説明

子宮内デポジット

雌性哺乳動物の子宮内に生物学的に活性な化合物を保持するための子宮内システム1は、化合物22のデポジットを受容するための内部空間20を画定するフレーム16によって形成される。フレームは、デポジットの外面の実質的な部分へのアクセスを可能にする開放構造18を有し、デポジットは、子宮内の化合物の放出速度を制御する速度制御構造を有する。保持要素6は、子宮内にフレームを保持するためにフレームに設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に子宮内システムに関し、詳細には生物学的に活性な化合物を子宮内に保持し放出することが可能なデバイスに関する。本発明はさらに、その内部に堆積された生物学的に活性な化合物を有する子宮内システムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
子宮内デバイス(IUD)の使用は、長期間の避妊を行う都合の良い手法として、長い間認められてきた。子宮内にデバイスが存在することにより、子宮内膜または子宮層による白血球およびプロスタグランジンの放出が生ずる。これらの物質は、精子および卵子の両方に適しておらず、受精を防止し、また任意の後続の受精卵と子宮内膜との結合を防止することが理解される。IUDに銅を使用することにより、殺精子効果が増大する。
【0003】
広く受け入れられているIUDは、現在、N.V.OrganonからMultiload(商標)という名称で販売されている。そのようなデバイスは、米国特許第3952734号明細書に示されており、一端に2つの弾力性ある片持ちアームを保持する細長いステム、即ちこのステムの両側に横向きに延びた片持ちアームを保持する細長いステムを含む。銅線がこのステムに巻かれている。子宮腔内に挿入するために、このステムはチューブ形状のシース内に収容されており、それによって、デバイスを子宮頸部内に挿入することができる。シースは、ステムを辛うじて包封し、アームの形状および柔軟性は、これらが挿入中にシースの周りで潰れることができるように選択される。次いでシースを引き戻し、アームを展開してIUDが子宮内に保持されるようにすることができる。回収の目的で、糸を、アームとは反対のステム端部に取着する。糸は、子宮頸部内を延び、デバイス除去のために引っ張ることができる。通常の環境下では、IUDは、除去することなく最長5年の長期間にわたって効果的に使用することができる。
【0004】
より最近になって、子宮内での長期にわたる保持および放出のため、かなりの量のホルモンを含むことができるデバイスが開発された。これらのデバイスは、一般に子宮内システム(IUS)と呼ばれ、この用語は、以下、組み込まれた薬剤を有するIUDを指すのに使用される。あるシステムは、Schering AGからMirena(商標)という名称で販売されている。このシステムは、ステムの周りにステロイドリザーバを有するT字形ポリエチレンフレームを含む。リザーバは、レボノゲストレルおよびシリコーンの混合物から作製されたシリンダからなる。リザーバは、3から5年の期間にわたって放出速度を1日当たり約20μgに制御するシリコーン膜によって覆われている。システムの挿入および除去は、一般に、上述の内容に類似している。そのようなシステムは、米国特許第4341728号明細書に示されている。ステロイドの使用は、避妊効果を高めることができ、このシステムの避妊以外の健康上の利益にも寄与することができる。銅コイル型IUDは、女性の月経周期中の出血を増加させる傾向がある。ホルモンベースのIUSを使用すると、月経出血を減少させることができまたは停止させることもできる。ホルモンの局所投与では、その主要な動作形態が卵巣機能の抑制である、避妊のためのその他のホルモン方法に比べ、より低い投薬量を使用することも可能になる。銅コイルの効果を増強させるためにある用量のプロゲストゲンを使用する別のデバイスが、ドイツ特許DE4125575Cに示されている。この文献によれば、プロゲストゲンは、IUDの頭部で結晶形態で提供することができ、その放出速度は、細孔または穿孔を通した拡散によって制御することができる。あるいは、プロゲストゲンをシリコーン−ゼラチン材料またはゴムベースの材料に混合し、IUDの外側に塗布してもよい。
【0005】
薬力学的性質を効果的に制御するために、システムは、長期間にわたって十分なフラックスを確保するのに十分な用量の薬剤を保存できなければならず、その上、子宮頸部を通過する際の損傷または痛みを防止するよう十分小さくなければならない。IUSの製造で直面する別の問題は、破壊することなく挿入、除去および使用の力に耐えるよう十分強力な構造を生成する必要があることであり、この場合もさらに、子宮頸部を通過する際の損傷または痛みを防止するよう十分小さな構造を生成する必要があることである。特に、アームとステムとの間の接続は、挿入子の周りまたは内部でアームの折畳みが可能になるよう柔軟でなければならない。除去する際、アームは、折れることなく再び折り畳まれなければならないが、それは子宮内でのデバイスの一部の損失が合併症をもたらす可能性があるからである。これらの問題を解決するよう試みがなされたあるデバイスが、米国特許第7080647号明細書に示されており、この中でアームは、薬用ファイバーステムのスロットに取着されている。デバイスの強度は、スロット接続に利用可能な限定的な材料に依存するようである。別のデバイスが国際公開第96/01092号により公知であり、このデバイスでは、薬用デポジットを使用してデバイスのアームを形成し、ステムは、アームを取り囲むループを含む。
【0006】
その他の課題は、薬剤の正確な投薬量を確実にすることである。従来のデバイスは、薬剤を取り囲む速度制御膜を使用する。膜を一体化する必要性があるために、デバイスの本体と薬剤とを接続するための複雑な成型手順が必要であった。EP1400258および国際公開第06/079709号は、IUSを製造するための解決策について述べている。かなりの量の薬剤が、例えばデバイスの外面のコーティングとして提供される、いくつかのその他のIUSが開示されている。
【0007】
別の代替デバイスは米国特許第3656483号明細書により公知であり、この明細書は、生物学的に活性な材料の放出を可能にする穿孔を有する管状体を開示している。この材料は、ばね部材によって穿孔に片寄らせた一連のペレットの形をとる。薬物の漏出が穿孔領域で生じ、放出速度は、穿孔を通した薬剤の通過によって制御される。各ペレットが溶解するにつれ、残りのペレットはばねによって下方に押し遣られる。このように、一連の異なる薬剤を連続して放出することができる。それにも関わらず、各薬剤の放出速度は、配合物と管状体の穿孔との間の相互関係に依存する。穿孔のあらゆる詰まりは、薬物のその後の放出に影響を及ぼす可能性がある。構造の強度は、外部チューブによってもたらされ、それが、デバイスの挿入をより困難にし痛みのあるものにする可能性がある。
【0008】
薬物または薬剤の放出速度を容易に予測することができる、単純なデバイスを製造できることが望ましいと考えられる。また放出速度は、実際に確実に維持されるべきである。さらに、デバイスの構成は、単純であるべきであり、最小限の数の構成要素を含むべきであり、さらに十分に強力であり柔軟であり容易な挿入が可能になるよう小さくあるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3952734号明細書
【特許文献2】米国特許第4341728号明細書
【特許文献3】ドイツ特許第4125575号
【特許文献4】米国特許第7080647号明細書
【特許文献5】国際公開第96/01092号
【特許文献6】欧州特許第1400258号
【特許文献7】国際公開第06/079709号
【特許文献8】米国特許第3656483号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、雌性哺乳動物、特にヒトの子宮内に、生物学的に活性な化合物を保持するための、子宮内システムを提供することによって、これらの問題に対処する。このシステムは、化合物のデポジット、即ち子宮内での化合物の放出速度を制御する速度制御構造を含んでいる化合物のデポジットを含み、このデポジットを受容するための内部空間を画定するフレーム、即ちデポジットの外面の実質的な部分へのアクセスを可能にする開放構造を有しさらにこのフレームを子宮内に保持するための1つまたは複数の保持要素を有するフレームを含む。フレームの開放構造により、挿入されたデポジットの表面のより広い部分が環境に直接曝され、したがって、子宮への化合物の定常状態放出に対する速度制御効果は、デポジットそのものの構造およびこのデポジットが配置される環境によって主に決定される。このことは、フレームが画定されると既存の薬物製剤または制御放出カプセル/ファイバーをこのフレーム内に挿入することができるので、製造の観点から極めて有益である。放出速度は、主にデポジットそのものによって決定されるので、フレーム内の放出速度は比較的容易に予測可能であるべきである。
【0011】
したがって、本発明は、子宮への化合物の放出を促進させる開放構造である、生物学的に活性な化合物のデポジットを受容するためのフレームを含む、子宮内システムを提供すると見なすこともできる。以下において、デポジットの外面の実質的な部分へのアクセスを可能にする開放構造と言う場合、デポジットの外面の少なくとも50%が露出している配置構造を包含すると理解される。好ましくは、外面の60%超が露出することになり、より好ましくは70%超が露出することになる。
【0012】
本発明はさらに、ほぼ棒状要素の形をした化合物のデポジット、このデポジットを受容するための内部空間を画定する実質的に柔軟なフレームおよび子宮内にフレームを保持するためにこのフレーム上に設けられた保持要素を含み、この柔軟なフレームおよび棒状要素が相互に作用して、フレーム単独または棒状要素単独の場合よりも大きな機械的強度、特に剛性を有する複合構造を形成する、雌性哺乳動物の子宮内に生物学的に活性な化合物を保持するための子宮内システムに関する。したがって、このようにして実現することができるフレームの小さな断面により、十分な強度を確保しつつなお挿入の容易さを確保する改善された構造を、実現することができる。
【0013】
好ましくは、フレームのステムは4.5mm未満、さらにより好ましくは4.0mmの直径を有することができ、この直径は3.5mm未満であってもよい。当業者なら理解されるように、管状挿入子と組み合せて使用するために、またステムを取り囲むために、IUSを外径5.0mmの挿入子に嵌合できることは、有意なことである。このように、コンプライアンスはISO−7439.2002により実現することができ、ヒトレシピエントの場合は5.0mm以下の外径の挿入チューブを必要とする。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、フレームは、内部空間へのデポジットの導入を可能にするための開口およびこの開口を閉じるためのクロージャ部材を含む。開口は、好ましくはフレームの前端に位置付けられている。内部空間に挿入されると、デポジットは、フレームからの偶発的な除去に対して安全に保持される。あるいは、フレームもしくはデポジットまたはこれらの両方は、フレーム内へのデポジットの挿入およびその後の保持が可能になるように、十分柔軟であってもよい。
【0015】
好ましくは、クロージャ部材はプラグを含む。プラグは、フレームと一体的に形成することができ、または個別の構成要素であってもよい。プラグまたはキャップの使用が好ましいが、当業者なら、代替のクロージャを使用できることが理解されよう。特に、フレームは、デポジットの周りに一緒に接合してこのデポジットを収容する2つの部品で形成することができる。どちらの部品も、圧力嵌め、成形嵌めまたはねじ山などの機械的手段を使用して、開口を閉鎖するように接続することができる。あるいは、これらの部品を接着し、溶接しまたはその他の手法で一緒に結合してもよい。好ましい実施形態では、プラグは実質的に不浸透性であり、以下に記述されるようにデポジットの端部を覆うことができ保護することができる。
【0016】
最も好ましくは、フレームは、実質的に不活性な材料で形成される。この文脈において、「実質的に不活性な材料」という用語は、子宮内環境に曝されることによって浸食されず、それ自体では薬剤を活発に放出しない材料を指すものとする。それにも関わらず、子宮内デバイスの性質によって、フレームは子宮内膜による白血球およびプロスタグランジンの放出を引き起こす可能性があることを除外しない。最も好ましい実施形態では、フレームは、生体適合性ポリマー、特にポリエチレン(PE)、エチレンビニルアセテート(EVA)またはこれらの組合せを含む。そのようなポリマーは、そのような適用例に十分な強度および弾性を示すことが見出された。その他の好ましい実施形態によれば、フレームもしくはデポジットまたはこれらの両方は、放射線不透過材料などのインジケータを組み込むことができる。硫酸バリウムは、この目的に好ましい物質である。
【0017】
本発明の好ましい実施形態では、1つまたは複数の保持要素がフレームに一体的に形成される。保持要素は、限定するものではないが1つまたは複数のアーム、コイル構造、アンカー、フック、バーブおよびファイバーなどを含めた、子宮内にデバイスを保持する機能を確保する任意の形をとることができる。しかし保持要素は、必要に応じて、デバイスを子宮内に挿入しまたはデバイスを子宮から除去することも可能であることは、重要なことである。フレームは、好ましくは、内部空間が位置付けられている細長いステムを含んでもよく、次いで保持要素は、このステムから横方向に延びるアームとして形成してもよい。内部空間は、必要に応じて、少なくとも部分的に保持要素またはアーム内に形成してもよい。様々な形のアームが当技術分野では周知である。
【0018】
本発明は、任意の適切なデポジットと共に使用することが意図される。本発明の設計の利点は、ある形のフレームを、所望の治療に応じた異なる化合物を保持する異なるデポジットを基にして、製造し使用することができることである。デポジットの好ましい形は、活性剤または化合物が溶解されまたはその他の方法で分散されたポリマーマトリックスを含む。好ましくは、マトリックスには、ノメゲストロールアセテート(NOMAc)、天然プロゲステロン、レボノゲストレル、エトノゲストレル、ジドロゲステロン、メドロゲストン、メドロキシプロゲステロンアセテート、メゲストロールアセテート、クロルマジノンアセテート、シプロテロンアセテート、ゲストノロンカプロエート、デメゲストン、プロメゲストン、ネステロン、トリメゲストン、ノレチステロン(ノレチンドロン)、ノレチステロンアセテート、リネストレノール、エチノジオールアセテート、ノレチノドレル、ノルゲストレル、ノルゲスチメート、ジエノゲスト、ゲストデン、ドロスピレノンおよびプロゲストゲン活性を有する任意のその他の適切なステロイド化合物からなる群から選択されるプロゲストゲンが添加される。最も好ましくは、マトリックスには、エトノゲストレルが10−70重量%の範囲内で、しかしより好ましくはエトノゲストレルが30−65重量%、さらに最も好ましくは40−65重量%の範囲内で添加される。コアマトリックスは、EVAポリマー、好ましくは>10%酢酸ビニル(VA)を含むEVA材料、より好ましくは>15%VAを含むEVA材料を含んでもよい。
【0019】
その他の好ましい実施形態によれば、速度制御構造は、マトリックスを取り囲む膜を含む。膜は、好ましくはEVAも、特にVAのパーセンテージが40%よりも低く、好ましくは33%よりも低く、最も好ましくは28%よりも低いEVAも含む。そのような構造は、長期間にわたって定常状態で化合物の制御放出を確保するのに、最も有利と考えられる。膜は、フレームではなくデポジットの一部を形成するので、それぞれは、互いに独立して最適化することができる。
【0020】
本発明のその他の態様によれば、デポジットは、実質的に形状安定性であり、使用中に浸食されない。デポジットは浸食されないという事実により、子宮内に長期間にわたって保持する間、フレームの開放構造からデポジットが出るおそれがあるという危険性はほとんどない。特に、フレームには大きな開口を設けてもよい。形状安定なデポジットの別の属性は、IUSの機械的一体性が、フレームとデポジットの相互作用中に無傷のままであることである。
【0021】
本発明のさらにその他の態様によれば、デポジットは、周方向の面および2つの端面を有する棒状要素の形に製造することができる。棒の好ましい寸法は、単一の棒に関して直径1.5−3.0mmおよび長さ20−45mmであるが、ある状況下では、1.0mm程度の小さい直径で、十分な放出を行うことができる。一般に、寸法は、上述のISO−7439.2002によるような標準機関によって大部分が決定されており、それが、IUDの全長を36mmに限定している。例えば、デポジットがIUDデバイスのアーム内に位置付けられものである場合には、異なる寸法が適用可能であることも理解されよう。そのようなデポジットは、押出しプロセスによって製造するのに便利であることが見出され、その後、使用するのに望ましい長さに切断することができる。特にデポジットは、放出速度決定膜によって取り囲まれた棒状ポリマーマトリックスを形成するのに、共押出しプロセスによって形成してもよい。押出された棒をある長さに切断する際、露出した端部は膜によって覆われていない。この場合、フレームは、2つの端面を覆うことによって、これら領域からの化合物の放出、特に使用開始時の初期バーストを防止しまたは低減させることが望ましい。この場合、特に、フレームの開放構造によって露出されるのは、デポジットの周方向の外面の周りの膜である。デポジットに保持される投薬量を最大限にするためにおよび/またはシステムの強度を増大させるために、棒を、IUDの実質的に全長にわたって延ばしてもよい。
【0022】
本発明は、内部空間および開放構造を有するフレームを形成するステップ、速度制御構造が設けられた外面を有する、生物学的に活性な化合物のデポジットを提供するステップおよびこのデポジットを、外面の実質的な部分が開放構造を通して露出されるように内部空間に挿入するステップを含む、子宮内システムを形成する方法にも関する。特に、生物学的に活性な化合物のデポジットの提供では、化合物を、フレームへの挿入のために既存の生薬形態で提供することができる。
【0023】
好ましくは、この方法はさらに、内部空間からデポジットが除去されないように、フレームの開口にクロージャを適用するステップを含む。クロージャの適用は、クロージャとフレームとを結合してそれが除去されないようにするステップを含むことができ、自動化された手順で、例えば接着、溶接または熱間鍛造によって、行うことができる。上述のように、好ましい実施形態では、開放およびそのクロージャは、フレームの前端に位置付けられる。
【0024】
さらに好ましい実施形態では、この方法は、化合物を含有するポリマーマトリックスおよび速度制御膜の共押出しによってデポジットを形成するステップを含む。
【0025】
本発明のさらに別の態様によれば、この方法は、射出成型によってフレームを形成するステップを含んでもよい。フレームおよびそのクロージャは、単一成型操作で形成してもよく、または、例えば異なる材料を使用した2つの異なる構成要素として形成してもよい。
【0026】
本発明の特徴および利点は、以下の図面を参照することによってさらに理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】線2−2に沿った図1のIUDを示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図4】組立て前の、本発明の第3の実施形態を示す斜視図である。
【図5】デポジット挿入後の図4の実施形態を示す斜視図である。
【図6】本発明の第4の実施形態を示す斜視図である。
【図7】デポジット挿入中の、本発明の第5の実施形態を示す斜視図である。
【図8】本発明の第6の実施形態を示す斜視図である。
【図9】本発明による挿入子およびIUDアセンブリを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態による子宮内システム1が示されている。IUD1は、その上端8に接続された1対の横方向に延びるアーム6を有する、ステム4を含んだ本体2を有する。ステム4の下端10には、ナイロン糸14が接続された目12が設けられている。ステム4は、内部空間20に対する開口18を有するフレーム16によって形成されている。内部空間20内には、棒状デポジット22が位置付けられている。
【0029】
図2は、線2−2に沿って得られたIUD1の断面図を示す。図2は、ステム4のフレーム16および内部空間20内に受容されたデポジット22を、より明瞭に示す。また図2は、コア24および外膜26を含むようにデポジット22を示す。コア24は、かなりの量の生物学的に活性な化合物が添加された、酢酸ビニルのパーセンテージが28%であるEVAコポリマーからなるマトリックスで形成されている。本発明の実施形態において、コア24には、その他のコア材料に対して、54重量%のエトノゲストレルが添加される。当業者なら、その他の薬物または生物学的に活性な化合物を組み込むことができ、その他の添加物が考えられることを承知している。さらに、コア24は、放射線不透過インジケータとしてBaSOを12重量%含む。部材26は、約40ミクロンの厚さを有し、酢酸ビニルのパーセンテージが15%のEVAコポリマーからなる。当業者なら、コア24からの活性化合物の所望の放出速度によって決定されるので、その他の膜寸法および組成物を使用できることを承知している。デポジット22は、全長30mmおよび直径約2.3mmである。ステム4は、全長約36mmおよび外径約3.2mmである。
【0030】
IUD1の製造は、ステム4およびアーム6を含めた単一部品としての、本体2の射出成型によって行われる。このため、本体2は、44/36/20重量%混合物中に硫酸バリウムを含む、PE/EVA混合物を含む。硫酸バリウムの存在は、完成品のx線視感度を改善する。次いで糸14は、単純なヒッチによって目12に取着されている。本体2の形成後、棒状デポジット22は、これを開口18の1つに通して上端8に向かって滑らせることにより、フレーム16に挿入される。デポジット22は、このデポジット22の他端をステム4の下端10内に挿入することができるように、S字型に軽く曲がるよう十分に柔軟である。またフレーム16は、柔軟であり、デポジット22の挿入を支援する。次にデポジット22は、フレーム16内に有効に保持され、使用者が操作せずに出て行くことができない。このときにIUDは使用できる状態になり、他の点では従来通りの挿入子を使用して、医師により使用者の子宮内に従来通り挿入することができる。
【0031】
図3は、本発明による第2の実施形態のIUD100を示し、この図で冒頭に1が付された同様の参照番号は、図1および2のシステムと同じ特徴を表すのに使用されることになる。図3によれば、IUD100は、ステム104を有する本体102を含む。ステム104は、開口118および内部空間120を有する螺旋コイル116によって形成される。コイル116は、好ましくは金属で作製されるが、成型プラスチック構成要素であってもよい。アーム106は、成型手順によってコイル116が組み込まれているステム104の上端108と、一体的に形成される。ステム104の下端110も成型として形成され、糸114が接続される目112が設けられる。デポジット122は、内部空間120に保持される。デポジット122は、図1および2の場合とほぼ同一であってもよい。内部空間120へのデポジット122の挿入は、コイル116の変形によって行われる。糸114は、下端110への取着として示されているが、この糸をステム104内に通して上端108に取着することも望ましいと考えられる。このように、IUD100を抜き出すために糸114にかかる張力は、コイル116の延伸を引き起こさないことになる。
【0032】
図4および5は、本発明による第3の実施形態のIUD200を示し、この図において、冒頭に2が付された同様の参照番号は、図1および2のシステムと同じ特徴を表すのに使用されることになる。図4によれば、IUD200は、スナップ要素209を有する2つに分かれたフレーム部分205、205’に形成された、ステム204を有する本体202を含む。目212、212’は、フレーム部分205、205’の下端210、210’に形成される。ステム204の上端208は、1対のアーム206を保持する。
【0033】
フレーム部分205、205’と上端208との間に一体の蝶番207、207’を有する本体202は、射出成型手順で形成される。デポジット222の挿入後、フレーム部分205、205’を1つにスナップ留めして、図5に示されるステム204を形成する。ここでデポジット222は、内部空間220内に保持される。デポジット222は、図1および2の場合とほぼ同一である。次いで糸214を目212、212’に通し、さらにフレーム部分205、205’が開かないようにする。
【0034】
本発明による第4の実施形態のIUD300は、図6により開示され、この図において冒頭に3が付された同様の参照番号は、図1および2のシステムと同じ特徴を表すのに使用される。
【0035】
IUD300は、図1の実施形態にほぼ類似しており、その上端308に接続された1対の横方向に延びるアーム306を有するステム304を含んだ本体302を含む。ステム304の下端310には目312が設けられ、そこにナイロン糸314が接続される。ステム304は、内部空間320への開口318を有するフレーム316として形成される。内部空間320内には、棒状デポジット322が位置付けられている。図1の実施形態とは異なり、IUD300は、上端308内に形成された開口332を覆うキャップ330も含む。キャップ330は、上端308と融合する滑らかな外面を有する。キャップ330は、IUD300の製造中の、デポジット322の挿入を可能にする。挿入後、開口332をキャップ330で閉じ、このキャップは溶接手順によって所定位置に固定される。あるいはまたは追加として、キャップ330は、適切な接着剤を使用して本体302に接着してもよく、またはそこに熱間鍛造してもよく、または任意のその他の適切な技法で接着してもよい。
【0036】
図7は、本発明による第5の実施形態のIUD400を示し、この図において冒頭に4が付された同様の参照番号は、図1および2のシステムと同じ特徴を表すのに使用される。
【0037】
図7を参照すると、IUD400は、その上端408に接続された1対の横方向に延びるアーム406を有するステム404を含んだ本体402を有する。先の実施形態と同様に、ステム404は、ほぼ開口フレーム416として形成される。しかしステム404の下部は、嵌合する下端410、410’を有する2つに分かれた柔軟な脚405、405’として形成される。目412、412’は、下端405、405’に形成される。
【0038】
本体402は射出成型手順によって形成され、脚405、405’は十分に柔軟であるので、これらは、デポジット422を挿入するために広げることができる。挿入後、脚405、405’をそれらの当初の位置に戻す。次いで糸414を目412、412’内に通して脚405、405’が開かないようにし、それによってデポジット422が内部空間420内に保持されるようにする。脚405、405’には、それらの下端410、410’にスナップコネクタ(図示せず)を設けてもよい。
【0039】
図8は、本発明による第6の実施形態のIUD500を示し、この図において冒頭に5が付された同様の参照番号は、図1および2のシステムと同じ特徴を表すのに使用される。
【0040】
図8を参照すると、IUD500は、その下端510に接続されている、一緒に接合された1対の柔軟なアーム506、506を含む。各アーム506’506は、この上端508に、これらと一体的に形成された開放フレーム516を含む。目512は、糸514を受容するために下端505に形成される。図示されるように、一方のアーム506は他方のアーム506’よりも長く、両方とも十分に柔軟であるので、これらは挿入チューブ内にIUDを挿入するために一緒に折り畳むことができ、それによってフレーム516は、チューブ内で互いに実質的に一線上に配置される。各フレーム516は、先の実施形態のように、デポジット522が保持される内部空間520を含む。
【0041】
図9は、IUD1、100、200、300、400および500のいずれかを導入するための挿入子600を示す。挿入子600は、外径3.9mmおよび内径約3.3mmの薄肉の中空チューブ602を含む。滑動可能なルーラ要素604がチューブ602に取り付けられており、これによって、医師がデバイスを正しく位置決めするのを支援する。IUD1は、当初は挿入子内の引込み位置にあり、アーム6のみが挿入子600の第1の端部606で露出している。糸14は、挿入子600の第2の端部608から延び、そこで医師が保持することができる。IUDの挿入は、他の部分では従来通りの手法で行われ、本明細書ではさらに詳述しない。本発明のIUDは、このIUDが管状要素の内部ではなくワンドまたはホルダの端部に設けられている、その他の挿入子の配置構成と共に使用してもよい。さらに、IUDのアーム6は、図9の実施形態において挿入子チューブの外側で折り畳まれた状態が示されているが、これらは代わりに、挿入子の内部で一緒に折り畳まれていてもよいことが理解される。
【0042】
このように本発明について、上記にて論じられたある実施形態を参照することにより記述してきた。これらの実施形態は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者に周知の様々な変更および代替形態にすることができると理解される。特に、全ての実施形態は、横方向に延びる湾曲したアームを示してきたが、直線状、分岐状およびカール状態のアームを含むがこれらに限定されないその他の形状が可能である。その他の形の保持要素を、代わりにまたは追加として使用して、このシステムを子宮内に維持することができる。このように、特定の実施形態について記述してきたが、これらは単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮内の化合物放出速度を制御する速度制御構造を含む、化合物のデポジット;
デポジットの外面の実質的な部分へのアクセスを可能にする開放構造を有する、デポジットを受容するための内部空間を画定するフレーム;および
フレームを子宮内に保持するための1つまたは複数の保持要素
を含む、雌性哺乳動物の子宮内に生物学的に活性な化合物を保持するための子宮内システム。
【請求項2】
フレームが、ほぼ柔軟であり、デポジットと相互に作用して、デポジット単独またはフレーム単独の場合よりも大きな剛性を有する機械的構造を形成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
デポジットが、周方向の面および2つの端面を有する棒状要素の形をとる、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
ほぼ棒状要素を含む、化合物のデポジット;
柔軟なフレームおよび棒状要素が相互に作用して、棒状要素単独またはフレーム単独の場合よりも大きな剛性を有する複合構造を形成する、デポジットを受容するための内部空間を画定する実質的に柔軟なフレーム;および
子宮内にフレームを保持するためにフレームに設けられた1つまたは複数の保持要素
を含む、雌性哺乳動物の子宮内に生物学的に活性な化合物を保持するための子宮内システム。
【請求項5】
フレームが、内部空間へのデポジットの導入を可能にするための開口および開口を閉鎖するためのクロージャ部材を含む、請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
クロージャ部材が、実質的に不浸透性のプラグを含む、請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
クロージャ部材がフレームの前端に位置付けられ、回収要素がフレームの後端に位置付けられる、請求項1から6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
フレームが、実質的に不活性な材料、好ましくは生体適合性ポリマーで形成される、請求項1から7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
保持要素がフレームと一体的に形成されている、請求項1から8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
デポジットがポリマーマトリックスコアを含む、請求項1から9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
ポリマーマトリックスコアが、10%超の酢酸ビニルを含んだEVAポリマーを含み、デポジットが、1.0mmから3.0mm、好ましくは1.5mmから3.00mmの直径および20mmから45mm、好ましくは約30mmの長さを有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
デポジットが、前記デポジットを取り囲む膜を含む、好ましくは40%未満、より好ましくは33%未満、最も好ましくは28%未満の酢酸ビニルを有するEVAポリマーを含んだ速度制御構造を含む、請求項1から11のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
デポジットが、実質的に形状安定であり、使用中に浸食されない、請求項1から12のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
デポジットが、ノメゲストロールアセテート(NOMAc)、天然プロゲステロン、レボノゲストレル、エトノゲストレル、ジドロゲステロン、メドロゲストン、メドロキシプロゲステロンアセテート、メゲストロールアセテート、クロルマジノンアセテート、シプロテロンアセテート、ゲストノロンカプロエート、デメゲストン、プロメゲストン、ネステロン、トリメゲストン、ノレチステロン(ノレチンドロン)、ノレチステロンアセテート、リネストレノール、エチノジオールアセテート、ノレチノドレル、ノルゲストレル、ノルゲスチメート、ゲストデン、ジエノゲストおよびドロスピレノンからなる群から選択されるプロゲストゲンステロイド化合物を含む、請求項1から13のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
フレームが、デポジットの表面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%へのアクセスを可能にする開放構造を有する、請求項1から14のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
デポジットが2つの端面を有し、フレームが前記2つの端面を覆うことにより、そこからの化合物の放出を防止する、請求項1から15のいずれかに記載のシステム。
【請求項17】
フレームが、その内部に内部空間が位置付けられた細長いステムを含み、保持要素が、前記ステムから横方向に延びたアームを含む、請求項1から16のいずれかに記載のシステム。
【請求項18】
内部にフレームを受容することができる中空チューブを含んだ挿入子をさらに含む、請求項1から17のいずれかに記載のシステム。
【請求項19】
挿入子が、4.0mm未満の外径を有する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
内部空間および開放構造を有するフレームを形成するステップ;
速度制御構造を備えた外面を有する、生物学的に活性な化合物のデポジットを提供するステップ;および
前記外面の実質的な部分が前記開放構造内で露出されるように、前記デポジットを前記内部空間に挿入するステップ
を含む、子宮内システムを形成する方法。
【請求項21】
内部空間からデポジットが除去されないように、フレームの開口を閉鎖するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
デポジットが除去されないように、クロージャをフレームに結合するステップをさらに含む、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
フレームが、射出成型によって形成される、請求項20から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
化合物を含有するポリマーマトリックスコアおよび速度制御膜の共押出しによってデポジットを形成するステップをさらに含む、請求項20から23のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−502604(P2011−502604A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532607(P2010−532607)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065149
【国際公開番号】WO2009/060077
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(510124227)
【Fターム(参考)】