説明

子粒子の製造方法、およびこの製造方法により得られた子粒子を用いる複合型表示媒体用粒子

【課題】帯電特性に優れた複合型を構成する子粒子の製造方法を提案する。
【解決手段】情報表示用パネルに用いる表示媒体用粒子31であり、前記表示媒体用粒子が母粒子32と該母粒子の表面に固着された子粒子33とを含む複合型粒子における前記子粒子33の製造方法であって、乳化重合法もしくは分散重合法を用いて、架橋剤により架橋された架橋樹脂を含む樹脂微粒子を作製する樹脂微粒子作製ステップと、前記樹脂微粒子をオゾン雰囲気下に暴露し樹脂微粒子中の未反応基を低減させるビニル基低減ステップとを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示媒体を封入し、この表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルに係る技術に関するもので、より詳細には表示媒体を構成する表示媒体用粒子に関する。このような表示媒体用粒子には、本体となる粒子単独型のものや、母粒子の表面に子粒子が付加されている複合型の表示媒体用粒子がある。この内で、後者の複合型表示媒体用粒子は近年、新しく提案されている粒子であり、その技術背景を下記で説明する。
【背景技術】
【0002】
従来、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示媒体を封入し、表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルが知られている。このような情報表示用パネルに用いる表示媒体を構成する粒子(表示媒体用粒子)として、母粒子の表面に、帯電性を有する子粒子を固着させた複合型の表示媒体用粒子を採用する技術の提案がある(例えば特許文献1)。
そして、特許文献1にも記載があるように(段落[0020]参照)、樹脂製の微粒子を用いて上記子粒子を形成して、これを母粒子の表面に固着させて複合型の表示媒体用粒子を構成する場合がある。このように、子粒子を樹脂粒子とすることで帯電設計が容易なるなどのメリットがあり、表示媒体用粒子としての耐久性、帯電特性を改善でき、これを採用する情報表示用パネルは高耐久、帯電性能の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−072283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した表面に帯電した子粒子(帯電性子粒子)を付加した複合型の表示媒体用粒子を、情報表示用パネルを備えた情報表示装置に用いると、特に強い光照射下で表示媒体用粒子の表面特性が変化し、帯電特性変化などによって表示コントラスト低下等の現象が起こることがあった。そして、これらにより、初期性能を長期に亘って維持できない問題があった。
【0005】
本発明は、上記の状況に鑑みなされたもので、母粒子表面に子粒子を固着させてなる表示媒体用粒子を使用した情報表示装置等において、光照射下での駆動において、表示媒体用粒子の帯電特性等を変化することなく、初期性能を長期にわたって維持できる表示媒体用粒子を構成する子粒子の製造方法、およびそれを用いて製造される複合型表示媒体用粒子を提供することを課題とする。
【0006】
本発明の主な目的は、複合型表示媒体用粒子における子粒子の製造方法、そして、この製造方法により得られた子粒子を母粒子表面に固着させて得られる複合型表示媒体用粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、情報表示用パネルに用いる表示媒体用粒子であり、前記表示媒体用粒子が母粒子と該母粒子の表面に固着された子粒子とを含む複合型粒子における前記子粒子の製造方法であって、
乳化重合法もしくは分散重合法を用いて、架橋剤により架橋された架橋樹脂を含む樹脂微粒子を作製する樹脂微粒子作製ステップと、前記樹脂微粒子をオゾン雰囲気下に暴露し樹脂微粒子中の未反応基を低減させるビニル基低減ステップとを有する、ことを特徴とする子粒子の製造方法により達成される。
【0008】
前記樹脂微粒子作製ステップが、重合性の単量体及び架橋剤を含む重合成分を重合させて架橋樹脂を含む樹脂微粒子とするステップであり、前記架橋剤が分子中にビニル基を2つ以上有する化合物であり、該架橋剤が前記重合成分全体中に20mol%以上含まれているのが望ましい。
【0009】
そして、前記ビニル基低減ステップにおいて、前記樹脂微粒子の赤外分光吸収スペクトルにおける1600cm−1の吸収強度を100%、1640cm−1の吸収強度を0%として規格化したとき、ビニル基に由来する1630cm−1の吸収強度が10%以下となるまでオゾン処理をするのが望ましい。
【0010】
前記子粒子は、架橋オレフィン樹脂、架橋スチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ウレタン樹脂、および架橋エポキシ樹脂からなる群から選択されるいずれかによる粒子とするのが好ましい。
【0011】
そして、上記に記載の製造方法により得られた子粒子を、母粒子と該母粒子の表面に固着された子粒子とを含む複合型表示媒体用粒子とされた場合における前記子粒子として用いた複合型表示媒体用粒子を形成するのが好ましい。
【0012】
上記複合型表示媒体用粒子を用いた情報表示用パネルは、表示性能、高耐久、帯電性能が向上した表示デバイスとして提供できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、母粒子表面に帯電性の子粒子を固着させてなる複合型の表示媒体用粒子を使用情報表示装置等において、光照射下での駆動において表示媒体用粒子の帯電特性等が変化することなく、初期性能を長期にわたって維持できる表示媒体用粒子を構成する子粒子の製造方法、及びそれを用いて製造される複合型表示媒体用粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)、(b)は本発明の表示媒体用粒子を用いた一例となる帯電粒子移動方式の情報表示用パネルの原理的構成を説明するために示した図である。
【図2】(a)、(b)は本発明の表示媒体用粒子を用いた一例となる帯電粒子移動方式の情報表示用パネルの他の原理的構成を説明するために示した図である。
【図3】母粒子の表面に子粒子を固着した複合型の表示媒体用粒子の様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る複合型の表示媒体用粒子に好適な粒子の構成、及びその製造方法を、図面に基づき詳細に説明する。ここでは、本発明の理解を容易とするため、表示媒体用粒子として帯電型の粒子を採用し、この表示媒体用粒子を移動して画像等を表示する移動方式の情報表示用パネルを一例として、その概略構成を先ず説明する。
【0016】
前記帯電粒子移動方式の情報表示用パネルは、対向する2枚の基板間の空間に封入した帯電性を有する母粒子およびその表面に子粒子を有する複合型の表示媒体用粒子で構成した粒子群に電界が付与される。付与された電界方向に沿って、表示媒体用粒子が電界による力やクーロン力などによって引き寄せられ、表示媒体用粒子が電界方向の変化によって移動することにより、画像等の情報表示がなされる。従って、表示媒体用粒子が、均一に移動し、かつ、繰り返し表示情報を書き換える時、或いは表示情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示用パネルを設計する必要がある。ここで、表示媒体を構成する表示媒体用粒子にかかる力は、電界による力、粒子同士のクーロン力により引き付けあう力、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0017】
本発明の表示媒体用粒子を表示媒体として用いる前記情報表示用パネルの例を、図1(a)、(b)および図2(a)、(b)を参照して説明する。
図1(a)、(b)に示す例は、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する表示媒体用粒子を含んだ粒子群として構成される互いに光学的反射率および帯電特性が異なる少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ粒子群として構成した白色表示媒体3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ粒子群として構成した黒色表示媒体3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(TFT付き画素電極)と基板2に設けた電極6(共通電極)とで形成する電極対の間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図1(a)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色表示、あるいは、図1(b)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色表示をするなど、白黒ドットマトリックス表示をすることができる。
なお、図1(a)、(b)においては、手前にある隔壁は省略している。各電極5、6は、基板1、2の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。画素(ドット)とセルとを1対1に対応させた例を示しているが、画素とセルとは対応させなくてもよい。
【0018】
また、図2(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成される互いに光学的反射率および帯電特性が異なる少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ粒子群として構成した白色表示媒体3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ粒子群として構成した黒色表示媒体3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(ライン電極)と基板2に設けた電極6(ライン電極)とが対向直交交差に形成する画素電極対の間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図2(a)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色表示、あるいは、図2(b)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色ドット表示をするなど、白黒のドットマトリックス表示をすることができる。
なお、図2(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。各電極5、6は、基板1、2の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。画素(ドット)とセルとを1対1に対応させた例を示しているが、画素とセルとは対応させなくてもよい。
【0019】
なお、上記基板1、2としては、ガラス基板、樹脂シート基板、樹脂フィルム基板等の基板を用いることができる。表示面側(観察側)とする基板2は、透明基板とする。この基板2の情報表示画面領域に、所定の電圧および極性(正・負)を有する電圧を印加するための電極(図1などで説明した、共通電極またはライン電極5)を配設する場合には透明電極とする。図1及び図2に示した情報表示用パネルを構成する基板1の表面には、マトリックス状電極対を構成するように薄膜トランジスタ(TFT)付き画素電極もしくはライン電極が形成されている。この対向電極対に電圧を印加したときに、表示媒体(粒子群)に電界が印加されることによって移動して所望の表示を行う前述の構造が実現できる。
【0020】
さらに、本発明の対象の一形態となる表示媒体表示媒体用粒子について詳細に説明する。表示媒体用粒子は、図1(a)、(b)及び図2(a)、(b)の情報表示用パネルなどに適用することができ少なくとも一方が透明な2枚の基板の間に表示媒体を構成して封入されるものである。
そして、本発明は、図3で示すように、母粒子32の表面に子粒子33が固着されている、いわゆる複合型の表示媒体用粒子31に係るもので、特には帯電性及び耐久性に優れた子粒子33、そのような子粒子の製造方法、そして、この子粒子を用いる複合型表示媒体用粒子31に関するものである。以下順に説明する。
【0021】
複合型の表示媒体用粒子での母粒子について、先ず説明する。母粒子の主成分となるベース樹脂に、必要に応じて、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含めることができる。以下で樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0022】
表示媒体用粒子の母粒子は、その主成分となるベース樹脂に着色剤として顔料を含み、更に必要に応じて、荷電制御剤、無機添加剤等を含ませることができる。以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0023】
表示媒体用粒子の母粒子のベース樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、チオウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルチオウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、スチレンブタジエンアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、メチルペンチル樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂等を挙げることができる。これらを2種類以上混合して使用してもよい。また、予め重合した樹脂を粉砕処理したものを使用してもよいし、懸濁重合で形成したものを使用してもよい。荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を混練りした後、粉砕することにより作製される場合には、母粒子の主成分は熱可塑性を有すると共に、粉砕しやすいことも必要である。この観点から、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアクリル樹脂、アクリルフッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、メチルペンチル樹脂、ポリスチレン系樹脂の各水素添加物等が挙げられる。なお、懸濁重合の場合、その容易さからアクリル樹脂、アクリルフッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂の各水素添加物等が好適である。
【0024】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0025】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等がある。赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
【0026】
また、黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0027】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0028】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。上記着色剤を配合して所望の色の表示媒体用粒子前駆体である母粒子を作製できる。
【0029】
そして、上記母粒子に固着される子粒子については、帯電性と共に、適度な硬度および粒径の揃った子粒子であることが望まれる。このような子粒子は、帯電性及び耐久性に優れたものとなるので、これを母粒子の表面に固着して用いる複合粒子の表示媒体用粒子はその結果として、帯電性及び耐久性を向上させることができる。
ここで、本願発明に係る子粒子は、乳化重合法もしくは分散重合法により製造されたものであり、かつ、前記子粒子中に残存するビニル基量が10%以下(赤外分光吸収スペクトルにおける1600cm−1の吸収強度を100%、1640cm−1の吸収強度を0%として規格化したとき、ビニル基に由来する1630cm−1の吸収強度が10%以下)であるとされている。子粒子を形成するための樹脂として、架橋オレフィン樹脂、架橋スチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ウレタン樹脂および架橋エポキシ樹脂からなる群から選択したものを採用すると、適度な硬度および粒径の揃った高耐久の子粒子を得ることができる。ここでは、例えば架橋スチレン樹脂の一種であるスチレン−ジビニルベンゼン共重合体を好適に採用できる。
本願発明者は、重合後の子粒子に含まれるビニル基を低く抑えること、少なくとも子粒子中に残存するビニル基量を10%以下とすることで、パネル内の低分子物質等の残存ビニル基への吸着、反応等による、帯電特性、子粒子表面特性が変化を防止できることを確認したものである。よって、複合型表示媒体用粒子に好適な子粒子となる。
【0030】
以下で、更に子粒子の製造方法を説明する。
本願発明に係る子粒子の製造方法では、乳化重合法もしくは分散重合法を用いて、架橋剤により架橋された架橋樹脂を含む樹脂微粒子を作製する樹脂微粒子作製ステップと、前記樹脂微粒子作製ステップの後、前記樹脂微粒子をオゾン雰囲気下に暴露し樹脂微粒子中の未反応基を低減させるビニル基低減ステップを介して複合型表示媒体用粒子に好適な子粒子を得るものである。
上記樹脂微粒子作製ステップでは、乳化重合法もしくは非水分散重合法を用いて、架橋オレフィン樹脂、架橋スチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ウレタン樹脂、および架橋エポキシ樹脂からなる群から少なくとも1つ以上選択される子粒子であり、架橋剤となるモノマーに含まれるビニル基は少なくとも2つ以上有し、かつ、粒子中(すなわち、重合成分全体中)に架橋剤が20mol%以上含まれる様に子粒子を製造するのが好ましい。好適には、架橋スチレン樹脂の一種であるスチレン−ジビニルベンゼン系の共重合体により子粒子を形成するのが好ましい。
【0031】
上記のように重合に用いる種々のモノマー(スチレン、ジビニルベンゼン等)は、ビニル基を内在させていることで重合を可能とするものであるが、反応終了後に粒子中に残存するビニル基は好ましいものではない。そこで、本願発明に係る製造法ではオゾン雰囲気下に子粒子を暴露してオゾンによりビニル基を開裂し、オゾンラジカルと反応することにより、ケトン、アルデヒド、カルボキシル基、水酸基、エーテル等の化合物にすることにより、残存するビニル基の低減を図ることができる。このビニル基低減ステップでは、前記粒子(樹脂微粒子)の赤外分光吸収スペクトルにおける1600cm−1の吸収強度を100%、1640cm−1の吸収強度を0%として規格化したとき、ビニル基に由来する1630cm−1の吸収強度が10%以下となるまでオゾン処理を行うのが好ましい。
なお、上記モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、α−クロロスチレン等のスチレン系モノマーのマー、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル系モノマー、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル系モノマー、1,4−ブタジエン等のブタジエン系モノマー、ビニルシクロヘキサン等のシクロオレフィン系モノマー、ビニルナフタレン、4−ビニルフェニル、1,1−ジフェニルエチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル、エチレングリコールジメタクリレート等のビニル基を単独もしくは複数有するモノマーを挙げることができる。これらのビニル基含有モノマーを単独でもしくは複数種組合せて使用してもよい。
【0032】
オゾン処理は、例えば、オゾンウェザーメーター(OMS−CHR:スガ試験機械(株)社製)を用いることにより実施できる。処理する粒子をガラスシャーレに厚さ5mm以下となる様に入れて、温度20〜200℃、好ましくは30〜150℃、より好ましくは40〜120℃で、オゾン濃度は5〜10000ppm、好ましくは10〜1000ppm、より好ましくは30〜500ppmで一定となる様に条件を設定して行うのが望ましい。
そして、オゾン処理後の粒子中に残存するビニル基量は、赤外分光計(FTS7000:(株)デジラボ社製)を利用して、赤外分光吸収スペクトルにおける1600cm−1の吸収強度を100%、1640cm−1の吸収強度を0%として規格化したとき、ビニル基に由来する1630cm−1のスペクトルの高さから確認できる。
【0033】
なお、子粒子製造の際に採用する乳化重合もしくは分散重合法は、従来において粒子を製造する際に用いた要領で同様に実施すればよく、場合により、乳化剤や分散剤を使用しても、使用しなくてもよい。乳化剤や分散剤を使用する場合には、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸アンモニウム、セチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸アンモニウム、オレイル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸アンモニウムなどの直鎖および分岐アルキル硫酸エステル塩;ラウリルスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸アンモニウム、ミリスチルスルホン酸ナトリウム、ミリスチルスルホン酸アンモニウム、セチルスルホン酸ナトリウム、セチルスルホン酸アンモニウム、ステアリルスルホン酸ナトリウム、ステアリルスルホン酸アンモニウム、オレイルスルホン酸ナトリウム、オレイルスルホン酸アンモニウムなどの直鎖および分岐アルキルスルホン酸塩;α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸アンモニウムなどのα−オレフィンスルホン酸塩; ノニルフェノール硫酸エステルナトリウム塩、ノニルフェノール硫酸エステルアンモニウム塩、ドデシルフェノール硫酸エステルナトリウム塩(ラウリル硫酸エステルナトリウム塩)、ドデシルフェノール硫酸エステルアンモニウム塩(ラウリル硫酸エステルアンモニウム塩)などのアルキルフェノール硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム(ラウリルベンゼンスルホン酸アンモニウム)などのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ブチルナフタレンスルホン酸アンモニウムなどのアルキルナフタレンスルホン酸塩; ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、モノオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸塩; ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(ラウリルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム)、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸アンモニウム(ラウリルジフェニルエーテルジスルホン酸アンモニウム)などのアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸アンモニウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩などのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体の硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレンブロック共重合体の硫酸エステルナトリウム塩などのポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体の硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体のドデシルエーテルの硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレンブロック共重合体のドデシルエーテルの硫酸エステルナトリウム塩などのポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレンブロック共重合体のアルキルエーテルの硫酸エステル塩等が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種類以上を組合せて使用してもよい。
【0034】
また、重合開始剤としては過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水、ベンゾイルパーオキサイド、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2´−アゾビス[2−(トリフルオロメチルスルホン酸-2-メチルイミダゾリン−2−イル)プロパン、2,2´−アゾビス[2−(2−メチルイミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩、2,2´−アゾビス[2−(2−メチルイミダゾリン−2−イル)プロパン硫酸塩、2,2’−アゾビズ(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)塩酸塩、2,2’-アゾビス[2−(トリフルオロメチルベンゼンスルホン酸-2-メチルイミダゾリン−2−イル)プロパン、2,2´−アゾビス[2−(トルエンスルホン酸-2-メチルイミダゾリン−2−イル)プロパン、2,2´−アゾビス[2−(ベンゼンスルホン酸-2-メチルイミダゾリン−2−イル)プロパン等のイミダゾリン基を有するアゾ開始剤、4,4’−アゾビス[4−シアノ吉草酸(メチルピリジン)アミド]等のピリジン基を有するアゾ開始剤、4,4’−アゾビス[4−シアノ吉草酸(メチルアミン)アミド]、4,4’−アゾビス[4−シアノ吉草酸(メチルシクロヘキシルアミン)アミド]等のアミノ基を有するアゾ開始剤等が挙げられ、これらを単独で、あるいは2種類以上を組合せて使用してもよい。
【0035】
以下では、更に、本発明による複合型の表示媒体用粒子を用いる情報表示用パネルを構成する各部材について説明する。
【0036】
前述した基板としては、少なくとも一方の基板はパネル外側から表示媒体の色が確認できる透明基板であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。もう一方の基板となる背面基板は透明でも不透明でもかまわない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルサルフィン(PES)、アクリル等の有機高分子系基板や、ガラスシート、石英シート、金属シート等を用い、表示面側にはこのうち透明なものを用いる。基板の厚みは、2〜2000μmが好ましく、さらに5〜1000μmが好適であり、薄すぎると、強度、基板間の間隔均一性を保ちにくくなり、2000μmより厚いと、薄型情報表示用パネルとする場合に不都合となる。
【0037】
必要に応じて、上記基板に設ける電極の形成材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類や酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛アルミニウム(AZO)、酸化インジウム、導電性酸化錫、アンチモン錫酸化物(ATO)、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピローラ、ポリチオフェンなどの導電性高分子類を例示でき、これらを適宜に選択して用いることができる。電極の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状にパターニング形成する方法や、金属箔をラミネートする方法(例えば圧延銅箔法)や、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布してパターニング形成する方法を用いることができる。
視認側(表示面側)基板の情報表示画面領域に設ける電極は透明である必要があるが、情報表示画面領域外や背面側基板に設ける電極は透明である必要がない。いずれの場合もパターン形成可能である導電性である上記材料を好適に用いることができる。なお、電極厚みは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、0.01〜10μm、好ましくは0.05〜5μmが好適である。背面側基板に設ける電極の材質や厚みなどは上述した表示面側基板に設ける電極と同様であるが、透明である必要はない。
【0038】
基板に設ける隔壁については、その形状は表示にかかわる表示媒体の種類や、配置する電極の形状、配置により適宜最適設定され、一概には限定されないが、隔壁の幅は2〜100μm、好ましくは3〜50μmである。隔壁の高さは、基板間ギャップ以内で、基板用ギャップ確保用部分は基板間ギャップと同じに、それ以外のセル形成用部分は基板間ギャップと同じか、それよりも低くすることができる。また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板1、2の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。この発明では、いずれの方法も好適に用いられる。隔壁の高さは、基板間距離に合せるが、部分的に基板間距離よりも低くすることもできる。
これらのリブからなる隔壁により形成されるセルは、その形状として例えば基板平面方向からみて四角状、三角状、ライン状、円形状、六角状が例示され、配置としては格子状やハニカム状や網目状が例示される。表示面側から見える隔壁断面部分に相当する部分(セルの枠部の面積)はできるだけ小さくした方がよく、表示状態の鮮明さを増すことができる。
ここで、隔壁の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明の情報表示装置に搭載する情報表示用パネルに好適に用いることができるが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法を好適に用いられる。
【0039】
また、表示媒体用粒子は平均粒子径d(0.5)が、1〜20μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなり過ぎるために表示媒体としての移動に支障をきたすようになる。
【0040】
さらに本発明では、各表示媒体用粒子の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Span(スパン)を5未満、好ましくは3未満とするのが望ましい。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、各粒子のサイズが揃い、均一な表示媒体としての移動が可能となる。
【0041】
さらにまた、帯電極性が互いに異なる2種類の表示媒体用粒子を用いて構成した2種類の表示媒体を用いた情報表示用パネルでは、平均粒子径d(0.5)が大きい方の表示媒体の平均粒径と平均粒子径d(0.5)が小さい方の表示媒体の平均粒径との比を10以下とすることが肝要である。たとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、互いに帯電極性の異なる表示媒体用粒子が互いに反対方向に動くので、互いの粒子サイズを同程度にし、互いの表示媒体用粒子が反対方向に容易に移動できるようにするのが好適であり、それがこの範囲となる。
【0042】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザ回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザ光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、本発明における粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。例えば、Mastersizer2000(シスメックス(株))測定機を用いて、窒素気流中に粒子を投入し、付属の解析ソフトにて、粒子径および粒子径分布の測定を行うことができる。
複合粒子の外添剤について説明する。複合粒子の流動性を向上させるために、外添剤を複合粒子表面に付着もしくは固着させるのが望ましい。外添剤は、シリカ、チタニア、アルミナ、イットリア、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化ベリリウム、酸化亜鉛、酸化スズ等の金属酸化物系の無機微粒子、および、上記金属酸化物にシリコーンオイル、HMDS、アルキルトリアルコキシシラン、アミノアルキルトリアルコキシシラン等で化学処理した表面処理金属酸化物、並びにスチレン‐ジビニルベンゼン系架橋樹脂微粒子、アクリル系架橋樹脂微粒子、シクロオレフィン系架橋樹脂微粒子等が挙げられる他、電子写真用トナーで用いる外添剤を構成する微小粒子が挙げられる。これら外添剤は1種類以上用いるのが好ましい。外添剤の粒子径は1次粒子径が80nm以下が好ましく、より好ましくは1〜60nmが好ましく、2〜40nmが更に好ましい。外添剤の表面被覆率は100〜1500%とするのが望ましい。外添剤は凝集力が強いため、複合粒子表面に均一に被覆するために、より好ましい被覆率は300〜1000%である。ここで、表面被覆率とは表示媒体用粒子の表面に均一に一層、外添剤が付着した状態を100%として、2層、3層となったときに200%、300%と判定されるものである。
【0043】
さらに、表示媒体用粒子で構成する表示媒体を気体中空間で駆動させる乾式の情報表示用パネルでは、基板間の表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、上記図1(a)、(b)、図2(a)、(b)において、対向する基板1、基板2に挟まれる部分から、電極5、6(電極を基板の内側に設けた場合)、表示媒体3の占有部分、隔壁4の占有部分、情報表示用パネルのシール部分を除いた、いわゆる表示媒体が接する気体部分を指すものとする。空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるように情報表示用パネルに封入することが必要であり、例えば、表示媒体の充填、情報表示用パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール材、シール方法を施すことが肝要である。
【0044】
本発明による表示媒体用粒子が採用される情報表示用パネルにおける基板と基板との間隔は、表示媒体が移動できて、コントラストを維持できればよいが、通常10〜500μm、好ましくは10〜200μmに、帯電粒子移動方式の情報表示用パネルでは10〜100μm、好ましくは10〜50μmに調整される。
対向する基板間の気体中空間における表示媒体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。なお、70%を超える場合には表示媒体の移動に支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【0045】
以下、更に、本発明の実施例として複合型の表示媒体用粒子に好適な子粒子の製造方法を説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
以下、本発明に係る表示媒体用粒子の実施例について説明する。
粒径は日本電子製透過型電子顕微鏡(FE−SEM7500)を用いて、粒子総個数が200個前後となるように写真を撮影し、その写真より無作為に選んだ100個の粒子の直径(撮影された粒子の最大径)をノギスにて計測し、その算術平均を平均粒子径として測定することにより求めた。
粒子に残存するビニル基量(ビニル基残存率)は以下に示すようにして測定した。
赤外分光計(FTS7000:(株)デジラボ社製)を用い、粒子の赤外分光吸収スペクトルを測定する。赤外分光吸収スペクトルにおける1600cm−1の吸収強度を100%、1640cm−1の吸収強度を0%として規格化したとき、ビニル基に由来する1630cm−1の吸収強度からビニル基残存率を求めた。
摩擦帯電量は下記装置を用い、下記の条件にて一般的なフローオフ法に基づいて測定した。
測定装置:ブローオフ方式帯電量測定機(京セラケミカル社製、TB-203)
メッシュアパーチャ:32[μm]
ブロー圧/サクション圧:4.5[kPa]/9.5[kPa]
キャリア:F96-80(パウダーテック社製)
振とう回数:1000回
表示媒体用粒子の電荷保持特性(電荷保持率)は、下記に示す条件にて測定した。
(1) 銅セルに粒子を層厚300(μm)で充填する。
(2) スコロトロン帯電器(ニードル印加電圧±10(kV)、グリッド電圧±1
(kV))により粒子表面電位±1(kV)となるように電荷を付与する。
(3) グラウンド(GND)結線し、室温(22℃)、湿度(50RH%)で測定開始、
子粒子の場合は12時間経過した後の表面電位を初期表面電位で割ったものを電
荷保持率(%)とした。複合粒子の場合は同様にして、24時間後経過した時の
表面電位を初期表面電位で割ったものを電荷保持率(%)とした。
(4) 電荷保持特性の判断は子粒子の場合は電荷保持率が70(%)以上あれば、複合
粒子の場合は電荷保持率が90(%)以上であれば、電荷保持特性が高いと判断
した。
【0047】
表示媒体装置に封入するための表示媒体用粒子として、複合型の表示媒体用粒子を製造した。複合粒子の作製は黒色表示媒体用母粒子としてエチレン−シクロオレフィンコポリマー(TOPAS6013:ポリプラスチック(株)製)100質量部とカーボンブラック(SPECIAL BLACK4:エボニック−デグッサ(株)製)5質量部とを2軸混練して、ジェットミル(ラボジェットミルIDS-LJ型:日本ニューマテック(株)製)で粉砕分級することにより平均粒子径10μmを得た。
また、白色表示媒体用粒子はエチレン−シクロオレフィンコポリマー(TOPAS6013:ポリプラスチック(株)製)100質量部と二酸化チタン(タイペークCR−50:石原産業(株)製)100質量部とを2軸混練して、ジェットミル(ラボジェットミルIDS-LJ型:日本ニューマテック(株)製)で粉砕分級することにより平均粒子径10μmを得た。
複合粒子の作製は複合化装置(ノビルタミル(NOB−130):ホソカワミクロン(株)製)を用いて、投入エネルギーが2400kJとなるようにして行った。
外添剤の付与は、複合粒子を所定の被覆率となる量の外添剤とあらかじめ混合した後、カーボンミキサー処理機(SMT(株)製:HFM−001C)を4000rpmで撹拌して、複合粒子表面に外添剤が均一付与するように処理を行った。
【0048】
パネルの作製は上述のように作製した、白色表示媒体用粒子と黒色表示媒体用粒子とを組合せて、透明電極(ITO)が製膜されているパネル間に粒子充填量を5g/m2で充填した評価パネルを作製した。今回用いたパネルは電極間距離が40μmとなるもので、80Vの電圧印加において2×10(V/m)の電界を表示媒体用粒子に作用させるものとなる。
パネルの評価は評価パネルの電極間に80Vの電圧を電圧の向きを変えて印加することで、評価パネルにおいて白表示および黒表示を行った。そして、白表示および黒表示のそれぞれにおいて、光学濃度計(サカタインクスエンジニアリング(株):Macbeth RD19I)を用いてOD値(光学濃度)の測定を行った。白表示のOD:OD(W)と黒表示のOD:OD(B)をもとにコントラスト比CR=10|OD(B)−OD(W)|を算出し、これをパネル性能の指標とした。耐久試験は蛍光灯(東芝社製、 FL20S D−EDL−D65)を用いて600Lxとなる様にした状態で80V白黒反転回数50万回駆動後のCRがCR>5となる場合を合格(○)とし、CR≦5となる場合を不合格(×)とした。パネルの強光下での耐久試験(光耐久試験)は80V駆動前にあらかじめ、蛍光灯(東芝社製、 FL20S D−EDL−D65)を用いて4000Lxとなる様にした状態で、4日間照射した後、4000Lx照射下で80Vで白黒反転回数50万回駆動後のCRがCR>5となる場合を合格(○)とし、CR≦5となる場合を不合格(×)とした。
【0049】
(製造例1)架橋スチレン樹脂粒子の作製
3口フラスコに過硫酸カリウム(和光純薬製)1.5g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(以下、SDSと略記する)(関東化学製)109 2.0g、精製水920gの順に加え、過硫酸カリウムおよびSDSを溶解させた。スチレン(東京化成製)、ジビニルベンゼン(新日鐵化学製)の重量比3:7の混合溶液200gを加えた後、室温にて20分間窒素ガスでバブリングを行った。フラスコからモノマーがもれないようにフラスコを密閉した後、80℃で24時間重合して白濁の重合溶液を得た。微粒子の分散濃度は18.6%であった。この分散液100gにメタノール100gを加え、5分間撹拌した後に遠心分離機(コクサンHL−7)を用いて、6900rpmで1時間遠心分離を行った。1時間後、固形分(子粒子)と溶液とに固液分離がなされており、溶液は透明であった。溶液を除去した後、メタノール200gを加え、2時間撹拌した後、遠心分離機を用いて、6900rpmで1時間遠心分離を行い、上澄液を除去した。この操作をさらに3回繰り返した後、子粒子を80℃1日真空乾燥した。子粒子の回収量は18.1g(収率97.3%)であった。粒子径は280nmであり、ビニル基残存率は30.3%であり、摩擦帯電量は−10.3μC/gであり、電荷保持率は99.0%であった。
【0050】
(製造例2)架橋ポリスチレン樹脂粒子のオゾン処理
製造例1で作製した子粒子30gをガラスシャーレ(直径20cm)に入れ、オゾンウェザーメーター(OMS−HC:スガ試験機械(株)社製)でオゾン濃度120ppm、70℃、で2日間オゾン処理を行った。オゾン処理後、子粒子を回収した。ビニル基残存率は4.5%であり、処理前と比較してビニル基残存率が減少していることを確認した。摩擦帯電量は−12.5μC/gであり、電荷保持率は97.0%であった。
【0051】
(製造例3)架橋ポリスチレン樹脂粒子の作製
3口フラスコに過硫酸カリウム(和光純薬製)1.5g、SDS 2.0g、精製水920gの順に加え、過硫酸カリウムおよびSDSを溶解させた。スチレン(東京化成製)、ジビニルベンゼン(新日鐵化学製)の重量比1:9の混合溶液200gを加えた後、室温にて20分間窒素ガスでバブリングを行った。フラスコからモノマーがもれないようにフラスコを密閉した後、80℃で24時間重合して白濁の重合溶液を得た。微粒子の分散濃度は18.6%であった。この分散液100gにメタノール100gを加え、5分間撹拌した後に遠心分離機(コクサン(株):HL−7)を用いて、6900rpmで1時間遠心分離を行った。1時間後、固形分(子粒子)と溶液とに固液分離がなされており、溶液は透明であった。溶液を除去した後、メタノール200gを加え、2時間撹拌した後、遠心分離機を用いて、6900rpmで1時間遠心分離を行い、上澄液を除去した。この操作をさらに3回繰り返した後、子粒子を80℃1日真空乾燥した。子粒子の回収量は18.1g(収率97.3%)であった。粒子径は280nmであり、ビニル基残存率は53.5%であり、摩擦帯電量は−15.3μC/gであり、電荷保持率は99.0%であった。
【0052】
(製造例4)架橋ポリスチレン樹脂粒子のオゾン処理
製造例3で作製した子粒子30gをガラスシャーレ(直径20cm)に入れ、オゾンウェザーメーター(OMS−HC:スガ試験機械(株)社製)でオゾン濃度150ppm、80℃、で3日間オゾン処理を行った。オゾン処理後、子粒子を回収した。ビニル基残存率は4.2%であり、処理前と比較してビニル基残存率が減少していることを確認した。摩擦帯電量は−15.8μC/gであり、電荷保持率は95.0%であった。
【0053】
[実施例1]
(複合粒子の作製)
複合粒子は母粒子として、平均粒子径10μmのエチレン−シクロオレフィンコポリマー球状粒子、子粒子として、製造例2で作製した子粒子を用いて、複合化装置(ノビルタミル(NOB−130):ホソカワミクロン(株)製)を用いて、投入エネルギーが2400kJとなるようにして作製した。複合粒子(1)の摩擦帯電量は−26.7μC/gであり、電荷保持率は90.3%であり、負帯電を示し、かつ、駆動に必要な帯電量および高い電荷保持特性を有していた。
【0054】
[実施例2]
(複合粒子の作製)
製造例4で作製した子粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして複合粒子(2)を作製した。複合粒子(2)の摩擦帯電量は−30.7μC/gであり、電荷保持率は90.2%であり、負帯電を示し、かつ、駆動に必要な帯電量および高い電荷保持特性を有していた。
【0055】
[比較例1]
(複合粒子の作製)
製造例1で作製した子粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして複合粒子(3)を作製した。複合粒子(3)の摩擦帯電量は−27.3μC/gであり、電荷保持率は91.8%であり、負帯電を示し、かつ、駆動に必要な帯電量および高い電荷保持特性を有していた。
【0056】
[比較例2]
(複合粒子の作製)
製造例3で作製した子粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして複合粒子(4)を作製した。複合粒子(4)の摩擦帯電量は−29.5μC/gであり、電荷保持率は91.5%であり、負帯電を示し、かつ、駆動に必要な帯電量および高い電荷保持特性を有していた。
【0057】
[実施例3]
(外添剤被覆複合粒子の作製)
実施例1で作製した複合粒子(1)100gと外添剤(HDK H3004:WACKER社)2.5g(被覆率500%)とをあらかじめ混合した後、カーボンミキサー処理機(SMT(株)製:HFM−001C)を4000rpmで撹拌して、複合粒子表面に外添剤が均一付与するように処理を行い、白色表示媒体用粒子(1)を作製した。
【0058】
[実施例4]
(外添剤被覆複合粒子の作製)
実施例2で作製した複合粒子(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして白色表示媒体用粒子(2)を作製した。
【0059】
[比較例3]
(外添剤被覆複合粒子の作製)
比較例1で作製した複合粒子(3)を用いた以外は、実施例1と同様にして白色表示媒体用粒子(3)を作製した。
【0060】
[比較例4]
(外添剤被覆複合粒子の作製)
比較例2で作製した複合粒子(4)を用いた以外は、実施例1と同様にして白色表示媒体用粒子(4)を作製した。
【0061】
(パネルの作製および評価結果)
実施例3から4および比較例1から2で作製した白色表示媒体用粒子(1)から(4)と黒色表示媒体用粒子(黒色表示媒体用母粒子とエポスターS(日本触媒(株)製)との複合粒子に外添剤(HDK H3050VP:WACKER社製)を被覆率1000%となる様に処理した粒子)を組合せてパネルの耐久試験を行った。組み合わせおよび評価結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
以上本発明の実施例から本発明の樹脂子粒子処理を含む製造方法を用いることにより、残存ビニル基を低減させた子粒子が得られる。このような子粒子を母粒子に固着した複合型表示媒体用粒子を用いる情報表示用パネルは強光下でのパネル耐久性能に大幅な改善が見られる。
【0064】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る情報表示用パネルは、ノートパソコン、電子手帳、PDA(Personal Digital Assistants)と呼ばれる携帯型情報機器、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子書籍、電子新聞、電子マニュアル(電子取扱説明書)等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板やホワイトボード等の掲示板、電子卓上計算機、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、情報ボード、電子POP(Point Of Presence、Point Of Purchase advertising)、電子値札、電子棚札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部のほか、POS端末、カーナビゲーション装置、時計など様々な電子機器の表示部に好適に用いられる。他に、外部電界形成手段で表示書換えを行う表示パネルや外部表示書換え手段に接続して表示書換えを行う表示パネル(いずれも、いわゆるリライタブルペーパー)としても好適に用いられる。
【符号の説明】
【0066】
1、2 基板
3Wa、3Ba 表示媒体用粒子
3W、3B 表示媒体(粒子群)
4 隔壁
5、6 電極
31 複合型の表示媒体用粒子
32 母粒子
33 子粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報表示用パネルに用いる表示媒体用粒子であり、前記表示媒体用粒子が母粒子と該母粒子の表面に固着された子粒子とを含む複合型粒子における前記子粒子の製造方法であって、
乳化重合法もしくは分散重合法を用いて、
架橋剤により架橋された架橋樹脂を含む樹脂微粒子を作製する樹脂微粒子作製ステップと、
前記樹脂微粒子をオゾン雰囲気下に暴露し樹脂微粒子中の未反応基を低減させるビニル基低減ステップとを有する、ことを特徴とする子粒子の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂微粒子作製ステップが、重合性の単量体及び架橋剤を含む重合成分を重合させて架橋樹脂を含む樹脂微粒子とするステップであり、前記架橋剤が分子中にビニル基を2つ以上有する化合物であり、該架橋剤が前記重合成分全体中に20mol%以上含まれている、ことを特徴とする請求項1に記載の子粒子の製造方法。
【請求項3】
前記ビニル基低減ステップにおいて、前記樹脂微粒子の赤外分光吸収スペクトルにおける1600cm−1の吸収強度を100%、1640cm−1の吸収強度を0%として規格化したとき、ビニル基に由来する1630cm−1の吸収強度が10%以下となるまでオゾン処理をする、ことを特徴とする請求項1または2に記載の子粒子の製造方法。
【請求項4】
前記子粒子は、架橋オレフィン樹脂、架橋スチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ウレタン樹脂、および架橋エポキシ樹脂からなる群から選択されるいずれかによる粒子である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の子粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の製造方法により得られた子粒子を、
母粒子と該母粒子の表面に固着された子粒子とを含む複合型表示媒体用粒子とされた場合における前記子粒子として用いた、ことを特徴とする複合型表示媒体用粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−145791(P2012−145791A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4571(P2011−4571)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】