説明

子宮内用システム

本発明は、新規な子宮内用システム、および該システムを製造するための方法に関する。本発明の1つの態様においては、子宮内用システムは、貯蔵体および連続的且つ閉鎖型の可とう性枠体を有する。枠体は、ポリカーボネートジオール、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび連鎖延長剤から形成される熱可塑性ポリウレタンエラストマーを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを包含する可とう性且つ弾性の枠体と、枠体に連結する貯蔵体とを有する新規な子宮内用システムであって、貯蔵体の少なくとも一端が枠体の内側表面に連結しており、貯蔵体が少なくとも1種の治療学的に活性な物質を包含する子宮内用システムに関する。本発明はまた、このようなシステムを製造するための方法、および治療学的に活性な物質を雌性哺乳動物に送達するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで多くの様々な子宮内用装置が提案され、実用に供されてきた。一般的に使用されるようになった初期のIUDは大きく、子宮を拡張して出血や痛みを伴い、多くの場合、感染症も併発した。子宮内用システムに関連した問題点を克服するためのいくつもの試みが行われ、痛みと出血の低減、挿入と除去の容易化、排出の危険性の抑制、特に穿孔の危険性を最小限に抑えることを目的とした改良を加えた装置が設計されている。
【0003】
本出願人の特許出願であるFI 20085277は、枠体と該枠体に連結する貯蔵体とを有する子宮内送達システムであって、枠体が多角形(好ましくは三角形または五角形)の連続的且つ閉鎖型の可とう性の系を形成し、貯蔵体の少なくとも一端が枠体の内側表面に連結し、貯蔵体が少なくとも1種の治療学的に活性な物質を包含する子宮内送達システムに関する。
【0004】
武田薬品工業によるEP 0873751は、生分解性IUDを開示する。このIUDにおいては、所望のリング状に成形する生分解性ポリマーに活性成分が分散されている。該IUDは独立した枠体構造と貯蔵体構造を有していない。このようなシステムは通常は硬く、非可とう性であるため、このような材料で作られたリングを人体に導入するのは非常に困難である。装置のリング状構造が分解過程で壊れた場合には、装置は変形し、その硬い破損部品は組織の損傷を招くため、装置の除去は非常に難しい。
【0005】
Futura NovaによるNL 8601570は、重合体材料からなるリングと組み合わせた、細長形状の幹部を包含する子宮内用装置に関する。避妊効果は、幹部を避妊用材料で覆うことにより達成され、避妊用材料は好ましくは金属であり、幹部を銅で螺旋状に覆うことが特に好ましいと記載されている。この装置は、避妊用材料の放出を制御することが可能な重合体マトリクスまたは重合体層からなる独立した貯蔵体を包含していない。したがって、該避妊用材料の放出速度は、制御することはできず、避妊用材料の溶解特性に依存する。
【0006】
マイケル・リーゼ・メディカル・センター病院(Michael Reese Hospital & Medical Center)によるGB 1,318,554には、プロジェスチンを含有する少なくとも1個のカプセルを包含する子宮内用装置が記載されているが、プロジェスチンは、部分透過性の壁の内側に保持されているものの、重合体マトリクスには分散されていない。この装置の1つの態様においては、プロジェスチンを含有した3本のシリコーンエラストマー製チューブを包含し、チューブはポリエチレン製の角部材で連結されて、概してリング状または三角形状の装置を形成している。この文献によれば、この装置は、外部から力が加えられていない時にはその形状を維持するのに十分な硬度を有しながら、挿入するために必要な柔軟性を容易に発揮すると記載されている。しかし、シリコーンチューブの先端が尖っていなくとも、子宮壁に炎症を生じるため、装着感が犠牲となる。
【0007】
上記文献によって提供される装置の多くは嵩高及び/又は硬く、それゆえに副作用や高い脱落率をもたらす。子宮内用装置の使用に関連付けられた望ましくない合併症としては、装置の挿入及び/又は除去に伴う痛みや困難性、腹痛、感染症、不正出血、ホルモン性の副作用、子宮穿孔、子宮頸管の切裂、敗血症による流産、子宮外妊娠、およびIUSの排出などを挙げることができる。
【0008】
子宮内用システムの最適な性能は、子宮および装置の幾何学的なパラメーターの相互作用に大きく依存することが分かっている。子宮腔は、軸方向の寸法は一定だが、水平方向の寸法と前後寸法が変化する。子宮の形状とサイズの周期的な変化は、女性の生理周期の種々の段階において通常みられるものである。理想的な子宮内用システムは、子宮腔の周期的な変化に機能的に適合できるものであるべきである。大きなサイズのIUDは排出と副作用の危険性を高めると報告されている。先天的または後天的な空間占領性傷害の結果として生じた子宮の幾何学的な異常は、IUDを装着するための子宮内空間を減少させ、IUD排出やその他の合併症の確率を更に高めることとなる。子宮内膜腔の大きさに合うように設計された装置は、ランダムに挿入した装置よりも優れた性能記録を有し、炎症の発症も少なく、副作用も少ないことが予想される(Kurz, Contraception. 1984 Jun;29(6):495-510)。更に子宮内膜の損傷の発生が少なく、結果として出血も少ないと予想される(Randic, Contracept Deliv Syst. 1980;1(2):87-94)。IUDの形状は、平滑な表面と緩やかな曲線からなり、子宮損傷を招く可能性のある鋭利な構造を欠くものでなければならない。装置の軸方向の剛性および横方向の可とう性はコンプライアンス特性を高めると考えられる(Hasson, BJOG, 89 (s4), 1-10, 1982)。
【0009】
理想的な子宮内用システムを得るためには、寸法および装置の特性に加え、材料の特性が重要である。
【0010】
挿入操作中に装置の少なくとも一部が挿入管の外に位置するような装置の場合、挿入痛は挿入管の外径、設計と可とう性のみならず、装置、特に挿入管の外に位置する装置の部位の大きさ、設計と可とう性に関連する。挿入直後の痛みは、通常、子宮痙攣として発症し、これは装置によって生じた子宮の膨張または峡部領域の炎症に関連するものであろう。挿入後数週間を越えて痛みや不快感が残ることはまれである。
【0011】
子宮が一定の頻度で連続的に収縮し、収縮は装置を下向きに押して、部分的または完全な排出が生じうることも、よく知られている。子宮の収縮は挿入した装置に圧力を加える。横方向の力は装置を変形させ、縦方向の力は装置を排出させる。
【0012】
したがって、材料は可とう性を有するだけでなく、比較的高い剛性(剛性はDIN 53504に従って測定する)を有するべきであり、剛性は好ましくは8N/mm2(100%伸張において)を越え、特に好ましくは10N/mm2(100%伸張において)を越える。材料はまた、比較的高い硬度(硬度はDIN 5305に従って測定する)を有するべきであり、ショアD硬度は好ましくは 38<ショアD<60、より好ましくは 40<ショアD<55 である。さらに、材料は高い反発弾性(rebound)(反発弾性はDIN 53512に従って測定する)を有するべきであり、反発弾性は好ましくは30%を越え、特に好ましくは35%を越える。断面の厚みは、使用時に所望の弾力性を提供するために十分に大きくなければならず、これは使用する材料に依存する。しかし、剛性と厚みは、使用時に装置、芯、枠体またはその両方が十分な角度で折れ曲がるのを妨げるほどに高くてはいけない。更に、材料は、装置が変形し、変形させた力を取り除いた際には元の形状に戻ることを可能にするような比較的高い弾性と特徴を有していることが重要である。
【0013】
IUDを子宮底に達するまで押し込む正しい挿入は、排出率を低下させると考えられている。装置を正しく配置することは、最適な避妊効果を達成するために必要である。
【0014】
これまでに実施されてきた改良にもかかわらず、多くの子宮内用システムには欠点がある。上述した様々な副作用にかかわる問題を解決し、患者のコンプライアンスを向上させるために、優れた性能を有する新規な材料を包含する子宮内用システムを導入した。本発明の子宮内用システムは、子宮内の安定で最適な位置に容易に挿入することができ、使用感に優れている。このシステムは、穿孔の危険性を最小限にするために可とう性を有し且つ平滑な形状を有するが、排出の可能性は低く、痛みを生じるような部品や構造的な特徴は有していない。
【0015】
発明の目的
本発明の目的は、子宮腔内に比較的長期間挿入するための子宮内用システム(IUS)、およびこのような子宮内用システムの製造方法を提供することである。本発明に基づくIUSは、枠体および枠体に連結した貯蔵体を有し、枠体は、連続的且つ閉鎖型で、多角形(好ましくは三角形または五角形)の可とう性システムであり、貯蔵体の少なくとも一端が枠体の内側表面に連結しており、貯蔵体は少なくとも1種の治療学的に活性な物質を包含する。枠体に連結した貯蔵体は、システムに十分な、特に挿入工程に必要な剛性を付与する。
【0016】
枠体は熱可塑性ポリウレタンエラストマーを包含し、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、下記の成分(a)〜(d):
(a)イソシアネート含有量が32〜75重量%である、1種または2種以上の脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネート、
(b)数平均分子量(Mn)が501〜10,000g/molであり、ツェレビチノフ活性水素原子の数が平均して1.8〜3.0である、少なくとも1種のポリオール成分、
(c)数平均分子量(Mn)が60〜500g/molであり、ツェレビチノフ活性水素原子の数が平均して1.8〜3.0であり、連鎖延長剤である少なくとも1種の低分子量多官能性アルコール成分、および
(d)任意成分である連鎖停止剤としての単官能性アルコール

(e)1種または2種以上の触媒
の存在下で、下記の成分(f)〜(g):
(f)成分(a)〜(d)から形成される熱可塑性ポリウレタンの重量に対して0〜35重量%の無機充填剤、および
(g)任意成分であるさらなる添加剤及び/又は補助物質
を添加して反応させることによって得られる反応生成物であり、
成分(a)に含まれるイソシアネート基の、成分(b)、成分(c)および任意成分(d)に含まれるイソシアネート反応性基に対する比は、0.9:1〜1.1:1である。
【0017】
最も好ましい脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネート(a)は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、または1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートと他の脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートとの混合物である。
【0018】
最も好ましいポリオール成分(b)は、ポリカーボネートポリオール、またはポリカーボネートポリオールとポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールとの混合物である。
【0019】
好ましい連鎖延長剤(c)の1例は、1,6−ヘキサンジオールとε−カプロラクトンとから調製される直鎖オリゴマーと、ヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルとの混合物である。好ましい連鎖延長剤(c)の別の1例は、炭素数が10を越える長鎖脂肪族ジオール(1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールなど)から選ばれるものである。
【0020】
本発明の別の目的は、痛みを伴うことなく容易に挿入と除去が可能であり、使用が容易且つ快適であり、子宮内膜腔に合った形状および寸法であることによって、排出の可能性を最小限化または排除して、子宮内膜の炎症によって引き起こされる副作用などの副作用を防止する子宮内用システムを提供することである。
【0021】
本発明の更に別の目的は、安全性が高く、子宮壁への穿孔や貫通の防止に最適なデザインを有する子宮内用システムを提供することである。
【0022】
本発明の更に別の目的は、雌性哺乳動物に治療学的に活性な物質を送達するための、簡便且つ信頼性の高い方法を提供することにある。この方法は、連続的且つ閉鎖型の可とう性多角形枠体および枠体に連結した貯蔵体を包含し、枠体は熱可塑性ポリウレタンエラストマーを包含し、貯蔵体は、重合体組成物およびその中に混合されている治療学的に活性な物質を包含する少なくとも1個の芯を包含する子宮内用システムを提供し、この子宮内用システムを処置する雌性哺乳動物の子宮内に配置し、長期間または少なくとも有効量の治療学的に活性な物質を雌性哺乳動物に送達するのに十分な期間にわたって子宮内用システムを保持することを包含する方法である。
【0023】
本発明の更なる目的は、子宮内用システムのための、改良されたブルーミング(blooming)挙動と非常に良好な加水分解安定性とを有する光安定性熱可塑性ポリウレタンエラストマーを提供することである。該光安定性熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、下記の成分:
ポリカーボネートポリオール、またはポリカーボネートポリオールとポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールとの混合物、
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、および任意成分であるさらなる脂肪族(脂環式)ジイソシアネート、ならびに
数平均分子量(Mn)が60〜286である少なくとも1種の二官能性連鎖延長剤(c1)、および任意成分である数平均分子量(Mn)が104〜500g/molである少なくとも1種の連鎖延長剤(c2)、ただし、連鎖延長剤(c2)は連鎖延長剤(c1)とは異なるものであって下記式(I)または(II)に対応するものである
を反応させることによって得られる反応生成物である。
【0024】
【化1】

【0025】
(式中、
1は、炭素数1〜12の分岐もしくは非分岐アルキレンラジカルまたは炭素数6〜24の置換もしくは非置換アルカリーレンラジカルを表し、
2およびR4の各々は、炭素数1〜12の分岐もしくは非分岐アルキレンラジカル、炭素数1〜12のアルコキシアルキレンラジカル、炭素数6〜24の置換もしくは非置換アルカリーレンラジカルまたは炭素数6〜24の置換もしくは非置換アルコキシアリーレンラジカルを表し、
3は、炭素数1〜8の分岐もしくは非分岐アルキレンラジカル、炭素数6〜20の置換もしくは非置換アルカリーレンラジカル、炭素数6〜20の置換もしくは非置換アリーレンラジカルまたは炭素数6〜20の置換もしくは非置換アラルキレンラジカルを表し、
nおよびmの各々は、0から10までを表し、ただし、n+m ≧ 1 であり、
pは、1から10までを表す)
【0026】
本発明の子宮内用システムの種々の構成を描写した以下の例示によって、本発明を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】子宮内用システム(図1のa)および対応する枠体(図1のb)の図面である。枠体は、角に丸みを帯びた三角形の枠体(1)である。貯蔵体(2)は、枠体の上部および下部の両方に結合したシャフト(5)の上に組み立てられている。
【図2】子宮内用システム(図2のa)および対応する枠体(図2のb)の図面である。枠体(1)は、角が丸みを帯びており、断面が平坦状の三角形である。平坦状で長方形の貯蔵体(2)は、金属製または重合体製のクリップ(6)および枠体の拡張部(4)を使用して、枠体の上部に連結されている。
【図3】角に丸みを帯び、各辺が内側に凹んだ三角形の枠体(1)を有する子宮内用システムの図面である。貯蔵体(2)は枠体の底部頂点の内側に配置され、貯蔵体と枠体の両方が重合体製または金属製のカップ(8)に押し込まれている。糸(3)は、カップの底の穴を貫通させ、可能な限り枠体に近い位置で結び目を作ってある。図3のbは枠体の図面である。
【図4】本発明の子宮内用システムのための種々の枠体および貯蔵体の更なる具体例の図面である。
【図5】貯蔵体(2)を枠体に取り付けるために、開いた枠体または2分割された枠体(1’)の端部を使用する子宮内用システムの図面である。システムの除去のための糸(3)は、枠体の下部末端に取り付けるか、貯蔵体に挿入して貫通させ、貯蔵体または枠体の上部末端に取り付けられている。
【図6】三角形の子宮内用システムの正面図および側面図であって、枠体の断面が円形のもの(図6のa)または平坦状のもの(図6b)である。
【図7】五角形の枠体の正面図(図7のaとb)および同じ枠体の側面図(図7のc)であり、枠体下部における局所的な厚みの減少を示している。いずれの枠体も、枠体の底部に連結されたシャフト(5)、および貯蔵体を保持して、その滑り落ちを防ぐための固定手段(5’)を有している。該固定手段は、シャフトの上端に位置している。図7のaに示す枠体は切り込み(4’)を有し、図7のbに示す枠体は上部に拡張部(4)を有している。
【図8】内側に金属製または重合体製の支持手段(5)を包含する、三角形の枠体(1、図8のaとb)の図面である。支持手段の両端部は曲げられて、一組の桿状の拡張部またはシャフトを形成しており、その上に貯蔵体(2)が組み立てられている。
【図9】図9は、金属製または重合体製の挿入物、スリーブ、支持手段、プラグ、U字釘状体(staple)、特別なクリップ、コネクター、アダプター、洗濯バサミ様の手段、クランプなどを使用して、貯蔵体を枠体に連結するための種々の方法の更なる例を示す図面である。
【図10】図10は、金属製または重合体製の挿入物、スリーブ、支持手段、プラグ、U字釘状体(staple)、特別なクリップ、コネクター、アダプター、洗濯バサミ様の手段、クランプなどを使用して、貯蔵体を枠体に連結するための種々の方法の更なる例を示す図面である。
【0028】
発明の詳細な説明
本発明の利点は、上述したような子宮内用システムによって得られるものである。本発明のシステムは、枠体および枠体に連結した貯蔵体を包含し、枠体は連続的且つ閉鎖型で、可とう性を有する多角形のシステムを形成し、貯蔵体の少なくとも一端が枠体の内側表面に連結しており、貯蔵体が少なくとも1種の治療学的に活性な物質を包含する。貯蔵体は、挿入工程および使用時に十分な剛性を子宮内用システムに付与する。枠体は好ましくは三角形または五角形であり、また、枠体は熱可塑性ポリウレタンエラストマーを包含する。この子宮内用システムのデザインは複雑ではないため、経済的に魅力的な製造工程によって製造することができる。
【0029】
本発明の1つの態様においては、挿入および除去が容易であり、装着が安全で快適な、改良された子宮内用システムを提供する。子宮内用システムの形状とサイズは、子宮内膜腔のサイズに合致し、通常は種々の副作用とシステム使用の中断を招く子宮内膜の炎症を防止するように設計されている。
【0030】
本発明の他の態様によると、子宮内用システムは子宮壁への穿孔または貫通を防止するために最適なデザインと平滑な形状を有している。
【0031】
本発明の送達システムの枠体は、下記の成分:
ポリカーボネートポリオール、またはポリカーボネートポリオールとポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールとの混合物、
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、および任意成分であるさらなる脂肪族(脂環式)ジイソシアネート、ならびに
数平均分子量(Mn)が60〜286である少なくとも1種の二官能性連鎖延長剤、および任意成分である数平均分子量(Mn)が104〜500g/molである少なくとも1種の連鎖延長剤、ただし、該連鎖延長剤は連鎖延長剤(c1)とは異なるものであって式(I)または(II)に対応するものである
から得ることができる熱可塑性ポリウレタンエラストマーを包含する。好ましい連鎖延長剤の1例は、1,6−ヘキサンジオールとε−カプロラクトンとから調製される直鎖オリゴマーと、ヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルとの混合物である。好ましい連鎖延長剤の別の1例は、長鎖脂肪族ジオール(1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールなど)である。枠体は可とう性と弾性とを有しているが、比較的高い剛性を有してもいる。断面の厚みは、使用時に所望の弾力性を提供するために十分に大きい。しかし、剛性と厚みは、使用時に枠体が十分な角度で折れ曲がるのを妨げるほどに高くはない。更に、材料は、枠体が変形し、変形させた力を取り除いた際には元の形状に戻ることを可能にするような比較的高い弾性と特徴を有している。
【0032】
「可とう性」とは、枠体が容易に曲がり、傷ついたり破損したりすることなく応力やひずみに耐える能力を意味する。「応力」とは、単位断面積あたりに加えられる、変形をもたらす力である。「ひずみ」とは、元の長さに対する長さの伸張または増加である。例えば、本発明における枠体は、枠体の外部の対向する2つの側面からの圧力などによって容易に変形したり曲がったりする。この圧力を取り除くと、枠体は元の形状に戻る。可とう性は、子宮内用システムの挿入時、使用時および除去時における使用者の快適性を増すために特に重要であり有用である。
【0033】
枠体は、子宮内膜腔への配置に適応するように設計した形状とサイズを有している。枠体は連続的な曲線状の形状を有するが、この形状は真円とは異なり、実質的に多角形、好ましくは五角形または三角形である。多角形枠体の角は若干丸みを帯びていることが好ましい。枠体は重合体層、即ち、フィルムまたはメンブランで被覆されていてもよく、枠体と重合体層とは、互いに同一のまたは異なる重合体組成物を包含する。
【0034】
枠体の断面は、鋭利な角がない滑らかな形状であれば、実質的にどのような形状でもよく、例えば、円形、半円形、長方形、卵形、平坦状、楕円形、星形、角状、多角形などの形状をとることができる。断面の形状は、枠体の剛性を調節または更に低下させるために、局所的に薄い部分を設けることにより枠体の長手方向に沿って変化させてもよく、例えば、多角形(三角形、五角形など)の枠体の角の部分を上記のように局所的に薄くすることができる。枠体の最適な形状と断面によって、子宮内用システムは子宮底探索性(fundus seeking)となる。「子宮底探索性」という用語は、子宮によってシステムに加えられる力または子宮の収縮が、システムを排出させたりシステムの位置を不利に変化させたりせずに、位置変化を生じさせたとしても、せいぜいシステムをわずかに上方向に押し上げるだけであって、主な歪力は可とう性枠体の運動または振動によって均整が保たれることを意味する。
【0035】
枠体は、枠体の補強及び/又は枠体に更なる可とう性を付与するために、例えば、芯状、繊維状またはワイヤー状の支持体をさらに包含してもよい。支持体は、十分な強度と弾性を有し、子宮内で支配的な環境において十分な期間にわたって変化しない材料である限り、いかなる不活性な生体適合性材料から作製されてもよい。人への使用に適した安定な生物薬学的な材料は当業界でよく知られており、不活性で生体適合性の金属;重合体組成物;強化ゴム;酢酸エチルビニル(EVA)などの可とう性熱可塑性エラストマー;スチレン共重合体(例えば、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)やスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS))、ポリウレタン、熱可塑性ウレタンエラストマー、熱可塑性ポリウレタン−シリコーンエラストマー、熱可塑性ポリオレフィン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリエチレンなどの熱可塑性重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。生分解性ポリマーは、現代的支持手段として使用することができる。
【0036】
枠体は、それを挿入器に固定するための手段(例えば、突起、つまみ、切り込み、くぼみなど)を更に有してもよい。
【0037】
貯蔵体は、重合体組成物を含む少なくとも1個の芯を包含する。該1個のまたは各芯は1つまたは2つ以上の重合体被覆層(即ち、メンブランまたはフィルム)で被覆されていてもよい。貯蔵体の長さは、その直径、幅または高さよりも大きいことが好ましい。貯蔵体の端部は、開口していても封止されていてもよく、例えば、接着剤またはメンブランを形成する重合体組成物によって封止することができる。
【0038】
本発明の1つの態様によると、貯蔵体は、重合体層(メンブランまたはフィルム)によって覆われている1個の芯を包含し、芯および重合体層は、実質的に、同一または異なる重合体組成物から形成されてなる。
【0039】
本発明の別の態様によると、貯蔵体は、それぞれが重合体層(メンブランまたはフィルム)によって覆われている2個または3個以上の芯を包含し、芯および重合体層は、好ましくは同一または異なる重合体組成物から形成されてなる。
【0040】
本発明の更に別の態様によると、貯蔵体に含まれる芯の内、少なくとも1つが子宮に送達すべき1種または2種以上の治療学的に活性な物質を包含する。
【0041】
貯蔵体のサイズと形状は様々である。好ましくは、貯蔵体は桿状の細長形状部品であり、その断面は、例えば、円形、丸型、卵形、平坦状、楕円形、長方形、角状、多角形、星形などである。平坦状の貯蔵体は長方形または実質的に楕円形の断面を有する。長方形、角状、多角形または星形の断面を有する貯蔵体の角または端部は、子宮に炎症を生じたり、装着感を低下させたりする可能性のある尖った接触点を防止するために、少し丸みを帯びていることが好ましい。平坦な形状を選択することによって、貯蔵体の外径、そして挿入管及び/又は子宮内用システムそのものの寸法を減少させることができる。非対称的な断面を有する貯蔵体、例えば、平坦状または長方形の貯蔵体は、枠体の平面に寝かせて、または該平面に対して垂直に配置することができる。
【0042】
貯蔵体が2つまたは3つ以上の芯を有する態様においては、これら芯は互いに隣接するか、横並びに配置するか、重ねて配置するか、または一方が他方を取り囲むように配置してもよい。これら芯の長さおよび直径は、互いに同一であっても異なっていてもよい。芯同士は、隔膜または不活性なプラセボ芯によって互いに隔てられていてもよい。芯の内の1つまたは2つ以上は、不活性な生体適合性の金属または重合体からなる桿、ワイヤーまたは糸でもよく、その目的は、貯蔵体に更なる剛性と耐久性を付与すること及び/又は枠体に貯蔵体を固定または結合することである。本発明の範囲内で、いかなる構造の組み合わせも当然のことながら可能である。
【0043】
重合体層、即ちメンブランまたはフィルムは、枠体、支持手段または芯を完全に覆っていてもよいし、それらの一部だけを覆っていてもよい。一部だけを覆う場合、覆う広さの程度は、使用する材料の選択などの多くの要因に依存する。重合体層の厚さは、例えば使用する材料や子宮内用システムの用途に依存する。メンブランまたはフィルムは複数の層からなるものでもよく、この場合、各層は一定の厚みを有し、各層の厚みは同一でも、異なっていてもよい。
【0044】
子宮内用システムは糸状の付属物、即ち、システムの除去または位置確認、あるいはシステムの排出が予想される場合にはシステムの存在を検出するための、1つまたは2つ以上の糸または紐を包含してもよい。糸は、種々の方法で枠体に取り付けることができるが、例えば、貯蔵体が枠体の頂部に連結されているか、底部に連結されているかなどの違いによって方法が異なる。貯蔵体が枠体の上部に連結されている場合には、糸は、例えば枠体の底部、貯蔵体の下部末端またはその両方に取り付けることができる。あるいは、糸は貯蔵体を貫通して枠体の上部に達していてもよい。貯蔵体が枠体の下部に連結されている場合には、糸は、例えば枠体の底部、または貯蔵体を貫通してその上部末端に取り付けることができる。貯蔵体が糸状の芯を1個または2個以上包含する場合には、これら糸は、子宮内用システムの使用後または必要時にはシステムを検出または除去するための紐として使用することができる。
【0045】
本発明の子宮内用システムの枠体、貯蔵体またはそれらの両方は、装置が挿入された人体の領域に物理的に侵入することなく、装置の検出を促進するための少なくとも1種の結像増強手段を更に包含することができる。このような手段としては、X線造影剤、強磁性剤、あるいはシステムの超音波画像検出または蛍光透視画像検出のための試薬が挙げられる。
【0046】
該結像増強手段は、
(a)子宮内用システムのボディー上の少なくとも一部に形成された不活性金属被覆、
(b)子宮内用システムのボディーに固定された不活性金属製の挿入物、クリップ、リングまたはスリーブ、
(c)子宮内用システムの枠体、芯マトリクスまたはメンブランの原料の調合過程において添加した、金属または強磁性物質の粉体、粒子またはその適切な金属塩またはアルカリ金属塩、および
(d)貯蔵体を枠体に固定または結合するためにも使用することが可能な、枠体の適切な位置に固定された金属製のカップ、コネクター、アダプター、クランプ、スリーブ、シャフトまたはホルダー
よりなる群から選ばれることが好ましい。
【0047】
好ましくは、金属は、銀、金、チタン、タングステン、ビスマス、白金、タンタルおよびパラジウムのような不活性金属からなる群から選ばれる。人体と適合性のあること(即ち、人体に不活性(physically inert)であること)が知られている銀、金、チタンおよび白金がより好ましい金属である。しかし、銅もまた使用することができる。
【0048】
金属被覆の厚さは、典型的には、約0.1nm〜約500nmの間にあり、好ましくは約1nm〜約50nmの間にある。しかし、約0.1mmの厚い被覆も可能である。
【0049】
金属製のクリップ、リング、スリーブなどは、IUSのボディー中に埋め込まれていなくてもよいし、少なくとも部分的に埋設されていてもよい。金属部品の場合、部分的に埋設することによってIUSの表面を円滑にすることができ、その際、超音波検査における可視性は埋め込まない場合と比較しても悪くはならない。リングの場合には、ダブルリングを用いることが反響性を高める意味で有利である。クリップおよびスリーブの場合、の広いクリップまたはスリーブを用いることで可視性は良くなる。
【0050】
金属の粉体、粒子またはその塩をIUSの枠体、芯マトリクスまたはメンブランの原料と調合工程で混合する場合、使用する金属粉体の量は、原料の総重量に対して、典型的には約0.1〜約25重量%であり、好ましくは約1〜約10重量%である。
【0051】
本発明の子宮内用システムは、子宮腔内に比較的長期間挿入するように設計されている。しかし、その挿入期間の長さは、例えば数週間から数年と大きく変えることができる。普通は1年〜10年、好ましくは1年〜5年である。
【0052】
本発明において、子宮内用システムの枠体は熱可塑性ポリウレタンエラストマーを包含する。該熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、公知の方法により、ポリオール、ジイソシアネート、連鎖延長剤および任意成分である単官能性連鎖停止剤を含む上記の反応物質、触媒ならびに公知の補助物質および添加剤から製造されるものである。具体的には、このような熱可塑性ポリウレタンは、加水分解、光、酸化分解、熱などに対する優れた抵抗性を示す。このような熱可塑性ポリウレタンはまた、可とう性、低温特性および弾性回復に関して優れた機械特性を有する。
【0053】
ポリオールの好ましい例として、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールが挙げられる。ポリオール成分(b)として、ツェレビチノフ活性水素原子の数が平均して1.8〜3.0であって数平均分子量(Mn)が501〜10000であるポリオールを用いる。ポリオールはしばしば、製造方法に起因して、少量の線状でない化合物を含有する。そのため、「実質的に線状のポリオール」という用語をしばしば用いる。ポリオール成分は、100〜50mol%の、好ましくは100〜65mol%の、より好ましくは100〜70mol%の、数平均分子量が501〜3000g/mol、好ましくは1000〜2500g/molである、少なくとも1種のポリカーボネートポリオールと、0〜50mol%の、数平均分子量が501〜10000g/molであるポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオール、好ましくは0〜35mol%の、数平均分子量が501〜6000g/molであるポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオール、より好ましくは0〜30mol%の、数平均分子量が700〜4000g/molであるポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールとからなることが好ましい。
【0054】
ポリカーボネートポリオールは、例えば、アルキレンカーボネートの開環重合、ジオールとクロロギ酸エステルとのエステル交換、またはポリオールとホスゲン、ジアルキルカーボネートもしくはジアリールカーボネートとの反応によって得ることができるものでよい。ジアルキルカーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの炭素数が1〜4であるアルキルカーボネートでよい。適切なジオールまたはジオール混合物の例として、ポリエステルポリオールに関連して上述したものであって2または3以上のOH官能性を有する多価アルコールが挙げられる。その具体例としては、2−メチルプロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−オクタンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンなどを挙げることができる。好ましいジオールは、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールならびにそれらの混合物である。
【0055】
このようなポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、好ましくは501〜3000g/molであり、特に好ましくは1000〜2500g/molである。
【0056】
ポリエーテルポリオールの例として、炭素数が例えば2〜5であるアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフランなど)の単独重合体または共重合体;上記のアルキレンオキシドの単独重合体または共重合体であって、重合開始剤として水を用いて炭素数が2〜40であるポリオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、12−ヒドロキシステアリルアルコール、水素添加されたダイマージオールなど)から得られるもの;および、上記のアルキレンオキシドとビスフェノールAまたは水素添加されたビスフェノールAとの付加生成物が挙げられる。これらのポリエーテルポリオールは、単独で用いてもよいし、2種または3種以上を組み合わせて用いてもよい。具体例として、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコールおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコールが挙げられる。線状ポリエーテルジオールの数平均分子量(Mn)は、501〜6000であり、好ましくは700〜4000である。これらは、単独で用いてもよいし、混合物の形で用いてもよい。
【0057】
適切なポリエステルポリオールは、例えば、炭素数が2〜12(好ましくは4〜6)であるジカルボン酸と多価アルコールとから調製することができる。ジカルボン酸として、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸など)や芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸など)を用いることが考えられる。ジカルボン酸は、単独で用いてもよいし、混合物の形(例えばコハク酸、グルタル酸およびアジピン酸の混合物の形)で用いてもよい。多価アルコールの例として、炭素数が2〜12(好ましくは2〜6)であるもの、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールおよびジプロピレングリコールを挙げることができる。所望の特性に応じて、多価アルコールは、単独で用いてもよいし、混合物の形で用いてもよい。また、カルボン酸と上記ジオール(1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど)とのエステル、ω−ヒドロキシカルボン酸(ω−ヒドロキシカプロ酸など)の縮合生成物、およびラクトン(ε−カプロラクトン、ω−カプロラクトン(置換されたものでもよい)など)の重合生成物を用いてもよい。好ましいポリエステルジオールとして、エタンジオールポリアジペート、1,4−ブタンジオールポリアジペート、エタンジオール−1,4−ブタンジオールポリアジペート、1,6−ヘキサンジオールポリアジペート、1,6−ヘキサンジオール−ネオペンチルグリコールポリアジペート、1,6−ヘキサンジオール−1,4−ブタンジオールポリアジペートおよびポリカプロラクトンを挙げることができる。ポリエステルジオールの数平均分子量(Mn)は、501〜10000であり、好ましくは700〜4000である。ポリエステルジオールは、単独で用いてもよいし、混合物の形で用いてもよい。
【0058】
本発明において用いるポリイソシアネートの例として、脂肪族ジイソシアネート、または脂肪族ジイソシアネートの混合物(好ましくは1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを含む混合物)を挙げることができる。
【0059】
適当なジイソシアネートの例として、脂肪族ジイソシアネートを挙げることができる。脂肪族ジイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−及び/又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、エチリデンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジメチレンジイソシアネート異性体、イソホロンジイソシアネート、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる。
【0060】
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0061】
連鎖延長剤(c)は、脂肪族、脂環式または芳香族のものでよく、例としてジオール(ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールおよびポリカーボネートジオールを含む)、ジアミンおよびアミノアルコールを挙げることができる。連鎖延長剤の好ましい例としてジオール、例えば、1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールおよびヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)を挙げることができる。1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールおよびヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)が好ましい。1,12−ドデカンジオールおよびヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)が特に好ましい。本発明において、1,6−ヘキサンジオールとε−カプロラクトンとから調製される直鎖オリゴマーと、ヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)との混合物も、特に好ましい。
【0062】
単官能性アルコールまたはアミンを、所望により連鎖停止剤(d)として用いることができる。
【0063】
触媒は、ポリウレタン反応混合物を得るために好ましく用いられる。この目的のために、イソシアネートと反応性水素含有化合物との反応のための触媒として当分野において従来から用いられるか知られておりまたは文献に記載されている任意の触媒を用いることができる。このような触媒の例として、特に、ビスマス、スズ、鉄、アンチモン、コバルト、トリウム、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、セリウム、モリブデン、バナジウム、銅、マンガンおよびジルコニウムの有機酸塩、無機酸塩および有機金属誘導体、ならびにホスフィンおよび第三級有機アミンを挙げることができる。触媒の代表例としては、立体障害型ビスマス触媒(ビスマス−ネオデカノエート、ビスマス−オクトエート、ビスマス−カルボキシレート(BiCat)など)、スズ化合物(スズジアセテート、スズジオクトエート、スズジラウレート、脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩(ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエートなど)、チタン酸エステル、鉄化合物(鉄アセチルアセトネートなど)を挙げることができる。触媒の量は、通常、100重量部の多価アルコール化合物(b)に対して0.0001〜0.5重量部である。
【0064】
触媒以外に、公知の補助物質も構造成分に添加してよい。補助物質の例として、表面活性物質、難燃剤、成核剤、酸化防止剤、塗剤、着色剤、防腐剤、滑剤、離型剤、染料および顔料を挙げることができる。さらに、適切な場合には、安定剤(例えば加水分解、光、熱または着色を防止するための安定剤)、無機充填剤及び/又は有機充填剤、子宮内用システムの同定や検出などのために用いることのできる材料(金属性または磁性の粒子、硫酸バリウムのようなX線造影剤など)、補強剤および可塑剤を挙げることができる。
【0065】
使用できる適切なUV光線安定剤の例としては、Tinuvin(登録商標)144、Tinuvin(登録商標)234、Tinuvin(登録商標)328、Tinuvin(登録商標)765およびTinuvin(登録商標)770(これらはいずれも市販されている)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。有用と考えられる市販の酸化防止剤の例としては、UVINUL(登録商標)A03、IRGANOX(登録商標)1010、IRGANOX(登録商標)1035、IRGANOX(登録商標)1076、IRGANOX(登録商標)1098およびIRGANOX(登録商標)1222を挙げることができる。適切な市販の酸化防止剤および金属不活性化剤の例としては、IRGANOX(登録商標)MD 1024を挙げることができる。
【0066】
本発明におけるポリウレタンエラストマーは、触媒の存在下でポリカーボネートジオールをジイソシアネートおよび連鎖延長剤と反応させることによって製造することができる。必要がある場合には、任意成分である充填剤、酸化防止剤及び/又は硬化剤および他の添加剤をも添加する。さらに、適切な滑剤または離型剤も用いることができる。一段発泡法、プレポリマー法などから選ばれる公知の方法を用いることができる。
【0067】
1つの好ましい態様においては、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、1,6−ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとから調製され且つ数平均分子量が501〜3000g/mol、好ましくは501〜2500g/mol、より好ましくは1000〜2500g/molであるポリカーボネートジオールと、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび連鎖延長剤とを反応させることによって得られるものであって、該連鎖延長剤は、1,6−ヘキサンジオールとε−カプロラクトンとから調製される直鎖オリゴマーとヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルとの混合物である。別の好ましい熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、1,6−ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとから調製され且つ数平均分子量が501〜3000g/mol、好ましくは501〜2500g/mol、より好ましくは1000〜2500g/molであるポリカーボネートジオールと、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよび連鎖延長剤としての1,12−ドデカンジオールとを反応させることによって得られるものである。
【0068】
したがって、本発明の1つの態様は光安定性熱可塑性ポリウレタンエラストマーであって、該熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、下記の成分(a)〜(d):
(a)イソシアネート含有量が32〜75重量%である、1種または2種以上の脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネート、
(b)数平均分子量(Mn)が501〜10000g/molであり、ツェレビチノフ活性水素原子の数が平均して1.8〜3.0である、少なくとも1種のポリオール成分、
(c)数平均分子量(Mn)が60〜500g/molであり、ツェレビチノフ活性水素原子の数が平均して1.8〜3.0であり、連鎖延長剤である少なくとも1種の低分子量多官能性アルコール成分、および
(d)任意成分である連鎖停止剤としての単官能性アルコール

(e)1種または2種以上の触媒
の存在下で、下記の成分(f)〜(g):
(f)成分(a)〜(d)から形成される熱可塑性ポリウレタンの重量に対して0〜35重量%の無機充填剤、および
(g)任意成分であるさらなる添加剤及び/又は補助物質
を添加して反応させることによって得られる反応生成物であり、
成分(a)に含まれるイソシアネート基の、成分(b)、成分(c)および任意成分(d)に含まれるイソシアネート反応性基に対する比は、0.9:1〜1.1:1である。
【0069】
1つの態様においては、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、下記の成分(a)〜(d):
(a)イソシアネート成分であって、下記の成分(a1)〜(a2):
(a1)50〜100mol%の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、および
(a2)0〜50mol%の脂肪族ジイソシアネートであり、ただし、該脂肪族ジイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート以外のものであり且つ1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを含まない脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートの混合物以外のものである
を含有するイソシアネート成分、
(b)ポリオール成分であって、下記の成分(b1)〜(b2):
(b1)50〜100mol%の、数平均分子量が501〜3000g/molである少なくとも1種のポリカーボネートジオール、および
(b2)0〜50mol%の、数平均分子量が501〜6000g/molである、ポリカーボネートジオール以外のジオールポリマー
を含有するポリオール成分、
(c)連鎖延長剤成分であって、数平均分子量が90〜286g/molである複数の連鎖延長剤を含む群から選ばれる少なくとも1種の二官能性連鎖延長剤、およびこれらの二官能性連鎖延長剤とε−カプロラクトンまたは二官能性カルボン酸との反応生成物を含有する連鎖延長剤成分、ただし、該反応生成物は上記式(I)または(II)に対応するものである、ならびに
(d)任意成分である連鎖停止剤としての単官能性アルコール

(e)1種または2種以上の触媒
の存在下で、下記の成分(f)〜(g):
(f)成分(a)〜(d)から形成される熱可塑性ポリウレタンの重量に対して0.1〜35重量%の無機充填剤、および
(g)任意成分であるさらなる添加剤及び/又は補助物質
を添加して反応させることによって得られる反応生成物であり、
成分(a)に含まれるイソシアネート基の、成分(b)、(c)および(d)に含まれるイソシアネート反応性基に対する比は、0.9:1〜1.1:1である。
【0070】
好ましくは、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、下記の成分:
(a1)65〜100mol%の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、
(a2)0〜35mol%の脂肪族ジイソシアネートであり、ただし、該脂肪族ジイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート以外のものであり且つ1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを含まない脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートの混合物以外のものである、
(b)ポリオール成分であって、下記の成分(b1)〜(b2):
(b1)65〜100mol%の、数平均分子量が501〜3000g/molである少なくとも1種のポリカーボネートジオール、および
(b2)0〜35mol%の、数平均分子量が501〜4000g/molであるポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオール
を含有するポリオール成分、
(c)連鎖延長剤成分であって、下記の成分(c1)〜(c2):
(c1)35〜100mol%の、数平均分子量が118〜286g/molである少なくとも1種の二官能性連鎖延長剤、および
(c2)0〜65mol%の、数平均分子量が104〜500g/molである連鎖延長剤であり、ただし、該連鎖延長剤は連鎖延長剤成分(c1)とは異なるものであって上記式(I)または(II)に対応するものである
を含有する連鎖延長剤成分、ならびに
(d)任意成分である連鎖停止剤としての単官能性アルコール

(e)1種または2種以上の触媒
の存在下で、下記の成分(f)〜(g):
(f)成分(a)〜(d)から形成される熱可塑性ポリウレタンの重量に対して0.1〜35重量%の無機充填剤、および
(g)任意成分であるさらなる添加剤及び/又は補助物質
を添加して反応させることによって得られる反応生成物であり、
成分(a)に含まれるイソシアネート基の、成分(b)、(c)および(d)に含まれるイソシアネート反応性基に対する比は、0.9:1〜1.1:1である。
【0071】
さらに好ましい1つの態様においては、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、下記の成分(a)〜(d):
(a)イソシアネート成分であって、下記の成分(a1)〜(a2):
(a1)70〜100mol%の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、および
(a2)0〜30mol%の脂肪族ジイソシアネートであり、ただし、該脂肪族ジイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート以外のものであり且つ1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを含まない脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートの混合物以外のものである
を含有するイソシアネート成分、
(b)ポリオール成分であって、下記の成分(b1)〜(b2):
(b1)70〜100mol%の、数平均分子量が1000〜2500g/molである少なくとも1種のポリカーボネートジオール、および
(b2)0〜30mol%の、数平均分子量が600〜4000g/molであるポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオール
を含有するポリオール成分、
(c)連鎖延長剤成分であって、下記の成分(c1)〜(c2):
(c1)35〜95mol%の、数平均分子量が146〜286g/molである少なくとも1種の二官能性連鎖延長剤、および
(c2)5〜65mol%の、数平均分子量が104〜500g/molである連鎖延長剤であり、ただし、該連鎖延長剤は連鎖延長剤成分(c1)とは異なるものであって上記式(I)または(II)に対応するものである
を含有する連鎖延長剤成分、ならびに
(d)任意成分である連鎖停止剤としての単官能性アルコール

(e)1種または2種以上の触媒
の存在下で、下記の成分(f)〜(g):
(f)成分(a)〜(d)から形成される熱可塑性ポリウレタンの重量に対して0.1〜35重量%の無機充填剤、および
(g)任意成分であるさらなる添加剤及び/又は補助物質
を添加して反応させることによって得られる反応生成物であり、
成分(a)に含まれるイソシアネート基の、成分(b)、(c)および(d)に含まれるイソシアネート反応性基に対する比は、0.9:1〜1.1:1である。
【0072】
芯、メンブラン、および場合によっては隔膜または不活性なプラセボコンパートメントに用いる重合体組成物は、互いに同一であっても異なっていてもよく、単一の重合体も、重合体組成物も意味し、混合された複数の重合体からなるものでもよい。原則として、重合体は、生分解性か非生分解性かによらず、生体適合性である限り、どのようなものでも用いることができる。更に子宮内用システムは、使用期間として意図した期間にわたって構造の完全性を保持するものでなければならない。
【0073】
適切な材料は、天然材料または合成材料であり、体液と子宮組織に生体適合性の材料であって、装置が接触する体液に対して実質的に不溶解性の材料が好ましい。子宮内用システムは長期にわたって一定の位置に維持することを目的としているため、速やかに溶解する材料や、天然の体液に対して高溶解性の材料の使用は避けるべきである。
【0074】
好ましい重合体組成物は、シロキサン主体エラストマー、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、EVA、熱可塑性ポリウレタン−シリコーンエラストマーまたはこれの少なくとも2種の混合物を包含する。
【0075】
材料の構造上の一体性は、シリカや珪藻土などの粒子状材料の添加によって高めることができる。エラストマーには他の添加剤を混合することもできる。添加剤が生体適合性であって患者に無害であることを確認した上で混合することにより、エラストマーの親水性または疎水性を調整することができる。芯またはメンブランも、1つまたは複数の治療用物質の放出速度を調整するための更なる材料を含有していてもよい。そのような材料の例として、物質の初期バーストを許容されるレベルまたは所望のレベルに調整するための、シクロデキストリン誘導体などの複合体形成剤や、脂肪酸エステル(好ましくは炭素数が2〜20の脂肪酸エステル)が挙げられる。界面活性剤、抗発泡剤、安定剤、可溶化剤、吸収遅延剤、およびこれらの2種または3種以上の混合物などから選ばれる補助物質も、送達システムのボディーに所望の物性を付与するために添加することができる。さらに、顔料、光沢剤、艶消剤、着色剤、雲母またはこれらの同等物などの添加剤も、送達システムのボディーに所望の外観を付与するために、システムのボディー、メンブランまたはその両方に添加することができる。更に重合体マトリクスは、他の材料を包含してもよく、このような材料としては、例えば、子宮内用システムの同定または検出に使用することができる、金属性または磁性の粒子や、硫酸バリウムのようなX線造影剤が挙げられる。
【0076】
送達システムに適したいかなるデザイン、または構造体のいかなる組み合わせも本発明の範囲において当然のことながら可能である。
【0077】
子宮内用装置(IUD)および子宮内用システム(IUS)の挿入に必要な力は、装置の材質と寸法、先導末端の輪郭などのデザイン的特徴、ならびに挿入器のデザイン、寸法および材質の特性に依存することが分かっている。また、装置の除去の際に必要な力は、IUSの寸法、可とう性およびデザインに依存することが分かっている。これらの力の程度は、挿入と除去の際の痛みの程度や、システム使用時の装着感に置き換えて考えることができる。更にIUSの寸法と材質は、IUSを子宮に配置した際の装着感にも影響すると考えられる。また、子宮腔に対してIUDのサイズを最適化することにより、IUDの排出や不正出血といった副作用の危険性が減少する。
【0078】
子宮内用システムの特性を試験するため、および最高の装着感を達成し、システムを子宮内の適切な位置へ配置するために最適な構造とデザインを評価し開発するための科学的根拠を提供するために、コンピューター支援仮想モデリングを使用し、適切な機能的室内試験用模型を開発した。
【0079】
女性の骨盤の典型的な解剖学的特徴を有する模型であって、in vivoの状況で得られる感触と類似した感触を伝えるような感覚的な特性を備えたものを設計し、製造した。製造に際しては、適当な重合体を使用して内部を形成することによって、可能な限り実物に近い感触を伝えるようにした。解剖学的構造の調節と交換、および女性の骨盤解剖学的全態様のシミュレーションを可能にするために、種々の大きさや形状の入れ替え可能な子宮頸部部品や子宮部品のみならず、種々の配置(前傾、後傾)を使用した。更に屈曲、即ち、子宮頸部と子宮体の間の蝶番領域を調節することによって、挿入および除去時の痛みを表す挿入時に加わる力と除去の時に加わる力を比較することができる。
【0080】
上記試験用模型によって、装置の挿入・除去時に要する力のみならず、装置を子宮内にin situに配置したことによって加えられる力という観点から、装置の重要な特徴に大きな影響を与える典型的な解剖学的特徴のシミュレーションをすることができる。更に、試験用模型は、極端な解剖学的状況のシミュレーションを行うための改変をして、そこで本発明のシステムの特性や挙動を従来の子宮内用装置および子宮内用システムの場合と比較することも可能にした。これら模型は、絶対試験のために動物組織を含めることも可能な、繰り返し可能な相対属性試験のための、in vitroの系の構築も可能にする。
【0081】
子宮内用システムによって子宮壁や子宮頸部に加えられる圧力を、室内試験用模型とコンピューター支援仮想モデリングを使用して評価した。正しい配置および排出の傾向は、システムが子宮底、子宮壁および子宮頸部に加える相対的な力に基づいて推測することができる。
【0082】
室内試験用模型を使用した実験によって、挿入時の力は、子宮内用システムの寸法、デザイン的特徴および材質の特性に主として依存することが確認された。システムが排出される傾向を表す、子宮内用システムの除去に必要な力は、IUSの寸法、可とう性およびデザインに依存する。
【0083】
本発明の子宮内用システムは、平滑な表面と緩やかな曲線を有し、子宮損傷を招くような鋭い構造を有していないボディーを有している。したがって、本発明のシステムは、理想的な子宮内用システムの条件を特に満たしている。
【0084】
本発明によると、連続的且つ閉鎖型の枠体を有する子宮内用システムは、与える圧力が比較的低いことが明らかとなり、これは現存する大部分の子宮内用装置および子宮内用システムよりも本発明の装置の方が装着感がよいことを示唆している。例えば、より天然の子宮に近い形状の枠体を有する子宮内用システムは、実質的に丸型の枠体を有するシステムとは反対に、シミュレーション試験において子宮底探索性であった。特に多角形(三角形や五角形)のみならず、盾型やアーモンド型の枠体、即ち、子宮頸部に向かって先細りになる枠体は、一般的に装置が加える力全体の内、子宮底に加える力の比率が高く、そのため排出の確率は非常に低いか、もしくはその傾向は存在しない。更に、これら枠体は子宮卵管境界に伸びる突起の数が少ないため、子宮壁の炎症を起こすことは全くない。
【0085】
より丸い形状は、横方向に拡張及び/又は下方向に伸張する傾向があり、子宮頸部に圧力を加えるため、排出の傾向が高い。子宮内用システムのサイズは、当然重要な因子である。角に丸みを帯びた多角形の枠体、例えば、アーモンド型や盾型のものでも、意図的に子宮よりもかなり大きく設計されたものは、伸張し、子宮底および子宮頸部の両方に圧力を加える性質がある。子宮底探索性枠体の中には、子宮頸部に圧力を加えないものの、特に枠体の上部が非常に硬いか比較的大きい場合に、上部子宮壁に大きな力を加えるものがある。コンプライアンス特性を損なうこのような問題は、枠体のサイズを最適化し、枠体に適した材料を選択することで解決することができる。多角形枠体の断面が平坦であると、実質的に丸型の断面の場合とは反対に、装置の形状記憶と展開力(opening force)を増加し、子宮に加わる圧力は低下する傾向がある。このことは、このような形状に基づくデザインは、子宮底探索性と高いコンプライアンス特性の両方を発揮することを示唆している。更に枠体が不均一な断面を有する場合、例えば、多角形枠体の角において局所的に厚みが減少している場合は、剛性を低下させることができる。
【0086】
製造方法
本発明の子宮内用システムは、当業界でよく知られている方法に基づいて製造することができる。種々の熱可塑性材料加工技術を使用することが可能であり、例えば、押出、共押出、多層押出および多重性管腔押出などの押出技術、回転成形、および共射出成形またはシーケンシャル射出成形、層流射出成形などを含む射出成形などの成形技術を使用することができる。多層構造が必要な場合には、圧縮成形やその他の当業界で知られている適当な方法を使用することができる。子宮内用システムの望ましい幾何学的特徴は、適当なサイズおよび形状の金型または押出用ダイの使用によって達成することができる。枠体および貯蔵体は、別々に製造してから組み立てるか、同時に製造するか、順次的に製造することができる。
【0087】
枠体、貯蔵体(メンブランと芯を包含し、所望により活性剤を含有するもの)、または枠体と貯蔵体を包含する完全な子宮内用システムを効率的に製造するために、1種または2種以上の重合体材料の射出成形を使用することができる。具体的には、重合体組成物を、所望の形状の金型キャビティーに1個または2個以上の射出用ノズルまたはシリンジを用いて順次的に射出するか、2つの軸対称型の開口部を有する共射出用ノズルを用いて同時に射出する。金型は、多数の金型キャビティーを使用することによって、所定の射出周期内に複数の成形品を製造することが可能なものでもよい。金型および金型設計については当業界でよく知られており、製品の物理的形状を所望のものとするために金型を選択したり、改造したりすることができる。
【0088】
別の好ましい製造方法は、押出成形を包含する。選択した重合体組成物を、適切なダイから押し出して、断面が所望の直径および形状となる桿状または管状の押出物を成形する。得られた繊維状の成形品をそれぞれ所望の寸法と形状を有する枠体、貯蔵体または枠体の支持手段を形成するのに必要な、適当な長さの断片に切断する。得られた断片を、この目的に適した種々の方法を使用して組み立てることができる。例えば、1個または2個以上の芯を有する桿状の貯蔵体、または上述した連続的且つ閉鎖型の枠体の製造に適した金型に、1つまたは複数の断片を入れる方法が挙げられる。押し出した断片の末端は、必要であれば、連結手段を使用することによって適当に結合することもできる。
【0089】
連結手段は、材料や構造体を接着させるための公知の任意の方法、機構、装置および材料を用いることができる。連結手段の一例としては、射出成形、当業界でよく知られている熱風溶接などの溶接技術、溶媒接着、接着剤結合、未硬化の架橋性エラストマー形成組成物からなる層の使用、加熱融合、加熱結合、圧力を用いる方法などが挙げられる。枠体を製造する際には、桿を曲げて、最終的な枠体の形状を作ることが可能なように、重合体物質は乾燥後にも十分な柔軟性を発揮するものでなければならない。
【0090】
管状の枠体部品は、不活性な生体適合性材料で形成されたプラグまたはストッパーを用いて、閉じたシステムとなるように結合させることができる。適切な材料の例として、金属(金、銀、銀合金、タンタル、白金など)、ガラスまたはセラミック材料、および適当な重合体を挙げることができる。所望により、シーリング性やプラグまたはストッパーの枠体部品への接着性向上のために、生体適合性を有する接着剤を用いることができる。
【0091】
重合体層(即ち、メンブランまたはフィルム)は、枠体、芯(複数あるときはすべての芯)に公知の方法によって被覆することができ、このような方法としては、押出成形法または射出成形法、コーティング法、噴霧法または浸漬法を採用することができる。末端の封止された貯蔵体を製造するためには、非連続的な被覆を使用することができる。別の方法としては、既成した管状メンブランを使用することができる。始めに管を適切な装置または加圧ガス(例えば空気)などを用いて機械的に伸展させることによって芯を覆うこともできるし、適切な溶媒(例えばシクロヘキサン、ジグリム、イソプロパノールまたは溶媒混合物)の中で管を膨潤させ、次に膨潤した管状メンブランで芯の周りを覆うこともできる。溶媒が蒸発すると、メンブランは芯に密着する。
【0092】
複数の芯を包含する貯蔵体や、2つ以上のセグメントからなる枠体は、例えば、フィンランド国特許 FI 97947 に開示されている共押出方法によって製造することができる。重合体または重合体組成物を公知の押出方法を用いて所望の形状および大きさに加工する。その後、適切なサイズに既成した芯を押出装置に導入し、続いて別の芯または空気を満たした空のスペース(押出中に隔膜を形成するための膜材料に満たされる)を導入することによって、芯を膜層で覆うことができる。
【0093】
支持手段は、中実であっても中空であってもよく、いずれも同様の方法で製造することができる。
【0094】
貯蔵体の少なくとも1つの端部が適切な方法により枠体の内側表面のどこかに連結している限り、貯蔵体は、実際に枠体内側のどこに位置してもかまわない。簡単な挿入を可能にするためには、貯蔵体は枠体の上部または下部、あるいはそれらの両方に取り付けられていることが好ましい。枠体または貯蔵体は、貯蔵体を固定して保持して、その滑り落ちを防ぐための保持手段または固定手段を包含する。
【0095】
種々の方法によって貯蔵体を枠体に固定することができる。枠体は、例えば、中空管様の貯蔵体を組み立てるのに適切な場所に金属製または重合体製のシャフト、芯、桿またはピンなどの形状の伸張した拡張部を包含する。好ましい方法としては、始めに貯蔵体管の直径を、例えば、圧力や膨潤性の溶媒を使ってある程度まで引き伸ばし、次に貯蔵体を単に拡張部の上へ滑り込ませるか、拡張部を中空の貯蔵体に挿入する。拡張部の上に貯蔵体を組み立てるのを容易にするために、拡張部は可とう性であることが好ましい。貯蔵体が組み立てられたら、伸張した拡張部の自由端部は、例えば、熱形成することによって、貯蔵体を機械的に保持して、その滑り落ちを防ぐための物理的な保持手段とすることができる。貯蔵体の配置を維持するためには、拡張部は膨張した貯蔵体を挿入するための適切な形状の固定手段またはストッパーを更に包含してもよい。
【0096】
枠体は、貯蔵体をそこに組み立てるか成形するための桿状の拡張部を形成するように、端部で折り曲げられた金属製または重合体製の支持手段を更に包含してもよい。開いた枠体または2分割された枠体(frame halves)の端部は、貯蔵体と枠体を結合するために貯蔵体に挿入されていてもよく、こうすることで同時に連続的且つ閉鎖型の枠体を有する子宮内用システムを形成することができる。開いた枠体の端部も、貯蔵体をそこに組み立てるか成形するための拡張部を形成するように折り曲げてもよい。更に貯蔵体は、治療学的に活性な物質を含有する重合体層によって、拡張部を射出成形、浸漬、噴霧などの手段により被覆することで製造することもできる。
【0097】
貯蔵体を枠体に取り付けるための他の方法としては、例えば、公知の溶接技術、接着剤の使用、あるいは特別な金属製または重合体製の挿入物、クリップ、コネクター、アダプター、洗濯バサミ様の手段、クランプなどの使用が挙げられる。子宮内用システムは、貯蔵体、糸、および枠体または開いた枠体部位の端部を機械的に保持する金属製または重合体製のカップ、プラグまたはスリーブを使用して製造することもできる。カップ、プラグまたはスリーブは、「静止摩擦(stiction)」を低下させ、除去を容易にするために内側表面に固定することができる。この場合、糸はカップの基部を貫通して伸びていることが好ましい。このような方法は、中実の貯蔵体(即ち、中空の管状構造ではない貯蔵体)との使用に適している。完全な子宮内用システムは、更に、例えば、射出成形技術の使用によって製造することもできる。
【0098】
本発明の枠体は、基本的に、要求される任意の大きさに製造することができる。最適な性能と装着感を達成するための正確な大きさは、哺乳類の種類および用途に依存し、その大きさは、平均的な子宮腔の内部で動いたり回転したりする傾向を示さないものでなければならない。ヒトの雌性については、枠体の外径は、典型的には18〜42mm、好ましくは20〜38mmまたは22〜36mmである。断面直径は、典型的には0.5〜10mm、好ましくは1〜6mm、更に好ましくは約1.5〜4mmである。
【0099】
貯蔵体の寸法は、子宮内用システムの用途に依存する。薬剤含有送達システムの寸法は、治療学的に活性な物質の期待放出速度および子宮内用システムの期待寿命に依存する。典型的には、貯蔵体の外径、あるいは平坦状または長方形の貯蔵体の高さと幅は、0.5〜5mm、好ましくは1〜3.5mmである。貯蔵体がコーティング法で作られた場合には、壁の厚さは0.01〜約5mm、好ましくは0.2〜3.5mmである。貯蔵体の長さは、0.5mmから枠体の内径までであり、好ましくは15〜36mmである。
【0100】
芯を覆う重合体層(即ち、メンブランまたはフィルム)の厚さは、公知の方法によって許容誤差範囲内の厚さに製造することが可能な厚さであり、有利な厚さは0.01〜1.0mmであり、好ましくは0.1〜0.6mmである。芯同士を隔離する重合体層の厚さは約0.01〜5mmである。
【0101】
本発明の子宮内用送達システムは、無菌的に製造することも、公知の方法で滅菌することもできる。滅菌方法としては、例えば、物理的な滅菌、化学的な滅菌または滅菌操作(technical sterilization)を使用することができる。
【0102】
枠体は、公知の方法および適切な形状とサイズの器具を使用した射出成形で製造することが好ましい。本発明における貯蔵体は、標準的な技術に従って容易に製造することができる。1つまたは複数の芯に使用する重合体組成物を一度選択してしまえば、貯蔵体の望ましい形状は、例えば、成形、流延押出や他の適切なプロセスによって達成される。芯材がシリコーンエラストマーなどの重合体を包含する場合、更なる硬化工程が必要な場合がある。次に、上述のような成形した芯に、メンブラン層またはフィルム層を、上記で説明した適切な方法によって適用する。例えば、既成した重合体チューブを適切な溶媒によって膨潤させるかまたは機械的に延伸し、それを芯の周りにかぶせ、重合体を密着するように乾燥させる方法、あるいは他の公知技術に基づいた浸漬法、被覆(wrapping)法、噴霧法または積層法を採用することができる。
【0103】
細かく砕くか、更には微粒子化した治療学的に活性な物質を、実質的に均一な分散を達成するために加工前の芯用の重合体材料に混合する。当業者は、少なくとも1種の薬学的に活性な物質の毎日の所望の放出を達成するために必要な装置の幾何学的特徴および重合体組成物、ならびに実際の使用条件および所望の有効期間に必要な治療学的に活性な物質の量を容易に選択することができる。なお、本願において装置の「幾何学的特徴(geometry)」と言う用語については、この用語が具体的に意図するところは主として、貯蔵体全体の寸法および形状(即ち、断面の直径、または高さと幅のみならず長さも)である。
【0104】
本発明においては、様々な異なる治療学的に活性な物質または予防用物質を使用することができる。「治療学的に活性な物質」とは、子宮に投与することで、ヒトまたは動物の体内における疾病状態に対する防御または治療が可能な全ての物質あるいはその塩、エステルまたはプロドラッグを意味する。「予防用物質」とは、ヒトまたは動物の体内、好ましくはヒトの体内における疾病状態に対する防御に効果的な全ての物質(あるいはその塩またはプロドラッグ)を意味する。活性物質は、親水性または親脂性の物質でもよい。
【0105】
本発明における使用に適した治療学的に活性な物質または予防用物質としては、以下の物質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ホルモン、ステロイド、避妊薬、ホルモン置換療法用薬剤、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター(SARM)、月経前症候群治療薬、子宮内膜症治療薬、子宮筋腫(子宮平滑筋腫および平滑筋肉腫)治療薬、子宮頚部熟化/分娩促進用薬剤、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、選択的プロジェスチン受容体モジュレーター(SPRM)、抗マラリア物質、骨粗しょう症治療薬、抗プロジェスチン薬、アロマターゼ阻害剤、骨活性化物質、抗尿失禁物質、セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、尿生殖器疾患治療薬、制吐薬、5HT3アンタゴニスト、抗血管新生因子、成長因子、酵素、麻酔薬、鎮痛薬、抗凝固剤および抗血栓剤、抗炎症性物質、抗微生物性物質、抗原虫性物質、抗ウイルス性物質、神経遮断薬および抗精神病薬、オピエート拮抗薬およびオピエート作動薬、抗類線維腫物質、降圧剤、アンジオテンシン阻害剤、抗原虫性物質、抗依存症薬、抗細菌性物質、抗癌化学療法性物質、抗真菌剤、抗酸化剤、利尿剤、中枢神経治療薬、線維素溶解性物質、フリーラジカルスカベンジャー、遺伝子治療用物質、神経栄養因子、ペプチド、光線力学的療法剤、タンパク質、交感神経模倣物質(symphatomimetic substances)、トロンビン阻害剤、血栓溶解性物質、およびこれらから選ばれる少なくとも2種の混合物。
【0106】
本発明における使用に特に適した治療学的に活性な物質としては、レボノルゲストレル、ノルゲスチメート、ノルエルゲストロミン、ノルエチステロン、ジドロゲステロン、ドロスピレノン、3−β−ヒドロキシデソゲストレル、3−ケトデソゲストレル(=エトノゲストレル)、17−デアセチルノルゲスチメート、19−ノルプロゲステロン、アセトキシプレグネノロン、アリルエストレノール、アムゲストン、クロルマジノン、シプロテロン、デメゲストン、デソゲストレル、ジエノゲスト、ジヒドロゲステロン、ジメチステロン、エチステロン、二酢酸エチノジオール、酢酸フルオロゲストン、ガストリノン、ゲストデン、ゲストリノン、ヒドロキシメチルプロゲステロン、ヒドロキシプロゲステロン、リネストレノール(=リノエストレノール)、メシロゲストン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メレンゲストロール、ノメゲストロール、ノルエチンドロン(=ノルエチステロン)、ノルエチノドレル、ノルゲストレル(d−ノルゲストレルおよびdl−ノルゲストレルを含む)、ノルゲストリエノン、ノルメチステロン、プロゲステロン、キンゲスタノール、(17α)−17−ヒドロキシ−11−メチレン−19−ノルプレグナ−4,15−ジエン−20−イン−3−オン、チボロン、トリメゲストン、アルゲストン・アセトフェニド、ネストロン、プロメゲストン、17−ヒドロキシプロゲステロンエステル、19−ノル−17−ヒドロキシプロゲステロン、17α−エチニルテストステロン、17α−エチニル−19−ノルテストステロン、d−17β−アセトキシ−13β−エチル−17α−エチニルゴン−4−エン−3−オンオキシムおよびタナプロゲットからなる群より選ばれる黄体ホルモン、ならびにエチニルエストラジオール、メストラノール、キネストラノール、エストラジオール、エストロン、エストラン、エストリオール、エステロールおよび接合ウマエストロゲンからなる群より選ばれるエストロゲンが挙げられる。
【0107】
送達システムの貯蔵体に含まれる治療学的に活性な物質の量は、治療学的に活性な物質の種類、所望の治療効果、およびシステムが治療を提供することを期待される期間に依存する。種々の治療分野で薬剤を投与するために、様々な大きさと形状の貯蔵体を製造することができる。治療学的に活性な物質の使用量の上限は貯蔵体の大きさに依存する。治療学的に活性な物質の量の下限は、治療学的に活性な物質の活性度および期待される放出時間に依存する。当業者であれば、送達システムの個々の特定の用途に応じて、治療学的に活性な物質の必要量を容易に決定することができる。治療学的に活性な物質の量は、好ましくはほぼ0から70重量%までであり、治療学的に活性な物質が重合体組成物に混合される場合には、20〜60重量%が好ましい。治療学的に活性な物質の量の他の可能な範囲は、0.5〜70重量%、5〜65重量%、10〜50重量%、25〜70重量%、50〜60重量%および40〜50重量%である。
【0108】
上記に基づき、本発明の更なる目的は、連続的且つ閉鎖型の枠体、および枠体に連結している貯蔵体を包含する子宮内用システムの製造方法であって、
連続製法を用いた射出成形、押出成形または圧縮成形による枠体および貯蔵体の成形を包含するものであって、該連続製法は、枠体の形成;芯を提供するための、治療学的に活性な物質および重合体組成物を包含する第1組成物の調製;芯を覆うメンブランを提供するための、重合体組成物を包含する第2組成物の調製;芯とメンブランの一体化による貯蔵体の形成;そして貯蔵体と枠体との結合を包含する連続製法である
ことを特徴とする製造方法を提供することにある。
【0109】
枠体の機械的特性評価試験
子宮内用システム、特に枠体の機械的特性は、最適な子宮適合性および使用者の許容性を確実にするものでなければならない。機械的強度が低すぎると、システムは子宮から排除されるか、破壊されやすくなる可能性がある。機械的強度が高すぎると、装置の非可とう性によって子宮組織の炎症や潰瘍化が生ずる可能性がある。したがって、機械的特徴、即ち、枠体の可とう性および形状記憶、を文献に記載の標準的な方法によって評価した。可とう性は、枠体が低度から中度の短時間変形に抵抗する特性を特徴付けるために試験した。形状記憶は、急激な圧縮の後に枠体がその形状を回復する能力を特徴付けるために測定した。
【0110】
以下の実施例によって、本発明を更に説明する。
【0111】
以下の略称を用いる。
DE C2201: Desmophen(登録商標)C 2201; 1,6−ヘキサンジオールから得られた、数平均分子量(Mn)が2000g/molであるポリカーボネートジオール; Bayer Material Science AGの製品
HDI: 1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート
HQEE: 1,4−ジ(2−ヒドロキシエチル)ヒドロキノン
DDO: 1,12−ドデカンジオール
Cap−HDO: 1,6−ヘキサンジオールとε−カプロラクトンとからEP 1 854 818 Alの第6頁第5行目に記載される方法で調製された連鎖延長剤
Licowax(登録商標)E: 離型剤(Clariant GmbH製)
Irganox(登録商標)1010: 酸化防止剤(Ciba Specialty Chemicals Inc.製)
Irganox(登録商標)MD 1024: 金属失活剤と1級(フェノール性)酸化防止剤(Ciba Specialty Chemicals Inc.製)
K-KAT(登録商標)348: ビスマス触媒(King Industries Inc.製)
BaS04: 硫酸バリウム
【0112】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)の製造の記述:
【実施例1】
【0113】
722.3gのDE C2201、222.0gのHQEE、174gのCap−HDO、4.5gのIrganox 1010と0.7gのK-KAT 348の混合物を、ブレード撹拌機で500回転/分(rpm)の速度で撹拌しながら110℃に加熱した。その後、376.4gのHDIを加えた。得られた混合物を、粘度が最大限に上昇するまで撹拌した後、得られたTPUを注ぎ出した。得られたTPU材料を80℃で30分間の加熱による後処理に付してから、室温まで冷却し、粒状体にした。得られたTPU材料を実施例3の基材として用いた。
【実施例2】
【0114】
954.6gのDE C2201、249.8gのDDO、4.5gのIrganox 1010と1.0gのK-KAT 348の混合物を、ブレード撹拌機で500回転/分(rpm)の速度で撹拌しながら125℃に加熱した。その後、290.1gのHDIを加えた。得られた混合物を、粘度が最大限に上昇するまで撹拌した後、得られたTPU材料を注ぎ出した。得られたTPU材料を80℃で30分間の加熱による後処理に付してから、室温まで冷却し、粒状体にした。
【実施例3】
【0115】
385gのBaS04、5.25gのLicowax Eと5.25gのIrganox MD 1024を、実施例1に従って調製した1355個のTPU粒状体に加えた。得られた混合物を、下記の構造を有する、タイプDSE 25/4Z、360Nmの押出機で押出しを行なった(押出し量が4.8kg/hで、速度が30〜40rpm)。
【0116】
1.コンベア要素を有する冷気取り入れゾーン
2.第1混練ゾーンを有する第1加熱ゾーン(210℃)
3.コンベア要素と第2混練ゾーンを有する第2加熱ゾーン(225℃)
4.混練ゾーンとコンベア要素と真空脱気装置を有する第3加熱ゾーン(225℃)
5.デフレクションヘッド(deflection head)(220℃)とダイ(220℃)
【0117】
得られた押出し物を押出し物造粒機で粒状体にし、射出成形機を用いて射出成形シートを得た。
【0118】
実施例2と実施例3の熱可塑性ポリウレタン(TPU)材料の機械特性を表1に示す。
【0119】
【表1】

【実施例4】
【0120】
芯の作製
98.8重量部のポリ(ジメチルシロキサン−共ビニルメチルシロキサン)および1.2重量部のジクロロベンゾイルパーオキシド−ポリジメチルシロキサンペースト(50%ジクロロベンゾイルパーオキシド)を2本ロールミルで混合する。得られた混合物を押出成形に付して外径が1.8mmの桿状の成形体を得、架橋反応の生じる+150℃で15分間の加熱によって硬化させる。架橋した芯を23mmの長さに切断する。
【0121】
メンブランの作製
100重量部のシリカ充填ポリ(トリフルオロプロピルメチルシロキサン−共ビニルメチルシロキサン)(トリフルオロプロピルメチルシロキサン単位の含有量が99mol%、即ち、トリフルオロプロピル基の置換率が49.5%)および1.2重量部のジクロロベンゾイルパーオキシド−ポリジメチルシロキサンペースト(50%ジクロロベンゾイルパーオキシド)を2本ロールミルで混合する。得られた混合物を押出成形に付して壁厚が0.22mmの管状の成形体を得、熱で硬化させる。
【0122】
貯蔵体の作製
25mmのメンブランチューブをシクロヘキサンで膨潤させ、芯の回りにかぶせる。シクロヘキサンを蒸発させる。得られた貯蔵体の両端をシリコーン接着剤で封止する。
【実施例5】
【0123】
芯の作製
長さ18mmの芯を実施例4に従って作製する。
【0124】
メンブランの作製
99重量部のシリカ充填ポリ(ジメチルシロキサン−共ビニルメチルシロキサン)、(反応物質に対して)10ppmのPt触媒、0.03重量部の阻害剤(エチニルシクロヘキサノール)および約0.6重量部のポリ(水素メチルシロキサン−共ジメチルシロキサン)架橋剤を2本ロールミルで混合する。得られたメンブラン材料を押出成形に付して壁厚が0.3mmの管状の成形体を得、熱で硬化させる。
【実施例6】
【0125】
芯の作製
99.6重量部の市販のポリ(ジメチルシロキサン−共ビニルメチルシロキサン)、0.4重量部のポリ(水素メチルシロキサン−共ジメチルシロキサン)架橋剤、0.02重量部のエチニルシクロヘキサノール阻害剤および(反応物質に対して)10ppmのPt触媒を含むビニルメチルシロキサンを混練ミルで混合する。得られた混合物を押出成形に付して、壁厚が0.7mm、外径が2.6mmの管状の成形体を得る。成形体は+115℃で30分間硬化させ、冷却した後に長さ30mmに切断する。
【0126】
メンブランの作製
9重量部のα,ω−ジビニルエーテル末端ポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(ジメチルシロキサン)マルチブロック共重合体(PEO−b−PDMS)、89重量部のシリカ充填ポリ(ジメチルシロキサン−共ビニルメチルシロキサン)、(反応物質に対して)10ppmのPt触媒、0.03重量部の阻害剤(エチニルシクロヘキサノール)および約2重量部のポリ(水素メチルシロキサン−共ジメチルシロキサン)架橋剤を2本ロールミルで混合する。得られた混合物を押出成形に付して壁厚が0.15mmの管状の成形体を得、熱で硬化させる。
【0127】
子宮内用システムの作製
長さ3.1mmのメンブランチューブをイソプロパノールで膨潤させ、芯の回りにかぶせる。イソプロパノールを蒸発させる。その後、貯蔵体をイソプロパノールで膨潤させ、実施例1〜3のいずれかに従って得られる熱可塑性ポリウレタンエラストマーを包含してなる枠体の伸張した拡張部の回りにかぶせる。再びイソプロパノールを蒸発させる。
【実施例7】
【0128】
芯の作製
48.5重量部のPEO−b−PDMS、49重量部のポリ(ジメチルシロキサン−共ビニルメチルシロキサン)、(反応物質に対して)10ppmのPt触媒、0.02重量部の阻害剤(エチニルシクロヘキサノール)および約2.4重量部のポリ(水素メチルシロキサン−共ジメチルシロキサン)架橋剤を2本ロールミルで混合する。得られた混合物を押出成形に付して外径が2.1mmの桿状の成形体を得、架橋反応の生じる+150℃で15分間の加熱によって硬化させる。架橋した芯を15mmの長さに切断する。
【0129】
2種類目の芯は、実施例6に従って作製する。外径が2.1mmの架橋した芯を長さ10mmに切断する。
【0130】
メンブランおよび貯蔵体の作製
9重量部のPEO−b−PDMS、89重量部のシリカ充填ポリ(ジメチルシロキサン−共ビニルメチルシロキサン)、(反応物質に対して)10ppmのPt触媒、0.03重量部の阻害剤(エチニルシクロヘキサノール)および約2重量部のポリ(水素メチルシロキサン−共ジメチルシロキサン)架橋剤を2本ロールミルで混合する。得られたメンブラン材料による芯の被覆押出を、上記2種の芯を押出機の内部ノズルから順次挿入することによって行う。形成されたメンブランの膜厚は0.2mmである。
【0131】
子宮内用システムの作製
まず、実施例1〜3のいずれかに従って得られる熱可塑性ポリウレタンエラストマーを包含してなる三角形の枠体に糸を巻きつけ、糸の両端を銀製カップ底部の穴に通す。次に貯蔵体を、枠体内側の底部頂点部分に配置する。貯蔵体を含む枠体の底部頂点部分を銀製カップの中に押し込み、糸をしっかりと引いて3つの部品の位置を確定させ、糸を結んで部品の結合を確実にする。続いて糸を適当な長さに切る。
【実施例8】
【0132】
芯の作製
48.5重量部のPEO−b−PDMS、49重量部のポリ(ジメチルシロキサン−共ビニルメチルシロキサン)、(反応物質に対して)10ppmのPt触媒、0.02重量部の阻害剤(エチニルシクロヘキサノール)および約2.4重量部のポリ(水素メチルシロキサン−共ジメチルシロキサン)架橋剤を2本ロールミルで混合する。得られた混合物を押出成形に付して、角にわずかな丸みを帯びた平坦状の長方形の桿状成形体を得、架橋反応の生じる+150℃で15分間の加熱によって硬化させる。架橋した芯の外寸は0.9mm(高さ)および2.1mm(幅)である。架橋した芯は長さ22mmに切断する。
【0133】
子宮内用システムの作製
貯蔵体を作製するために、膜厚0.22mmのPDMSメンブランで芯を浸漬被覆する。熱可塑性ポリウレタンを射出成形することにより、角に丸みを帯びた五角形の枠体を作製する。改変した電気コネクターを使用して、貯蔵体を枠体上部に結合する。クリップまたはコネクターの上部は枠体の周りで輪になり、枠体の回りに締められている。もう一方の端であるタブは、貯蔵体に巻きつけたコネクターのハサミで固定され、貯蔵体の後ろに隠してある。
【実施例9】
【0134】
芯の作製
54重量部の市販のポリ(ジメチルシロキサン−共ビニルメチルシロキサン)、45.5重量部のレボノルゲストレル、0.4重量部のポリ(水素メチルシロキサン−共ジメチルシロキサン)架橋剤、0.02重量部のエチニルシクロヘキサノール阻害剤および(反応物質に対して)10ppmのPt触媒を含むビニルメチルシロキサンを混練ミルで混合した。得られた混合物を押出成形に付して成形体を得、+115℃で30分間硬化させ、冷却した。得られた外径2.2mmの架橋した芯を長さ20mmに切断した。
【0135】
メンブランの作製
27重量部のα,ω−ジビニルエーテル末端ポリ(エチレンオキシド)−b−ポリ(ジメチルシロキサン)マルチブロック共重合体(PEO−b−PDMS)、71重量部のシリカ充填ポリ(ジメチルシロキサン−共ビニルメチルシロキサン)、(反応物質に対して)10ppmのPt触媒、0.03重量部の阻害剤(エチニルシクロヘキサノール)および約2重量部のポリ(水素メチルシロキサン−共ジメチルシロキサン)架橋剤を2本ロールミルで混合した。得られた混合物を押出成形に付して、壁厚が0.22mmの管状の成形体を得、熱で硬化させた。
【0136】
送達システムの作製
メンブランをイソプロパノールで膨潤させ、芯の回りにかぶせた。こうして得られた貯蔵体を、熱可塑性ポリウレタンエラストマーよりなる五角形の枠体の下部にしっかりと固定された金属製クリップに取り付けた。
【実施例10】
【0137】
枠体、貯蔵体、銀製リングおよび除去用糸を包含する子宮内用システムの製造
枠体を射出成形する。溶融した熱可塑性樹脂を、枠体の形状とは反転したキャビティー形状の金型に高圧で射出する。成形された枠体を射出成形器具から取り出し、温度が下がったら、ゲートと栓を取り除き、キャビティーからはみ出した部分(flash)があれば取り除く。次に、枠体の中央シャフトの上に、銀製のリングと既製した管状の貯蔵体を組み立てる。機械的に貯蔵体を保持し、すべり落ちを防止するための物理的な保持構造を、中央シャフトの未結合の末端を熱形成することによって作製する。次に糸を枠体に通し、結び付ける。糸を適当な長さに切る。
【0138】
本発明の方法は、本明細書においてその数例の態様のみを開示しているが、それ以外の種々の態様も含むものである。他の態様が存在し、それらは本発明の精神から逸脱するものではないことが、当業界の専門家には明らかである。したがって、ここに記載した態様は具体例に過ぎず、本発明を限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮腔内に長期間挿入するための子宮内用システムであって、貯蔵体および連続的且つ閉鎖型の可とう性多角形枠体を有し、貯蔵体の少なくとも一端が枠体の内側表面に連結しており、貯蔵体が少なくとも1種の治療学的に活性な物質を包含し、枠体が熱可塑性ポリウレタンエラストマーを包含し、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、下記の成分(a)〜(d):
(a)イソシアネート含有量が32〜75重量%である、1種または2種以上の脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネート、
(b)数平均分子量(Mn)が501〜10000g/molであり、ツェレビチノフ活性水素原子の数が平均して1.8〜3.0である、少なくとも1種のポリオール成分、
(c)数平均分子量(Mn)が60〜500g/molであり、ツェレビチノフ活性水素原子の数が平均して1.8〜3.0であり、連鎖延長剤である少なくとも1種の低分子量多官能性アルコール成分、および
(d)任意成分である連鎖停止剤としての単官能性アルコール

(e)1種または2種以上の触媒
の存在下で、下記の成分(f)〜(g):
(f)成分(a)〜(d)から形成される熱可塑性ポリウレタンの重量に対して0〜35重量%の無機充填剤、および
(g)任意成分であるさらなる添加剤及び/又は補助物質
を添加して反応させることによって得られる反応生成物であり、
成分(a)に含まれるイソシアネート基の、成分(b)、成分(c)および任意成分(d)に含まれるイソシアネート反応性基に対する比が、0.9:1〜1.1:1である
ことを特徴とする子宮内用システム。
【請求項2】
枠体が熱可塑性ポリウレタンエラストマーを包含し、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、下記の成分(a)〜(d):
(a)イソシアネート成分であって、下記の成分(a1)〜(a2):
(a1)50〜100mol%の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、および
(a2)0〜50mol%の脂肪族ジイソシアネートであり、ただし、該脂肪族ジイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート以外のものであり且つ1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを含まない脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートの混合物以外のものである
を含有するイソシアネート成分、
(b)ポリオール成分であって、下記の成分(b1)〜(b2):
(b1)50〜100mol%の、数平均分子量が501〜3000g/molである少なくとも1種のポリカーボネートジオール、および
(b2)0〜50mol%の、数平均分子量が501〜6000g/molである、ポリカーボネートジオール以外のジオールポリマー
を含有するポリオール成分、
(c)連鎖延長剤成分であって、数平均分子量が90〜286g/molである複数の連鎖延長剤を含む群から選ばれる少なくとも1種の二官能性連鎖延長剤、およびこれらの二官能性連鎖延長剤とε−カプロラクトンまたは二官能性カルボン酸との反応生成物を含有する連鎖延長剤成分、ただし、該反応生成物は下記式(I)または(II)に対応するものである

【化1】

(式中、
1は、炭素数1〜12の分岐もしくは非分岐アルキレンラジカルまたは炭素数6〜24の置換もしくは非置換アルカリーレンラジカルを表し、
2およびR4の各々は、炭素数1〜12の分岐もしくは非分岐アルキレンラジカル、炭素数1〜12のアルコキシアルキレンラジカル、炭素数6〜24の置換もしくは非置換アルカリーレンラジカルまたは炭素数6〜24の置換もしくは非置換アルコキシアリーレンラジカルを表し、
3は、炭素数1〜8の分岐もしくは非分岐アルキレンラジカル、炭素数6〜20の置換もしくは非置換アルカリーレンラジカル、炭素数6〜20の置換もしくは非置換アリーレンラジカルまたは炭素数6〜20の置換もしくは非置換アラルキレンラジカルを表し、
nおよびmの各々は、0から10までを表し、ただし、n+m ≧ 1 であり、
pは、1から10までを表す)、ならびに
(d)任意成分である連鎖停止剤としての単官能性アルコール

(e)1種または2種以上の触媒
の存在下で、下記の成分(f)〜(g):
(f)成分(a)〜(d)から形成される熱可塑性ポリウレタンの重量に対して0.1〜35重量%の無機充填剤、および
(g)任意成分であるさらなる添加剤及び/又は補助物質
を添加して反応させることによって得られる反応生成物であり、
成分(a)に含まれるイソシアネート基の、成分(b)、(c)および(d)に含まれるイソシアネート反応性基に対する比が、0.9:1〜1.1:1である
ことを特徴とする、請求項1に記載の子宮内用システム。
【請求項3】
枠体が熱可塑性ポリウレタンエラストマーを包含し、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは下記の成分(a)〜(d):
(a)イソシアネート成分であって、下記の成分(a1)〜(a2):
(a1)65〜100mol%の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、および
(a2)0〜35mol%の脂肪族ジイソシアネートであり、ただし、該脂肪族ジイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート以外のものであり且つ1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを含まない脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートの混合物以外のものである
を含有するイソシアネート成分、
(b)ポリオール成分であって、下記の成分(b1)〜(b2):
(b1)65〜100mol%の、数平均分子量が501〜3000g/molである少なくとも1種のポリカーボネートジオール、および
(b2)0〜35mol%の、数平均分子量が501〜4000g/molであるポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオール
を含有するポリオール成分、
(c)連鎖延長剤成分であって、下記の成分(c1)〜(c2):
(c1)35〜100mol%の、数平均分子量が118〜286g/molである少なくとも1種の二官能性連鎖延長剤、および
(c2)0〜65mol%の、数平均分子量が104〜500g/molである連鎖延長剤であり、ただし、該連鎖延長剤は連鎖延長剤成分(c1)とは異なるものであって下記式(I)または(II)に対応するものである

【化2】

(式中、
1は、炭素数1〜12の分岐もしくは非分岐アルキレンラジカルまたは炭素数6〜24の置換もしくは非置換アルカリーレンラジカルを表し、
2およびR4の各々は、炭素数1〜12の分岐もしくは非分岐アルキレンラジカル、炭素数1〜12のアルコキシアルキレンラジカル、炭素数6〜24の置換もしくは非置換アルカリーレンラジカルまたは炭素数6〜24の置換もしくは非置換アルコキシアリーレンラジカルを表し、
3は、炭素数1〜8の分岐もしくは非分岐アルキレンラジカル、炭素数6〜20の置換もしくは非置換アルカリーレンラジカル、炭素数6〜20の置換もしくは非置換アリーレンラジカルまたは炭素数6〜20の置換もしくは非置換アラルキレンラジカルを表し、
nおよびmの各々は、0から10までを表し、ただし、n+m ≧ 1 であり、
pは、1から10までを表す)
を含有する連鎖延長剤成分、ならびに
(d)任意成分である連鎖停止剤としての単官能性アルコール

(e)1種または2種以上の触媒
の存在下で、下記の成分(f)〜(g):
(f)成分(a)〜(d)から形成される熱可塑性ポリウレタンの重量に対して0.1〜35重量%の無機充填剤、および
(g)任意成分であるさらなる添加剤及び/又は補助物質
を添加して反応させることによって得られる反応生成物であり、
成分(a)に含まれるイソシアネート基の、成分(b)、(c)および(d)に含まれるイソシアネート反応性基に対する比が、0.9:1〜1.1:1である
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の子宮内用システム。
【請求項4】
枠体が熱可塑性ポリウレタンエラストマーを包含し、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは下記の成分(a)〜(d):
(a)イソシアネート成分であって、下記の成分(a1)〜(a2):
(a1)70〜100mol%の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、および
(a2)0〜30mol%の脂肪族ジイソシアネートであり、ただし、該脂肪族ジイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート以外のものであり且つ1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを含まない脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートの混合物以外のものである
を含有するイソシアネート成分、
(b)ポリオール成分であって、下記の成分(b1)〜(b2):
(b1)70〜100mol%の、数平均分子量が1000〜2500g/molである少なくとも1種のポリカーボネートジオール、および
(b2)0〜30mol%の、数平均分子量が600〜4000g/molであるポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオール
を含有するポリオール成分、
(c)連鎖延長剤成分であって、下記の成分(c1)〜(c2):
(c1)35〜95mol%の、数平均分子量が146〜286g/molである少なくとも1種の二官能性連鎖延長剤、および
(c2)5〜65mol%の、数平均分子量が104〜500g/molである連鎖延長剤であり、ただし、該連鎖延長剤は連鎖延長剤成分(c1)とは異なるものであって下記式(I)または(II)に対応するものである

【化3】

(式中、
1は、炭素数1〜12の分岐もしくは非分岐アルキレンラジカルまたは炭素数6〜24の置換もしくは非置換アルカリーレンラジカルを表し、
2およびR4の各々は、炭素数1〜12の分岐もしくは非分岐アルキレンラジカル、炭素数1〜12のアルコキシアルキレンラジカル、炭素数6〜24の置換もしくは非置換アルカリーレンラジカルまたは炭素数6〜24の置換もしくは非置換アルコキシアリーレンラジカルを表し、
3は、炭素数1〜8の分岐もしくは非分岐アルキレンラジカル、炭素数6〜20の置換もしくは非置換アルカリーレンラジカル、炭素数6〜20の置換もしくは非置換アリーレンラジカルまたは炭素数6〜20の置換もしくは非置換アラルキレンラジカルを表し、
nおよびmの各々は、0から10までを表し、ただし、n+m ≧ 1 であり、
pは、1から10までを表す)
を含有する連鎖延長剤成分、ならびに
(d)任意成分である連鎖停止剤としての単官能性アルコール

(e)1種または2種以上の触媒
の存在下で、下記の成分(f)〜(g):
(f)成分(a)〜(d)から形成される熱可塑性ポリウレタンの重量に対して0.1〜35重量%の無機充填剤、および
(g)任意成分であるさらなる添加剤及び/又は補助物質
を添加して反応させることによって得られる反応生成物であり、
成分(a)に含まれるイソシアネート基の、成分(b)、(c)および(d)に含まれるイソシアネート反応性基に対する比が、0.9:1〜1.1:1である
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の子宮内用システム。
【請求項5】
ポリオール成分(b)が1,6−ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとから調製されるポリカーボネートジオールであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の子宮内用システム。
【請求項6】
ポリカーボネートジオールが1000〜2500g/molの数平均分子量を有することを特徴とする、請求項2〜5のいずれかに記載の子宮内用システム。
【請求項7】
ジオール成分(c)が、ヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルと、1,6−ヘキサンジオールとε−カプロラクトンとから調製される直鎖オリゴマーとの混合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の子宮内用システム。
【請求項8】
ジオール成分(c)が1,12−ドデカンジオールであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の子宮内用システム。
【請求項9】
枠体が実質的に三角形または五角形であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の子宮内用システム。
【請求項10】
枠体の断面が、円形、半円形、卵形、平坦状、楕円形、長方形、角状、多角形または星形であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の子宮内用システム。
【請求項11】
貯蔵体の一端のみが枠体の内側表面に連結していることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の子宮内用システム。
【請求項12】
貯蔵体の断面が、円形、卵形、平坦状、楕円形、長方形、角状、多角形または星形であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の子宮内用システム。
【請求項13】
貯蔵体が少なくとも1個の芯を包含することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の子宮内用システム。
【請求項14】
貯蔵体の包含する少なくとも1個の芯が重合体層によって覆われていることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の子宮内用システム。
【請求項15】
該少なくとも1個の芯に含まれる重合体組成物と、該芯を覆う重合体層に含まれる重合体組成物が同一または異なることを特徴とする、請求項14に記載の子宮内用システム。
【請求項16】
枠体が、重合体組成物または生体適合性金属からなる支持手段を有することを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の子宮内用システム。
【請求項17】
子宮内用システムの除去、位置確認または検出のための糸を更に包含することを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の子宮内用システム。
【請求項18】
子宮内用システムの検出及び/又は位置確認を改善するための少なくとも1種の結像増強手段を更に包含することを特徴とする、請求項1〜17のいずれかに記載の子宮内用システム。
【請求項19】
枠体または貯蔵体が、貯蔵体を保持して、その滑り落ちを防ぐための保持手段または固定手段を包含することを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の子宮内用システム。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載の子宮内用システムを製造するための方法であって、該子宮内用システムは貯蔵体および連続的且つ閉鎖型の可とう性多角形枠体を有し、貯蔵体が枠体の内側表面に連結しており、貯蔵体が少なくとも1種の治療学的に活性な物質を包含し、枠体が熱可塑性ポリウレタンエラストマーを包含するものであって、該方法が連続製法を用いた射出成形、押出成形または圧縮成形による枠体および貯蔵体の成形を包含するものであって、該連続製法は、枠体の調製;芯を提供するための、治療学的に活性な物質および重合体組成物を包含する第1組成物の調製;芯を覆うメンブランを提供するための、重合体組成物を包含する第2組成物の調製;芯とメンブランの一体化による貯蔵体の形成;そして貯蔵体と枠体との結合を包含する連続製法
であることを特徴とする製造方法。
【請求項21】
雌性哺乳動物に治療学的に活性な物質を送達するための方法であって、連続的且つ閉鎖型の可とう性多角形枠体および枠体の内側表面に連結している貯蔵体を包含し、該枠体は熱可塑性ポリウレタンエラストマーを包含し、該貯蔵体は、重合体組成物およびその中に混合された治療学的に活性な物質を包含する少なくとも1個の芯を包含する請求項1〜19のいずれかに記載の子宮内用システムを提供し、該子宮内用システムを雌性哺乳動物の子宮内に配置し、有効量の治療学的に活性な物質を雌性哺乳動物に送達するのに十分な時間にわたって子宮内用システムを子宮内に保持することを包含する方法。
【請求項22】
光安定性熱可塑性ポリウレタンエラストマーであって、該光安定性熱可塑性ポリウレタンエラストマーは下記の成分(a)〜(d):
(a)イソシアネート成分であって、下記の成分(a1)〜(a2):
(a1)65〜100mol%の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、および
(a2)0〜35mol%の脂肪族ジイソシアネートであり、ただし、該脂肪族ジイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート以外のものであり且つ1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートを含まない脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートの混合物以外のものである
を含有するイソシアネート成分、
(b)ポリオール成分であって、下記の成分(b1)〜(b2):
(b1)65〜100mol%の、数平均分子量が501〜3000g/molである少なくとも1種のポリカーボネートジオール、および
(b2)0〜35mol%の、数平均分子量が501〜4000g/molであるポリエーテルジオール及び/又はポリエステルジオール
を含有するポリオール成分、
(c)連鎖延長剤成分であって、下記の成分(c1)〜(c2):
(c1)35〜100mol%の、数平均分子量が118〜286g/molである少なくとも1種の二官能性連鎖延長剤、および
(c2)0〜65mol%の、数平均分子量が104〜500g/molである連鎖延長剤であり、ただし、該連鎖延長剤は連鎖延長剤成分(c1)とは異なるものであって下記式(I)または(II)に対応するものである

【化4】

(式中、
1は、炭素数1〜12の分岐もしくは非分岐アルキレンラジカルまたは炭素数6〜24の置換もしくは非置換アルカリーレンラジカルを表し、
2およびR4の各々は、炭素数1〜12の分岐もしくは非分岐アルキレンラジカル、炭素数1〜12のアルコキシアルキレンラジカル、炭素数6〜24の置換もしくは非置換アルカリーレンラジカルまたは炭素数6〜24の置換もしくは非置換アルコキシアリーレンラジカルを表し、
3は、炭素数1〜8の分岐もしくは非分岐アルキレンラジカル、炭素数6〜20の置換もしくは非置換アルカリーレンラジカル、炭素数6〜20の置換もしくは非置換アリーレンラジカルまたは炭素数6〜20の置換もしくは非置換アラルキレンラジカルを表し、
nおよびmの各々は、0から10までを表し、ただし、n+m ≧ 1 であり、
pは、1から10までを表す)
を含有する連鎖延長剤成分、ならびに
(d)任意成分である連鎖停止剤としての単官能性アルコール

(e)1種または2種以上の触媒
の存在下で、下記の成分(f)〜(g):
(f)成分(a)〜(d)から形成される熱可塑性ポリウレタンの重量に対して0.1〜35重量%の無機充填剤、および
(g)任意成分であるさらなる添加剤及び/又は補助物質
を添加して反応させることによって得られる反応生成物であり、
成分(a)に含まれるイソシアネート基の、成分(b)、(c)および(d)に含まれるイソシアネート反応性基に対する比が、0.9:1〜1.1:1である
ことを特徴とする、光安定性熱可塑性ポリウレタンエラストマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−506643(P2013−506643A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531463(P2012−531463)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/FI2010/050753
【国際公開番号】WO2011/039418
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(507331379)
【Fターム(参考)】