判別することができるものであってもよい。例えば、該媒体11が我が国の紙幣である場合、千円札、二千円札、五千円札及び一万円札の4種類の金種の紙幣について、種類を判別することができることが望ましい。
【0019】
そして、前記媒体鑑別装置10は、自動取引装置のように媒体11としての紙幣を受領する装置における紙幣の搬送路や紙幣の取扱装置に配設され、受領した紙幣の真偽を判別する。なお、前記紙幣を受領する装置は、一般的には、銀行、信用金庫、郵便局、消費者金融会社等の金融機関の支店等の営業店や、コンビニエンスストア、スーパーマーケット等の商店の店舗等に配設されているATM、CD等の自動取引装置であるが、紙幣を受領するための装置であれば、鉄道、バス等の交通機関の券売機、飲料、タバコ等の自動販売機、両替機、ゲーム機等いかなる装置であってもよい。そして、前記紙幣を受領する装置は、前記媒体鑑別装置10が判別した真偽に基づいて、貼り合わせ券等を不正な紙幣として排除する。
【0020】
本実施の形態において、前記媒体鑑別装置10は、CPU、MPU等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、通信インターフェイス等を有する。さらに、前記媒体鑑別装置10は、画像取得部21、フィルタ処理部22、フィルタ処理画像格納部23、垂直方向特徴累積部24、振幅特徴抽出部25、判定部26、結果出力部27及び判定閾値格納部28を有する。
【0021】
ここで、画像取得部21は、光源から光を照射して媒体11の画像を取得する機能を有し、図示されない光源及び受光センサを備える画像取得装置が取得した画像を取得する。具体的には、媒体鑑別装置10に導入された媒体11に対して光源から照射された光による透過画像又は反射画像を、前記媒体11の画像として取得する。
【0022】
そして、フィルタ処理部22は、前記画像取得部21が取得した画像にフィルタ処理として、微分フィルタとしてのSobel(ソーベル)フィルタによるフィルタ処理を施す。具体的なフィルタ処理として、画像に正負の符号を考慮したSobelフィルタによるフィルタ処理を施すこととする。また、フィルタ処理画像格納部23は、前記フィルタ処理部22によってフィルタ処理が施された画像、すなわち、フィルタ処理画像を格納する。
【0023】
さらに、垂直方向特徴累積部24は、前記フィルタ処理画像格納部23に格納されているフィルタ処理画像に対して垂直方向に特徴値を累積して特徴波形を取得する。つまり、前記フィルタ処理画像の垂直方向に画素単位の輝度を累積して、前記フィルタ処理画像の特徴波形としての特徴データを得る。
【0024】
そして、振幅特徴抽出部25は、前記垂直方向特徴累積部24が得た特徴データから振幅の特徴を抽出する。つまり、フィルタ処理画像の特徴波形の最大値及び最小値から前記特徴波形の振幅を特徴値として抽出する。
【0025】
また、判定部26は、前記振幅特徴抽出部25が抽出した振幅、すなわち、特徴値を、判定閾値格納部28にあらかじめ格納されている判定閾値と比較して、特徴波形の示す特徴が折れじわであるのか否かを判定する。すなわち、媒体11が折れじわ券であるか否かを判定する。さらに、結果出力部27は、前記判定部26の判定結果を受けて、該判定結果を媒体鑑別装置10が備える図示されない画面及びファイルに出力する。
【0026】
次に、前記構成の媒体鑑別装置10の動作について説明する。まず、フィルタ処理の動作について説明する。
【0027】
図2は本発明の第1の実施の形態におけるフィルタ処理画像を示す図、図3は本発明の第1の実施の形態における輝度のグラフ及び垂直方向に累積した輝度のグラフを示す図、図4は本発明の第1の実施の形態におけるSobelフィルタの例を示す図である。なお、図2において、(a−1)は貼り合わせ券の画像、(a−2)はSobelフィルタ、(a−3)は貼り合わせ券のフィルタ処理画像、(b−1)は折れじわ券の画像、(b−2)はSobelフィルタ、(b−3)は折れじわ券のフィルタ処理画像であり、図3において、(a−1)は貼り合わせ券の画像、(a−2)は貼り合わせ券の輝度を示すグラフ、(a−3)は貼り合わせ券の垂直方向に累積した特徴値を示すグラフ、(b−1)は折れじわ券の画像、(b−2)は折れじわ券の輝度を示すグラフ、(b−3)は折れじわ券の垂直方向に累積した特徴値を示すグラフであり、図4において、(a)は水平方向のSobelフィルタ、(b)は他の水平方向のSobelフィルタ、(c)は垂直方向のSobelフィルタ、(d)はフィルタ処理の対象となる画素の番号である。
【0028】
まず、媒体鑑別装置10に導入された媒体11が図示されない搬送路を搬送されると、画像取得部21が前記媒体11の画像を取得する。ここでは、説明の都合上、媒体11が図2(a−1)及び(b−1)に示されるような貼り合わせ券11a又は折れじわ券11bである場合について説明する。
【0029】
前記貼り合わせ券11aは、真正媒体12と偽造媒体13とを貼り合わせたものであり、真正媒体12と偽造媒体13とを貼り合わせた箇所を示す貼り合わせ部14が存在する。また、前記折れじわ券11bは、真正媒体12であるが、折れじわ15が存在する。
【0030】
ここで、前記貼り合わせ券11aにおいては、偽造媒体13の部分は輝度が高く、真正媒体12の部分は輝度が低くなっているものとする。そのため、前記貼り合わせ券11aの画像の輝度は、図3(a−2)における波形41aで示されるように変化する。すなわち、貼り合わせ部14に対応する位置14−2で、矢印Aで示されるように、輝度が変化する。
【0031】
一方、前記折れじわ券11bにおいては、折れじわ15の部分は輝度が低くなっている。そのため、前記折れじわ券11bの画像の輝度は、図3(b−2)における波形41bで示されるように変化する。すなわち、折れじわ15に対応する位置15−2の前後で、矢印B及びCで示されるように、輝度が変化する。
【0032】
続いて、フィルタ処理部22は、画像取得部21が取得した画像にSobelフィルタ処理を施す。この場合、図2(a−2)及び(b−2)に示されるように、微分フィルタとしての符号を考慮したSobelフィルタ31を使用し、貼り合わせ券11a及び折れじわ券11bの画像にフィルタ処理を施す。なお、Sobelフィルタ31は、差分演算を行うことによって差分を検出する差分フィルタである。これにより、図2(a−3)及び(b−3)に示されるように、貼り合わせ券11aのフィルタ処理画像11−1a及び折れじわ券11bのフィルタ処理画像11−1bを得ることができる。
【0033】
そして、フィルタ処理画像格納部23は、前記フィルタ処理画像11−1a及び11−1bを格納する。なお、図2(a−3)及び(b−3)において、14−1は貼り合わせ部14に対応する部分であり、15−1は折れじわ15に対応する部分である。
【0034】
ここで、前記Sobelフィルタ31としては、図4(a)に示されるような水平方向のSobelフィルタ31a又は図4(b)に示されるような水平方向のSobelフィルタ31bが使用される。なお、フィルタをかける方向、例えば、画像の左から右に向かってかけるか、右から左に向かってかけるかによってフィルタ処理画像が異なるので、水平方向のSobelフィルタ31a又は31bのいずれを使用した場合であっても、また、フィルタをかける方向をいずれの方向に設定した場合であっても、同一のフィルタ処理画像を得ることができるように、フィルタ処理における演算では、二乗してその平方根を採用することが望ましい。
【0035】
また、前記Sobelフィルタ31としては、図4(a)に示されるような水平方向のSobelフィルタ31a及び図4(c)に示されるような垂直方向のSobelフィルタ31cを同時に使用することもできる。この場合、フィルタ処理における演算では、水平方向の特徴値Stx及び垂直方向の特徴値Styの二乗和の平方根を採用することが望ましく、水平方向の特徴値Stx及び垂直方向の特徴値Styの二乗和の平方根である特徴値Fsは、次の式(1)によって求められる。なお、フィルタ処理の対象となる画素の番号は図4(d)に示されるものが使用されている。
【0036】
Fs= √{(Stx)2 +(Sty)2 }=√{((Si*(−1)+S4*(−2)+S7*(−1)+S3*1+S6*2+S9*1)2 +(S1*(−1)+S2*(−2)+S3*(−1)+S7*1+S8*2+S9*1)2 } ・・・式(1)
ところで、従来から使用されているようなSobelフィルタを使用して画像にフィルタ処理を施すと、輝度が変化したところでは大きな値となり、輝度0〜255のグレースケールの画像では、輝度が変化したところは白く(輝度が高い)、輝度が変化しないところは黒く(輝度が低い)見える。そのため、従来から使用されているようなSobelフィルタを使用し得られたフィルタ処理画像では貼り合わせ券11aと折れじわ券11bとの識別が困難である。
【0037】
次に、従来から使用されているようなSobelフィルタを使用した第1の比較例について説明する。
【0038】
図5は第1の比較例におけるフィルタ処理画像及び輝度の特徴波形を示す図、図6は第1の比較例におけるフィルタ処理を説明する図である。なお、図5において、(a−1)は貼り合わせ券の画像、(a−2)はSobelフィルタ、(a−3)は貼り合わせ券のフィルタ処理画像、(a−4)は貼り合わせ券の輝度を示すグラフ、(b−1)は折れじわ券の画像、(b−2)はSobelフィルタ、(b−3)は折れじわ券のフィルタ処理画像、(b−4)は折れじわ券の輝度を示すグラフであり、図6において、(a−1)は貼り合わせ券の輝度を示すグラフ、(a−2)は貼り合わせ券の画像の部分拡大図、(a−3)は貼り合わせ券のフィルタ処理画像の部分拡大図、(b−1)は折れじわ券の輝度を示すグラフ、(b−2)は折れじわ券の画像の部分拡大図、(b−3)は折れじわ券のフィルタ処理画像の部分拡大図である。
【0039】
図5(a−2)及び(b−2)に示されるような従来のSobelフィルタ131を使用し、図5(a−1)及び(b−1)に示されるような貼り合わせ券11a及び折れじわ券11bの画像にフィルタ処理を施すと、図5(a−3)及び(b−3)に示されるような貼り合わせ券11aのフィルタ処理画像11−1a及び折れじわ券11bのフィルタ処理画像11−1bを得ることができる。輝度が変化したところは白く見え、輝度が変化しないところは黒く見えるので、貼り合わせ部14に対応する部分14−1及び折れじわ15に対応する部分15−1は、いずれも白く見え、識別が困難である。
【0040】
ここで、前記Sobelフィルタ131による演算を説明する。なお、説明の都合上、前記Sobelフィルタ131は図4(a)に示されるような水平方向のSobelフィルタ31aと同様のものであるとする。また、フィルタ処理の対象となる画像の画素は、図6(a−2)及び(b−2)に示されるような画像領域70a及び70bにおけるフィルタ領域71a及び71bに含まれる画素であるものとする。
【0041】
なお、図6(a−1)及び(b−1)には、貼り合わせ券11aの画像の輝度を示す波形41a及び折れじわ券11bの画像の輝度を示す波形41bが、水平方向に拡大されて示されている。そして、位置15−3は折れじわ15の左端に対応し、位置15−4は折れじわ15の右端に対応する。
【0042】
そして、前記フィルタ領域71a及び71bの3×3個の画素にSobelフィルタ131をかけると、図6(a−3)及び(b−3)に示されるような特徴値72a及び72bが算出される。ここでは、図6(a−3)及び(b−3)に示されるような画素73a及び73bの特徴値は、説明の都合上、前記式(1)を使用することなく、次の式(2)及び(3)によって求められる。
画素73aの特徴値=√[{(150*(−1)}+{150*(−2)}+
{150*(−1)}+{50*1}+{50*2}+{50*1}]2 =400
・・・式(2)
画素73bの特徴値=√[{50*(−1)}+{50*(−2)}+
{50*(−1)}+{150*1}+{150*2}+{150*1}]2 =400
・・・式(3)
続いて、垂直方向特徴累積部24が、図5(a−3)及び(b−3)に示されるような貼り合わせ券11aのフィルタ処理画像11−1a及び折れじわ券11bのフィルタ処理画像11−1bに対し、垂直方向に画素の特徴値を累積すると、図5(a−4)及び(b−4)に示されるような輝度を表す特徴波形である波形45a及び45bを得ることができる。
【0043】
そして、貼り合わせ券11aの貼り合わせ部14に対応する位置では、フィルタ処理画像11−1aの輝度が高いので、波形45aにピーク点46aが含まれる。また、折れじわ券11bの折れじわ15に対応する位置では、フィルタ処理画像11−1bの輝度が高いので、波形45bにピーク点46bが含まれる。なお、前記波形45a及び45bの特徴値としてのピーク点46a及び46bの輝度値は、P1及びP2であるものとする。
【0044】
続いて、振幅特徴抽出部25が前記ピーク点46a及び46bを抽出すると、判定部26は、前記ピーク点46a及び46bの輝度値P1及びP2と、判定閾値格納部28に格納されている判定閾値とを比較する。そして、判定部26は、次の式(4)及び(5)によって、媒体11が貼り合わせ券11aであるか折れじわ券11bであるかを判定し、結果出力部27は、判定部26の判定結果を出力する。
貼り合わせ券11aである判定条件:P1、P2<Th ・・・式(4)
折れじわ券11bである判定条件:P1、P2≧Th ・・・式(5)
なお、Thは判定閾値格納部28に格納されている判定閾値である。
【0045】
しかし、図5(a−4)及び(b−4)に示されるように、ピーク点46aの輝度値P1及びピーク点46bの輝度値P2は、ほぼ同程度の値であり、かつ、いずれもThを超えている。そのため、貼り合わせ券11a及び折れじわ券11bは、いずれも、貼り合わせ券11aである、と判定されてしまう。
【0046】
このように、従来から使用されているようなSobelフィルタを使用した第1の比較例では、貼り合わせ券11aと折れじわ券11bとの識別が困難である。
【0047】
そこで、本実施の形態においては、フィルタ処理において、第1の比較例のように絶対値を使用して特徴値を算出するのではなく、正負の符号を考慮して特徴値を算出するようになっている。
【0048】
次に、本実施の形態におけるフィルタ処理を含む動作について詳細に説明する。
【0049】
図7は本発明の第1の実施の形態におけるフィルタ処理を説明する図、図8は本発明の第1の実施の形態におけるフィルタ処理画像及び垂直方向に累積した輝度のグラフを示す図である。なお、図7において、(a−1)は貼り合わせ券の画像の部分拡大図、(a−2)は貼り合わせ券のフィルタ処理画像の部分拡大図、(b−1)は折れじわ券の画像の部分拡大図、(b−2)は折れじわ券のフィルタ処理画像の部分拡大図であり、図8において、(a−1)は貼り合わせ券のフィルタ処理画像、(a−2)は貼り合わせ券の垂直方向に累積した特徴値を示すグラフ、(b−1)は折れじわ券のフィルタ処理画像、(b−2)は折れじわ券の垂直方向に累積した特徴値を示すグラフである。
【0050】
ここで、符号を考慮したSobelフィルタ31によるフィルタ処理の対象となる画像の画素は、図7(a−1)及び(b−1)に示されるような画像領域70a及び70bにおけるフィルタ領域71a及び71bに含まれる画素であるものとする。また、これらの画素のうちで注目すべき注目画素は75a及び75bである。
【0051】
そして、符号を考慮すると、注目画素は75a及び75bの特徴値を次の式(6)及び(7)によって求められる。
画素75aの特徴値={150*(−1)}+{150*(−2)}+{150*(−1)}+{50*1}+{50*2}+{50*1}=−400 ・・・式(6)
画素75bの特徴値={50*(−1)}+{50*(−2)}+{50*(−1)}+{150*1}+{150*2}+{150*1}=400 ・・・式(7)
このようにして、符号を考慮したSobelフィルタ31によるフィルタ処理を施すと、図7(a−2)及び(b−2)に示されるような特徴値72a及び72bが算出される。
【0052】
続いて、垂直方向特徴累積部24が、図7において矢印Dで示されるような垂直方向に画素の特徴値を累積すると、図8(a−2)及び(b−2)に示されるような累積された特徴値を表す特徴波形42a及び42bを得ることができる。なお、特徴波形42aのピーク点を43aとし、特徴波形42aの最小値及び最大値をPM1及びPM2とする。また、特徴波形42bのピーク点を43b−1及び43b−2とし、特徴波形42bの最小値及び最大値をPM3及びPM4とする。
【0053】
続いて、振幅特徴抽出部25は、特徴波形42aの最小値PM1と最大値PM2との差分値FT1、及び、特徴波形42bの最小値PM3と最大値PM4との差分値FT2を特徴値として抽出する。すると、判定部26は、前記差分値FT1及びFT2と、判定閾値格納部28に格納されている判定閾値とを比較する。
【0054】
ここで、判定部26は、次の式(8)及び(9)によって、媒体11が貼り合わせ券11aであるか折れじわ券11bであるかを判定する。
貼り合わせ券11aである判定条件:FT1、FT2<Th ・・・式(8)
折れじわ券11bである判定条件:FT1、FT2≧Th ・・・式(9)
例えば、FT1=100、FT2=200、判定閾値Th=150であるとすると、図8(a−2)に示されるような特徴波形42aの場合、FT1<Thであるから、貼り合わせ券11aであると判定される。また、図8(b−2)に示されるような特徴波形42bの場合、FT2≧Thであるから、貼り合わせ券11aではなく、折れじわ券11bであると判定される。
【0055】
最後に、結果出力部27は、判定部26の判定結果を出力する。
【0056】
このように、本実施の形態においては、媒体11の画像にフィルタ処理を施す場合、Sobelフィルタ31の正負の符号を考慮して特徴値を算出する。これにより、貼り合わせ部14の特徴と折れじわ15の特徴とを正確に識別することができるので、貼り合わせ券11aと折れじわ券11bとを確実に判別することができる。したがって、媒体11が厚さのばらつきが大きい海外紙幣であっても、正確に折れじわ券11bであるか否かを判別することができ、真正媒体12である折れじわ券11bのリジェクトを抑制することを抑制して、貼り合わせ券11aを確実に排除することができる。
【0057】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0058】
図9は本発明の第2の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示すブロック図である。
【0059】
本実施の形態において、媒体鑑別装置10は、前記第1の実施の形態における振幅特徴抽出部25に代えて、変化方向抽出部29を有する。該変化方向抽出部29は、前記垂直方向特徴累積部24が得た特徴データから変化の方向を特徴値として抽出する。つまり、フィルタ処理画像の特徴波形からその変化の方向を抽出する。
【0060】
なお、その他の点の構成については、前記第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0061】
次に、本実施の形態における媒体鑑別装置10の動作について説明する。
【0062】
図10は本発明の第2の実施の形態におけるフィルタ処理画像を示す図である。なお、図10において、(a−1)は貼り合わせ券の画像、(a−2)はSobelフィルタ、(a−3)は貼り合わせ券のフィルタ処理画像、(b−1)は折れじわ券の画像、(b−2)はSobelフィルタ、(b−3)は折れじわ券のフィルタ処理画像である。
【0063】
まず、媒体鑑別装置10に導入された媒体11が図示されない搬送路を搬送されると、画像取得部21が前記媒体11の画像を取得する。ここでは、前記第1の実施の形態と同様に、媒体11が図10(a−1)及び(b−1)に示されるような貼り合わせ券11a又は折れじわ券11bである場合について説明する。
【0064】
前記貼り合わせ券11aは、真正媒体12と偽造媒体13とを貼り合わせたものであり、真正媒体12と偽造媒体13とを貼り合わせた箇所を示す貼り合わせ部としての隙(すき)間16が存在する。なお、前記貼り合わせ券11aにおいては、偽造媒体13の部分の輝度と真正媒体12の部分の輝度との間にはほとんど差がないものとする。また、前記折れじわ券11bは、真正媒体12であるが、折れじわ15が存在する。
【0065】
続いて、フィルタ処理部22は、画像取得部21が取得した画像にSobelフィルタ処理を施す。この場合、図10(a−2)及び(b−2)に示されるように、微分フィルタとしての符号を考慮したSobelフィルタ31を使用し、貼り合わせ券11a及び折れじわ券11bの画像にフィルタ処理を施す。これにより、図10(a−3)及び(b−3)に示されるように、貼り合わせ券11aのフィルタ処理画像11−1a及び折れじわ券11bのフィルタ処理画像11−1bを得ることができる。なお、前記Sobelフィルタ31については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0066】
そして、フィルタ処理画像格納部23は、前記フィルタ処理画像11−1a及び11−1bを格納する。なお、図10(a−3)及び(b−3)において、16−1は隙間16に対応する部分であり、15−1は折れじわ15に対応する部分である。
【0067】
次に、従来から使用されているようなSobelフィルタを使用した第2の比較例について説明する。
【0068】
図11は第2の比較例におけるフィルタ処理画像及び輝度の特徴波形を示す図、図12は第2の比較例におけるフィルタ処理を説明する図である。なお、図11において、(a−1)は貼り合わせ券の画像、(a−2)はSobelフィルタ、(a−3)は貼り合わせ券のフィルタ処理画像、(a−4)は貼り合わせ券の輝度を示すグラフ、(b−1)は折れじわ券の画像、(b−2)はSobelフィルタ、(b−3)は折れじわ券のフィルタ処理画像、(b−4)は折れじわ券の輝度を示すグラフであり、図12において、(a−1)は貼り合わせ券の輝度を示すグラフ、(a−2)は貼り合わせ券の画像の部分拡大図、(a−3)は貼り合わせ券のフィルタ処理画像の部分拡大図、(b−1)は折れじわ券の輝度を示すグラフ、(b−2)は折れじわ券の画像の部分拡大図、(b−3)は折れじわ券のフィルタ処理画像の部分拡大図である。
【0069】
図11(a−2)及び(b−2)に示されるような従来のSobelフィルタ131を使用し、図11(a−1)及び(b−1)に示されるような貼り合わせ券11a及び折れじわ券11bの画像にフィルタ処理を施すと、図11(a−3)及び(b−3)に示されるような貼り合わせ券11aのフィルタ処理画像11−1a及び折れじわ券11bのフィルタ処理画像11−1bを得ることができる。
【0070】
ここで、前記Sobelフィルタ131による演算を説明する。なお、フィルタ処理の対象となる画像の画素は、図12(a−2)及び(b−2)に示されるような画像領域70a及び70bにおけるフィルタ領域71a及び71bに含まれる画素であるものとする。
【0071】
また、図12(a−1)及び(b−1)には、貼り合わせ券11aの画像の輝度を示す波形41a及び折れじわ券11bの画像の輝度を示す波形41bが、水平方向に拡大されて示されている。なお、位置16−2は隙間16の右端に対応する。
【0072】
そして、前記フィルタ領域71a及び71bの3×3個の画素にSobelフィルタ131をかけると、図12(a−3)及び(b−3)に示されるような特徴値72a及び72bが算出される。ここでは、図12(a−3)及び(b−3)に示されるような画素73a及び73bの特徴値は、次の式(10)及び(11)によって求められる。
画素73aの特徴値=|{180*(−1)}+{180*(−2)}+(180*(−1)}+{255*1}+{255*2}+{255*1}|=300・・・式(10)
画素73bの特徴値=|{50*(−1))+{50*(−2)}+{50*(−1))+{180*1}+{180*2}+{180*1}|=520・・・式(11)
ここで、記号||は絶対値を示す絶対値記号である。
【0073】
続いて、垂直方向特徴累積部24が、図11(a−3)及び(b−3)に示されるような貼り合わせ券11aのフィルタ処理画像11−1a及び折れじわ券11bのフィルタ処理画像11−1bに対し、垂直方向に画素の特徴値を累積すると、図11(a−4)及び(b−4)に示されるような輝度を表す特徴波形である波形45a及び45bを得ることができる。
【0074】
そして、貼り合わせ券11aの隙間16に対応する位置では、フィルタ処理画像11−1aの輝度が高いので、波形45aにピーク点46aが含まれる。また、折れじわ券11bの折れじわ15に対応する位置では、フィルタ処理画像11−1bの輝度が高いので、波形45bにピーク点46bが含まれる。なお、前記波形45a及び45bの特徴値としてのピーク点46a及び46bの輝度値は、P1及びP2であるものとする。
【0075】
続いて、変化方向抽出部29がフィルタ処理画像11−1a及び11−1bの波形45a及び45bからその変化の方向を抽出し、該方向に得点を付与する。ここでは、次の式(12)及び(13)のように特徴値としての特徴フラグを付与するものとする。
正方向に変化した場合:+1 ・・・式(12)
負方向に変化した場合:−1 ・・・式(13)
貼り合わせ券11aの特徴波形である波形45aの場合、ピーク点46aは真正媒体12の領域の輝度を基準にして正方向に変化しているので、特徴フラグ+1が付与される。また、折れじわ券11bの特徴波形である波形45bの場合も、同様に、ピーク点46bは真正媒体12の領域の輝度を基準にして正方向に変化しているので、特徴フラグ+1が付与される。
【0076】
続いて、判定部26は、変化方向抽出部29が付与した得点と、判定閾値格納部28に格納されている判定閾値とを比較する。そして、判定部26は、媒体11が貼り合わせ券11aであるか折れじわ券11bであるかを判定し、結果出力部27は、判定部26の判定結果を出力する。
【0077】
しかし、図11(a−4)及び(b−4)に示されるように、ピーク点46aの変化する方向及びピーク点46bの変化する方向が等しく、変化方向抽出部29が付与した得点が同一となるので、貼り合わせ券11aであるのか折れじわ券11bであるのかを判定することができない。
【0078】
このように、従来から使用されているようなSobelフィルタを使用した第2の比較例では、貼り合わせ券11aと折れじわ券11bとの識別が不可能である。
【0079】
そこで、本実施の形態においては、フィルタ処理において、第2の比較例のように絶対値を使用して特徴値を算出するのではなく、正負の符号を考慮して特徴値を算出するようになっている。
【0080】
次に、本実施の形態におけるフィルタ処理を含む動作について詳細に説明する。
【0081】
図13は本発明の第2の実施の形態におけるフィルタ処理を説明する図、図14は本発明の第2の実施の形態におけるフィルタ処理画像及び垂直方向に累積した輝度のグラフを示す図である。なお、図13において、(a−1)は貼り合わせ券の画像の部分拡大図、(a−2)は貼り合わせ券のフィルタ処理画像の部分拡大図、(b−1)は折れじわ券の画像の部分拡大図、(b−2)は折れじわ券のフィルタ処理画像の部分拡大図であり、図14において、(a−1)は貼り合わせ券のフィルタ処理画像、(a−2)は貼り合わせ券の垂直方向に累積した特徴値を示すグラフ、(b−1)は折れじわ券のフィルタ処理画像、(b−2)は折れじわ券の垂直方向に累積した特徴値を示すグラフである。
【0082】
ここで、符号を考慮したSobelフィルタ31によるフィルタ処理の対象となる画像の画素は、図13(a−1)及び(b−1)に示されるような画像領域70a及び70bにおけるフィルタ領域71a及び71bに含まれる画素であるものとする。また、これらの画素のうちで注目すべき注目画素は75a及び75bである。
【0083】
そして、符号を考慮すると、注目画素は75a及び75bの特徴値を次の式(14)及び(15)によって求められる。
画素75aの特徴値={180*(−1)}+{180*(−2)}+{180*(−1)}+{255*1}+{255*2}+{255*1}=−300 ・・・式(14)
画素75bの特徴値={50*(−1)}+{50*(−2)}+{50*(−1)}+{180*1}+{180*2}+{180*1}=520 ・・・式(15)
このようにして、符号を考慮したSobelフィルタ31によるフィルタ処理を施すと、図13(a−2)及び(b−2)に示されるような特徴値72a及び72bが算出される。
【0084】
続いて、垂直方向特徴累積部24が、図13において矢印Dで示されるような垂直方向に画素の特徴値を累積すると、図14(a−2)及び(b−2)に示されるような累積された特徴値を表す特徴波形42a及び42bを得ることができる。なお、特徴波形42aのピーク点を43a−1及び43a−2とし、特徴波形42aの基準値、最小値及び最大値をPM0、PM1及びPM2とする。また、特徴波形42bのピーク点を43b−1及び43b−2とし、特徴波形42bの基準値、最小値及び最大値をPM0、PM3及びPM4とする。
【0085】
続いて、変化方向抽出部29がフィルタ処理画像11−1a及び11−1bの特徴波形42a及び42bからその変化の方向を抽出する。
【0086】
まず、図14(a−2)に示される貼り合わせ券11aの特徴波形42aについて、前記変化方向抽出部29は、S1からS2の方向にサーチする。前記特徴波形42aは、基準値PM0からピーク点43a−1に向けて上昇して最大値PM2に到達し、次に、ピーク点43a−2に向けて下降して最小値PM1に到達し、その後、再び上昇して基準値PM0に復帰する。
【0087】
したがって、前記式(12)及び(13)のように特徴フラグを付与すると、特徴波形42aに付与された特徴フラグは、次の式(16)のようになる。
+1→−1 ・・・式(16)
また、図14(b−2)に示される折れじわ券11bの特徴波形42bについて、前記変化方向抽出部29は、S3からS4の方向にサーチする。前記特徴波形42bは、基準値PM0からピーク点43b−1に向けて下降して最小値PM3に到達し、次に、ピーク点43b−2に向けて上昇して最大値PM4に到達し、その後、再び下降して基準値PM0に復帰する。
【0088】
したがって、前記式(12)及び(13)のように特徴フラグを付与すると、特徴波形42bに付与された特徴フラグは、次の式(17)のようになる。
−1→+1 ・・・式(17)
本実施の形態において、判定閾値格納部28には、折れじわ券11bであることを判定するための判定閾値として、次の式(18)で示される特徴フラグが格納されている。
折れじわ券11bである判定条件:−1→+1 ・・・式(18)
そして、判定部26は、前記変化方向抽出部29によって付与された特徴フラグを、判定閾値格納部28に判定閾値として格納されている特徴フラグと比較し、媒体11が貼り合わせ券11aであるか折れじわ券11bであるかを判定する。この場合、変化方向抽出部29によって付与された特徴フラグと判定閾値として格納されている特徴フラグとが一致したときには媒体11が折れじわ券11bであると判定し、一致しないときには媒体11が貼り合わせ券11aであると判定する。
【0089】
したがって、図14(a−2)に示される特徴波形42aの場合、変化方向抽出部29が付与する特徴フラグが、前記式(16)で表され、判定閾値として格納されている特徴フラグと一致しないから、貼り合わせ券11aであると判定される。
【0090】
また、図14(b−2)に示される特徴波形42bの場合、変化方向抽出部29が付与する特徴フラグが、前記式(17)で表され、判定閾値として格納されている特徴フラグと一致するから、折れじわ券11bであると判定される。
【0091】
最後に、結果出力部27は、判定部26の判定結果を出力する。
【0092】
このように、本実施の形態においては、媒体11の画像にフィルタ処理を施す場合、Sobelフィルタ31の正負の符号を考慮して特徴値を算出し、特徴波形の変化の方向に応じて付与された特徴フラグに基づいて判別する。これにより、貼り合わせ券11aの特徴波形42aの振幅と折れじわ券11bの特徴波形42bの振幅とが同等であっても、貼り合わせ券11aと折れじわ券11bとを確実に判別することができる。したがって、媒体11が厚さのばらつきが大きい海外紙幣であっても、正確に折れじわ券11bであるか否かを判別することができ、真正媒体12である折れじわ券11bのリジェクトを抑制することを抑制して、貼り合わせ券11aを確実に排除することができる。
【0093】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0094】
図15は本発明の第3の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示すブロック図である。
【0095】
本実施の形態において、媒体鑑別装置10は、前記第1の実施の形態における振幅特徴抽出部25に代えて、ピーク幅特徴抽出部30を有する。該ピーク幅特徴抽出部30は、前記垂直方向特徴累積部24が得た特徴データからピーク幅を特徴値として抽出する。つまり、フィルタ処理画像の特徴波形からそのピーク点同士の距離を特徴値として抽出する。
【0096】
なお、その他の点の構成については、前記第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0097】
次に、本実施の形態における媒体鑑別装置10の動作について説明する。
【0098】
図16は本発明の第3の実施の形態におけるフィルタ処理画像を示す図、図17は本発明の第3の実施の形態におけるフィルタ処理画像及び垂直方向に累積した輝度のグラフを示す図である。なお、図16において、(a−1)は貼り合わせ券の画像、(a−2)はSobelフィルタ、(a−3)は貼り合わせ券のフィルタ処理画像、(b−1)は折れじわ券の画像、(b−2)はSobelフィルタ、(b−3)は折れじわ券のフィルタ処理画像であり、図17において、(a−1)は貼り合わせ券のフィルタ処理画像、(a−2)は貼り合わせ券の垂直方向に累積した特徴値を示すグラフ、(b−1)は折れじわ券のフィルタ処理画像、(b−2)は折れじわ券の垂直方向に累積した特徴値を示すグラフである。
【0099】
まず、媒体鑑別装置10に導入された媒体11が図示されない搬送路を搬送されると、画像取得部21が前記媒体11の画像を取得する。ここでは、前記第1の実施の形態と同様に、媒体11が図16(a−1)及び(b−1)に示されるような貼り合わせ券11a又は折れじわ券11bである場合について説明する。
【0100】
前記貼り合わせ券11aは、真正媒体12と偽造媒体13とを貼り合わせたものであり、偽造媒体13は幅が狭く細長い短冊状の形状を備え、その両側に真正媒体12が貼り合わされている。なお、前記貼り合わせ券11aにおいては、偽造媒体13の部分は輝度が高く、真正媒体12の部分は輝度が低くなっているものとする。また、前記折れじわ券11bは、真正媒体12であるが、折れじわ15が存在する。
【0101】
続いて、フィルタ処理部22は、画像取得部21が取得した画像にSobelフィルタ処理を施す。この場合、図16(a−2)及び(b−2)に示されるように、微分フィルタとしての符号を考慮したSobelフィルタ31を使用し、貼り合わせ券11a及び折れじわ券11bの画像にフィルタ処理を施す。これにより、図16(a−3)及び(b−3)に示されるように、貼り合わせ券11aのフィルタ処理画像11−1a及び折れじわ券11bのフィルタ処理画像11−1bを得ることができる。なお、前記Sobelフィルタ31については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0102】
そして、フィルタ処理画像格納部23は、前記フィルタ処理画像11−1a及び11−1bを格納する。なお、図16(a−3)において、13−1及び13−2は、偽造媒体13の幅方向両側縁に対応する部分であり、黒い線及び白い線の2本の線のように見える。また、図16(b−3)において、15−1は折れじわ15に対応する部分である。
【0103】
続いて、垂直方向特徴累積部24が、前記フィルタ処理画像11−1a及び11−1bの画素の特徴値を垂直方向に累積すると、図17(a−2)及び(b−2)に示されるような累積された特徴値を表す特徴波形42a及び42bを得ることができる。
【0104】
なお、特徴波形42aのピーク点を43a−1及び43a−2とし、特徴波形42aの基準値、最小値及び最大値をPM0、PM1及びPM2とする。前記ピーク点を43a−1及び43a−2は、偽造媒体13の幅方向両側縁に対応する部分13−1及び13−2に対応する位置に生じる。
【0105】
また、特徴波形42bのピーク点を43b−1及び43b−2とし、特徴波形42bの基準値、最小値及び最大値をPM0、PM3及びPM4とする。前記ピーク点を43b−1及び43b−2は、折れじわ15に対応する部分15−1の両側縁に対応する位置15−2及び15−3に生じる。
【0106】
図17(a−2)及び(b−2)から明らかなように、特徴波形42a及び42bの変化の方向は同一である。すなわち、該特徴波形42a及び42bは、基準値PM0からピーク点43a−1及び43b−1に向けて下降して最小値PM1及びPM3に到達し、次に、ピーク点43a−2及び43b−2に向けて上昇して最大値PM2及びPM4に到達し、その後、再び下降して基準値PM0に復帰する。
【0107】
そのため、前記第2の実施の形態のように、特徴波形42a及び42bの変化の方向に応じて特徴フラグを付与しても、いずれも前記式(17)のようになるので、判別することができない。
【0108】
そこで、本実施の形態においては、ピーク幅特徴抽出部30が特徴波形42a及び42bからピーク点間の距離をピーク幅、すなわち、特徴値DSTとして抽出する。具体的には、最小値が生じた位置と最大値が生じた位置との距離を抽出する。
【0109】
まず、図17(a−2)に示される貼り合わせ券11aの特徴波形42aについて、前記ピーク幅特徴抽出部30は、最小値PM1となるピーク点43a−1と最大値PM2となるピーク点43a−2との間の、S1からS2の方向に関する位置の差分である特徴値DST17aを抽出する。ここで、該特徴値DST17aの値は、例えば、50であるものとする。
【0110】
次に、図17(b−2)に示される折れじわ券11bの特徴波形42bについて、前記ピーク幅特徴抽出部30は、最小値PM3となるピーク点43b−1と最大値PM4となるピーク点43b−2との間の、S3からS4の方向に関する位置の差分である特徴値DST17bを抽出する。ここで、該特徴値DST17bの値は、例えば、20であるものとする。
【0111】
本実施の形態において、判定閾値格納部28には、折れじわ券11bであることを判定するための判定閾値としての特徴値DSTの値が格納されている。そして、判定部26は、ピーク幅特徴抽出部30によって抽出された特徴値DSTの値を前記判定閾値としての特徴値DSTの値と比較し、媒体11が貼り合わせ券11aであるのか折れじわ券11bであるのかを判定する。具体的には、判定閾値としての特徴値DSTの値を、例えば、30とすると、次の式(19)及び(20)によって判定する。
貼り合わせ券11aである判定条件:DST≧30 ・・・式(19)
折れじわ券11bである判定条件:DST<30 ・・・式(20)
したがって、図17(a−2)に示される特徴波形42aの場合、特徴値DST17aの値は50であり、前記式(19)を満足するから、貼り合わせ券11aであると判定される。
【0112】
また、図17(b−2)に示される特徴波形42bの場合、特徴値DST17bの値は20であり、前記式(20)を満足するから、折れじわ券11bであると判定される。
【0113】
最後に、結果出力部27は、判定部26の判定結果を出力する。
【0114】
このように、本実施の形態においては、特徴波形からそのピーク点間の距離を抽出して判定閾値と比較して判別する。これにより、貼り合わせ券11aの特徴波形42aの変化の方向と折れじわ券11bの特徴波形42bの変化の方向とが同一であっても、貼り合わせ券11aと折れじわ券11bとを確実に判別することができる。したがって、幅が狭く細長い短冊状の偽造媒体13を貼り合わせた貼り合わせ券11aであっても、正確に判別することができ、確実に排除することができる。
【0115】
なお、前記第1〜第3の実施の形態においては、媒体11の画像のフィルタ処理に使用するフィルタがSobelフィルタである場合について説明したが、フィルタは必ずしもSobelフィルタに限定されるものではなく、微分フィルタであればいかなる種類のフィルタであってもよく、例えば、Prewittフィルタ、グラディエントフィルタ等であってもよい。
【0116】
また、前記第1〜第3の実施の形態においては、媒体11を短手方向に切断して貼り合わせた場合及び媒体11の短手方向に折れじわがある場合について説明したが、垂直方向特徴累積部24に代えて、フィルタ処理画像に対して水平方向に特徴値を累積して特徴波形を取得する水平方向特徴累積部を使用することによって、媒体11を長手方向に切断して貼り合わせた場合及び媒体11の長手方向に折れじわがある場合についても、同様の効果を得ることができる。
【0117】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の第1の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるフィルタ処理画像を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における輝度のグラフ及び垂直方向に累積した輝度のグラフを示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるSobelフィルタの例を示す図である。
【図5】第1の比較例におけるフィルタ処理画像及び輝度の特徴波形を示す図である。
【図6】第1の比較例におけるフィルタ処理を説明する図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態におけるフィルタ処理を説明する図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態におけるフィルタ処理画像及び垂直方向に累積した輝度のグラフを示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態におけるフィルタ処理画像を示す図である。
【図11】第2の比較例におけるフィルタ処理画像及び輝度の特徴波形を示す図である。
【図12】第2の比較例におけるフィルタ処理を説明する図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態におけるフィルタ処理を説明する図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態におけるフィルタ処理画像及び垂直方向に累積した輝度のグラフを示す図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態における媒体鑑別装置の構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態におけるフィルタ処理画像を示す図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態におけるフィルタ処理画像及び垂直方向に累積した輝度のグラフを示す図である。
【符号の説明】
【0119】
10 媒体鑑別装置
11 媒体
11b 折れじわ券
11−1a、11−1b フィルタ処理画像
17a、17b、72a、72b 特徴値
21 画像取得部
22 フィルタ処理部
23 フィルタ処理画像格納部
24 垂直方向特徴累積部
25 振幅特徴抽出部
26 判定部
28 判定閾値格納部
29 変化方向抽出部
30 ピーク幅特徴抽出部
31、31a、31b、31c Sobelフィルタ
42a、42b 特徴波形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)媒体の画像を取得する画像取得部と、
(b)正負の符号を考慮して微分フィルタによるフィルタ処理を前記画像に施すフィルタ処理部とを有することを特徴とする媒体鑑別装置。
【請求項2】
前記フィルタ処理部によってフィルタ処理が施されたフィルタ処理画像を格納するフィルタ処理画像格納部と、
前記フィルタ処理画像に対して垂直方向に特徴値を累積して特徴波形を取得する垂直方向特徴累積部と、
前記特徴波形の振幅を特徴値として抽出する振幅特徴抽出部と、
判定閾値を格納する判定閾値格納部と、
前記特徴値を前記判定閾値と比較して、前記媒体が折れじわ券であるか否かを判定する判定部とを有する請求項1に記載の媒体鑑別装置。
【請求項3】
前記フィルタ処理部によってフィルタ処理が施されたフィルタ処理画像を格納するフィルタ処理画像格納部と、
前記フィルタ処理画像に対して垂直方向に特徴値を累積して特徴波形を取得する垂直方向特徴累積部と、
前記特徴波形の変化の方向を特徴値として抽出する変化方向抽出部と、
判定閾値を格納する判定閾値格納部と、
前記特徴値を前記判定閾値と比較して、前記媒体が折れじわ券であるか否かを判定する判定部とを有する請求項1に記載の媒体鑑別装置。
【請求項4】
前記フィルタ処理部によってフィルタ処理が施されたフィルタ処理画像を格納するフィルタ処理画像格納部と、
前記フィルタ処理画像に対して垂直方向に特徴値を累積して特徴波形を取得する垂直方向特徴累積部と、
前記特徴波形のピーク幅を特徴値として抽出するピーク幅特徴抽出部と、
判定閾値を格納する判定閾値格納部と、
前記特徴値を前記判定閾値と比較して、前記媒体が折れじわ券であるか否かを判定する判定部とを有する請求項1に記載の媒体鑑別装置。
【請求項5】
前記フィルタ処理部によってフィルタ処理が施されたフィルタ処理画像を格納するフィルタ処理画像格納部と、
前記フィルタ処理画像に対して水平方向に特徴値を累積して特徴波形を取得する水平方向特徴累積部と、
前記特徴波形の振幅を特徴値として抽出する振幅特徴抽出部と、
判定閾値を格納する判定閾値格納部と、
前記特徴値を前記判定閾値と比較して、前記媒体が折れじわ券であるか否かを判定する判定部とを有する請求項1に記載の媒体鑑別装置。
【請求項6】
前記フィルタ処理部によってフィルタ処理が施されたフィルタ処理画像を格納するフィルタ処理画像格納部と、
前記フィルタ処理画像に対して水平方向に特徴値を累積して特徴波形を取得する水平方向特徴累積部と、
前記特徴波形の変化の方向を特徴値として抽出する変化方向抽出部と、
判定閾値を格納する判定閾値格納部と、
前記特徴値を前記判定閾値と比較して、前記媒体が折れじわ券であるか否かを判定する判定部とを有する請求項1に記載の媒体鑑別装置。
【請求項7】
前記フィルタ処理部によってフィルタ処理が施されたフィルタ処理画像を格納するフィルタ処理画像格納部と、
前記フィルタ処理画像に対して水平方向に特徴値を累積して特徴波形を取得する水平方向特徴累積部と、
前記特徴波形のピーク幅を特徴値として抽出するピーク幅特徴抽出部と、
判定閾値を格納する判定閾値格納部と、
前記特徴値を前記判定閾値と比較して、前記媒体が折れじわ券であるか否かを判定する判定部とを有する請求項1に記載の媒体鑑別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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