説明

孔付メッシュシート

【課題】十分な強度を有し、複数の孔を有する孔付メッシュシートを提供すること。
【解決手段】本発明は、長さ方向が平行となるように複数並べられた帯状の経ストランド11,51と、隣合う経ストランド11,51間に架設された緯ストランド12と、を備え、経ストランド11,51が複数の孔15a,15bを有し、該孔15a,15bが経ストランド11,51の編成と同時に形成されたものである孔付メッシュシート10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔付メッシュシートに関する。
【背景技術】
【0002】
地盤補強用グリッドや防護ネット等にメッシュシートが用いられている。
これらのメッシュシートの素材としては、柔軟性や追従性が要求されるため、これらに優れると共に強度にも優れた繊維が一般に用いられている。
【0003】
このようなメッシュシートとしては、例えば、所定太さの地編糸からなる複数列のウェールからなる経網目群の各ウェールの網目に対して経方向にほぼ直線上に所定の合成繊維太糸が編み込まれかつ各地編糸間が綴れ糸にて結合されている経糸群と、該経糸群に対してほぼ直線上に緯方向に編込挿入された所定太さの合成繊維太糸の1列ないし複数列のコースからなる緯糸群と、からなる格子状構造の基体を構成し、所定の樹脂等で含浸被覆された土木・建築用格子状シートが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、近年、上記メッシュシートを壁面に取り付けるため、杭等を打ち込むための孔付メッシュシートが求められている。
そのため、例えば、上記格子状シートを用いる場合は、この格子状シートに孔空け加工を施している。
【特許文献1】実公平02−17030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の格子状シートに孔空け加工を施したものは、格子状シート自体の強度が不十分となる傾向にある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、十分な強度を有し、複数の孔を有する孔付メッシュシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、孔付メッシュシートを、繊維素材からなる経ストランドと緯ストランドとを備える構成とし、経ストランドを編成する際に孔を設けることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)長さ方向が平行となるように複数並べられた帯状の経ストランドと、隣合う経ストランド間に架設された緯ストランドと、を備え、経ストランドが複数の孔を有し、該孔が経ストランドの編成と同時に形成されたものである孔付メッシュシートに存する。
【0009】
本発明は、(2)経ストランドが等間隔に配設された複数の孔を有する上記(1)記載のメッシュシートに存する。
【0010】
本発明は、(3)緯ストランドが経ストランドの組織の一部として編成されている上記(1)記載の孔付メッシュシートに存する。
【0011】
本発明は、(4)経ストランドと、該経ストランドの所定位置で編成された緯ストランドと、の交差部に前記孔が設けられている上記(3)記載の孔付メッシュシートに存する。
【0012】
本発明は、(5)経ストランド及び緯ストランドにより形成される空隙部の対角線上に設けられた橋架け部を更に備える上記(1)記載の孔付メッシュシートに存する。
【0013】
本発明は、(6)橋架け部が経ストランドの組織の一部として編成されている上記(5)記載の孔付メッシュシートに存する。
【0014】
本発明は、(7)経ストランドが、繊維からなる経糸を鎖編で縦方向に複数本形成されたウェールと、複数のウェールを連結する連結糸と、緯ストランドとの連結部を補強する強化繊維と、により編成された編地である上記(1)記載の孔付メッシュシートに存する。
【0015】
本発明は、(8)経ストランドが樹脂加工されている上記(1)記載の孔付メッシュシートに存する。
【0016】
本発明は、(9)緯ストランドが、複数の紐である上記(1)記載の孔付メッシュシートに存する。
【0017】
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記(1)〜(9)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の孔付メッシュシートは、経ストランドと、隣合う経ストランド間に架設された緯ストランドとを備えるので、例えば、孔付メッシュシートが緯ストランドの長さ方向に引張られたとしても、緯ストランドから経ストランドに伝わる力が、均等に分散される。
このため、上記孔付メッシュシートは、十分な強度を有するものとなる。
【0019】
上記孔付メッシュシートは、孔が経ストランドの編成と同時に形成されたものであるので、経ストランドが複数の孔を有するにもかかわらず、強度が低下しない。
これにより、上記孔付メッシュシートは、様々な用途に適用可能となる。
なお、上記孔付メッシュシートにおいては、孔空け工程が不要であるので、製造コストも低減できる。
【0020】
本発明の孔付メッシュシートは、経ストランドが等間隔に配設された複数の孔を有すると、例えば、イルミネーションネットとして用いる場合は、等間隔でイルミネーションランプを取付けることができ、コンクリート吹付けのり面に施工されるシートとしても用いる場合は、シートをバランスよくのり面に固定できる。
【0021】
本発明の孔付メッシュシートは、緯ストランドが経ストランドの組織の一部として編成されていると、経ストランドと緯ストランドとが強固に結合され、強度がより優れる。
また、経ストランドを編み込む際に、同時に緯ストランドを形成できることから、本発明の孔付メッシュシートを効率よく製造できる。
【0022】
本発明の孔付メッシュシートは、経ストランドと、該経ストランドの所定位置で編成された緯ストランドと、の交差部に孔が設けられていると、強度に優れるものとなる。
【0023】
本発明の孔付メッシュシートは、経ストランド及び緯ストランドにより形成される空隙部の対角線上に設けられた橋架け部を更に備えると、上記空隙部の対角線方向に対する強度が優れる。
したがって、上記孔付メッシュシートは、上記経ストランドの長さ方向及び緯ストランドの長さ方向のみならず、孔付メッシュシートの面方向全てに対する強度に優れるものとなる。
【0024】
本発明の孔付メッシュシートは、橋架け部が経ストランドの組織の一部として編成されていると、経ストランドと橋架け部とが強固に結合される。このため、面方向に対する強度がより優れる。
また、経ストランドを編み込む際に、同時に橋架け部を形成できることから、本発明の孔付メッシュシートを効率よく製造できる。
【0025】
本発明の孔付メッシュシートは、鎖編で縦方向に複数本形成されたウェールと、複数のウェールを連結する連結糸と、により編成された編地であると、伸縮性及び弾力性に優れると共に、経ストランドの長さ方向に対する強度に一層優れる。
【0026】
本発明の孔付メッシュシートは、緯ストランドが、複数の紐であると、緯ストランドの長さ方向に対する強度に優れる。
【0027】
本発明の孔付メッシュシートは、樹脂加工されていると、伸縮性が損なわれるものの、面方向に対する強度が極めて優れるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0029】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る孔付メッシュシートの第1実施形態を示す平面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る孔付メッシュシート10は、長さ方向が平行となるように複数並べられた帯状の経ストランド11,51と、隣合う経ストランド11,51間に架設された緯ストランド12と、経ストランド11,51及び緯ストランド12により形成される空隙部Gの対角線上に設けられた橋架け部13と、を備える。
【0030】
また、上記孔付メッシュシート10においては、鎖編で縦方向に複数本形成されたウェール11aと、複数のウェール11aを連結する連結糸(図示しない)と、からなる帯状の編地である経ストランド(以下便宜的に「第1の経ストランド」という。)11、及び、鎖編で縦方向に複数本形成されたウェール11aと、複数のウェール11aを連結する連結糸(図示しない)と、緯ストランド12同士の連結部を補強する強化繊維(図示しない)とからなる帯状の編地である経ストランド(以下便宜的に「第2の経ストランド」という。)51、が交互に配置されている。
【0031】
このとき、帯状である第1の経ストランド11及び第2の経ストランド51は略平行となるように配置されており、かつ隣合う第1の経ストランド11と第2の経ストランド51との間は略等間隔となっている。
このように第1の経ストランド11及び第2の経ストランド51は編地であるため、本実施形態に係る孔付メッシュシート10は、編地特有の伸縮性及び弾力性を有する。
【0032】
ウェール11a及び連結糸はいずれも繊維からなっており、かかる繊維としては、特に限定されないが、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維等の合成繊維が挙げられる。
なお、これらは1種類を単独で用いてもよく、複数を混合して用いてもよい。
また、ウェール11aと連結糸とは同一の繊維であってもよく、異なる繊維であってもよい。
【0033】
上記第1の経ストランド11及び第2の経ストランド51間の間隔は、孔付メッシュシート10の強度、軽量化及び取扱い性の観点から、10〜50mmであることが好ましい。
また、第1の経ストランド11及び第2の経ストランド51の幅は、強度及び施工時の作業性の観点から、1〜500mmであることが好ましい。
さらに、上記孔付メッシュシート10は、複数架設された緯ストランド12同士の間隔と、複数配列された第1の経ストランド11及び第2の経ストランド51の間隔とは略同じになっていることが好ましい。
すなわち、空隙部Gが正方形であることが好ましい。
この場合、特に強度に優れるものとなる。
さらにまた、第1の経ストランド11及び第2の経ストランド51の長さ方向の引張り強度は、1〜100kNであることが好ましい。
またさらに、第1の経ストランド11及び第2の経ストランド51の厚みは、1〜50mmであることが好ましい。
この場合、上記孔付メッシュシート10を地盤用補強グリッドに用いると、土壌中における引き抜け抵抗を十分に発揮させることができる。
【0034】
隣合う緯ストランド12間の間隔は、孔付メッシュシート10の強度、軽量化及び取扱い性の観点から、10〜50mmであることが好ましい。
【0035】
上記強化繊維は、上記繊維よりも低伸度且つ高強度のものが用いられる。
ここで、本発明において、引張り強度及び伸度は、JIS L 1096に準拠し、測定した値である。
【0036】
この強化繊維は、上記繊維よりも、低伸度且つ高強度である材質を用いて繊維とすることにより得られる。
例えば、繊維がポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維のいずれかである場合、上記材質としては、炭素繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維等が挙げられる。
これらの中でも、アラミド繊維であることが好ましい。
【0037】
また、強化繊維は、上記繊維と同じ材質を用い、繊維の繊度を調整して、低伸度かつ高強度とすることにより得られる。
例えば、繊維と同じ材質を用い、繊維の繊度に対して、強化繊維の繊度を2〜10倍とすればよい。
具体的には、強化繊維の繊度は1000〜10000dtexであることが好ましい。
【0038】
強化繊維は伸度が20%以下であることが好ましく、1〜10%であることが好ましい。
伸度が20%を超えると、伸度が上記範囲内にある場合と比較して、十分な強度が得られない傾向にある。
【0039】
また、強化繊維は引張り強度が500Nmm以上であることが好ましい。
強度が500Nmm未満であると、引張り強度が上記範囲内にある場合と比較して、面方向に対する強度が不十分となる傾向にある。
【0040】
すなわち、本実施形態に係る孔付メッシュシート10においては、強化繊維の伸度が20%以下であり、強度が500N/mm以上であることが好ましい。
この場合、上記孔付メッシュシート10は、面方向に対する強度により優れるものとなる。
【0041】
本実施形態に係る孔付メッシュシート10において、緯ストランド12は、繊維を織ったり編んだりすることなく、繊維を直線状態のまま複数本束ねた複数の紐であり、隣合う第1の経ストランド11及び第2の経ストランド51間に略等間隔で複数架設されている。
【0042】
このように、本実施形態に係る孔付メッシュシート10においては、緯ストランド12が複数の紐となっているため、緯ストランド12の長さ方向に対する強度に優れる。
【0043】
緯ストランド12は、第1の経ストランド11及び第2の経ストランド51の長さ方向に対して垂直方向に一列になるように架設されている。
すなわち、本実施形態に係る孔付メッシュシート10は格子構造となっている。
このため、緯ストランド12の長さ方向に引張られたとしても、緯ストランド12から第1の経ストランド11及び第2の経ストランド51に伝わる力が、均等に分散されるので、孔付メッシュシート10の強度がより優れるものとなる。
【0044】
また、上記第1の経ストランド11及び第2の経ストランド51と、緯ストランド12とにより空隙部Gが形成されるので、上記孔付メッシュシート10は、軽量で取扱い性に優れるものとなる。
【0045】
ここで、空隙部Gは矩形状となっており、一辺の長さが10〜200mmであることが好ましい。
この場合、上記孔付メッシュシート10は、十分大きな空隙部Gを有するため、より軽量であり、より取扱い性に優れる。
【0046】
本実施形態に係る孔付メッシュシート10において、緯ストランド12は第1の経ストランド11及び第2の経ストランド51の組織の一部として編成されている。
したがって、この場合、第1の経ストランド11及び第2の経ストランド51と、緯ストランド12とが強固に結合され、強度がより優れるものとなる。
また、第1の経ストランド11又は第2の経ストランド51を編み込む際に、同時に緯ストランド12を形成できることから、本実施形態に係る孔付メッシュシート10を効率よく製造できる。
【0047】
本実施形態に係る孔付メッシュシート10において、橋架け部13は、繊維を直線状態のまま複数本束ねた複数の紐であり、空隙部Gの対角線上に設けられている。
なお、ここでいう繊維とは、上述したウェール11aにおける繊維と同義である。
この場合、孔付メッシュシート20は、橋架け部13を備えることにより、空隙部Gの対角線方向に対する強度がより優れるようになる。
【0048】
したがって、本実施形態に係る孔付メッシュシート10は、上記第1の経ストランド11及び第2の経ストランド51の長さ方向及び緯ストランド12の長さ方向のみならず、空隙部Gの対角線方向に対しても強度に優れる。
【0049】
なお、橋架け部13は、孔付メッシュシート10の強度の観点から、繊度が1000〜3000dtexである繊維を1〜50本束ねたものであることが好ましく、2〜10本束ねたものであることがより好ましい。
【0050】
本実施形態に係る孔付メッシュシート10においては、第1の経ストランド11が複数の孔を有する。
すなわち、第1の経ストランド11と緯ストランド12との交差部に矩形状の孔(以下便宜的に「第1の孔」という。)15aが設けられ、第1の経ストランド11の緯ストランド12とは交差しない部分に矩形状の孔(以下便宜的に「第2の孔」という。)15bが設けられている。
【0051】
これらの第1の孔15a及び第2の孔15bはいずれも、経ストランドの編成と同時に形成されたものとなっている。
したがって、上記孔付メッシュシート10は、第1の孔15a及び第2の孔15bが第1の経ストランド11の編成と同時に形成されたものであるので、第1の経ストランド11が複数の第1の孔15a及び複数の第2の孔15bを有するにもかかわらず、強度が低下しない。
これにより、上記孔付メッシュシート10は、様々な用途に適用可能となる。
なお、上記孔付メッシュシート10においては、孔空け工程が不要であるので、製造コストも低減できる。
【0052】
上記第1の孔15a及び第2の孔15bの内径の最小値はそれぞれ2mm以上であることが好ましく、30mm未満であることがより好ましい。
この場合、孔付メッシュシート10の第1の孔15a及び第2の孔15bにイルミネーションランプや留め具を容易かつ確実に取付けることができる。
また、留め具により孔付メッシュシート10を地盤に取付ける場合は、第1の孔15a及び第2の孔15bに留め具を取付けることにより、孔付メッシュシート10を確実に固定できる。
【0053】
ここで、第1の孔15aの内径とは、第1の孔15aの面方向において、第1の孔15aの重心を通る線の直径を意味する。
なお、第2の孔15bについても同様である。
また、第1の孔15aと第2の孔15bとは内径が同一であっても、異なっていてもよい。
【0054】
次に、第1の経ストランド11における第1の孔及び第2の孔の編成方法について説明する。
図2は、本実施形態に係る孔付メッシュシートの第1の経ストランドにおける第2の孔の編成状態を説明するための説明図である。
【0055】
第2の孔15bの編成方法は、まず、図2に示すように、本実施形態に係る孔付メッシュシート10において、複数本のウェール11aを縦方向に輪を作る鎖編で複数本配列させる。
次に、隣合うウェール11aそれぞれの輪の中に連結糸11bを連続して通すことにより、隣合うウェール11a同士が連結される。
【0056】
そして、経ストランド11の中央に位置するウェール11a,11a'において、所定位置で、一方のウェール11aの上記輪の中を通した連結糸11b'を、隣の他方のウェール11a'に連結させずに、一方のウェール11aの上記輪の中を第1の経ストランド11の長手方向に向かって繰り返し通す。
【0057】
次いで、所定位置において、隣合うウェール11a,11a'同士の上記輪の中に連結糸11b'を再び通すことにより、隣合うウェール11a,11a'同士が連結される。
このような方法を経ることにより、中央に位置する隣合うウェール11a,11a'同士の間に第2の孔15bが形成される。
【0058】
なお、第2の孔15bを設ける位置は特に限定されず、任意の位置に設けることができ、第2の孔15bの大きさも、一方のウェール11aの輪の中を第1の経ストランド11の長手方向に向かって繰り返し通す距離を調整することにより、任意に定めることができる。
【0059】
一方のウェール11aの上記輪の中を第1の経ストランド11の長手方向に向かって繰り返し通す間、すなわち、第2の孔15bを製造している間は、第2の孔15bの両側の連結糸11bのランナー長を通常よりも短くなるように設定し、よりテンションを強くすることが好ましい。
そうすると、内側のウェール11a,11a'がそれぞれ外側に引張られることになるため、更に大きく開いた孔15bが製造できる。
【0060】
図3は、本実施形態に係る孔付メッシュシートの第1の経ストランドにおける第1の孔の編成状態を説明するための説明図である。
【0061】
第1の孔15aの編成方法は、第2の孔15bと同様に編成され、これに加えて緯ストランド12及び橋架け部13が編成されている点で、第2の孔15bと相違する。
すなわち、第1の孔15aは、図3に示すように、第2の孔15bが設けられた状態から、これに挿入糸12aを編成させることにより、緯ストランド12と橋架け部13とを設ける。
【0062】
挿入糸12aは、連結糸11bと同様にしてウェール11aの輪の中を通され、第1の孔15aの位置に到達した際に、第1の経ストランドから隣の第2の経ストランド51に編成され、続けて、第2の経ストランド51から第1の経ストランド11に戻らせて編成される。
この操作を繰り返すことにより、緯ストランド12が形成される。
なお、この緯ストランド12を編成する操作を所定の位置で繰り返すことにより、空隙部Gが形成される。
また、メッシュシート10を格子状とするためには、等間隔で緯ストランド12を形成すればよい。
【0063】
この操作を第1の経ストランド11の両側で行うことにより、第2の孔15bが第1の経ストランド11と、該第1の経ストランド11の所定位置で編成された緯ストランド12と、の交差部に設けられることになる。
【0064】
このとき、第2の孔15bに対して、一方側の緯ストランド12と、他方側の緯ストランド12とを、第1の経ストランド11から離れる方向Aにそれぞれ引張ることにより、第1の経ストランド11の内側の2本のウェール11aがそれぞれ外側に引張られ、楕円形状の第1の孔15aが形成できる。
すなわち、このときの一方の緯ストランド12と、他方の緯ストランド12との引張り具合を調整することにより、第1の孔15aの形状を調整できる。
なお、上述した一方の経ストランド11における緯ストランド12の編成は、他方の経ストランド51においても同様に行なわれる。
【0065】
このように、本実施形態に係る孔付メッシュシート10においては、緯ストランドが経ストランドの組織の一部として編成されているので、経ストランドと緯ストランドとが強固に結合され、強度がより優れる。
また、経ストランドを編み込む際に、同時に緯ストランドを形成できることから、本発明の孔付メッシュシートを効率よく製造できる。
【0066】
挿入糸12aは、橋架け部13も形成する。
すなわち、橋架け部13は、第1の経ストランド11を編成する過程において、所定の位置で上記ウェール11aを隣合う第1の経ストランド11から第2の経ストランド51に、上記空隙部Gの対角線上を通るように挿入糸12aを入り込ませて編成させ、次いで、第1の経ストランド51を第2の経ストランド51の長さ方向に所定位置まで編成された後、第2の経ストランド51から第1の経ストランド11に、上記空隙部Gの対角線上を通るように入り込ませて編成させ、そして、第1の経ストランド11を第1の経ストランド11の長さ方向に所定位置まで編成することにより得られる。
かかる操作を複数回繰り返すことにより橋架け部13が編成される。
なお、上述した一方の経ストランド11における橋架け部13の編成は、他方の経ストランド51においても同様に行なわれる。
【0067】
このように、本実施形態に係る孔付メッシュシート10においては、橋架け部が経ストランドの組織の一部として編成されているので、経ストランドと橋架け部とが強固に結合される。
このため、面方向に対する強度がより優れる。
また、経ストランドを編み込む際に、同時に橋架け部を形成できることから、孔付メッシュシート10を効率よく製造できる。
【0068】
次に第2の経ストランド51の編成方法について説明する。
図4は、本実施形態に係る孔付メッシュシートにおける第2の経ストランドと、該第2の経ストランドの所定位置で編成された緯ストランドと、の交差部の編成状態を説明するための説明図である。
【0069】
図4に示すように、本実施形態に係る孔付メッシュシート10において、第2の経ストランド51は繊維からなるウェール11aが3本配列され、それぞれに強化繊維11cが編成されている。
そして、中央の強化繊維11cが編成されているウェール11aの所定位置において、一方側の緯ストランド12と他方側の緯ストランド12とが互いに連結している。
【0070】
この場合、緯ストランド12同士が互いに連結しており、かつ連結しているウェール11aが強化繊維により強化されているので、緯ストランドの長さ方向に対する強度に特に優れるものとなる。
【0071】
緯ストランド12は、孔付メッシュシート10の強度の観点から、繊度が1000〜3000dtexである繊維を1〜50本束ねたものであることが好ましく、2〜10本束ねたものであることがより好ましい。
【0072】
このように、本実施形態に係る孔付メッシュシート10においては、第2の経ストランド51が強化繊維を用いているため、第2の経ストランド51の長さ方向に対する強度に優れる。
【0073】
本実施形態に係る孔付メッシュシート10は樹脂加工されている。
すなわち、孔付メッシュシート10の表面全体が、樹脂により被覆されている。
この場合、孔付メッシュシート10は伸縮性が損なわれるものの、面方向に対する強度に極めて優れるものとなる。
【0074】
かかる樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0075】
以上述べたように、本実施形態に係る孔付メッシュシート10は、任意の位置に孔を設けることができるので、コンクリート吹付けのり面に施工されるシート、イルミネーションネット、地盤補強用グリッド等の様々な用途に好適に用いられる。
【0076】
また、上記孔付メッシュシート10は、第1の経ストランド11が等間隔に配設された第1の孔15a及び第2の孔15bを有するので、例えば、イルミネーションネットとして用いる場合は、等間隔でイルミネーションランプを取付けることができ、コンクリート吹付けのり面に施工されるシートとしても用いる場合は、シートをバランスよくのり面に固定できる。
【0077】
さらに、第1の経ストランド11と、該第1の経ストランド11の所定位置で編成された緯ストランド12と、の交差部に第1の孔15aが設けられているので、強度にも優れるものとなる。
【0078】
図5は、本実施形態に係る孔付メッシュシートをコンクリート吹付けのり面に施工されるシートとして用いる場合の施工例を示す概略図である。
図5に示すように、上記孔付メッシュシート10をコンクリート吹付けのり面に施工されるシートに用いた場合、孔付メッシュシート10の第1の孔15aに留め具31を通し、固定することにより、孔付メッシュシート10を確実に固定できる。
このように孔付メッシュシート10をコンクリート吹付けのり面に施工されるシートとしても用いると、シートをバランスよくのり面に固定できるという利点を有する。
また、このとき複数の第1の孔15a及び第2の孔15bが等間隔に配置されているので、施工面の面積取りを第1の孔15a及び第2の孔15bを基準点として、容易に行うことができる。
【0079】
図6は、本実施形態に係る孔付メッシュシートをイルミネーションネットに用いる場合の施工例を示す概略図である。
図6に示すように、上記孔付メッシュシート10をイルミネーションネットに用いた場合、第1の孔15aに、リード33に接続されたイルミネーションランプ32を取付けることにより、イルミネーションネットとして用いることができる。
この場合、第1の孔15a及び第2の孔15bが等間隔に配置されているので、イルミネーションランプを取付ける場合、第1の孔15a及び第2の孔15bを基準点として、イルミネーションランプの間隔の設定が極めて容易となる。
その結果、美しいイルミネーションを演出できる。
また、イルミネーションランプの取り付けや施工が容易となる。
【0080】
上記孔付メッシュシート10を地盤補強用グリッドに用いた場合、孔付メッシュシート10が保護する地盤等(以下「被保護物」という。)により、折れ曲げられても、非保護物に追従させることができる。
また、地盤に敷設する場合、孔付メッシュシート10は、空隙部Gを有するので、地盤に比較的大きな突起物があった場合でも、それを避けて施工することができる。
さらに、緯ストランド12が紐状であると、相互の紐間に一定の間隙を生ずるので、細かい突起物を逃がすことができる。
したがって、上記孔付メッシュシート10は、長期間用いた場合であっても、十分な補強効果を発揮することができ、破損も抑制される。
【0081】
また、上記孔付メッシュシート10を土壌に埋設すると、孔付メッシュシート10の一方側の土壌と、他方側の土壌との接する面積が大きくなる。
このため、上記孔付メッシュシート10のインターロッキング効果(孔付メッシュシート10の長さ方向への引抜き抵抗)が増大され、地震等による土壌の変位がより抑制されるという利点を有する。
【0082】
[第2実施形態]
図7は、本発明に係る孔付メッシュシートの第2実施形態を示す平面図である。
図7に示すように、本実施形態に係る孔付メッシュシート20は、第1の経ストランド11と緯ストランド12との交差部に矩形状の第1の孔15aが設けられているが、第1の経ストランド11の緯ストランド12とは交差しない部分に矩形状の第2の孔が設けられていない点で第1実施形態に係る孔付メッシュシート10とは異なる。
【0083】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0084】
例えば、上述した本実施形態に係る孔付メッシュシート10は、橋架け部13を備えているが、必ずしも備える必要は無い。
この場合、挿入糸は、緯ストランド12のみを形成し、それ以外の部分においては、連結糸11bと同様なルートでウェール11aに編成される。
【0085】
本実施形態に係る孔付メッシュシート10においては、緯ストランド12と橋架け部13とを同じ挿入糸で編成しているが、別々の挿入糸であってもよい。
【0086】
本実施形態に係る孔付メッシュシート10においては、経ストランドとして、鎖編で縦方向に複数本形成されたウェール11aと、複数のウェール11aを連結する連結糸(図示しない)と、からなる帯状の編地を用いているが、これに限定されるものではない。
【0087】
本実施形態に係る孔付メッシュシート10においては、第1の経ストランド11と第2の経ストランド51とを交互に配列させているが、第1の経ストランド11のみを配列させてもよい。
【0088】
本実施形態に係る孔付メッシュシート10においては、第1の経ストランド11に強化繊維が編成されていてもよい。
【0089】
本実施形態に係る孔付メッシュシート10においては、緯ストランド12として、複数の紐を用いているが、これに限定されるものではない。
なお、橋架け部13についても同様である。
【0090】
本実施形態に係る孔付メッシュシート10においては、緯ストランド12が、経ストランド11の長さ方向に対して垂直方向に一列になるように架設されているが、互い違いに架設されていてもよい。
【0091】
本実施形態に係る孔付メッシュシート10においては、第1の孔15aと第2の孔15bとを有しているが、第1の孔15aのみでもよく、第2の孔15bのみでもよい。
すなわち、任意の位置に孔を設けることが出来る。
【0092】
本実施形態に係る孔付メッシュシート10においては、第1の経ストランド11にウェール11aが4本、第2の経ストランド51にウェール11aが3本用いられているが、ウェール11aの本数は特に限定されない。
なお、経ストランドにおけるウェールの本数は1〜10本であることが好ましい。
【0093】
この中でも、孔を設ける経ストランド(第1の経ストランド)のウェールは偶数本であることが好ましく、孔を設けない経ストランド(第2の経ストランド)のウェールは奇数本であることが好ましい。
孔を設ける経ストランドのウェールが偶数本であると、経ストランドの最内側の2本ウェールにそれぞれ緯ストランドを編成させ、これらの緯ストランドを経ストランドから離れる方向に引張ることにより、所定形状の孔を経ストランドの中央に形成させることができる。
一方、孔を設けない経ストランドのウェールが奇数本であると、経ストランドの中央にウェールが位置することになるため、これに緯ストランド同士を連結させることができる。
【0094】
本実施形態に係る孔付メッシュシート10の第2の経ストランド51において、緯ストランド12と緯ストランド12とを連結しているが、必ずしも連結していなくてもよい。
【0095】
本実施形態に係る孔付メッシュシート10はいずれも樹脂加工されているが、樹脂加工されていなくてもよく、孔付メッシュシート全体ではなく経ストランド又は緯ストランドのみが樹脂加工されていてもよい。
【0096】
本実施形態に係る孔付メッシュシート10においては、第1の経ストランド11及び第2の経ストランド51と、緯ストランド12とを編成させているが、必ずしも編成させる必要はなく、経ストランドと緯ストランドとを接着剤等で接着させてもよい。
なお、経ストランドと橋架け部とについても同様である。
【0097】
上述した第2の実施形態に係る孔付メッシュシート20においては、第1の経ストランド11及び第2の経ストランド51、と緯ストランド12とにより形成される空隙部Gの対角線上に2本の橋架け部13がクロスするように設けられているが、片方の1本のみであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、本発明に係る孔付メッシュシートの第1実施形態を模式的に示した平面図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る孔付メッシュシートの第1の経ストランドにおける第2の孔の編成状態を説明するための説明図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る孔付メッシュシートの第1の経ストランドにおける第1の孔の編成状態を説明するための説明図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る孔付メッシュシートにおける第2の経ストランドと、該第2の経ストランドの所定位置で編成された緯ストランドと、の交差部の編成状態を説明するための説明図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る孔付メッシュシートをコンクリート吹付けのり面に施工されるシートとして用いる場合の施工例を示す概略図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る孔付メッシュシートをイルミネーションネットに用いる場合の施工例を示す概略図である。
【図7】図7は、本発明に係る孔付メッシュシートの第2実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0099】
10・・・孔付メッシュシート
11・・・第1の経ストランド
11a,11a'・・・ウェール
11b,11b'・・・連結糸
11c・・・強化繊維
12・・・緯ストランド
12a・・・挿入糸
13・・・橋架け部
15a・・・第1の孔
15b・・・第2の孔
31・・・留め具
32・・・イルミネーションランプ
33・・・リード
51・・・第2の経ストランド
A・・・方向
G・・・空隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向が平行となるように複数並べられた帯状の経ストランドと、
隣合う前記経ストランド間に架設された緯ストランドと、
を備え、
前記経ストランドが複数の孔を有し、
該孔が前記経ストランドの編成と同時に形成されたものであることを特徴とする孔付メッシュシート。
【請求項2】
前記経ストランドが等間隔に配設された複数の孔を有することを特徴とする請求項1記載の孔付メッシュシート。
【請求項3】
前記緯ストランドが前記経ストランドの組織の一部として編成されていることを特徴とする請求項1記載の孔付メッシュシート。
【請求項4】
前記経ストランドと、該経ストランドの所定位置で編成された緯ストランドと、の交差部に前記孔が設けられていることを特徴とする請求項3記載の孔付メッシュシート。
【請求項5】
前記経ストランド及び前記緯ストランドにより形成される空隙部の対角線上に設けられた橋架け部を更に備えることを特徴とする請求項1記載の孔付メッシュシート。
【請求項6】
前記橋架け部が前記経ストランドの組織の一部として編成されていることを特徴とする請求項5記載の孔付メッシュシート。
【請求項7】
前記経ストランドが、鎖編で縦方向に複数本形成されたウェールと、複数の前記ウェールを連結する連結糸と、により編成された編地であることを特徴とする請求項1記載の孔付メッシュシート。
【請求項8】
前記緯ストランドが、複数の紐であることを特徴とする請求項1記載の孔付メッシュシート。
【請求項9】
前記経ストランドが樹脂加工されていることを特徴とする請求項1記載の孔付メッシュシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−144330(P2008−144330A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336409(P2006−336409)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000201490)前田工繊株式会社 (118)
【Fターム(参考)】