説明

子癇前症の処置のための方法および組成物

妊娠に関連する疾患または障害を処置および/または予防するための方法および組成物を提供する。前記方法は、2-メトキシエストラジオールまたはその類似体の被験体への投与に関する。さらに、妊娠に関連する疾患または障害を診断または予防するための方法を提供する。前記方法は、2-メトキシエストラジオールまたはその前駆体もしくは代謝物の検出に関する。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
子癇前症は、妊婦の高血圧性の多臓器障害で、初産婦の約6%、妊婦全体の1乃至2%が罹患する(MacGillivary, I., Preeclampsia: the hypertensive disease of
pregnancy. W. B. Saunders, Philadelphia
1987:17)。子癇前症は、母体および胎児の死亡および発病の主因であり、妊娠中の人間に固有の疾患である。現在の標準の子癇前症の治療法は、入院、絶対安静、けいれんを防ぐための硫酸マグネシウム投与、および迅速な出産だけである。子癇前症の合併症には、子癇発作、溶血、肝機能試験の高値、血小板数低化(HELLP)症候群、肝破裂、DIC肺水腫、急性腎不全、胎盤早期剥離、子宮内胎児死亡(IUFD)、脳内出血、皮質盲、および網膜剥離が含まれる。多年にわたる研究にもかかわらず、子癇前症の原因は不明である。
【0002】
子癇前症の顕著な特徴には、高血圧、タンパク尿、および浮腫が含まれる。これらの臨床徴候の基礎には、胎盤不適応、および全身性内皮細胞機能障害が生じる(Khong, T. Y. et al.(1986) Br. J. Obstet. Gynecol. 93:1049-1059; Roberts, J. M. et al.(1991) Am. J. Hypertens.
4:700-708)。母体のらせん動脈の子宮筋部分への栄養膜浸潤の不全、および全身性内皮損傷を生じる毒性媒介物の産生も関与していると考えられている。
【0003】
通常の発達中、人間のトロホブラストは細胞外基質を通ってらせん動脈の子宮筋部分に浸潤し、それを子宮胎盤血管に転換する(Pijnenborg et al., in Trophoblast Research (Denker and Aplin, eds.)
Plenum Press, New York, p. 333 (1990))。その後、子宮胎盤動脈はらせん動脈の約30倍に拡張する。その結果生じる血流力学の変化により、妊娠後期の胎児が必要とする大量の酸素を供給することができるようになる。しかし、女性の子癇前症患者の場合、らせん動脈は適正に子宮胎盤動脈に転換しない。それは、妊娠第二期の初めに子宮筋への栄養膜の移動の第2波が障害されるためである。その結果、子癇前症の女性患者は典型的に、転換前の拡張していないらせん動脈が高耐性、高高血圧、低流量状態を示し(Robertson et al.(1986) Am. J. Obstet. Gynecol. 155:401-412)、多様な臨床症候群を示す。
【0004】
子癇前症は軽症と重症に分かれることがある。軽症の子癇前症は、患者が高血圧、24時間の間に300mg超のタンパク尿値、1週間に2ポンド超、または1ヶ月に6ポンド超の重量増加により示される軽症浮腫、および24時間の間に500ml未満の尿排出量を示すのが徴候である。重症の子癇前症は、患者の血圧が、安静時、少なくとも6時間間隔をあけて測定した場合に160/110超、または収縮期血圧の上昇が基礎値よりも60超上昇するか、もしくは30超の増加があるのが徴候である。さらに、24時間につき5g超のタンパク尿値もしくは尿検査棒の目盛りが31または41、巨大な浮腫、乏尿(24時間につき400ml未満)、胎児の成長遅延(IUGR)、または肺浮腫、頭痛、見た目の変化、右上腹部痛、高肝酵素もしくは血小板減少症である。
【0005】
子癇前症の診断後、一般に出産が近い36週後であれば、乳児を誘導して出産させる。しかし、子癇前症が妊娠初期に生じた場合、その影響はさらに深刻である。この疾患の唯一の治療法は乳児の出産であり、一般に出産期が近くない場合には最善の策とは正反対である。だが、症状が従来の管理の選択肢に反応しない場合には、早産が残された唯一の選択肢かもしれない。従来の管理には、絶対安静、メチルドーパ(アルドメットTM)、アテノロール、およびラベタロールを含む降圧剤療法が含まれる。子癇前症の診断から出産までの妊娠期間が胎児および母親の双方にとって安全に延長できるのであれば、周産期の転帰が顕著に向上するかもしれない。
【0006】
したがって、子癇前症の既存の処置法にあるこれらの欠点を安全で効果的な方法および子癇前症やその他の妊娠に関連する疾患の処置のための組成物を提供することによって克服することが、本願発明の目的である。
【0007】
発明の概要
本願明細書が特徴とするのは、子癇前症のより安全で有効な治療を可能にする新規の診断および処置方法である。ある態様では、子癇前症の処置または予防の方法が提供され、前記方法には、その必要のある妊娠被験体へ有効量の2-メトキシエストラジオール(2-ME)、その類似体、または薬学的に許容なその塩もしくはプロドラッグを投与するステップを含む。各種の実施態様では、前記方法にはさらに、被験体から採取した生物学的対象中における2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体のレベルを決定するステップを含む。ある例示的な実施態様では、前記生物学的試料は尿、血液、または血漿である。
【0008】
第2の局面では、被験体の子癇前症の進行の診断または予測の方法であって、前記方法には、前記被験体から採取した生物学的試料中の2-メトキシエストラジオール、2-メトキシエストラジオール代謝物、または2-メトキシエストラジオール前駆体のレベルを決定するステップと、前記レベルと対照中の2-メトキシエストラジオール、2-メトキシエストラジオール代謝物、または2-メトキシエストラジオール前駆体のレベルとを比較するステップを含み、前記対照が少なくとも一人の前記被験体とほぼ同一の妊娠期で子癇前症を罹患していない被験体から予め決定した標準であって、前記対照と比較した前記被験体の試料中の2-メトキシエストラジオール、2-メトキシエストラジオール代謝物、または2-メトキシエストラジオール前駆体の低レベルが子癇前症に感受性があるまたは罹患している被験体の指標となる、方法を提供する。ある例示的な実施態様では、前記生物学的試料は尿、血液、または血漿である。
【0009】
発明の詳細な説明
定義
便宜上、本願明細書、実施例、および添付される特許請求の範囲に用いられる特定の用語をここにまとめる。 他に定義のない限り、本願明細書に用いられたすべての技術および科学用語は、本願発明が属する当業者によって普通に理解されるものと同じ意味を有する。
【0010】
本願明細書で用いられる冠詞「a」および「an」は、その冠詞の文法上の物体1つまたは1つより多い(すなわち少なくとも1つ)を意味する。例として、「an
element」は1つの要素または1つより多い要素を意味する。
【0011】
「含む(comprise)」および「含む(comprising)」は、包含的でオープンな意味での、さらなる要素が含まれるかもしれないという意味で用いられる。
【0012】
「含まれる(including)」という用語は、「含まれるがそれらに限定されない」という意味で用いられる。「含まれる(including)」および「含まれるがそれらに限定されない」は、交換可能に用いられる。
【0013】
2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)のレベルに関して本願明細書に用いられる「対照」という用語は、特定の「妊娠障害」を罹患していない少なくとも一人の被験体における2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)のレベルを意味する。前記対照は、特定の「妊娠障害」を罹患していない2人以上の被験体からえた2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)のレベルの平均値を反映してもよい。前記対照の値は、前記対照と比較した前記試験被験体とほぼ同一の妊娠期の1人以上の被験体からえてもよい。「同一の妊娠期」の被験体とは、妊娠期間がほぼ同一の月数、ほぼ同一の週数、またはほぼ同一の日数の妊娠被験体を包含することを意味する。例示的な実施態様では、「同一の妊娠期」の被験体とは、妊娠期間がほぼ同一の週数の被験体を意味する。前記対照は、1つ以上の妊娠期の2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)の予め決められたレベルであってもよい。ある実施態様では、前記対照は、さまざまな妊娠期の2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)の対照レベルをあらわすグラフまたはチャートである。ある実施態様では、前記対照は、全妊娠期(たとえば3ヶ月ごと、月ごと、週ごと、または日ごと)の2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)の対照レベルをあらわすグラフまたはチャートである。
【0014】
本願明細書に用いる「妊娠障害」という用語は、被験体における2-メトキシエストラジオールの異常レベルを伴う妊娠の疾患または障害を意味する。「2-メトキシエストラジオール」の異常値に関連する疾患もしくは障害とは、2-メトキシエストラジオールの異常レベルによって直接的または間接的に引き起こされる疾患もしくは障害、または独立した基礎原因を有するが被験体において2-メトキシエストラジオールの異常レベルを伴う疾患または障害を包含することを意図する。妊娠障害は、被験体の2-メトキシエストラジオールレベルが対照被験体よりも高い、妊娠の疾患または障害を意味することもある。代替的に、妊娠障害は、被験体の2-メトキシエストラジオールレベルが対照被験体よりも低い、妊娠の疾患または障害を意味することもある。妊娠障害は、母親、胎児、胎盤、子宮などの異常な血管新生を伴う、妊娠の疾患または障害を意味することもある。さらに、妊娠障害は前記妊娠に関連して、またはそれにより生じる妊娠後障害を意味することもある。妊娠障害の例には、以下の障害、子癇前症、子癇、高血圧、浮腫、IUGR(子宮内発育遅延)、HELPP症候群(溶血、高肝酵素、および低血小板数)、胎盤剥離、前置胎盤、子宮外妊娠、または遺残胎盤のうち1つ以上の障害が含まれる。例示的な実施態様では、妊娠障害は子癇前症を意味する。
【0015】
「2-メトキシエストラジオール類似体」という用語は、「妊娠障害」を罹患する被験体に投与すると2-メトキシエストラジオールに似た治療効果を示す、2-メトキシエストラジオールの誘導体または類似体を意味する。例示的な実施態様では、2-メトキシエストラジオール類似体は、子癇前症を罹患する被験体に投与する場合に治療効果を示す。ある実施態様では、2-メトキシエストラジオール類似体は、被験体に投与する場合、2-メトキシエストラジオール単体を投与するよりも、より大きな安定性を示す。ある例示的な実施態様では、2-メトキシエストラジオール類似体は化15の化合物である。本願明細書に記載の方法に関連した使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体の例は、たとえば米国特許第6,528,676号および米国特許出願公報第2003/0236408号、2002/0147183号、2003/0187076号、および2003/0236439号を含むさまざまな米国特許および公開出願にも記載されている。ある例示的な実施態様では、2-メトキシエストラジオールの類似体にはコルチシンおよびコンブレタスタチンA-4が含まれる。
【0016】
2-メトキシエストラジオール、または2-メトキシエストラジオール類似体に関して本願明細書に用いられる「前駆体」という用語は、2-メトキシエストラジオールまたは2-メトキシエストラジオール類似体を、代謝プロセス中に形成される少なくとも1つの代謝物として形成する化合物を意味する。ある例示的な実施態様では、2-メトキシエストラジオールの前駆体には、たとえばエストラジオール、2-ヒドロキシエストラジオールなどが含まれる。
【0017】
2-メトキシエストラジオール、または2-メトキシエストラジオール類似体に関して本願明細書に用いられる「代謝物」という用語は、2-メトキシエストラジオールまたは2-メトキシエストラジオール類似体の代謝によって形成される化合物を意味する。代謝物は、同化産物および異化産物の両方を包含することを意図する。ある例示的な実施態様では、2-メトキシエストラジオールの代謝物には、たとえば2-メトキシエストロンなどが含まれる。
【0018】
「生物学的試料」という用語は、組織、組織試料、もしくは細胞試料(たとえば慢性ウイルス試料、またはたとえば吸引生検、ブラシ生検、表面生検、針生検、パンチ生検、切除生検、直視下生検、切開生検、もしくは内視鏡生検などの組織生検)、腫瘍、腫瘍試料、または生物学的液体(たとえば血液、血清、血漿、羊水、尿、リンパまたは脊髄液)を含む、被験体から採取した、または被験体の体内にある生物学的物質の試料を意味する。例示的な実施態様では、被験体はヒト被験体である。
【0019】
被験体における2-メトキシエストラジオールまたはその類似体のレベルに関して本願明細書に用いられる「ほぼ対照レベル」という用語は、2-メトキシエストラジオールのレベルが2-メトキシエストラジオール対照レベルと50%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、2%、または1%未満異なることを意味する。
【0020】
「シス(cis)」という用語は当業に知られており、二重結合のまわりに2原子または2化学基が配置されていて、前記原子または化学基が前記二重結合の同じ側にある配置を意味する。シス配置は(Z)配置として表示されることが多い。
【0021】
「トランス(trans)」という用語は当業に知られており、二重結合のまわりに2原子または2化学基が配置されていて、前記原子または化学基が前記二重結合の反対側にある配置を意味する。トランス配置は(E)配置として表示されることが多い。
【0022】
「共有結合」という用語は当業に知られており、2つの原子間の結合であって、電子が前記2原子の両方の核に電子的に結合していて、前記核の間の高い電子密度の正味の効果が核間反発を打ち消す、結合を意味する。共有結合という用語には、前記結合に金属イオンが含まれる配位結合が含まれる。
【0023】
「治療物質」という用語は当業に知られており、被験体の局部的または全身的に作用する生物学的、生理学的または薬理学的活性物質である化学部分を意味する。「薬物」ともよばれる治療物質の例は、メルクインデックス、Physicians Desk Reference、およびThe Pharmacological Basis of
Therapeuticsなどの公知の参考文献に記述されており、それらには、薬剤、ビタミン、ミネラルサプリメント、疾患の処置、予防、診断、治癒、または緩和に用いられる物質、身体の構造または機能に作用する物質、または生物学的に活性であるか、もしくは生理学的環境に置かれた後にさらに活性になるプロドラッグがそれらに限定されずに含まれる。
【0024】
「治療効果」という用語は当業に知られており、動物、特に哺乳類、さらに特にヒトにおける、薬理学的活性な物質による局所的または全身的な作用を意味する。「薬理学的に活性な物質」という用語には、疾患の診断、治癒、緩和、もしくは予防、または動物もしくはヒトにおいて望ましい身体的もしくは心理的な発達および/または症状の向上への使用を意図される物質が含まれる。「治療上有効な量」という文言は、いずれの処置にも適用できる妥当な損益比において望ましい局所的または全身的効果を生じるような物質の量を意味する。そのような物質の治療上有効な量は、処置される被験体および病状、前記被験体の体重および年齢、前記病状の重症度、および投与形態などであって、当業者に容易に決定することができる条件によって変化するだろう。たとえば、本願明細書に記載の、ある組成物は、そのような処置に適用される妥当な損益比において生じるのに十分な量を投与されてよい。
【0025】
「合成」という用語は当業に知られており、in vitroにおける化学または酵素合成による生成を意味する。
【0026】
「メソ化合物」という用語は当業に知られており、キラル中心を少なくとも2つ有するが、対称面または対称点のためにアキラルである化学化合物を意味する。
【0027】
「キラル」という用語は当業に知られており、鏡像体に重ね合わせられないという特性を有する分子を意味するが、「アキラル」という用語は鏡像体に重ね合わせることができる分子を意味する。「プロキラル分子」は、特定のプロセスにおいてキラル分子に転換する可能性がある分子である。
【0028】
「立体異性体」という用語は当業に知られており、同一の化学構成を有するが、空間における原子または化学基の配置に関しては異なる化合物を意味する。特に、「鏡像異性体」という用語は、お互いに鏡像を重ね合わせることができない、化合物の2つの立体異性体を意味する。反対に、「ジアステレオマー」は、非対称中心を2つ以上含み、お互いに鏡像ではない、立体異性体を意味する。
【0029】
さらに、「立体選択的プロセス」とは、反応生成物の特定の立体異性体が、その生成物のその他に考えられる立体異性体よりも優先して生成されるプロセスである。「鏡像選択的プロセス」とは、反応生成物の考えられる2種類の鏡像異性体の1種類が優先的に生成されるプロセスである。
【0030】
「位置異性体」という用語は当業に知られており、同一の分子式を有するが原子の連結が異なる化合物を意味する。したがって、「位置選択的プロセス」は特定の位置異性体を他よりも優先的に産生するプロセスであって、たとえばその反応によって、特定の位置異性体の産生量が統計学的に有意に増加する。
【0031】
「エピマー」という用語は当業に知られており、同一の化学構成を有して1つ以上の立体中心を含有するが、これらの立体中心のうち一つにおいてのみ配置が異なる分子を意味する。
【0032】
「ED50」という用語は当業に知られている。ある実施態様では、ED50 は薬物の最大応答または効果の50%を生じる投与量、または代替的には、試験被験体または調製物の50%において予め決定された応答を生じる投与量を意味する。「LD50」という用語は当業に知られている。ある実施態様では、LD50 は試験被験体における50%に致死性がある薬物の投与量を意味する。「治療指数」という用語は、LD50/ED50と定義される薬物の治療指数を意味する、当業に知られる用語である。
【0033】
「プロドラッグ」という用語は当業に知られており、生理学的条件下において、たとえば本願明細書に記載の2-メトキシエストラジオール化合物などの薬物に転換される化合物を包含することを意図する。プロドラッグの一般的な作製方法は、望ましい化合物を提供するために生理学的条件下において加水分解する部分を選択して結合させる方法である。その他の実施態様では、前記プロドラッグは前記宿主動物の酵素活性により転換される。
【0034】
「構造活性の関係性」または「(SAR)」という用語は当業に知られており、薬物またはその他の化合物の分子構造を変えることによって、レセプタ、酵素、核酸またはその他の標的などとの関係性を変化させる方法を意味する。
【0035】
「脂肪族」という用語は当業に知られており、直鎖、分岐鎖、環状アルカン、アルケンまたはアルキンを意味する。ある実施態様では、脂肪族基は直鎖または分岐鎖であってよく、1乃至約20個の炭素原子を有してよい。
【0036】
「アルキル」という用語は当業に知られており、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基が含まれる。ある実施態様では、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格に約30個以下の炭素原子(たとえば直鎖の場合C1乃至C30、分岐鎖の場合はC3乃至C30)、代替的には約20個以下の炭素原子を有する。同様に、シクロアルキルはその環構造に約3乃至10個の炭素原子を有し、代替的には約5、6、または7個の炭素をその環構造に有する。さらに「アルキル」という用語は、ハロゲン置換アルキルを含むとも定義される。
【0037】
「アラルキル」という用語は当業に知られており、アリール基で置換されたアルキル基(たとえば、芳香族基またはヘテロ芳香族基)を意味する。
【0038】
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は当業に知られており、上述のアルキルと長さおよび可能な置換が類似する非飽和脂肪族基であるが、少なくとも1つの二重結合または三重結合をそれぞれ含む、非飽和脂肪族基を意味する。
【0039】
炭素の数が他に指定されていない限り、「低級アルキル」は上に定義されたアルキル基であるが、骨格構造に1乃至約10個の炭素、代替的には1乃至約6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は類似する鎖長を有する。
【0040】
「ヘテロ原子」という用語は当業に知られており、炭素または水素以外の任意の元素を意味する。具体的なヘテロ原子にはホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄、およびセレンが含まれる。
【0041】
「アリール」という用語は当業に知られており、0乃至4個のヘテロ原子を含んでもよい5、6、および7員単環芳香族基であって、たとえば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどを意味する。環構造にヘテロ原子を有する当該アリール基は、「ヘテロアリール」ともよばれることがある。当該芳香族環は、たとえば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族基もしくはヘテロ芳香族基、-CF3、または-CNなどの置換基と環上の1つ以上の位置が置換されてもよい。「アリール」という用語にはまた、2つの隣接する環が2つ以上の炭素を共有する2つ以上の環を有する(当該環は「融合環」である)多環系であって、当該多環系において少なくとも1つの環は芳香族であって、たとえば他の環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、及び/またはヘテロシクリルであってもよい、多環系も含まれる。
【0042】
オルソ、メタ、およびパラ(ortho、meta およびpara)という用語は当業に知られており、それぞれ1,2-、1,3- および1,4-二置換ベンゼンを意味する。たとえば、1,2-ジメチルベンゼンおよびortho-ジメチルベンゼンは同義である。
【0043】
「ヘテロシクリル」または「ヘテロ環基」という用語は当業に知られており、約3乃至約10員環構造、代替的には3乃至約7員環であって、当該環構造が1乃至4ヘテロ原子を含む環構造を意味する。ヘテロ環は多環であってもよい。ヘテロシクリル基には、たとえば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサンテン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノン及びピロリジノンなどのラクタム、スルタム、およびスルトンなどが含まれる。当該ヘテロ環は、たとえば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族基もしくはヘテロ芳香族基、-CF3、または-CNなどの、上述の置換基と環上の1つ以上の位置が置換されていてもよい。
【0044】
「ポリシクリル」または「多環基」という用語は当業に知られており、2つ以上の環であって(たとえばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、及び/またはヘテロシクリル)、2つの隣接する環が2つ以上の炭素を共有し、たとえば当該環が「融合環」である、2つ以上の環を意味する。隣接しない原子を介して結合している環は「架橋」環とよばれる。多環の各環は、たとえば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族基もしくはヘテロ芳香族基、-CF3、または-CNなどの、上述の置換基と置換されていてもよい。
【0045】
「炭素環」という用語は当業に知られており、環の各原子が炭素である芳香族または非芳香族環を意味する。
【0046】
「ニトロ」という用語は当業に知られており-NO2を意味し、「ハロゲン」という用語は当業に知られており-F、-Cl、-Brまたは-Iを意味し、「スルフヒドリル」という用語は当業に知られており「-SH」を意味し、「ヒドロキシル」という用語は-OHを意味し、「スルホニル」という用語は当業に知られており-SO2-を意味する。「ハロゲン化物」は相当するハロゲンの陰イオンを示しており、「偽ハロゲン化物」は“Advanced
Inorganic Chemistry” by Cotton and Wilkinsonの560ページに記載の定義を有する。
【0047】
「アミン」および「アミノ」という用語は当業に知られており、非置換および置換アミンの両方を意味し、たとえば、一般式
【0048】
【化1】

【0049】
R50、R51およびR52はそれぞれ独立に水素、アルキル、アルケニル、-(CH2)m-R61、またはR50およびR51がともにN原子に結合して4乃至8原子を有する環構造のヘテロ環を形成したものを表し、R61はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロ環または多環を表し、mはゼロまたは1乃至8の範囲内の整数である、一般式で表されてよい部分を意味する。ある実施態様では、R50またはR51の片方だけがカルボニル基であってよく、たとえばR50、R51および窒素がともにイミドを形成しない。他の実施態様では、R50およびR51(ならびに任意でR52)はそれぞれ独立に水素、アルキル、アルケニル、または-(CH2)m-R61を表す。したがって、「アルキルアミン」という用語には、上述のアミン基であって、そこに結合する置換または非置換アルキルを有し、つまりR50およびR51の少なくとも1つがアルキル基である、アミン基が含まれる。
【0050】
「アシルアミノ」という用語は当業に認識されており、以下の一般式、
【0051】
【化2】

【0052】
であって、当該化学式においてR50は上に定義されたとおりであって、R54は水素、アルキル、アルケニル、または(CH2)m-R61であって、mおよびR61は上に定義されたとおりである、一般式によって表すことができる化学基を意味する。
【0053】
「アミド」という用語はアミノ置換カルボニルとして認識されており、以下の一般式、
【0054】
【化3】

【0055】
であって、当該化学式においてR50およびR51は上述の定義の通りである、一般式で表すことができる化学基を含む。本願明細書に記載のアミドのある実施態様には、不安定であってもよいイミドは含まれないだろう。
【0056】
「アルキルチオ」という用語は、硫黄ラジカルが結合した、上述のとおりのアルキル基を意味する。ある実施態様では、「アルキルチオ」基は、-S-アルキル、-S-アルケニル、-S-アルキニル、および-S-(CH2)m-R61の1つであって、mおよびR61が上に定義されたとおりである、化学基である。代表的なアルキルチオ基には、メチルチオ、およびエチルチオなどが含まれる。
【0057】
「カルボニル」という用語は当業に認識されており、以下の一般式、
【0058】
【化4】

【0059】
であって、当該化学式において、X50は結合であるかまたは酸素もしくは硫黄を表し、R55およびR56は水素、アルキル、アルケニル、-(CH2)m-R61、または薬学的に許容な塩を表し、R56は水素、アルキル、アルケニルまたは-(CH2)m-R61を表し、ここでmおよびR61は上に定義された通りである、一般式によって表すこともできる化学基が含まれる。X50が酸素であってR55またはR56が水素ではない場合、当該式は「エステル」を表す。X50が酸素であって、R55が上に定義されたとおりの場合、当該化学基は本願明細書においてカルボキシル基であって、特にR55が水素の場合、当該式は「カルボン酸」を表す。X50が酸素であってR56が水素である場合、当該式は「ギ酸」を表す。一般に、上式の酸素原子が硫黄で置換されると、当該式は「チオールカルボニル」基を表す。X50が硫黄であってR55またはR56が水素ではない場合、当該式は「チオエステル」を表す。X50が硫黄であってR55が水素である場合、当該一般式は「チオールカルボン酸」を表す。X50が硫黄であってR56が水素である場合、当該式は「チオールギ酸」を表す。一方で、X50が結合であってR55が水素ではない場合、上式は「ケトン」基を表す。X50が結合であってR55が水素である場合、上式は「アルデヒド」基を表す。
【0060】
「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は当業に知られており、上述のとおり、酸素ラジカルが結合したアルキル基を意味する。代表的なアルコキシル基には、メトキシ、エトキシ、プロピロキシ、およびtert-ブトキシなどが含まれる。「エーテル」は、2つの炭化水素が酸素によって共有結合したものである。したがって、アルキルをエステル化するアルキル基の置換基は、-O-アルキル、-O-アルケニル、-O-アルキニル、-O--(CH2)m-R61であってmまたはR61が上述の通りである化学基の1つによって表すことができるようなアルコキシルであるか、またはそのようなアルコキシルに似ている。
【0061】
「スルホン酸塩」という用語は当業に知られており、以下の一般式、
【0062】
【化5】

【0063】
であって、当該化学式においてR57は電子対、水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールである、一般式によって表すこともできる部分を意味する。
【0064】
「硫酸塩」という用語は当業に知られており、以下の一般式、
【0065】
【化6】

【0066】
であって、当該式においてR57は上述のとおりである、一般式で表すこともできる部分が含まれる。
【0067】
「スルホンアミド」という用語は当業に知られており、以下の一般式、
【0068】
【化7】

【0069】
であって、当該化学式においてR50およびR56は上述の通りである、一般式で表すことができる部分が含まれる。
【0070】
「スルファモイル」という用語は当業に知られており、以下の一般式、
【0071】
【化8】

【0072】
であって、当該化学式においてR50およびR51は上述の通りである、一般式で表すことができる部分を意味する。
【0073】
「スルホニル」という用語は当業に知られており、以下の一般式、
【0074】
【化9】

【0075】
であって、当該化学式においてR58は、以下の水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールのうちの1つである、一般式によって表すこともできる部分を意味する。
【0076】
「スルホキシド」という用語は当業に知られており、以下の一般式、
【0077】
【化10】

【0078】
であって、当該式においてR58は上述のとおりである、一般式で表すこともできる部分を意味する。
【0079】
「ホスホリル」という用語は当業に知られており、一般に、以下の式、
【0080】
【化11】

【0081】
当該式において、Q50がSまたはOを表し、R59が水素、低級アルキル、またはアリールを表す、式で表すこともできる。たとえばアルキルなどを置換するために使われる場合、前記ホスホリルアルキルのホスホリル基は一般式、
【0082】
【化12】

【0083】
であって、当該式においてQ50およびR59はそれぞれ独立に上述のとおりであって、Q51はO、S、Nである一般式によって表すこともできる。Q50がSである場合、前記ホスホリル基は「ホスホチオ酸基」である。
【0084】
「亜ホスホルアミド酸」という用語は当業に知られており、以下の一般式、
【0085】
【化13】



【0086】
であって、当該化学式においてQ51、R50、R51およびR59 は上述の通りである、一般式で表すことができる。
【0087】
「亜ホスホンアミド酸」という用語は当業に知られており、以下の一般式、
【0088】
【化14】

【0089】
であって、当該化学式においてQ51、R50、R51およびR59 は上述の通りであって、R60は低級アルキルまたはアリールである、一般式で表すこともできる。
【0090】
類似する置換をアルケニル及びアルキニル基に施して、たとえばアミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニルまたはアルキニルを生成することもできる。
【0091】
たとえばアルキル、m、およびnなどの各表現が任意の構造に1回以上現れる場合、その定義は、同一の構造の他の箇所に現れる場合にはその定義とは独立であることを意図する。
【0092】
「セレノアルキル」という用語当業に知られており、当該アルキル基に結合する置換セレノ基を有する、アルキル基を意味する。当該アルキル上で置換される可能性がある例示的な「セレノエーテル」は、-Se-アルキル、-Se-アルケニル、-Se-アルキニル、および-Se-(CH2)m-R61であって、mおよびR61が上に定義されたとおりである、化学基から1つ選択される。
【0093】
トリフリル、トシル、メシル、およびノナフリルという用語は当業に知られており、それぞれトリフルオロメタンスルホニル、p-トルエンスルホニル、メタンスルホニル、およびノナフルオロブタンスルホニル基を意味する。トリフラート、トシラート、メシラート、およびノナフラートという用語は当業に知られており、それぞれトリフルオロメタンスルホン酸エステル、p-トルエンスルホン酸エステル、メタンスルホン酸エステル、およびノナフルオロブタンスルホン酸エステル官能基および、前記化学基を含む分子を意味する。
【0094】
Me、Et、Ph、Tf、Nf、Ts、およびMsという略語は、それぞれメチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p-トルエンスルホニル、およびメタンスルホニルを表す。当業の有機化学者が利用する略語のさらに包括的なリストは、Journal of Organic Chemistryの各巻の第1号に記載されており、このリストは典型的にはStandard
List of Abbreviationsという表題の表に記載されている。
【0095】
本願明細書に記載の組成物に含有されるある化合物は、特定の幾何学的または立体異性形状で存在していてよい。さらに、本願明細書に記載のポリマーは光学活性であってもよい。本願明細書に意図されるのは、シス-およびトランス-異性体、R-およびS-鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)-鏡像異性体、(L)-鏡像異性体、それらのラセミ混合物、およびその他のそれらの混合物を含むすべての化合物である。アルキル基などの置換基には、さらなる非対称炭素原子が存在する。そのようなすべての鏡像異性体、およびその混合物は本願明細書に記載の組成物に含まれることを意図する。
【0096】
たとえば、本願明細書に記載の化合物の特定の鏡像異性体が望ましい場合、非対称合成、またはキラル補助基を用いた誘導によって調製してもよく、その場合、得られたジアステレオマー混合物を分離して補助基を切断し、純粋な望ましい鏡像異性体を得る。または、分子がアミノ基などの塩基性官能基、またはカルボキシル基などの酸性官能基を含む場合、適切な光学活性酸または塩基を用いてジアステレオマー塩を形成し、その後、当業に公知の分別再結晶法またはクロマトグラフィ法によって形成されたジアステレオマーを分割してから、純粋な鏡像異性体を回収する。
【0097】
「置換」または「〜と置換した」という文言には、そのような置換は置換された原子および置換基の許容された原子価に従っており、この置換によって再編成、環化、脱離またはその他の反応などの転換を自然発生的に生じない安定化合物が得られる、という暗黙の条件が含まれる。
【0098】
「置換された」という文言には、有機化合物のすべての許容しうる置換基が含まれることも意図する。広い局面では、前記の許容しうる置換基には、有機化合物の非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環およびヘテロ環、芳香族および非芳香族置換基が含まれる。具体的な置換基には、たとえば上述の置換基が含まれる。前記の許容しうる置換基は、1つ以上の、同一のまたは異なる適切な有機化合物であってもよい。ある実施態様では、窒素などのヘテロ原子は水素置換基、および/またはヘテロ原子の原子価を満たす本願明細書に記載の有機化合物の任意の許容しうる置換基を有していてもよい。有機化合物の許容しうる置換基は、いかなる形でも、本記述によって限定されることを意図しない。
【0099】
化学元素は, Handbook of Chemistry and Physics, 67th Ed., 1986-87の内表紙のPeriodic
Table of the Elements, CAS versionに従って同定することもできる。さらに、「炭化水素」という用語は、少なくとも1つの水素および1つの炭素原子を有するすべての許容しうる化合物を含むことを意図する。広い局面では、前記の許容しうる炭化水素には、非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環およびヘテロ環、芳香族および非芳香族の、置換または非置換であってよい有機化合物が含まれる。
【0100】
「保護基」という用語は当業に知られており、反応性を有する潜在能力がある官能基を望ましくない化学転換から保護する一時的な置換基を意味する。そのような保護基の例には、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、ならびにアルデヒドのアセタールおよびケトンのケタールが含まれる。保護基化学の分野はGreeneおよびWutsによってProtective Groups in
Organic Synthesis(2nd ed.; Wiley: New
York, 1991)に概説されている。
【0101】
「ヒドロキシル保護基」という用語は当業に知られており、合成の過程中に望ましくない反応からヒドロキシ基を保護することを意図する化学基を意味し、たとえばベンジル、または当業に知られるその他の好適なエステルもしくはエーテル基が含まれる。
【0102】
「カルボキシル保護基」という用語は当業に知られており、合成の過程中に望ましくない反応から、C末端のアミノ酸もしくはペプチド、または酸性もしくはヒドロキシルアゼピン環置換基などのカルボン酸基などを保護することを意図する化学基を意味し、含まれる。カルボキシル基の保護基の例は、たとえば、ベンジルエステル、シクロヘキシルエステル、4-ニトロベンジルエステル、t-ブチルエステル、および4-ピリジルメチルエステルなどが含まれる。
【0103】
「アミノ遮断基」という用語は当業に知られており、アミノ基が他の官能基上で行われる反応に関与することを阻害する化学基であって、望まれる場合に前記アミン基から取り除くことができる化学基を意味する。そのような化学基は、上述のGreene and Wutsの第7章、およびBarton, Protective Groups
in Organic Chemistry (McOmie, ed., Plenum Press, New York, 1973)の第2章で論じられている。好適な化学基の例には、具体的にはホルミル、ダンシル、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、スクシニル、メトキシスクシニル、ベンジル、および3,4-ジメトキシベンジル、o-ニトロベンジル、およびトリフェニルメチルなどの置換ベンジルなどのアシル保護基、化学式-COORの化学基であってRにはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、2,2,2-トリクロロエチル、1-メチル-1-フェニルエチル、イソブチル、t-ブチル、t-アミル、ビニル、アリル、フェニル、ベンジル、p-ニトロベンジル、o-ニトロベンジル、および2,4-ジクロロベンジルなどの化学基が含まれる化学基、ホルミル、アセチル、クロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチル、ベンゾイル、およびp-メトキシベンゾイルなどのアシル基および置換アシル、ならびに、メタンスルホニル、p-トルエンスルホニル、p-ブロモベンゼンスルホニル、p-ニトロフェニルエチル、およびp-トルエンスルホニル-アミノカルボニルなどのその他の化学基が含まれる。好ましいアミノ遮断基は、ベンジル(-CH2C6H5)、アシル[C(O)R1]、またはSiR13
であって、当該化学基においてR1はC1乃至C4 アルキル、ハロメチル、または2-ハロ置換(C2乃至C4アルコキシ)、たとえばカルボニルベンジロキシ(Cbz)などの芳香族ウレタン保護基、t-ブチロキシカルボニル(Boc)または9-フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)などの脂肪族ウレタン保護基である。
【0104】
たとえば低級アルキル、m、pおよびnなどの各表現が任意の構造に1回以上現れる場合、その定義は、同一の構造の他の箇所に現れる場合にはその定義とは独立であることを意図する。
【0105】
「電子吸引基」という用語は当業に知られており、置換基が隣接する原子から荷電子を引き付ける置換基の傾向を意味する。つまり前記置換基が隣接する原子に対して電気陰性である。電子吸引力の定量化は、ハメットシグマ(σ)定数による。この有名な定数は、たとえばMarch, Advanced Organic Chemistry 251-259,
(McGraw Hill Book Company, New York, 1977) など、多くの参考文献に記述されている。このハメット定数の値は、一般に電子供与基ではマイナス(σ(P) = - 0.66
for NH2)、および電子吸引基ではプラス(ニトロ基ではσ(P) = 0.78)であって、σ(P) はパラ置換を示す。例示的な電子吸引基には、ニトロ、アシル、ホルミル、スルホニル、トリフルオロメチル、シアノ、およびクロリドなどが含まれる。例示的な電子供与基には、アミノ、およびメトキシなどが含まれる。
【0106】
機能の特性または生物学的活性もしくは過程(たとえば酵素活性またはレセプタ結合)に関して用いられる「調節」という用語は、上方調節(たとえば活性化または刺激)、下方調節(たとえば阻害または抑制)、またはそのような特性、活性または過程の質をその他の形で変化させる、いずれかの能力を意味する。ある例では、そのような調節はシグナル伝達経路の活性化など得意なイベントの発生に付随するか、および/または特定の細胞タイプにのみ顕著であってよい。
【0107】
「処置」という用語は当業に知られており、任意の症状または疾患の少なくとも一つの症状を治癒および軽減することを意味する。ある例示的な実施態様では、妊娠障害の処置には、たとえば、進行を停止させるなど疾患もしくは障害を阻害するステップ、またはたとえば前記妊娠障害の回復を生じさせるなど前記疾患または障害の少なくとも一つの症状を軽減または緩和させるステップが含まれる。
【0108】
妊娠障害の「予防的」または「治療的」処置という用語は、1つ以上の対象組成物の宿主への投与を意味する。望ましくない症状(たとえば宿主動物の疾患またはその他の望ましくない状態)の臨床徴候の前に投与する、つまり前記の望ましくない症状から前記宿主を守る場合、その処置は予防的であり、前記の望ましくない症状の徴候後に投与する(つまり、現存する望ましくない症状またはそれに起因する副作用を解消、軽減、または維持することを意図する)場合には、前記処置は治療的である。
【0109】
本願発明の方法で処置される「患者」、「被験体」、または「宿主」は、ヒトまたは非ヒト動物のいずれかを意味してよい。
【0110】
「哺乳類」という用語は当業に知られており、例示的な哺乳類にはヒト、霊長類、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、および齧歯類(たとえばマウスおよびラット)が含まれる。
【0111】
化合物の文脈における「生物学的に利用可能な」という用語は当業に知られており、それを可能にする化合物の形態、または投与される被験体または患者に吸収されるか、取り込まれるか、またはその他の形で生理学的に利用可能な投与量の一部分を意味する。
【0112】
この場合の「薬学的に許容な塩」という用語は当業に知られており、たとえば本願明細書に記載の組成物に含有されるものを含む、比較的無毒な無機および有機酸付加塩を意味する。
【0113】
「薬学的に許容な担体」という用語は当業に知られており、任意の対象組成物またはその成分をある器官または体の部分の投与部位から別の器官または体の部分へと運搬または輸送することに関与する、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入物質などの、薬学的に許容な物質、組成物または賦形剤を意味する。各担体は、対象の組成物とその成分と適合性があり患者に有害ではないという意味において「許容」でなければならない。薬学的に許容な担体として用いることができる物質のいくつかの例には、(1)ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖類、(2)トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプンなどのデンプン、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体、(4)粉末状トラガカント、(5)モルト、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)カカオバター、および座剤用ロウなどの賦形剤、(9)ピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油などの油、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチルおよびラウリル酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム、および水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱物質を含まない水、(17)等張生理食塩水、(18)リンガー溶液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝溶液、および(21)薬学的製剤に用いられるその他の無毒性適合性物質、が含まれる。
【0114】
本願明細書に用いられる「全身投与」、「全身に投与した」、「末梢投与」および「末梢に投与した」という文言は当業に知られており、中枢神経への直接投与ではない、対象組成物、治療用またはその他の物質の投与方法であって、その対象組成物、治療用またはその他の物質が患者の全身に入って、代謝およびたとえば皮下投与などそのほかの同様のプロセスを経るような、投与を意味する。
【0115】
本願明細書に記載の「非経口投与」および「非経口に投与した」という用語は当業に知られており、経腸および局所投与をのぞく投与形態で通常は注射による投与を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、眼窩内、嚢内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜内、クモ膜下、脊髄内、および胸骨内注射および輸液が、それらに限定されずに含まれる。
【0116】
意図される本願明細書に記載の組成物の等価物には、他の点でそれに対応する組成物、およびそれと同一の一般的な性質を有する化合物であって、当該組成物において置換基の1種類以上の単純な変種であって、目的の組成物の特性に有害な影響がない変種がつくられる、組成物が含まれる。一般に、本願明細書に記載の組成物の成分は、容易に利用可能な開始物質、反応物質、および従来の合成手順を用いて調製することもできる。これらの反応では、それ自体は知られているが本願明細書には記載していない変種を利用することも可能である。
【0117】
方法
ここで提供するのは、妊娠障害を処置、予防、および/または診断するための方法および組成物である。ある実施態様では、2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を用いた妊娠障害の処置または予防のための方法および組成物を提供する。別の実施態様では、妊娠被験体における2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)のレベルを決定することによる、妊娠障害の診断の方法を提供する。ある例示的な実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物は、2-メトキシエストラジオールまたは2-メトキシエストラジオールの類似体をそれを必要とする被験体に投与することによって子癇前症を処置または予防するために用いることもできる。別の例示的な実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物は、妊娠被験体における2-メトキシエストラジオールのレベルを検出するステップを含む、子癇前症または子癇前症発症の確率の診断に用いることもできる。
【0118】
ある実施態様では、本願明細書に記載の方法は、第一に、妊娠障害に感受性のある、または罹患する被験体を同定するステップを含んでよい。妊娠障害に感受性がある、または罹患する被験体は、前記患者に認められている妊娠障害の症状を認識することによって同定されてよい。代替的には、妊娠障害に感受性のある、または罹患する被験体を、2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)のレベルを決定し、対照のレベルと比較することによって、同定してもよい。2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)の対照レベルからのいかなる偏差も、妊娠障害を罹患する被験体の徴候である可能性がある。例示的な実施態様では、妊娠被験体は、妊娠障害の診断の目的で、または妊娠障害の病期もしくは進行を監視するために、定期的に(または定期的な間隔で)2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)のレベルについてスクリーニングしてよい。ある実施態様では、2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)のレベルのスクリーニングは、3ヶ月に1回、毎月1回、3週間に1回、2週間に1回、10日に1回、毎週1回、または144、120、96、72、48、24、または12時間に約1回、行ってよい。別の実施態様では、妊娠被験体は、妊娠全期間にわたって定期的に、または妊娠の1期以上の間に定期的に、たとえば妊娠第1、第2、および/または第3期の間に定期的にスクリーニングするなど、スクリーニングしてよい。さらに別の実施態様では、被験体を、出産後または妊娠終了後、たとえば遺残胎盤など前の妊娠に関連する疾患または障害を同定または監視するために、2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)のレベルについてスクリーニングしてよい。例示的な実施態様では、2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)のレベルについてのスクリーニングは、2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を用いた治療的処置の候補であるかもしれない被験体を同定するために用いてよい。別の実施態様では、2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)のレベルについてのスクリーニングは、妊娠被験体に投与するのに有効な投与レベルを計算するために用いてよい。
【0119】
対照と比較して高いかまたは低い2-メトキシエストラジオールレベルを有すると同定された被験体は、妊娠障害に感受性があるか、または罹患している可能性がある。ある実施態様では、対照と比較して低い2-メトキシエストラジオールレベルを有する被験体は、以下の妊娠障害、子癇前症、子癇、高血圧、浮腫、IUGR(子宮内発育遅延)、HELPP症候群(溶血、高肝酵素、および低血小板数)、胎盤剥離、前置胎盤、子宮外妊娠、または遺残胎盤のうち1つ以上の障害に感受性があるか、または罹患している可能性がある。ある実施態様では、子癇前症を罹患する被験体は、第1、第2、および/または第3妊娠期中に、前記被験体において、対照と比較して低い2-メトキシエストラジオールレベルを検出することによって、診断または監視してよい。代替的には、特に第1妊娠期において、対照と比較して高い2-メトキシエストラジオールレベルを有する被験体は流産しやすい可能性がある。
【0120】
妊娠障害の重症度は、対照と比較した被験体の2-メトキシエストラジオールのレベルの偏差度に基づいて決定してよい。 たとえば、対照と比較して2-メトキシエストラジオールレベルが大きい偏差を示す被験体は、その被験体がより重症度の高いケースの妊娠障害により高い感受性があるか、または罹患している徴候を示している可能性がある。
【0121】
2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)のレベルについてのスクリーニングは、2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を用いた処置の経過を監視するために用いてよい。2-メトキシエストラジオールの類似体で被験体を処置する場合、監視の目的のために2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)のレベル、および/または2-メトキシエストラジオールの類似体(またはその前駆体もしくは代謝物)のレベルを決定するのが有用な場合もある。ある例示的な実施態様では、被験体に投与した2-メトキシエストラジオールのレベルと2-メトキシエストラジオールの類似体のレベルを両方決定することが有用である場合もある。別の実施態様では、2-メトキシエストラジオールの前駆体のレベルと2-メトキシエストラジオールの類似体の前駆体のレベルを両方決定することが有用である場合もある。さらに別の実施態様では、た2-メトキシエストラジオールの代謝物のレベルと2-メトキシエストラジオールの類似体の代謝物のレベルを両方決定することが有用である場合もある。
【0122】
被験体の2-メトキシエストラジオールのレベルは、2-メトキシエストラジオール自体のレベルを直接測定することによって決定してもよい。代替的には、2-メトキシエストラジオールのレベルは、2-メトキシエストラジオールの前駆体または代謝物のレベルを測定することによって、間接的に決定してもよい。同様に、2-メトキシエストラジオールの類似体のレベルは、被験体の当該類似体のレベルを直接測定して決定してもよく、または当該類似体の前駆体または代謝物のレベルを間接的に測定して決定してもよい。さらに別の実施態様では、2-メトキシエストラジオールもしくはその類似体の前駆体または代謝物のレベルを、診断または監視の目的のために、直接測定してもよい。この場合、前記前駆体または分析物は2-メトキシエストラジオールまたはその類似体のレベルの代理として用いるのではなく、診断または監視の目的のために直接用いてもよい。
【0123】
2-メトキシエストラジオールまたはその類似体のレベルは、被験体または対照の生物学的試料において決定してもよい。ある例示的な実施態様では、2-メトキシエストラジオールのレベルは、被験体の尿、血液、または血漿試料において決定してもよい。
【0124】
被験体の生物学的試料中の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体のレベルは、直接対照と比較してもよい。別の実施態様では、被験体の生物学的試料中の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体のレベルは、被験体に認められる2-メトキシエストラジオールまたはその類似体の生理学的濃度を計算するために用いてもよい。被験体の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体の生理学的濃度は、任意に対照と比較してもよい。
【0125】
2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)または2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)のレベルは、当業に公知の方法を用いて決定してもよい。たとえば、試料中の2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体(およびその前駆体もしくは代謝物)のレベルは、薄層クロマトグラフィを用いて決定してもよい。代替的には、、試料中の2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体(およびその前駆体もしくは代謝物)のレベルは、免疫測定を用いて決定してもよい。
【0126】
被験体中の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体のレベルは、定量的または定性的のいずれかで対照と比較してもよい。たとえば、定性的(または単位のない)比較は、被験体の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体のレベルが対照と比較して高いか、低いか、またはほぼ同一かを決定することによって行うこともできる。任意で、定性的な比較は、対照と比較した被験体の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体のレベルの差の大きさを推測するために用いることもでき、たとえば、たとえば2倍の変化、50%の変化などとすることもできる。定量的な比較は、2-メトキシエストラジオールまたはその類似体の被験体におけるレベルと対象におけるレベルを比較することによって行うこともでき、そのレベルにはある形の単位がつけられる(たとえば、タンパク質ならmg、ゲルなら1点/塊あたりの体積、ホスホイメージャまたはオートラジオグラム照射の1点あたりの強度、クロマトグラフィプレートの1点あたりの体積など)。
【0127】
被験体の2-メトキシエストラジオール(またはその前駆体もしくは代謝物)のレベルの監視に加えて、またはその代わりに、妊娠障害の症状を監視することが望ましい場合もある。たとえば、子癇前症を罹患するまたは感受性のある被験体において、被験体を2-メトキシエストラジオールまたはその類似体で処置する前、最中および/または後に、前記被験体の血圧および/または尿中のタンパク質レベルを監視することが望ましい場合もある。ある例示的な実施例では、処置の経過を監視し、および/または処置の戦略をデザインするために、被験体の血圧を定期的(たとえば時間、日、週、月ごと)に決定することが望ましい場合もある。血圧の監視は、たとえばフィノメータ(TNOバイオケミカルインスツルメンツ社、オランダ、アムステルダム)または血圧計など、当業に公知の任意の技術を用いてよい。尿タンパクの排出量は、たとえばビシンコニン酸試薬(ピアス社、イリノイ州ロックフォード)を用いた分光測光定量法を含む当業に公知の任意の方法で測定することもできる。
【0128】
ある実施態様では、本願明細書に記載の方法は2-メトキシエストラジオールの被験体への投与に関与する。代替的には、2-メトキシエストラジオールと1種類以上の2-メトキシエストラジオール類似体の混合物、または2種類以上の2-メトキシエストラジオール類似体の混合物を被験体に投与することが望ましい場合もある。他の実施態様では、2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体を、妊娠障害の少なくとも一つの症状を処置するまたは軽減させるのに有効な別の治療用物質を併用して、被験体に投与することが望ましい場合もある。ある例示的な実施態様では、2-メトキシエストラジオールは、たとえば血圧降下剤および/または抗けいれん剤などの、子癇前症の症状を処置する、または軽減させるのに有効な別の治療用物質とともに投与する。本願明細書に記載の方法および組成物と併用するための好適な高血圧剤の例には、たとえばヒドララジン(アプレソリン)、ラベタロール(ノルモジン)、およびニトロプルシド(ニトロプレス)が含まれる。本願明細書に記載の方法および組成物に使用するのに好適な抗けいれん剤は、硫酸マグネシウム、フェニトイン(ジランチン)、およびジアゼパム(バリウム)である。併用療法を目的とする実施態様では、前記薬物は混合物として一緒に調合および投与してもよく、または別々に調合および投与してもよい。
【0129】
ある例示的な実施態様では、2-メトキシエストラジオールの低レベルを伴う、妊娠障害に感受性がある、または罹患する被験体は、2-メトキシエストラジオールのレベル(または2-メトキシエストラジオールのレベルと2-メトキシエストラジオール類似体のレベルを合わせたレベル)を、対照における2-メトキシエストラジオールのレベルとほぼ同じまで上げるのに十分なレベルの2-メトキシエストラジオールを投与する。さらなる実施態様では、被験体には、前記被験体における2-メトキシエストラジオールのレベル(または2-メトキシエストラジオールのレベルと2-メトキシエストラジオール類似体のレベルを合わせたレベル)を対象レベルとほぼ同一に維持するのに十分な量の2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を、定期的に投与してよい。たとえば、ある実施態様では、2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体を、月、週、日単位で被験体に投与することが望ましい場合もある。ある例示的な実施態様では、被験者における2-メトキシエストラジオールのレベル(または2-メトキシエストラジオールのレベルと2-メトキシエストラジオール類似体のレベルを合わせたレベル)は、妊娠全期間にわたって、対照のレベルとほぼ同一に維持される。被験体における2-メトキシエストラジオールの適切なレベル(または2-メトキシエストラジオールのレベルと2-メトキシエストラジオール類似体のレベルを合わせたレベル)を維持するために、2-メトキシエストラジオールのレベル(または2-メトキシエストラジオールのレベルと2-メトキシエストラジオール類似体のレベルを合わせたレベル)について前記被験体を定期的に監視し、それに応じて前記被験体に投与する治療用物質の量を調整することが望ましい場合もある。
【0130】
ある実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15であって、
【0131】
【化15】

【0132】
当該式において、それぞれの場合において独立に
RはH、C1乃至C6アルキル、アリール、アラルキル、またはカルボニルであって、
R1およびR2は、-OR、-SR、または-N(R)2であって、
R3 はH、ハロゲン化物、C1乃至C6アルキル、アリール、アラルキル、またはカルボニルであって、
R4、R5、およびR6はH、ハロゲン化物、C1乃至C6アルキル、アリール、アラルキル、またはカルボニルであって、
mは1乃至5の整数であって、
nは1乃至6の整数である、
化15の化合物を含む。
【0133】
さらなる実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15および付属の定義であって、当該化学式においてRはメチルである、化合物を含む。
【0134】
さらなる実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15および付属の定義であって、当該化学式においてR1はOHである、化合物を含む。
さらなる実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15および付属の定義であって、当該化学式においてR2はOHである、化合物を含む。
【0135】
さらなる実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15および付属の定義であって、当該化学式においてR3はメチルである化合物を含む。
【0136】
さらなる実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15および付属の定義であって、当該化学式においてR4はHである、化合物を含む。
【0137】
さらなる実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15および付属の定義であって、当該化学式においてR5はHである、化合物を含む。
【0138】
さらなる実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15および付属の定義であって、当該化学式においてR6はHである、化合物を含む。
【0139】
さらなる実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15および付属の定義であって、当該化学式においてRはメチルであってR1はOHである、化合物を含む。
【0140】
さらなる実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15および付属の定義であって、当該化学式においてRはメチルであってR2はOHである、化合物を含む。
【0141】
さらなる実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15および付属の定義であって、当該化学式においてRはメチルであってR3はメチルである、化合物を含む。
【0142】
さらなる実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15および付属の定義であって、当該化学式においてRはメチルであってR1はOHであってR2はOHである、化合物を含む。
【0143】
さらなる実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15および付属の定義であって、当該化学式においてRはメチルであってR1はOHであってR2はOHであってR3
はメチルである、化合物を含む。
【0144】
さらなる実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15および付属の定義であって、当該化学式においてR4、R5、およびR6 はHである、化合物を含む。
【0145】
さらなる実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15および付属の定義であって、当該化学式においてRはメチルであってR4、R5,およびR6
はHである、化合物を含む。
【0146】
さらなる実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15および付属の定義であって、当該化学式においてRはメチルであってR1はOHであってR4、R5、およびR6
はHである、化合物を含む。
【0147】
さらなる実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15および付属の定義であって、当該化学式においてRはメチルであってR1はOHであってR2はOHであってR4、R5,およびR6
はHである、化合物を含む。
【0148】
さらなる実施態様では、本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、化15および付属の定義であって、当該化学式においてRはメチルであってR1はOHであってR2はOHであってR3はメチルであってR4、R5、およびR6
はHである、化合物を含む。
【0149】
本願明細書に記載の組成物および方法にさらに含まれるのは、化15の薬学的に許容な付加塩および複合体である。前記化合物が1つ以上のキラル中心を有してもよい場合、特に指定のない限り、本願明細書に記載の組成物は、それぞれ固有のラセミ化合物、およびそれぞれ固有の非ラセミ化合物を含む。
【0150】
前記化合物が不飽和の炭素炭素二重結合を有する場合、シス(Z)およびトランス(E)異性体が、本願明細書に記載の化合物に関連して含まれることを意図する。前記化合物に、たとえばケト-エノール互変異性体、

などの互変異性型があってよい場合、各互変異性型が、平衡状態か、またはR’で適切に置換された片方の型に固定されている状態のいずれかで存在して、本願明細書に記載の化合物に関連して含まれることを意図する。ある1つの場合における任意の置換基の意味は、他の任意の場合のその意味、または任意の他の置換基の意味とは独立である。
【0151】
本願明細書に記載の方法および組成物にさらに含まれるのは、2-メトキシエストラジオールのプロドラッグ、および化15の化合物である。
【0152】
化15の化合物は、類似する化合物の調製に有用な従来のいかなる方法によって調製されてもよい。この過程の開始物質は知られており、または市販の物質から既知の過程によって調製することができる。本願明細書に記載の方法に使用される化合物は、従来の方法を用いて、本願明細書に記載の方法に用いられる別の化合物に転換することができる。この反応の生成物は、抽出、結晶化、蒸留、およびクロマトグラフィなどの従来の手法によって分離する。
【0153】
本願発明にしたがって用いられる既知の化合物、および本願発明にしたがった新規化合物への既知の前駆体は、たとえばセントルイスのシグマケミカル社、ステラロイズ社、およびリサーチプラス社などから購入することができる。本願発明にしたがった他の化合物は、既知の方法に従って、公的に入手可能な前駆体から合成することができる。
【0154】
エストラジオールの化学合成はすでに記述されている(Eder, V. et al., Ber 109, 2948 (1976); Oppolzer, D. A. and Roberts,
D A. Helv. Chim. Acta. 63, 1703, (1980))。本願発明の2-メトキシエストラジオール類似体の一部を調製するために用いられる合成経路は、公開済みの文献(Trembley et al., Bioorganic & Med. Chem. 1995 3, 505-523、Fevig et al.,
J. Org. Chem., 1987 52, 247-251; Gonzalez et al., Steroids 1982, 40, 171-187、Trembley et
al., Synthetic Communications 1995, 25, 2483-2495; Newkome et al., J. Org.
Chem. 1966, 31, 677-681、Corey et al Tetrahedron Lett 1976, 3-6; Corey et
al., Tetrahedron Lett, 1976, 3667-3668、およびドイツ特許第2757157号 (1977)) に記載されているエストラジオール誘導体およびジメチルヒドラゾンの手順を修正した手順に基づく。
【0155】
例示的な実施態様では、本願明細書に記載の組成物および方法に使用するために好適な2-メトキシエストラジオール類似体は、米国特許第 6,528,676号、および米国特許出願第2003/0236408号、2002/0147183号、2003/0187076号、2002/0082433号、および2003/0236439号に記載されている。2-メトキシエストラジオールまたはその類似体は販売元から購入することもでき、または米国特許第 6,528,676号、および米国特許出願第2003/0236408号、2002/0147183号、2003/0187076号、2002/0082433号、および2003/0236439号に記載の通り調製することもできる。本願明細書に記載の方法および組成物に従った使用に好適な2-メトキシエストラジオール類似体の例には、以下の化合物のうち、1つ以上が含まれる。17置換2-メトキシエストラジオール誘導体、つまり、エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17α-ジオール、2-メトキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、17β-アミノエストラ-1,3,5,(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-17-オキシム-3-ヒドロキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-17-オン、2-メトキシ-3,17β-ビス(アセチロキシ)エストラ-1,3,5,(10)-トリエン、2-メトキシ-17β-プロパンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ-17(20)-Z-プロピルイデンエストラ-1,3,5,(10)-トリエン-3-オール、17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ-17β-(N-n-(1) プロピルアミノ)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ-19-ノルプレグナ-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-メトキシ-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ-17-(4-トシルヒドラゾン)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ-17(20)-Z-ブチルイデンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ-17β-ブチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2置換エストラジオール誘導体、つまり、2-アセチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-ホルミルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-(ヒドロキシメチル)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-ニトロエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-(N,N-ジメチルアミノ)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-アミノエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルムアミドエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(N-メチルアミノ)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール-HCl、2-(N,N-ジメチルアミノ)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(N,N-ジメチルアミノ)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール-HCl、2-アミノエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-(N,N-ジメチルアミノ)-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール-HCL、2-(1'-プロピニル)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-アジドエストラ
1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-エトキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン3,17β-ジオール、エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、16置換2-メトキシエストラジオール誘導体、つまり、2-メトキシ-16α-メチルエストラ- 1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-16β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-16-エチルエストラ-1,3,5,(10)-トリエン-3,17β-ジオール、16α-(ヒドロキシメチル- l)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、16β-(ヒドロキシメチルl)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-16α-プロパンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-16β-プロパンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-16β-ブタンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-16α-ブタンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-16β-イソ-ブタンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-16α-(N,N-ジメチルアミノエチル)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、2-メトキシ-16α-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17β-ジオール、 脱水素化/置換2-メトキシエストラジオール誘導体、つまり、2-メトキシ-エストラ-1,3,5(10)9(11)-テトラエン-3,17β-ジオール、その他の2-メトキシエストラジオール誘導体、つまり、2-エトキシ-19-ノルプレグナン-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-(1-プロピニル)-19-ノルプレグナン-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-ホルミル-19-ノルプレグナン-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-ホルムアミド-19-ノルプレグナン-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-メチエンヒドロキシ-19-ノルプレグナン-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-エチル-19-ノルプレグナン-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-メチル-19-ノルプレグナン-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-(1-プロペニル)-19-ノルプレグナン-1,3,5(10)17(20)-テトラエン-3-オール、2-エトキシ-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロピニル)-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルミル-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルムアミド-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチレンヒドロキシ-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エチル-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチル-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロペニル)-17(20)-メチレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エトキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロピニル)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルミルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルムアミドエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(メチレンヒドロキシ)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロペニル)エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エトキシ-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロピニル)-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルミル-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルムアミド-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチレンヒドロキシ-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エチル-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチル-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロペニル)-17β-メチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エトキシ-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロピニル)-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルミル-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルムアミド-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチレンヒドロキシ-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エチル-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチル-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロペニル)-17β-エチルエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エトキシ-17(20)-プロピレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロピニル)-17(20)- プロピレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルミル-17(20)-プロピレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-ホルムアミド-17(20)-プロピレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチレンヒドロキシ-17(20)-プロピレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-エチル-17(20)-プロピレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メチル-17(20)-プロピレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-(1-プロペニル)-17(20)-プロピレンエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ17β-メチレンヒドロキシエストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、2-メトキシ17β-(カルボキシル酸)-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3-オール、コルチシン、コンブレタスタチン A-4、ジエチルスチルベストロール、2-ブロモエストラジオール、2-メトキシエストロン、2-ヒドロキシエストラジオール、4-ヒドロキシエストラジオール、17-エチニルエストラジオール、2-フルオロエストラジオール、エストラジオール、エストロン、2-メトキシ17-エチニルエストラジオール、エストリオール、2-メトキシエストリオール、エストラジオール-3-O-メチルエーテル、2-メトキシエストラジオール-3-O-メチルエーテル、4-メトキシエストラジオール、4-メトキセストラジオール-3-O-メチルエーテル、ポドフィロトキシン、ジヒドロコンブレタスタチンA-4、3-ベンジル-2-メトキシエストラジオール、3-ベンジル-2-メトキシエストロン、16α-アルキル-3-ベンジル-2-メトキシエストロン、16β-アルキル-3-ベンジル-2-メトキシエストロン、16-アルキル-16-カルボメトキシ3-ベンジル-2-メトキシエストロン、16-メタン-ジメチレナミン-3-ベンジル-2-メトキシエストロン、16-カルボメトキシ3-ベンジル-2-メトキシエストロン、16-アルキル-3-ベンジル-2-メトキシエストラ-17β-ジオール、16-メタノール-3-ベンジル-2-メトキシエストラジオール、16-アルキル-3-ベンジル-2-メトキシエストラジオール、16β-メチル-2-メトキシエストラジオール、16α-メチル-2-メトキシエストラジオール、16-エチル-2-メトキシエストラジオール、16α-n-プロピル-2-メトキシエストラジオール、16β-n-プロピル-2-メトキシエストラジオール、16β-n-ブチルl-2-メトキシ エストラジオール、16β-イソブチル-2-メトキシエストラジオール、16β-メチル(ジメチルアミン)-2-メトキシエストラジオール、16β-メタノール-2-メトキシエストラジオール、2-メトキシ17-デオキシエストロン、17-エチル-2-メトキシエストロン、17-メチル-2-メトキシエストロン、2-N,N-ジメチルアミノ-17-デオキシエストロン、2-アジド-エストラジオール、および16α-メタノール-2-メトキシエストラジオール (たとえば、米国特許第6,528,676号および米国特許出願公報第2002/0147183号および第2002/0082433号)である。
【0156】
ある実施態様では、本願明細書に記載の方法に有用な2-メトキシエストラジオールまたはその類似体、および組成物は、たとえば、前記使用者が前記組成物を前記方法の通りに、およびそこに記載の目的のために用いるように指示する印刷された説明書を有するキットにして供給してもよい。使用説明書は、前記組成物を収納する容器、または前記組成物に含まれる別個の用紙に印刷されていてもよい。とりわけ、前記説明書は、たとえば前記使用者が前記組成物を利用するように指示してよく、そのような方法の目的は、たとえば子癇前症などの妊娠障害の症状、またはそれに伴う症状を阻害するかまたはその他の様式で妨げることであると記載してもよい。前記説明書は、妊娠障害に感受性がある(または罹患しやすい傾向がある)個人、および/またはすでに妊娠障害を有すると診断されている個人向けであってよい。
【0157】
調剤
本願明細書に記載の組成物は、その使用目的に応じて、当業に公知である各種の手段によって投与することができる。たとえば、組成物が経口投与される場合、それは錠剤、カプセル、顆粒、粉末またはシロップとして調製してもよい。代替的には、調剤は注射(静脈、筋肉内、経皮パッチ、エアロゾルによるか、または皮下)、点滴製剤、または坐薬として、非経口に投与してもよい。これらの製剤は、従来の手法によって調製されてよく、望まれる場合には、前記組成物は賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、矯味剤、可溶化剤、懸濁補助剤、乳化剤、またはコーティング剤などの、任意の従来の添加物と混合してもよい。
【0158】
本願明細書に記載の調剤の場合、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤、および潤滑剤、ならびに着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味料、香味料および香料、保存料および抗酸化剤もまた、前記調剤の中に存在してよい。
【0159】
対象の組成物は、経口、経鼻、局所(口内および舌下を含む)、直腸内、経膣、エアロゾルおよび/または非経口投与に好適であってよい。当該製剤は、便利のいいように単回投与剤形になっていてよく、薬学の当業に公知の任意の方法で調製されてよい。単回投与剤形をつくるために担体物質と混合することができる組成物の量は、治療される被験体、妊娠障害の重症度、投薬状況、および投薬の特定の形態によって変化する。
【0160】
これらの製剤の調製の方法には、本願明細書に記載の組成物を前記担体および任意で1種類以上の副成分と合わせるステップを含む。一般に、前記製剤は、薬剤を液体担体もしくは細かく分断した固体担体、またはその両方と均一によく合わせるステップと、必要であればその生成物を形成するステップによって調製する。
【0161】
経口投与に好適な製剤の形状は、カプセル(capsule)、カプセル(cachet)、丸剤、錠剤、トローチ剤(通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカントなどの着香基剤を用いる)、粉剤、顆粒、または水性液もしくは非水性液を用いた溶液もしくは懸濁液、または水中油もしくは油中水液体状乳剤、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤、またはトローチ(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤を用いる)などでよく、それぞれその対象組成物を活性成分としてあらかじめ定めた量含有する。本願明細書に記載の組成物はまた、ボーラス、舐剤、またはペーストとして投与してもよい。
【0162】
経口投与用の本願発明の固体状投与剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉剤、顆粒など)の場合、前記対象組成物を、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの薬学的に許容な担体、および/または以下に記載するもの、(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸などの充填剤または増量剤、(2)たとえばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなどの結合剤、(3)グリセロールなどの保湿剤、(4)寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(5)パラフィンなどの液体緩染剤、(6)第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、または結晶性調剤などの吸収遅延剤、(7)たとえばアセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、(8)カオリンおよびベントナイトクレイなどの吸収剤、(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体状ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの潤滑剤、並びに(10)着色剤のうち、1種類以上と混合する。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、前記組成物はまた、緩衝剤も含んでもよい。同様の種類の固体状組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、および高分子ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセルの充填剤として用いてもよい。
【0163】
錠剤は、任意の1種類以上の副成分と共に、圧縮または成形によって作製してもよい。圧縮錠剤は、結合剤(たとえばゼラチン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、錠剤分解物質(たとえばデンプングリコール酸ナトリウム、または架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を用いて調製してよい。成形錠剤は、不活性液体状希釈剤で湿潤させた前記対照組成物の混合物を、好適な機械で成形して作製してよい。錠剤、および糖衣錠、カプセル、ピル、および顆粒などその他の固体投与剤形は、任意に、腸溶コーティングおよび製薬業に公知のその他のコーティングなど、コーティングおよびシェルでスコアまたは調製してもよい。
【0164】
経口投与用の液体状投与剤形には、薬学的に許容な乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれる。液体状剤形は、前記対象組成物に加えて、たとえば水またはそのほかの溶媒、たとえばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚種油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタン脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物などの可溶化剤または乳化剤など、当業で一般に用いられる不活性希釈剤を含有してよい。
【0165】
懸濁液は、前記対象組成物に加えて、たとえばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、並びにそれらの混合物を含有してよい。
【0166】
直腸内投与または膣内投与用の製剤は、対象組成物と、たとえばカカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤用ロウ、またはサリチル酸塩などを含む、1種類以上の好適で刺激性のない賦形剤または担体を混合して調製されていてもよい坐剤であって、室温では固体状だが体温では液体状であって、直腸または膣内で溶解して活性剤を放出する坐剤であってもよい。膣内投与に適切な製剤にはまた、好適であることが当業に公知である担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレー製剤も含まれる。
【0167】
対象組成物の経皮投与用の剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、および吸入剤が含まれる。前記活性成分は、滅菌条件下で、薬学的に許容な担体、および保存剤、緩衝剤、または必要であれば高圧ガスと混合してよい。
【0168】
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、対象組成物に加えて、動物性および植物性脂肪、油、ロウ、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、ならびにそれらの混合物などの賦形剤を含有してよい。
【0169】
粉末およびスプレーは、対象組成物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはそれらの物質の混合物などの賦形剤を含んでもよい。スプレーはさらに、クロロフルオロ炭化水素、およびブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素など、通例の高圧ガスを含んでもよい。
【0170】
本願明細書に記載の組成物および化合物は、代替的にはエアロゾルで投与してもよい。これは、前記化合物を含有する、液体状エアロゾル、リポソーム製剤、または固体粒子を調製することによって実現する。非水性(たとえば過フッ化高圧ガスなど)懸濁剤を用いることもできる。音波ネブライザは、剪断される物質の露出を最小限にし、前記対象組成物に含有される化合物を崩壊させることができるために、使用してもよい。
【0171】
通常、水性エアロゾルは、対象組成物の水性溶液または懸濁液を従来の薬学的に許容な担体または安定剤とともに調合することによってつくられる。前記担体または安定剤は、特定の対象組成物の必要性に応じて変化するが、一般には非イオン性界面活性剤(ツイーン、プルロニクス、またはポリエチレングリコール)、血漿アルブミンなどの無毒性タンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝剤、塩、糖、または糖アルコールが含まれる。エアロゾルは一般に等張溶液から調製する。
【0172】
非経口投与に好適な薬学的組成物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、前記製剤を対象のレシピエントの血液と等張にするための溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含んでよい、1種類以上の薬学的に許容な滅菌等張水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液もしくは乳剤、または使用直前に注射可能な滅菌溶液もしくは分散液に再構築してよい滅菌粉末と混合した、対象組成物からなる。
【0173】
本願明細書に記載の薬学的組成物に用いてよい好適な水性担体および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが含まれる。適切な流動性は、たとえばレシチンなどのコーティング剤の使用、分散液の場合は所要の粒子サイズの維持、および表面活性剤の使用などによって維持することもできる。
【0174】
ある実施態様では、前記対象化合物は錠剤、丸剤、カプセル、またはその他の好適な摂取可能な剤形(以下にまとめて「錠剤」とよぶ)として製剤し、治療用の1回投与量を10錠以下で提供することもできる。別の例では、治療用の1回投与量は50、40、30、20、15、10、5、または3錠で提供される。
【0175】
ある実施態様では、2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を、錠剤、または水溶液もしくは懸濁液として経口投与用に調合する。2-メトキシエストラジオールまたはその類似体の錠剤の剤形は、20錠で提供される2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(もしくはその組み合わせ)の合計量が、たとえば少なくとも50%の個体が妊娠障害に関連する少なくとも1つの症状において素量的な軽減作用を示す投与量など、少なくとも平均作用投与量(ED50)の投与量を提供するだろう。さらなる実施態様では、前記錠剤は、10、5、2、または1錠で提供される2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(もしくはその組み合わせ)の合計量が患者(ヒトまたは非ヒト哺乳類)に少なくともED50の投与量を提供するように調合する。他の実施態様では、24時間以内に20、10、5、2錠で提供される2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(もしくはその組み合わせ)は、少なくともED50濃度の2-メトキシエストラジオール、またはその類似体(もしくはその組み合わせ)の平均血漿レベルを、平均して提供する投与療法を提供するだろう。他の実施態様では、ED50 の100倍、10倍、または5倍未満を提供する。他の実施態様では、錠剤の一回投与分(1乃至20錠)は、2-メトキシエストラジオール、またはその類似体(もしくはその組み合わせ)を約0.25 mg乃至1250
mg提供する。ある例示的な実施態様では、錠剤の一回投与分(1乃至20錠)は、2-メトキシエストラジオール、またはその類似体(もしくはその組み合わせ)を約0.5 mg乃至5 mg、約1乃至約3mg、または約2.5mg提供する。さらに、経口投与に好適なのは、任意で甘味賦形剤(たとえばシロップまたはエリキシル剤など)を併用した懸濁液および溶液である。前記懸濁液および溶液は、たとえば各ミリリットル、ティースプーン、テーブルスプーンなどの単位投与量の液体には薬0.25mg乃至1250mgの2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(もしくはその組み合わせ)を含有できるように、特定の濃度に調合し、たとえばスプーンまたはピペットなどの計測/投与器具で供給することもできる。
【0176】
同様に、2-メトキシエストラジオールまたはその類似体は、たとえば皮下、筋肉内もしくは静脈内注射などの非経口投与用に調合することができ、たとえば、2-メトキシエストラジオールまたはその類似体が滅菌溶液または懸濁液中に供給することができる(本願明細書ではまとめて「注射可能な溶液」とする)。前記注射可能な溶液は、200ccボーラス注射で提供される2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(もしくはその組み合わせ)の量が、少なくとも平均の有効投与量、またはED50の100倍未満またはED50, の10もしくは5倍未満である投与量を提供できるように調合される。前記注射可能な溶液は、100、50、25、10、5、2.5、または1 ccの注射で提供される2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(もしくはその組み合わせ)の合計量が、ED50、またはED50の100倍未満またはED50、の10もしくは5倍未満である投与量を患者へ提供できるように調合されてもよい。他の実施態様では、合計体積が100cc、50、25、5または2cc で提供され、24時間以内に少なくとも2回注射される2-メトキシエストラジオールまたはその類似体(もしくはその組み合わせ)の量は、少なくともED50濃度、またはED50の100倍未満、もしくはED50の10または5倍の2-メトキシエストラジオール、またはその類似体(もしくはその組み合わせ)の平均血漿レベルを、平均して提供する投与療法を提供するだろう。他の実施態様では、注射の一回投与分は、2-メトキシエストラジオール、またはその類似体(もしくはその組み合わせ)を約0.25 mg乃至1250 mg提供する。ある例示的な実施態様では、注射の一回投与分は、2-メトキシエストラジオール、またはその類似体(もしくはその組み合わせ)を約0.5 mg乃至5
mg、約1乃至約3mg、または約2.5mg提供する。
【実施例】
【0177】
本願発明はここまででは一般的に記述されているが、以下の例を参照することによってより容易に理解されるであろう。以下の例は、本願発明のある局面および実施態様を説明する目的のためだけに含まれているものであり、本願発明を制限することは決して意図しない。
【0178】
血管新生は、生殖周期の黄体の形成、子宮内膜の一時的な増殖、および成熟した個体(メス)の胎盤の形成など、脊椎動物の発達および組織の構築に重要な役割を果たしている。さらに、血管新生は妊娠中の正常な胎児の発達に重要である。妊娠中、細胞栄養芽層は上皮から内皮表現型へ転換され(偽血管新生とよばれるプロセス)母親のらせん動脈に侵入する。この血管再構築は、妊娠第一期の終わりまで、胎児への栄養と酸素の供給を増やすために必要である。偽血管新生に欠陥がある場合、子癇前症が発症し、胎盤が虚血状態になる。
【0179】
血管新生は血管新生因子の分泌によって刺激され、その結果、新しい血管がつくられる。このプロセスの間、基底膜および間質は、分泌された血管新生因子のまわりの、既存の血管の内皮細胞から分泌されたプロテアーゼによって破壊され、その後、血管内皮細胞が遊走および増殖する(J. Biol. Chem., 267,
10931, (1992))。血管新生の誘導に関与する主要な因子の一つは、血管内皮成長因子、つまりVEGFである。VEGFは、血管新生の促進活性(Circulation,
92 suppl II, 365 (1995))、および血管透過性促進活性(Science, 219, 983
(1983))を含む、さまざまな活性を有することが示されている。
【0180】
Flt-1(fms様チロシンキナーゼ1)は、血管内皮成長因子の2つのレセプタのうちの1つ(VEGFR-1)であって、もう1つはKDR(VEGFR-2, Flk-1)である。Flt-1タンパク質は、7つの免疫グロブリン様領域、膜貫通領域、およびチロシンキナーゼ領域を含む細胞質領域を含む、外部領域からなる。レセプタチロシンキナーゼファミリの他のメンバとは対照的に、flt-1のキナーゼ領域は約70アミノ酸の介在配列を有する二つのセグメントの中にある。VEGFレセプタの生物学は概説されており(Neufeld et al., (1999) FASEB Journal 13:11-22; Zachary (1998)
Experimental Nephrology 6:480-487) 、チロシンリン酸化部位は同定されている(Ito et al.,
(1998) J. Biol. Chem. 273:23410-23418)。flt-1は血管の発達における組織構築の制御において重要であり、その一方で第2のVEGFレセプタ(KDR, VEGFR-2, Flk-1)は内皮細胞におけるVEGFの分裂促進および血管新生作用を媒介すると考えられている。この理論を支持する証拠は、マウスのノックアウト研究に由来する(Fong et al., (1995) Nature 376:66-70)。別の研究も、Flt-1/KDRではなくFlt-1の発現が、低酸素症およびヒト臍静脈内皮細胞におけるHIF-1αによって上方調節されることを示している。
【0181】
Flt-1のスプライス変種である可溶性Flt-1(sFlt-1)は、Flt-1の膜貫通および細胞質領域が欠損しており、VEGFおよびP1GF(胎盤成長因子)の強力なアンタゴニストとして作用することが示されている。Flt-1は、VEGFおよびP1GFに結合する場合、血管新生シグナルを伝達するが、sFlt-1は、細胞質領域が欠損しているために、そのシグナルを伝達する能力がない。したがって、sFlt-1は、無傷のFlt-1経由のシグナル伝達に使うことができる遊離VEGFおよびP1GFのレベルを調節(低減)することによって機能する。最近、sFlt-1は、子癇前症を罹患する被験体において上方調節されることが示された。高レベルのsFlt-1は、VEGFおよびP1GFの血管新生および血管拡張作用を拮抗することによって、胎盤の血管不全を引き起こすと仮定されている。しかし、高sFlt-1レベルの一部の女性が子癇前症を発症しないのに、低sFlt-1値の一部の女性が子癇前症を発症するために、sFlt-1レベルのみでは子癇前症の発症を説明するには不十分なようだ。
【0182】
低酸素症誘発性因子1(HIF-1)は、低酸素症への細胞応答に重要な役割を果たしていると示されている転写因子である。HIF-1は、低酸素の刺激を受けて、プロモータに低酸素応答要素(HRE)を含んでいる遺伝子を活性化させて、低酸素利用能の条件下において細胞生存を促進する一連の遺伝子産生物を上方調節することが示されている。HIF応答遺伝子のリストは常に増え続けているが、既知の遺伝子産生物には、糖分解酵素(乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH-A)、エノラーゼ(ENO-1)、およびアルドラーゼAなど)、グルコーストランスポータ(GLUT 1および3)、血管内皮成長因子(VEGF)、誘発性一酸化窒素シンターゼ(NOS-2)、およびエリスロポエチン(EPO)が含まれる。細胞の嫌気性糖分解へのスイッチ、およびVEGFによる血管新生の上方調節は、酸素の要求を減らし組織への酸素輸送を最大化するために血管系を増やすことによって、低酸素張力の条件下において細胞生存を最大化するように適合させる。
【0183】
最近、HIF-1転写複合体は、2種類の塩基性へリックス-ループ-へリックスタンパク質、HIF-1αおよびHIF-1βのヘテロ二量体からなることが示されている。HIF-1αは塩基性へリックス-ループ-へリックスPAS領域タンパク質ファミリのメンバで、前記分子の炭素末端の半分に2つのトランス活性領域(TAD)、および前記分子のN末端の半分に位置するDNA結合活性を含有する約120kDaのタンパク質である。HIF-1αは、正常酸素圧の条件下におけるユビキチンプロテオソーム経路により構成的に分解される。これは、フォンヒッペル・リンダウ(VHL)腫瘍サプレッサタンパク質がHIF-αに結合することによって促進されるプロセスである。低酸素症の条件下では、HIF-1αの分解は阻害され、活性化HIF-1αが蓄積される。その後のARNTによるHIF-1αの二量化によって、核において活性HIF転写複合体が形成され、HIF応答遺伝子上のHREに結合して活性化させることができる。
【0184】
2-メトキシエストラジオール(2-ME)は、エストラジオール(E2)の内因性代謝物で、強力な抗増殖活性を有し、多様な腫瘍および非腫瘍細胞株においてアポトーシスを誘発する。経口投与した場合、わずかな毒性または無毒性の抗腫瘍および抗血管新生活性を示す。現在、2-MEは、PANZEMTMとう名称で、癌療法の第IおよびII相臨床試験がいくつか行われている。2-MEは、HIF-1を転写後レベルに下方調節し、VEGF発現の転写活性を誘発するHIF-1を阻害することが示されている。このプロセスに関与する場合がある一部のタンパク質の説明図を図1に示す。
【0185】
本願発明者らは、エストラジオールの天然代謝物、2-メトキシエストラジオール(2-ME)が、子癇前症、および遊離VEGFのレベルを低下させるsFLT-1の高発現に関連するその他の妊娠障害関連疾患の治療薬として用いることができることを発見した。VEGFの循環の阻害によって、タンパク尿が引き起こされる(Sugimoto et al., J. Biol.
Chem. (2003) 278:12605-8)。2-メトキシエストラジオールは、非子癇前症女性と比較して、妊娠第2および3期の子癇前症妊娠女性の循環は、顕著に減少する(最高で6乃至7倍)。2-メトキシエストラジオールは、胎盤からの細胞栄養芽層中のHIF-1αの発現を減少させ、VEGF、PlGF、VEGFレセプタ1(VEGFR1)およびsFLT-1の発現を劇的に減少させる。
【0186】
例1:2-メトキシエストラジオール処置が組織培養細胞中のVEGF、sFlt-1およびHIF-1αの発現を減少させる
5μM、10μMおよび30μMの2-MEは、低酸素下における胎盤の細胞栄養層細胞株(HTR)において、投与量に依存する形でVEGFの分泌レベルを75%まで減少させることができる。異なる細胞栄養層細胞株(BeWo細胞)が用いられる場合にも、同様の結果が見られる。同様に、5μM、10μMおよび30μMの2-MEは、低酸素下における同一の細胞株において、投与量に依存する形でsFLT-1 の分泌レベルを50%まで減少させることができる(図1乃至3参照)。低酸素条件下において2-MEが5μM、10μMおよび30μMの場合、栄養膜細胞のライセート中のHIF-1α、VEGF165、Flt-1およびsFlt-1の発現レベルは下方調節される(図4)。さらに、5μM、10μMおよび30μMの2-MEは、低酸素下における同一の細胞株において、投与量に依存する形でPlGF の分泌レベルを減少させることができる。
【0187】
例2:マウスの2-メトキシエストラジオール処置がin vivoにおいてsFlt-1および結合VEGFの発現を減少させる
正常マウスを、30μM の2-MEで毎日2回、2-MEで処理した。それから、血液試料を入手して、sFLT-1およびVEGFのレベルについてアッセイした。前記マウスは、sFLT-1発現の50%減少および結合VEGFの低減を示した。30μMという濃度は、ほぼ、妊娠終期の第2期後期または第3期初期の妊娠女性の血中に認められる2-MEの正常な生理学的レベルである。妊娠の終了時、非子癇前症被験体における2-MEのレベルは、非妊娠レベルの約1乃至5μMに戻る。
【0188】
例3:子癇前症被験体の2-メトキシエストラジオールのレベルは、対照被験体よりも低い
子癇前症を罹患する妊娠女性の尿および血液サンプルの2-メトキシエストラジオールのレベルを、対照被験体(たとえば、子癇前症を罹患していない妊娠女性など)のレベルと比較した。2-メトキシエストラジオールの濃度は、子癇前症の血清中では低下している(図6参照)。認められた2-メトキシエストラジオールの低下は、p値0.03で統計学的に有意である。
【0189】
等価物
本願開示は、とりわけ、高血圧の処理のための方法と組成物を提供する。特定の実施態様が検討されているが、上述の明細書は具体例であって制限的ではない。本願明細書に開示される方法、組成物、およびプロセスのたくさんの変形物は、本願明細書を精査の上、当業者に明らかになるであろう。付属の特許請求の範囲は、そのような実施例および変形物すべてを要求することを意図するのではなく、本願発明の完全な範囲は、その等価物の完全な範囲、および明細書とその変形物とともに、前記特許請求の範囲を参照することによって決定されるべきである。
【0190】
引用による援用
本願明細書に記載のすべての公表物および特許は、以下に挙げるその事項を含めて、各公表物または特許が特異的および個別的に引用により援用されることを示唆されるように、本願明細書にその全体を援用により引用される。紛争の場合、定義を含む本出願が支配するだろう。
【0191】
さらに引用により援用されるのは、以下の通り、
米国特許第6,528,676号、6,613,757号、6,086,865号、5,892,069号、5,661,143号、5,504,074号、5,198,366号、および5,849,474号、米国特許出願第2003/0236439号、2003/0187076号、2002/0147183号、2003/0236408号、2003/0195180号、2003/0096800号、2003/0055029号、2002/0165212号、2002/0082433号、2004/0018201号、2002/0102530号、および2002/0119959号、WO
03/015704号、Semenza, Genes Dev.
14: 1983-1991 (2000)、Takanashi et al., Lipids 38(8): 847-854 (2003)、Takanashi
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Olson, Am. J. Physiol. 285: L161-L168 (2003)、D’Amato et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA
91: 3964-3968 (1994)、Semenza, J. Clin. Invest. 106(7): 809-812 (2000)、D’Amato et
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Curr. Opin. Oncol. 15(6): 425-30 (2003)、Sharkey et al., Eur. J. Clin. Invest. 26
(12):1182-5 (1996)、Sugimoto et al., J. Biol. Chem.
278(15):12605-8 (2003)、and Zagzag et al., Cancer 88(11): 2606-18 (2000)である。

【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1】子癇前症における2-メトキシエストラジオール、HIF-1α、VEGF、およびsFlt-1の相互作用を示す図。
【図2】低酸素症下におけるHTR細胞栄養芽層の2-メトキシエストラジオール処置がVEGFの分泌を低減することを示すグラフ。
【図3】HTR細胞栄養芽層の2-メトキシエストラジオール処置がsFLT-1産生を低減させることを示すグラフ。
【図4】HTR-8/SV 新栄養膜細胞の2-メトキシエストラジオール処置がVEGF およびsFLT-1分泌を低減させることを示すグラフ。
【図5】HTR-8/SV 新栄養膜細胞の2-メトキシエストラジオール処置が、低酸素条件下において、細胞ライセート中のHIF-1α、VEGF165、Flt-1、およびsFlt-1発現を下方調節することを示すブロット。
【図6】HTR-8/SV 新栄養膜細胞の2-メトキシエストラジオール処置がPlGF 分泌を低減させることを示すグラフ。
【図7】2-メトキシエストラジオールの濃度が子癇前症の血清中で低減することを示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
子癇前症の処置または予防の方法であって、当該方法には、その必要のある妊娠被験体へ有効量の2-メトキシエストラジオール(2-ME)、その類似体、または薬学的に許容なその塩もしくはプロドラッグを投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、当該方法において、さらに、子癇前症に感受性のある被験体を同定する第1のステップを含む方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、当該方法においてさらに、子癇前症を罹患している被験体を同定する第1のステップを含む方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、当該方法には、さらに、前記被験体から採取した生物学的試料中における2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体のレベルを決定するステップを含む、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、当該方法において、前記の2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体のレベルが、2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体の前駆体または代謝物のレベルを決定するステップによって決定される、方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、当該方法には、さらに、前記の2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体のレベルを、対照の2-メトキシエストラジオールのレベルと比較するステップを含む、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、当該方法には、さらに、前記被験体から採取した生物学的試料中における2-メトキシエストラジオールの前駆体のレベルを決定するステップを含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、当該方法には、さらに、前記の2-メトキシエストラジオール前駆体のレベルを、対照の2-メトキシエストラジオールのレベルと比較するステップを含む、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、当該方法にはさらに、前記被験体から採取した生物学的試料中における2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体の代謝物のレベルを決定するステップを含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、当該方法にはさらに、前記の2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体の代謝物のレベルを、対照の2-メトキシエストラジオールの代謝物のレベルと比較するステップを含む、方法。
【請求項11】
請求項4に記載の方法であって、前記生物学的試料が尿、血液、または血漿である、方法。
【請求項12】
請求項4に記載の方法であって、当該方法において、前記対照が、前記被験体とほぼ同一の妊娠期である少なくとも1つの非子癇前症被験体で予め決定した標準である、方法。
【請求項13】
請求項6に記載の方法であって、前記被験体試料中の2-メトキシエストラジオールのレベルが前記対照の2-メトキシエストラジオールのレベルよりも低い場合、前記方法はさらに2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を、前記被験体の2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体のレベルが前記対照の2-メトキシエストラジオールのレベルとほぼ同一のレベルに上昇するのに有効なように投与するステップを含む、方法。
【請求項14】
請求項6に記載の方法であって、当該方法にはさらに、定期的に、対照と比較した前記被験体の2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体のレベルを決定するステップを含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、当該方法において、前記の定期的とはほぼ1、2、3、4、5、6、7、10、14、28、または35日に1回である、方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、さらに、定期的に前記被験体に投与された2-メトキシエストラジオールまたはその類似体のレベルを調節することによって、前記被験体の2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体のレベルを対照の2-メトキシエストラジオールのレベルとほぼ同一のレベルに維持するステップを含む、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、当該方法において前記被験体がヒトである、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、当該方法において、0.1、0.3、1、2.5または5 mgの前記2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を前記被験体に投与する、方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、当該方法において、前記2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を経口、経鼻、非経口、または経皮で投与する、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、さらに、前記被験体を子癇前症の1つ以上の症状について監視するステップを含む、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、当該方法において子癇前症の前記症状には、以下にあげる、母体の高血圧、タンパク尿、頭痛、視覚障害、上腹部痛、乏尿、血清クレアチニン、血小板減少症、高ビルビリン血症、肝酵素の上昇、肺浮腫、肺窮迫、けいれん、または胎児の成長遅滞の1つ以上が含まれる、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、当該方法において、前記被験体の血圧を定期的に監視する、方法。
【請求項23】
請求22に記載の方法であって、当該方法において、定期的とは少なくとも週1回である、方法。
【請求項24】
請求23に記載の方法であって、当該方法において、定期的とは少なくとも1日1回である、方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法であって、さらに、前記被験体に降圧剤を投与するステップを含む、方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であって、当該方法において、前記降圧剤が以下の、ヒドラジン、ラベタロール、またはニトロプルシドの1つ以上である、方法。
【請求項27】
請求項25に記載の方法であって、当該方法において、前記被験体に、前記降圧剤を前記2-メトキシエストラジオールまたはその類似体と併用投与する、方法。
【請求項28】
請求項1に記載の方法であって、さらに、前記被験体に抗けいれん剤を投与するステップを含む、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、当該方法において、前記抗けいれん剤が以下の、硫酸マグネシウム、フェニトイン、またはジアゼパムの1つ以上である、方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法であって、当該方法において、前記被験体に、前記抗けいれん剤を前記2-メトキシエストラジオールまたはその類似体と併用投与する、方法。
【請求項31】
請求項1に記載の方法であって、さらに、前記被験体に降圧剤および抗けいれん剤を投与するステップを含む、方法。
【請求項32】
請求項1に記載の方法であって、2-メトキシエストラジオール類似体は化15の化合物であって、



当該式において、それぞれの場合において独立に
RはH, アルキル、アリール、アラルキル、またはカルボニルであって、
R1およびR2は、-OR、-SR、または-N(R)2であって、
R3 はH、ハロゲン化物、アルキル、アリール、アラルキル、またはカルボニルであって、
R4、R5、およびR6はH、ハロゲン化物、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、チオールアルキル、アリール、アラルキル、またはカルボニルであって、
mは1乃至5の整数であって、
nは1乃至6の整数である、
化合物である、方法。
【請求項33】
請求項1に記載の方法であって、2-メトキシエストラジオール類似体はコルチシンまたはコンブレタスタチンA-4である、方法。
【請求項34】
子癇前症を処置または予防する方法であって、当該方法が、
a) 妊娠被験体から採取した生物学的試料中の2-メトキシエストラジオールのレベルを決定し、前記レベルを対照における2-メトキシエストラジオールのレベルと比較するステップであって、前記対照が、前記妊娠被験体とほぼ同一の妊娠期である少なくとも1つの非子癇前症被験体から予め決定した標準である、ステップと、
b) 前記妊娠被験体に、前記被験体の生物学的試料における2-メトキシエストラジオールおよび/またはその類似体のレベルを、前記対照における2-メトキシエストラジオールのレベルとほぼ同一のレベルまで上昇させるのに十分な量の、2-メトキシエストラジオールまたはその類似体を投与するステップと、
c) 定期的にa)およびb)のステップを繰り返して、前記被験体の2-メトキシエストラジオールのレベルを前記対照の2-メトキシエストラジオールのレベルとほぼ同一のレベルに維持する、ステップと、
を含む、方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、前記生物学的試料が尿、血液、または血漿である、方法。
【請求項36】
請求項34に記載の方法であって、当該方法においてさらに、子癇前症に感受性があるか、または罹患している被験体を同定する第1のステップを含む方法。
【請求項37】
被験体の子癇前症の進行の診断または予測の方法であって、当該方法には、前記被験体から採取した生物学的試料中の2-メトキシエストラジオールのレベルを決定するステップと、前記レベルと対照中の2-メトキシエストラジオールのレベルとを比較するステップであって、前記対照が前記被験体とほぼ同一の妊娠期の少なくとも一人の子癇前症を罹患していない被験体から予め決定した標準であって、前記対照と比較した前記被験体の試料中の2-メトキシエストラジオールの低レベルが、子癇前症に感受性があるかまたは罹患している被験体の指標となる、ステップを含む、方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、当該方法において、子癇前症の重症度を、前記対照と比較した前記被験体の2-メトキシエストラジオールのレベルとの差の度合いに基づいて決定し、当該方法において、前記対照からの差違がより大きければ子癇前症の重症度が高いことを示唆する、方法。
【請求項39】
請求項37に記載の方法であって、前記生物学的試料が尿、血液、または血漿である、方法。
【請求項40】
請求項37に記載の方法であって、当該方法において前記被験体がヒトである、方法。
【請求項41】
被験体の子癇前症の進行の診断または予測の方法であって、当該方法には、前記被験体から採取した生物学的試料中の2-メトキシエストラジオールの代謝物のレベルを決定するステップと、前記レベルと対照中の2-メトキシエストラジオールの代謝物のレベルとを比較するステップであって、前記対照が前記被験体とほぼ同一の妊娠期の少なくとも一人の子癇前症を罹患していない被験体から予め決定した標準であって、前記対照と比較した前記被験体の試料中の2-メトキシエストラジオールの代謝物の低レベルが、子癇前症に感受性があるまたは罹患している被験体の指標となる、ステップを含む、方法。
【請求項42】
被験体の子癇前症の進行の診断または予測の方法であって、当該方法には、前記被験体から採取した生物学的試料中の2-メトキシエストラジオールの前駆体のレベルを決定するステップと、前記レベルと対照中の2-メトキシエストラジオールの前駆体のレベルとを比較するステップであって、前記対照が前記被験体とほぼ同一の妊娠期の少なくとも一人の子癇前症を罹患していない被験体から予め決定した標準であって、前記対照と比較した前記被験体の試料中の2-メトキシエストラジオールの前駆体の変化が、子癇前症に感受性があるまたは罹患している被験体の指標となる、ステップを含む、方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法であって、前記被験体試料中の2-メトキシエストラジオールの前駆体のレベルが前記対照と比較して高いことが、子癇前症に感受性があるまたは罹患している被験体の指標となる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−536251(P2007−536251A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511543(P2007−511543)
【出願日】平成17年5月4日(2005.5.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/015511
【国際公開番号】WO2005/110462
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(506069273)チルドレンズ メディカル センター コーポレーション (5)
【氏名又は名称原語表記】CHILDREN’S MEDICAL CENTER CORPORATION
【住所又は居所原語表記】300 Longwood Avenue, Boston,MA 02115 (US).
【出願人】(303036197)ベス イスラエル ディーコネス メディカル センター (4)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
【Fターム(参考)】