説明

嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置

【課題】好気攪拌機能に加え、嫌気攪拌機能を備えた自吸式曝気攪拌機を用いることによって、好気運転及び嫌気運転の処理効率を向上することができる嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置を提供すること。
【解決手段】自吸式曝気攪拌機5を処理槽2内の水位変動に追従して昇降するようにフロート3に取り付け、高水位での好気運転においては曝気攪拌を行い、低水位での嫌気運転においては攪拌のみを行うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回分式水処理装置に関し、特に、嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な活性汚泥法においては、脱窒(窒素除去)を目的とした嫌気運転時には、反応槽内で嫌気攪拌を行えば脱窒菌の働きを促進することができるため、処理効率は攪拌を行わない場合と比較して、約20%向上することが知られている。
このため、活性汚泥法においては、嫌気攪拌を行う嫌気運転と、好気攪拌を行う好気運転とを行うようにしている。
しかし、単一の反応槽内で、汚水流入→曝気→沈澱分離→処理水放流を行う回分式活性汚泥法において、縦軸曝気機や自吸式曝気機といった固定式表面曝気機を用いる場合には、各処理工程で水位変動があり、特に、水位が低下する嫌気運転においては、固定式表面曝気機を停止せざるを得ないため、十分な窒素除去効果を得ることができなかった。
なお、このような場合において、嫌気攪拌を行うためには、固定式表面曝気機とは別に攪拌機を設置して嫌気運転を行う必要があるが、固定式表面曝気機に加えて攪拌機を設置する必要があるため、設置スペースや設置コストを要するものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、好気攪拌機能に加え、嫌気攪拌機能を備えた自吸式曝気攪拌機を用いることによって、好気運転及び嫌気運転の処理効率を向上するようにした嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明の嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置は、自吸式曝気攪拌機を処理槽内の水位変動に追従して昇降するようにフロートに取り付け、高水位での好気運転においては曝気攪拌を行い、低水位での嫌気運転においては攪拌のみを行うことを特徴とする。
【0005】
この場合において、嫌気運転時の曝気攪拌機の回転数を好気運転時よりも低速回転に制御することができる。
【0006】
また、嫌気運転を曝気攪拌機の吸気口の開閉を制御することによって行うことができる。
【0007】
また、伸縮式の排水管を接続した集水トラフをフロート全体の重心位置に設けることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置によれば、自吸式曝気攪拌機を処理槽内の水位変動に追従して昇降するようにフロートに取り付け、高水位での好気運転においては曝気攪拌を行い、低水位での嫌気運転においては攪拌のみを行うことにより、自吸式曝気攪拌機を水位の変動にかかわらず、常時運転が可能な浸漬深さを保持することができ、好気運転及び嫌気運転の処理効率を向上することができる。
これにより、1台の自吸式曝気攪拌機を用いることによって、脱窒効率を向上させることが可能であり、別の攪拌機を設置する必要がなくなり、設置スペースや設置コストの問題を解消することができる。
【0009】
また、嫌気運転時の曝気攪拌機の回転数を好気運転時よりも低速回転に制御することにより、水位変動のある流入工程においても安定した好気運転が可能であり、また、嫌気運転時には曝気攪拌機の回転数を好気運転時の40%以下に制御して、嫌気状態を作り出すことができる。
【0010】
また、嫌気運転を曝気攪拌機の吸気口の開閉を制御することによって行うことにより、水位変動のある流入工程においても安定した好気運転が可能であり、また、嫌気運転時には曝気攪拌機の吸気口を閉鎖して曝気攪拌機を駆動することにより嫌気状態を作り出すことができる。
【0011】
また、伸縮式の排水管を接続した集水トラフをフロート全体の重心位置に設けることにより、集水トラフは、曝気攪拌機を駆動することによりフロートが傾いてもその影響を受けることがなく、安定して水面近くの汚泥を含まない処理水を集めて排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置の第1実施例を示す説明図である。
【図2】同詳細説明図である。
【図3】本発明の嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置を適用した廃水処理施設の運転タイムチャートである。
【図4】電源周波数と空気量の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置の第2実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1及び図2に、本発明の嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置の第1実施例を示す。
この嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置1は、自吸式曝気攪拌機5を処理槽2内の水位変動に追従して昇降するようにフロート3に取り付け、高水位での好気運転においては曝気攪拌を行い、低水位での嫌気運転においては攪拌のみを行うようにしている。
【0015】
この場合において、処理槽2は、回分式活性汚泥法にて汚水を処理するもので、この所要容積を有する処理槽2内に水位変動に追従して昇降する自吸式曝気攪拌機5を設置する。
【0016】
この曝気攪拌機5は、フロート3を配設したフレーム4に固定するとともに、フレーム4には、曝気攪拌機5のほか、曝気攪拌機5及びフロート3を含むフレーム4全体の重心位置に伸縮式の排水管7を接続した集水トラフ6を設けるようにする。
【0017】
自吸式曝気攪拌機5には、各種のものを採用することができるが、本実施例においては、中空状のカバー51内に駆動軸52を貫通させ、カバー51の外で、かつ常に水面下の所定位置にある攪拌羽根53を駆動軸52の下端に固定し、駆動軸52の上端の水面上にモータ54を設け、このモータ54にて攪拌羽根53を回転させ、汚水を攪拌するとき、汚水中に生じる負圧を利用してカバー51内あるいは駆動軸52内を経て空気を吸引し、吸引した空気を汚水中に吹き込むようにしている。
なお、本実施例で使用する自吸式曝気攪拌機5は、本体重量が100kg前後と軽量であるため、フロート3を配設したフレーム4に設置することが可能であり、常に最適な設置状態で運転を可能とすることができる。
【0018】
フロート3は、曝気攪拌機5を固定したフレーム4が水面上に安定して浮上するようにできるものである限りにおいて、その材質、形状、個数に制限はない。
【0019】
また処理槽2の上部には架台Fを設け、この架台Fと処理槽2の底部間にガイドロッドGを立設し、このガイドロッドGにフレーム4を支持させ、フロート3を配設したフレーム4が変動水位に追従して昇降しても処理槽2内の所定位置にて支持されるようにする。
【0020】
集水トラフ6には、伸縮式の排水管7を接続し、排水管7の下端は処理槽2の外部へ処理水を排出可能なように配設された固定式の排水管8に接続される。
集水トラフ6は、排水管7の上端に直管状の越流管9を一体に設け、この越流管9の上部を覆うようにして形成され、この集水トラフ6と越流管9及び集水トラフ6とフレーム4とは夫々固定される。
集水トラフ6は、下面が開放されたボックス状のもので、周壁下端は水面下10〜15cm程度となるようにし、排気配管16を介して電磁弁15a及び真空ポンプ15bを備えた排気装置15により集水トラフ6内の空気を抜くと上澄水(処理水)は集水トラフ6の下端縁を越流し、集水トラフ6内にてしかも集水トラフ6内水面より上位にて開口した越流管9上端より排水管7内へ排水される。 また、集水トラフ6には、サイホンブレーク配管17を接続し、サイホンブレーク配管17を介して外気を導入することにより排水を停止できるようにしている。
集水トラフ6からの排水は、水位計18やタイマー及び制御装置19によって制御するようにする。
【0021】
伸縮式の排水管7は、水位変動に追従して伸縮するが、必要に応じて、伸縮が円滑かつ正確に行えるように、ガイド装置10を備えることができる。
このガイド装置10は、架台Fと処理槽2の底部間に張設されたガイドバー11に、摺動可能にリング12を夫々嵌挿支持し、このリング12にアーム13を突設し、このアーム13の基端側を伸縮式の排水管7の外周谷部に嵌合抱持させたホルダー14に固定する。
すなわち、このホルダー14は、伸縮式の排水管7の長手方向に対し所要間隔毎に抱持させ、この各ホルダー14にアーム13を放射状に突出させるものであり、これにより排水管7が水位変動により伸縮するとき、ガイドバー11に沿ってリング12が摺動し、アーム13及びホルダー14を介して排水管7はガイドバー11にて案内される。
これにより、排水時以外に排水管7に生じる浮力によって排水管7が屈曲することを防止することができる。
【0022】
フレーム4の下部には、排水時等において、水位が低下し、それに伴い排水管7が最小限小したとき、あるいはある許容範囲内に縮小したとき、フレーム4を支持するための脚41を突設する。
これにより許容される最下点までフレーム4が降下したとき、この脚41にてフレーム4が支持されるようにし、処理槽2内の排泥清掃、オーバホール等のとき、荷重が排水管7にかかるのを防止するようにしている。
【0023】
伸縮式の排水管7の上部には、汚泥巻込防止板20を配設し、集水トラフ6から排出される排水に汚泥が混入しないようにする。
【0024】
次に、この嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置1の運転方法について説明する。
自吸式曝気攪拌機5は、図3に示す廃水処理施設の運転タイムチャートのように、インバータによって電源周波数を変えることによって、曝気攪拌機5のモータ54の回転数を制御することができるようにしている。
具体的には、好気運転時には、モータ54を高速回転(例えば、電源周波数を50Hzに設定)することにより、必要な曝気量を得る運転を行い、嫌気運転時には、低速回転(例えば、電源周波数を20Hz以下(回転数を好気運転時の40%以下)に設定。)することにより、曝気量を下げるかゼロにする運転を行って、嫌気状態を作り出すことができる。
ここで、自吸式曝気攪拌機5は、回転数の3乗に比例した空気量が得られる(図4に示す電源周波数と空気量の関係を示すグラフ参照)。
すなわち、インバータによって電源周波数を50Hzから20Hzに下げることにより空気量(曝気量)を6%程度まで下げることができ、嫌気攪拌状態を得ることができる。
【0025】
これにより、自吸式曝気攪拌機5を水位の変動にかかわらず、常時運転が可能な浸漬深さを保持することができ、好気運転及び嫌気運転の処理効率を向上することができる。
具体的には、脱窒効率が嫌気攪拌なしの場合の50〜70%から70〜90%に約20%向上することを確認した。
また、1台の自吸式曝気攪拌機5を用いることによって、脱窒効率を向上させることが可能であり、別の攪拌機を設置する必要がなくなり、設置スペースや設置コストの問題を解消することができる。
【実施例2】
【0026】
図5に、本発明の嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置の第2実施例を示す。
この嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置1は、自吸式曝気攪拌機5のモータ(図示省略)に中空モータを使用するとともに、曝気攪拌機の吸気口の開閉を制御する空気遮断弁55を取り付けることにより、水位変動のある流入工程においても安定した好気運転が可能であり、また、嫌気運転時には曝気攪拌機5の吸気口を空気遮断弁55を閉鎖して曝気攪拌機5を駆動することにより嫌気状態を作り出すことができるようにしたものである。
この嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置1は、嫌気運転時には空気遮断弁55を閉鎖するだけで嫌気状態を作り出すことができ、その際、上記第1実施例のように回転数を下げなくてよいため、攪拌力を低下させることなく、嫌気状態を確保できる。
なお、本実施例のその他の構成及び作用は、上記第1実施例と同様である。
【0027】
以上、本発明の嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置は、好気攪拌機能に加え、嫌気攪拌機能を備えた自吸式曝気攪拌機を用いることによって、好気運転及び嫌気運転の処理効率を向上することができることから、回分式活性汚泥法の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 回分式水処理装置
2 処理槽
3 フロート
4 フレーム
41 脚
5 曝気攪拌機
51 カバー
52 駆動軸
53 攪拌羽根
54 モータ
55 空気遮断弁
6 集水トラフ
7 排水管
8 排水管
9 越流管
10 ガイド装置
11 ガイドバー
12 リング
13 アーム
14 ホルダー
15 排気装置
16 排気配管
17 サイホンブレーク配管
18 水位計
19 制御装置
20 汚泥巻込防止板
F 架台
G ガイドロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自吸式曝気攪拌機を処理槽内の水位変動に追従して昇降するようにフロートに取り付け、高水位での好気運転においては曝気攪拌を行い、低水位での嫌気運転においては攪拌のみを行うことを特徴とする嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置。
【請求項2】
嫌気運転時の曝気攪拌機の回転数を好気運転時よりも低速回転に制御することを特徴とする請求項1記載の嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置。
【請求項3】
嫌気運転を曝気攪拌機の吸気口の開閉を制御することによって行うことを特徴とする請求項1記載の嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置。
【請求項4】
伸縮式の排水管を接続した集水トラフをフロート全体の重心位置に設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の嫌気攪拌機能を備えた回分式水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−179551(P2012−179551A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44053(P2011−44053)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】