説明

子宮頸部癌の治療方法

【課題】子宮頸部癌、又はヒト乳頭腫ウィルスにより感染される細胞の治療方法を提供。
【解決手段】インターロイキン−20(IL−20)を単独で、又は放射線又は化学治療法剤、又は関与する細胞又は病巣の手術的切除と組合して投与する。該化学療法剤は、ブレオマイシン、クロラムブシル、エピルビシン、5−フルオロウラシル、イフォスファミド、マイトマイシン、メトトレキセート、ビンクリスチン、シスプラチン及びビンブラスチンから成る群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景:
アメリカ癌協会によれば、侵襲性の子宮頸部癌(cervical cancer)の12,000人の新規患者が1999年、アメリカ合衆国において診断されている。同じ年、4800人の患者がその疾病で死亡することが予測される。これは、女性のすべての癌死亡の約1.8%、及び婦人科癌死亡の18%を示す。しかしながら、年齢20〜39の女性に関しては、子宮頸部癌は、癌死亡の2番目の原因である。分子及び疫学的研究は、ヒト乳頭腫ウィルス(HPV)、子宮頸部上皮内腫瘍(cervical intraepithelial neoplasia)(CIN)及び子宮頸部(cervix)の侵襲性癌間での強い関連性を示した。ヒト乳頭腫ウィルス感染、子宮頸部上皮内腫瘍及び子宮頸部の癌の治療のための新規治療物を開発する必要性がある。
【発明の概要】
【0002】
本発明は、子宮頸部癌を有する哺乳類にインターロイキン−20(IL−20)を投与することによってこの必要性を満たす。IL−20はまた、ヒト乳頭腫ウィルス感染を治療するためにも使用され得る。本発明はまた、子宮頸部癌細胞とIL−20とを接触することによって、その子宮頸部癌細胞の増殖を阻害するための方法も提供する。インターロイキン−20(形式的には、Zcyot10と呼ばれる)は、1998年11月25日に出願された国際特許出願PCT/US98/25228号に記載される方法に従って生成され得る。
【発明を実施するための形態】
【0003】
ヒトIL−20ポリペプチドは、配列番号1及び2に示されるように最初のMetを伴って、176個のアミノ酸の配列から構成される。アミノ酸残基1−24はシグナル配列であり、そして成熟IL−20ポリペプチドは、配列番号12により定義される、残基25(ロイシン)〜アミノ酸残基176(グルタミン酸)から成るアミノ酸配列により表されると思われる。本発明のもう1つの態様は、配列番号3及び4の配列により定義される。配列番号4のポリペプチドは、151個のアミノ酸残基から成り、ここでアミノ酸1〜24は、シグナル配列を含み、そして成熟配列は、配列番号13により定義されるアミノ酸残基25(ロイシン)〜アミノ酸151(グルタミン酸)から構成される。もう1つの活性変異体は、配列番号2のアミノ酸残基33(システイン)〜アミノ酸残基176から構成される。この変異体はまた、配列番号26によっても定義される。
【0004】
マウスIL−20はまた、配列番号18及び19により定義されるような176個のアミノ酸残基から構成されるポリペプチドでもある。マウスIL−20は、配列番号19のアミノ酸残基1(メチオニン)〜アミノ酸残基24(グリシン)のシグナル配列を有する。従って、成熟マウスIL−20は、配列番号20によってまた定義される、アミノ酸残基25(ロイシン)〜アミノ酸残基176(ロイシン)から成る。もう1つの活性変異体は、配列番号19のアミノ酸133(システイン)〜アミノ酸176から成ると思われる。この変異体はまた、配列番号25によっても定義される。
【0005】
マウスIL−20の変異体は、配列番号33及び34により定義される。この変異体は、154個の長さのアミノ酸残基であり、そして配列番号34のアミノ酸残基1(メチオニン)〜アミノ酸残基24(グリシン)のシグナル配列を有する。従って、成熟配列は、配列番号34のアミノ酸残基25(ロイシン)〜アミノ酸残基154(ロイシン)に及び、この成熟配列はまた、配列番号25によっても定義される。
【0006】
子宮頸部癌の病理学
子宮頸部異形成(cervical dysplasia)細胞及び子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)細胞は、多くの年月にわたって侵襲性子宮頸部癌を進行せしめる。CIN等級I, II及びIII は、軽い、中位の及び重度の子宮頸部異形成に応答する。重度の形成異常及び癌を包含するCIN III は、自発的に後退するようには見えず、そして治療されない場合、結果的に基礎膜を侵入し、侵襲性癌になる。鱗状細胞癌は、すべての子宮頸部癌の80〜85%であり;腺癌は残りのほとんどの原因である。侵襲性癌は通常、周囲の組織及び膣中への直接的な拡張により、又はリンパを通して、子宮頸部により排出される骨盤性及び傍大動脈(para-aortic)リンパ節に広がる。血液学的拡張が可能である。
【0007】
子宮頸部癌の症状、徴候及び診断
CINは通常、無症候性であり、そして異常性パパニコラウスミアのために、発見される。初期段階の子宮頸部癌を有する患者は通常、不規則な膣出血を伴い、これはしばしば、性交後であるが、しかし月経間出血又は機能性子宮出血も存在する。より大きな子宮頸部癌又は進行した段階の疾病を有する患者は、悪臭のある膣分泌物、異常性膣出血、又は骨盤痛を伴う。閉塞性尿路疾患、背痛及び足の腫大が、後期段階の疾病の明示である。一般的に最初にパパニコラウスミアにより検出される疑いのある病巣は、生検を実施される。臨床学的疾病が侵襲性である場合、病期分類は、転移性調査、例えば細胞顕微鏡、S状結腸鏡検査、IV腎盂尿管造影(pyelography)、胸部x−線及び骨格x−線による物理的試験に基づいて行われる。
【0008】
IL−20による子宮頸部癌の治療
子宮頸部癌は、その疾病を有する雌哺乳類、特にヒト女性へのIL−20の投与により治療され得る。IL−20は、疾病への局在化のために、病巣内又は筋肉内に投与され得る。転移性疾病に関しては、IL−20はまた、腹腔内投与、例えば静脈内投与により投与され得る。IL−20は、単独で、又は標準の治療、例えば手術、放射線又は他の化学療法剤、例えばブレオマイシン、クロラムブシル、エピルビシン、5−フルオロウラシル、イフォスファミド、マイトマイシン、メトトレキセート、ビンクリスチン、シスプラチン及びビンブラスチンと共に投与され得る。
【0009】
ヒト乳頭腫ウィルスにより感染された細胞/性器疣贅(genital warts)を治療するためへのインターロイキン−20の使用
ヒト乳頭腫ウィルス(HPV)により感染された細胞は、ウィルスの増殖を阻害するためにIl−20により治療され得る。HPVタイプ6, 11, 16, 18, 31, 33及び35により引き起こされる肛門性器疣贅(anogenital warts)は、性的に伝達され、そして1〜6ヶ月の潜伏期間を有する。タイプ16又は18により引き起こされる頸管内いぼ感染は、子宮頸部上皮内腫瘍及び子宮頸部癌の原因として関連して来た。HPVタイプ16及び18は一般的に、外部性器疣贅を引き起こさない(これは、通常、タイプ6及び11により引き起こされる)。
【0010】
症状、徴候及び診断
性器疣贅は通常、拡大する、軟質性で、湿性の細かなピンク又は灰色のポリプとして出現し、花柄になり、そして通常、クラスターで見出される。その表面は、カリフラワーの表面に似ている。男性においては、それらは最も通常には、包皮下領域における暖かな湿性表面上で、冠状溝上、尿管口内、及び陰茎幹上で発生する。女性においては、弁、膣壁、子宮頸部及び会陰が関与している。それらは、同性愛者における肛門周囲領域及び直腸において、特に一般的である。成長速度は異なるが、しかし妊娠、免疫抑制又は皮膚の浸軟は、個人の病巣の成長及びそれらの拡張の両者を促進することができる。性器疣贅は通常、それらの出現により同定されるが、しかし二期梅毒性の扁平コンジュロームから分化される。異型又固執性いぼの生検は、癌を除外するために必要である。
【0011】
IL−20は、単独で、又は標準の治療剤、例えばインターフェロンα又はβ(それらの両者は市販されている)と共に、HPVにより感染された細胞を含む病巣中に直接的に投与され得る。インターフェロンαはScherint Corporation of Kenilworth, New Jerseyから入手でき、そしてINTRON A(商標)と呼ばれる。インターフェロンβは、Biogen of Cambridge, MAにより製造され、AVONEX(商標)と呼ばれる。IL−20はまた、HPVを治療するための他の標準の治療剤、例えば抗有糸分裂剤、例えばポドフィロトキシン、ポドフィリン又は5−フルオロウラシル;腐食薬、例えばトリクロロ酢酸;又はインターフェロンインデューサー、例えばイミキモド(imiquimod)と共に投与され得る。
【0012】
効果的な治療のためのIL−20の量は、多くの異なった因子、例えば投与の手段、標的部位、患者の生理学的状態、及び投与される他の薬剤に依存するであろう。従って、治療用量は、安全性及び効能を最適化するために粉砕されるべきである。典型的には、インビトロで使用される用量は、それらの試薬のインビボ投与のために有用な量での有用な案内を提供することができる。特定の障害の治療のための効果的用量の動物試験は、ヒト用量のさらなる予測的な指示を提供するであろう。投与のための方法は、静脈内、腹膜、筋肉内又は病巣内手段を包含する。医薬的に許容できるキャリヤーは、水、塩溶液、緩衝液を包含するであろう。用量範囲は通常、1μg〜1000μg/kg体重/日であることが予測される。しかしながら、用量は、医者により決定される場合、高くても又は低くても良い。賦形剤及び安定剤が添加され得る。
【0013】
それらは、グリシン、ヒスチジン、グルタメート、アスパーテート、糖、スクロース、トレハロース、ガラクトース、ソルビトール、アルギニン、D−及び/又はL−アミノ酸、糖アルコール、ラクトース、マルトース、トレオニン、リシン、メチオニン、イソロイシン、界面活性剤、例えばTween 80, Tween 20, ポリエチレングリコール(PEG)(特に、1000〜35000 Daの分子量を有するそれらのPEG)、セチルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ラノリンアルコール及びソルビタンを包含する。還元剤、例えばシステイン、N−アセチル及びソルビタンが包含され得る。薬剤配合及び用量範囲の完全な議論については、Remingtorz's Phannaceutical Sciences, 18th Ed. , (Mack Publishing Co., Easton, Penn. , 1996), and Goodman and Gilman's : The Pharmacological Bases of Therapeutics, 9th Ed. (Pergamon Press 1996)を参照のこと。
【0014】
IL−20はまた、子宮頸部癌のための他の治療、例えば放射線及び化学治療と組合して投与され得る。化学療法剤の例は、ブレオマイシン、クロラムブシル、エピルビシン、5−フルオロウラシル、イフォスファミド、マイトマイシン、メトトレキセート、ビンクリスチン、シスプラチン及びビンブラスチンを包含する。
【実施例】
【0015】
本発明者は、正常な成長条件下で細胞が成長することを妨げるIL−20の能力を測定するためにHeLa299細胞毒性アッセイにおいてIL−20を試験した。本発明者は、この細胞障害アッセイについての検出及び読み出しとしてMTT試薬(Promega, Madison, USA)を用いた。
【0016】
細胞毒性アッセイの方法:
1日目−96ウェル形式において、5000個の細胞/ウェルで完全成長培地(血清を含む)
に細胞をプレートし、そして37℃及び5%CO2下で、一晩、それらをインキュベートする。
2日目−培地を捨て、そして完全成長培地中、正の対照レチン酸(100μM)と共に、完全成長培地中、用量応答の適切なリガンド(10,100、及び1000ng/mlでのIL−20 Zmdal, 及びMDA7)を添加し、ここで細胞が正常な条件下でいかに正常に成長するかの対照として、完全成長培地のままいくつかのウェルを放置した。細胞をインキュベーターに入れ、そして72時間、アッセイを進めた。
【0017】
5日目−ウェル当たり15μlのMTT試薬を添加し、4時間、細胞をインキュベートし、次に100μlの停止溶液を添加し、細胞をさらに1時間インキュベートし、次に、マルチラベルカウンター(Victor2, Perkin Elmer Life Sciences Inc., Boston)上でプレートを読み取る。MTTプロトコールは、2種の読み取りを提供し、すなわち1つは650の波長でであり(バックグラウンド)、そしてもう1つは572の波長でである。実際の出力を得るために、572の読み取りから650の読み取りを控除する。それらの数を平均し、そして%阻害率に転換する。
結果:
−レチン酸は、53%の成長阻害を与えた(正の対照)。
−IL−20は最大20%の成長阻害を与えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン−20(IL−20)を子宮頸部癌細胞に接触せしめることを含んで成る、子宮頸部癌細胞の成長及び/又は増殖を阻害するための方法。
【請求項2】
前記子宮頸部癌細胞を、IL−20と共に放射線により治療する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記子宮頸部癌細胞を、IL−20と共に、1又は複数の追加の化学療法剤により治療する請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記化学療法剤が、ブレオマイシン、クロラムブシル、エピルビシン、5−フルオロウラシル、イフォスファミド、マイトマイシン、メトトレキセート、ビンクリスチン、シスプラチン及びビンブラスチンから成る群から選択される請求項3記載の方法。
【請求項5】
子宮頸部癌を有する雌哺乳類にIL-20を投与することを含んでなる、前記哺乳類を治療するための方法。
【請求項6】
前記IL−20が、放射線と共に投与される請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記IL−20が、化学療法剤と共に投与される請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記化学療法剤が、ブレオマイシン、クロラムブシル、エピルビシン、5−フルオロウラシル、イフォスファミド、マイトマイシン、メトトレキセート、ビンクリスチン、シスプラチン及びビンブラスチンから成る群から選択される請求項7記載の方法。
【請求項9】
ヒト乳頭腫ウィルス(HPV)により感染された細胞にIL−20を接触せしめることを含んで成る、ヒトHPVの増殖又は成長を阻害するための方法。
【請求項10】
前記IL−20が、HPVにより感染された性器疣贅中に注入する請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記IL−20が、インターフェロンα、インターフェロンβ、ポドフィロトキシン、ポトフィリン、5−フルオロウラシル、トリクロロ酢酸及びイミキモドから成る群から選択された剤と共に投与される請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記IL−20が、HPVにより感染された細胞の電気焼灼、レーザー、寒冷療法又は手術的切除と組合して投与される請求項9記載の方法。
【請求項13】
HPVにより感染された個人に、治療的有効量のIL−20を投与することを含んで成る、前記個人を治療するための方法。
【請求項14】
前記個人がHPVにより感染された性器疣贅又は病変を有し、そして前記IL−20が感染された病変又は性器疣贅中に注入される請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記IL−20が、HPVにより感染された性器疣贅又は病変の電気焼灼、レーザー、寒冷療法又は手術的切除と組合して前記性器疣贅中に注入される請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記IL−20が、インターフェロンα、インターフェロンβ、ポドフィロトキシン、ポトフィリン、5−フルオロウラシル、トリクロロ酢酸及びイミキモドから成る群から選択された剤と共に投与される請求項14記載の方法。
【請求項17】
子宮頸部癌の治療のための薬剤の製造のためへのIL−20の使用。
【請求項18】
ヒト乳頭腫ウィルス感染の治療のための薬剤の製造のためへのIL−20の使用。

【公開番号】特開2013−49713(P2013−49713A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−261834(P2012−261834)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2009−204182(P2009−204182)の分割
【原出願日】平成14年12月17日(2002.12.17)
【出願人】(505222646)ザイモジェネティクス, インコーポレイテッド (72)
【Fターム(参考)】