説明

子供置き去り警報装置

【課題】本発明は、複数の利用手段を備える子供用シートの利用手段を判別して特定の利用手段の場合のみに警報を実施する構成とし、且つ、その警報を実施するための構成をより簡単なものとした子供置き去り警報装置を提供することを目的としている。
【解決手段】このため、車内への子供の置き去りを警報する子供置き去り警報装置において、子供用シートを備え、子供用シートは、子供用シートに子供を保持する子供用シートベルトと、子供用シートベルトの装着状態を検出する装着検出部を備え、子供用シートが車両に取り付けられていることを検出する接続検出部と、エンジン停止操作検出部と、車内への子供の置き去りを警報する警報手段と、車両のドアの施錠検出部とを備え、エンジン停止操作が検出されたときに、子供用シートが車両に取り付けられ、且つ、子供用シートベルトが装着状態にある場合に警報手段が警報を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に子供を乗車させる場合に使用する子供用シートに関し、特にベビーカー用シートとしても利用可能な複数の利用手段を備える子供用シートを用いた子供置き去り警報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チャイルドシート(以下、「子供用シート」という。)に保持された子供が車室内に置き去りにされることを防止する従来技術として以下のものがある。
以下の特許文献1に開示されるものでは、車内の異常常態を検知して、その緊急事態を通知する技術が紹介されているが、その異常事態を検知するには子供用シートヘの子供の着座の有無を人体センサによって判断する方法を備える。
また、特許文献2に開示されるものでは、子供用シートベルトの装着状態から子供用シートヘの子供の着座を検出する技術が紹介されている。さらに、子供用シートヘの子供の着座をより確実に検出するために赤外線センサや物体検出ユニットを備えている。
更に、特許文献3に開示されるものでは、車両に搭載するチャイルドシートをベビーカーのシートやキャリー、ロッキングチェアにも使用することができる技術が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−160192号公報
【特許文献2】特開2000−255379号公報
【特許文献3】特開2002−205586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の子供置き去り警報装置において、子供用シートヘの子供の着座を、特許文献1では圧力センサやゆれ感知センサ、特許文献22では赤外線センサや物体検出ユニットを用いて行う技術が紹介されているが、これらのセンサ類の検出結果の処理は煩雑であるという不都合がある。
より簡便な方法として、上述の特許文献2では、子供用シートベルトの装着状態から子供用シートヘの子供の着座の有無を判別する技術が紹介されているが、単に子供用シートベルトの装着状態から子供用シートヘの子供の着座の有無を判別して警報を行うとした場合、不必要な警報が発せられる場合があるという不都合がある。
つまり、車両に取り付ける子供用シートをベビーカーのシート等に利用できる技術(特許文献3参照。)に特許文献2の技術を応用した場合、この子供用シートをベビーカーのシート等に使用しているときに子供用シートベルトを装着状態とすると、子供用シートを車両に取り付けていないのにもかかわらず、誤った警報がなされるという不都合がある。
このため、子供用シートヘの子供の着座をより簡便な方法で検出可能とするとともに、誤った警報がなされることも抑制できる技術提案を行う。
【0005】
この発明は、複数の利用手段を備える子供用シートであっても、その利用手段を判別して特定の利用手段の場合のみに警報を実施する構成とできて、且つ、その警報を実施するための構成をより簡単なものとした子供置き去り警報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、車内への子供の置き去りを警報する子供置き去り警報装置において、子供を着座させる子供用シートを備え、この子供用シートは、子供用シートに子供を保持する子供用シートベルトと、この子供用シートベルトの装着状態を検出する装着検出部を備え、前記子供用シートが車両に取り付けられていることを検出する接続検出部と、エンジンの停止操作を検出するエンジン停止操作検出部と、車内への子供の置き去りを警報する警報手段と、車両のドアの施錠状態を検出する施錠検出部とを備え、エンジン停止操作が検出されたときに、前記子供用シートが車両に取り付けられ、且つ、前記子供用シートベルトが装着状態にある場合に前記警報手段が警報を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上詳細に説明した如くこの発明によれば、警報を発するための条件として、子供用シートが車両に取り付けられ、且つ、子供用シートベルトが装着状態にあることを条件としているため、複数の利用方法を備える子供用シートであっても、その子供用シートが車両に取り付けられ、子供を車内に置き去りにしてしまうおそれのある場合のみに警報を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は子供置き去り警報装置の制御用フローチャートである。(実施例)
【図2】図2は子供置き去り警報装置の概略システム図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0010】
図1及び図2はこの発明の実施例を示すものである。
図2において、1は子供置き去り警報装置、2は車両(図示せず)の車両シート、3は子供、4は子供用シートである。
前記子供置き去り警報装置1は、車内への子供の置き去りを警報する装置である。
そして、この子供置き去り警報装置1は、図2に示す如く、前記車両シート2に接続される前記子供用シート4を備え、この子供用シート4に子供3を着座させるものである。
このとき、この子供用シート4は、車両シート2に取り付けるために、車両シート2には固定部材5を取り付ける。
追記すれば、この実施例におけるの子供用シート4は、子供用シート以外に、例えばベビーカー用のシートとしても使用できる。複数の利用手段を備える子供用シートである。このような複数の利用手段を備える子供用シート4を車両シート2に取り付ける場合には、前記固定部材5を介して車両シート2に取り付ける必要があることを想定している。
なお、本発明の子供用シート4は、固定部材5が存在しない構成、もしくは、子供用シート4と固定部材5とが一体となっている構成の子供用シートであっても良い。
また、子供用シート4と固定部材5とは、図2に示す如く、それぞれ子供用シート側コネクタ6と固定部材側コネクタ7とを備え、子供用シート4と固定部材5との接続時にそれらのコネクタ6、7を接続する構成としている。
このとき、前記子供用シート側コネクタ6と固定部材側コネクタ7との接続は、子供用シート4と固定部材5とを接続する際に、車両の所有者等が別途各々のコネクタを接続させる構成としても良いが、子供用シート4と固定部材5とを接続固定させるための構造部にこれらのコネクタ6、7を設け、子供用シート4と固定部材5とが接続する際に自動でコネクタの接続が完了する構成としても良い。
更に、前記子供用シート4は、この子供用シート4に子供3を保持する子供用シートベルト8と、この子供用シートベルト8の装着状態を検出する装着検出部9とを備えている。
この装着検出部9は、前記子供用シート側コネクタ6に子供用シートベルト8の装着状態を送信し、子供用シート側コネクタ6と前記固定部材側コネクタ7とを介して後述する制御装置(「制御部」または「制御手段」とも換言できる。)14に子供用シートベルト8の装着状態を検出して送信する。
【0011】
前記子供置き去り警報装置1は、接続検出部10と、エンジン停止操作検出部11と、警報手段12と、施錠検出部13とを備えている。
つまり、前記子供置き去り警報装置1は、図2に示す如く、各種の制御を行う制御装置14を備え、この制御装置14にタイマ15と前記警報手段12とを内蔵している。
そして、前記制御装置14に前記接続検出部10や前記エンジン停止操作検出部11、施錠検出部13を接続している。
このとき、前記接続検出部10は、前記子供用シート側コネクタ6及び固定部材側コネクタ7からなり、前記子供用シート4が車両に取り付けられていることを検出する。つまり、これらのコネクタ6、7が接続されると、前記接続検出部10が前記制御装置14にコネクタ6、7が接続状態であることを検出した検出信号を出力する。
なお、前記固定部材5を介さずに前記子供用シート4を車両シート2に固定し、車両シート2に子供用シート4が接続されていることを検出できる構成としても良い。
前記エンジン停止操作検出部11は、エンジンの停止操作を検出する。
前記警報手段12は、車内への子供3の置き去りを警報する。
前記施錠検出部13は、車両のドア(図示せず)の施錠状態を検出する。
【0012】
また、前記子供置き去り警報装置1は、エンジン停止操作が検出されたときに、前記子供用シート4が車両に取り付けられ、且つ、前記子供用シートベルト8が装着状態にある場合に前記警報手段12が警報を実施する構成とする。
詳述すれば、前記子供置き去り警報装置1は、イグニッション(「IG」とも記載する。)スイッチ(図示せず)のOFF状態によって、エンジン停止操作が行われたことを検出する。
また、前記子供置き去り警報装置1は、子供用シート4が固定部材5を利用して車両に取り付けられているか否かを、前記接続検出部10の前記子供用シート側コネクタ6及び固定部材側コネクタ7によって検出する。
更に、前記子供置き去り警報装置1は、前記子供用シートベルト8が装着状態にあるか否かを、前記装着検出部9によって検出する。
そして、前記子供置き去り警報装置1は、所定の条件が成立した際に、前記制御装置14からの制御信号が前記警報手段12に出力され、前記警報手段12が警報を実施するものである。
従って、警報を発するための条件として、子供用シート4が車両に取り付けられ、且つ、前記子供用シートベルト8が装着状態にあることを条件としているため、複数の利用方法を備える子供用シート4であっても、その子供用シート4が車両に取り付けられ、子供3を車内に置き去りにしてしまうおそれのある場合のみに警報を行うことができる。
【0013】
また、前記警報手段12は、複数の警報手段、例えば、車室内への子供3の置き去りの可能性が低い場合の第一警報手段16と、車室内への子供3の置き去りの可能性が高い場合の第二警報手段17とを備えている。
そして、前記警報手段12は、夫々所定の条件が満たされた場合にいずれかの警報の実行の指示を行う構成を有している。
つまり、前記警報手段12は、エンジン停止操作が検出されたときに、前記子供用シート4が車両に取り付けられ、且つ、前記子供用シートベルト8が装着状態にある場合に前記警報手段12は前記第一警報手段16を実施するとともに、さらに車両のドアが施錠状態、つまり「ドアロック」状態である場合に前記警報手段12が前記第二警報手段17を実施する。
従って、前記警報手段12は、車両の状況から子供3の置き去りの可能性の高さを判断し、且つ、その可能性の高さに応じた第一警報手段16または第二警報手段17を実施することができる。
【0014】
更に、前記子供置き去り警報装置1は、時間カウントを行う前記タイマ15、もしくは、車両周囲の乗員の有無を検出する乗員検知部18を備えている。
そして、前記子供置き去り警報装置1は、前記子供用シート4と前記固定部材5とが接続状態であって、且つ、前記子供用シートベルト8が装着状態にあり、車両のドアが施錠状態である「ドアロック」状態となってから所定時間継続するか、または、前記乗員検知手段18が乗員を検知できない場合に、前記警報手段12が第二警報手段17を実施する。
従って、前記タイマ15によってドアの施錠を検出してから所定時間が経過するか、または、前記乗員検知手段18が乗員を検出できない場合に、第二警報手段17を実施することとしたので、不用意な警報の実施を防止できる。
【0015】
次に、図1の前記子供置き去り警報装置1の制御用フローチャートに沿って作用を説明する。
【0016】
この子供置き去り警報装置1の制御用プログラムがスタート(101)すると、イグニッションスイッチのON/OFF状態を検出する処理(102)に移行する。
そして、このイグニッションスイッチのON/OFF状態を検出する処理(102)の後に、イグニッションスイッチがOFF状態にあるか否かの判断(103)に移行する。
このイグニッションスイッチがOFF状態にあるか否かの判断(103)において、判断(103)がNOの場合には、この判断(103)がYESとなるまで判断(103)を繰り返し行う。
また、判断(103)がYESの場合には、前記子供用シート4と前記固定部材5とが接続されているか否か、かつ、前記子供用シートベルト8が装着されているか否かの判断(104)に移行する。
この判断(104)において、判断(104)がNOの場合には、後述する前記子供置き去り警報装置1の制御用プログラムのエンド(110)に移行する。
更に、判断(104)がYESの場合には、車両のドアが施錠状態である「ドアロック」状態となっているか否かの判断(105)に移行する。
そして、この車両のドアが施錠状態である「ドアロック」状態となっているか否かの判断(105)において、判断(105)がNOの場合には、前記警報手段12によって前記第一警報手段16を実施する処理(106)に移行し、その後に、車両のドアが施錠状態である「ドアロック」状態となっているか否かの判断(105)を再度行うために、判断(105)に移行する。
また、車両のドアが施錠状態である「ドアロック」状態となっているか否かの判断(105)がYESの場合には、前記タイマ15による時間カウントを行う処理(107)に移行する。
そして、時間カウントを行う処理(107)の後には、車両のドアが施錠状態である「ドアロック」状態となってから所定時間経過したか否か、または、前記乗員検知手段18が乗員を検知できないか否かの判断(108)に移行する。
この車両のドアが施錠状態である「ドアロック」状態となってから所定時間経過したか否か、または、前記乗員検知手段18が乗員を検知できないか否かの判断(108)において、判断(108)がNOの場合には、この判断(108)がYESとなるまで判断(108)を繰り返し行う。
また、判断(108)がYESの場合には、前記警報手段12によって前記第二警報手段17を実施する処理(109)に移行し、その後に、前記子供置き去り警報装置1の制御用プログラムのエンド(110)に移行する。
【0017】
補足説明すれば、上述の処理(106)では、前記第一警報手段16が実施される。このとき、第一警報手段16では、車室内に警報ブザーを鳴らすことや子供用シートベルト8の装着解除を促す表示を行う処理が行われる。
また、上述の処理(109)では、前記第二警報手段17が実施される。このとき、第二警報手段17では、車両のクラクションを鳴らすことや当該車両のキーレスエントリー用のリモコンヘの警報表示が行われる。そして、この警報表示は、子供3が車室内に置き去りにされている可能性があるといった内容である。
更に、上述の処理(106)及び処理(109)は、いずれも警報を行う点では同様であるが、警報対象が異なっている。
つまり、処理(106)の前記第一警報手段16は、主に当該車両の乗員に対して警告が行われる。これは車両のドア施錠操作が行われておらず(上述の判断(105)でNOの場合)、当該車両の車室内やその周囲に乗員がいる可能性が高い。乗員が所用のため一時的に車両を停止状態としている場合もあり、車室内への子供3の置き去りが発生する可能性は低い。そのため、主に当該車両の乗員のみに警報を行う構成としている。
これに対して、処理(109)の前記第二警報手段17は、当該東両の乗員だけでなく、外部の人間も対象にして警告が行われる。この第二警報手段17が実施されるのは、車両のドアが施錠状態となってから所定時間が経過したか、または、車両のキーレスリモコンを所持して乗員が所定距離離れ、乗員検知手段が乗員を検知できない状況となることである。つまり、乗員が車室内や車両の周囲にいないことで、子供3を車室内に置き去りにする可能性が、処理(106)の場合よりも高いと言える。この処理(109)を備えることで、車両から離れた乗員にも警報が行え、さらに外部の人間にも警報を行うことができて、子供3を車室内に置き去りにすることを防止できる。
【符号の説明】
【0018】
1 子供置き去り警報装置
2 車両シート
3 子供
4 子供用シート
5 固定部材
6 子供用シート側コネクタ
7 固定部材側コネクタ
8 子供用シートベルト
9 装着検出部
10 接続検出部
11 エンジン停止操作検出部
12 警報手段
13 施錠検出部
14 制御装置
15 タイマ
16 第一警報手段
17 第二警報手段
18 乗員検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内への子供の置き去りを警報する子供置き去り警報装置において、子供を着座させる子供用シートを備え、この子供用シートは、子供用シートに子供を保持する子供用シートベルトと、この子供用シートベルトの装着状態を検出する装着検出部を備え、前記子供用シートが車両に取り付けられていることを検出する接続検出部と、エンジンの停止操作を検出するエンジン停止操作検出部と、車内への子供の置き去りを警報する警報手段と、車両のドアの施錠状態を検出する施錠検出部とを備え、エンジン停止操作が検出されたときに、前記子供用シートが車両に取り付けられ、且つ、前記子供用シートベルトが装着状態にある場合に前記警報手段が警報を実施することを特徴とする子供置き去り警報装置。
【請求項2】
前記警報手段は複数の警報手段を備え、車室内への子供の置き去りの可能性が低い場合の第一警報手段と、車室内への子供の置き去りの可能性が高い場合の第二警報手段とを備え、エンジン停止操作が検出されたときに、前記子供用シートが車両に取り付けられ、且つ、前記子供用シートベルトが装着状態にある場合に前記警報手段は前記第一警報手段を実施するとともに、さらに車両のドアが施錠状態である場合に前記警報手段が前記第二警報手段を実施することを特徴とする請求項1に記載の子供置き去り警報装置。
【請求項3】
時間カウントを行うタイマもしくは車両周囲の乗員の有無を検出する乗員検知部を備え、前記子供用シートと固定構造とが接続状態であって、且つ、前記子供用シートベルトが装着状態にあり、車両のドアが施錠状態となってから所定時間継続するか、または、前記乗員検知手段が乗員を検知できない場合に前記警報手段が第二警報手段を実施することを特徴とする請求項1乃至2に記載の子供置き去り警報装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−188035(P2012−188035A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54133(P2011−54133)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】