説明

子宮内膜炎または不妊症の処置および妊孕性の改善

【課題】本発明は、子宮内膜炎もしくは不妊症の処置または妊孕性の改善を目的とする。
【解決手段】本発明は、子宮内膜炎もしくは不妊症の処置または妊孕性の改善を目的としてβ−アドレナリン性アゴニストを使用する組成物および方法に関する。本発明はまた、有害な血中レベルを生じることなしに、もって有害な副作用を軽減または回避して、医療上十分なレベルのβ−アドレナリン性アゴニストを局所的に提供するような組成物または方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願60/157,754(1999年10月5日出願)の利益を享受する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、子宮内膜炎もしくは不妊症の処置または妊孕性の改善を目的とする医薬組成物およびその局所的投与の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
子宮内膜炎は、子宮の内層と同一または類似の組織が異常な場所すなわち子宮の外側に存在する状態である。婦人科領域などの低位骨盤臓器に主に影響を与えて、子宮内膜炎はしばしば、痛みのある子宮けいれん症候(月経困難症)、骨盤疼痛、不妊症を伴う。子宮内膜炎の比較的低い頻度、その時間的な進展についての不完全な知見、および診断法の侵襲性があいまって、子宮内膜炎の予防可能性の研究を非常に難しくしている。
【0004】
子宮内膜炎の典型的な処置により、子宮内膜炎の範囲の顕著な減少(消失ではない)および疼痛の軽減がもたらされているようである。しかし、これらの処置は閉経または妊娠を擬態しようとするもので、もって排卵も阻害する。子宮内膜炎の伝統的な処置は排卵を阻害して妊娠を防止するので、月経周期に影響しないような処置が用いられるようになると、非常に有益である。
【0005】
月経周期は、子宮の収縮性を基にして3つの特徴的な相に分けることができる。すなわち、初期卵胞相、後期卵胞相、黄体相である。初期卵胞相において、子宮の収縮がまず激しく起こり、子宮底部から頚部末端に伝播する。この収縮パターンが子宮内容物(月経)を排出するのを助ける。月経周期のこの相で、女性は子宮の収縮を典型的に知覚し、この収縮が出産の排出性収縮の小型モデルとなる。時に、この子宮収縮は痛みが激しくなることがあり、日常生活に障害を及ぼす。薬物服用を必要とするか、および/または普通の日常業務を止めざるを得なくなる。このような疼痛性収縮を月経困難症という。
【0006】
後期卵胞相の特徴は激しい逆行性収縮(頚部から子宮へ)である。これは、頚部から受精が行われる卵管遠位部へ精子を迅速に輸送するのに働く。後期卵胞相での収縮は痛みがないとされている。
【0007】
黄体相はプロゲステロン誘導の子宮休止期である。これは、子宮の両末端から生じ中間部で出会う低振幅の2方向性収縮を有する。この2方向性収縮は、着床が通常起きる子宮頚部の中間に、発育する胚が適切に位置するのを助ける。
【0008】
最近の研究では、子宮内膜炎を月経周期での子宮収縮の運動障害パターンに関連つけている。非特許文献1。平滑筋運動障害の他の型との類似からすると、子宮内膜炎に関連する子宮収縮の変化は型として運動亢進性である。非特許文献2。
【0009】
具体的に、子宮内膜炎に関連する運動亢進性子宮収縮は、月経周期の初期卵胞相において正常的におきる月経血の適切な早期排出を妨害する。正常では、月経血は子宮から膣の方向に流れる。しかし、異常な子宮収縮は、ファロピオ管を含むすべての開口を通って無秩序に子宮を出ていく(子宮頚部の高圧環境による)。これにより退行性出血が増加する。退行性出血は、子宮内膜組織片の直接播種による子宮内膜移植の発育および慢性的炎症性反応に燃料を与える因子のひとつである。
【0010】
すべての女性が月経の間(すなわち、初期卵胞相で)少なくともある期間、ある程度の逆行性出血を経験する。非特許文献3。しかし、最近の研究によると、子宮内膜炎の女性は、培養中で生育する強力な素因を表現する子宮内膜片を、子宮内膜炎に罹患していない女性よりも多く有していた。非特許文献4。他の研究によると、子宮内膜炎の女性では正常の女性に比して、Tc−99(テクニチウム)で標識され、膣フォルミックス(formix)に位置するマクロアルブミン集合体の子宮および管への逆行性輸送が強い。非特許文献5。
【0011】
さらに、後期卵胞相での正常な逆行性収縮は、精子の迅速な輸送に作用し、妊孕性に影響を及ぼすようである。女性器(子宮および管)にそった収縮が、頚部から管の遠位端(ここで受精がおきる)への精子の迅速な輸送を確保する主要なの促進となることによるのであろう。研究によると、精子は、性交数分以内に子宮腔に認められ、自己の力でそこに到達する前に、その迅速な輸送に逆行性子宮収縮を利用する。非特許文献6。
【0012】
テルブタリンなどのβ−アドレナリン性アゴニストが平滑筋の収縮を阻害することは知られている。テルブタリンなどのβ−アドレナリン性アゴニストは、アデニルシクラーゼの活性化により薬理学的作用を発揮する。この酵素はアデノシン・トリホスフェート(ATP)の環状アデノシン・モノホスフェート(cAMP)への転換の触媒となる。β−アドレナリン性アゴニストによるアデニルシクラーゼの活性化はcAMPの細胞内レベルを増加する。環状AMPは逆に細胞内の遊離Ca2+の利用性を減じる。このCa2+は、ミオシンをリン酸塩化する酵素であるミオシン軽鎖キナーゼの活性化に必要であり、活性化によりミオシンがアクチンと結合でき、アクトミオシンを形成する。Ca2+を欠くと、アクチン−ミオシン相互作用の破壊が起き、平滑筋の収縮が阻害される。
【0013】
テルブタリンは気管支拡張剤として通常使用され、例えば、米国食品医薬品局により喘息の処置に承認されている。経口および静注のテルブタリンはまた、収縮の停止または陣痛の延期により出産前の有効な治療法として使用される。非特許文献7; 非特許文献8。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Salananca, A., Beltran, E.: 子宮内膜炎の患者における経膣音波検査器で確認される月経相での内膜下収縮、Fertil. Steril., 65: 193-95 (1995)
【非特許文献2】Sanfilippo, J.S., Wakim, N.G., Schikler, K.N., Yussman, M.A.: 子宮異常に関連する子宮内膜炎、Am, J. Obstet. Gynecol., 1986; 154: 39-43
【非特許文献3】Halme, J., Hammond, M.G., Hulka, J.F., Raj, S.G., Tlbert, L.M.: 健康な女性および子宮内膜炎患者における逆行性月経、J. Am. Ass. Gynecol. Laparoscopists 3 [4 suppl], S5. 1996
【非特許文献4】Bulletti, D., Rossi, S., Albonetti, A., Polli, V., DeZiegler, D., Massonneau, M., et al.、子宮内膜炎の患者における子宮収縮、J. Am. Ass. Gynecol. Laparoscopists 3 [4 suppl], S5. 1996
【非特許文献5】Leyendecker, G., Kunz, G., Wildt, L., Beil, D., Deininger, H.: 子宮内膜炎および不妊症の患者における迅速な精子輸送のメカニズムの機能障害としての子宮の過蠕動および低蠕動、Hum. Reprod. 1996; 11: 1542-52
【非特許文献6】Kunz, G., Beil, D., Deininger H., Wildt, L., Leyendecker, G.: 女性性器での迅速な精子輸送の原動力:子宮蠕動についての膣音波法および子宮卵管造影法による証明、Hum. Reprod. 1996; 11: 627-32
【非特許文献7】Lyrenas, S., Grahnen, A., Lindberg, B., et al.: 妊娠におけるテルブタリンの薬物動態、Eur. J. Clin. Pharmacol., 29: 619-623 (1986)
【非特許文献8】Berg, G., Lindberg, C., Ryden, G.: 出産前におけるテルブタリン処置、Eur. J. Respir. Dis., 65: 219-230 (1984)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
月経困難症の処置におけるテルブタリンの使用は文献に報告されている。ひとつの研究において、テルブタリンは、子宮筋層の活動を阻害し、子宮への血流を増加し、月経困難症を伴う子宮収縮時におきる疼痛を緩和することが示されている。Akerlund, M., Andersson, K.E., Ingemarsson, E.: 主要な月経困難症の女性における子宮筋層の活動、子宮への血流、下腹部の疼痛に対するテルブタリンの作用。Kullander, S., Svanberg, L.: 基本的な月経困難症における重い疼痛の緩解のためのテルブタリン吸入。この治療はある程度の効果をもたらすが、大部分の患者で十分でなく、適切な緩解のために他の薬物を補充しなければならなかった。さらに、各噴霧の作用はわずか1時間しか持続しなかった(同上文献)。
【0016】
さらに、月経困難症または未熟出産の予防または治療に普通予期される副作用なしにテルブタリンなどのβ−アドレナリン性アゴニストを使用することは、米国特許出願09/145,172に開示されている。これらの副作用はさらに下記する。
【0017】
テルブタリンなどのβ−アドレナリン性アゴニストの医療上の使用に関連する欠点が、その使用を制限している。例えば、経口投与後のバイオアベイラビリティが低い。β−アドレナリン性アゴニストは、容易に吸収されても、最初の段階で強い硫酸化を受ける。バイオアベイラビリティはわずか15から20%であると考えられている。食物と一緒に摂取すると、さらにバイオアベイラビリティは30%低下する。Bricanyl: Scientific brochure, Astra France Laboratoires (1993)。
【0018】
さらに、テルブタリンの医療上の使用は、上記したように、患者、特に心臓血管系の患者において著しい有害副作用を起こす。交感神経興奮性アミンとして、テルブタリンは、不整脈、冠不全、高血圧を含む心臓血管系障害がある患者において問題を起こすことがある。テルブタリンの静脈注射は心悸亢進や末梢性振戦に関連する。Akerlund, M., Andersson, K.F., Ingemarsson, I.: 月経困難症の女性における子宮筋層の活動、子宮の血流、下腹部痛に対するテルブタリンの作用、Br. J. Obstet. Gyncol., 83: 673-78 (1976)。また、静注のテルブタリンが既存の糖尿病およびケトアシドーシスを悪化することが報告されている。テルブタリンはまた、甲状腺機能亢進症、糖尿病、発作歴のある患者で問題が生じることがある。他の有害作用には、振戦、神経過敏症、心拍増加、めまいがある。まれに起こる有害副作用として、頭痛、うとうと状態、嘔吐、悪心、発汗、筋けいれん、ECG変化がある。このように、テルブタリン処置は、その効果にもかかわらず、有害結果の可能性からしてしばしば禁忌となる。米国特許出願09/145,172に開示されているように投与するときは、例外である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の要旨)
本発明は、(i)子宮内膜炎もしくは不妊症の処置または妊孕性の改善を目的とする医療上有効な量のβ−アドレナリン性アゴニスト、および(ii)薬学的に許容される生物的接着性担体を含有する医薬組成物に関する。
【0020】
本発明はまた、子宮内膜炎または不妊症を処置するか、または妊孕性を改善する方法に関し、医療上有効な量のβ−アドレナリン性アゴニストおよび薬学的に許容される生物的接着性担体を含有する医薬組成物を、その必要とする患者の膣粘膜に局所的に投与することを含む。
【0021】
本発明はまた、子宮内膜炎または不妊症を処置するか、または妊孕性を改善する方法に関し、医療上有効な量のβ−アドレナリン性アゴニストを含有する医薬組成物を、β−アドレナリン性アゴニストの有害な血中レベルを生じることなしに、投与することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な記述)
定義
「妊孕性の改善」は、限定でなく、女性における妊娠率すなわち妊孕性の増加を含む。
「医療上有効な量」は、所望の作用を生じせしめるのに必要とする量を意味する。
【0023】
「子宮内膜炎の処置」は、下記を意味する:
(i)子宮内膜炎となるおそれがあるが、まだ子宮内膜炎と診断されていない女性における子宮内膜炎の予防;
(ii)子宮内膜炎の阻止、すなわち子宮内膜炎の進展の停止;
(iii)子宮内膜炎の緩解、すなわち子宮内膜炎の退行。
【0024】
「不妊症の処置」は、限定でなく、妊孕性の低下または障害を持つか、不妊症と認められた女性における、不妊症の軽減、妊娠率の増加、妊孕性の改善を含む。
【0025】
「患者」は、医学的世話または処置を受けている者を意味する。
「膣粘膜」は、膣の粘液性膜を意味する。
【0026】
本発明の医薬組成物
本発明は、(i)子宮内膜炎もしくは不妊症の処置および/または妊孕性の改善を目的とする医療上有効な量のβ−アドレナリン性アゴニスト、および(ii)薬学的に許容される生物的接着性担体を含有する医薬組成物に関し、β−アドレナリン性アゴニストの有害な血中濃度なしに効果を生じる。
【0027】
β-アドレナリン性アゴニストは、限定でないが、テルブタリン、リトドリン、イソクスプリン、フェノテロール、サルブタモール、ヘキソプレナリン、メタプレナリン、ビトルテロール、ピルブテロールを含む。
【0028】
好ましくは、β−アドレナリン性アゴニストはテルブタリンである。テルブタリンの化学式は5-[2-[(1,1-ジメチルエチル)アミノ]-1-ヒドロキシエチル]-1,3-ベンゼンジオールである。その構造式は下記の通り。
【化1】

【0029】
β-アドレナリン性アゴニストの子宮内膜炎、不妊症、妊孕性に対する作用は,明確にはわかっていないが、子宮平滑筋の弛緩剤として作用すると一般的に思われる。β-アドレナリン性アゴニストは、月経周期中に正常的に起きる適当な収縮性パターンを変えることなしに、超活性/運動障害性の子宮活動を正常化すると考えられる。機能障害性子宮収縮を正常化することにより、β-アドレナリン性アゴニストは、子宮内膜炎の進行に関与すると思われる退行性出血を減少して、骨盤の炎症および疼痛を低下するのであろう。β-アドレナリン性アゴニストの退行性出血に対する作用は、CA−125(癌抗原125)のレベルを監視して、測定できる。正常的には、CA−125レベルは月経時に増加する。しかし、この増加は子宮内膜炎の場合にさらに著しい。β-アドレナリン性アゴニストは月経時にCA−125のレベル増加を低下する。
【0030】
さらに、子宮内膜炎の現れた状態が軽度から中程度であっても、β-アドレナリン性アゴニストは子宮内膜炎に関連する不妊症を治すと考える。この作用の厳密なメカニズムはわからないが、退行性収縮の正常化が頚部から管の遠位端(ここで受精がおきる)への精子の迅速な輸送を改善するのであろう。周期半ばの退行性輸送を、Tc99標識マクロアルブミン集合体の退行性(膣から管)置換についての視覚化(子宮卵管シンチグラフィ(HSS)という技法)により確認した。
【0031】
さらに、β-アドレナリン性アゴニストは、不妊症が確認されていない女性(すなわち、以前に確認されまたは確認されていない軽度にすぎない子宮運動障害を有する女性)においても妊孕性を改善し得る。この作用の厳密なメカニズムはわからないが、子宮運動障害を有する女性において、テルブタリンが子宮の収縮性を改善し、もって頚部から管の遠位端(ここで受精がおきる)への精子の迅速な輸送を改善するのであろう。
【0032】
さらに、これらの適応のいずれをも、β-アドレナリン性アゴニストの通常予測される有害な血中レベルを回避して、達成できる。
さらに、β-アドレナリン性アゴニストは子宮内膜炎の通常の治療法に優る利点を提供する。その場合このアゴニストは排卵をブロックしない。
薬学的に許容される生物的接着性担体は、水不溶性で水膨張性の生物的接着性橋かけポリカルボン酸ポリマーである。
【0033】
このようなポリカルボン酸ポリマー生物的接着性担体のβ−アドレナリン性アゴニストとの併用は、β−アドレナリン性アゴニスト単独の使用または他の処方物との使用に優れるいくつかの利点を提供する。投与において、このような生物的接着性担体は、膣粘膜を介してβ−アドレナリン性アゴニストの制御された長期の放出を提供する。直接的または局所的に膣粘膜を介してβ−アドレナリン性アゴニストが放出されることにより、β−アドレナリン性アゴニストを比較的低いが集中された濃度で投与できる。すなわち、β−アドレナリン性アゴニストの全身的濃度を減じて、最初の通過代謝経路に関連する多くの顕著な副作用を低下せしめる。
【0034】
さらに、生物的接着性担体は、薬学的に許容される形態で存在し得る。その形態は、ゲル、クリーム、錠剤、丸剤、カプセル、座剤、被膜剤などの膣粘膜に接着する薬学的に許容される形態を含む。本発明の生物的接着性が、β−アドレナリン性アゴニストが稀釈されたり洗浄除去されるのを防止するので、β−アドレナリン性アゴニストを有効に、月経中においても、投与できる。
【0035】
本発明(β−アドレナリン性アゴニストが添加された生物的接着性で水不溶性で水膨張性の橋かけポリカルボン酸ポリマー処方)についての基本的な配送系の処方は、Robinson の米国特許4,615,697(以下、「697特許」という)(出典明示により本明細書の一部とする)に一般的に記載されている。
【0036】
このポリマーを含むモノマーの少なくとも8%が少なくとも1つのカルボキシル官能基を含有すべきである。橋かけ物質は、十分な生物的接着および水不溶性を提供するような量で存在しなければならない。これらの特性によって、系が標的の上皮表面への接着を十分な時間保持し、所望の用量投与が可能となる。
【0037】
このレベルの生物的接着性は、橋かけ物質が約0.1から6.0重量%のポリマーで存在するときに、通常達成できる。より好ましくは、橋かけ物質が約1.0から2.0重量%のポリマーで存在する。適当な橋かけ物質は、他のものも含み、ジビニルグリコール、ジビニルベンゼン、N,N−ジアリルアクリルアミド、3,4−ジヒドロキシ−1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、および他の類似物質を含む。接着の強度は市販の引張メーターで測定できる。
【0038】
本発明の使用に好ましいポリマーはポリカルボフィルである。米国薬局方ポリカルボフィルは、NOVEON(商標)-AA1 なる名称で B.F. Goodrich Specialty Polymer of Cleveland, OH から市販されている。ポリカルボフィルはジビニルグリコールと橋かけ結合したポリアクリル酸である。参照、米国薬局方、1995年版、United States Pharmacopeial Convention, Inc., Rockville, Maryland、1240-41 頁。
【0039】
ポリカルボフィルは他の薬剤の配送系に使用されてきた。例えば、ポリカルボフィルは膣粘性付与剤 Replens(商標)の主要成分である。プロゲステロン(Crinone(商標))(参照、米国特許 5,543,150)やノノキシノル-9(Advantage-S(商標))(参照、米国特許 5,667,492)などの他の活性物質を有する組成物における基剤としても用いられている。
【0040】
本発明の組成物において使用し得る他の有用な生物的接着性ポリマーは、697特許に記載されている。例えば、3,4−ジヒドロキシ−1,5−ヘキサジエンと橋かけ結合したポリアクリル酸ポリマーおよびジビニルベンゼンと橋かけ結合したポリメタアクリル酸ポリマーがある。これらのポリマーはその塩の形態で使用すべきでない。塩は生物的接着性の能力を低下するからである。これらの生物的接着性ポリマーの製造は、当業者に既知である通常の遊離基重合化法により、すなわち、ベンゾイルペルオキシドやアゾビスイソブチロニトリルなどのイニシエータを使用して行い得る。有用な生物的接着性剤を作る例示的な方法も697特許に開示されている。
【0041】
さらに、697特許に教示されているような添加物の1以上を橋かけポリマーとともに処方に混合して、薬剤配送系の効果および患者の快適性を大きくできる。これらの添加物は、他のものも含み、潤滑剤、可塑剤、保存剤、ゲル形成剤、錠剤形成剤、丸剤形成剤、座剤形成剤、膜形成剤、クリーム形成剤、崩壊剤、被覆剤、結合剤、運搬剤、色素、味覚剤、香気剤、湿潤剤、粘性調整剤、pH調整剤を含む。本発明は当業者に既知の他の添加物も含み得る。
【実施例】
【0042】
発明組成物の実施例1、好ましい実施態様COL−2301は下記の成分を含む。
表1:COL−2301
【表1】

COL−2301の個々の成分は周知であり、当業界で知られている供給者から購入できる。
【0043】
メチルパラベンおよびソルビン酸は保存剤であり、安息香酸やプロピオン酸などの他の既知の保存剤で代用できる。
カルボマー934Pはゲル形成剤であり、他のゲル形成剤、限定でないが、カルボマー974、カルボマー980、メチルセルロース、プロピルセルロースなどのゲル形成剤で代用できる。
【0044】
グリセリンは潤滑剤であり、代用の潤滑剤として、例えば、ポリエチレングリコールやジプロピレングリコールがある。
軽質液性パラフィンは軟化剤であり、代用の軟化剤として、例えば、鉱油、落花生油、ヒマシ油、ゴマ油、トウモロコシ油などの油がある。
【0045】
水酸化ナトリウムはpH値を調整するために使用される強い塩基である。この目的に通常使用される他の塩基で代用できる。
LABRAFIL(商標)M2130 は潤滑性を付与し組成物を白くする任意の物質である。他の既知の潤滑剤および/または白色化剤で代用できる。
【0046】
一般的な調製法において、ポリマーの水和によりポリマー層(水溶性成分)および油層(油溶性成分)の混合物が分離するが、この2つの層を加熱混合し、混合物として均質化する。例えば、ポリマー層の調製は、精製水中(蒸発損失を勘案して約3%の過剰を含有)にソルビン酸およびメチルパラビンを、好ましくは75−78℃で溶解して行う。混合物を室温まで通常冷やし、ポリカルボフィルおよびカルボマー934Pを混合物に加える。ポリマーの水和は、均一で流動性で均質の、塊のないゲル様ポリマー混合物を得るまで、数時間、通常は約2−3時間混合する。ポリマーが完全に水和されたときに、β−アドレナリン性アゴニストを加え、均質の懸濁液を得るまで混合する。
【0047】
油層の調製は、LABRAFIL(商標)M2130、グリセリン、軽質液性パラフィンを一緒に熔融し、混合物を約75−78℃まで加熱する。ついで混合物を約60℃まで冷やす。一方、上記のポリマーをほぼ同じ温度に温める。ポリマー層を加熱油層に加える。この2層を完全に混合すると、均一でクリーム状の白色産物ができる。必要に応じて、水酸化ナトリウムを加え、pHを約2.5−4.5、通常は4とする。混合物を冷やした後、脱気する。
【0048】
当業者には明らかなことであるが、特定の性質を得るために組成物を変えることができる。例えば、生物的接着性ポリマーの濃度を調整して、生物的接着性を大きくまたは小さくできる。粘度を変更するには、pHを変えるか、ポリマーやゲル形成剤の濃度を変える。水に対する油の相対的濃度を変えて、薬物配送系からのテルブタリンの放出速度を調節できる。pHを適当に変えることで、処方物の放出速度および生物的接着性に影響を与え得る。
【0049】
本発明の医薬組成物について他の好ましい実施態様:実施例2を表2に示す。
表2:テルブタリン2mg錠
【表2】

【0050】
本発明の医薬組成物について他の好ましい実施態様:実施例3を表3に示す。
表3:テルブタリン4mg錠
【表3】

【0051】
ステアリン酸マグネシウムおよびタルクは潤滑剤であり、代用物としてステアリン酸カルシウムやステアリン酸がある。
二酸化ケイ素は滑沢剤であり、代用物としてコロイド性シリカやセルロースがある。
【0052】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは結合剤であり、代用物としてメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、グルコース、ラクトース、ゼラチンなどがある。
【0053】
ラクトースは稀釈剤であり、代用物としてマニトール、微結晶性セルロース、圧縮糖、リン酸二カルシウム・二水和物がある。
トウモロコシデンプンは崩壊剤であり、代用物としてメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グアガム、寒天がある。
【0054】
このような生物的接着性錠を製造する現在好ましい方法は、下記の3工程を含む。
第1工程:顆粒の製造
ヒドロキシキシメチルセルロース15000(=HPMC15000)をトウモロコシデンプンおよびラクトースと混合し、湿気に感受性のない活性成分の場合、活性成分を加える。混合物をヒドロキシメチルセルロース5(=HPMC5)水溶液で湿らし、練和/顆粒化する。
【0055】
顆粒を釜中で温かい空気(50℃)で、湿気が2.5%以下になるまで乾燥する。
乾燥した顆粒をメッシュサイズ1000μmのステンレス篩振動顆粒機で砕く。
【0056】
第2工程:製錠用混合物の製造
タルク、二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、および湿気に感受性の活性成分の場合、活性成分を加える。全部を開口サイズ500μmの篩機で篩い、ついで自由落下混和機中に移す。
【0057】
工程1の顆粒にポリカルボフィル、カルボマー934P、ラクトースを加える。全部を均質になるまで混合する。
【0058】
第3工程:製錠
製錠用混合物の打錠を、上面が9mmの平面であり、下面が湾曲し(r=9mm)、両面とも角の丸い打ち抜き器を備えた回転打錠機で行う。付着の粉末を除き、錠剤を詰める。
【0059】
上記したように、湿気に感受性のない活性成分を好ましくは果粒の製造時に加える。あるいは、顆粒を乾燥し篩をかけた後の第2工程中に、活性成分を加えることができる。また、当業者によく知られているように、湿気に感受性の活性成分の場合、第2工程が特に望ましい。
【0060】
現在の好ましい製造法においては、活性成分を好ましくは湿気から保護する。湿顆粒化をラクトース、トウモロコシデンプン、HPMCで行う。テストステロン、ポリカルボフィル、カルボマー934P、タルク、ステアリン酸マグネシウムを、乾燥状態で最終打錠のために加える。
【0061】
さらに、本発明の教示にしたがって当業者は理解できるように、錠剤についての所望の特性を最適化するために、構成の材料は異なり得る。例えば、ラクトースおよびトウモロコシデンプンの量を漸減し、カルボマー934Pの量を漸増すると、錠剤が水和するのに要する時間が漸増する。
【0062】
本発明の方法
本発明は、子宮内膜炎または不妊症を処置するか、および/または妊孕性を改善する方法に関し、医療上有効な量のβ−アドレナリン性アゴニストおよび薬学的に許容される生物的接着性担体を含有する医薬組成物を、その必要とする患者の膣粘膜に局所的に投与することを含む。この方法は、β−アドレナリン性アゴニストの通常予測される有害な血中レベルを生じることなしに、行い得る。
【0063】
上記した生物的接着性ポリマー製剤の膣経路投与は利点を有する。この経路は最初の通過肝代謝を避けることができる。肝代謝は経口投与のβ−アドレナリン性アゴニストで通常著しい。最近、この優越的すなわち FIRST UTERINE PASS EFFECT(商標)を、インビトロ(生体外)ヒト子宮灌流モデルにおける[3H]標識プロゲステロンまたはテルブタミンで確認した。従って、このような製剤の投与により、有害反応を避けるのに十分低い子宮および全身の濃度で、アゴニストの医療上有効な濃度を得る。
【0064】
好ましくは、約0.5から2.5gの本発明組成物を経膣的に投与する。より好ましくは、約1から1.5gの組成物を経膣的に投与する。
【0065】
さらに、本発明で予定しているβ−アドレナリン性アゴニストの量は、好ましくは1mg以下から約8mgであり、より好ましくは約2mgから4mgである。8mgを越える用量は、そのレベルに付随する副作用からして一般的に推奨できない。組成物の投与は好ましくは、12−96時間ごとに1回行う。
【0066】
膣投与において、本発明組成物が少なくとも約24時間から48時間、上皮表面との接着を保持していることが好ましい。組成物が接着を保持しているかどうかを調べるために、膣のpHを測定する。本発明組成物がpHの範囲約2.5から約4.5で緩衝剤として働くので、この範囲でのpH測定、好ましくはpH4.0での測定が本発明組成物の継続的存在を示しているはずである。
【0067】
本明細書に記載のすべての文献および特許を出典明示により本明細書の一部とする。合理的な変更は、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなしに、行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)子宮内膜炎もしくは不妊症の処置または妊孕性の改善を目的とする医療上有効な量のβ−アドレナリン性アゴニスト、および(ii)薬学的に許容される生物的接着性担体を含有する医薬組成物。
【請求項2】
β−アドレナリン性アゴニストがテルブタリンである、請求項1の組成物。
【請求項3】
生物的接着性担体が水不溶性で水膨張性の生物的接着性橋かけポリカルボン酸ポリマーである、請求項2の組成物。
【請求項4】
テルブタリンの濃度が0.1%以下から約0.4%(重量/重量)である、請求項3の組成物。
【請求項5】
ポリマーがポリカルボフィルである、請求項4の組成物。
【請求項6】
子宮内膜炎もしくは不妊症の処置または妊孕性の改善を目的とする医療上有効な量のβ−アドレナリン性アゴニストを(該β−アドレナリン性アゴニストの有害な血中濃度を回避して)含有する医薬組成物。
【請求項7】
β−アドレナリン性アゴニストがテルブタリンであり、組成物が用量約0.5から2.5gで投与されるように(1mg以下から約8mgのテルブタリンが配送される)製剤される、請求項6の組成物。
【請求項8】
組成物が、水不溶性で水膨張性の生物的接着性橋かけポリカルボン酸ポリマーをさらに含む、請求項7の組成物。
【請求項9】
ポリマーがポリカルボフィルである、請求項8の組成物。
【請求項10】
組成物が用量約1.0から1.5gで投与されるように(2mg以下から約4mgのテルブタリンが配送される)製剤される、請求項9の組成物。
【請求項11】
アゴニストが子宮内膜炎の処置のために使用される、請求項5または9の組成物。
【請求項12】
アゴニストが不妊症の処置または妊孕性の改善のために使用される、請求項5または9の組成物。
【請求項13】
子宮内膜炎または不妊症を処置するか、または妊孕性を改善する方法であって、医療上有効な量のβ−アドレナリン性アゴニストおよび薬学的に許容される生物的接着性担体を含有する医薬組成物を、その必要とする患者の膣粘膜に局所的に投与することを含む方法。
【請求項14】
β−アドレナリン性アゴニストがテルブタリンであり、組成物が用量約0.5から2.5gで投与される(1mg以下から約8mgのテルブタリンが配送される)、請求項13の方法。
【請求項15】
組成物が用量約1.0から1.5gで投与される(2mg以下から約4mgのテルブタリンが配送される)、請求項14の方法。
【請求項16】
子宮内膜炎または不妊症を処置するか、または妊孕性を改善する方法であって、医療上有効な量のβ−アドレナリン性アゴニストおよび薬学的に許容される生物的接着性担体を含有する医薬組成物を、(該β−アドレナリン性アゴニストの有害な血中濃度を回避して)その必要とする患者の膣粘膜に局所的に投与することを含む方法。
【請求項17】
β−アドレナリン性アゴニストがテルブタリンである、請求項16の方法。
【請求項18】
生物的接着性担体が水不溶性で水膨張性の生物的接着性橋かけポリカルボン酸ポリマーである、請求項17の方法。
【請求項19】
ポリマーがポリカルボフィルである、請求項18の方法。
【請求項20】
組成物が12から96時間毎に投与される、請求項15または19の方法。
【請求項21】
組成物が毎週2回投与される、請求項15または19の方法。
【請求項22】
組成物が錠剤をさらに含む、請求項15または19の方法。
【請求項23】
子宮内膜炎もしくは不妊症の医療上の処置または妊孕性の改善について膣粘膜への投与のための薬剤の製造におけるβ−アドレナリン性アゴニストおよび薬学的に許容される生物的接着性担体の使用。
【請求項24】
β−アドレナリン性アゴニストがテルブタリンである、請求項23の使用。
【請求項25】
薬剤が、投与毎1mg以下から約8mgのテルブタリンが配送されるように、製剤される、請求項23または24の使用。
【請求項26】
生物的接着性担体が水不溶性で水膨張性の生物的接着性橋かけポリカルボン酸ポリマーである、請求項23−25の使用。
【請求項27】
ポリマーがポリカルボフィルである、請求項26の使用。
【請求項28】
薬剤が錠剤形態で提供される、請求項23−27の使用。

【公開番号】特開2010−18639(P2010−18639A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249023(P2009−249023)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【分割の表示】特願2001−527787(P2001−527787)の分割
【原出願日】平成12年10月4日(2000.10.4)
【出願人】(399055579)コロンビア・ラボラトリーズ・(バミューダ)・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】