説明

孔あけ加工用当て板及び孔あけ加工方法

【課題】アルミニウム製基板に対する密着性に優れ、べたつきがなく、ブロッキング防止性に優れると共に、加工後の洗浄を容易に行うことのできる潤滑層を備えた孔あけ加工用当て板を提供する。
【解決手段】この発明に係る孔あけ加工用当て板1は、アルミニウム製基板2の少なくとも片面に潤滑層3が形成されてなる孔あけ加工用当て板において、前記潤滑層3は、結晶性を有する水溶性樹脂及び結晶核剤を含有した混合組成物からなり、前記潤滑層3の厚さが0.01〜0.50mmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばプリント配線板におけるスルーホール等、被加工物に小口径の孔を形成する際に用いられる当て板及び該当て板を用いた孔あけ加工方法に関する。
【0002】
なお、この明細書及び特許請求の範囲において、「アルミニウム」の語は、純アルミニウム及びアルミニウム合金を含む意味で用いる。また、この明細書及び特許請求の範囲において、「板」という語は、箔をも含む意味で用いる。
【背景技術】
【0003】
従来、プリント配線板にスルーホールを孔あけ加工する際には、すて板上に複数枚のプリント配線用素板を積み重ね、その最上位の素板の上面にアルミニウム製の当て板を配置し、この状態でドリルによって上方から該当て板を貫通してプリント配線用素板の孔あけを行うことにより、積み重ねた全部の素板に一挙にスルーホールを形成する方法が採用されている。この当て板は、ドリルの食いつきをよくすると共に、素板表面の加工時の損傷や孔周縁でのバリの発生を防止する目的で使用されている。
【0004】
ところで、近年、プリント配線板の高密度化に伴い、直径0.3mm以下の小口径の孔を形成することが要求されている。このような要求に応えるべく、当て板に単なるアルミニウム板を用いて、径0.3mm以下の小径ドリルによる孔あけ加工を行うと、ドリルが当て板表面で横滑りし、このために、孔あけの位置精度が悪化すると共に、ドリルの折損が多発し、しかも孔の内周面の荒れを生じることに加え、ドリルの折損を抑える上でプリント配線用素板の積み重ね枚数を多くすることができず加工効率を十分に高められないという問題があった。
【0005】
そこで、孔あけ加工用当て板として、アルミニウム製基板の少なくとも片面に、分子量10000以上のポリエチレングリコール20〜90重量%と水溶性滑剤80〜10重量%との混合物からなる厚さ0.1〜3mmの水溶性滑剤シートを配置せしめた構成のものを用いることが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、前記水溶性滑剤シートとして、ポリエーテルエステル20〜90重量%と水溶性滑剤80〜10重量%との混合物からなる厚さ0.02〜3mmのシートを用いることが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−92494号公報
【特許文献2】特開平6−344297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、混合物は成膜性に劣っているために水溶性滑剤シートを形成する作業が困難であるし、水溶性滑剤シートに割れが発生しやすい上に、水溶性滑剤シートにべたつきがあるという問題があった。このようにべたつきがあると、水溶性滑剤シートを取り扱うハンドリング時に手がべたついて取り扱い難いものとなるし、ブロッキングも発生しやすくなる。ブロッキングが発生すると、当て板を複数枚積み重ねて保管した場合に隣り合う当て板同士が互いに付着するので、使用時に当て板を1枚づつ剥がす作業を行う際の作業性が大きく低下する。更に、使用時に当て板を1枚づつ剥がす際に、隣り合う2枚の当て板のうち一方の当て板の滑剤が他方の当て板に付着して取れてしまい、これにより水溶性滑剤シートに厚さの不均一が生じると共に素板側に当接する面に凹凸が生じる結果、ドリルの折損が生じたり、孔あけの位置精度も低下するという問題があった。また、長尺の当て板を巻いて保管した場合にブロッキングにより隣り合う当て板同士が互いに付着する結果、使用時に当て板を巻き戻すことが困難になるという問題もあった。
【0009】
また、上記特許文献2に記載の水溶性滑剤シートは、アルミニウム製基板に対する密着性が不十分であり、アルミニウム製基板から水溶性滑剤シートが部分的に剥離して反りが発生するという問題があった。更に、水溶性滑剤シートにべたつきがある上にブロッキングを生じやすく、このために上述した特許文献1の問題と同様の問題を抱えていた。更に、水溶性滑剤シートの厚さを0.2mm以上に設定した場合には、孔あけ加工後に水洗で溶解除去することができず、このため湯洗を行う必要性を生じて手間がかかるという問題もあった。
【0010】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、アルミニウム製基板に対する密着性に優れ、べたつきがなく、ブロッキング防止性に優れると共に、加工後の洗浄を容易に行うことのできる潤滑層を備えた孔あけ加工用当て板、及びドリルの折損を少なくできると共に孔の位置精度を向上できる孔あけ加工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0012】
[1]アルミニウム製基板の少なくとも片面に潤滑層が形成されてなる孔あけ加工用当て板において、
前記潤滑層は、結晶性を有する水溶性樹脂及び結晶核剤を含有した混合組成物からなることを特徴とする孔あけ加工用当て板。
【0013】
[2]前記結晶核剤は、ソルビトール系核剤、有機リン酸塩系核剤、カルボン酸金属塩系核剤、ロジン系核剤、有機酸系核剤、ポリマー系核剤及び無機化合物系核剤からなる群より選ばれる1種または2種以上の核剤である前項1に記載の孔あけ加工用当て板。
【0014】
[3]前記潤滑層は、前記水溶性樹脂100質量部に対して前記結晶核剤0.01〜5質量部を含有した混合組成物からなる前項1または2に記載の孔あけ加工用当て板。
【0015】
[4]前記潤滑層の厚さが0.01〜3mmである前項1〜3のいずれか1項に記載の孔あけ加工用当て板。
【0016】
[5]前記水溶性樹脂として、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンプロピレン共重合体及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる1種または2種以上の水溶性樹脂が用いられている前項1〜4のいずれか1項に記載の孔あけ加工用当て板。
【0017】
[6]積み重ねた複数枚のプリント配線用素板の上に、前項1〜5のいずれか1項に記載の孔あけ加工用当て板を配置し、この状態でドリルを用いて上方から該孔あけ加工用当て板及びプリント配線用素板に直径0.3mm以下の孔を形成することを特徴とする孔あけ加工方法。
【発明の効果】
【0018】
[1]の発明では、アルミニウム製基板の少なくとも片面に形成された潤滑層は、結晶性の水溶性樹脂に結晶核剤が混合された混合組成物からなるので、潤滑層はアルミニウム製基板に対する密着性に優れていて十分な耐久性が得られると共に、潤滑層はべたつきがなくブロッキング防止性にも優れ、潤滑層の塗膜割れ発生も十分に防止でき、また孔あけ加工後の洗浄による溶解除去も容易に行い得る。このように本発明の孔あけ加工用当て板は、潤滑層のべたつきがなくてブロッキング防止性に優れているので、孔あけ加工時におけるドリルの折損を少なくできると共に孔の位置精度を向上させることができる。
【0019】
なお、前記結晶核剤は、水溶性樹脂の結晶化に際し結晶の核剤として作用し、水溶性樹脂の結晶粒を細かくする働きがあると考えられ、このような樹脂の微小結晶の生成によって潤滑層の表面平滑性及びべたつき防止性並びにブロッキング防止性が向上するものと推定される。
【0020】
[2]の発明では、結晶核剤として、ソルビトール系核剤、有機リン酸塩系核剤、カルボン酸金属塩系核剤、ロジン系核剤、有機酸系核剤、ポリマー系核剤及び無機化合物系核剤からなる群より選ばれる1種または2種以上の核剤が用いられているので、べたつき防止性及びブロッキング防止性をより向上できる。
【0021】
[3]の発明では、潤滑層は、水溶性樹脂100質量部に対して結晶核剤0.01〜5質量部を含有した混合組成物からなる構成であるから、結晶核剤が潤滑層中により均一に分散されると共に、べたつきがなくブロッキング防止性に優れた潤滑層を形成できる。
【0022】
[4]の発明では、潤滑層の厚さが0.01〜3mmであるから、潤滑層成分のドリルビットへの巻き付き現象を十分に防止しつつ、べたつきがなくブロッキング防止性に優れた潤滑層を形成することができる。
【0023】
[5]の発明では、水溶性樹脂として、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンプロピレン共重合体及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる1種または2種以上の水溶性樹脂が用いられていることで、潤滑層の水溶解性をより向上させることができるので、孔あけ加工後の洗浄の際の潤滑層成分の溶解除去性をさらに向上させることができる。
【0024】
[6]の発明では、積み重ねた複数枚のプリント配線用素板に対し、直径0.3mm以下の孔を一挙に形成する際、ドリルの折損を少なくできると共に孔の位置精度も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明に係る孔あけ加工用当て板の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に、この発明に係る孔あけ加工用当て板(1)の一実施形態を示す。この孔あけ加工用当て板(1)は、アルミニウム製基板(2)の片面に潤滑層(3)が形成されたものからなる。
【0027】
前記アルミニウム製基板(2)としては、特に限定されるものではないが、例えば軟質アルミニウム板、半硬質アルミニウム板、硬質アルミニウム板等が挙げられる。また、前記アルミニウム製基板(2)の厚さは、50〜500μmに設定されるのが好ましい。50μm以上に設定することで基板(2)のバリ発生を防止できると共に500μm以下に設定することで製造時に発生する切り粉の排出性を向上できる。前記アルミニウム製基板(2)における潤滑層(3)が形成される面は、該潤滑層(3)との密着性を高めるために、表面処理(例えばプライマー処理、プレコート処理等)されているのが好ましい。
【0028】
前記潤滑層(3)は、結晶性水溶性樹脂及び結晶核剤を含有した混合組成物からなる。このように潤滑層(3)は、結晶性水溶性樹脂に結晶核剤が混合された構成であるから、潤滑層(3)はアルミニウム製基板(2)に対する密着性に優れていて十分な耐久性が得られると共に、潤滑層(3)はべたつきがなくブロッキング防止性にも優れ、潤滑層(3)の塗膜割れ発生も十分に防止でき、また孔あけ加工後の洗浄による潤滑層成分の溶解除去も容易に行い得るものとなる。
【0029】
前記結晶核剤は、水溶性樹脂の結晶化に際し結晶の核剤として作用し、水溶性樹脂の結晶粒を細かくする働きがあると考えられ、このように樹脂結晶の大きさが微小化されることによって潤滑層(3)の表面平滑性及びべたつき防止性並びにブロッキング防止性が向上するものと推定される。
【0030】
前記水溶性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンオキサイド、これらの共重合体等のグリコール類の他、
エチレンオキサイド類の重合物と、多価カルボン酸、その酸無水物及びそのエステルからなる群より選ばれる化合物(例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、セバシン酸、これら酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ピロメリット酸無水物等)とを反応させて得られる樹脂などが挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
これらの中でも、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンプロピレン共重合体及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる1種または2種以上の水溶性樹脂を用いるのが好ましい。これら特定の水溶性樹脂は水に対する溶解性が大きいので、潤滑層(3)の水溶解性をより向上させることができ、従って前記特定の水溶性樹脂を用いた場合には、孔あけ加工によってプリント配線用素板に付着した潤滑層の成分を水洗によって容易に除去することができる。
【0032】
前記結晶核剤(単に「核剤」とも言う)としては、添加することにより前記結晶性水溶性樹脂の結晶化速度を高めることができるものであれば特に限定されずどのような物質でも使用できる。しかして、前記結晶核剤としては、特に限定されるものではないが、ソルビトール系核剤、有機リン酸塩系核剤、カルボン酸金属塩系核剤、ロジン系核剤、有機酸系核剤、ポリマー系核剤及び無機化合物系核剤からなる群より選ばれる1種または2種以上の核剤を用いるのが好ましい。これら核剤を用いた場合には、べたつき防止性及びブロッキング防止性をより向上させることができる。なお、前記無機化合物系核剤としては、3μm以下の微粉末のものを用いて混合するのが好ましい。
【0033】
前記ソルビトール系核剤としては、特に限定されるものではないが、例えばジベンジリデンソルビトール、トリベンジリデンソルビトール、ビスソルビトール、クロル置換ジベンジリデンソルビトール、アルキル置換ジベンジリデンソルビトール、ビス(pエチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(pメチルベンジリデン)ソルビトール等が挙げられる。
【0034】
前記有機リン酸塩系核剤としては、特に限定されるものではないが、例えばリン酸ビスナトリウムメチレンビスアシッドホスフェートナトリウム塩、リン酸2,2メチレンビス(4,6ジt−ブチルフェニルナトリウム)、リン酸ビス(4−t−ブチルフェニルナトリウム)等が挙げられる。
【0035】
前記カルボン酸金属塩系核剤としては、特に限定されるものではないが、例えばステアリン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、エチレン−アクリル酸共重合体のナトリウム塩、スチレン−アクリル酸共重合体のナトリウム塩等が挙げられる。
【0036】
前記ロジン系核剤としては、特に限定されるものではないが、例えばロジン金属塩(例えば荒川化学製の「パインクリスタルMK−1500」)等が挙げられる。
【0037】
前記有機酸系核剤としては、特に限定されるものではないが、例えばアジピン酸、安息香酸等のカルボン酸などが挙げられる。なお、前記「有機酸」「カルボン酸」の語は、アミノ酸を含まない意味で用いている。
【0038】
前記ポリマー系核剤としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0039】
前記無機化合物系核剤としては、特に限定されるものではないが、例えばタルク、シリカ、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0040】
前記潤滑層(3)は、前記水溶性樹脂100質量部に対して前記結晶核剤0.01〜5質量部を含有した混合組成物からなる構成であるのが好ましい。水溶性樹脂100質量部に対して結晶核剤0.01質量部以上含有せしめることで前記諸効果(密着性向上効果・べたつき防止効果・ブロッキング防止効果)を十分に確保できると共に、水溶性樹脂100質量部に対して結晶核剤5質量部以下含有せしめることで結晶核剤を樹脂中に十分均一に分散せしめることができる。中でも、前記潤滑層(3)は、前記水溶性樹脂100質量部に対して前記結晶核剤0.02〜3質量部を含有した混合組成物からなる構成であるのがより好ましい。
【0041】
前記潤滑層(3)の厚さは0.01〜3mmであるのが好ましい。0.01mm以上であることで前記諸効果(密着性向上効果・べたつき防止効果・ブロッキング防止効果)を十分に確保できると共に、3mm以下であることで潤滑層成分のドリルビットへの巻き付きを効果的に防止できる。中でも、前記潤滑層(3)の厚さは0.02〜0.50mmであるのがより好ましい。
【0042】
この発明の孔あけ加工用当て板(1)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば次のような方法を例示できる。
【0043】
即ち、結晶性水溶性樹脂と結晶核剤をロールやニーダー等の混練手段を用いて混練又は加熱混練して、混合組成物を得、好ましくは粘度50000〜200000mPa・s(150℃)の混合組成物を得、該混合組成物をロール法やカーテンコート法等によりアルミニウム製基板(2)上に塗布して潤滑層(3)を形成する方法、
結晶性水溶性樹脂と結晶核剤の混合組成物をプレス法、ロール法、Tダイ押出法等によりシート状に成形し、これをアルミニウム製基板(2)上に重ね合わせてプレスやロールで加熱加圧する方法、
結晶性水溶性樹脂と結晶核剤の混合組成物をプレス法、ロール法、Tダイ押出法等によりシート状に成形し、これをアルミニウム製基板(2)上に接着剤で接着する方法、
結晶性水溶性樹脂と結晶核剤を水に溶解せしめた混合組成物をアルミニウム製基板(2)上に印刷して乾燥することによって潤滑層(3)を形成する方法、などが挙げられる。
【0044】
また、この発明の孔あけ加工用当て板(1)を用いた孔あけ加工は、例えば次のようにして行われる。即ち、すて板上に複数枚のプリント配線用素板を積み重ね、その最上位の素板の上面に、本発明の孔あけ加工用当て板(1)を潤滑層側を上にして配置し、この状態でドリルを用いて上方から該孔あけ加工用当て板及びプリント配線用素板に直径0.3mm以下の孔を形成する。この孔あけ加工方法では、本発明の孔あけ加工用当て板(1)を用いて孔あけを行うものであるから、ドリルの折損を少なくできると共に、孔の位置精度も向上させることができる。また、このようにドリルの折損を抑制できるので、積み重ねるプリント配線用素板の枚数を多くすることが可能であり、これによりプリント配線板の生産性を高めることができる。なお、前記プリント配線用素板としては、例えば銅張積層板、多層板等が挙げられる。
【0045】
なお、前記実施形態では、潤滑層はアルミニウム製基板の片面に形成されていたが、特にこのような構成に限定されるものではなく、アルミニウム製基板の両面に潤滑層が形成された構成を採用しても良い。
【0046】
また、前記実施形態では、潤滑層はアルミニウム製基板の片面に直接に形成されていたが、特にこのような構成に限定されるものではなく、例えばアルミニウム製基板の片面又は両面に下塗り層を介して潤滑層が形成された構成を採用することもできる。前記下塗り層としては、特に限定されるものではないが、例えばポリ酢酸ビニルの部分ケン化物等が挙げられる。
【実施例】
【0047】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0048】
<実施例1>
JIS A1N30−H18材からなる厚さ100μmの基板の片面(この面はプレコート処理が施されている)に、数平均分子量10000のポリエチレングリコール100質量部及びアルキル置換ジベンジリデンソルビトール0.5質量部からなる混合組成物をロールコート法により塗工することによって厚さ30μmの潤滑層を形成し、孔あけ加工用当て板を作製した。
【0049】
<実施例2〜7>
混合組成物として、表1に示す組成からなる混合組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして孔あけ加工用当て板を作製した。
【0050】
なお、実施例1、2、5、6、7で用いたポリエチレングリコール、実施例3で用いたポリオキシエチレンラウレート、実施例4で用いたポリエチレン・ポリプロピレングリコールは、いずれも「ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンプロピレン共重合体及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる1種または2種以上の水溶性樹脂」に相当する水溶性樹脂である。
【0051】
また、実施例7において、ロジン金属塩としては荒川化学製の「パインクリスタルMK−1500」(商品名)を用いた。
【0052】
<比較例1〜3>
混合組成物として、表2に示す組成からなる混合組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして孔あけ加工用当て板を作製した。
【0053】
上記のようにして得られた各孔あけ加工用当て板に対して下記評価法に基づいて各種の評価を行った。これらの結果を表1、2に示す。
【0054】
<潤滑層における塗膜割れ発生の有無の評価法>
孔あけ加工用当て板の潤滑層の外観を目視することによって潤滑層における塗膜割れ発生の有無を下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「◎」…塗膜割れの発生なし
「○」…塗膜割れの発生殆どなし
「△」…塗膜割れの発生若干あり
「×」…塗膜割れの発生顕著にあり。
【0055】
<ブロッキング防止性の評価法>
孔あけ加工用当て板を巻き取り保管した状態時において隣り合う当て板同士が互いにくっつき合う(付着し合う)ブロッキング現象が生じるかどうかを調べ、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「◎」…ブロッキング現象の発生なし
「○」…ブロッキング現象の発生殆どなし
「△」…ブロッキング現象の発生若干あり
「×」…ブロッキング現象の発生顕著にあり。
【0056】
<潤滑層のべたつき性の評価法>
孔あけ加工の際の孔あけ加工用当て板のハンドリング時のべたつきの有無を調べ、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「◎」…べたつき現象の発生なし
「○」…べたつき現象の発生殆どなし
「△」…べたつき現象の発生若干あり
「×」…べたつき現象の発生顕著にあり。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
表から明らかなように、この発明の実施例1〜7の孔あけ加工用当て板は、べたつきがなく、ブロッキング防止性に優れていると共に、潤滑層の塗膜割れの発生もなかった。
【0060】
これに対し、潤滑層がポリエチレングリコール(数平均分子量10000)で構成され潤滑層中に結晶核剤を含有しない比較例1の孔あけ加工用当て板では、潤滑層における塗膜割れが顕著に発生していたし、当て板のハンドリング時にべたつきが顕著に発生していて孔あけ加工の作業性に劣っていた。また、潤滑層がポリオキシエチレンラウレートで構成され潤滑層中に結晶核剤を含有しない比較例2の孔あけ加工用当て板では、当て板を巻き取り保管した状態時にブロッキング現象が顕著に発生していたし、当て板のハンドリング時にべたつきが顕著に発生していて孔あけ加工の作業性に劣っていた。また、潤滑層がポリエチレングリコール(数平均分子量10000)及びポリエチレングリコール(数平均分子量100000)で構成され潤滑層中に結晶核剤を含有しない比較例3の孔あけ加工用当て板では、潤滑層における塗膜割れが顕著に発生していた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
この発明の孔あけ加工用当て板は、種々の被加工物に対する孔あけ加工に適用できるが、中でもプリント配線用素板に対する孔あけ加工に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0062】
1…孔あけ加工用当て板
2…アルミニウム製基板
3…潤滑層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム製基板の少なくとも片面に潤滑層が形成されてなる孔あけ加工用当て板において、
前記潤滑層は、結晶性を有する水溶性樹脂及び結晶核剤を含有した混合組成物からなり、前記潤滑層の厚さが0.01〜0.50mmであることを特徴とする孔あけ加工用当て板。
【請求項2】
前記結晶核剤は、ソルビトール系核剤、有機リン酸塩系核剤、カルボン酸金属塩系核剤、ロジン系核剤、有機酸系核剤、ポリマー系核剤及び無機化合物系核剤からなる群より選ばれる1種または2種以上の核剤である請求項1に記載の孔あけ加工用当て板。
【請求項3】
前記潤滑層は、前記水溶性樹脂100質量部に対して前記結晶核剤0.01〜5質量部を含有した混合組成物からなる請求項1または2に記載の孔あけ加工用当て板。
【請求項4】
前記水溶性樹脂として、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンプロピレン共重合体及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる1種または2種以上の水溶性樹脂が用いられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の孔あけ加工用当て板。
【請求項5】
積み重ねた複数枚のプリント配線用素板の上に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の孔あけ加工用当て板を配置し、この状態でドリルを用いて上方から該孔あけ加工用当て板及びプリント配線用素板に直径0.3mm以下の孔を形成することを特徴とする孔あけ加工方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−210705(P2012−210705A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−119623(P2012−119623)
【出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【分割の表示】特願2006−279026(P2006−279026)の分割
【原出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(594156709)大智化学産業株式会社 (11)
【出願人】(501428187)昭和電工パッケージング株式会社 (110)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】