説明

学生能力分析システム

【課題】学生に自身の能力を適確に把握させ、教職員による学生の指導の適正化を促進する。
【解決手段】学生能力分析システム100は、学生の各能力の区分を示す能力区分名を複数含む能力区分データ111と、各科目の名前を示す科目名と当該各科目に関連する複数の能力区分名とを含む科目データ115と、学生の氏名と対象科目を示す科目名と当該対象科目の評価点を示す成績とを含む成績データ113と、学生の氏名と学外活動の評価対象である能力区分名と当該学外活動の評価点を示す学外活動評価ポイントとを含む学外活動データ116とを記憶している。客観評価データ計算処理部103は、科目データ115と成績データ113と学外活動データ116とに基づいて、学生の評価を客観的に示す客観評価ポイントを求め、学生の氏名と客観評価の対象である能力区分名と当該客観評価ポイントとを含む客観評価データを作成して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大学等の専門的高等教育機関(大学、短大、専門学校等、以下ではこれらを総称して「大学等」という。)において、学生による自身の能力の適確な把握、および教職員による学生の指導の適正化の促進を可能とする学生能力分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在のわが国の高等教育は、いわゆる「ユニバーサル時代」の到来を現象しており、少子化という社会的動向と相まって「大学全入」の様相を呈している。この高等教育の過度の大衆化に対し、大学教育の質を確保しとりわけ学士課程等における学位授与方針、学修到達目標の明示とそれらの実現は、国際社会における通用性の確保にとって喫緊の課題である。
【0003】
一方、これまで大学等における学業成績は、一般に、「優」「良」「可」「不可」などの成績結果を学生の履修科目(以下、「科目」という。)別に付与するのみであり、学生が習得した資質・能力は、個々の科目の成績の単なる集積によって測られるにとどまり、学生個々人の総合的能力の向上度を測定するに至っていない。近年注目されているGPA(Grade Point Average)についても、個々の科目の成績評価の基準の明確化(指標化)には貢献するが、学生が身につけるべきあるいは身につけることが期待される能力の総合的評価、各専門分野が求める複数種以上の資質・能力のそれぞれについて総合的に分析しうるものではない。
【0004】
また、学生が主観的に認識する自身の資質・能力に関する自己評価と、履修結果の成績として導き出された客観評価とは「ずれ」が生じる場合が多いが、これらを比較し、その「ずれ」を定量的に把握するための手段およびシステムは存在せず、学生は、自らの資質・能力の向上のために履修する科目を選択する際において、直感的あるいは経験的な判断により行っているのが一般的となっている。
【0005】
そこで、特許文献1は、学生の大学等における学修を「到達目標型教育プログラム」として体系的に提示し、かつ学生が習得した科目の成績評価を活用して、習得が期待される学修の目標と学生自身の成績を比較できるシステムを開示する。
また、特許文献2は、ポートフォリオの手法を活用して、複数種の修学コースごとに設定された修学目標と履修科目ごとの目標を基礎に、学生の履修によって期待される能力の向上を明示する学習支援装置を開示する。
【0006】
また、非特許文献1と非特許文献2は、わが国の高等教育、とりわけ「ユニバーサル段階」と呼ばれる高等教育の大衆化における教育改善の方向性について、主としてアメリカの経験をもとに、学生の質の変化とそれに伴う高等教育の変容、教育改善の必要性と可能性を指摘している。すなわち、現代の高等教育の質は、大学における教育内容及び方法の改善を前提として初めて確保されるものであり、多様な学力、資質、志向を有する学生に対する教育には、より組織的な取り組みが求められることを指摘している。
【0007】
非特許文献3と非特許文献4は、いずれも近年のわが国の高等教育政策を方向付けるデータの蓄積とその整理、及び21世紀のわが国の高等教育のあり方に対する政策的提言である。国・公・私立を問わず、現在、わが国の大学等は、自らの高等教育機関としての役割についてそれぞれ特色ある教育を展開しつつあり、その中で特に、学士課程教育における「質保証」の取り組みを個別に実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−298606号公報
【特許文献2】特開2009−223337号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】マーチン、トロウ著・天野郁夫・喜多村和之編訳、『高学歴社会の大学』、1976年、東京大学出版会
【非特許文献2】天野郁夫著、『日本の高等教育システム−変革と創造−』、2003年、東京大学出版会
【非特許文献3】文部科学省高等教育局 「大学における教育内容等の改革状況について」、2008年、文部科学省HP(http://www.mext.go.jp)
【非特許文献4】中央教育審議会、「学士課程教育の構築に向けて」(答申)、2009年、文部科学省HP(http://www.mext.go.jp)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、現在、大学等における学業成績は科目ごとの評価(「優」「良」「可」「不可」)および修得単位数として提供されるのが一般的で、履修した科目がめざす資質・能力の習得状況を総合的に提供する手段およびシステムは存在していない。
また、学生が自身の能力や資質を評価する場合において、学生による自身の主観的評価は、教職員など他者や履修の成績結果などの客観的評価とは必ずしも一致せず、ずれが生じる場合がある。このずれにより、学生の学習計画の適切性が損なわれたり、教職員による指導の適切性や信頼性が損なわれる場合がある。
【0011】
特許文献1にも、その発明が企図する「学生に身につけさせるべきあるいは身につけることが期待される資質・能力の指標」は提示されておらず、また、学生個々人の在学中の学習による成果(資質・能力の伸張)を測定する装置も提示されていない。さらに、特許文献1に記載の発明では、学生の自己評価は考慮の対象外であり、教授者の成績評価のみを活用したシステム運用が目指されている。
特許文献2に記載の発明でも、その発明が企図する自己評価を含む多様な評価の活用はなされておらず、教授者の成績評価のみを活用したシステム運用が目指されている。また、特許文献2には、学生の資質・能力に関する自己評価と客観評価の間に生じる「ずれ」を比較し、その「ずれ」を定量的に把握する手段およびシステムは開示されていない。
【0012】
本発明の目的は、「学生の成長を記録し、その結果を次の教育活動に結びつける教育最適化システムの構築」であり、非特許文献1と非特許文献2が求めた新たな高等教育改善の具体的実践活動を支援する技術の開発である。また、本発明は、非特許文献3と非特許文献4に記載されている個別大学の教育改善活動を支援する教育最適化システムに関するものである。
【0013】
すなわち、本発明の目的は、学生に身につけさせたい資質・能力をあらかじめ複数以上の指標として明示し、それらの区分別および全体のデータを把握し、また学生の能力および資質の主観評価と客観評価のずれを定量的に把握することにより、学生の学習計画の適正化を促進し、かつ教職員による指導の適正化や信頼性の向上を促進し、また学生が取得すべき推奨科目を自動的に抽出することにある。
さらに、教師、学生以外の外部組織の評価(学外活動の結果)を加えることにより、テストの点数だけでは評価できない項目の評価、教師以外の評価者を加えることによる評価の正当性の向上を実現する。また、外部組織が本システムの評価者として参画することで、地域全体で学生を育成していくことになり、大学が地域により密着した組織として価値向上につながる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の学生能力分析システムは、
学生の各能力の区分を示す能力区分名を複数含む能力区分データを記憶する能力区分データ記憶手段と、
各科目の名前を示す科目名と当該各科目に関連する複数の前記能力区分名とを含む科目データを記憶する科目データ記憶手段と、
学生の氏名と成績の対象科目を示す科目名と当該対象科目の評価点を示す成績とを含む成績データを入力する成績データ入力処理手段と、
前記成績データ入力処理手段によって入力された成績データを記憶する成績データ記憶手段と、
学生の氏名と学外活動の評価の対象である前記能力区分名と当該学外活動の評価点を示す学外活動評価ポイントとを含む学外活動データを入力する学外活動情報入力処理手段と、
前記学外活動情報入力処理手段によって入力された学外活動データを記憶する学外活動データ記憶手段と、
前記科目データと前記成績データと前記学外活動データとに基づいて学生の評価を客観的に示す客観評価ポイントを求め、学生の氏名と客観評価の対象である前記能力区分名と当該客観評価ポイントとを含む客観評価データを作成し、当該客観評価データを出力する客観評価データ計算処理手段と、
を備える。
【0015】
好ましくは、本発明の学生能力分析システムは、
前記客観評価データ計算処理手段によって作成された客観評価データを記憶する客観評価データ記憶手段と、
前記客観評価データと前記科目データに基づいて学生が履修すべき推奨科目を抽出し、当該推奨科目を示すデータを出力する推奨科目抽出処理手段と、
を備える。
【0016】
好ましくは、本発明の学生能力分析システムは、
学生の氏名と自己評価の対象である能力区分名と学生の自己評価を示す自己評価ポイントとを含む自己評価データを入力する自己評価データ入力処理手段と、
前記自己評価データ入力処理手段によって入力された自己評価データを記憶する自己評価データ記憶手段と、
を備え、
前記推奨科目抽出処理手段が、前記自己評価データと前記客観評価データと前記科目データとに基づいて学生が履修すべき推奨科目を抽出する。
【0017】
好ましくは、本発明の学生能力分析システムは、
前記自己評価データと前記客観評価データに基づいて、自己評価と客観評価のずれを視覚的に示す図表を作成し、当該図表を出力する自己評価および客観評価表示処理手段を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、学生の履修した科目等の学業成績の分析を通して学生が身につけた資質・能力を複数種の能力に細分化して表現しかつ総合的に把握することができる。また、学生自身が認識する自己評価と、履修した成績結果より導出された客観的評価、および外部組織による客観的評価とを比較して、そのずれを定量的に把握することができる。また、客観的評価と科目データを比較することにより、学生個々の能力に応じて次回履修すべき推奨科目を抽出することができる。
これらによって、学生による自身の能力の適確な把握、および教職員による学生の指導の適正化の促進が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る学生能力分析システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】能力区分データのデータ構造の一例を示す図である。
【図3】成績データのデータ構造の一例を示す図である。
【図4】科目データのデータ構造の一例を示す図である。
【図5】学外活動データのデータ構造の一例を示す図である。
【図6】客観評価データのデータ構造の一例を示す図である。
【図7】自己評価データのデータ構造の一例を示す図である。
【図8】自己評価および客観評価表示データの図表表示の一例である自己評価および客観評価比較レーダーチャートを示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る学生能力分析システムの処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る学生能力分析システムについて、図面に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る学生能力分析システム100の構成の一例を示すブロック図である。
学生能力分析システム100と、PC(パーソナルコンピュータ)端末100aと、PC端末100bと、PC端末100cと、携帯端末108aとは、ネットワークに接続されており、それぞれデータを送受信可能である。なお、PC端末は3台に限らず、任意の数のPC端末が学生能力分析システム100と通信可能にネットワークに接続されていてもよい。同様に、携帯端末も1台に限らず、任意の数の携帯端末が学生能力分析システム100と通信可能にネットワークに接続されていてもよい。
【0021】
学生能力分析システム100は、自己評価データ入力処理部101と、成績データ入力処理部102と、客観評価データ計算処理部103と、自己評価および客観評価表示処理部104と、推奨科目抽出処理部105と、学外活動内容入力処理部106と、学外活動情報出力処理部107と、学外活動結果入力処理部108を備える。また、学生能力分析システム100は、一連の処理に必要な情報として、予め定義された能力区分データ111と、科目データ115とを保持しており、自己評価データ112と、成績データ113と、客観評価データ114と、学外活動データ116を記憶する。
【0022】
学生能力分析システム100の各機能は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、記憶装置とを備えたコンピュータにおいて、CPUが教育適正化プログラムを実行することによって実現される。
ここで、メモリは、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等を含む。教育適正化プログラムは、メモリに記憶される。
また、記憶装置は、ハードディスク装置や光ディスク装置等を含む。能力区分データ111と、科目データ115と、自己評価データ112と、成績データ113と、客観評価データ114と、学外活動データ116とは、記憶装置に記憶される。
【0023】
学生能力分析システム100は、PC端末100a、PC端末100b、PC端末100cおよび携帯端末108aにより学生、教職員、および外部組織による情報の出入力を受け付ける。
自己評価データ入力処理部101は、学生によってPC端末100aより入力された自己評価データ112を受け付け、記憶装置に格納する。
成績データ入力処理部102は、教職員によってPC端末100bより入力された学生の成績データ113を受け付け、記憶装置に格納する。
【0024】
学外活動内容入力処理部106は、外部組織から送られた外部活動情報124を元にPC端末100cより入力された外部活動の内容を示す外部活動内容情報を受け付け、学外活動データ116の一部として記憶装置に格納する。
学外活動情報出力処理部107は、記憶装置から学外活動データ116を読み出し、PC端末100cに送信する。PC端末100cは、学外活動データ116を元に複数パターンの評価(「優」「良」「可」等)に応じたQRコード等を外部活動結果用紙125に印刷出力する。
外部組織は、外部活動結果用紙125に学生の活動の優劣に応じた評価を記載し、学生に渡す。学生は、外部組織による評価の記載された外部活動結果用紙125を受け取る。学外活動結果入力処理部108は、外部活動結果用紙125に記載された評価を元に学生によって携帯端末108a等より入力された学外活動の評価を示す学外活動評価情報を受け付け、記憶装置に格納されている学外活動データ116に追加して記録する。
また、外部組織による評価は、外部組織や教職員がPC端末100cや携帯端末108a等を用いて学生能力分析システム100に入力してもよい。
なお、学外活動内容入力処理部106と学外活動結果入力処理部108は、学外活動情報入力処理部の一例である。
【0025】
客観評価データ計算処理部103は、図9を参照して後で説明するように、記憶装置にそれぞれ格納されている成績データ113と、科目データ115と、学外活動データ116とを元に、学生の評価を客観的に示す客観評価ポイントを求め、客観評価ポイントを含む客観評価データ114を作成する。客観評価データ計算処理部103は、作成された客観評価データ114を記憶装置に格納し、また客観評価データ114を出力する。PC端末100a、PC端末100b、PC端末100cおよび携帯端末108a等は、出力された客観評価データ114を画面に表示または印刷する。
【0026】
自己評価および客観評価表示処理部104は、記憶装置にそれぞれ格納されている自己評価データ112と客観評価データ114を元に自己評価および客観評価表示データ121(例えば、後述する図8の自己評価および客観評価比較レーダーチャート)を作成し、出力する。PC端末100a、PC端末100b、PC端末100cおよび携帯端末108a等は出力された自己評価および客観評価表示データ121を画面に表示または印刷する。
推奨科目抽出処理部105は、図9を参照して後で説明するように、記憶装置に格納されている自己評価データ112と、客観評価データ114と、科目データ115とを参照し推奨科目123を抽出し、当該推奨科目123を示すデータを出力する。PC端末100a、PC端末100b、PC端末100cおよび携帯端末108a等は、出力されたデータを元に推奨科目123を画面に表示または印刷する。
【0027】
図2は、能力区分データ111のデータ構造の一例を示す図である。能力区分データ111は、学生の能力の区分の名称である能力区分名201を複数含む。能力区分名201に重複は許さない。
【0028】
図3は、成績データ113のデータ構造の一例を示す図である。成績データ113は、成績の保有者である学生の氏名301と、成績の対象科目である科目名302と、成績の評価点を示す成績303とを含む。成績303は、例えば0から4までの実数を取る。
【0029】
図4は、科目データ115のデータ構造の一例を示す図である。科目データ115は、科目名の定義とそれぞれの科目がどの能力区分と関連があるかの情報を保持している。科目データ115は、科目名401と、その科目名401に対応する能力区分を示す能力区分関連有無402a〜402xとを含む。能力区分関連有無402a〜402xは、能力区分データ111に含まれる能力区分名201にそれぞれ1対1で対応するものを含む。科目名401は重複を許さない。
【0030】
図5は、学外活動データ116のデータ構造の一例を示す図である。学外活動データ116は、外部組織による評価の対象である学生の氏名501と、学外活動の評価の対象である能力区分名502と、学外活動の評価点を示す学外活動評価ポイント503とを含む。能力区分名502には能力区分データ111に含まれる能力区分名201のうちひとつが格納される。学外活動評価ポイント503は、学外活動の内容に応じて複数パターンの評価(「優」「良」「可」等)ごとに教職員と外部組織が定めた数値であり、例えば0から4までの実数値を取る。
【0031】
図6は、客観評価データ114のデータ構造の一例を示す図である。客観評価データ114は、客観評価の保有者である学生の氏名601と、客観評価の対象の能力区分名602と、客観評価ポイント603とを含む。能力名区分名602には能力区分データ111に含まれる能力区分名201のうちひとつが格納される。客観評価ポイント603は、例えば0から4までの実数値を取る。客観評価ポイント603により学生の客観的な評価を知ることができる。なお、客観評価ポイント603の算出法の一例について図9を参照して後で説明する。
【0032】
図7は、自己評価データ112のデータ構造の一例を示す図である。自己評価データ112は、自己評価の保有者である学生の氏名701と、自己評価の対象の能力区分名702と、自己評価ポイント703とを含む。能力名区分名702には能力区分データ111に含まれる能力区分名201のうちひとつが格納される。自己評価ポイント703は、例えば0から4までの実数値を取る。
【0033】
図8は、自己評価および客観評価表示データ121の図表表示の一例である自己評価および客観評価比較レーダーチャート800を示す図である。
自己評価および客観評価表示処理部104は、学生毎に自己評価データ112と客観評価データ114を元に自己評価および客観評価比較レーダーチャート800を作成し、出力する。PC端末100a、PC端末100b、PC端末100cおよび携帯端末108a等は、出力された自己評価および客観評価比較レーダーチャート800を画面に表示または印刷する。客観評価比較レーダーチャート800には各学生について複数の能力が細分化されて図的に表現されている。このため、学生および教師は、自己評価および客観評価比較レーダーチャート800を見ることにより、自己評価と客観評価のずれを視覚的に把握することができる。
また、自己評価および客観評価表示処理部104は、指示に応じて各学生の所定の能力(例えば、コンピュータに関連する能力や英会話に関連する能力)を示す自己評価および客観評価比較レーダーチャート800を作成することもできる。
【0034】
以上のように構成された学生能力分析システム100の行う一連の処理の概要について説明する。
図9は、本発明の一実施形態に係る学生能力分析システム100の処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS901は、科目ごとにステップS902とステップS903を繰り返すことを示す。ここで科目とは、大学構内での授業以外に学外活動(教育実習など)を含む。
ステップS902では、学生が科目を受講する(または、学外活動を行う)。
ステップS903では、ステップS902で学生の受講した科目の成績データ113を教職員がPC端末100bより学生能力分析システム100に入力する。成績データ入力処理部102は、入力された学生の成績データ113を受け付ける。また、ステップS903では、ステップS902で学生の行った学外活動の学外活動データ116を学外活動の実施者、主催者または学生がPC端末100cや携帯端末108a等より学生能力分析システム100に入力する。学外活動結果入力処理部108は、入力された学外活動データ116を受け付ける。
【0035】
ステップS904は成績結果の分析に関して、能力区分ごとにステップS905とステップS906を繰り返すことを示す。
客観評価計算ステップS905において、客観評価データ計算処理部103は、まず、氏名301を元に成績データ113から分析対象の学生の科目名302と成績303をすべて抽出する。そして、抽出した1データに対して、科目名302の内容を元に科目データ115より科目データをひとつ抽出する。当該科目データの能力区分関連有無402a、402b、402c、…、402xのうち関係のある能力区分に対して分析対象の学生の成績303の値を加算する。同一学生の能力区分に対して同様の計算を繰り返す。
次に、客観評価データ計算処理部103は、氏名501を元に、学外活動データ116から分析対象の学生の能力区分名502と学外活動評価ポイント503をすべて抽出する。そして、能力区分名502に対応する能力区分に対して分析対象の学生の学外活動評価ポイント303の値を加算する。
このようにして、能力区分ごとに成績303と学外活動評価ポイント503の積算値を算出し、加算した回数により除算して、能力区分の平均値を求める。この能力区分ごとの平均値を客観評価ポイント603とし、客観評価データ114を作成して記憶装置に格納する。
【0036】
自己評価入力ステップS906では、自己評価データ112を学生がPC端末100a等より入学生能力分析システム100に入力する。自己評価データ入力処理部101は、入力された自己評価データ112を受け付ける。
【0037】
図表作成ステップS907において、自己評価および客観評価表示処理部104は、自己評価および客観評価比較レーダーチャート800を作成し、出力する。
【0038】
次期履修推奨科目抽出ステップS908では、推奨科目抽出処理部105は、客観評価ポイント603に基づいて次期に履修すべき推奨科目123を抽出する。
具体的には、推奨科目抽出処理部105は、客観評価ポイント603が所定のしきい値より小さい能力区分がある場合に、その能力区分名が能力区分関連有無402a〜402xに含まれる科目名401を科目データ115から抽出し、推奨科目123とする。例えば、推奨科目抽出処理部105は、コンピュータに関する複数の所定の能力区分の中でプログラムを作成する能力区分の客観評価ポイント603が所定のしきい値より小さい場合に、プログラム作成を示す能力区分名が能力区分関連有無402a〜402xに含まれる科目名401(例えば、プログラム作成演習)を推奨科目123とする。
【0039】
または、推奨科目抽出ステップS908において、推奨科目抽出処理部105は、客観評価ポイント603と自己評価ポイント703の両方に基づいて次期に履修すべき推奨科目123を抽出してもよい。
この場合、具体的には、推奨科目抽出処理部105は、客観評価ポイント603と自己評価ポイント703の差が所定のしきい値より大きい能力区分があるとき、その能力区分名が能力区分関連有無402a〜402xに含まれる科目名401を科目データ115から抽出し、推奨科目123とする。例えば、推奨科目抽出処理部105は、英語を話すための複数の所定の能力区分のうち、発音の能力区分について客観評価ポイント603と自己評価ポイント703の差が所定のしきい値より大きい場合に、発音を示す能力区分名が能力区分関連有無402a〜402xに含まれる科目名401(例えば、英語発音)を推奨科目123とする。
【0040】
本発明によれば、客観評価データ114により、学生による自身の能力の適確な把握、および教職員による学生の指導の適正化の促進が可能となる。
また、学外活動(教育実習など)の実施者、主催者が学生の評価者として参画し、学外活動(教育実習など)の結果を評価することにより、テストの点数だけでは評価できない項目の評価が可能となる。これにより、地域全体で学生を育成していくことができ、地域により密着した組織として大学の価値向上を図ることができる。
【0041】
また、記憶装置に格納されている成績データ113と学外活動データ116とを出力し、PC端末100a、PC端末100b、PC端末100cおよび携帯端末108a等の画面に表示または印刷することができるようにしてもよい。これにより、成績データ113の成績303と、学外活動データ116の学外活動評価ポイント503とを比較して教師の評価の妥当性を確認することが可能となる。
【0042】
更に、本発明によれば、推奨科目123を抽出し、次回履修すべき推奨科目として学生に提示することにより、能力を向上させるための指針を学生に与えることができる。
また、客観評価比較レーダーチャート800により、学生の能力ごとに習熟度を可視化することができる。これにより、学生自身が自らの資質・能力の現状を客観的に把握し、長所及び弱点を踏まえて、自らの学修課題を理解し、高等教育修了者として身につけるべき資質・能力を具体的に理解することができる。
【符号の説明】
【0043】
100…学生能力分析システム
100a、100b、100c…PC端末
101…自己評価データ入力処理部
102…成績データ入力処理部
103…客観評価データ計算処理部
104…自己評価および客観評価データ表示処理部
105…推奨科目抽出処理部
106…学外活動内容入力処理部
107…学外活動情報出力処理部
108…学外活動結果入力処理部
108a…携帯端末
111…能力区分データ
112…自己評価データ
113…成績データ
114…客観評価データ
115…科目データ
116…学外活動データ
121…自己評価および客観評価表示データ
123…推奨科目
124…外部活動情報
125…外部活動結果用紙
201…能力区分名
301…氏名
302…科目名
303…成績
401 科目名
402a、402b、402c、…、402x…能力区分関連有無
501…氏名
502…能力区分名
503…学外活動評価ポイント
601…氏名
602…能力区分名
603…客観評価ポイント
701…氏名
702…能力区分名
703…自己評価ポイント
800…自己評価および客観評価比較レーダーチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
学生の各能力の区分を示す能力区分名を複数含む能力区分データを記憶する能力区分データ記憶手段と、
各科目の名前を示す科目名と当該各科目に関連する複数の前記能力区分名とを含む科目データを記憶する科目データ記憶手段と、
学生の氏名と成績の対象科目を示す科目名と当該対象科目の評価点を示す成績とを含む成績データを入力する成績データ入力処理手段と、
前記成績データ入力処理手段によって入力された成績データを記憶する成績データ記憶手段と、
学生の氏名と学外活動の評価の対象である前記能力区分名と当該学外活動の評価点を示す学外活動評価ポイントとを含む学外活動データを入力する学外活動情報入力処理手段と、
前記学外活動情報入力処理手段によって入力された学外活動データを記憶する学外活動データ記憶手段と、
前記科目データと前記成績データと前記学外活動データとに基づいて学生の評価を客観的に示す客観評価ポイントを求め、学生の氏名と客観評価の対象である前記能力区分名と当該客観評価ポイントとを含む客観評価データを作成し、当該客観評価データを出力する客観評価データ計算処理手段と、
を備えることを特徴とする学生能力分析システム。
【請求項2】
前記客観評価データ計算処理手段によって作成された客観評価データを記憶する客観評価データ記憶手段と、
前記客観評価データと前記科目データに基づいて学生が履修すべき推奨科目を抽出し、当該推奨科目を示すデータを出力する推奨科目抽出処理手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の学生能力分析システム。
【請求項3】
学生の氏名と自己評価の対象である能力区分名と学生の自己評価を示す自己評価ポイントとを含む自己評価データを入力する自己評価データ入力処理手段と、
前記自己評価データ入力処理手段によって入力された自己評価データを記憶する自己評価データ記憶手段と、
を備え、
前記推奨科目抽出処理手段が、前記自己評価データと前記客観評価データと前記科目データとに基づいて学生が履修すべき推奨科目を抽出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の学生能力分析システム。
【請求項4】
前記自己評価データと前記客観評価データに基づいて、自己評価と客観評価のずれを視覚的に示す図表を作成し、当該図表を出力する自己評価および客観評価表示処理手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の学生能力分析システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−194507(P2012−194507A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60263(P2011−60263)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000233055)株式会社日立ソリューションズ (1,610)
【出願人】(504155293)国立大学法人島根大学 (113)