説明

子牛等に給与するミルクを殺菌する装置及び方法

本発明は、子牛等への給与のために、ミルクや初乳を殺菌する処理システム及び方法に関する。このミルク処理システム(20)は、ミルク又は初乳を貯蔵するタンク(34)と、循環ポンプ及び配管系(24,26,28,29)と、ミルク温度を調節して維持する熱交換器と、重要な免疫グロブリンを損なわないでミルクを処理する紫外線ミルク処理ユニット(紫外線反応器)(30)と、ポンプ及び熱交換器と接続された制御装置(22)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、液体殺菌システムに関し、特に、ミルク(milk)や初乳(colostrum)を子牛等(calf)への給与のために殺菌する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酪農収穫施設の子牛等は、医学的又はその他の理由で、主要な群れから移動させられている牛等から集められた市販できないミルク(「不用乳」)が給与される。酪農用子牛等への市販できないミルクの給与は、酪農作業者にとって経済的であるようにみえるが、伝染性病原体が、ミルクを介して運ばれたり、牛等の乳腺から直接流れ出たりする危険がある。他の病原体は、糞尿又は汚物からミルク中に沈殿したり、適切に冷蔵又は貯蔵されないミルク中の増殖に起因していたりすることがある。
【0003】
この危険を減少させるため、ミルク又は初乳を、子牛等への給与前に殺菌することが好ましい。既知のプロセスにおける殺菌は、ミルクを、標的病原菌を死滅させる標的温度まで加熱するステップと、この温度を所与の期間にわたって維持するステップを含む。殺菌ミルクに関する法令は、2つの異なる殺菌方法を定め、第1の方法は、バッチ式殺菌(低温長時間(LTLT)殺菌)を145°F(62.8℃)で30分間行う方法であり、第2の方法は、高温短時間殺菌(HTST殺菌)を161°F(71.7℃)で15秒間行う方法であり、第2の方法は、通常、連続流れプロセスを用いる。熱を加えて、標的温度よりも高く維持すると、生存能力がある細菌の濃度が対数的に減少する。しかしながら、いくらかの耐熱性の細菌は、このプロセスを生き残る場合がある。さらに、細菌の濃度が非常に高い低品質ミルク中において、いくらかの病原菌は、殺菌プロセスを生き残る場合がある。
【0004】
殺菌は、望ましいことであり、子牛等にとって有害な細菌を死滅させるのにときどき必要であり、かかる有害な細菌は、例えば、大腸菌、セレウス菌、ブタコレラ菌である。ミルクを145°F(62.8℃)よりも高い温度で少なくとも30分間維持すれば、145°Fへの加熱殺菌は、上記細菌のほぼ100%を死滅させるのに成功している。1つの研究は、120°F(48.9℃)の低温を使用してもよいことを提案するが、この温度は、少なくとも60分間維持されなければならない。
【0005】
ミルクをいったん殺菌したら、それを瓶詰めし、冷蔵し、貯蔵し、次いで、100°F〜110°F(37.8℃〜43.3℃)の給与温度まで再加熱する。殺菌したミルクを貯蔵する必要がない場合があり、その理由は、ミルクが容易に入手可能であり、それを加熱殺菌して給与温度まで冷却した後、子牛等に直接給与できるからである。
【0006】
また、初乳が、産まれたばかりの子牛等に産後2時間以内に、そして産後12時間以内に再び給与される。初乳は、産後直後の牛から集められ、比較的高い濃度の炭水化物、タンパク質及び抗体を含む。初乳はまた、高濃度の免疫グロブリンと成長因子を含み、免疫グロブリンは、例えば、IgGである。初乳を殺菌すると、免疫グロブリンを凝固させ、それを失う場合がある。初乳内のIgGの濃度の約25%〜30%は、初乳及びミルクの加熱殺菌中に破壊される。かくして、加熱殺菌は、全体的には有益であるが、ミルク及び初乳に対して不利益な影響を及ぼす。通常、初乳を冷蔵し、瓶詰めし、貯蔵した後、再加熱して、給与する。
【0007】
紫外線殺菌装置を、ミルクを処理するために使用してもよい。リックス等に付与された米国特許第6,916,452号明細書は、ミルクの温度を82.4°F(28℃)よりも高く維持した状態で、1つ又は2つ以上の紫外線滅菌装置ユニットを用いてミルクを酪農場において滅菌した後、ミルクを冷蔵室及び大きいミルク貯蔵タンクに移送することを開示している。かかる殺菌装置は、概念的には十分な根拠があるが、それ自体酪農施設内では使用することができず、その理由は、かかる殺菌装置は、ミルク及び初乳を子牛等に分配し且つ給与する準備をするのに必要な重要な特徴を欠いているからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,916,452号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
有害な細菌を死滅させるが、子牛等の最適な健康のための免疫グロブリンの破壊を少なくし又はなくす改良された殺菌システムが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、子牛等への給与のためにミルク及び/又は初乳を殺菌するシステム及び方法に関する。本明細書で用いる用語「ミルク」は、乳(ミルク)、初乳、その他の子牛等への給与物、及び任意の関連サプリメントを含むと理解すべきである。本明細書で用いる「子牛等」という用語は、任意の酪農用の動物、例えば牛、山羊、及び羊を含む。
【0011】
このシステムは、ミルク又は初乳を貯蔵するタンク又はバットと、循環ポンプ及び配管系と、ミルク温度を調節すると共に/或いは維持する熱交換器と、紫外線殺菌ユニット(「紫外線反応器」)とを含む。制御装置がポンプを作動させてミルクを熱交換器に循環させ、ミルク温度を85°F〜120°F(29.4℃〜48.9℃)まで上昇させ、次いで、温めたミルクを、有害な細菌を死滅させるのに適当な速度及び周回数で紫外線反応器の中を循環させる。次いで、ミルクを冷蔵して貯蔵してもよいし、子牛等に直接給与してもよい。ミルク温度を85°F〜120°F(29.4℃〜48.9℃)に過ぎない範囲に上昇させることによって、免疫グロブリンの破壊が極めて少なくなり、ミルクは、紫外線反応器からの紫外線によって依然として安全に殺菌される。
【0012】
バッチ式殺菌装置と異なり、紫外線反応器は、細菌を死滅させるのにミルクの温度に依存しない。その代わり、200ナノメートル〜280ナノメートルの範囲、即ちUVC範囲(殺菌範囲)の紫外線だけが、細菌を死滅させる。それにもかかわらず、ミルク温度は重要であり、その理由は、低温ミルクがポンプ及び配管系によって撹拌され、紫外線によって適切に処理されにくいバター片が生じることがあるからである。ミルク温度を85°F(29.4℃)以上に上昇させることは、バター片を溶かし又はバター片のサイズを減少させるのに十分であり、その結果、ミルクは、紫外線反応器によって適切に処理されるようになる。バター濃度を最小にする適正なミルク粘度を確保するために、ミルク温度を、好ましくは95°F(35℃)よりも高い温度まで、より好ましくは100°F(37.8℃)よりも高い温度まで上昇させる。他方、ミルクを高すぎる温度まで加熱すると、有益な免疫グロブリンを破壊することがある。免疫グロブリンの破壊を最小にする温度範囲の上限は、120°F(48.9℃)であり、好ましくは115°F(46.1℃)であり、より好ましくは110°F(43.3℃)である。
【0013】
約85°F〜約120°F(29.4℃〜48.9℃)の温度範囲は、約100°F〜約110°F(37.8℃〜43.3℃)の給与温度範囲を含む。ミルクを子牛等に直接給与すべきならば、殺菌のために約100°F〜110°F(37.8℃〜43.3℃)の給与温度範囲に加熱することが適切である。
【0014】
ミルクを殺菌した後にそれを冷蔵して貯蔵すべきならば、85°F〜120°F(29.4℃〜48.9℃)の範囲の下限のミルク温度は、本発明により適切な結果を生じさせ、必要なエネルギーを減少させる。注目すべきことは、処理済みの不用乳を、子牛等が飼育されている酪農施設内の場所まで運ぶ必要がある場合があることである。この状況において、ミルクを給与温度範囲よりも高い温度まで加熱することにより、ミルクを運ぶときのミルクの冷却を補償することができる。熱損失は、周囲条件、殺菌と給与の間の時間、及びその他の要因の関数である。かくして、本発明を利用すると、任意特定の酪農状況における上記要因及びその他の要因を補償するように、ミルク温度を調節することができる。
【0015】
本発明による装置は、1つ又は2つ以上の紫外線ミルク殺菌装置(反応器)、流れ制御装置、温度制御装置、及びミルク温度を設定及び調節する装置を含むのがよく、ミルク温度を設定及び調節する装置は、子牛等の要望やミルクを子牛等まで運ぶための時間、距離及び手法に起因する温度低下に順応するように、本発明による装置から出て行くミルクに最適なミルク温度を設定及び調節する。
【0016】
本発明に利用される紫外線ミルク殺菌装置は、リックス等の米国特許第6,916,452号明細書に開示された種類の紫外線ミルク殺菌装置であるのがよく、上記米国特許を本明細書に援用する。多数の殺菌装置を直列に使用して、ミルクを紫外線反応器の中に通して循環させる回数を減少させるのがよい。
【0017】
好ましくは、本発明の制御装置は、紫外線反応器の構成要素をモニタし、処理時間を、欠陥のある紫外線管、安定器又はそれに関連した構成要素に順応するように調節する。
【0018】
本発明に用いられる流れ制御装置は、計器付きポンプを含み、ポンプは、ミルクを紫外線反応器の中で、ミルク及び/又は初乳の最適な滅菌を確保し且つ紫外線反応器に関連した配管、連結部及び制御システム内の淀みを防止する流量でポンプ送りする。好ましくは、流量は、毎分約17ガロン(64.4リットル)であるが、紫外線反応器の数、サイズ及び効率を変えた場合、その他の流量を使用してもよい。
【0019】
本発明に用いられる温度制御装置は、センサと熱交換器を有するのがよく、熱交換器は、ミルクが殺菌装置から直接給与されるべき子牛等のために、または、殺菌装置と子牛等との間に配置されたミルクライン、容器又は装置における温度損失に順応するために、ミルクを冷却及び貯蔵に最適な温度範囲に温め又は冷やす。それに応じて、殺菌温度を調節するのがよく、これは、本発明では、ミルク温度が殺菌に寄与しないからである。
【0020】
本発明はまた、貯蔵タンク内のミルクの量を測定するミルク量検出器を備えた直立管を有するのがよく、ミルク量検出器は、ミルクの量に基づいて、処理時間を計算し且つ制御する。例えば、100ガロン(378.5リットル)のタンクを、100ガロンのミルクで満たしてもよいし、5ガロン(18.9リットル)のミルクで部分的に満たしてもよく、本発明は、おおよその処理時間を自動的に設定する。
【0021】
本発明の装置はまた、殺菌済みのミルクを遠隔場所の子牛等まで運ぶための可動貯蔵タンクを有するのがよい。可動貯蔵タンクは、断熱され、それを洗浄するスプレーボール又は装置を含むのがよい。可動プラットホームは、殺菌中にミルクが貯蔵されていたタンクを単に運んでもよい。
【0022】
本発明の他の特徴及び利点は、本願の詳細な説明及び図面から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるミルク処理システムの概略図である。
【図2】本発明によるミルク処理システムの斜視図である。
【図3】制御装置を省略した図2のミルク処理装置の斜視図である。
【図4】ミルク用貯蔵タンクを含む、本発明による図2のミルク処理装置の正面図である。
【図5】貯蔵タンクを運ぶ可動プラットホームを有する、本発明によるミルク処理システムの概略図である。
【図6】本発明による貯蔵タンク及び直立管の部分的な正面断面図である。
【図7】紫外線反応器を断面で示す、図1に示すミルク処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の以下の説明において、同一の参照番号を、各図の同一又は類似の要素を特定するために用いる。図1〜図5及び図7は、本発明による不用乳処理システム20を示し、この不用乳処理システムは、制御装置22と、ミルクポンプ24と、入口導管26と、出口導管28と、ポンプ入口導管29と、紫外線ミルク処理装置30(本明細書において、「紫外線反応器」という。)と、出口導管32を含む。貯蔵タンク34及び可動プラットホーム36(図5)が、ミルク処理システム20と関連して用いられる。
【0025】
概略的には、図示のミルク処理システム20は、ミルクを、入口導管26を通して紫外線反応器30内にポンプ送りするミルクポンプ24を用いている。ミルクを紫外線反応器30内で処理している間、ミルクを熱交換器内で加熱又は冷却して、子牛等の健康に重要である免疫グロブリンを破壊することなしに、細菌の成長を最小にする温度範囲にする。処理済みのミルクを、出口導管28を通して移動させ、貯蔵タンク34内で温度調節して貯蔵する。ミルクを子牛等まで運ぶために、ミルク貯蔵タンク34を可動プラットホーム36に支持した後、処理済みのミルクを所定の温度範囲よりも低い温度まで下げるのがよい。可動プラットホーム36はまた、ミルクを、供給管41を通して子牛等まで圧送するミルク分配ポンプ39を有するのがよい。
【0026】
具体的に説明すると、制御装置22がポンプ24を作動させ、ミルクを、好ましくは熱交換器38によって包囲された紫外線反応器30に循環させ、ミルク温度を85°F〜120°F(29.4℃〜48.9℃)に上昇させ、次いで、温められたミルクを、有害な細菌を死滅させるのに適当な速度及び周回数で、紫外線反応器30の中を循環させる。次いで、ミルクを冷蔵して貯蔵してもよいし、ミルクを子牛等に直接給与してもよい。ミルク温度を85°F〜120°F(29.4℃〜48.9℃)に過ぎない範囲に上昇させることによって、免疫グロブリンの破壊が極めて小さくなると共に、ミルクは、紫外線反応器30からの紫外線によって依然として安全に殺菌される。
【0027】
バッチ式殺菌装置と異なり、紫外線反応器30は、細菌を死滅させるのにミルクの温度に依存しない。その代わり、200ナノメートル〜280ナノメートルの範囲、即ちUVC範囲(殺菌範囲)の紫外線だけが、細菌を死滅させる。それにもかかわらず、ミルク温度は重要であり、その理由は、低温ミルクがポンプ及び配管系によって撹拌され、紫外線によって適切に処理されにくいバター片が生じることがあるからである。ミルク温度を85°F(29.4℃)以上に上昇させることは、バター片を溶かし又はバター片のサイズを減少させるのに十分であり、その結果、ミルクは、紫外線反応器30によって適切に処理されるようになる。バター濃度を最小にする適正なミルク粘度を確保するために、ミルク温度を、好ましくは95°F(35℃)よりも高い温度まで、より好ましくは100°F(37.8℃)よりも高い温度まで上昇させる。他方、ミルクを高すぎる温度まで加熱すると、有益な免疫グロブリンを破壊することがある。免疫グロブリンの破壊を最小にする温度範囲の上限は、120°F(48.9℃)である。
【0028】
約85°F〜約120°F(29.4℃〜48.9℃)の温度範囲は、約100°F〜約110°F(37.8℃〜43.3℃)の給与温度範囲を含む。ミルクを子牛等に直接給与すべきならば、殺菌のために約100°F〜110°F(37.8℃〜43.3℃)の給与温度範囲に加熱することが適切である。
【0029】
ミルクを殺菌した後にそれを冷蔵して貯蔵すべきならば、85°F〜120°F(29.4℃〜48.9℃)の範囲の下限のミルク温度は、本発明により適切な結果を生じさせ、必要なエネルギーを減少させる。注目すべきことは、処理済みの不用乳を、子牛等が飼育されている酪農施設内の場所まで運ぶ必要がある場合があることである。この状況において、ミルクを給与温度範囲よりも高い温度まで加熱することにより、ミルクが運ばれているときのミルクの冷却を補償することができる。熱損失は、周囲条件、殺菌と給与の間の時間、及びその他の要因の関数である。かくして、本発明を利用すると、任意特定の酪農状況における上記要因及びその他の要因を補償するように、ミルク温度を調節することができる。
【0030】
本発明に用いられる好ましい熱交換器38が、紫外線反応器30の周りに配置されている。図7に示す熱交換器38は、入口62と、水ジャケット64と、出口66を有している。水ジャケット64は、環状空間を構成するように紫外線反応器30を包囲し且つそれと実質的に同軸に位置し、水、空気又は他の熱交換流体が上記環状空間の中を流れ、紫外線反応器30及びその中で殺菌されるミルクの温度を調節する。好ましくは、水ジャケット64は、ステンレス鋼で作られるが、他の材料を使用してもよい。入口62は、水又はその他の流体の供給源と連通し、流体供給源は、例えば、温水ヒーターである。好ましくは、温水ヒーターは、熱交換器38のための専用ユニットであり、熱交換器38と閉ループを構成している。
【0031】
他の種類の熱交換器を本発明に用いて、ミルク流路の任意の箇所に配置してもよい。
【0032】
殺菌プロセス全体にわたるミルク温度を測定する温度センサ44が用いられる。好ましくは、温度センサ44は、ナショナルセミコンダクタ社から入手できる精密華氏温度センサモデルLM34である。殺菌プロセスを完了して、所望のミルク温度に達していない場合、所望の温度に達するまで、ミルクを循環させ続ける。
【0033】
さらに、制御装置22は、好ましくは、ミルク量センサ43と連通し、ミルク量センサ43は、好ましくは、フリースケールセミコンダクタ社(www.frescale.com)から入手できる集積シリコン圧力センサ(MPX5010GP,Case867b−04)であり、この圧力センサは、タンク34の液体レベルが高くなると空気を捕捉する長い直立管42を用いている。タンク34内のミルクレベルが上昇するとき、長い直立管42内の圧力が増大する。ミルク量センサ43は、電圧読出し信号を発生させ、この電圧読出し信号は、ミルクの任意のバッチサイズの実行時間を自動的に測定するために制御装置22に送られる。
【0034】
好ましくは、制御装置22は、熟練した設定者又は技術者によって最初に設定される。殺菌プロセスにおける温度、流量、処理時間又はその他任意の条件を調節するために、酪農作業者が作業者インターフェース45のところで調節を行なう。
【0035】
制御装置22はまた、殺菌プロセスが完了してから経過した時間、及び、ミルクの現在の温度を示すディスプレイ42を有し、ミルク温度を、熱交換器38の中を通る再循環によって所望の範囲内に戻すことができる。ディスプレイ42は、任意の関連情報を酪農作業者に提供することができ、かかる情報は、作動時間、流量、ミルク温度、構成要素の故障、メンテナンスの要求等を含む。
【0036】
最後に、殺菌済みのミルクを子牛等又は可動プラットホーム36に分配した後、ミルク処理システム20を、次の殺菌サイクルのための自動洗浄及び準備のために、洗浄システム(図示せず)に結合するのがよい。
【0037】
ミルク処理システム20は、1つ又は2つ以上の紫外線ミルク殺菌装置(反応器)30を含むのがよい。図示の実施形態では、3つの紫外線反応器30が用いられている。本発明において用いられる紫外線ミルク殺菌装置は、リックス等の米国特許第6,916,452号明細書に開示された種類の殺菌装置であるのがよく、上記米国特許を本明細書に援用する。図7に示す紫外線反応器30は、入口50と、出口60と、石英管52と、紫外線管56を有し、紫外線管56は、ミルクが紫外線管56に接触することを防止するために、石英管52の内部に配置されている。他の種類の管を用いて、紫外線管56がミルクによって損傷しないように保護してもよい。外側管58が、石英管52を包囲し、好ましくはステンレス鋼で作られ、石英管52と一緒に、環状ミルク流チャネルを構成する。熱交換器38は、外側管58を包囲している。ミルクは、入口50、環状ミルク流チャネル58を通って流れ、環状ミルク流チャネルのところで紫外線によって殺菌され、出口60から出る。
【0038】
紫外線管56は、好ましくは、バーモント州05764ポールトニーアイディールウェイ212ピーオーボックス191所在のファーストライトテクノロジーズ社(First Light Technologies, Inc.)から入手できるGIA972T5LCA/2S07/PT−18″/4W/N/CB−061(紫外線 Pure)である。紫外線反応器30に用いられる安定器は、好ましくは、ZEDジエグラーエレクトリックデバイス社(ZED-Ziegler Electronic Devices GmbH)から入手できる電子安定器(Electronic Ballast)EVG100...200W/230V・ACである。石英管52は、外径が約1インチ(2.54cm)であり、外側管58の内径は、約1.37インチ(3.48cm)である。さらに、外側管58の外径は、約1.50インチ(3.81cm)であり、水ジャケット64の内径は、約2.37インチ(6.01cm)であるが、水ジャケット64の他の寸法も可能である。
【0039】
紫外線管と安定器の他の組合せが可能であり、この組合せは、UL規格であることが望ましい。紫外線反応器30は、ミルクを紫外線反応器の中で循環させる回数を少なくするのに直列で使用されてもよいし、並列で使用されてもよい。好ましくは、本発明の制御装置22は、紫外線反応器30の構成要素にそれをモニタできるように接続され、欠陥のある紫外線管56、安定器、関連した構成要素に順応するように処理時間を調節する。上記構成要素をモニタする1つの方法は、例えば、電球を通る電流をモニタすることである。電球が点灯していない場合、電流が電球を通るように流れていない。
【0040】
ポンプ24は、ミルクを紫外線反応器30の中で、ミルク及び/又は初乳の最適な滅菌を確保し且つ紫外線反応器に関連した配管、連結部及び制御システムに内の淀みを防止する流量でポンプ送りする。好ましくは、流量は、毎分約17ガロン(64.4リットル)であるが、システムのその他の構成要素のサイズ又は種類を変えた場合、その他の流量を使用してもよい。
【0041】
好ましくは、制御装置22は、ミルクポンプ24を毎分約17ガロン(64.4リットル)の流量で作動させるようにプログラムされている。1つの紫外線反応器30だけを用いるとき、ミルクは、紫外線反応器30の中を約40回通過した後、殺菌済みになる。2つの紫外線反応器30を直列で用いるとき、紫外線反応器30の中を約20回通過させることが必要になり、3つの紫外線反応器30を直列で用いるとき、紫外線反応器30の中を約13.4回通過させることが必要になる。
【0042】
50ガロン(189.3リットル)の不用乳の1回の通過が2.9分であれば、紫外線殺菌プロセスにかかる時間は、約59分である。これは、バッチ式で殺菌、加熱、処理及び冷却する時間に対する改善である。さらに、本発明は、主として、時間及びエネルギーを節約し、その理由は、ミルクがそれほど高温までの加熱を必要としないからである。試験結果は、本発明について、バッチ式殺菌プロセスに対する30%〜70%の時間の節約を示した。
【0043】
さらに、本発明は、酪農における効率を促進し、その理由は、子牛等への搬送のために可動プラットホーム36上で、ミルクが必要になる前にミルクタンク34を数時間で満たすことができ、殺菌プロセスを、ミルクを温め、ポンプ送りし、殺菌し、貯蔵するのに適した時間で、制御装置22によって自動的に開始することができるからである。この機能は、好ましくは、作業者インターフェース45のところで操作可能な殺菌開始タイマによって設定される。
【0044】
図6に示すように、本発明はまた、貯蔵タンク34内のミルクの量を測定するミルク量検出器38を備えた直立管42を含むのがよい。制御装置22は、貯蔵タンク34内のミルクの量に基づいて、処理時間を計算し且つ制御する。例えば、100ガロン(378.5リットル)の貯蔵タンクを、100ガロンのミルクで満たしてもよいし、5ガロン(18.9リットル)のミルクで部分的に満たしてもよく、本発明は、おおよその処理時間を自動的に設定する。
【0045】
本発明の装置はまた、ミルクを殺菌装置から遠隔の場所の子牛等まで運ぶための可動プラットホーム36又は可動貯蔵タンク(図5参照)を有するのがよい。可動貯蔵タンク36は、断熱され、それを洗浄するスプレーボール又は装置を含むのがよい。可動プラットホーム36は、殺菌中にミルクが貯蔵されていた貯蔵タンク36を運ぶ簡単なフレーム及び車輪であってもよい。
【0046】
本発明と先行技術のバッチ式殺菌装置の比較により、不用乳及び初乳に用いられる本発明の有効性を示す。
【0047】
〔実験例A〕
実験例Aにおいて、標準的なバッチ式殺菌装置は、有害な細菌を死滅させる際に試験された生命体(菌)の全てについて、紫外線殺菌装置よりも有効であり、ミルクを用いるとき、本発明は、試験した3種類全ての生命体について有効である(大腸菌(E.coli)では99.98%、セレウス菌(Bacillus cereus)では100%、ブタコレラ菌(Salmonella cholerasuis)では99.992%)。しかしながら、初乳が用いられるとき、本発明は、3種類全てについて、本発明が十分に有効ではないという程度まで、有効性が確実に低い。微生命体が初乳中に存在しているときの微生命体に対する効果的な殺菌作用の最大の有効性を、処理時間を増大させる観点で判定するためのさらなる研究が必要である。
【0048】
さらに、これらのサンプルについて、牛のIgG(免疫グロブリンG)の単一半径方向免疫拡散検査も行った。バッチ式殺菌装置用のサンプルでは、IgGの大幅な減少を示したのに対し(約43%)、紫外線殺菌装置用のサンプルは、IgGの減少を全く示さなかった。かくして、実験例Aに示すように、本発明は、不用乳に対して健全であるが、初乳に対して健全ではない可能性があるという結果になった。
【0049】

【0050】

【0051】

【0052】

【0053】

【0054】

【0055】
上記表1−1〜表3−2で、上付き符号aは、加熱前における基材(ミルク又は初乳)を示し、上付き符号bは、殺菌温度まで上昇した直後(時間=0)の基材(ミルク又は初乳)を示し、これには、約30分かかる。
【0056】
〔実験例B〕
実験例Bでは、ミルクについての紫外線殺菌試験を繰返し、紫外線へのミルクの露出時間22分を追加した。これらの結果は、実験例Aと非常に類似し、試験した3種類の細菌全てについて、10ガロンのミルクの時間15分の露出後、満足できる死滅レベルになった。
【0057】
研究の第2の部分は、実験例Aにおいて試験した生命体について時間15分後の死滅レベルが効果的ではなかった初乳を利用した。実験例Bでは、露出時間30分及び露出時間45分を利用した。実験例Bの結果は、時間15分の時点で、3種類の生命体のうちの2種類について、実験例Aよりも良好な有効性を示した。実験例Aは、時間15分における有効性が、2種類の生命体について不十分であり、第3の生命体(セレウス菌)について許容できないことを示している。しかしながら、3種類全ての生命体について、時間30分と時間45分の露出における本発明の殺菌装置の有効性は、適当乃至非常に良好であった。
【0058】
さらに、3つのサンプルについて、牛のIgGの単一半径方向免疫拡散試験も行った。結果は、時間15分後における免疫グロブリン(IgG)の減少はないこと、及び、時間30分後及び時間45分後における免疫グロブリン(IgG)の減少は比較的小さいことを示した。かくして、本発明は、実験例Bに反映されているように、ミルク及び初乳が、従来技術のバッチ式殺菌装置よりも健全であった。
【0059】

【0060】

【0061】

【0062】
〔実験例C〕
実験例Cは、初乳を利用し、実験例Bのように、時間15分、時間30分、及び時間45分の露出を行った。実験例Cの結果は、本発明の紫外線殺菌装置が全体的に、時間30分及び時間45分において依然として有効であり、特に後者において有効であることを示した。可能性がある唯一の例外は、セレウス菌であり、露出時間45分だけが安定した結果を示した。この結果は、概略的に、同一の露出時間において、前の試験よりも死滅パーセントが少ないことを示したが、時間0分における濃度が比較的高く、このことは、死滅の減少の原因である可能性がある。実際に現場で使用するとき、これら病原体の濃度は、この実験例で試験されている場所の近くの任意の箇所である可能性はほとんどない。したがって、死滅率は、時間30分及び時間45分の両方において満足できると結論づけることができる。
【0063】
さらに、これらのサンプルについて、牛のIgGの単一半径方向免疫拡散試験も行った。試験は、時間15分後、時間30分後、及び時間45分後における免疫グロブリン(IgG)の減少は、最小又はゼロであることを示した。したがって、これは、バッチ式殺菌方法に優る明確な改善である。
【0064】

【0065】

【0066】

【0067】
上記表において、CFU/mlは、1ml当たりのコロニー形成ユニットである。
【0068】
上記実験例は、ミルク及び初乳中の免疫グロブリンの本質的に全てを保ちながら、3種類の病原体を死滅させる際の本発明の有効性を示している。
【0069】
本発明の好ましい実施形態についての先の詳細な説明は、理解を明確にするために提供されており、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を制限するものではない。さらに、特許請求の範囲において用いられている「ミルク」という用語は、牛乳、不用乳、市販できないミルク、初乳又は子牛等への給与前の殺菌から恩恵を受ける任意他の子牛等供給サプリメントを含むのに足る広い概念である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミルク処理システムであって、
入口及び出口を備えた紫外線ミルク処理装置と、
前記紫外線ミルク処理装置と流体的に連通するミルク貯蔵タンクと、
前記ミルク貯蔵タンクと流体的に連通するポンプと、
ミルク熱交換器と、
前記ポンプ及び前記ミルク熱交換器と接続された制御装置と、を有するミルク処理システム。
【請求項2】
前記紫外線ミルク処理装置は、複数の紫外線ミルク殺菌反応器を有する、請求項1に記載のミルク処理システム。
【請求項3】
更に、前記ミルク貯蔵タンクを支持する可動プラットホームを有する、請求項1に記載のミルク処理システム。
【請求項4】
更に、前記ミルク貯蔵タンクを支持する可動プラットホームを有し、
前記制御装置は、ミルク温度調節装置を有する、請求項1に記載のミルク処理システム。
【請求項5】
前記ミルク熱交換器は、前記紫外線ミルク処理装置の少なくとも一部分を包囲する水ジャケットを有する、請求項1に記載のミルク処理システム。
【請求項6】
前記紫外線ミルク処理装置は、少なくとも部分的に前記ミルク熱交換器内に配置される、請求項1に記載のミルク処理システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記紫外線ミルク処理装置に、それをモニタ可能に接続される、請求項1に記載の処理ミルクシステム。
【請求項8】
更に、前記ミルク貯蔵タンク及び前記制御装置と流体的に連通するミルク量センサを有する、請求項1に記載のミルク処理システム。
【請求項9】
前記制御装置は、それを調節する作業者インターフェースを含む、請求項1に記載のミルク処理システム。
【請求項10】
前記制御装置は、殺菌開始タイマを有する、請求項1に記載のミルク処理システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記ミルク熱交換器を約85°F〜約120°F(29.4℃〜48.9℃)のミルク温度範囲に調節する、請求項1に記載のミルク処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−521756(P2012−521756A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501993(P2012−501993)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/000830
【国際公開番号】WO2010/110853
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(501494115)ジィーア ファーム テクノロジーズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】