説明

孔版印刷機の排版装置

【目的】 使用済みマスターを排版する作業を、極狭いスペースにおいて極めて簡単、かつ、安価な装置で確実に行うことができ、孔版印刷機の小型化・低価格化及び高性能化に対応できる孔版印刷機の排版装置を提供する。
【構成】 印刷ドラム5から剥離された使用済みマスター14を搬送する互いに圧接した一対の排版ローラ13a,13bと、使用済みマスターを収納する排版ボックス16とを有する孔版印刷機の排版装置において、前記排版ローラと前記排版ボックスとの間に横たわる排版通路P上に配置され、使用済みマスターを搬送する排版受部材15であって、その一端が排版ローラと平行した支持軸19で回動自在に支持され、支持軸を中心に往復回動することにより、その他端が排版ローラ側を向いた排版受位置Aと、該排版受位置から略180°回転したとき排版ボックスの上位を占める排版放出位置Bとに置かれる排版受部材を具備する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は孔版印刷機の排版装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から実施されているほとんどの孔版印刷機の排版装置は、例えば、実開昭61−204765号公報に記載されているように、使用済みのマスターを搬送する部材と圧縮する部材とが別々であるために、印刷ドラムから使用済みのマスターを剥離する一対のゴムローラの他に印刷ドラムから排出された排版マスターを排版ボックスまで搬送するためのもう一対のローラ、及びその間を繋ぐ数本のゴムベルトとが必要であった。
【0003】そして、排版ボックスの使用済みマスターを圧縮する機構は、例えば、特開平3−278982号公報に記載されているように、圧縮板をその排版ボックスの出入口の上下方向に直線運動させて圧縮しているため、圧縮力を得るためと圧縮板の左右のバランスをとるためにスプリングを左右両側に用い、さらにカムとアームとによって圧縮力負荷の調整を行っている。
【0004】また、排版ボックスの使用済みマスターが満杯であることを検知する方法は、レイアウト上等の問題から圧縮板とは別にセンサ又はマイクロスイッチをオン/オフするためのアクチュエータを取り付けて検知するものである。さらに、使用済みマスターを圧縮した後、圧縮板を直ぐに元の位置に戻していた。
【0005】また、本発明に類似した排版装置として、圧縮板としての排版受部材がその回転軸を中心にして回転角度約90°で回転して使用済みマスターを搬送し、それを横方向に押し出して排版ボックスに搬送する装置が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前者2例の排版装置は、使用済みマスターの搬送・圧縮・満杯検知のそれぞれの作動に別々の部品が必要となり、その装置が大型になり高コストになるという問題がある。また、使用済みマスターを圧縮する時間が極短時間であるため使用済みマスターを完全に圧縮することができず、排版ボックスの収納量が少ないという問題もある。
【0007】後者の排版装置は、排版ボックスに搬送された使用済みマスターを圧縮して収納することができないため、かなり大型の排版ボックスを必要とし、使用済みマスターの満杯を検知するフォトインタラプタ等のセンサを遮蔽するためのアクチュエータは、レイアウトの都合上別の部材として設けられビスで取り付けられている。
【0008】したがって、本発明はかかる問題点を解決するために、使用済みマスターを排版する作業を、極狭いスペースにおいて極めて簡単、かつ、安価な装置で確実に行うことができ、孔版印刷機の小型化・低価格化及び高性能化に対応できる孔版印刷機の排版装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は前述した目的を達成するためになされたものであり、請求項1記載の発明は、印刷ドラムから剥離された使用済みマスターを搬送する互いに圧接した一対の排版ローラと、前記使用済みマスターを収納する排版ボックスとを有する孔版印刷機の排版装置において、前記排版ローラと前記排版ボックスとの間に横たわる排版通路上に配置され、前記使用済みマスターを搬送する排版受部材であって、その一端が前記排版ローラと平行した支持軸で回動自在に支持され、前記支持軸を中心に往復回動することにより、その他端が前記排版ローラ側を向いた排版受位置と、該排版受位置から略180°回転したとき前記排版ボックスの上位を占める排版放出位置とに置かれる排版受部材を具備する構成としている。
【0010】請求項2記載の発明は、前述した目的を達成するために、請求項1記載の孔版印刷機の排版装置において、前記排版受部材は、前記排版ボックスに収納された前記使用済みマスターを圧縮する構成としている。
【0011】そして、請求項3記載の発明は、前述した目的を達成するために、請求項1又は2記載の孔版印刷機の排版装置において、前記排版ボックスが前記使用済みマスターで満杯位置であることを検知するための満杯位置検知センサを前記排版放出位置側に設け、前記排版受部材の一側部に前記満杯位置検知センサを遮蔽するためのアクチュエータを一体形成し、前記排版受部材の位置によって前記満杯位置を検知する構成としている。
【0012】また、請求項4記載の発明は、前述した目的を達成するために、請求項2記載の孔版印刷機の排版装置において、前記排版受部材は、前記排版ボックスに収納された前記使用済みマスターを所定時間圧縮した後に前記排版受位置に逆回転して戻る構成としている。
【0013】
【作用】請求項1記載の発明によれば、印刷ドラムから剥離された使用済みマスターは、排版ローラ対によって排版受部材上に搬送され、さらに排版受部材によって排版放出位置へ略180°回転されて排版ボックスへ搬送される。
【0014】請求項2記載の発明によれば、前記した作用に加え、排版受部材によって排版ボックスへ搬送された使用済みマスターが圧縮される。
【0015】請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の作用に加え、満杯位置検知センサを遮蔽するためのアクチュエータが排版受部材自体の一側部に一体形成されているので、排版受部材の位置によって排版ボックスの満杯位置が直接に検知される。
【0016】請求項4記載の発明によれば、請求項2記載の作用に加え、排版受部材によって排版ボックスに収納された使用済みマスターが所定時間圧縮され、その後に排版受部材は排版受位置に逆回転されて戻される。
【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例について添付図面を参照して詳述する。
【0018】まず、図1を参照して本発明を適用する孔版印刷機の全体構成をその動作と共に説明する。この孔版印刷機の動作は排版動作より始まるが、説明の便宜上から排版動作と並行して進行する給版動作から説明する。同図において、排版動作と並行して原稿1はスキャナ部2で読み込まれ、その画像がプロッタ部3でマスター4に書き込まれた後に、この製版されたマスター4が印刷ドラム5に巻き付けられる。以上の給版動作が終わると、印刷用紙6は、給紙コロ7によって送り出され、フィードローラ対8a,8bを通って、印刷ドラム5にプレスローラ9によって押し付けられて印刷される。この印刷物17は、排紙爪10によって印刷ドラム5から剥がされ、排紙ローラ対11a,11bを通って排紙台12に排出される。
【0019】次に排版装置の構成と動作について説明する。この排版装置の構成は、図1に示すように、印刷ドラム5から剥離された使用済みマスター14を互いに圧接した一対の回転するローラのニップ部に挟持し搬送する排版ローラ対13a,13bと、使用済みマスター14を収納する排版ボックス16と、排版ローラ対13a,13bと排版ボックス16との間に横たわる排版通路P上に配置され、使用済みマスター14を排版ボックス16に搬送し圧縮する排版受部材15とから構成されている。
【0020】排版ローラ対13a,13bは図示しない排版ローラ駆動モータにより回転駆動される。排版ローラ対13a,13bは、例えば、ゴムのような弾性体で形成されている。
【0021】排版受部材15は、その一端が排版ローラ対13a,13bと平行した支持軸19で回動自在に支持され、支持軸19を中心に往復回動されることにより、その他端が排版ローラ対13a,13b側を向いた排版受位置Aと、この排版受位置Aから略180°回転されたとき排版ボックス16の上位を占める排版放出位置Bとに置かれるように構成されている。
【0022】排版受部材15は、図示しない排版受部材駆動モータによって後述する機構を介して往復回動駆動される。排版ローラ駆動モータ及び排版受部材駆動モータ(共に図示しない)は、図示しない制御手段によって制御されるようになっている。
【0023】排版受部材15は、図1ないし図3に示すように板状の部材からできている。排版受部材15の一側端部(後述する側板18b側)には、後述するセンサを遮蔽することによりオン/オフ動作させるためのアクチュエータ部22が突設され、それ自体に一体形成されている。
【0024】ここで、排版受部材15は、本実施例のように板部材には限らず格子又は網目状の部材でもよい。要するに排版受部材15は、使用済みマスター14を排版ボックス16に搬送する機能(形状・剛性・強度等)を備えていればよい。
【0025】図2において、符号18aは本排版装置を適用した孔版印刷機の操作パネル側の側板であり、符号18bは側板18aと対向する非操作パネル側の側板である。側板18a及び側板18bの所定位置において、支持軸19の両端部が軸支されている。側板18bの排版放出位置B側の所定位置には、排版受部材15のアクチュエータ部22がその間隙を遮蔽しなくなると排版ボックス16が使用済みマスター14で満杯であることを検知する満杯位置検知センサ21が設けられている。この満杯位置検知センサ21は、排版受部材15が排版放出位置B側へ回転し始めてからある一定時間が経過してもそのアクチュエータ部22で遮蔽されないときは逆回転して定位置に戻るように、前記した制御手段(図示しない)によって排版受部材駆動モータが制御されるようになっている。一方、側板18bの排版受位置A側の所定位置には、排版受部材15のアクチュエータ部22がその間隙を遮蔽すると排版受部材15の動作を停止させる定位置検知センサ20が設けられている。排版受部材15は、排版動作に入る以前は定位置検知センサ20により検知されて、図1及び図2の排版受位置A(図示実線)に位置している。
【0026】図2及び図3において、排版受部材15の左右両側(図2に示す排版受部材15の図示上下両端部側)には、支持軸19にねじ等で固定された排版受部材レバー24a,24bが回動自在に配設されている。
【0027】図2又は図3に示すように、排版受部材15には、その一端部の長手方向に沿って貫通孔19aが形成されており、この貫通孔19aに支持軸19が挿通されている。排版受部材15は、支持軸19に対してその回動方向にはフリーの状態で取り付けられている。排版受部材15は、その他端部の左右両側において引張りスプリング23aを介して排版受部材レバー24aに、引張りスプリング23bを介して排版受部材レバー24bにそれぞれ互いに引き合う方向に付勢され連結されている。なお、図2において引張りスプリング23a,23bはその煩雑さを避けるためから図示を省略してある。
【0028】側板18b側の支持軸19の端部には図示しない支持軸ギヤが固設されており、この支持軸ギヤが図示しない排版受部材駆動モータに固設された図示しない排版受部材駆動モータギヤと噛み合っている。したがって、排版受部材駆動モータ(図示しない)が往復回動するとその回動駆動力が排版受部材レバー24a,24bに伝わり、引張りスプリング23a,23bを介して排版受部材15が往復回動されることとなる。排版ローラ駆動モータ及び排版受部材駆動モータ(共に図示しない)は図示しない制御手段によって制御されるようになっている。
【0029】この排版受部材レバー24a,24bは常に一定の角度180°を往復回動するように設定されている。排版受部材レバー24a,24bは180°の角度を回動するが、排版受部材15の動作角度は引張りスプリング23a,23bの伸び量によって変化する。そして、排版受部材レバー24aの略中央部にはストッパー部24cが、排版受部材レバー24bの略中央部にはストッパー部24dが、それぞれ排版受部材15との距離を一定に保持するために形成されている。
【0030】次に本実施例の排版装置による排版動作について説明する。図示しないスタートキーを押すと排版動作が始まり、回転していた印刷ドラム5は、マスタークランパ30を図示の時計回り方向に回転させ、所定の位置で停止する。すると使用済みマスター14の一端部は、クランプ状態を解除されると共に図示しない剥離機構によって印刷ドラム5から剥離され、排版ローラ対13a,13bのニップ部に案内され挟持され、さらに使用済みマスター14は、排版ローラ対13a,13bの回転駆動によって排版通路P上を通って排版受位置Aに位置する排版受部材15上に搬送される。
【0031】こうして使用済みマスター14は、排版受部材15がその支持軸19を中心にその排版受位置Aから略180°回転されて排版ボックス16の排版放出位置Bに搬送され排版ボックス16に収納される。排版ボックス16に収納された使用済みマスター14は、排版受部材15によって圧縮される。
【0032】排版受部材15が排版放出位置B側に回転して、そのアクチュエータ部22が満杯位置検知センサ21を遮蔽すると、より確実に使用済みマスター14を圧縮しその収納量をより多くするためにできるだけ長い時間停止した後、制御手段(図示しない)の指令によって排版受部材駆動モータ(図示しない)が逆回転され、排版受部材15が排版受位置Aへ逆回転される。そして、排版受部材15のアクチュエータ部22が定位置検知センサ20を遮蔽すると、排版受部材15は停止する。
【0033】以上のように製版・印刷・排版の各動作を繰り返していくと、使用済みマスター14は排版ボックス16中に段々と蓄積されていき、ある一定量の使用済みマスター14が収納されると排版ボックス16は満杯状態に近づく。そうすると満杯状態の使用済みマスター14が、排版受部材15の排版放出位置B側への回転を妨げるため、排版受部材15の左右両側と排版受部材レバー24a,24bとの間に取り付けられた引張りスプリング23a,23bが伸び始め、ある長さまで伸びると排版受部材15のアクチュエータ部22が満杯位置検知センサ21を遮蔽する前に排版受部材15が停止されることになる。排版受部材15が排版放出位置B側へ回転し始めてからある一定時間が経過してもそのアクチュエータ部22で満杯位置検知センサ21が遮蔽されないときは、排版受位置Aへ逆回転されるように制御手段(図示しない)のプログラム指令によって排版受部材駆動モータ(図示しない)が制御される。したがって、排版受部材15は逆回転されて元の排版受位置Aに戻される。その後に、孔版印刷機の図示しない操作パネルの表示装置に排版ボックス16が満杯であることが表示されて、オペレータに使用済みマスター14を捨てることを促す。
【0034】本実施例の排版装置は全自動であるが、孔版印刷機の使用目的によっては排版受部材の作動機構は手動のものであってもよい。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は前述した目的を達成するためになされたものであり、請求項1記載の発明によれば、印刷ドラムから剥離された使用済みマスターは、排版ローラ対によって排版受部材上に搬送され、さらに排版受部材によって排版放出位置へ略180°回転されて排版ボックスへ搬送されるので、複雑な機構を必要とせず、その機構の部品点数も少なくて済み、孔版印刷機全体の小型化及びコストダウンを図ることができる。
【0036】請求項2記載の発明によれば、前記した効果に加え、排版受部材は排版ボックスへ搬送された使用済みマスターを圧縮する機構も兼ねるので、その機構の部品点数を大幅に削減できると共に、孔版印刷機全体の小型化及び大幅なコストダウンを図ることができる。
【0037】請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の効果に加え、満杯位置検知センサを遮蔽するためのアクチュエータが排版受部材自身の一側部に一体形成されており、排版受部材の位置によって直接に排版ボックスの満杯位置が検知されるので、その機構の部品点数並びにその組立工数を削減できると共に、孔版印刷機全体のコストダウンを図ることができる。
【0038】請求項4記載の発明によれば、請求項2記載の効果に加え、排版受部材によって排版ボックスに収納された使用済みマスターが所定時間圧縮されるので、より確実に使用済みマスターを圧縮でき、排版ボックスに従来よりも大量の使用済みマスターを収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例が適用される孔版印刷機の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施例を示す排版装置の要部平面図である。
【図3】本発明による排版動作を説明するための要部断面の側面図である。
【符号の説明】
A 排版受位置
B 排版放出位置
P 排版通路
5 印刷ドラム
14 使用済みマスター
13a,13b 排版ローラ対
15 排版受部材
16 排版ボックス
19 支持軸
21 満杯位置検知センサ
22 アクチュエータ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】印刷ドラムから剥離された使用済みマスターを搬送する互いに圧接した一対の排版ローラと、前記使用済みマスターを収納する排版ボックスとを有する孔版印刷機の排版装置において、前記排版ローラと前記排版ボックスとの間に横たわる排版通路上に配置され、前記使用済みマスターを搬送する排版受部材であって、その一端が前記排版ローラと平行した支持軸で回動自在に支持され、前記支持軸を中心に往復回動することにより、その他端が前記排版ローラ側を向いた排版受位置と、該排版受位置から略180°回転したとき前記排版ボックスの上位を占める排版放出位置とに置かれる排版受部材を具備することを特徴とする孔版印刷機の排版装置。
【請求項2】請求項1記載の孔版印刷機の排版装置において、前記排版受部材は、前記排版ボックスに収納された前記使用済みマスターを圧縮することを特徴とする孔版印刷機の排版装置。
【請求項3】請求項1又は2記載の孔版印刷機の排版装置において、前記排版ボックスが前記使用済みマスターで満杯位置であることを検知するための満杯位置検知センサを前記排版放出位置側に設け、前記排版受部材の一側部に前記満杯位置検知センサを遮蔽するためのアクチュエータを一体形成し、前記排版受部材の位置によって前記満杯位置を検知することを特徴とする孔版印刷機の排版装置。
【請求項4】請求項2記載の孔版印刷機の排版装置において、前記排版受部材は、前記排版ボックスに収納された前記使用済みマスターを所定時間圧縮した後に前記排版受位置に逆回転して戻ることを特徴とする孔版印刷機の排版装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平5−318901
【公開日】平成5年(1993)12月3日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−127808
【出願日】平成4年(1992)5月20日
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)