説明

子宮内膜症を治療又は防止するためのペプチド

ここでは、ペプチド、前記ペプチドをコードする核酸、前記核酸及びたんぱく質を含む医薬組成物、並びに、前記医薬を用いて対象の子宮内膜症を治療又は防止する方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
権利の申請
本発明は、米国国立保健機関により付与された助成金R01 CA064481による政府支援の下になされた。前記政府は本発明において特定の権利を有する。
【0002】
背景
子宮内膜症は最もよくある婦人科系の異常であり、生殖可能年齢の女性の最高15%が罹患している。それは激しい骨盤の痛み、不妊、月経困難、性交疼痛、並びに、例えば腹腔内の出血、腰痛、便秘及び/又は下痢など、重篤な他の症状を伴う。それは患者の肉体的、精神的及び社会的な完全性にとって大きな脅威である。
【0003】
子宮内膜症は、子宮内膜細胞(通常は子宮の内張りを構成している)が、腹腔などの子宮外の部位に着床して成長することを特徴とする。子宮内膜症の病因及び病理発生は主に不明のままだが、逆行性月経論が、腹腔内に異所性の子宮内膜細胞が存在することを説明するために最も広く受け容れられている。しかしながら、この現象は大半の女性で起きるものであり、したがっていくつか他の因子が、子宮内膜細胞の着床と、その後の子宮内膜病巣の発生を説明するためには、引き合いに出されなくてはならない。子宮内膜症の開始は、複数の基本的な特徴を必要とする複雑な事象のカスケードを意味すると一般に考えられている。逆行的に着床した子宮内膜細胞は生存したままで、中皮に接着し、増殖することができなくてはならない。細胞外マトリックスの局所的な分解や、広汎な血管化も、子宮内膜細胞による体腔の浸潤を促進する上で重要な役割を果たしていると考えられる。更に、いったん着床すると、異所性の子宮内膜細胞は、免疫系の細胞溶解作用への対抗能を持たなくてはならない。実際、これは、子宮内膜症患者においていくつかの免疫異常が観察されることで裏付けられる。
【0004】
現在のところ、外科的な手法(腹腔鏡検査又は開腹術)による子宮内膜病巣の直接的な観察が主要な標準であり、子宮内膜症を診断するために可能な唯一の方法である。しかし、この方法は侵襲性が高く(即ち、麻酔下での手術)、高価であり(即ち、直接的なコストと、回復期のための間接的なコスト)、多様な外観をした子宮内膜症を特定する能力を有した熟練した外科医を要する。病巣の種類、それらの大きさ、及びそれらの位置から、この疾患の病期が決定されるであろう(病期Iは最小、病期Iは軽度、病期IIIは中度、病期IVは重度)。しかし、これらのパラメータがこの疾患の病期や、子宮内膜症の予後にどのように相関するかについては、まだ尚、明確なコンセンサスはない。加えて、初期又は最小の(微小な病巣を引き起こすことがある)子宮内膜症は、直接的な観察では検出される可能性が低いため、外科的方法ではめったに診断されることはない。実際、複数の研究が、腹腔鏡検査では検出されなかった顕微鏡による子宮内膜症病巣を報告している。外科的手法による子宮内膜症の診断は難しく、高価かつ侵襲的なために、場合によっては、医師及び患者のいくらかはそれを避けるか、あるいは少なくともそれを大幅に避ける傾向にある。こうして、症状発症から診断までの時間は、8年から12年という長きにわたることがある。初期で子宮内膜症を診断できれば、治療の効果が確かに向上し、患者が急性又は慢性の疼痛に耐える年数が劇的に減少するであろう。
【0005】
子宮内膜症を治療又は防止する効果的な方法がなく、従って、新しい治療薬が求められている。
【0006】
発明の概要
本開示は、エンドスタチンのN末端がその抗血管新生活性を担っているという驚くべき発見に基づく。これらの発見に基づき、本開示は、(配列番号2又は4の少なくとも約12個のアミノ酸を含むペプチドを特徴とする。他の抗血管新生性ペプチドは、(配列番号2又は4の少なくとも約13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24 又は25個のアミノ酸を含む。ペプチドの例は、(配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124-131から成る群より選択される。
【0007】
更に、薬学的に許容可能な単体と、有効量の、ここで開示されたペプチドとを含む医薬組成物も特徴とする。いくつかの医薬組成物は、更に安定させる又は他の望ましい特徴を提供するなどの第二のペプチドを付加的に含む。他の医薬組成物は有効量の亜鉛を付加的に含む。ここで開示されたペプチドを含むシリンジ及ぶステントなどの器具も解説されている。
【0008】
更に、(配列番号2又は4の少なくとも約12個のアミノ酸を含むペプチドをコードする核酸や、開示された核酸を、有効量のペプチドを対象に発現させるために適したベクタに入れて含む医薬組成物も、開示される。好適な核酸は、(配列番号1、3又は5の少なくとも約36個、54個又は60個のヌクレオチドを含むものである。他の好適な核酸は、(配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121 及び123から成る群より選択される。
【0009】
更に、子宮内膜症を治療又は防止するために開示された治療薬を用いる方法も提供される。
【0010】
開示された抗血管新生性ペプチドの他の特徴及び長所は、以下の詳細な説明及び請求の範囲の理解に基づけば明白であろう。
【0011】
詳細な説明
定義
ここで用いられる場合の以下の用語及び文言は、以下に挙げる意味を有するものとする。他に定義しない限り、ここで用いられる全ての技術用語及び科学用語は、当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。
【0012】
単一形「一つの(原語:“a”)」、「一つの(原語:“an”)」及び「その(原語:"the”)は、文脈からそうでないことが明らかな場合を除き、複数の言及を包含するものである。
【0013】
化合物に言及する場合の用語「生物学的利用能のある」は当業で公知であり、それが投与された対象又は患者に、それ、又は投与された化合物量の一部分が吸収される、取り入れられる、又は生理学的に利用可能であるような化合物の形を言う。
【0014】
ここで用いられる場合の用語「組成物」は、特定の成分を特定の量、含む生成物や、前記特定の成分を特定の量、組み合わせたことで直接又は間接的に生じるいずれかの生成物を包含することが意図されている。
【0015】
「保存的置換」は、広い意味で類似の分子的特性を持つアミノ酸同士の間の変更である。例えば、脂肪族の基であるアラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン間の交換は保存的であるとみなすことができる。時には、これらのうちの一つのグリシンへの置換も保存的とみなされることがある。他の保存的な交換には、脂肪族の基アスパラギン酸及びグルタミン酸間のもの;アミド基アスパラギン及びグルタミン間のもの;水酸基セリン及びスレオニン間のもの;芳香族の基フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン間のもの;塩基性の基リジン、アルギニン及びヒスチジン間のもの;そして含硫基メチオニン及びシステイン間のもの、がある。時にはメチオニン及びロイシン基間の置換も保存的とみなされることがある。好適な保存的置換基はアスパラギン酸-グルタミン酸;アスパラギン−グルタミン;バリン−ロイシン−イソロイシン;アラニン−バリン;フェニルアラニン−チロシン;及びリジン−アルギニン、である。
【0016】
用語「非経口投与」及び「非経口的に投与する」は当業で公知であり、通常は注射による、腸管内及び局所投与以外の投与形態を言い、その中には、限定はしないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、及び胸骨内注射及び輸注がある。
【0017】
本方法により治療しようとする「患者」、「対象」又は「ホスト」は、ヒト又は非ヒト動物のいずれも意味する場合がある。
【0018】
用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸」は交換可能に用いられている。これらは、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドもしくはこれらの類似体のいずれかである、いずれかの長さのポリマ形のヌクレオチドを言う。以下がポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子又は遺伝子断片のコーディング又は非コーディング領域、連鎖解析から規定される遺伝子座(遺伝子座)、エキソン、イントロン、メッセンジャRNA(mRNA)、トランスファRNA、リボゾームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝状ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクタ、いずれかの配列の単離されたDNA、いずれかの配列の単離されたRNA、核酸プローブ、及びプライマ。ポリヌクレオチドは、例えばメチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体など、修飾されたヌクレオチドを含んでもよい。存在する場合のヌクレオチド構造に対する修飾は、当該ポリマの集合の前に付与されたものでも、又は後に付与されたものでもよい。ヌクレオチドの配列は、途中にヌクレオチド以外の成分を持っていてもよい。更にポリヌクレオチドを、標識化成分との結合など、重合後に更に修飾してもよい。用語「組換え」ポリヌクレオチドは、天然では存在しないか、あるいは、別のポリヌクレオチドに非天然の配列で連結されているようなゲノム、cDNA、半合成、又は合成由来のポリヌクレオチドを意味する。「オリゴヌクレオチド」とは、例えば約75、50、25、又は10ヌクレオチド未満など、約100ヌクレオチド未満を有する一本鎖のポリヌクレオチドを言う。
【0019】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「たんぱく質」(一本鎖の場合)はここではアミノ酸のポリマを言うために交換可能に用いられている。該ポリマは直線状でも、又は分枝状でもよく、またそれは修飾されたアミノ酸を含んでいてもよく、そして途中に非アミノ酸を持っていてもよい。この用語は更に、修飾されたアミノ酸ポリマも包含し;例えばジスルフィド結合の形成、糖鎖付加、脂質化、アセチル化、リン酸化、又はいずれか他の操作、例えば標識成分との結合などである。ここで用いられる場合の用語「アミノ酸」とは、グリシンや、D又はL光学異性体の両者、及びアミノ酸類似体及びペプチド・ミメティックを含む、天然及び/又は非天然もしくは合成のアミノ酸のいずれをも言う。
【0020】
用語「パーセント同一」とは、二つのアミノ酸配列間又は二つのヌクレオチド配列間の配列同一性を言う。同一性はそれぞれ、比較を目的としてアライメントしてもよい各配列中のある一つの位置を比較することにより、決定することができる。比較された配列中の同等の位置が同じ塩基又はアミノ酸で占められていれば、その分子はその位置において同一である;同等の部位が同じ又は類似のアミノ酸残基(例えば立体的及び/又は電子的性質)で占められていれば、その分子をその位置において相同(類似)であると言うことができる。相同性、類似性又は同一性のパーセンテージによる表現とは、比較された配列に共通の位置にある同一又は類似のアミノ酸の数の関数を言う。FASTA、BLAST、又はENTREZを含め、多様なアライメント・アルゴリズム及び/又はプログラムを用いてよい。FASTA及びBLASTは、GCG配列解析パッケージ(ウィスコンシン州マジソン、ウィスコンシン大学)の一部として入手可能であり、デフォルトを設定するなどして用いることができる。ENTREZ
は、メリーランド州ベセズダの米国国立保健研究所、ナショナル・ライブラリー・オブ・メディスン、ナショナル・センター・フォー・バイオテクノロジー・インフォメーションを通じて得ることができる。ある実施態様では、二つの配列のパーセント同一性を、各アミノ酸のギャップを、これら二つの配列間の一個のアミノ酸又はヌクレオチドのミス対合であるかのように重みを付けるなど、ギャップ・ウェイトを1にしたGCGプログラムにより決定することができる。アライメントのための他の技術はMethods in Enzymology, vol. 266: Computer Methods for Macromolecular
Sequence Analysis (1996), ed. Doolittle, Academic Press, Inc., a division of
Harcourt Brace & Co., San Diego,
California, USAに解説されている。好ましくは、配列中のギャップを許容するアライメント・プログラムを用いて配列をアライメントするとよい。スミス・ウォーターマンは、配列アライメントにおいてギャップを許容するアルゴリズムの一種である。Meth. Mol. Biol. 70: 173-187 (1997) を参照されたい。更に、ニードルマン及びワンシュ・アライメント法を用いたGAPプログラムを用いて配列をアライメントすることもできる。代替的な検索戦略は、MASPARコンピュータで作動するMPSRCHソフトウェアを用いるものである。MPSRCHはスミス−ウォーターマン・アルゴリズムを用いて配列を大規模並列処理コンピュータで採点する。このアプローチは、関連の遠い対合を拾い出す能力を向上させるものであり、特に小さなギャップや、ヌクレオチド配列の誤差に寛容である。核酸にコードされたアミノ酸配列を用いてたんぱく質及びDNAの両方のデータベースを検索することができる。個々の配列を持つデータベースは上記のMethods in Enzymology, ed. Doolittleに解説されている。データベースにはGenbank、EMBL、及び日本のDNAデータベース(DDBJ)がある。
【0021】
用語「薬学的に許容可能な担体」は当業で公知であり、いずれかの当該組成物又はその成分をある一つの器官又は身体部分から別の器官又は身体部分に運搬又は輸送することに関与する、液体又は固体の充填剤、希釈剤、医薬品添加物、溶媒又は封入剤などの薬学的に許容可能な材料、組成物又は賦形剤を言う。各担体は、当該の組成物及びその成分にとって適合性があり、そして患者にとって有害でないという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容可能な担体として役立つと思われる材料のいくつかの例には:(1)乳糖、ブドウ糖及びショ糖などの糖類;(2)コーンスターチ及びいもでんぷんなどのでんぷん;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバター及び座薬用ろうなどの医薬品添加物;(9)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油などの油類;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチル及びラウリル酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)無発熱源水;(17)等張生理食塩水;(18)リンガー液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;及び(21)医薬の調合に用いられる他の非毒性の適合性物質、がある。
【0022】
用語「予防的」又は「治療的」治療は当業で公知であり、ホストへの薬物の投与を言う。それが望ましくない状態の(例えばホスト動物の疾患又は他の望ましくない状態)臨床上の発現前に投与されるのであれば、その治療は予防的であり、即ちそれはホストが望ましくない状態を発症しないように保護するものであり、他方、望ましくない状態の発現後に投与されるのであれば、その治療は治療的である(即ちそれは既存の望ましくない状態又はそれによる副作用を減らす、軽減する又は維持することを目的としている)。
【0023】
用語「合成の」は当業で公知であり、in vitroでの化学的又は酵素による合成による生成を言う。
【0024】
用語「全身投与」、「全身的に投与する」、「末梢投与」、「末梢的に投与する」は当業で公知であり、当該組成物、治療薬又は他の物質を、それが患者に全身に入って代謝及び他の同様のプロセスを受けるように、中枢神経系に直接投与する以外の投与を言う。
【0025】
用語「治療的作用薬」は当業で公知であり、対象において局所的又は全身的に作用する、生物学的、生理学的、又は薬理学的に活性な物質であるいずれかの化学的成分を言う。従ってこの用語は、動物又はヒトにおける疾患の診断、治癒、軽減、治療又は防止や、あるいは望ましい身体的及び/又は精神的発達及び/又は状態の促進で利用されることを意図したいずれかの物質を意味する。
【0026】
用語「治療効果」は当業で公知であり、薬理学的に活性な物質により引き起こされた、動物、特に哺乳動物、そしてより具体的にはヒトにおける局所効果又は全身効果を言う。文言「治療上有効量」は、いずれかの治療に適用可能な妥当な利益/リスク比で何らかの望ましい局所的又は全身的効果を生じるような、このような物質の量を意味する。このような物質の治療上有効量は、治療しようとする対象及び疾患状態、対象の重量及び年齢、疾患状態の重篤度、投与の態様等、当業者であれば容易に判断できるものに応じて様々であろう。例えば、ここで解説された特定の組成物を、このような治療に適用可能な妥当な利益/リスク比で生じるような充分な量、投与してもよい。
【0027】
用語「治療する」は当業で公知であり、いずれかの状態又は疾患の少なくとも一つの症状の治癒や軽減、又は、状態又は疾患の悪化の防止を言う。
【0028】
用語「ベクタ」とは、連結された先の別の核酸を輸送することのできる核酸を言う。本発明に従って用いてもよいベクタの一種はエピソーム、即ち染色体外複製が可能な核酸である。他のベクタには、それらが連結された先の核酸の自律的複製及び発現が可能なものがある。作動的に連結された先の遺伝子の発現を命令することのできるベクタは、ここでは「発現ベクタ」と呼ばれる。一般的には、組換えDNA技術で実用性のある発現ベクタは、しばしば、それらのベクタ型では染色体に結合していない環状の二本鎖DNA分子を言う「プラスミド」の形である。本明細書においては、プラスミドが最もよく用いられている形のベクタであるため、「プラスミド」及び「ベクタ」が交換可能に用いられている。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たし、そして以下で当業において公知となる他の形の発現ベクタも包含することを意図している。本明細書においては、プラスミドが最もよく用いられている形のベクタであるため、「プラスミド」及び「ベクタ」が交換可能に用いられている。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たし、そして以下で当業において公知となる他の形の発現ベクタも包含することを意図している。
【0029】
組成物の例
ペプチド
ここでは、血管新生を阻害することで腫瘍の成長及び/又は形成を阻害するペプチドが提供される。これらのヒト及びマウスペプチドのアミノ酸配列は、それぞれHSHRDFQPVLHLVALNSPLSGGMRGIR
(配列番号2)及びHTHQDFQPVLHLVALNTPLSGGMRGIR(mP1;(配列番号4)である。(配列番号2は、以下の核酸配列
cacagccaccgcgacttccagccggtgctccacctggttgcgctcaacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatccgc (配列番号1)にコードされている。(配列番号4は以下の核酸配列:
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatccgt
(配列番号3)にコードされている。
【0030】
配列番号1に関係するペプチドも用いてよい。このようなペプチドの一つは、アミノ酸配列HSHRDFQPVLHLVALNSPLSGGMRG (hP1;(配列番号6)を有し、核酸配列:
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggt (配列番号5)にコードされたものである。(配列番号6は(配列番号2中の最もC末端の二つのアミノ酸残基を含有しない。本発明の更なるペプチドは、N又はC末端の一つ以上のアミノ酸を欠くものであろう。例えば、ペプチドは、エンドスタチンたんぱく質の約アミノ酸2、3、4、5、6、7、8、9、又は10で始まるか、あるいは約アミノ酸20、21、22、23、24、25 又は26で終わるアミノ酸配列を含んでいてもよい。例証となるペプチドは、エンドスタチンたんぱく質の約アミノ酸2から27まで;3から27まで又は1から20まで;1から21まで;1から22までを含むものであり、例えば(配列番号2を由来とする以下のペプチド:
SHRDFQPVLHLVALNSPLSGGMRGIR (配列番号8);
RDFQPVLHLVALNSPLSGGMRGIR (配列番号10);
DFQPVLHLVALNSPLSGGMRGIR (配列番号12);
FQPVLHLVALNSPLSGGMRGIR (配列番号14);
FQPVLHLVALNSPLSGGMRGIR (配列番号16);
QPVLHLVALNSPLSGGMRGIR (配列番号18);
PVLHLVALNSPLSGGMRGIR (配列番号20);
VLHLVALNSPLSGGMRGIR (配列番号22);
LHLVALNSPLSGGMRGIR (配列番号24);
HLVALNSPLSGGMRGIR (配列番号26);
VALNSPLSGGMRGIR (配列番号30);
ALNSPLSGGMRGIR
(配列番号32);
LNSPLSGGMRGIR
(配列番号34);
NSPLSGGMRGIR (配列番号36);
HSHRDFQPVLHLVALNSPLSGGMRGI (配列番号38);
HSHRDFQPVLHLVALNSPLSGGMR (配列番号40);
HSHRDFQPVLHLVALNSPLSGGM (配列番号42);
HSHRDFQPVLHLVALNSPLSGG (配列番号44);
HSHRDFQPVLHLVALNSPLSG (配列番号46);
HSHRDFQPVLHLVALNSPLS (配列番号48);
HSHRDFQPVLHLVALNSPL (配列番号50);
HSHRDFQPVLHLVALNSP (配列番号52);
HSHRDFQPVLHLVALNS (配列番号54);
HSHRDFQPVLHLVALN (配列番号56);
HSHRDFQPVLHLVAL (配列番号58);
HSHRDFQPVLHLVA
(配列番号60);
HSHRDFQPVLHLV
(配列番号62);
HSHRDFQPVLHL (配列番号64);
THQDFQPVLHLVALNTPLSGGMRGIR (配列番号66);
HQDFQPVLHLVALNTPLSGGMRGIR (配列番号68);
QDFQPVLHLVALNTPLSGGMRGIR (配列番号70);
DFQPVLHLVALNTPLSGGMRGIR (配列番号72);
FQPVLHLVALNTPLSGGMRGIR (配列番号74);
QPVLHLVALNTPLSGGMRGIR (配列番号76);
PVLHLVALNTPLSGGMRGIR (配列番号78);
VLHLVALNTPLSGGMRGIR (配列番号80);
LHLVALNTPLSGGMRGIR (配列番号82);
HLVALNTPLSGGMRGIR (配列番号84);
LVALNTPLSGGMRGIR (配列番号86);
VALNTPLSGGMRGIR (配列番号88);
ALNTPLSGGMRGIR
(配列番号90);
LNTPLSGGMRGIR
(配列番号92);
NTPLSGGMRGIR (配列番号94);
HTHQDFQPVLHLVALNTPLSGGMRGI (配列番号96);
HTHQDFQPVLHLVALNTPLSGGMRG (配列番号98);
HTHQDFQPVLHLVALNTPLSGGMR (配列番号100);
HTHQDFQPVLHLVALNTPLSGGM (配列番号102);
HTHQDFQPVLHLVALNTPLSGG (配列番号104);
HTHQDFQPVLHLVALNTPLSG (配列番号106);
HTHQDFQPVLHLVALNTPLS (mP1-20; (配列番号108);
HTHQDFQPVLHLVALNTPL (配列番号110);
HTHQDFQPVLHLVALNTP (配列番号112);
HTHQDFQPVLHLVALNT (配列番号114);
HTHQDFQPVLHLVALN (配列番号116);
HTHQDFQPVLHLVAL (mP1-15;(配列番号118);
HTHQDFQPVLHLVA
(配列番号120);
HTHQDFQPVLHLV
(配列番号122);
HTHQDFQPVLHL
(配列番号124);
HSHRDFVALNSPLSGGMRGIR (配列番号125);
HSHRDFQPVLHLLSGGMRGIR
(配列番号126);
QPVLHLVALNTPLSGGMRGIR
(配列番号127);
HTHQDFVALNTPLSGGMRGIR (配列番号128);及び
HTHQDFQPVLHLLSGGMRGIR (配列番号129)であろう。
【0031】
以下の縮重配列に入るアミノ酸配列を有するペプチドを用いることができる:HXaaHXaaDFQPVLHLVALNXaaPLSGGMRGIR (配列番号130)及びHXaaHXaaDFQPVLHLVALNXaaPLSG
(配列番号131)、但し式中、Xaa はいずれかのアミノ酸である。
【0032】
好適なペプチドはHis 1 及び3を含むものである。他の好適なペプチドはHis 1、3及び11を含むものである。ペプチドはZn2+に連結していてもよい(下記を参照されたい)。
【0033】
更にペプチドは、ここで解説されたアミノ酸配列のいずれかを含む、から成る、又は基本的に成るものでもよい。更に他のペプチドは、N末端エンドスタチン・ペプチドに対して少なくとも約70%、80%、90%、95%、98%又は99%の同一性を含む、から成る、又は基本的に成るものである。例えば、天然で生じるエンドスタチンたんぱく質の配列に約1個、2個、3個、4個、5個又はそれ以上のアミノ酸で異なるようなペプチドも考察される。その違いは、保存的置換などの置換、欠失又は追加であってもよい。その違いは、好ましくは、異なる種間で大きく保存されていない領域にあるとよい。このような領域は、多様な動物種を由来とするエンドスタチンたんぱく質のアミノ酸配列をアライメントすることにより、特定することができる。例えば、エンドスタチンたんぱく質のアミノ酸2、4、及び17、又は、配列番号2、4、又は6を有するペプチドや、配列番号8、10、12、30、32、又は34などの中の強調されたアミノ酸は、ヒト及びマウス間で異なるため、置換することができる。これらのアミノ酸は、例えば別の種で見られるものなどに置換することができる。アミノ酸9も、ガルス−ガルス(原語:Gallus
gallus)種では異なるため、置換することができる。これら又は他の位置で置換、挿入又は欠失してもよい他のアミノ酸は、生物学的検定法と組み合わせた変異誘発研究により、特定することができる。好ましくは、位置、1、3及び選択的に11にあるヒスチジンを置換するとよい。
【0034】
更にここでは、例えば当該エンドスタチン・ペプチドを検出;精製;安定化;又は可溶化させるために用いることのできるペプチドなど、異種のペプチドに融合させた抗子宮内膜症ペプチドも包含される。
【0035】
ペプチドを、免疫グロブリン(Ig)定常重鎖又は軽鎖ドメイン又はその一部分に連結してもよい。例えば、ペプチドを、重鎖のCH1、CH2及び/又はCH3ドメインに連結してもよい。該定常領域が軽鎖由来である場合、それはカッパ又はラムダ軽鎖由来でもよい。、該定常領域が重鎖由来である場合、それは以下のクラスの抗体のいずれの一つの抗体由来であってもよい: IgG、IgA、IgE、IgD、及びIgM。IgGは IgG1、IgG2、IgG3 又はIgG4であってもよい。該定常ドメインはFcフラグメントであってもよい。該定常ドメインは、ヒト抗体など、哺乳動物の抗体由来であってもよい。可溶性の受容体-IgG融合たんぱく質はよくある免疫試薬であり、それらの構築法は当業で公知である(例えば米国特許第5,225,538号、第5,726,044号;第5,707,632号;第750,375号、第5,925,351号、第6,406,697号及び Bergers et al. Science 1999 284: 808-12を参照されたい)。免疫グロブリンとして好適なのは、二つの重鎖間の二量体化がヒンジ領域で起きる、ヒトIgGの重鎖の定常部分、特にIgG1である。Fc領域のCH2及びCH3ドメインを、融合ポリペプチドの一部分として含めると、このFc領域を含むポリペプチドの、そしてこのポリペプチドを含むオリゴマ及び二量体の、in vivo循環中半減期が増すことが認識されている。
【0036】
ヒンジ領域を含むヒトIgG1のFc部分、並びにドメインCH2及びCH3は、アミノ酸配列:Glu Pro
Lys Ser Cys Asp Lys Thr His Thr Cys Pro Pro Cys Pro Ala Pro Glu Leu Leu Gly Gly
Pro Ser Val Phe Leu Phe Pro Pro Lys Pro Lys Asp Thr Leu Met Ile Ser Arg Thr Pro
Glu Val Thr Cys Val Val Val Asp Val Ser His Glu Asp Pro Glu Val Lys Phe Asn Trp
Tyr Val Asp Gly Val Glu Val His Asn Ala Lys Thr Lys Pro Arg Glu Glu Gln Tyr Asn
Ser Thr Tyr Arg Val Val Ser Val Leu Thr Val Leu His Gln Asp Trp Leu Asn Gly Lys
Glu Tyr Lys Cys Lys Val Ser Asn Lys Ala Leu Pro Ala Pro Ile Glu Lys Thr Ile Ser
Lys Ala Lys Gly Gln Pro Arg Glu Pro Gln Val Tyr Thr Leu Pro Pro Ser Arg Asp Glu
Leu Thr Lys Asn Gln Val Ser Leu Thr Cys Leu Val Lys Gly Phe Tyr Pro Ser Asp Ile
Ala Val Glu Trp Glu Ser Asn Gly Gln Pro Glu Asn Asn Tyr Lys Thr Thr Pro Pro Val
Leu Asp Ser Asp Gly Ser Phe Phe Leu Tyr Ser Lys Leu Thr Val Asp Lys Ser Arg Trp
Gln Gln Gly Asn Val Phe Ser Cys Ser Val Met His Glu Ala Leu His Asn His Tyr Thr
Gln Lys Ser Leu Ser Leu Ser Pro Gly Lys (配列番号133)を有するペプチドをコードするヌクレオチド配列
5’ gag ccc aaa tct tgt gac aaa act cac aca tgc cca ccg tgc cca gca cct gaa ctc
ctg ggg gga ccg tca gtc ttc ctc ttc ccc cca aaa ccc aag gac acc ctc atg atc tcc
cgg acc cct gag gtc aca tgc gtg gtg gtg gac gtg agc cac gaa gac cct gag gtc aag
ttc aac tgg tac gtg gac ggc gtg gag gtg cat aat gcc aag aca aag ccg cgg gag gag
cag tac aac agc acg tac cgt gtg gtc agc gtc ctc acc gtc ctg cac cag gac tgg ctg
aat ggc aag gag tac aag tgc aag gtc tcc aac aaa gcc ctc cca gcc ccc atc gag aaa
acc atc tcc aaa gcc aaa ggg cag ccc cga gaa cca cag gtg tac acc ctg ccc cca tcc
cgg gat gag ctg acc aag aac cag gtc agc ctg acc tgc ctg gtc aaa ggc ttc tat ccc
agc gac atc gcc gtg gag tgg gag agc aat ggg cag ccg gag aac aac tac aag acc acg
cct ccc gtg ctg gac tcc gac ggc tcc ttc ttc ctc tac agc aag ctc acc gtg gac aag
agc agg tgg cag cag ggg aac gtc ttc tca tgc tcc gtg atg cat gag gct ctg cac aac
cac tac acg cag aag agc ctc tcc ctg tct ccg ggt aaa tga 3’ を有する。
【0037】
定常Igドメインは、更に、例えばFc受容体への結合及び補体活性化など、一つ以上のエフェクタ機能を減じる又は消失させる一つ以上の変異を含有していてもよい(例えばS. Morrison, Annu. Rev. Immunol., 10, pp. 239-65 (1992); Duncan and
Winter (1988) Nature 332: 738-740; and Xu et al. (1994) J Biol. Chem. 269:
3469-3474を参照されたい)。例えば、ヒトIgG1のLeu 235 及びPro 331に相当するアミノ酸をそれぞれ
Glu 及び Serに代える置換が提供される。このようなコンストラクトは、更に、米国特許第 6,656,728号に解説されている。
【0038】
定常IgドメインをペプチドのN末端又はC末端に連結してもよい。
【0039】
更に当該ペプチドを、例えば当該のペプチドの免疫グロブリン・ドメインとの間など、トロンビン分解部位を持つリンカ配列に連結してもよい。このような部位をコードするヌクレオチド配列の一例は、アミノ酸配列:Ser Arg Gly Gly Leu Val Pro Arg Gly Ser Gly Ser Pro Gly Leu Gln (配列番号135)をコードする、以下のヌクレオチド配列:5’ tct aga ggt ggt cta gtg
ccg cgc ggc agc ggt tcc ccc ggg ttg cag 3’ (配列番号: 134)を有する。
【0040】
ペプチドをシグナル配列に融合させてもよい。例えば組換えにより調製する場合、当該ペプチドをコードする核酸を、その5'末端でシグナル配列に連結して、このペプチドが細胞から分泌されるようにしてもよい。
【0041】
ペプチドを実質的に純粋な製剤として用いてもよく、例えば、製剤中のペプチドの少なくとも約90%が所望のペプチドであるなどである。少なくとも約50%、60%、70%、又は80%の所望のペプチドを含む組成物を用いてもよい。
【0042】
ペプチドを変性させても、又は変性させなくてもよく、また、その結果凝集させても、又は凝集させなくてもよい。ペプチドは、当業で公知の方法に従って変性させることができる。
【0043】
ペプチドを亜鉛に結合させてもよい。このように、例えばペプチドの大半が一つ以上のZn2+分子に結合するのに充分な量など、ペプチドをZn2+を含む組成物にしてもよい。Zn2+のペプチドへの結合は、以下の検定により実証することができる。亜鉛及びペプチド溶液を混合し、選択的に一緒にインキュベートし、その後透析して、当該ペプチドに結合していない亜鉛を取り除く。次に、ペプチド溶液中の亜鉛の検出を、原子吸光により行うことができる。
【0044】
ここで包含される更に他のペプチドは、修飾されたアミノ酸を含むものである。ペプチドの例は、糖鎖付加、ペグ化、リン酸化、又は、由来のもととなったペプチドの少なくとも一つの生物学的機能を保持するいずれかの類似のプロセスにより修飾されたものでもよい誘導体ペプチドである。
【0045】
更にペプチドは、一つ以上の非天然で生じるアミノ酸を含んでいてもよい。例えば、非古典的なアミノ酸又は化学的アミノ酸類似体を、ペプチドの置換又は追加として導入することができる。非古典的なアミノ酸には、限定はしないが、通常のアミノ酸のD型異性体、2,4-ジアミノ酪酸、アルファ−アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、ガンマ-Abu、イプシロン−Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ベータ−アラニン、フルオロ−アミノ酸、ベータ−メチルアミノ酸、Calpha−メチルアミノ酸、Nalpha−メチルアミノ酸などのデザイナアミノ酸、及び一般的なアミノ酸類似体、がある。更に、アミノ酸は
D (右旋)でも、又はL(左旋)でもよい。
【0046】
他の具体的な実施態様では、ここで挙げたペプチドの分枝状の形も、例えば当該配列内の一つ以上のアミノ酸を、一つ以上のアミノ酸とペプチド結合を形成することのできる(こうして「分枝」を形成することのできる)遊離側鎖を持つ一個のアミノ酸又はアミノ酸類似体と置換するなどにより、提供される。環状のペプチドも考察されている。
【0047】
更に、例えばベンジル化、糖鎖付加、アセチル化、リン酸化、アミド化、ペグ化、公知の保護/遮断基による誘導体化、たんぱく質分解による切断、抗体分子又は他の細胞リガンドへの連結等により、合成中又は合成後に示差的に修飾されたペプチド誘導体も含まれる。具体的な実施態様では、当該のペプチドを、N末端でアセチル化及び/又はC末端でアミド化する。
【0048】
更に、例えば化学修飾されたペプチド及びペプチド・ミメティックなど、エンドスタチン・ペプチドの誘導体も提供される。ペプチド・ミメティックは、ペプチド及びたんぱく質に基づく、又は由来とする化合物である。ペプチド・ミメティックは、非天然のアミノ酸、コンホメーション拘束、等配電子置換等を用いた公知のペプチド配列の構造修飾により、得ることができる。当該のペプチド・ミメティックは、ペプチドと非ペプチド合成構造との間の構造空間の連続体を構成する;従って、ペプチド・ミメティックは、ファーマコフォアの輪郭を描き出したり、ペプチドを、親ペプチドの活性を持つ非ペプチド化合物に翻訳する手助けをしたりする上で有用であろう。
【0049】
更に、当該ペプチドのミメトープを提供することができる。このようなペプチド・ミメティックには、例えば加水分解不能である(例えば相当するペプチドを分解するようなプロテアーゼ又は他の生理条件に対して安定性が高いなど)、特異性が高い、及び/又は、細胞分化を刺激する効力が高いなどの属性を有させることができる。描写を目的とすると、ペプチド類似体は、例えばベンゾジアゼピン(例えばFreidinger et al. in Peptides: Chemistry and Biology, G.R. Marshall
ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands, 1988を参照されたい)、置換ガンマ・ラクタム環(Garvey et al. in Peptides:
Chemistry and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden,
Netherlands, 1988, p123)、 C-7 ミミック(Huffman et al. in Peptides: Chemistry and Biologyy, G.R. Marshall ed., ESCOM
Publisher: Leiden, Netherlands, 1988, p. 105)、ケト−メチレン・シュードペプチド(Ewenson et al. (1986) J Med
Chem 29:295; 及び Ewenson et
al. in Peptides: Structure and Function (Proceedings
of the 9th American Peptide Symposium) Pierce Chemical Co. Rockland, IL, 1985)、β−ターン・ジペプチド・コア(Nagai et al. (1985) Tetrahedron Lett 26:647; and Sato et al.
(1986) J Chem Soc Perkin Trans 1:1231)、β-アミノアルコール(Gordon et al. (1985) Biochem
Biophys Res Commun126:419; 及び Dann et al. (1986) Biochem
Biophys Res Commun 134:71)、ジアミノケトン(Natarajan et al. (1984) Biochem
Biophys Res Commun 124:141)、及びメチレンアミノ修飾された(Roark et al. in Peptides:
Chemistry and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden,
Netherlands, 1988, p134)などを用いて作製することができる。更に、概略的には、Session III: Analytic and synthetic methods, in in Peptides: Chemistry and Biology, G.R. Marshall ed., ESCOM Publisher: Leiden, Netherlands,
1988)を参照されたい。
【0050】
ペプチド・ミメティックを作製するために行うことのできる多種の側鎖置換に加え、本明細書では、ペプチド二次構造のコンホメーション上で拘束されたミミックの使用を具体的に考察する。数多くのサロゲートがペプチドのアミド結合の代わりに開発されてきた。アミド結合の代わりに頻繁に利用されるサロゲートには、以下の基(i)trans-オレフィン、(ii)フルオロアルケン、(iii)メチレンアミノ、(iv)ホスホンアミド、及び(v)スルホンアミドがある。
【0051】
【化1】

【0052】
加えて、ペプチドの骨格のより実質的な修飾に基づくペプチド・ミメティックを用いることができる。この分類に入るペプチド・ミメティックには、(i)レトロ−インベルソ類似体、及び(ii)N−アルキルグリシン類似体(所謂ペプトイド)がある。
【0053】
【化2】

【0054】
更に、コンビナトリアル化学法が、新しいペプチド・ミメティックの開発に集中しつつある。例えば、ある実施態様の所謂「ペプチド・モーフィング」戦略は、幅広いペプチド結合置換基を含むペプチド類似体のライブラリのランダムな作製に焦点を当てたものである。
【0055】
【化3】

【0056】
ある例示的な実施態様では、該ペプチド・ミメティックを当該ペプチドのレトロ−インベルソ類似体として得ることができる。このようなレトロ−インベルソ類似体は、Sisto らの米国特許第4,522,752号に解説されたものなど、当業で公知の方法に従って作製することができる。レトロ−インベルソ類似体は、例えばWO 00/01720などに解説されたように作製することができる。通常のペプチド結合をいくつか含むなど、混合したペプチドも作製できることは理解されよう。一般的な指針として、典型的には、たんぱく質分解を最も起こし易い部位を、ミメティック変換について選択的である、より起こし難いアミド結合に変更する。最終的な生成物、又はその中間体はHPLCにより精製することができる。
【0057】
ペプチドには、少なくとも一つのアミノ酸又は全てのアミノ酸がD型立体異性体になった状態で含まれていてよい。他のペプチドは、反転した少なくとも一つのアミノ酸を含むものであろう。この反転したアミノ酸はD型立体異性体であってもよい。ペプチドの全てのアミノ酸が反転していても、及び/又は、全てのアミノ酸がD型立体異性体であってもよい。
【0058】
別の例示的な実施態様では、ペプチド・ミメティックをペプチドのレトロ−エナンチオ類似体として得ることができる。これなどのレトロ−エナンチオ類似体は、市販のD型アミノ酸(又はその類似体)と、WO 00/01720などに解説された標準的な固相又は液相ペプチド合成技術とにより、合成することができる。最終的な生成物をHPLCで精製して、純粋なレトロ−エナンチオ類似体を得てもよい。
【0059】
更に別の例示的な実施態様では、trans-オレフィン誘導体を当該のペプチドの代わりに作製することができる。trans-オレフィン類似体は、Y.K.
Shue et al. (1987) Tetrahedron Letters
28:3225 の方法に従って、そしてWO 00/01720に解説されたように、合成することができる。更に、上記の方法により合成されたシュードジペプチドを他のシュードジペプチドに結び付けて、アミド官能基の代わりにいくつかのオレフィン官能基を持つペプチド類似体を作製することもできる。
【0060】
更に別のクラスのペプチド・ミメティック誘導体には、ホスホネート誘導体がある。このようなホスホネート誘導体の合成は、公知の合成スキームから適合させることができる。例えばLoots et al. in Peptides:
Chemistry and Biology, (Escom Science Publishers, Leiden, 1988, p. 118);
Petrillo et al. in Peptides: Structure
and Function (Proceedings of the 9th American Peptide Symposium, Pierce
Chemical Co. Rockland, IL, 1985)を参照されたい。
【0061】
数多くの他のペプチド・ミメティック構造が当業で公知であり、当該のペプチド・ミメティックで用いるために容易に適合させることができる。実例を挙げると、ペプチド・ミメティックには、1-アザビシクロ[4.3.0]ノナン・サロゲート(Kim et al.
(1997) J. Org. Chem. 62:2847を参照されたい)を、又はN−アシルピペラジック(原語:piperazic)酸(Xi et al. (1998) J. Am. Chem. Soc. 120:80を参照されたい)を、あるいは2-置換ピペラジン部分を拘束されたアミノ酸類似体として(Williams et al.
(1996) J. Med. Chem. 39:1345-1348を参照されたい)、取り入れてよい。更に他の実施態様では、いくつかのアミノ酸残基を、例えば単環式又は二環式の芳香族又はヘテロ芳香族の核、あるいは、二芳香族、芳香族−へテロ芳香族、又は二ヘテロ芳香族の核など、アリール及びビアリール部分に置換することができる。
【0062】
当該のペプチド・ミメティックを、例えば高スループット・スクリーニングと組み合わせたコンビナトリアル合成技術などにより、最適化することができる。
【0063】
更に、ミメトープの他の例には、限定はしないが、たんぱく質ベースの化合物、糖質ベースの化合物、脂質ベースの化合物、核酸ベースの化合物、天然有機化合物、合成由来の有機化合物、抗イディオタイプ抗体及び/又は触媒性抗体、又はその断片がある。ミメトープは、例えば天然及び合成化合物のライブラリを、血管新生及び/又は腫瘍成長を阻害することのできる化合物を探してスクリーニングするなどにより、得ることができる。更にミメトープは、例えば天然及び合成化合物のライブラリ、特に化学的又はコンビナトリアル・ライブラリ(即ち、配列又は大きさでは異なるが、同じビルディング・ブロックを有する化合物のライブラリ)などからも得ることができる。またミメトープは、合理的な薬物デザインなどでも得ることができる。合理的な薬物デザイン法においては、本発明の化合物の三次元構造を、例えば核磁気共鳴法(NMR)又はX線結晶学などで解析することができる。こうしてこの三次元構造を用いて、コンピュータ・モデリングなどにより潜在的なミメトープの構造を予測することができる。予測されたミメトープ構造を、次に、例えば化学合成、組換えDNA技術によって、あるいは、天然源(例えば植物、動物、細菌及びカビ)からミメトープを単離することによっても、生じさせることができる。
【0064】
「ペプチド、そのバリアント及び誘導体」又は「ペプチド及びその類似体」は「ペプチド治療薬」に含まれ、当該のペプチドや、又は、ペプチド・ミメティックなどのその修飾型のいずれも含まれることが意図されている。好適なペプチド治療薬は抗血管新生活性を有するものである。例えば、それらはここで解説された検定などで判定したときに、少なくとも約50%、2分の1、5分の1、10分の1、30分の1又は100分の1の因数で、血管新生を減じるか、又は阻害できよう。
【0065】
核酸
更に、上記のペプチドをコードする核酸も開示される。好適な核酸は以下の通りである:
cacagccaccgcgacttccagccggtgctccacctggttgcgctcaacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatccgc (配列番号1);
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatccgt
(配列番号3);
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggt
(配列番号5);
agccaccgcgacttccagccggtgctccacctggttgcgctcaacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatccgc
(配列番号7);
caccgcgacttccagccggtgctccacctggttgcgctcaacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatccgc(配列番号9);
cgcgacttccagccggtgctccacctggttgcgctcaacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatccgc
(配列番号11);
gacttccagccggtgctccacctggttgcgctcaacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatccgc
(配列番号13);
ttccagccggtgctccacctggttgcgctcaacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatccgc
(配列番号15);
cagccggtgctccacctggttgcgctcaacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatccgc
(配列番号17);
ccggtgctccacctggttgcgctcaacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatccgc
(配列番号19);
gtgctccacctggttgcgctcaacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatccgc
(配列番号21);
ctccacctggttgcgctcaacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatccgc
(配列番号23);
cacctggttgcgctcaacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatccgc
(配列番号25);
ctggttgcgctcaacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatccgc
(配列番号27);
gttgcgctcaacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatccgc
(配列番号29);
gcgctcaacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatccgc
(配列番号31);
ctcaacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatccgc
(配列番号33);
aacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatccgc
(配列番号35);
cacagccaccgcgacttccagccggtgctccacctggttgcgctcaacagccccctgtcaggcggcatgcggggcatc
(配列番号37);
cacagccaccgcgacttccagccggtgctccacctggttgcgctcaacagccccctgtcaggcggcatgcgg
(配列番号39);
cacagccaccgcgacttccagccggtgctccacctggttgcgctcaacagccccctgtcaggcggcatg
(配列番号41);
cacagccaccgcgacttccagccggtgctccacctggttgcgctcaacagccccctgtcaggcggc
(配列番号43);
cacagccaccgcgacttccagccggtgctccacctggttgcgctcaacagccccctgtcaggc
(配列番号45);
cacagccaccgcgacttccagccggtgctccacctggttgcgctcaacagccccctgtca
(配列番号47);
cacagccaccgcgacttccagccggtgctccacctggttgcgctcaacagccccctg
(配列番号49);
cacagccaccgcgacttccagccggtgctccacctggttgcgctcaacagcccc
(配列番号51);
cacagccaccgcgacttccagccggtgctccacctggttgcgctcaacagc
(配列番号53);
cacagccaccgcgacttccagccggtgctccacctggttgcgctcaac
(配列番号55);
cacagccaccgcgacttccagccggtgctccacctggttgcgctc
(配列番号57);
cacagccaccgcgacttccagccggtgctccacctggttgcg
(配列番号59);
cacagccaccgcgacttccagccggtgctccacctggtt
(配列番号61);
cacagccaccgcgacttccagccggtgctccacctg
(配列番号63);
actcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatccgt
(配列番号65);
catcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatccgt
(配列番号67);
caggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatccgt
(配列番号69);
gactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatccgt
(配列番号71);
tttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatccgt
(配列番号73);
cagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatccgt
(配列番号75);
ccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatccgt
(配列番号77);
gtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatccgt
(配列番号79);
ctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatccgt
(配列番号81);
cacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatccgt
(配列番号83);
ctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatccgt
(配列番号85);
gtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatccgt
(配列番号87);
gcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatccgt
(配列番号89);
ctgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatccgt
(配列番号91);
aacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatccgt
(配列番号93);
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggtatc
(配列番号95);
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgtggt
(配列番号97);
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatgcgt
(配列番号99);
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggcatg
(配列番号101);
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctggaggc
(配列番号103);
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtctgga
(配列番号105);
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctgtct
(配列番号107);
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacccccctg
(配列番号109);
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacaccccc
(配列番号111);
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaacacc
(配列番号113);
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactgaac
(配列番号115);
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggcactg
(配列番号117);
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtggca
(配列番号119);
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctggtg
(配列番号121);及び
catactcatcaggactttcagccagtgctccacctg
(配列番号123)。
【0066】
核酸には、ウィルスベクタなどのペプチドを産生させるために発現ベクタなど、ベクタが含まれる。更に、ここで解説されたペプチドをコードする核酸を含む細胞や、これらの細胞を培養してペプチド産生させるステップを含む、ペプチドを生成する方法もここに包含される。これらの方法は、対象の細胞内など、細胞内で組換えペプチドを作製するため、あるいは、ペプチドを発現させるために、用いることができる。
【0067】
適したベクタを、感染、形質導入、トランスフェクション、トランスベクション、エレクトロポレーション及び形質転換など、公知の技術を用いてホスト細胞内に導入できよう。ベクタは、例えばファージ、プラスミド、ウィルス又はレトロウィルスベクタなどであってよい。レトロウィルスベクタは複製コンピテントでも、又は複製欠陥であってもよい。後者の場合、ウィルスの増殖は、一般的には、補償的なホスト細胞内でのみ起きるであろう。
【0068】
ベクタは、ホスト内での増殖に関する選択マーカを含有していてもよい。一般的には、プラスミドベクタを、リン酸カルシウム沈殿物などの沈殿物に入れて、又は、荷電した脂質との複合体として、導入する。ベクタがウィルスである場合、適したパッケージング細胞株を用いてそれをin vitroで梱包した後、ホスト細胞内に形質導入してもよい。
【0069】
好適なベクタは、当該のポリヌクレオチドに対するcis作用性制御領域を含むものである。適したtrans作用性因子は、ホストに提供させても、補償性のベクタに提供させても、又は、ホスト細胞内への導入時にベクタ自体に提供させてもよい。
【0070】
いくつかの実施態様では、ベクタが特異的発現に役立ち、該特異的発現は誘導性及び/又は細胞種特異的であってよい。このようなベクタの中で特に好適なのは、温度及び栄養添加物など、操作が容易な環境因子により誘導可能なものである。
【0071】
本発明において有用な発現ベクタには、染色体−、エピソーム−、及びウィルス由来ベクタ、例えば細菌性プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体因子、バキュロウィルス、パポバウィルス、ワクシニアウィルス、アデノウィルス、ニワトリ痘瘡ウィルス、偽狂犬病ウィルス及びレトロウィルスなどのウィルスや、コスミド及びファージミドなど、これらの組合せを由来とするベクタがある。
【0072】
DNAインサートは適したプロモータ、例えばファージ・ラムダPLプロモータ、E. coli lac、trp及びtacプロモータ、SV40初期及び後期プロモータ、並びにレトロウィルスLTRのプロモータなど、に作動的に連鎖させなくてはならない。他の適したプロモータは当業者には公知であろう。当該の発現コンストラクトは、更に、転写開始、終了のための部位、そして転写領域には、翻訳のためのリボゾーム結合部位を含有するであろう。このコンストラクトにより発現する成熟転写産物のコーディング部分は、好ましくは、始まりには翻訳開始部位を、そして翻訳しようとするポリペプチドの末尾に適切に配置された終了コドン(UAA、UGA 又は UAG)を、含有するとよいであろう。
【0073】
提示したように、当該の発現ベクタは、好ましくは、少なくとも一つの選択マーカを含むとよいであろう。このようなマーカには、真核細胞培養株の場合にはジヒドロ葉酸レダクターゼ又はネオマイシン耐性遺伝子、そしてE. coli及び他の細菌で培養する場合にはテトラサイクリン、カナマイシン、又はアンピシリン耐性遺伝子、がある。適したホストの代表的な例には、限定はしないが、E. coli、ストレプトミセス(原語:Streptomyces )及びサルモネラ−チフィムリウム(原語:Salmonella typhimurium )細胞などの細菌細胞;酵母細胞などの真菌細胞;ドウロソフィラS2及びSf9細胞などの昆虫細胞;CHO、COS 及びBowes 黒色腫細胞などの動物細胞;及び植物細胞がある。上記のホスト細胞にとって適した培養基及び条件は当業で公知である。
【0074】
細菌で用いるために好適なベクタの中には、キアジェン社から入手可能なpQE70、pQE60 及びpQE9、pQE10;ストラタジーン社から入手可能なpBS
ベクタ、Phagescript ベクタ、Bluescriptベクタ、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A;ノヴァジェン社から入手可能な
pET シリーズのベクタ;及びファルマシア社から入手可能なptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5がある。好適な真核性ベクタの中には、ストラタジーン社から入手可能なpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1 及びpSG;及びファルマシア社から入手可能なpSVK3、pBPV、pMSG 及び pSVLがある。他の適したベクタは当業者には容易に明白であろう。
【0075】
本発明に用いるために適した公知の細菌性プロモータの中には、E. coli lacI 及びlacZ プロモータ、T3、T5 及び T7プロモータ、gpt プロモータ、ラムダPR 及びPLプロモータ、trp プロモータ及びxyI/tet キメラ・プロモータがある。適した真核性プロモータには、CMV 最初期プロモータ; HSVチミジンキナーゼプロモータ;初期及び後期SV40プロモータ、レトロウィルスLTRのプロモータ、例えばラウス肉腫ウィルス(RSV)のものなど、及びマウスメタロチオネイン-Iプロモータなどのメタロチオネインプロモータ、がある。
【0076】
コンストラクトのホスト細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、陽イオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染及び他の方法により、行うことができる。このような方法は、数多くの標準的な研究室用手引き(例えばDavis, et
al., Basic Methods In Molecular Biology (1986))で解説されている。
【0077】
本発明のポリヌクレオチドをコードするDNAの高等真核生物による転写を、エンハンサ配列をベクタに挿入することにより、高めてもよい。エンハンサは、ホスト細胞種内でプロモータの転写活性を増加させる働きをする、通常は約10乃至300ヌクレオチドのcis作用性のDNA因子である。エンハンサの例には、複製開始点の後ろ側のヌクレオチド100から270に位置する SV40エンハンサ、サイトメガロウィルス初期プロモータエンハンサ、複製開始点の後ろ側のポリオーマエンハンサ、及びアデノウィルスエンハンサがある。
【0078】
本発明のポリペプチドの組換え可溶型を、例えばこのたんぱく質が細胞膜へ局在化できないように、膜内外ドメインの少なくとも一部分を欠失させるなどにより、作製してもよい。更に、スプライス・バリアントをコードする核酸や、又は、転写がイントロン内の部位から開始されたものなど、選択的な転写開始部位から合成された転写産物を表す核酸も、本発明の範囲内にある。このような相同体は、当業で公知の標準的な方法を用いたハイブリダイゼーション又はPCRにより、クローニングすることができる。
【0079】
ポリヌクレオチド配列には、天然のリーダ配列又は異種のリーダ配列など、リーダ配列もコードさせてよい。選択的には、天然のリーダ配列を欠失させ、異種のリーダ配列がその代わりに挿入されるように、核酸を操作することができる。用語「リーダ配列」はここでは用語「シグナル・ペプチド」と交換可能に用いられている。例えば、所望のDNA配列を、当該ペプチドのホスト細胞からの発現及び分泌に役立つようなDNA配列、例えば細胞からの当該ポリペプチドの輸送を制御する分泌配列として働くリーダ配列など、に同じ読み枠内で融合させてもよい。リーダ配列を有するたんぱく質はプレたんぱく質であり、このリーダ配列をホスト細胞に切断させることで、成熟型のたんぱく質が形成されるであろう。
【0080】
翻訳後のポリペプチドを、小胞体のルーメン内に、ペリプラスム間隙内に、又は、細胞外環境に分泌させるために、適した分泌シグナル、例えばアミノ酸配列KDELなどを発現後のポリペプチドに取り入れてもよい。シグナルは当該のポリペプチドにとって内因性でも、又はこれらは異種のシグナルであってもよい。
【0081】
当該のポリペプチドを融合たんぱく質などの修飾された形で発現させてもよく、そして、分泌シグナルだけでなく、付加的な異種の機能領域を含めてもよい。例えば、付加的なアミノ酸、特に荷電したアミノ酸の領域を当該のポリペプチドのN末端又はC末端に追加して、精製中、又は、その後の操作及び保管中のホスト細胞中での安定性及び持続性を高めてもよい。更に、精製を容易にするためにペプチド部分を当該ポリペプチドに追加してもよい。このような領域を、当該ポリペプチドの最終的な調製前に除去してもよい。中でも、分泌又は排出をもたらし、安定性を高め、そして精製を容易にするために、ペプチド部分をポリペプチドへ追加することは、当業において公知であり、慣例的な技術である。このような融合たんぱく質の一例は、たんぱく質を可溶化するために有用な、免疫グロブリン由来の異種領域を含むものであろう。
【0082】
子宮内膜症を治療又は防止するための治療的組成物及び方
ペプチドを医薬組成物に入れて提供し、対象の子宮内膜症の発症を治療する又は防止するために対象に投与してよい。
【0083】
適した対象は、ヒト、ヒト以外の霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ヒツジ、マウス及びラットなど哺乳動物であろう。適した治療薬は、「子宮内膜症阻害量」、即ち、子宮内膜症病巣の発症又は成長を阻害又は低下させるために治療上有効なペプチド量、にして、対象に投与することができる。本治療薬を、標準的な製薬上の慣例に従い、単独で、あるいは、薬学的に許容可能な担体、医薬品添加物又は希釈剤を組み合わせた医薬組成物にして、投与してもよい。 治療薬を子宮内膜組織に直接、投与しても、経口投与しても、あるいは静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸及び局所を含め、非経口投与してもよい。治療的ペプチドを亜鉛と一緒に同時投与してもよい。例えば、治療的組成物を、治療上有効な用量のZn2+(下記を参照されたい)と一緒に、治療上有効な用量(下記を参照されたい)にして投与してもよい。これらのペプチドを、投与前に亜鉛と配合しても、あるいは、亜鉛が本ペプチドと相互作用できるように投与時に配合してもよい。代替的には、本ペプチド又はそのバリアントもしくは誘導体を、 両者が少なくとも通常の時間、循環中に存在することを条件に、亜鉛の投与前又は投与後に、亜鉛とは別に投与することもできる。例えば、亜鉛の溶液を、本ペプチドの投与前又は投与後の約2、3分間乃至2、3時間、投与してもよい。更に他の実施態様では、ペプチドを投与する対象に亜鉛を全く投与しない。しかしながら、投与されるペプチドは、対象が彼らの血液循環中に亜鉛を有する場合、やはり亜鉛に結合するであろう。
【0084】
本治療薬の毒性及び治療効果は、例えばLD50(集団の50%にとって致命的な用量)及びED50(集団中の50%で治療上有効な用量)を判定するためなど、細胞培養又は実験動物での標準的な薬学的手法により、決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比が治療指数であり、それは比LD50/ED50で表すことができる。大きな治療指数を示す試薬が好ましい。毒性の副作用を示す試薬を用いてもよいが、正常な細胞への潜在的損傷を抑え、ひいては副作用を減らすなどのためには、罹患組織の部位にこのような試薬を標的決定する送達系をデザインするように注意せねばならない。
【0085】
細胞培養検定及び動物実験で得られたデータを、ヒトで用いる投薬量範囲を処方する際に用いることができる。このような治療薬の投薬量は、好ましくは、毒性が少ないか、又は全くないED50を含むような循環濃度範囲に収まるとよい。投薬量は、用いる剤型及び利用する投与経路に応じて、この範囲内で様々であろう。用いられるいずれの治療薬についても、治療上の有効な用量は、まず細胞培養検定から推定することができる。細胞培養で判定したときにIC50(即ち、症状の最大時の半分を阻害する検査治療薬の濃度)を含むような循環血漿濃度範囲を達成するために、用量を動物モデルで作製してもよい。このような情報を用いると、ヒトで有用な用量をより精確に決定することができる。
【0086】
本治療薬の投薬量は、治療しようとする疾患の状況又は状態、並びに、当該のヒト又は動物の重量及び状態、並びに当該化合物の投与経路といった他の臨床上の因子に依るであろう。ヒト又は動物を治療する場合、ほぼ0.5 mg/キログラム乃至 500 mg/キログラムの本治療薬を投与することができる。より好ましい範囲は約1 mg/キログラム乃至約 100 mg/キログラム
又は約 2 mg/キログラム乃至約 50 mg/キログラムであり、最も好ましい範囲は約 2 mg/キログラム 乃至 約 10 mg/キログラムである。特定の動物又はヒトにおける本治療薬の半減期に応じ、本治療薬を1日当たり数回から1週間に一回の間で投与することができる。本方法は、ヒト及び獣医学上の使用の両方への用途を有すると理解されたい。本発明の方法は、同時に又は長期間に渡って与えられる一回や複数回の投与を考察するものである。
【0087】
亜鉛を治療的ペプチドと一緒に、約 0.1乃至 約 100 mg/kg/日;約 1 乃至 約 10 mg/kg/日;又は約 2-5 mg/kg/日の濃度で同時投与してよい。亜鉛はZn2+の形又はその塩の形で投与してもよい。亜鉛の量は、対象の循環(例えば血液)内の亜鉛量や、対象に投与されるペプチド量に応じて様々であろう。必要であろう亜鉛量は、例えば特定の用量のペプチドを単独で又は亜鉛と組み合わせて投与された対象の血液試料を採り、例えば上述した通りに、亜鉛が複合体形成したペプチド量を決定するなどにより、決定することができる。
【0088】
治療薬を含有する医薬組成物は、例えば錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性の懸濁液、分散性粉末又は顆粒、乳濁液、硬質又は軟質のカプセル、あるいはシロップ又はエリキシルなど、経口使用に適した形であってよい。経口使用を意図した組成物を、医薬組成物の製造に関して当業で公知のいずれの方法に従って調製してもよく、そしてこのような組成物には、薬学的に優美かつ味のよい製剤を提供するために、甘味剤、着香料、着色剤及び保存剤から成る群より選択される一種以上の作用物質を含めてもよい。錠剤には、活性成分(即ち治療薬)を、錠剤の調製に適した無毒性の薬学的に許容可能な医薬品添加物と混合して含めてもよい。これらの医薬品添加物は、例えば、不活性の希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム;造粒及び崩壊剤、例えば微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチ、又はアルギン酸;結合剤、例えばでんぷん、ゼラチン、ポリビニル−ピロリドン又はアカシアゴム、及び潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであってよい。錠剤は被覆されていなくともよいが、あるいはこれらを公知の技術で被覆して、薬物の不快な味を隠す、又は、胃腸管での崩壊及び吸収を遅らせることで、長期に渡る持続的作用を提供してもよい。例えば、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース又はヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性の食味被覆剤、又は、エチルセルロース、酪酸酢酸セルロースなどの時間遅延剤を用いてもよい。
【0089】
経口使用用の調合物を、硬質ゼラチンのカプセルとして提供してよく、この場合、活性成分を、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリンやなどの不活性の硬質希釈剤と混合し、また軟質のゼラチン・カプセルとして提供してもよく、この場合は活性成分を、ポリエチレングリコールなどの水溶性の担体、又は、ピーナッツ油、流動パラフィン、又はオリーブオイルなどの油性の媒質と混合する。
【0090】
水性の懸濁液には、活性物質を、水性の懸濁液の製造に適した医薬品添加物と混合して含めてもよい。このような医薬品添加物は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル−ピロリドン、トラガカントゴム、及びアカシアゴムなどの懸濁剤であり;分散剤又は湿潤剤は、天然で生じるホスファチドでよく、例えばレシチン、又は、酸化アルキレンの脂肪酸との縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレンなど、や、あるいは、酸化エチレンの長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレン−オキシセタノール、あるいは酸化エチレンと脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレイン酸、あるいは酸化エチレンと脂肪酸及び無水ヘキシトール由来の部分エステルとの縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレイン酸、であってよい。水性の懸濁液には、更に、一種以上の保存剤、例えばエチル、又はn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエート、あるいは一種以上の着色剤、一種以上の着香料、及びショ糖、サッカリン又はアスパルテームなどの一種以上の甘味料、を含めてもよい。
【0091】
油性の懸濁液は、活性成分を、落花生油、オリーブ油、ゴマ油又はココナッツ油などの植物油、又は、流動パラフィンなどの鉱物油に懸濁させることにより、調合できよう。油性の懸濁液には、みつろう、固形パラフィン又はセチルアルコールなどの増粘剤を含めてもよい。上述したような甘味料や着香料を添加して、美味な経口製剤を提供してもよい。これらの組成物は、ブチル化ヒドロキシアニソール又はアルファ−トコフェロールなどの抗酸化剤の添加により、保存できよう。
【0092】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した分散性粉末及び顆粒は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤及び一種以上の保存剤と混合された活性成分を提供するものである。適した分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤は、上に既に言及されたものに例示されている。甘味料、着香料及び着色料などの付加的な医薬品添加物も存在してよい。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加により、保存できよう。
【0093】
更に、医薬組成物は、水中油乳濁液の形であってもよい。油相はオリーブ油又は落花生油などの植物油であっても、又は、流動パラフィンなどの鉱物油でも、あるいはこれらの混合物であってもよい。適した乳濁剤は、天然で生じるホスファチド、例えば大豆レシチン、及び、脂肪酸及び無水ヘキシトール由来のエステル又は部分エステル、例えばソルビタンモノオレエートや、前記部分エステルと酸化エチレンとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなど、であろう。乳濁液には、更に、甘味料、着香料、保存剤及び抗酸化剤も含めてよい。
【0094】
シロップ及びエリキシルを、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール又はスクロースなどの甘味料と一緒に調合してもよい。このような調合物には、更に、粘滑薬、保存剤、着香料及び着色剤並びに抗酸化剤も含めてよい。
【0095】
医薬組成物は無菌の注射可能な水溶液の形であってもよい。用いてもよい許容可能な賦形剤及び溶媒の中には、水、リンガー液及び等張の塩化ナトリウム溶液がある。
【0096】
前記の無菌の注射可能な製剤は、活性成分が油相中に溶解しているような、無菌の注射可能な水中油マイクロ乳濁液であってもよい。例えば、当該の活性成分をまず大豆油及びレシチンの混合物に溶解させてもよい。次に、この油性の溶液を水及びグリセロールの混合物に取り入れ、処理してマイクロ乳濁液を形成させる。
【0097】
前記の注射可能な溶液又はマイクロ乳濁液を、局所的な大量注射により、患者の血流に導入してもよい。代替的には、当該化合物の循環中濃度が一定に維持されるような方法で当該溶液又はマイクロ乳濁液を投与することも有利であろう。このような一定の濃度を維持するためには、連続的な静脈内送達器具を用いてもよい。このような器具の一例が Deltec CADD-PLUSTMモデル 5400 静脈内ポンプである。例えば、治療的ペプチドの血中レベルを、約100乃至500ng/ml、又は約200乃至400ng/mlあるいは約250-300ng/mlの範囲内にしてもよいであろう。
【0098】
本医薬組成物は、筋肉内及び皮下投与用の無菌の注射可能な水性又は油脂性懸濁液の形であってもよい。この懸濁液は、当業で公知のように、上で言及した適した分散剤又は湿潤剤並びに懸濁剤を用いて調合できよう。更に無菌の注射可能な製剤は、無毒性の非経口上許容可能な希釈剤又は溶媒に入れた無菌の注射可能な溶液又は懸濁液であってもよく、例えば1,3-ブタン−ジオールに溶かした溶液としてもよい。加えて、無菌の非揮発性油は従来、溶媒又は懸濁用媒質として用いられている。この目的のために、合成のモノグリセリド又はジグリセリドを含め、いずれの無菌の非揮発性油を利用してもよい。加えて、オレイン酸などの脂肪酸を、注射用製剤の調製で使用できる。
【0099】
いくつかの実施態様では、局所注射などにより、治療薬を局所的に投与することが好ましい場合がある。
【0100】
ある実施態様では、局所的薬物投与に一般的に適しており、当業で公知のいずれかのこのような物質を含む局所用担体などを含有する局所用調合物に治療的ペプチドを取り入れる。局所用担体は、例えば軟膏、ローション、クリーム、マイクロ乳濁液、ゲル、油、溶液等の所望の形で当該組成物を提供するように選択されてもよく、また天然で生ずる又は合成由来のいずれの物質から成っていてもよい。選択された担体が、当該局所用調合物の活性物質又は他の成分に悪影響を与えないことが好ましい。ここで用いるために適した局所用担体の例には、水、アルコール及び他の無毒性の有機溶媒、グリセリン、鉱物油、シリコーン、ワセリン、ラノリン、脂肪酸、植物油、パラベン、ろう等がある。調合物は無色無臭の軟膏、ローション、クリーム、マイクロ乳濁液及びゲルであってよい。
【0101】
当業者に公知の多様な添加剤を、局所用調合物などの調合物に含めてもよい。
【0102】
例えば他の抗炎症剤、鎮痛薬、抗菌剤、抗カビ剤、及び他の抗生物質など、他の活性物質も調合物に含めてよい。
【0103】
更に、治療薬を、薬物の直腸投与用の座薬の形で投与してもよい。これらの組成物は、通常の温度では固体だが直腸の温度では液体となるため直腸で溶解して薬物を放出するような非刺激性の医薬品添加物に当該薬物を混合することにより、調製することができる。このような物質には、ココアバター、グリセロゼラチン、硬化植物油、多様な分子量のポリエチレングリコールの混合物及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、がある。
【0104】
治療薬は、適した鼻腔内用賦形剤及び送達器具の局所使用を通じた鼻腔内型で、あるいは、当業者に公知の経皮パッチの形を用いて経皮経路で、投与してもよい。経皮送達系の形で投与する場合、投薬量の投与は、もちろんではあるが、投薬計画全般にわたって間欠的ではなく継続的となるであろう。
【0105】
治療薬は、適した鼻腔内用賦形剤及び送達器具の局所使用を通じた鼻腔内型で、あるいは、当業者に公知の経皮パッチの形を用いて、投与してもよい。経皮送達系の形で投与する場合、投薬量の投与は、もちろんではあるが、投薬計画全般にわたって間欠的ではなく継続的となるであろう。
【0106】
本治療的ペプチドを、循環中の濃度が一定に維持される用量計画に従って投与してもよい。またこれらを、例えば毎日一回の大量注射など、治療が周期的に中断されるような用量計画に従って投与してもよい。
【0107】
固定された用量として処方する場合、このような組合せの生成物は、ここで解説された組合せをここで解説された投薬範囲で、そして他の薬学的に活性な物質をその認可された投薬範囲で用いるものである。複数の組合せ調合物が不適当である場合、本発明の組合せを、公知の薬学的に許容可能な物質と一緒に順次、用いてもよい。
【0108】
キットの例
治療用キットなどのキットもここで提供される。キットは、ここで解説された治療的ペプチドと、選択的には本治療的ペプチドの投与のための器具とを含むであろう。更にキットには、凍結乾燥型の治療的ペプチドと、該治療的ペプチドを可溶化させるための溶液又は緩衝液とが含まれる場合もある。更にキットに、使用に関する指示が含まれる場合もある。
【0109】
本発明の実施にあたっては、そうでないと明示しない限り、当業者の技術範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来技術を用いるであろう。このような技術は文献に十二分に解説されている。例えばMolecular Cloning A Laboratory Manual, 2nd Ed.,
ed. by Sambrook, Fritsch and Maniatis (Cold Spring Harbor Laboratory Press:
1989); DNA Cloning, Volumes I and II (D. N. Glover ed., 1985); Oligonucleotide
Synthesis (M. J. Gait ed., 1984); Mullis et al. U.S. Patent No: 4,683,195;
Nucleic Acid Hybridization (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984);
Transcription And Translation (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984);
Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987); Immobilized
Cells And Enzymes (IRL Press, 1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular
Cloning (1984); the treatise, Methods In Enzymology (Academic Press, Inc.,
N.Y.); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller and M. P. Calos eds.,
1987, Cold Spring Harbor Laboratory); Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155
(Wu et al. eds.), Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer
and Walker, eds., Academic Press, London, 1987); Handbook Of Experimental
Immunology, Volumes I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds., 1986);
Manipulating the Mouse Embryo, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold
Spring Harbor, N.Y., 1986)を参照されたい。
【0110】
実施例
以上、本発明を概略的に解説したところで、以下の実施例を参照されればより容易に理解されよう。以下の実施例は、単に本発明の特定の局面及び実施例の描写を目的として含まれたのであり、本発明を限定するものとは意図されていない。
【0111】
実施例1
抗腫瘍活性を担う27個のアミノ酸のエンドスタチン・ペプチドの同定
マウスエンドスタチン及びヒトエンドスタチンの両方を由来とする24乃至27個のアミノ酸と重なるペプチドを合成した(表1)。
【0112】
【表1】

【0113】
ペプチドは完全長エンドスタチンの大きさのほぼ7分の1から8分の1だった。三つのシステイン33、165、173をアラニンに置換し(表1で下線)、システイン135を省いて、ジスルフィド結合の形成を妨げた。二つの付加的なリジンをhP8のC末端に追加して、その可溶性を高めた(二重の下線)。大半のペプチドは水溶性であったが、高濃度時のhP2は例外だった(>2.5mg/ml)。また、全てのペプチドはほぼ70%の純度であった。しかし、95%の純度を超えるペプチドを用いた場合では、腫瘍阻害に何ら違いは観察されなかった。
【0114】
これらのペプチドを、まず、抗腫瘍活性について、SCIDマウスの背中皮下に移植されたヒト膵臓腫瘍細胞BxPC-3細胞を用いて検査した。全身治療の場合、ヒトエンドスタチンペプチドP1-P8を、マウス循環からのクリアランス速度が高いために7mg/kg/dを一日に皮下(s.c.)で2回、投与した。完全長Fc-エンドスタチンhFcESを皮下で一日当たり1回のみ、20mg/kg/dの用量、投与した。PBSをコントロールとして用いた。腫瘍を3日毎に測定し、28日目での最後の測定値を図1に示す(T/Cは各棒中で示され、群の大きさはnイコール3とした)。
【0115】
エンドスタチンのN末端hP1ペプチドはBxPC-3を39%(p=0.077)阻害し、完全長エンドスタチンを44%(p=0.0057)、阻害した(図1)。他の二つのペプチドhP2及びhP5も、何らかの小さな抗腫瘍活性を示し、hP2はBxPC-3を19%(p=0.48)、そしてhP5を29%(p=0.15)、阻害した。その他のペプチドは何の効果も有さなかった(図1)。このように、抗腫瘍活性の大半は、完全長エンドスタチンと比較してN末端のhP1ペプチドと関連していた。hP1、hP2及びhP5による腫瘍阻害は、一群当たりのマウス数が小さい(n=3)ために統計上有意ではなかったが、これらのペプチドによる腫瘍阻害を示すこの傾向から、マウスLLCモデルにおける腫瘍阻害に対するこのようなペプチドの研究が更に促進された。更に、ペプチド及び完全長エンドスタチンは、等モル濃度ではなかった。しかし、このデータは、エンドスタチンの抗腫瘍特性が、そのN末端ドメインに位置していると思われることを示唆している。
【0116】
エンドスタチンのN末端の27個のアミノ酸から成るペプチドは、その抗腫瘍特性を担っている
これらのペプチドを特徴付けるために、マウスLLC腫瘍モデル(O'Reilly
et al. (1994) Cell, 79: 315-328)を用いた。なぜなら、この腫瘍はBxPC-3細胞よりも早く成長するため、治療期間を短くすることができるからである。エンドスタチン・ペプチドのマウス類似体を合成した。当該のヒト及びマウスペプチド間の唯一の違いは、マウスP1ペプチドは、ヒトP1のように25個のアミノ酸ではなく、27個のアミノ酸を含むことだった。我々は、前の実験で何らかの抗腫瘍活性を示したペプチドのみを検査した(図1を参照されたい)。
【0117】
BxPC-3処理とは異なり、LLC腫瘍を、等モル濃度のマウスエンドスタチン及びマウスペプチド(mP1、mP2、mP5、及びmP6)で処理した。mP6は、何の抗腫瘍活性も示さなかったため、それを代表的なコントロールペプチドとして用いた(図1を参照されたい)。コントロール・マウスはPBSで処理された。これらの実験において、LLC細胞をC57B1/6Jマウスの背中皮下に移植し、全身処理した。ペプチド(mP1、mP2、mP5、及びmP6)を一日に二回、2.8mg/kg/dの用量で注射(皮下)し、他方、エンドスタチン及びPBSを、一日に一回、20mg/kg/dの用量、投与した。N末端のmP1エンドスタチン・ペプチドは、LLCを44%(p<0.035)、阻害し、完全長エンドスタチンによる阻害(53%、p<0.01)に匹敵した(図2A;T/Cが図面中で示されている)。mP2、mP5及びmP6をmP1ペプチドと同じ濃度で用いた場合、全く活性が検出されないか、又は取るに足らない活性しか検出されなかった(図2A)。このように、この結果は、27個のアミノ酸から成るmP1ペプチドが、エンドスタチンに関連する抗腫瘍活性のすべてを含有することを示唆している。
【0118】
mP1処理後の血管新生に対する効果を調べるために、等モル濃度のmP1、mP2、及びエンドスタチンで処理されたLLC腫瘍を血管密度について分析した(CD31)。図2Bは、PBS(コントロール)、Fc-エンドスタチン(20mg/kg/d)、mP1(2.8mg/kg/d)、及びmP2(2.8mg/kg/d)で処理されたマウスからのLLC切片のCD31染色を示す。いずれの場合でも、ペプチドは、一日に二回、皮下投与され、13日目のLLC腫瘍切片を、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した後、CD31(PECAM)で染色した。図2Cは、血管密度の判定を示し、Y軸は%CD31/強拡大の一視野(hpf)で表されている。LLCをmP1及びエンドスタチンで処理すると、血管密度が著しく(ほぼ65%、p<0.015)減少したが、他方、mP2及びPBSは何の効果も有さなかった。mP5及びmP6で処理したところ、mP2処理と同様な結果を示した。これらの結果は、mP1が、完全長エンドスタチンと同様な態様で血管密度を減少させることにより、LLC腫瘍成長を阻害することができることを示唆している。
【0119】
エンドスタチンの位置1及び3にあるヒスチジンが亜鉛結合にとって必須である
エンドスタチンの結晶構造から、高度に折り畳まれた分子であることが明らかである(図2D)。しかし、そのN末端領域はランダム・コイル構造に似ていることから、このドメインに相当する合成ペプチドがこの天然分子を模倣することができるという我々の分析と合致する(図2D)。エンドスタチンN末端ドメインはその抗腫瘍活性を担っているため、我々はmP1ペプチドを更に調査したかった。エンドスタチンの各分子には結びついた亜鉛原子(Zn)がある(Ding et al. (1998) Proc Natl Acad Sci
USA, 95: 10443-10448)。我々の結晶構造解析に基づくと、位置1、3、及び11にある三つのヒスチジンと、位置76にあるアスパラギン酸は、このZn原子に対して四つの配位を形成している(Ding et al. (1998) Proc
Natl Acad Sci USA, 95: 10443-10448)。mP1は上述の三つのヒスチジンを含有する。このことから、このペプチドは、水分子に四番目の配位を占めさせることにより、Znを結合させることができるという可能性が浮かび上がる(図3A、左側パネル)。ヒスチジン1及び3を変異させると、エンドスタチンのZn結合が損なわれることが以前に示されている(Boehm et al. (1998)
Biochem Biophys Res Commun, 252: 190-194)。従って、位置1及び3にあるヒスチジンをアラニンに変異させた、ペプチドmP1の変異体を合成した。この変異ペプチドはmP1−H1/3Aと呼ばれ(mP1−Hとも言及される)、以下のアミノ酸配列:ATAQDFQPVLHLVALNTPLSGGMRGIR
(配列番号 150)を有する。mP1及びmP1−H1/3Aの配列も図3Aで示されている。
【0120】
mP1及びmP1-H1/3AのZn結合能を調べるために、フレーム原子吸光を行った。各ペプチドをpH8.0の20mMのTrisに、0.5mg/mlの濃度になるように溶解し、過剰な塩化Zn(1mM)と混合し、上記の緩衝剤に対し、透析溶液で三回交換しながら72時間、よく透析した(分子量カットオフ(MWCO)=1000kDa;このペプチドの分子量を3000 kDaと考えた)。最終的な亜鉛濃度(μg/ml)の原子吸光読み取り値を、mP1及びmP1-H1/3Aについてそれぞれ9.63及び1.05と判定した。これらのデータから、mP1-H1/3A1分子あたりの亜鉛比が0.1、そしてmP11分子当たりの亜鉛比が0.9と判明した(図3B)。従って、位置1及び3にあるヒスチジンをアラニンに変異させると、Zn結合が失われた(図3A、右側パネル)。
【0121】
エンドスタチンの亜鉛結合ドメインは、その抗腫瘍活性にとって重要である
Zn結合がエンドスタチンの抗腫瘍特性にとっても重要であるかどうかを判断するために、mP1及びmP1-H1/3Aを、LLC腫瘍モデルを用いて検査した。ペプチドを一日に二回(皮下)、2.8mg/kg/dの用量にして投与した。ペプチドmP1はLLCを42%(p=0.031)阻害したが、他方mP1-H1/3Aは何の効果も有さなかった(図3C)。血管新生に違いがあったかどうかを判断するために、LLC腫瘍の血管密度(CD31)を、mP1及びmP1-H1/3A処理後に分析した。mP1処理後では血管密度に相当な減少(67%の減少、p<0.01)があったが、他方、mP1-H1/3AはPBSと同様だった(図3D及び3E)。これらのデータは、Zn結合がエンドスタチンの抗腫瘍特性にとって重要であることを示唆している。独立スチューデントのt検定が統計解析に用いられた。
【0122】
更なる処理には、1mMのZn2+と一緒のmP1-Hペプチドの皮下注射;mP1ペプチドを単独で、又は1mMのZn2+と一緒の皮下注射;あるいはPBSの皮下注射が含まれた(図4)。図3及び4に示すその結果は、腫瘍体積が、ヒスチジン1及び3がアラニンに変更されたmP1-H1/3Aペプチドの投与では実質的に影響を受けなかったことを示した。なぜならこの腫瘍の大きさは、PBS(陰性コントロール)を注射した場合で得られたものと同様だったからである。
【0123】
このように、これらの結果は、N末端エンドスタチン・ペプチドの位置1及び3にあるヒスチジンをアラニンに置換することはできないこと、そしてそれらの別のアミノ酸との置換も、やはりこのペプチドの抗腫瘍効果を減じるか、又は無くすであろうことを示している。前記の結果は更に、循環中に亜鉛が既に存在しない限り、当該ペプチドを含む組成物中に亜鉛を含めることが有益であろうことも示している。
【0124】
エンドスタチンのN末端断片は、内皮細胞の遊走を阻害するその能力を保持している
エンドスタチン・ペプチドを、抗内皮細胞遊走活性について検査した。ヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)のVEGF誘導性遊走の阻害を、いくつかの用量のエンドスタチン・ペプチドを用いて判定した(図5)。当該細胞がヒト由来であったためヒトペプチドを用い、HMVECの遊走応答を、改良されたボイデン・チャンバを用いて検定した。VEGF(5ng/ml)を化学走性薬剤として用い、細胞にヒトエンドスタチン(EntreMed;EM-ES)、ヒトFc-エンドスタチン(nFcES)、ヒトP1(hP1)、ヒトP2(hP2)、ヒトP6(hP6)、及びヒトP1-H1/3A(hP1-H1/3A)で刺激を与えた。1メンブレン当たりの総遊走量をキャプチャ画像からScionイメージ・ソフトウェア(米国国立保健研究所)を用いて定量し、独立スチューデントのt検定を統計解析に用いた。ヒト組換えエンドスタチン(EntreMed)はEC遊走を500及び200ng/ml(30%)のときに阻害したが、100ng/mlでは阻害せず、他方、ヒトFc-エンドスタチンは500及び100ng/ml(25-30%)間で等しく良好に阻害した(図5)。興味深いことに、EC遊走の僅かにより良好な阻害が、より高い濃度よりも、Fc-エンドスタチンでは100ng/mlで、そしてエンドスタチン(EntreMed)では200ng/mlで観察されたことから、エンドスタチン応答のU型が示唆された。hP1について最良の疎外は100、62.5、及び25ng/mlのときだった。これらの濃度間で、阻害に有意な違いは観察されなかった。それより高い又は低い濃度では、より小さな阻害が観察されたか、あるいは全く観察されなかった。500ng/mlのhP1では、阻害は全く観察されなかった。このように、完全長エンドスタチンと同様に、EC遊走のhP1阻害にもU型の応答がある。エンドスタチンhP2ペプチドはそれより高い濃度でも何ら効果を有さなかった。しかしながら、hP6はEC遊走を阻害したが、hP1より高い濃度においてであり、100ng/mlより低い濃度では何の阻害も観察されなかった。
【0125】
Zn結合部位が抗内皮細胞遊走活性にとって重要であるかを判断するために、hP1-H1/3Aも検査した。この変異ペプチドは200及び100ng/mlで何らかの小さな阻害を示した。しかしながら、この阻害は統計上、有意ではなかった。このように、ペプチドhP1は完全長エンドスタチン又はヒトエンドスタチン(EntreMed)(200ng/ml)と等モル濃度(25ng/ml)でVEGF誘導性EC遊走を阻害することができたが、他方、hP6は、100及び200ng/mlの用量においてのみ、阻害した。興味深いことに、hP1は、完全長エンドスタチンよりもEC遊走を阻害する上でより強力だった。これらの結果は、エンドスタチンのN末端P1ペプチドがVEGF誘導性EC遊走の阻害能を維持していること、そして、そのZn結合部位がこの活性に必須であること、を示すものである。
【0126】
エンドスタチン・ペプチドの抗透過性活性
エンドスタチンのVEGF誘導性透過性阻害能も、マイルズ検定を用いて検査された(Miles and Miles (1952) J Physiol, 118: 228-257)。以前、エンドスタチンがVEGF誘導性透過性を阻害することがマイルズ検定を用いて示されたことがある。免疫無防備状態のSCIDマウスを、マイルズ検定を行う5日前に処理した。具体的には、SCIDマウスに、100mg/kg/dの用量のヒトエンドスタチン(EntreMed;EM-ES);20mg/kg/dの用量のマウスFc-エンドスタチン;2.8mg/kg/d又は14mg/kg/dの用量のマウスエンドスタチンペプチドmP1及びmP1-H1/3A;又はPBS(n=5)を5日間、皮下(s.c.;一日に二回)注射した。用量が高い(14mg/kg/d)ときには、mP1及びmP1-H1/3Aの両方とも、VEGF誘導性透過性を、ヒトエンドスタチン(EntreMed)及びマウスFc-エンドスタチンと同様に阻害した(図6)。しかしながら、同様な結果は、等モル濃度(2.8mg/kg/d)を用いたときにも得られた(図6)。mP1-H1/3AはmP1と同じ阻害を、等モル濃度でも示したため、このことは、抗腫瘍及び抗透過性の間に活性の分離があることを示唆している。
【0127】
mP1由来のより小さなペプチドも腫瘍成長を阻害することが示されている。二つのペプチドmP1-15(配列番号118)及びmP1-20 (配列番号108)を、抗腫瘍活性についてLLC腫瘍モデルを用いて検査した。ペプチドを4日目、7日目10日目及び14日目に2.8mg/kg/日の用量にして一日に二回、皮下投与した。PBSがコントロールとして用いられた。図7は、mP1-15 及びmp1-20 の両者とも腫瘍の体積を阻害することを示している。(T/Cが示されており、群の大きさはnイコール5である)。
【0128】
このように、我々は、エンドスタチンのN末端に相当する合成ペプチドがその抗腫瘍、抗遊走、及び抗透過性活性を担っていることを示した。亜鉛の結合は抗腫瘍及び抗遊走活性に必要であるが、それはなぜなら、このペプチド中のアミノ酸位置1及び3にある二つのヒスチジンを置換するとその特性が完全に遮断されるからである。しかし、亜鉛の結合は抗透過性特性に必要ではなかった。
【0129】
エンドスタチンが腫瘍形成を阻害するためには亜鉛が必要であるという要件は議論を呼んできており、様々なグループから相反する結果が報告されている(Boehm et al. (1998) Biochem Biophys Res Commun, 252: 190-194;
Yamaguchi et al. (1999) Embo J, 18: 4414-4423; Sim et al. (1999)
Angiogenesis, 3: 41-51)。即ち、最も初期の報告は、ヒスチジン1及び3をアラニンに置換すると、エンドスタチンの阻害効果が遮断されたことをLLCで示しており(Boehm et al. (1998) Biochem Biophys Res
Commun, 252: 190-194)、その後の二つの文献ではこの発見に異論を唱えている(Yamaguchi et al. (1999) Embo J, 18: 4414-4423; Sim et al.
(1999) Angiogenesis, 3: 41-51)。これらの報告の一つで、変異エンドスタチンは、C末端及びN末端の両方の5個のアミノ酸を欠失させることにより、調製された(Yamaguchi et al. (1999) Embo J, 18: 4414-4423)。このコンストラクトは、完全長エンドスタチンと同様に、抗腫瘍活性を引き出した。しかし、用いられた腎臓Rc-9カルシノーマ腫瘍モデルにおいては、エンドスタチンの投与は、腫瘍の大きさが300mm3のときに開始されており、僅かに4日間続行され、このとき腫瘍の大きさは500mm3に達していた。その注射部位は腫瘍の周辺であり、注射投薬量は10μg/kg/dだった。対照的に、我々の実験では、我々はLLC腫瘍が最高100mm3の大きさに達した時点で処理を開始し、腫瘍が最高6000乃至7000mm3になるまで続けた。更に、我々は全身的に処理をし、腫瘍の周辺には注射しなかった。
【0130】
エンドスタチンの抗腫瘍活性にとっての亜鉛結合の重要性を扱った別の文献では、ヒトエンドスタチンのN末端から4個のアミノ酸「HSHR」を除去しても、その抗腫瘍活性には影響しなかったことが実証された(Sim et al.
(1999) Angiogenesis, 3:41-51)。亜鉛結合を測定すると、この変異体は、エンドスタチン1分子あたり2個の亜鉛に結合し、他方、野生型はエンドスタチン一分子あたり10個の亜鉛原子に結合していたことが判明した。しかしながら、我々のエンドスタチンの結晶構造研究では、我々は、結晶化研究に用いられたエンドスタチンは、エンドスタチン1分子あたり1個の亜鉛原子を含有し、N末端から4個のアミノ酸「HSHR」を除去すると亜鉛結合が無くなることを実証した(Ding et al. (1998) Proc Natl Acad Sci U S A, 95: 10443-10448)。
【0131】
エンドスタチンはコラーゲン18のたんぱく質分解により生成する(O'Reilly et al. (1997) Cell, 88: 277-285; Wen et al. (1999)
Cancer Res, 59: 6052-6056; Felbor et al. (2000) Embo J, 19: 1187-1194)。エンドスタチンのN末端の一番目のアミノ酸はヒスチジンである。このヒスチジンの存在が亜鉛をエンドスタチンに結合させるために重要である。結論的に、我々は、コラーゲン18のエンドスタチンへのプロセッシングは高度に調節されているのではないかという結論を導き出した。
【0132】
複数のグループが、エンドスタチンを由来とするペプチドが抗血管新生効果を有することを示している(Wickstrom et al. (2004) J Biol Chem, 279: 20178-20185;
Cattaneo et al. (2003) Exp Cell Res, 283: 230-236; Chillemi et al.
(2003) J Med Chem, 46: 4165-4172; Morbidelli et al. (2003) Clin Cancer
Res, 9: 5358-5369; Cho et al. (2004) Oncol Rep, 11: 191-195)。アミノ酸6-49を含む(亜鉛に結合するヒスチジンを欠く)N末端ペプチドは内皮細胞の増殖及び遊走を阻害した(Cattaneo
et al. (2003) Exp Cell Res, 283: 230-236; Chillemi et al. (2003) J Med
Chem, 46: 4165-4172)。このペプチドを用いたMatrigel検定の結果、in vivoで血管新生の阻害があった。しかし、抗腫瘍データは提供されていない。別の研究では、Cys135-Cys165のジスルフィド結合を残したC末端ペプチド(アミノ酸135-184)が抗腫瘍活性を示している(Morbidelli et al. (2003) Clin
Cancer Res, 9: 5358-5369)。しかしながら、このペプチドは全身ではなく、腫瘍周辺に投与されている。 Choらは、エンドスタチンの、Zn結合部位を含むN末端とC末端は、抗腫瘍活性には必要でないことを示した(Cho
et al. (2004) Oncol Rep, 11: 191-195)。しかし、このペプチド及び完全長エンドスタチンは等モル濃度では検査されていない。我々の結果は、P1ペプチドが腫瘍形成、遊走、及び透過性を、完全長エンドスタチンと等モル濃度で阻害できたという点でこれらのグループとは異なる。更に、より高い濃度(14mg/kg/d)では、mP2は、2.8mg/kg/dのときのmP1と同様にLLC腫瘍形成を阻害することができた。しかしながら、14mg/kg/dのときのmP1は、2.8mg/kg/dのときよりも小さく、LLC腫瘍形成を阻害した。このように、U型の曲線がエンドスタチンの抗腫瘍活性に、このたんぱく質濃度の関数として関連しているようである。同様な結果は、膵臓BxPC-3及びASPC-1腫瘍モデルを用いて完全長エンドスタチンでも観察された。従って、最適なエンドスタチン濃度の決定が重要な因子であろう。In vitroでの検定では、遊走検定などで見られるのと同様な、エンドスタチンによる二相性が示された(図5を参照されたい)。
【0133】
完全長エンドスタチンはその抗腫瘍活性に必要でないという事実は、エンドスタチン活性の最初の矛盾を説明するものである。エンドスタチンは二つのジスルフィド結合を有する。E. coli製剤中でのエンドスタチンの凝集は、PBS透析後にランダムな分子間ジスルフィドにより引き起こされる。エンドスタチンは還元条件下では単一のたんぱく質分子を示すが、非還元条件下では、同一試料中のこのたんぱく質の大半はポリアクリルアミドゲルに進入しない。おそらくは非特異的凝集の程度が、この製剤のうちのいくつかで活性がないことの原因であろう。エンドスタチンは動物においては時間とともに凝集体から放出されていき、こうしてそれらのN末端ペプチドのために、抗腫瘍性を示すことのできる変性たんぱく質又は部分断片が生じている可能性が高い。おそらくは、製剤のうちのいくつかはより大型の凝集体を生じるために、このような放出が非効率になり、マウスで抗血管新生性の応答を惹起することのできない生成物が生じるのであろう。
【0134】
エンドスタチンの抗腫瘍活性の基礎は何なのか?多数の機序が提案されてきた。より詳細に研究されてきたもののひとつは、エンドスタチンのインテグリンα5β1への結合である(Wickstrom et al. (2002) Cancer Res, 62:
5580-5589)。これらの著者の発見に基づくと、α5β1を含め、いくつかの細胞表面たんぱく質及び成分の集合が、エンドスタチンとこのインテグリンとの間の相互作用を担っている(Wickstrom et al. (2003) J Biol Chem, 278: 37895-37901)。しかしながら、上記の機序を裏付ける抗腫瘍データは提供されていない。より最近では、同じ著者が、アルギニンを含有するとともにヘパリン結合を示すエンドスタチンを由来とする11個のアミノ酸によるペプチドが、エンドスタチンの抗血管新生活性を担っていることを示した(Wickstrom et al. (2004) J Biol Chem, 279: 20178-20185)。我々は、これらの研究者が観察した現象は、エンドスタチンのヘパリン結合という特徴に関連する特性のいくつかを反映したものであり、その抗腫瘍活性を反映したものではないと考える。以前、我々は、エンドスタチンのヘパリン結合を損なう(このたんぱく質表面上の二つの不連続なアルギニンを変異させることにより達成される)と細胞運動性が阻害されたことを報告した.(Kuo et al. (2001) J
Cell Biol, 152: 1233-1246)。更に、前記著者が報告したペプチドを含有する我々のエンドスタチンhP3ペプチド(表1を参照されたい)は腫瘍成長を阻害することができなかった。
【0135】
材料及び方法
細胞培養及び試薬
ヒトBxPC-3膵臓アデノカルシノーマ及びルイス肺癌(LLC)細胞を、先に解説されたように成長させ、維持した(Kisker et al. (2001) Cancer Res, 61:7669-7674; O'Reilly et
al. (1994) Cell, 79: 315-328)。BxPC-3腫瘍細胞の注射の場合、細胞を900cm2の回転ビン内で成長させた。ヒト微小血管内皮細胞(HMVEC-d;メリーランド州ウォーカーズビル、Clonetics社)を微小血管内皮細胞成長培地(EGM-2 MV;Clonetics社)で培養し、5%の CO2で37℃の加湿したインキュベータ内に維持した。組換えヒトエンドスタチンはEntreMed社(メリーランド州ロックビル)からご厚誼により提供され、組換えヒト及びマウスFcエンドスタチンは先に解説されたように調製された(Bergers et al. (1999)
Science, 284: 808-812)。ヒト及びマウスエンドスタチンペプチドはSynPep社(カリフォルニア州ダブリン)により合成された。ペプチドをPBS又は50mM Tris、150mM NaCl、pH7.5中に再懸濁させた。精製されたラット抗マウスCD31であるPECAMはBD Pharmingen社(カリフォルニア州サンディエゴ)から得られ、ヒト組換えVEGFはNIH(メリーランド州ベセズダ)から得られた。
【0136】
動物での研究
動物での手法はすべて、ボストン・チルドレンズ・ホスピタル・ガイドラインを遵守して行われ、プロトコルはインスティテューショナル・アニマル・ケア・アンド・ユース・コミッティーによる認可を受けた。オス(24-27g)の免疫コンピテントなC57B1/6Jマウス(メリーランド州バーハーバー、ジャクソン・ラボラトリーズ)及び免疫無防備状態のSCIDマウス(マサチューセッツ州ボストン、マサチューセッツ・ジェネラル・ホスピタル)を用いた。マウスは7乃至9週齢だった。これらを順応させ、バリア内飼育施設で5匹の群にしてケージに入れ、動物用固形飼料及び水を適宜、与えた。動物を、全ての手術法前にイソフルラン(イリノイ州ディアフィールド、バクスター社)の吸入により麻酔し、完全に回復するまで観察した。動物は致死量のCO2で窒息させることにより安楽死させた。
【0137】
腫瘍モデル
BxPC-3及びLLC細胞を上に解説した通りに細胞培養で成長させた。細胞濃度は50×106細胞/mlになるように調節された。腫瘍細胞の注射前に、マウスを剃毛し、背側の皮膚をエタノールで清浄にした。5×106個の腫瘍細胞の0.1ml RPMI-1640(BxPC-3の場合)又はDMEM懸濁液(LLCの場合)をマウスの背側の正中線近傍に皮下(s.c.)注射した。BxPC-3細胞をSCIDマウスに、そしてLLCをC57Bl/6Jマウスに移植した。
【0138】
ルイス肺癌(600乃至800mm3の腫瘍)を持つ動物を安楽死させ、腫瘍を覆っている皮膚をベータダイン及びエタノールで清浄した。腫瘍組織を無菌条件下で切除した。生存腫瘍組織をふるいと、直径22乃至30ゲージの一連の順に小さくなった皮下針とを通過させることにより、腫瘍細胞を0.9%の通常の生理食塩水に入れた懸濁液を作製した。最終的な濃度を1×107細胞/mlに調節し、その懸濁液を氷上に置いた。腫瘍細胞の注射を上に解説した通りに行った。
【0139】
マウスの重さを量り、腫瘍の二つの直径を、3乃至5日毎にダイアル測径器で測定した。体積をa2×b×0.52(aは最も短い直径であり、bは最も長い直径である)の式を用いて判定した。データは、処理済腫瘍のコントロールに対する(T/C)体積で表されている。各実験の終了時に、マウスをCO2窒息で安楽死させた。腫瘍を10%緩衝ホルマリン(ニュージャージー州フェア・ローン、フィッシャー・サイエンティフィック社)で固定し、パラフィン包埋した。
【0140】
腫瘍を持つマウスの処理には、腫瘍体積を成長させてほぼ100mm3にし、マウスを無作為化した。一回の大量皮下注射により処理を行った。ペプチドは一日当たり二回、投与された(12時間毎)。ペプチドに関して指示された用量は、ペプチドの純度について補正された(ほぼ70%)。例えば、4 mg/kg/dのペプチドを注射されたマウスは、実際には、補正後で2.8 mg/kg/dを注射された。独立スチューデントのt検定を統計解析に用いた。
【0141】
免疫組織化学
腫瘍を4℃の10%緩衝ホルマリンで一晩、固定した。翌日、腫瘍をPBSで三回、洗浄し、パラフィン包埋した。切片(5μm)を、40μg/mlのプロティナーゼK(ロシュ・ダイアグノスティックス社)の0.2 M Tris-HCl緩衝液(pH7.6)溶液中で25分間かけて37℃で透過性にし、PBSで洗浄した。PECAM(1:250)は4℃で一晩、インキュベートした。染色は、ティラミド(原語:tyramide)シグナル増幅直接及び間接キット(マサチューセッツ州ボストン、NENライフ・サイエンス・プロダクツ社)を用いて増幅された。切片を400倍の倍率でNIKON TE300顕微鏡を用いて撮影した。血管密度(三つの視野の平均)はIPLabソフトウェアにより判定された。独立スチューデントのt検定を統計解析に用いた。
【0142】
細胞遊走検定
HMVEC-d細胞の運動応答を、改良されたボイデン・チャンバを用いて検定した。細胞をT75-cmフラスコに、一フラスコ当たり0.5×106個の細胞になるようにプレートし、遊走検定までに48時間(~70%コンフルエント、成長させた。細胞接着を促すために、トランスウェル(8mmのポア;コスター社)の上側のメンブレンをフィブロネクチン(10mg/ml;、マサチューセッツ州ベッドフォード、ベクトン・ディッキンソン社)で1時間、37℃で被膜した。被膜後のメンブレンをPBSですすぎ、使用直前に空気乾燥した。細胞をトリプシン処理で剥がし、トリプシン処理中和溶液(クロンテックス社)で処理し、0.1%のBSAを含有する無結成内皮基礎培地(EBM;クロンテックス社)で最終濃度1×106個の細胞になるように再懸濁させた。次に細胞(0.2ml中200,000)を、提示した濃度のエンドスタチン又はペプチドを含有する0.2mlのEBM/BSAで処理した。細胞を20分間、37℃で時折、震盪しながらインキュベートした。細胞(1000μl中50,000)を該トランスウェルの上側のチャンバに加えた。EBM、又はVEGF(5ng/ml)を添加したEBMを、下側のチャンバに加え、細胞を下側のチャンバに向かって4時間、5%のCO2を含有する加湿したインキュベータ内で遊走させた。トランスウェルのフィルタをPBSで一回、すすぎ、固定し、メーカのプロトコルにしたがってDiff-Quik染色キット(バクスター社)を用いて染色した。遊走しなかった細胞を上側のチャンバから綿棒で取り除いた。染色したフィルタをチャンバから切り取り、スライド上にPermount(フィッシャー社)を用いて載せた。遊走した細胞の数を顕微鏡(各メンブレンの三つの視野を、40倍の対物レンズを用いてとらえた)を用いて測定し、画像をCCDカメラでSPOTソフトウェアを用いてとらえた。メンブレン一枚あたりの総遊走数を、とらえられた画像から、Scionイメージ・ソフトウェア(米国国立保健研究所)を用いて定量した。実験はすべて、三重にして行われた。独立スチューデントのt検定を統計解析に用いた。
【0143】
マイルズ血管透過性検定(マイルズ検定)
SCIDマウスにヒトエンドスタチン(EntreMed;100mg/kg/d)、マウスFc-エンドスタチン(20mg/kg/d)、ペプチド(14mg/kg/d又は2.8mg/kg/d)、及び生理食塩水(200μl)(n=15)を5日間、マイルズ検定(25)を行う前に皮下(s.c.)注射した。簡単に説明すると、エヴァンの青色染料(1% PBS溶液を100μl)をマウスに静脈内(i.v.)注射した。10分後、50μlのヒト組換えVEGF(1ng/μl)又はPBSを、予め剃毛した背中側皮膚に皮内注射した。20分後、動物を安楽死させ、染料の漏出から生じた青色の点を含んだ皮膚領域を切り取った。ホルムアミドと一緒に5日間、室温でインキュベートすることにより、前記のエヴァンの青色染料をこの皮膚から抽出し、抽出された染料の吸光度を620nmで分光計で測定した。独立スチューデントのt検定を統計解析に用いた。
【0144】
統計法
データは、平均+S.D.で表されている。統計学的有意度は、スチューデントのt検定を用いて評価された。P<0.05が統計上有意とみなされた。
【0145】
実施例2: エンドスタチン・ペプチドは子宮内膜症病巣の成長を妨げる
エンドスタチン・ペプチドは発情周期に影響しない
子宮内膜症様の病巣を、前に開設された通りに、Cummings 及び Metcalf (Reprod Toxicol. (1995) 9:233)から改良された技術を用いて誘発した(上記の刊行物中のEfstathiou et al. )。簡単に説明すると、8週齢のメスのC57Bl/6J マウス(メリーランド州バーハーバー、Jackson研究所)を5匹の群にしてケージに入れ、1週間、順応させた。動物には固形動物飼料を食餌させ、適宜、水を与えた。全手術中、これらをイソフラン(イリノイ州ディアフィールド、バクスター)の吸入で麻酔し、
完全に回復するまで観察した。最初の手法の間、マウスには、更に、0.01mg/kgのブプレノルフィンを、それぞれ無痛覚及び再水化のためにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)及び0.9%の生理食塩水に入れたものを、皮下(s.c.)注射により投与した。腹部中央の切開によりマウスに開腹術を行った。両方の子宮角を小型の手術用チタン・クリップ(ニューカロライナ州リサーチ・トライアングル・パーク、Horinzon社)で結索し、取り出し、100
U/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシン(ニューヨーク州グランド・アイランド、Gibco社)を加えた、暖めたダルベッコの改良イーグル培地F-12(ニューヨーク州グランド・アイランド、Gibco社)を入れたペトリ皿に配置した。子宮角を長手方向に切り開き、7つの生検(直径2mm)を皮膚生検パンチ(ニューヨーク州ベスパイジ、Miltex社)を用いて採取し、7-0の絹製撚糸(ニュージャージー州ソマーヴィル、Ethicon社)を用いて腹腔壁及び腸間膜(それぞれ4つ及び3つ)に縫合した(それぞれ4つ及び3つ)。 腹壁を5-0の絹製撚糸を連続的に用いて閉じた。
【0146】
最初の実験では、子宮内膜症手術を受けた6匹のメスのC57BL/6マウスに、エンドスタチンのマウスN末端断片(100μl)(mP-1)を1日に2回、s.c.注射した。ペプチドは1mMの亜鉛(ZnCl2)を補ったPBSに溶解させた。これらの実験においては、亜鉛が各分子に結合するように、亜鉛を充分な量、提供した。3匹のマウスには、mP-1を低用量(2.5 mg/kg)、与え、他の3匹のマウスにはmP-1をより高用量(10 mg/kg)、与えた(図8)。コントロール動物にはPBSに 1 mM ZnCl2 を加えたものを注射した。処理は術後1日目に開始され、4週間続けてから実験を終了した。
【0147】
より大規模な追跡実験では、処理群のマウスに、2.5 mg/kg の用量のペプチドを4週間、投与した。最初の実験について上述した通りに、ペプチド溶液(そしてコントロール群にはPBS)に、亜鉛を加える(図9)か、又は亜鉛を加えなかった(図10)(n=10/群)。mP-1を投与する群に加え、二つの更なる群を加えた(n=10/群)。一つの群にはカルボキシ末端に近いエンドスタチン・ペプチドであるmP-6を、そして他方の群にはアミノ酸1及び3の位置のヒスチジンをアラニンに変更してある変異型のmP-1を投与した(mP1-H1/3A)。
【0148】
4週間の処理後、マウスをと殺し、最初の腹側正中線切開を再開放した。肉眼による外観又は縫合位置のいずれかにより、病巣をそれらの移植部位で特定した。それらを計数し、各病巣の二つの垂直方向の直径(D1、D2)を測径器で1ミリメートルのほぼ10分の1まで測定した。病巣の体積を、球の式の体積=D1×D2×π/4を用いて決定した。次に、病巣を切除し、組織分析に向けて10%のリン酸緩衝ホルマリン中に保存した。同時に、卵巣及び残った子宮もホルマリン中に保存した。10時間後、試料を、標準化された技術を用いた組織処理まで、3:1 PBS/エタノール溶液に移した。その後、全ての試料を組織の切り出し用にパラフィンに包埋した。
【0149】
最初の実験において、コントロール病巣は先の実験で分かった通常の大きさ(6.56mm2、±2.46)まで成長した。図8に示すように、mP-1による処理では、子宮内膜症病巣の成長がそれぞれ低及び高用量群で51%及び55%、阻害された。この大規模追跡実験では、0.25 mg/kg mP-1による処理で、 亜鉛を加えなかった場合のコントロール動物(それぞれ病巣面積 3.9 mm2 ± 2.01 対 6.2 mm2 ± 2.3)に比較したときの38%の病巣面積減少を示した。と同時に、図10に示すように、 mP-6 群の病巣成長も、38% 阻害された(病巣面積 3.9 mm2 ± 1.09)。変異型のmP-1で処理されたマウスでは、コントロール群(6.2 mm2 ± 1.38)に比較して、子宮内膜症病巣の成長に違いは見られなかった(図10)。
【0150】
ZnCl2
を加えた場合、子宮内膜症病巣の成長は、PBSコントロールに比較して43% (mP-1) 及び 38% (mP-6) 、阻害された(それぞれ病巣面積 3.38 mm2 ± 2.20、3.64 mm2 ± 1.70 対 5.90 mm2 ± 2.90)(図9)。ZnCl2 を全く加えなかった場合、mP-1
による阻害はそれでも尚、PBS群に比較して有意だった(50% 阻害、それぞれ3.16 mm2 ± 1.30 対. 6.35 mm2 ± 1.00)。mP-6 は子宮内膜症病巣の成長を21%、確かに阻害した。この実験は、ZnCl2の添加がペプチドの効験に必要であるかを調べ、 最初の実験で得たデータを確認するために行われた。驚くべきことに、我々は、亜鉛がペプチド溶液中に存在する場合、mP1及びmP6の両者が子宮内膜症病巣の成長を阻害したことを見出した。しかし、亜鉛の添加がない場合、mP6 の示した阻害はmP1よりも小さかった。
【0151】
抗血管新生性ペプチドは発情周期に何ら影響しない
上で用いた血管新生阻害物質の発情周期に対する効果を調べるために、最初の二つの実験のマウスで、子宮内膜症実験の中間で毎日、膣スメアを採取した。細胞学的染色で存在する細胞を評価することにより、発情周期の段階を分類した。簡単に説明すると、これは以下の通りに行われた。手術前に発情周期を同期化させるために、マウスを5匹の群にして1週間、飼育した。子宮内膜症手術後、周期の停止を防ぐ意図で、全てのマウスを個別のケージに入れた。オスの不在時では、群にして飼われたメスのマウスは発情休止期となる。術後2週目から始めて、1週間の期間にわたる毎日の膣スメアの細胞学的分析により発情周期を評価した。それぞれの日、早朝数時間の間に検査を行った。オートクレーブ済みの濡らした先を丸くした爪楊枝を用いて動物の膣の表面細胞層を優しく剥ぎ取った。細胞を、染色のためにガラス製のスライド上のエバンズ・ブルー染料の0.9%生理食塩水溶液一滴に移し、ガラス製のカバー・スリップで密封し、顕微鏡(ニューヨーク州カール・ツァイス社)で調べた。次に、各スライドを、処理の形及び各マウスの前のデータを知らされていない二人の個別の調査者により、低倍率(×40乃至×100)で分析した。
【0152】
最初の実験では、毎日の膣細胞学検査により、両方の処理群及びコントロール群のマウスが正常な周期にあることが示された。腫瘍研究で用いられた用量の4倍である10 mg/kgを用いた場合でも、負の影響はなかった。全ての動物が全発情周期を何回も、経た。マウスの一回の発情周期は通常、1.5から5日間、かかるため、この実験での群内及び群間のばらつきが説明できる。
【0153】
これらの発見は、より大規模な実験でも再現できた。mP-1又は他の二つのペプチドmP-6 及びmP-1-H のいずれも、これらのマウスで発情周期の停止を引き起こさなかった。
【0154】
エンドスタチン・ペプチドは黄体の形成を低下させない
黄体(CL)は排卵後の成熟卵胞の残骸であり、主に結合組織、顆粒層及び内卵胞膜細胞から成る。卵巣に黄体が存在することは、最近排卵があったことの指標である。従って我々は、mP-1で処理されたマウス及び賦形剤で処理されたマウスの卵巣を、CL形成について調べた。mP-1で子宮内膜症を誘発させたC57Bl/6J マウスの処理から4週間後に、卵巣を摘出し、ホルマリンで固定し、パラフィン包埋した。12匹の無作為に選ばれたマウス(最初の二つの実験の両方の群から3匹)の卵巣を切片(4-6μm)にし、4つの連続切片を一枚のスライドに載せた。次に一枚置きのスライドをヘマトキシリン及びエオシン(H/E)で染色した。各スライド上で卵巣一つ当たりの黄体の最高数を記録し、全数値を加算し、平均数を計算した。
【0155】
その結果は、黄体が、最初の実験の両方の処理群に存在していたこと、そしてmP-1の注射は、卵巣中の黄体の平均数をコントロール動物に比較しても低下させなかったことを示している。
【0156】
このように、これらの結果は、血管新生阻害物質mP-1はマウスにおいて子宮内膜症病巣の成長を阻害しつつ、卵巣機能を抑制しないという我々の発見を裏付けるものである。
【0157】
エンドスタチンはメスのマウスの受精率に影響しない
メスのSCIDマウスにヒト膵臓腫瘍細胞を皮下注射した。腫瘍がほぼ100mm3の体積に達したときに、エンドスタチン又はプラセボ処理を開始し、研究終了時まで続けた。3日後にメスは交尾した。毎日の膣検査では、エンドスタチンは、粘液栓の存在で示されるように、交尾時期を遅らせることはないことを示した。PBS群中で、オスとの遭遇と、メスの膣中の粘液栓の存在との間の時間と定義される交尾時間は、ポンプ処理マウスの場合は2.0 ± 1 日であり、そして注射処理マウスの場合は1.9 ± 0.9 日だった。マウスをエンドスタチンで処理した場合、栓が現れるのに2.6 ± 1.4 日(ポンプ)及び 2.8 ±
1.5 日(注射)かかり、統計上有意に長いことはなかった(ポンプの場合p = 0.35 、注射の場合 0.14 )。交尾の成功には、mP-1注射で処理されたマウスでは1.5 ± 0.6 日かかり、やはり注射コントロールと有意な違いはなかった(p = 0.67)(図11)。
【0158】
生産での妊娠率はエンドスタチン又はmP-1による処理で低下しなかった。コントロール群(PBS)では、二つの別々の実験でこれらはポンプ・マウスでは39%乃至100% の範囲であり、そして注射マウスでは60% 乃至100% の範囲だった。 エンドスタチンで処理されたマウスは、75%乃至100% (ポンプ・マウス)、そして注射群では 60% の妊娠率を有していた。mP-1を投与された全てのマウスが妊娠した。
【0159】
エンドスタチン又はmP-1のいずれかによる処理が、妊娠期間を変化させることもなかった。PBSポンプ・マウスは両方の実験で平均 20 ± 0 日妊娠しており、それらの注射による相対する数値は20 ± 0 及び20.3 ± 0.5 日だった。エンドスタチン・ポンプで処理した場合、妊娠の平均の長さは20.6 ± 1.2 及び20.75 ± 2 日の範囲であり、mP-1群ではちょうど20日だった。マウスの通常の妊娠期間は19-21 日の範囲である。
【0160】
エンドスタチン及びmP-1は仔に対してマイナスの影響を有していなかった
別の抗血管新生薬の研究から、それらが催奇形性を起こすことがあることが知られている。この研究では、我々は、エンドスタチン又はmP-1で処理されたマウスの仔に対し、何らマイナスの影響を観察しなかった。仔はすべて生命力あり、健康で、異常の粗兆候はなかった。ポンプ群(PBS: 4.6 ± 1.7; エンドスタチン:5 ± 1.8;
p = 0.57)で、分娩一回当たりの同産児数はエンドスタチン処理で減少しなかった。同じことが注射研究(PBS: 4.2 ± 2.4; エンドスタチン:5 ± 1; p
= 0.63)でも言え、mP-1では、同産児数の統計上の増加まで見受けられた(7.4 ± 1.3; P = 0.02)(図12)。分娩日の仔の平均重量も、ポンプ群(PBS: 1.4g ± 0.2; エンドスタチン:1.51g ± 0.17; p = 0.36)及び注射群(PBS: 1.48g ± 0.2; mP-1: 1.29g ± 0.1)で、この処理により有意な影響を受けていなかった。
【0161】
mP-1はヒト内皮細胞の遊走を阻害する
妊娠実験で用いられたmP-1が内因活性を有していたことを証明するために、我々はヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)による遊走検定を行った。MP-1は多様な用量で内皮細胞のVEGF刺激性遊走を阻害することができた。以前に解説されたように(Tjin Tham Sjin and Javaherian)、効験のU型曲線が示され(60 ng/ml mP-1 25% の阻害;200 ng/ml 46% の阻害;600 ng/ml
44% の阻害)、腫瘍研究のデータが裏付けられた(図13)。このデータは、mP-1が、受精及び妊娠に対して毒性効果を示さずに、抗内皮細胞効果を確かに有していたことを示唆するものである。
【0162】
材料及び方法
細胞培養及び試薬
ヒトBxPC-3 膵臓カルシノーマ細胞を以前に解説された通りに成長させ、維持した(Kisker et
al. (2001) Cancer Res, 61:7669-7674; O'Reilly et al. (1994) Cell, 79:
315-328)。細胞を175-cm2
の細胞培養フラスコで成長させた。初代ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC;カリフォルニア州サンディエゴ、Cambrex/Biowhittaker社)を供給業者の指示に従って維持した。実験に向けて細胞をサブコンフルエントになるまで成長させ、4代から7代までの継代の間に用いた。
【0163】
凍結乾燥させた組換えヒトエンドスタチン(メリーランド州ロックビル、EntreMed 社よりご厚誼により提供)を無菌のマイクロピュアな二重蒸留水で128mg/mlのストック濃度に再構築し、無菌のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈してから使用した。
【0164】
27個のアミノ酸によりマウスN末端エンドスタチン・ペプチド(mP-1)(Tjin Tham Sjin and Javaherian)はSynpep 社(カリフォルニア州ダブリン)で合成された。凍結乾燥させた該ペプチドを1M ZnCl2 のPBS溶液に再懸濁させ、アリクォートし、使用時まで−80℃で凍結させた。
【0165】
動物研究
動物研究はすべて、連邦、地方及び機関の指針に従ってマサチューセッツ州ボストンのチルドレンズ・ホスピタルの動物施設で行われた。8週齢のメス及びオスの免疫無防備状態のマウス(SCID、マサチューセッツ州ボストン、マサチューセッツ・ジェネラル・ホスピタル)を性別別に5匹の群にしてケージに入れ、1週間、バリア内飼育施設で順応させた。マウスにはオートクレーブ済みの固形動物試料及び水を適宜、与えた。
【0166】
手術法及び超音波画像法は全て、イソフルラン(イリノイ州ディアフィールド、Baxter社)による吸入麻酔下で行われ、マウスは完全に回復するまで観察された。動物は、致死量のイソフルランの後に頸部脱臼により安楽死させた。
【0167】
腫瘍モデル
我々は以前、ヒトエンドスタチンが、異種移植された膵臓癌細胞の腫瘍成長を阻害できることを示している(Kisker et al., (2001) Cancer Res,
61:7669-7674)。我々はこのモデルはエンドスタチン効力の生物マーカとして用いた。ヒトBxPC-3 細胞を上述したように細胞培養で成長させた。無菌のPBSで洗浄した後、細胞をトリプシン処理し、 10% ウシ胎児血清(FCS) 及び1% グルタミンペニシリンストレプトマイシン (GPS) 溶液を含有するRPMI 1640培地に素早く再懸濁させた。遠心分離後、細胞濃度を無添加物RPMI 1640培地中で50×106 個の細胞/ml に調節し、氷上に維持した。メスのSCIDマウスの腹側を剃毛し、裸になった皮膚を、注射前にエタノールで洗浄した。そこで5×106 個の細胞/ml を100μlに入れた懸濁液をこれらのマウスの腹に、正中線のほぼ1センチメートル左側皮下注射した。
【0168】
マウスの重さを量り、腫瘍の二つの直径を7日毎にダイアル式測径器を用いて測定した。
腫瘍の体積は式 a2 x b x 0.52を用いて計算されたが、このとき
a は短い方の直径、そして b は長い方の直径である。腫瘍体積がほぼ100mm2の体積に達したときに、マウスを4つの群に分割した。
【0169】
一番目の実験中、一つの群にはエンドスタチン(20
mg/kg; n=8)又は賦形剤(n=8)を皮下浸透圧ポンプ(カリフォルニア州クペルチーノ、Durect社)を通じて投与した。ポンプは、小さな切開を通じて挿入され、動物の腹の右側横面上の皮下ポケット内に配置された。ポンプを毎週、合計4週間にわたって交換した。
【0170】
他方の群には、エンドスタチン(100
mg/kg、n=5)又は賦形剤(n=5)を同じ期間、毎日皮下注射した。注射群の腫瘍体積がポンプ群に比較して僅かに小さくなった時点で、一日後に処理を開始した。
【0171】
二番目の研究では、我々は、エンドスタチンを用いた実験を皮下ポンプで繰り返した。このシリーズの他方の群には、エンドスタチンのマウスN末端断片(mP-1)を、2.5 mg/kg の用量を1日に2回か投与するか、又はPBS (それぞれn=5 )を投与した。
【0172】
交尾
治療開始から3日後に、メスのマウスを、オスのSCIDマウスを1:1の比で入れたケージに加えた。全てのオスは、メスと合わせる前の3日間、別にして飼育し、オスの性欲を高めるためにメスの寝わらをオスのケージに加えた。
【0173】
その後の7日間、すべてのメスを、交尾の徴として膣内粘液栓について調べた。これらの検査は、結果を最適化するために早朝に行われた。粘液栓が見とめられたら、交尾が「成功した」とみなし、医原性ストレスを減らすために、メスをそれ以上、検査しなかった。
【0174】
妊娠の経過にわたって以下のパラメータを評価した:オスとの遭遇と粘液栓の発生との間の時間を言う「交尾時間」;粘液栓が観察されてから15日後に超音波で測定される「妊娠率」。生存中の胎児の数をこの手法の間、計数した;交尾成功から分娩までの時間で測定される「妊娠の長さ」;出生日に計数される「合計及び生存中の同腹仔の数」;出生日の全仔の重さを量り、平均重量を計算することによる「個々の仔の重量」。
【0175】
超音波画像法
交尾成功の日を開始点として用いて、考えられる妊娠日を計算した(通常は19乃至20日)。分娩中の問題又は産後の共食いを原因とする仔の損失を度外視するために、我々は、計算された妊娠日15のうちの生存胎児の数を計数した。我々は、吸入麻酔下で15 MHz の線形変換器(Sequoia システムズ、ペンシルバニア州モルヴァーン、Siemens Medical Solutions
米国社)を用い、心臓及び骨格の構造の両方を特定することにより、Bモードの胎児数を計数した。胎児の心臓血管系のドップラー超音波画像法を行い、血流が表示されたときにマウスを生存しているものとして計数した。
【0176】
遊走検定
10μg/mlのフィブロネクチンのPBS溶液で一晩、4℃で被覆し、PBSですすいだ改良ボイデン・チャンバ(直径6.5-mm、厚さ10-μm、ポア8-μm、マサチューセッツ州ケンブリッジ、Transwell-Costar 社)を用いて細胞遊走検定を行った。サブコンフルエントな細胞をトリプシン処理(0.01% トリプシン/5mM EDTA)し、トリプシン中和化溶液(Cascade Biologics社、オレゴン州ポートランド)で中和し、洗浄し、0.1%BSAを加えた内皮細胞基本培地(EBM; Clonetics社)に、ヒトエンドスタチン(40、200、1000 ng/ml)の存在下又は非存在下で再懸濁させた。二番目の実験では、我々は、600 ng/ml のヒトエンドスタチン又はmP-1 のいずれかを多様な用量(60、200、600 ng/ml)、加えた。細胞を懸濁液中に30分間、維持し、各遊走チャンバの上端に加え、下側のチャンバにVEGF
(5 ng/ml)を存在させて、又は存在させずに、4時間、遊走させた。接着細胞を固定し、Hema-3染料システム(ヴァージニア州ミドルタウン、Fisher Diagnostics社)を用いて、メーカの指示に従って染色した。非遊走細胞を綿棒で取り除き、メンブレン一枚当たりの遊走細胞数を、スポット・デジタル・カメラ(ミネソタ州スターリング・ハイツ、Diagnostic Instruments社)に接続した明視野顕微鏡を用いて捕らえた。捕らえられた画像による遊走細胞をNIH画像ソフトウェアを用いて計数した。各判定値は、三つの個別のウェルの平均を表し、誤差棒は標準偏差を表す。VEGFのみへの遊走を100%の遊走を表すとして、遊走を遊走パーセントに正規化した。各実験は、最低三回、繰り返された。
【0177】
引用による援用
(本出願全般を通じて引用された文献、GenBank受託番号、発行済み特許、公開済み特許出願を含む)引用された全参考文献の内容は、引用をもってここに援用されたものであることを明示しておく。
【0178】
均等物
当業者であれば、ごく慣例的な実験を用いるのみで、ここに解説された本発明の具体的な実施態様の均等物を数多く、認識され、又は確認できることであろう。このような均等物は、以下の請求の範囲の包含するところであると意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】図1は、ヒト膵臓癌(BxPC-3)のヒトエンドスタチン・ペプチドによる治療を示すグラフである。
【図2】図2A−Cは、エンドスタチンのN末端ドメインがその抗腫瘍特性を担うことを示すグラフである。図2Aは、マウスFc-エンドスタチン及びマウスペプチドP1、P2、P5、及びP6(それぞれmP1、mP2、mP5及びmP6)によるLLCの治療を示すグラフである。図2BはCD31染色を示すLLC切片の画像である。図2Cは血管密度(*p<0.015対PBS(コントロール))の判定を示すグラフである。そして図2D は、エンドスタチンの結晶構造を示す概略図である。
【図3】図3A−Eは、エンドスタチンの亜鉛結合部位が抗腫瘍活性にとって重要であることを示すグラフである。図3Aは、mP1及びmP1−H1/3Aの概略図である。図3Bは、mP1及びmP1−H1/3Aへの亜鉛結合を示すグラフである。図3Cは、mP1及びmP1−H1/3AによるLLCの治療を示すグラフである。図3Dは、CD31で染色したLLC腫瘍切片の画像を示す。そして図3Eは、血管密度の判定を示すグラフである。
【図4】図4は、亜鉛有り又はなしで、LLCをmP1又はmP1−H1/3Aで一日に二回処理されたマウスの4日目、7日目、10日目及び14日目の腫瘍体積を示すグラフである。
【図5】図5は、エンドスタチン・ペプチドによる内皮細胞遊走の阻害を示すグラフである。
【図6】図6A及びBは、エンドスタチン・ペプチドによるVEGF誘導性透過性の阻害を示す。図6Aは、ホルムアミドと一緒に室温で5日間インキュベートすることにより皮膚から抽出されたエヴァンの青色染料を、620nmで測定したときの定量を示すグラフである。そして図6Bは、マイルズ検定の代表的画像を示す(VはVEGFであり、PはPBSである)。
【図7】図7は、mP1エンドスタチン・ペプチドmP1、mP1−15、mP1-20又はPBSが投与されたマウスにおける腫瘍体積を、治療開始後の日数の関数で示したグラフである。
【図8】図8は、コントロール・マウス群、低用量のmP-1(配列番号4)で治療されたマウス群、及び高用量のmP-1で治療されたマウス群における子宮内膜症病巣の大きさを示すグラフである。
【図9】図9は、塩化亜鉛を添加したときの、コントロール・マウス群、低用量のmP-1で治療されたマウス群、mP-6(配列番号140)で治療されたマウス群、及びmP-1-H(配列番号150)で治療されたマウス群における子宮内膜症病巣の大きさを示すグラフである。
【図10】図10は、塩化亜鉛を添加しないときの、コントロール・マウス群、mP-1で治療されたマウス群、mP-6で治療されたマウス群、及びmP-1-Hで治療されたマウス群における子宮内膜症病巣の大きさを示すグラフである。
【図11】図11は、交尾時間はエンドスタチン又はmP-1治療により延長されないことを示すグラフである。
【図12】図12は、同腹子の大きさは、ポンプ群のエンドスタチン治療でも、あるいは注射群のmP-1によっても減少しなかったことを示すグラフである。
【図13】図13は、エンドスタチン及びmP-1がヒト臍帯静脈内非細胞(HUVEC)の遊走を阻害することを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬用担体と、有効量の、配列番号2又は4のうちの約12個のアミノ酸から成るペプチドとを含む医薬組成物を対象に投与するステップを含む、前記対象の子宮内膜症を治療又は防止する方法。
【請求項2】
前記ペプチドが、配列番号2又は4のうちの約15個のアミノ酸から成る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペプチドが、配列番号2又は4のうちの約18個のアミノ酸から成る、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ペプチドが、配列番号 2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、125、126、127、128、129、130 and 131から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ペプチドが一個のアミノ酸の置換、欠失又は追加を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ペプチドが二個のアミノ酸の置換、欠失又は追加を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ペプチドが三個のアミノ酸の置換、欠失又は追加を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記医薬組成物が更に有効量の亜鉛を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ペプチドが配列番号2又は配列番号4である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
医薬用担体と、配列番号2又は4のうちの約12個のアミノ酸から成るペプチドをコードする核酸を含有するベクタとを含む医薬組成物を対象に投与するステップを含み、前記ベクタが、有効量のペプチドを前記対象に発現させることができる、前記対象の子宮内膜症を治療又は防止する方法。
【請求項11】
前記核酸が配列番号1、3又は5のうちの36個のヌクレオチドから成る、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸が配列番号1、3又は5のうちの60個のヌクレオチドから成る、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸が、配列番号 1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121 及び123から成る群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記核酸が、一個のアミノ酸の置換、欠失又は追加を含有するペプチドをコードしている、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記核酸が、二個のアミノ酸の置換、欠失又は追加を含有するペプチドをコードしている、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記核酸が、三個のアミノ酸の置換、欠失又は追加を含有するペプチドをコードしている、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬組成物が更に有効量の亜鉛を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記核酸が配列番号2又は配列番号4をコードしている、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−529410(P2007−529410A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524956(P2006−524956)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/028476
【国際公開番号】WO2005/042566
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(506069273)チルドレンズ メディカル センター コーポレーション (5)
【氏名又は名称原語表記】CHILDREN’S MEDICAL CENTER CORPORATION
【住所又は居所原語表記】300 Longwood Avenue, Boston,MA 02115 (US).
【Fターム(参考)】