説明

孔内周面撮影装置

【課題】 孔内に挿入される導光棒に照明と受光とを行なわせて光学系を一つとし、構造を簡素化して部品数を低減するとともに、部品精度の要求を抑えて組立を簡単にして製造コストを低減した安価な孔内周面撮影装置を目的とするものである。
【解決手段】 光源光を拡散光として導光棒5の基端面に入射させる反射鏡7bを導光棒5の基方部周縁に設け、また、導光棒5が先端を受光と照明とを行なう円錐状面6とし、基端面を受光像投影面と光源入射面とされ、該導光棒5の基端面に入射された拡散光を全反射させて先端の円錐状面6に伝達して孔内周面を拡散光により照明するとともに、拡散光により照明された孔内周面からの反射像を前記円錐状面6により受光したうえ、導光棒5の基端面に全反射投影された受光像を撮影する撮影装置4が導光棒5の基端に設けられるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機械部品等に形成された孔を検査するために用いられる孔内周面撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような孔内周面撮影装置として、コーンプリズムを介して孔の内周面にスリット光を投光する円環状光ファイバ群と、前記コーンプリズムを通じて孔内周面のリング状光像を結像する結像レンズと、光像を伝達する画像伝達光学系とを孔内に挿入して孔内の形状あるいは欠陥を測定するものがある(例えば、特許文献1参照)。また、管路内壁の全周からの反射光を取得する受光手段と、結像手段と、イメージ伝送手段と、前記受光手段を介して管路内壁面に照明光を供給する照明光伝達手段とを管内に挿入して管路内壁の欠陥を検出するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、特許文献1のものは、スリット光を用いて検査を行なうため、光学系に高い部品精度が要求されるうえに部品数も多く、構造が複雑で組立に熟練を要し高価な装置となる問題がある。また、特許文献2のものでは、多数のバンドル光ファイバから照明用の光線を放出するので均一な照明光とならず、管路内壁の欠陥を検出するには画像から照明光の斑を除去するという時間のかかる画像処理をしなければならないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−198345号公報
【特許文献2】特開平10−318727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は導光棒から拡散光の均一な照明光を照射して照明斑のない撮影画像を得ることができる孔内周面撮影装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、撮影装置の先端に検査対象である孔内部に挿入されて孔内周面像の受光と孔内周面の照明を行う導光棒を設けた孔内面撮影装置であって、光源光を拡散光として導光棒の基端面に入射させる反射鏡を導光棒の基方部周縁に設け、また、導光棒が先端を受光と照明とを行なう円錐状面とし、基端面を受光像投影面と光源入射面とされ、該導光棒の基端面に入射された拡散光を全反射させて先端の円錐状面に伝達して孔内周面を拡散光により照明するとともに、拡散光により照明された孔内周面からの反射像を前記円錐状面により受光したうえ、導光棒の基端面に全反射投影された受光像を撮影する撮影装置が導光棒の基端に設けたことを特徴とする孔内周面撮影装置である。
【0007】
なお、円錐状面が円錐部または円錐凹部よりなることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、光源光を拡散光として導光棒の基端面に入射させる反射鏡を導光棒の基方部周縁に設け、また、導光棒が先端を受光と照明とを行なう円錐状面とし、基端面を受光像投影面と光源入射面とされ、該導光棒の基端面に入射された拡散光を全反射させて先端の円錐状面に伝達して孔内周面を拡散光により照明するとともに、拡散光により照明された孔内周面からの反射像を前記円錐状面により受光したうえ、導光棒の基端面に全反射投影された受光像を導光棒の基端に設けた撮影装置により撮影されることとなるが、拡散光による均一な照明光が照射されるので照明斑がなく、孔内周面に生じた傷や鋳巣を精確に撮影でき判別も容易なものとなる。しかも、高い組み立て精度を要しないので、組立てに熟練を必要とせず製造コストを大幅に低減でき、生産性も大幅に向上できるものとなる。さらに、導光棒の基端面に投影された受光像を撮影するだけだから、一般に販売されているディジタルカメラを利用できるので入手が簡単で修理・交換も簡単なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の好ましい実施形態の撮影装置を組み込んだ検査装置を示す正面図である。
【図2】撮影装置の実施例を示す一部切欠正面図である。
【図3】上記撮影装置の導光棒により受光された受光像を示す平面図である。
【図4】受光像が導光部の基端面に投影されない時の光路Bを示す説明図である。
【図5】撮影された同心円画像における抽出円Sを示す図である。
【図6】軸方向に移動させた抽出円Sに現れる傷・鋳巣を積み重ねた展開画像である。
【図7】導光棒の円錐状面を凹円錐部とした撮像装置の実施例を示す一部切欠正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態の撮影装置を組み込んだ検査装置を図1,2,3,4,5,6に基づいて詳細に説明する。
図1において1は検査装置のベースであり、該ベース1にはリニアガイド2と該リニアガイド2を昇降動させる昇降用モータ3が取り付けられている。4はリニアガイド2に取り付けられた撮影装置であり、該撮影装置4は図2に示されるように、撮像部4aとテレセントリックレンズ11と導光棒5とからなり、撮像部4aとテレセントリックレンズ11と導光棒5との光軸は一致されている。そして、リニアガイド2により撮影装置4の導光棒5は検査対象Wの中空孔H内に挿入されて間歇的な撮影のためのスライドが行なわれる。なお、テレセントリックレンズ11の代わりに普通のカメラレンズを用いてもよいことは言うまでもない。
【0011】
また、図2に示されるように、導光棒5は撮影装置4のテレセントリックレンズ11にアタッチメント9を介して取り付けられるもので、前記導光棒5は先端を円錐部6aとして約76°近辺の頂角を有する円錐状面6を形成する。該円錐状面6を介して中空孔H内の照明と孔内周面像の受光を行なう。5aは前記導光棒5の表面を被套するステンレス製の保護筒である。
【0012】
円錐状面6による受光像は導光棒5の外径に近付く大径部ほど受光像が拡大され解像度が高まり、円錐状面6の先方部に近付くほど受光像は縮小されるので解像度が低下する。
【0013】
しかし、導光棒5の外径に近付けることにより受光像は拡大され解像度は高くなるが、外径に近付け過ぎると導光棒5のわずかな偏心により実際の撮影部位と撮影画像とにずれが生じるため、図5に示されるように、偏心によるずれを吸収できる最大の拡大率となる仮想の抽出円Sを撮影画像中に設定する。
【0014】
また、円錐状面6の上方で受光した受光像の光路Bは図4に示されるように、円錐状面6の内面で反射せず導光棒5の内周面で反射され、受光像は導光棒5の基端面に投影されないため、円錐状面6の前部60%ほどが有効な受光領域となる。
【0015】
また、抽出円Sの撮り込み領域を、例えば画像の1ピクセル単位に設定した場合には、1ピクセル単位毎に撮影装置4をスライドさせて中空孔H全体の孔内周面像を得る。
【0016】
7は導光棒5の基端外周に設けられる照明装置であり、該照明装置7はホルダー8内に複数のLEDよりなる光源7aを環状に配置するとともに、該光源7aを凹面鏡よりなる反射鏡7bで覆ったものであるが、中心部には開口7cを透設して孔内周面の受光像が撮影装置4により撮影できるようになっている。また、前記反射鏡7bにより光源光は拡散光として臨界角以内の角度で導光棒5の基端面より入射される。
【0017】
導光棒5の基端面から入射された拡散光は導光棒5の内壁面により全反射しながら先端の円錐状面6に伝達され、円錐状面6より拡散光として照射されるので、孔内周壁面は濃淡のない均一な明るさで照明されることとなる。
【0018】
アタッチメント9は後記するテレセントリックレンズ11とホルダー8を接続するものであり、10は撮影装置4により撮影された多数枚の孔内周面画像を処理する画像処理装置であり、該画像処理装置10は撮影装置4により1ピクセルピッチで移動して撮影された図3に示されるような孔内周壁面の受光像から図5に示されるような抽出円S領域のデータを取り込み保存したうえ、抽出円S領域御データをY方向に積み重ねて図6に示されるような傷・鋳巣の展開画像を生成するものである。
【0019】
具体的には画像処理装置10は1ピクセル毎の抽出円Sに基づくリング状の孔内周面画像を二値化したうえ、二値化データの濃淡を1ピクセル毎順番に積み重ね処理すれば、中空孔H内の全体像が得られ、図6に示されるような孔内周面にできている傷・鋳巣が表わされるので、該傷・鋳巣のサイズをピクセル数に基づいて算出することにより、傷・鋳巣の大きさを判定検査することができる。
【0020】
このように構成されたものは、検査装置のベース1上に検査対象Wを載置する。このとき撮影装置4の光軸と検査対象Wの中空孔Hの中心とをできる限る一致させる。次に、撮影装置4を取り付けたリニアガイド2を昇降用モータ3により下降させ、撮影装置4に取り付けた導光棒5の円錐状面6を中空孔H内に挿入する。
【0021】
このとき、照明装置7の光源7aからの照明光は反射鏡7bにより拡散光として反射されて臨界角以下の照明光が導光棒5の基端面より屈折入射される。
【0022】
導光棒5内に入射された照明光のうち臨界角以上ものは導光棒5の内周面を全反射を繰り返しながら先端の円錐状面6まで伝達される。そして、円錐状面6の内面に臨界角以下で入射される照明光は全反射せず屈折して外部に照射されて中空孔H内を均一な明るさで照明することとなる。
【0023】
照明斑のない中空孔H内周面からの孔内周面像は先端に形成された円錐状面6の傾斜表面に臨界角以下で入射し、反対側の傾斜内面で臨界角を越えるものは全反射して図3に示されるような受光像を導光棒5の基端面に投影する。基端面に投影された孔内周面の受光像はテレセントリックレンズ11を介して撮像部4aに入射される。そして、撮像部4aに撮り込まれた画像のうち予め設定された1ピクセル単位の抽出円S領域が切り出されて画像処理装置10に保存される。
【0024】
前記のようにして1ピクセル毎に抽出円S領域の画像を画像処理装置10に保存しながら撮影装置4を1ピクセルピッチでスライドさせ、中空孔Hの下端に達したら、撮影を終了し昇降用モータ3を作動させて撮影装置4を上昇復帰させる。
【0025】
次に、画像処理装置10に保存された1ピクセル単位の抽出円S領域の画像を二値化処理し、二値化処理画像をY方向に順次積み重ねて中空孔Hの内面全体像を得る。そして、黒く表示される傷・鋳巣の面積をピクセル単位に加算して算出する。このとき、ピクセルのX/Y比率が等しくない場合には、X/Y比に基づいて傷・鋳巣の面積を算出する。
【0026】
また、抽出円Sはピクセル単位に基づくものであるため、傷・鋳巣の縁にピクセルが位置した場合と、傷・鋳巣にピクセル全体が位置する場合とでは輝度が異なるので、抽出円Sの周辺の輝度情報に基づいて平均した輝度とし、輝度に基づいて面積を判断して傷・鋳巣の大きさを正確に算出する。
【0027】
なお、図7に示されるものは、導光棒5の円錐状面6を凹円錐部6bとした撮影装置4であり、凹円錐部6bにおける円錐状面6の傾斜角は約90°としている。凹円錐部6bの場合も、円錐状面6の基方の先細り部で受光される孔内周面像ほど小さくなり粗いものとなり、導光棒5の外径に近付けるほど大きく解像度の高い受光像を得ることができるが、外径に近過ぎると導光棒5のわずかな偏心により撮影された領域と抽出円Sにより抽出された領域にずれが生じるので、このような問題の生じない拡大率となる抽出円Sを設定する。
【符号の説明】
【0028】
1 ベース
2 リニアガイド
3 昇降用モータ
4 撮影装置
4a 撮像部
5 導光棒
5a 保護筒
6 円錐状面
6a 円錐部
6b 凹円錐部
7 照明装置
7a 光源
7b 反射鏡
7c 開口
8 ホルダー
9 アタッチメント
10 画像処理装置
11 テレセントリックレンズ
H 中空孔
W 検査対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影装置の先端に検査対象である孔内部に挿入されて孔内周面像の受光と孔内周面の照明を行う導光棒を設けた孔内面撮影装置であって、光源光を拡散光として導光棒の基端面に入射させる反射鏡を導光棒の基方部周縁に設け、また、導光棒が先端を受光と照明とを行なう円錐状面とし、基端面を受光像投影面と光源入射面とされ、該導光棒の基端面に入射された拡散光を全反射させて先端の円錐状面に伝達して孔内周面を拡散光により照明するとともに、拡散光により照明された孔内周面からの反射像を前記円錐状面により受光したうえ、導光棒の基端面に全反射投影された受光像を撮影する撮影装置が導光棒の基端に設けられることを特徴とする孔内周面撮影装置。
【請求項2】
円錐状面が円錐部または円錐凹部よりなることを特徴とする請求項1に記載の孔内周面撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−229978(P2012−229978A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98042(P2011−98042)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【Fターム(参考)】