説明

学習具

【課題】塗膜転写具を用いてベタでない模様のある着色透明な塗膜にてマークして、着色透明シートを重ねると、その模様が目視不能な暗色の隠蔽模様となる学習具を提供することである。また、プラスチック字消し(いわゆる消しゴム)によって、その塗膜を除去することができるようにすることである。
【解決手段】基材テープ上に形成したベタでない模様のある着色透明な塗膜を感圧転写させる塗膜転写具と、着色透明シートとの組からなる学習具であり、塗膜は、基材テープから順に保護層、印刷層、粘着層からなり、印刷層は、着色透明シートの色に対して補色となる着色透明な色を有しており、感圧転写した模様のある着色透明な塗膜に着色透明シートを重ねると、目視不能な隠蔽模様となることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色透明なある色で被転写物(教科書や参考書、その他印刷物)の文字などをマークして、その色に対する補色の着色透明シートを重ねると、マークした部分が暗色になり、目視できなくなり、着色透明シートを外すと、マークした部分が再び目視できるようになる、一時的に隠蔽する学習具に関するものである。通常、暗記学習に使用するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、筆記具を用いてマークするものがある。例えば特開昭57−037389号公報のように、筆記具と、筆記具によってマークした部分の色と補色(余色)関係の着色透明シートとの組からなる学習具は、商品化されている。
【0003】
筆記具では、インクの色ムラや被転写物の裏側へ浸透してしまうインクの裏移りなどの不具合が起こることがあった。筆記具でなく、塗膜転写具を用いてマークするものがある。塗膜転写具を用いて塗膜を文字などに感圧転写して、塗膜にてマークするものである。例えば、特許第3547545号公報や特許第3501433号公報や特開平11−048689号公報のような塗膜転写具と感圧転写テープが公開されている。
【0004】
塗膜転写具は、これら以外にもさまざまな形状がある。例えば、意匠登録第1286952号公報や意匠登録第1343631号公報などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−037389号公報
【特許文献2】特許第3547545号公報
【特許文献3】特許第3501433号公報
【特許文献4】特開平11−048689号公報
【特許文献5】意匠登録第1286952号公報
【特許文献6】意匠登録第1343631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの塗膜は、筆記具のようにベタでマークするものである。補色関係にある1色からなるベタである。ベタでない模様をマークして、その模様が目視不能な暗色の隠蔽模様となるものはなかった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、塗膜転写具を用いてベタでない模様のある着色透明な塗膜にてマークして、着色透明シートを重ねると、その模様が目視不能な暗色の隠蔽模様となる学習具を提供することである。また、プラスチック字消し(いわゆる消しゴム)によって、その塗膜を除去することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基材テープ上に形成したベタでない模様のある着色透明な塗膜を感圧転写させる塗膜転写具と、着色透明シートとの組からなる学習具であり、塗膜は、基材テープから順に保護層、印刷層、粘着層からなり、印刷層は、着色透明シートの色に対して補色となる着色透明な色を有しており、感圧転写した模様のある着色透明な塗膜に着色透明シートを重ねると、目視不能な隠蔽模様となることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
塗膜転写具を用いてベタでない模様のある着色透明な塗膜にてマークして、着色透明シートを重ねると、その模様が目視不能な暗色の隠蔽模様となる学習具を提供することができるようになった。また、プラスチック字消し(いわゆる消しゴム)によって、その塗膜を除去することができるようになった。さらに、模様を多色にすることができるようになり、例え除去しなくても、1色からなるベタでないカラフルな模様として残せるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】象の隠蔽模様となる使用例を示した説明図である。
【図2】他の隠蔽模様となる使用例を示した説明図である。
【図3】印刷のない部分がある感圧転写テープの断面図である。
【図4】印刷のない部分がない感圧転写テープの断面図である。
【図5】点で印刷した印刷部分を拡大した説明図である。
【図6】塗膜転写具(ブレード状転写ヘッド)の斜視図である。
【図7】図6の塗膜転写具の使用例を示した正面図である。
【図8】図7において塗膜転写具の筐体を不透明にした説明図である。
【図9】キャップを着けた塗膜転写具(ブレード状転写ヘッド)の正面図である。
【図10】塗膜転写具(ローラー状転写ヘッド)の斜視図である。
【図11】図10の塗膜転写具の使用例を示した正面図である。
【図12】図11の背面図である。
【図13】図11において塗膜転写具の筐体の正面を透明にした説明図である。
【図14】キャップを着けた塗膜転写具(ローラー状転写ヘッド)の正面図である。
【図15】着色透明シートを示した説明図である。
【図16】本発明の使用例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、補色とは、ある色にその色に対する補色を重ねると、暗色になる組み合わせの色のことである。ここで暗色とは、マークした文字が目視できなくなり、判読することができない色のことである。補色を重ねると、文字を判読できない目視不能な暗色になる。
【0012】
着色透明とは、色は付いているが透明であり、文字などにマークしたり重ねたりしても、文字が目視でき、判読することができることである。
【0013】
塗膜は、基材テープから順に保護層、印刷層、粘着層からなり、印刷層は、着色透明シートの色に対して補色となる着色透明な色を有している。塗膜に着色透明シートを重ねると、塗膜の模様が目視不能な暗色の隠蔽模様へと変わるものである。模様が補色を含んだ多色からなると、補色部分だけが目視不能な暗色となり、隠蔽模様へと変わるものである。この隠蔽模様によってマークした文字を判読することができないようにして、一時的に隠蔽するものである。
【0014】
図1は、象の隠蔽模様となる使用例を示した説明図である。図1(a)は、マークする文字であり、「あいうえお」という文字である。図1(b)は、塗膜転写具を用いて塗膜1を(a)の文字に図の左右方向へ感圧転写させて、塗膜1にてマークしたものである。図1(c)は、(b)に着色透明シートを重ねたものである。
【0015】
なお、実際は、色が付いているものであるが、図は白黒なので、黒の濃淡で色の違いを表現している。また、マークする文字も、文章中の語句である場合が多いが、その語句の代わりに「あいうえお」という文字で説明している。
【0016】
図1(b)において、着色透明シートの色に対して補色2となる着色透明な色は、象の模様部分だけであり、その部分以外は補色2でない色である。これ以降、補色2でない色のことを非補色3と記載する。このように模様は、補色2を含んだ多色(補色2と非補色3)からなる。これに着色透明シートを重ねると、目視不能な暗色となり、象の隠蔽模様となるものである。この隠蔽模様によって、図1(c)では塗膜1にてマークした「あいうえお」という文字が読めなくなっている。
【0017】
図2は、他の隠蔽模様となる使用例を示した説明図である。図2は、図1と隠蔽模様だけが異なり、その他は図1と同様である。図2(a)は、マークする文字であり、「あいうえお」という文字である。図2(b)は、塗膜転写具を用いて塗膜1を(a)の文字に図の左右方向へ感圧転写させて、塗膜1にてマークしたものである。図2(c)は、(b)に着色透明シートを重ねたものである。
【0018】
図2(c)の目視不能な隠蔽模様(他の隠蔽模様)は、テープ幅方向(図の上下方向)の隠蔽模様幅の20%以上100%以下である高さの文字を判読不能にすることができる隠蔽模様である。
【0019】
図2(b)において、着色透明シートの色に対して補色2となる着色透明な色は、その隠蔽模様部分だけであり、その部分以外は非補色3である。このように模様は、補色2を含んだ多色(補色2と非補色3)からなる。これに着色透明シートを重ねると、目視不能な暗色となり、隠蔽模様となるものである。この隠蔽模様によって、図2(c)ではマークした「あいうえお」という文字が読めなくなっている。
【0020】
これら図1や図2のように、模様1は、補色関係にある1色からなるベタでなく、非補色3を使った多色にすることできる。塗膜1に着色透明シートを重ねると、塗膜1の模様が目視不能な暗色の隠蔽模様(図(c))へと変わるものである。また、非補色3も1色でなく多色にすることができ、よりカラフルな模様にすることができる。なお、本発明の模様は、図1や図2に限定されるものではない。
【0021】
図3と図4は、感圧転写テープ4の断面図である。基材テープ5から順に保護層6、印刷層7、粘着層8からなる。図3は、印刷層7が補色2と非補色3からなる印刷部分9と印刷のない部分10からなる例であり、印刷のない部分10がある感圧転写テープ4の断面図である。印刷のない部分10は保護層6と粘着層8が直接接している。図4は、印刷層7が補色2と非補色3からなる印刷部分9だけからなり、印刷のない部分10がない感圧転写テープ4の断面図である。印刷のない部分10つまり保護層6と粘着層8が直接接している部分はない。なお、これらの断面は、図1や図2の模様と対応させていない。
【0022】
実際の製造においては、幅広長尺の基材を用いて順に保護層6、印刷層7、粘着層8を形成して、一定幅に裁断することで、図3と図4のような基材テープ5から順に保護層6、印刷層7、粘着層8からなる感圧転写テープ4にするものである。
【0023】
基材(基材テープ5)としては、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリプロピレンなどのプラスチックフィルムや、グラシン紙などを用いることができる。
【0024】
基材(基材テープ5)の厚さは、3μm以上100μm以下が良い。基材テープ5の厚さが大きいと、転写させる圧力が充分に伝わらず感圧転写がうまくできないなどの不具合が生じることがある。逆に基材テープ5の厚さが小さいと、テープの強度が弱くなり、テープ自身が断裂してしまうなどの不具合が生じることがある。
【0025】
また、基材(基材テープ5)は、両面剥離加工されていることが好ましい。剥離加工は、シリコン樹脂、フッ素樹脂、その他剥離性を有する樹脂やオイルなどを主成分として、必要に応じて、剥離性を有しない合成樹脂や微粒子、添加剤などを混合したものでグラビアコーティングやダイコーティングなどの方法により施される。
【0026】
保護層6は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂や熱可塑性エラストマーなどからなるものであればよい。
【0027】
本発明では、転写した塗膜1を保護することと、プラスチック字消しにて除去できることの性能を持たせるために、保護層6にはアクリル樹脂と熱可塑性エラストマーを混合したものを用いている。これは、保護するための適度な強度を持たせて塗膜1を保護することと、粘着層8とのバランスによってプラスチック字消しにて除去できることとの性能を、アクリル樹脂と熱可塑性エラストマーを混合することで、見出したものである。ここで熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー(スチレンブロックコポリマー)が挙げられ、スチレン−ブタジエン−スチレン構造、スチレン−イソプレン−スチレン構造、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン構造などがある。
【0028】
アクリル樹脂と熱可塑性エラストマーの混合比は、固形分比で、アクリル樹脂が30重量%以上70重量%以下、熱可塑性エラストマーが30重量%以上70重量%以下であればよく、アクリル樹脂が40重量%以上60重量%以下、熱可塑性エラストマーが40重量%以上60重量%以下がより好ましいものである。熱可塑性エラストマーとしては、塗膜の保護と除去という上記の性能を満たすためにスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、その中でもスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン構造のスチレン系熱可塑性エラストマーがさらに好ましいものである。
【0029】
塗膜1の劣化を防ぐために、フェノール系やリン系などの酸化防止剤、および、パラアミノ安息香酸系、ベンゾフェノン系メトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸誘導体などの紫外線吸収剤を含むことが好ましい。また、塗工液として基材(基材テープ5)上への塗布性をよくするため、アニオン性、カチオン性、両性、非イオン性などの界面活性剤を含んでもよい。
【0030】
保護層6は、これらを配合した保護層6塗工液をいわゆるコーターによって塗布して加熱乾燥で形成することができる。保護層6としての性能を出すために、保護層6の厚さは、1μm以上20μm以下が好ましく、3μm以上15μm以下がより好ましいものである。保護層6の厚さが小さいと、感圧転写する時の力に耐えることができず、転写した塗膜1がひび割れたり、模様が崩れたりするなどの不具合が生じることがあり、保護層6としての性能を出すことができない。保護層6の厚さが大きいと、塗膜転写具の転写ヘッドでうまく切断することができないなどの不具合が生じることがあり、感圧転写させることができない。
【0031】
印刷層7は、補色2を含んだ多色(補色2と非補色3)からなる模様を形成できる方法であれば、どのような方法でも良いが、模様にするには印刷が好ましい。
【0032】
印刷のない部分10が少なくなる、つまり、保護層6と粘着層8が直接接する面積が小さくなると、粘着層8と印刷部分9との密着力の差によっては、印刷層7と保護層6と間で剥がれてしまうという不具合が生じることがある。例えば図4のように印刷のない部分10がない場合は、印刷層7と保護層6と間で剥がれてしまうという不具合が生じやすい。
【0033】
そのような不具合が生じないように、印刷は点を印刷する方法で、粘着層8は液体である粘着層塗工液による形成が好ましい。例えば、印刷はグラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷が好ましく、粘着層8はいわゆるコーターによって粘着層塗工液を塗布して加熱乾燥で形成する方法が好ましい。
【0034】
点を印刷する方法であれば、点と点の間に空隙が設けられる。塗布する粘着層塗工液が液体であるために、その空隙に入り込んで、粘着層8を形成することができる。これにより、例えば図4のように印刷のない部分10がない場合でも、保護層6と粘着層8が印刷層7において直接接する部分を有することになる。
【0035】
図5は、点で印刷した印刷部分9の面を拡大した説明図である。点11と点11の間に空隙12があり、その空隙12に粘着層8が入り込んでいることを表している。図5では、点11を円形で表わしているが、印刷方法や条件などにより、円形以外の形状(菱形やその他の多角形)にもなる。なお、図では空隙12を強調して拡大させて表しているが、実際の塗膜1においてはこのような点11を見ることはできず、着色透明な色となるものとなる。
【0036】
粘着層8は、液体である粘着層塗工液をいわゆるコーターによって塗布して加熱乾燥で形成する方法であれば、印刷部分9の点11と点11の間の空隙12に粘着層塗工液が入り込み、その空隙12でも粘着層8が形成され、保護層6と粘着層8が印刷部分9においても直接接する部分を有することになる。剥離紙などに形成した粘着層8を、保護層6上に形成した印刷部分9に貼り合わせる形成方法では、このように入り込むことができず、印刷層7と保護層6と間で剥がれてしまうという不具合が生じることがある。
【0037】
粘着層塗工液は、一般に粘着剤として扱われているアクリル系、ビニルエーテル系などの合成樹脂やゴム系の粘着性を有する材料を用いることができる。必要であれば、充填剤、接着性調整剤、老化防止剤等を配合してもよい。
【0038】
充分な粘着性能を出すために、粘着層8の厚さは1μm以上20μm以下が好ましい。厚さが小さいと、充分な粘着性能が出せず、被転写物に引っ付かないという不具合が生じることがある。厚さが大きいと、感圧転写させるときに塗膜1の切れが悪くなり、塗膜1が伸びてしまうなどの不具合が生じることがある。
【0039】
印刷層7だけでなく、非補色3である着色透明な保護層6や粘着層8にしてもよい。また、保護層6にパール顔料やラメなどを用いて色彩感覚を高めることもできる。
【0040】
このように幅広長尺の基材を用いて順に保護層6、印刷層7、粘着層8を形成したものを、一定幅に裁断して繰出しリールに巻き回してテープ状にした感圧転写テープ4を、塗膜転写具に装填して使用するものである。感圧転写テープ4の一定幅としては、2.5mm〜12mmの間であるのが一般的であるが、これ以外の幅である場合もある。
【0041】
図6は、塗膜転写具13(ブレード状転写ヘッド)の斜視図である。この塗膜転写具13は、意匠登録第1286952号公報と同様のものである。筐体14は透明で塗膜転写具13内部は見えている。塗膜1を転写させるために感圧転写テープ4の基材テープ5側から加圧する転写ヘッド15の先端が、ローラーのようには稼働しないブレード20である。なお、感圧転写テープ4における塗膜1の模様は省略して濃い網点で表している。感圧転写テープ4は、塗膜1を外向きに繰出しリール16に巻いているが、基材テープ5として透明PETテープを想定しているので、繰出しリール16から転写ヘッド15までの間でも、感圧転写テープ4の塗膜1が見えている。
【0042】
図7は、図6の塗膜転写具13の使用例を示した正面図である。繰出しリール16から感圧転写テープ4が繰り出され、塗膜1が転写ヘッド15のブレード20にて被転写物24に感圧転写され、塗膜1が転写された基材テープ5が巻取りリール17へと巻き取られる。繰出しリール16と巻取りリール17には連動機構があり、この塗膜転写具13では連動機構としてギア18を利用している。繰出しリール16と巻取りリール17それぞれにあるギア18が連動するようになっている。塗膜転写具13の背面側にギア18があり、図では繰出しリール16のギア18だけが見えている。また、巻取りリール17にはローレット形状19のフランジがあり、図では塗膜転写具13の正面側に見えている。感圧転写テープ4の基材テープ5側から転写ヘッド15のブレード20にて加圧しながら、図面左から右へ引くことにより、被転写物24上に塗膜1を転写することができる。
【0043】
このような一連の動きによって、塗膜転写具13を用いて塗膜1を感圧転写することができるものである。つまり、塗膜1にて被転写物24の文字などにマークすることができるものである。
【0044】
感圧転写テープ4には模様の色があるので、テープ残量確認部を設けて、塗膜転写具13内部のテープ残量を確認することができるようにしている。この塗膜転写具13においては、筐体14が透明であることにより、テープ残量を確認することができる。このような塗膜転写具13の場合は、透明な筐体14自身がテープ残量確認部である。
【0045】
リール調整窓22を設けて、繰り出しと巻き取りのバランスが崩れた時に直すことができるようにしている。この塗膜転写具13において、リール調整窓22は、リールを直接動かすことができるように筐体14の壁を塗膜転写具13内部へ貫通させた窓であり、巻取りリール17のローレット形状19に面している。
【0046】
図8は、図7において塗膜転写具13の筐体14を不透明にした説明図である。リール調整窓22の位置を説明するために、筐体14を不透明にした図である。リール調整窓22が巻取りリール17のローレット形状19に面しているので、図ではリール調整窓22の中に巻取りリール17のローレット形状19が見えている。図6と図7(および図9)においても、同様の位置にリール調整窓22がある。
【0047】
このリール調整窓22から硬く細いペン先などを入れて、ローレット形状19に引っ掛けて、リールを直接動かすことができる。これにより、繰り出しと巻き取りのバランスを調整することができる。
【0048】
図における筐体本体貫通部23は、この塗膜転写具(意匠登録第1286952号公報)におけるデザイン上の特徴でもある。筐体本体貫通部23は、筐体本体を表面側から背面側へと貫通させた部分である。ひもを通すなどしてぶらさげることもできる。
【0049】
図9は、キャップ25を着けた塗膜転写具13(ブレード状転写ヘッド)の正面図である。転写ヘッド15の先端がブレード20である図6の塗膜転写具13に、着脱可能なキャップ25を着けたものである。感圧転写させるために、転写ヘッド15では粘着面が出ているので、それを保護するキャップ25がある方が好ましい。使用していない時や、持ち運ぶ時などは、このようにキャップ25を着けることで、塗膜1が何か不用意に引っ付いてしまったり、粘着面が汚れたりすることを防ぐことができる。
【0050】
図6〜9に示した塗膜転写具13は、転写ヘッド15の先端がローラーのようには稼働しないブレード20であり、テープ残量確認部とリール調整窓22を設けており、着脱可能なキャップ25をすることができる塗膜転写具13である。
【0051】
繰出しリール16から感圧転写テープ4が繰り出され、転写ヘッド15から巻取りリール17へと巻き取られる一連の動きであるため、繰り出しと巻き取りのバランスが崩れると、転写ヘッド15のブレード20にてテープが伸ばされたり弛んだりすることもある。そのようなことが起こると、印刷層7の模様がそのまま転写できず、目視不能な隠蔽模様とならないこともある。繰り出しと巻き取りのバランスが崩れても、印刷層7の模様を安定してそのまま転写させるために、転写ヘッド15の先端が稼働しないブレード20ではなく、回動する(稼働する)ローラーである方が好ましい。転写ヘッド15の先端が回動する(稼働する)ローラーであると、基材テープ5上に形成した塗膜1の模様をそのまま転写させることができる。
【0052】
図10は、塗膜転写具13(ローラー状転写ヘッド)の斜視図である。この塗膜転写具13は、意匠登録第1343631号公報と同様のものである。筐体14は不透明で塗膜転写具13内部は見えていない。塗膜1を転写させるために感圧転写テープ4の基材テープ5側から加圧する転写ヘッド15の先端が、回動する(稼働する)ローラー26である。
【0053】
図11は、図10の塗膜転写具13の使用例を示した正面図である。感圧転写テープ4には模様の色があるので、テープ残量確認部21を設けて、塗膜転写具13内部のテープ残量を確認することができるようにしている。この塗膜転写具13においては、筐体14が不透明であるので、テープ残量確認部21として筐体14の壁を塗膜転写具13内部へ貫通させた窓を設けて、テープ残量を確認することができるようにしている。
【0054】
図のように、テープ残量確認部21としての窓は二つ設けており、この塗膜転写具(意匠登録第1343631号公報)におけるデザイン上の特徴でもある。
【0055】
図12は、図11の背面図である。リール調整窓22を設けて、繰り出しと巻き取りのバランスが崩れた時に直すことができるようにしている。この塗膜転写具13において、リール調整窓22は、リールを直接動かすことができるように筐体14の壁を塗膜転写具13内部へ貫通させた窓であり、巻取りリール17のギアに面している。図ではリール調整窓22の中に巻取りリール17のギアが見えている。
【0056】
このリール調整窓22から硬く細いペン先などを入れて、ギアに引っ掛けて、リールを直接動かすことができる。これにより、繰り出しと巻き取りのバランスを調整することができる。
【0057】
図13は、図11において塗膜転写具13の筐体14の正面側を透明にした説明図である。塗膜転写具13内部を説明するために、筐体14の正面側を透明にした図である。繰出しリール16から感圧転写テープ4が繰り出され、塗膜1が転写ヘッド15のローラー26にて被転写物24に感圧転写され、塗膜1が転写された基材テープ5が巻取りリール17へと巻き取られる。繰出しリール16と巻取りリール17には連動機構があり、この塗膜転写具13では連動機構としてギア18を利用している。繰出しリール16と巻取りリール17それぞれにあるギア18が連動するようになっている。塗膜転写具13の背面側にギア18があり、図では繰出しリール16のギア18だけが見えている。また、巻取りリール17にはローレット形状19のフランジがあり、図では塗膜転写具13の正面側に見えている。感圧転写テープ4の基材テープ5側から転写ヘッド15のローラー26にて加圧しながら、図面左から右へ引くことにより、被転写物24上に塗膜1を転写することができる。
【0058】
このような一連の動きによって、塗膜転写具13を用いて塗膜1を感圧転写することができるものである。つまり、塗膜1にて被転写物24の文字などにマークすることができるものである。
【0059】
図14は、キャップ25を着けた塗膜転写具13(ローラー状転写ヘッド)の正面図である。図10〜14の塗膜転写具13には、図13のキャップ回動軸27を中心に回動して着脱可能なキャップ25が設置されている。図10〜13においては、筐体14にキャップ25が隠れた配置となっているため、キャップ25の一部しか見えていない。キャップ25をキャップ回動軸27を中心に回動させて、図14のように転写ヘッド15にキャップ25を着けることができる。転写ヘッド15の先端がローラー26である図11の塗膜転写具13に、着脱可能なキャップ25を着けたものである。感圧転写させるために、転写ヘッド15では粘着面が出ているので、それを保護するキャップ25がある方が好ましい。使用していない時や、持ち運ぶ時などは、このようにキャップ25を着けることで、塗膜1が何か不用意に引っ付いてしまったり、粘着面が汚れたりすることを防ぐことができる。
【0060】
図10〜14に示した塗膜転写具13は、転写ヘッド15の先端が回動する(稼働する)ローラー26であり、テープ残量確認部21とリール調整窓22を設けており、着脱可能なキャップ25をすることができる塗膜転写具13である。
【0061】
図15(a)は、プラスチック着色による着色透明シート28を示した説明図である。この着色透明シート28は、プラスチック原料に着色剤を混合してシート状に作製したものである。図15(b)は、印刷による着色透明シート28を示した説明図である。この着色透明シート28は、無色透明なプラスチックシート表面29に印刷受容層を形成して、印刷によっても作製したものである。つまり、シート表面29だけが補色2関係の色になっているものである。例えば、透明PETシート表面に透明インクジェット受容層を形成して、インクジェット印刷によって作製することができる。なお、着色透明シート28は、これら図15の形状に限定されるものではない。
【0062】
図16は、本発明の使用例である。本発明の文言である「に形成したベタでない模様」において、「形成したベタでない」という文字に、塗膜転写具を用いて図1のような象の模様である塗膜1を感圧転写させて、塗膜1にてマークしており、「ベタでない模様」という文字に着色透明シート28を重ねたものである。着色透明シート28を重ねると、補色2は、目視不能な暗色となり、象の隠蔽模様となり、「ベタでない」という文字を判読することができなくなっている。非補色3は、暗色となっていない。塗膜1がなく着色透明シート28だけが重なっている「模様」という文字は目視でき、文字を読むことができる。
【0063】
このように本発明は、図6や図10のような塗膜転写具と図15のような着色透明シートとの組からなる学習具であり、塗膜に着色透明シートを重ねると、塗膜の模様が目視不能な暗色の隠蔽模様へと変わるものである。さらに、可変性の高い印刷、例えばインクジェット印刷によって、塗膜および着色透明シートの模様を作製する方法であると、ベタでない模様と色の様々な組み合わせが可能となり、これまでの1色からなるベタとは全く異なる学習具を提供できるものである。以下、実施例にて詳細に説明する。
【実施例1】
【0064】
基材として両面剥離加工した厚さ12μmの透明PETフィルムを用いて、次の配合比率で作製した保護層塗工液をリバースロールコーターで塗布して加熱乾燥して、厚さが10μmになるように、保護層を形成した。
【0065】
保護層塗工液の配合比率は、固形分比で、アクリル樹脂として三菱レイヨン株式会社製ダイヤナールBR−87を42重量%、熱可塑性エラストマーとしてスチレン−エチレン/ブチレン−スチレン構造のスチレン系熱可塑性エラストマーであるクレイトンポリマー社製クレイトンG1701を57重量%、酸化防止剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製イルガノックス1010を0.7重量%、紫外線吸収剤としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製チヌビンPを0.3重量%である。これらを溶剤としてトルエン中で攪拌混合したものを使用した。
【0066】
この保護層上に、点を印刷する方法であるグラビア印刷で、グラビア印刷用インキとして大阪印刷インキ製造株式会社製VS−SANSを用いて、厚さが1μmになるように、図1の象の印刷模様となる印刷層を形成した。なお、象の印刷模様において、隠蔽する部分の色は、着色透明シートの色に対して補色となる色になるよう調合したものを用いた。隠蔽する部分以外の色は、着色透明シートの色に対して非補色となる色を用いた。
【0067】
その後に、液状の粘着層塗工液としてアクリル系粘着剤である日本カーバイド工業株式会社製ニカゾールTS−1523を、リバースロールコーターで塗布して加熱乾燥して、厚さが3μmになるように、粘着層を形成した。
【0068】
これを、幅5mm、長さ10mに裁断して繰出しリールに巻き回してテープ状にした感圧転写テープを、図6の塗膜転写具(ユニオンケミカー株式会社製消シマウスHG)に装填して、図1のように文字にマークした(文字上に塗膜を感圧転写した)。このマークした文字上に、プラスチック着色による着色透明シートおよびインクジェット印刷による着色透明シートを重ねると、どちらでも目視不能な隠蔽模様となり、文字を読むことができなくなった。また、プラスチック字消し(株式会社シード製Rader)にて、マークを除去することができた。
【実施例2】
【0069】
実施例1の象の印刷模様を、図2のような、テープ幅方向(図の上下方向)の隠蔽模様幅の20%以上100%以下である高さの文字を判読不能にすることができる隠蔽模様の印刷模様となる印刷層を形成した。これ以外は、実施例1と同様であり、図2のようにマークした(塗膜を感圧転写した)文字上に、プラスチック着色による着色透明シートおよびインクジェット印刷による着色透明シートを重ねると、どちらでも目視不能な隠蔽模様となり、文字を読むことができなくなった。また、プラスチック字消し(株式会社シード製Rader)にて、マークを除去することができた。
【符号の説明】
【0070】
1 塗膜
2 補色
3 非補色
4 感圧転写テープ
5 基材テープ
6 保護層
7 印刷層
8 粘着層
9 印刷部分
10 印刷のない部分
11 点
12 空隙
13 塗膜転写具
14 筐体
15 転写ヘッド
16 繰出しリール
17 巻取りリール
18 ギア
19 ローレット形状
20 ブレード
21 テープ残量確認部
22 リール調整窓
23 筐体本体貫通部
24 被転写物
25 キャップ
26 ローラー
27 キャップ回動軸
28 着色透明シート
29 着色透明シート表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材テープ上に形成したベタでない模様のある着色透明な塗膜を感圧転写させる塗膜転写具と、着色透明シートとの組からなる学習具であり、塗膜は、基材テープから順に保護層、印刷層、粘着層からなり、印刷層は、着色透明シートの色に対して補色となる着色透明な色を有しており、感圧転写した模様のある着色透明な塗膜に着色透明シートを重ねると、目視不能な隠蔽模様となることを特徴とする学習具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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