学習理解度分析処理システム
【課題】数十人の少人数から数万人、数十万人といった規模の複数の受験者であってもこれに情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求め、所定の学習項目についての理解度を判断することのできる学習理解度分析処理システムを提供することにある。
【解決手段】問題文中から情報要素を抽出する抽出手段(S1)と、抽出された情報要素毎にこれを特徴づけるタームを選択してチェックボックスを作成するチェックボックス作成手段(S2)と、受験者の1の求解手続の記載においてタームの「有」「無」を判断するチェック手段(S3)と、受験者の1を特定するための受験者特定符号を付するとともに、「有」と判断された前記タームに対応するチェックボックスを特定するチェックボックス特定符号をこれに関連付けて情報群を作成する情報群作成手段(S4)と、複数の受験者の求解手続の記載に対して、チェック手段と情報群作成手段とを繰り返し行う手段(S5)と、情報群の類型を収集して統計処理する手段(S6)と、を含むことを特徴とする。
【解決手段】問題文中から情報要素を抽出する抽出手段(S1)と、抽出された情報要素毎にこれを特徴づけるタームを選択してチェックボックスを作成するチェックボックス作成手段(S2)と、受験者の1の求解手続の記載においてタームの「有」「無」を判断するチェック手段(S3)と、受験者の1を特定するための受験者特定符号を付するとともに、「有」と判断された前記タームに対応するチェックボックスを特定するチェックボックス特定符号をこれに関連付けて情報群を作成する情報群作成手段(S4)と、複数の受験者の求解手続の記載に対して、チェック手段と情報群作成手段とを繰り返し行う手段(S5)と、情報群の類型を収集して統計処理する手段(S6)と、を含むことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求め、所定の学習項目についての理解度を判断する学習理解度分析処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
能力検定試験によって受験者の能力を測定するためには採点者による採点毎のばらつきを排して客観性を担保することが要求される。特に、多数の受験者の採点を行わなければならないような能力検定試験では、複数の採点者の採点毎のばらつきについての頻度が増すため、採点の客観性の維持が非常に困難となる。そこで受験者に正解を含むいくつかの選択肢を与えてこの中から正解を選択させる多肢選択式試験が多く採用されている。かかる試験では、受験者はマークカードに解答を作成し、これを収集してマークカードリーダーにて受験者の選択した選択肢を読み取って採点及び集計処理を機械的に行うのである。すなわち、機械的に採点処理を行うことで、採点毎のばらつきを排して採点の客観性を担保することができるのである。
【0003】
一方で、このような多肢選択式の能力検定試験では問題作成者の選択肢の切り分け方に受験者の解答が拘束されてしまうため、多くの受験者の幅広い能力をきめ細かく測定することは困難である。特に、個々の受験者の能力のばらつきが大きいと予想されるような場合には、例えば、各種教育における学習理解度を細かく測定して問題点を分析しようとするような場合には、選択肢の切り分けが複雑となって分析が困難なのである。そこで一定の自由記述を含めた能力検定試験の採用が検討される。
【0004】
ところで、一定の自由記述を含めた能力検定試験における問題文の作成は、問うべき知識とその組み合わせを決めてその表現形式を決定する。これにより作題意図に基づいた採点基準が決定される。しかし、このようにして決定される採点基準は曖昧さを伴い、受験者の解答を同基準にあてはめて画一的に採点をすることが困難である。換言すれば同基準の適用について各採点者の解釈に委ねる部分を大としてしまうのである。その結果、採点毎のばらつきは非常に大きくなってしまうのである。
【0005】
特許文献1では、自由記述式の試験における受験者の解答を機械的に採点するための自動採点システムが開示されている。かかるシステムでは、受験者によって作成された自由記述を含む求解手続を言語解析して解答モデルを作成し、予め格納されている模範解答とこの解答モデルとを比較した上で正解の有無を判定するのである。解答及び模範解答に対してともに曖昧性を解消する手段を設けて、これらの曖昧性を解消することによって採点における客観性を維持しようとしているのである。
【0006】
また、特許文献2では、正答の一意に定まらない自由記述式の試験における受験者の解答を採点するための採点システムが開示されている。1の採点者の採点結果の修正をシステム上で行うことが可能となっている。すなわち、複数の採点者の間で採点結果が一致せず、採点の客観性に疑問が持たれるような場合にはこれを修正できるのである。つまり採点結果及び採点根拠を複数の採点者が共有して解答を再評価できるので、自らが行った主観的な採点結果にとらわれず、様々な視点から答案を再評価することができるのである。結果として、複数の採点者の適正な採点を行うことができると述べている。
【0007】
上記した特許文献1及び2に開示のシステムは、いずれも予め用意された模範解答と受験者の解答手続の記載との対比による採点を客観性を担保して行おうとするシステムである。つまり、対比における曖昧性を排除することで採点の客観性を担保しようとしているのである。
【0008】
一方、特許文献3では、項目反応理論を修正した部分得点モデルを採用して、採点の際に単なる正誤の2値だけでなく、複数の段階を有する部分得点としての評価も許容する試験システムを開示している。かかる試験システムでは、1人の受験者にn問の問題を出題し、出題されたn問の問題に対する受験者の反応から受験者の能力θを推定するのである。ここでは、1つの問題に対する採点毎のばらつきを小さくするための方法は開示されていない。
【特許文献1】特開2001−56634号公報
【特許文献2】特開2006−277086号公報
【特許文献3】特許第3645901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、数万人、数十万人といった規模の複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えて、これに対する求解手続の記載を求め所定の学習項目についての理解度を判断する学習理解度を分析する能力検定試験がある。かかる能力検定試験では、一連の求解手続の結果としての最終解答について採点するだけでなく、途中経過についても所定の学習項目の理解度を測定して分析する必要がある。すなわち、一連の求解手続の途中において間違いがあったとしても、その後の求解手続自体にミスがない場合には、その求解手続についての学習項目の理解を有していると分析できなければならないのである。つまり、多くの受験生の求解手続に対して、問題に対応して想定されている全ての学習項目の理解の有無について客観的に分析することが要求されるのである。
【0010】
ここで特許文献1に開示のシステムでは、求解手続の途中に間違いがあるとその後は模範解答とはもはや完全な一致はあり得ず、しかも解答及び模範解答に対してともに曖昧性を解消する手段を設けているから、その後の求解手続の途中経過については、所定の学習項目の理解度を測定し、分析することはできないのである。
【0011】
また特許文献2に開示のシステムでは、受験者数が多くなると最終解答のバリエーションが膨大となるため、複数の採点者の採点をすりあわせて最終解答を再評価することは困難となるのである。つまり、最終解答だけでなく求解手続の途中経過についてまで採点をすりあわせるべく、再評価を行うことは不可能なのである。
【0012】
つまり、予め用意された模範解答と受験者の解答手続の記載との対比による採点を客観性を担保して行おうとするシステムでは、数万人、数十万人といった規模の受験生の求解手続に対して、問題に対応して想定されている全ての学習項目の理解の有無について客観的に分析することはできないのである。
【0013】
本発明は上記したような点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的とするところは、数十人の少人数から数万人、数十万人といった規模の複数の受験者であっても、これに情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求め所定の学習項目についての理解度を客観的に判断することのできる学習理解度分析処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のシステムは、複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求めて受験者毎の所定の学習項目についての理解度を判断する学習理解度分析処理システムである。前記問題文中から前記情報要素を抽出する抽出手段と、抽出された前記情報要素毎にこれを特徴づけるタームを選択してチェックボックスを作成するチェックボックス作成手段と、前記受験者の1の前記求解手続の記載において前記タームの有無を判断するチェック手段と、前記受験者の1を特定するための受験者特定符号を付するとともに有と判断された前記タームに対応する前記チェックボックスを特定するチェックボックス特定符号を前記受験者特定符号と関連付けて情報群を作成する情報群作成手段と、複数の前記受験者の前記求解手続の記載に対して、前記チェック手段及び前記情報群作成手段を繰り返し行う手段と、前記情報群の類型を収集して統計処理を行う手段と、を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明は、予め用意された模範解答と受験者との解答手続の記載との対比により採点を行おうとするシステムではない。すなわち、問題作成時に決定された所定の学習項目に対応する情報要素と関連するチェックボックスによって所定の学習項目についての理解度を測定するのである。所定数の受験者の採点をあらかじめ行って模範解答のバリエーションを収集し解答手続の客観性を担保する必要もない。故に、数十人の少人数から数万人、数十万人といった規模の複数の受験者であっても、その求解手続から所定の学習項目についての理解度を客観的に判断することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の1つの実施例によるシステムは、複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求めて受験者毎の所定の学習項目についての理解度を判断する学習理解度分析処理システムである。複数の受験者は、数十人の少人数規模から数万人、数十万人といった大人数規模の複数の受験者であってもよい。
【0017】
まず、能力検定試験の如き、受験者の能力を測定する試験では、試験問題作成者は、問うべき知識とその組み合わせを決定して、これを表現する形式を定める。つまり、問題文はこの表現形式に沿った複数の情報要素を含むように作成されるのである。
【0018】
以下、図1を用いて、本発明の1つの実施例について説明する。
【0019】
本発明の1つの実施例のシステムにおける抽出手段(S1)では、上記したように作成される能力検定試験の問題文中から情報要素を抽出するのである。つまり、問題文を分節して得られた文毎に情報要素を抽出してもよい。また、抽出手段(S1)において、問題文を分析して間接的に表現された情報要素である「制約」や「条件」などを抽出する間接抽出手段を含んでいても良い。更に、問題文分析手段は、問題文全体から間接的に表現される情報要素として、最終的な解答を抽出する解答抽出手段を含んでいても良い。ここで抽出手段において抽出される情報要素は、間接抽出手段及び解答抽出手段で得られる情報要素を含めて、全て問題文の作成時において問題作成者によって必ず決定されているものである。故に、抽出手段S1は、典型的にはこれらを収集するのである。
【0020】
次に、チェックボックス(以下、「CB」と表記する。)作成手段では、抽出手段において抽出された情報要素毎にそのポイントを列挙するCBポイント抽出手段を含む。更に、CBポイント抽出手段によって抽出されたCBポイントを特徴づけるタームを選択してCBを作成するのである(S2)。このCBタームを基に受験者の求解手続の採点を行うのである。
【0021】
CBは問題文中の情報要素として表された問題作成者の問おうとする知識についてこれを更に明確に表現しようとするものである。よってCBを基に受験者の求解手続の採点を行うことで、複数の採点者が採点しても採点毎のばらつきを排して採点の客観性を担保することができるのである。すなわち後述するようなキーワードなどを用いた機械による採点が可能となるのである。しかも各CBは、問題作成者の問おうとする知識に直接に関連しているから、CBを基に受験者の求解手続の採点を行うことで、所定の学習項目についての理解度を客観的に測定し分析することが可能なのである。
【0022】
CBを基にした受験者の求解手続の採点では、まずCBチェック手段(S3)において、1人の受験者の求解手続の記載からCBの全てのタームについての「有」「無」、すなわちタームの内容が含まれているか含まれていないかを検索する。例えば、ターム毎に複数のキーワードを作成して、これらが求解手続の記載に含まれているかどうかを機械的に判断しても良い。かかる構成によれば、チェック手段を機械検索によって処理することができて、チェック手段を自動化しより素早く行うことが可能となるのである。
【0023】
また、タームの有無のいくつかを外部判断して、その結果を入力する入力手段を含んでいてもよい。かかる構成によれば、機械検索に併せて、多様な外部判断の結果、例えば、人的判断などを加えることができて、より詳細且つ多面的な判断が可能になるのである。
【0024】
次に、情報群作成手段(S4)では、受験者を特定するための受験者特定符号を付するとともに、「有」と判断されたタームに対応するCBを特定するCB特定符号を受験者特定符号と関連付けて情報群を作成する。
【0025】
以上、CBチェック手段(S3)及び情報群作成手段(S4)による処理を複数の受験者の求解手続の記載に対して繰り返し行ってデータベースを得るのである(S5)。上記したようにデータベースの作成は機械検索により自動処理することが可能であって、数万人、数十万人といった規模の複数の受験者であってもデータベースを素早く作成することが可能となるのである。
【0026】
次に、得られたデータベースから1の情報群におけるCB特定符号の類型を収集して必要に応じた統計処理をする(S6)。複数の受験者の求解手続から情報群の類型を収集、統計処理して所定の学習項目についての理解度を客観的に測定し分析することができるのである。
【0027】
例えば、所定の学習項目の理解度の有無に関して想定される想定求解手続の記載を作成して、上記したと同様に、この想定求解手続の記載においてもCBでタームの有無を検索するのである。つまり、想定求解手続の記載を特定するための想定求解特定符号を付するとともに、「有」と判断されたタームに対応するCBを特定するCB特定符号を想定求解特定符号に関連付けて情報群を作成するのである。このようにして得られた想定情報群と上記した情報群とを比較することで所定の学習項目の理解度の有無を明確に判断することができるのである。
【0028】
なお、上記した1つの実施例における手段及び処理において、CBポイントを細かく挙げてCBを作成することで、所定の学習項目への理解に対する個人の乖離度なども含めて判断することが可能なのである。
【0029】
以上、本実施例は、予め用意された模範解答と受験者との解答手続の記載との対比により採点を行おうとするシステムではない。すなわち、問題作成時に決定された所定の学習項目に対応する情報要素と関連するチェックボックスによって所定の学習項目についての理解度を測定するのである。所定数の受験者の採点をあらかじめ行って模範解答のバリエーションを収集し解答手続の客観性を担保する必要もない。故に、数十人の少人数から数万人、数十万人といった規模の複数の受験者であっても、その求解手続から所定の学習項目についての理解度を客観的に判断することができるのである。このようにして得られる情報は、詳細に分析、仕分けして教育などに生かすことができるのである。
【実施例】
【0030】
以下においては、1つの実施例について、図2乃至図11を使ってより詳細に説明する。
【0031】
まず、「任意の数がXであることを問題文中で指定した上で、これを用いた一元二次方程式を立式して、この方程式を解かせ解答を得られること」との学習項目の理解度を本システムで判断する場合の実施例について説明する。
【0032】
図2に示すように、問題作成者は、たまたま目にしたある月のカレンダー10を用いて問題の作成を考えたとする。この問題作成者は、学習項目中の、<1>任意の数がXであることを問題文中で指定する、<2>一元二次方程式を立式させる、<3>一元二次方程式を解かせる、<4>解答を得させる、の各項目について問題文中で表現することをまず考慮するのである。
【0033】
すなわち、図3に示すように、問題の前提となるカレンダー10を示しつつ(図2参照。なお図3では図示せず。)、これを受験者に確認するため、「ある月のカレンダーがある。」と問題文の最初で述べることを考慮するのである。その上で、「<1>任意の数がXであることを問題文中で指定する」ため、問題文中で「このカレンダーの中にある数字をXとする。」という一文を入れる。また、「<3>一元二次方程式を解かせる」ため、問題文中に「求める過程も書きなさい。」という一文を入れる。また、「<4>解答を得させる」ことを表現するまでもないが、これを明確にするために、「このカレンダーの中にある数Xを求めなさい。」との一文を問題文中に入れるのである。
【0034】
以上の後、「<2>一元二次方程式を立式させる」ための問題としての条件を考えるのである。
【0035】
図4に示すように、ここで問題作成者は、「<2>一元二次方程式を立式させる」上で、単に数字の列ではなくカレンダー10を用いた問題としての特徴を問題に取り込むことを考える。すなわち、カレンダー10から「<5>Xは1〜31の数字のみ」なのであるが、「Xの真下の数にXの左隣の数をかけて15を加えた数は、Xに16をかけて13を引いた数と等しくなる。」という条件を入れたのである。かかる問題文15からは、「Xの真下の数」がなければならないから、「<6>X=25〜31は除外」、また、「左隣の数」がなければならないから、「<7>日曜であるX=7,14,21,28は除外」という条件を問題文中に間接的に表現しているのである。
【0036】
以上の如く、図4に示す問題文15ができあがるのである。問題文15は1つの例であるが、全ての問題文の作成において、試験問題作成者は、問うべき知識とその組み合わせを決定して、これを表現する形式を定める。そして問題文はこの表現形式に沿った複数の情報要素を含むように作成されるのである。
【0037】
次に、このように作成された問題文15に対して、本発明の1つの実施例によるシステムを適用する。
【0038】
図5に示すように、問題文中から情報要素を抽出する手段(抽出手段)において、例えば、問題文をn1〜n5までの5つの文章に分節して、情報要素を抽出する。
【0039】
図6を併せて更に参照すると、n2からは「(a)任意の数がX」であることが抽出できる。n3からは、「{(Xの真下の数)に(Xの左隣の数)をかけて(15を加えた数)}は、{(X)に(16)をかけて(13)を引いた数}と等しくなる。」と更に分節できる。つまり、
「(b){(Xの真下の数)に(Xの左隣の数)をかけて(15を加えた数)}、よって、(X+7)*(X−1)+15
(c){(X)に(16)をかけて(13)を引いた数}、よって、X*16−13
(d)上記した(b)と(c)が一致するXを求める」
の4つの情報要素が抽出できるのである。
【0040】
更に、図7を併せて参照すると、図5のn1からは「カレンダー」であること、すなわち、カレンダーを前提の制約として、
「(a)1から31まで数字のみ
(b)真下の数がなければならず25から31以外の数字
(c)左があるので日曜以外の曜日の数字」
の3つが問題文15に解答する上での「制約」の情報要素となるのである。
【0041】
さらに、図8に示すように、求解手続は、方程式として(X+7)*(X−1)+15=X*16−13からX=3,7と導かれる。ここで上記したカレンダーの「制約」によりXは7は不適であって3だけとなる。
【0042】
以上が情報要素の抽出手段における処理であるが、情報要素はいずれも問題作成時に問題作成者によって決定されているものである。つまり、上記したように問題文15を分節等して抽出しても良いが、問題文15の作成者から情報として得てもよい。
【0043】
次に、図9に示すように、抽出された情報要素毎にチェックボックス(CB)ポイントを列挙するのである。すなわち、
「(a)「Xの真下の数にXの左隣の数をかけて15を加えた数」を立式できる。
(b)「Xに16をかけて13を引いた数」を立式できる。
(c)(X+7)*(X−1)+15=X*16−13の方程式を立式できる。
(d)式の変形に誤りがない。(分配法則、移項など誤りやすいポイントがある)
(e)課題の前提(カレンダー制約)を意識している。
(f)過程を説明として書けている。(立式の説明、式変形の途中過程の明示、前提条件からの解制約、結論の明示)」
となる。
【0044】
更に、図10に示すように、上記したCBポイントをより具体的に表したタームに置き換えてCBは作成される。すなわち、CBは、例えば、
「CB1 条件の解釈が
(X+7)*(X−1)+15
と出来ている。
CB2 条件の解釈が
X*16−13
と出来ている。
CB3 (X+7)*(X−1)+15=X*16−13
の式が出来ている。
CB4 (X−3)(X−7)=0
と式変形出来ている。
CB5 X=3,7と2つとも答えられている。
CB6 カレンダーの制約からX=3のみ答えとしている。
CB7 結論が明示出来ている。
CB8 式の変形に誤りがある。」
となるのである。
【0045】
このCBを基に受験者の求解手続の採点を行うのである。
【0046】
CBは問題文中の情報要素として表された問題作成者の問おうとする知識についてこれをより明確に表現しようとするものである。よってCBを基に受験者の求解手続の採点を行うことで複数の採点者の採点毎のばらつきを排して採点の客観性を担保することができるのである。しかも各CBは、問題作成者の問おうとする知識に直接に関連するから、CBを基に受験者の求解手続の採点を行うことで、所定の学習項目についての理解度を客観的に測定し分析することが可能なのである。
【0047】
次にCBを基に受験者の求解手続の採点を行う方法の実施例について図10及び図11を用いて説明する。
【0048】
まず、ある受験者が白紙の答案用紙を提出したような無回答の場合(これを類型0とする。)は、CB1乃至8のいずれにも当てはまらないのである。かかる場合を図10に示すCBに「CB0 その他」として追加する。すると、全ての受験者の求解手続は、CB0を加えた図10に示すCBの少なくともいずれか一にあてはまるのである。
【0049】
次に、ある受験者がある数XについてX=3と答えており、(X+7)*(X−1)+15=X*16−13を解いてこの解を求めている場合を類型1とする。これは、CB1,2,3,6を満たすのである。また、CBの4,5,7については満たす場合と満たさない場合があり得るが、CB8については満たす場合がないのである。なお、図11において、カッコ書きは満たす場合と満たさない場合があり得るが、列記されていないCBの数字は満たし得ないことを示している。このように、ある受験者の求解手続について、CBは具体的な内容を表現しているので採点者による採点毎のばらつきを排して採点の客観性を担保することができるのである。
【0050】
更に、ある受験者が(X+7)*(X−1)+15=X*16−13を解いて、X=3,7と答えている場合、これを類型2とする。この場合、少なくともCBの1,2,3,5を満たすのである。また、CBの4,7については満たす場合と満たさない場合があり得るのである。これ以外のCBは満たし得ない。
【0051】
更に、ある受験者が立式を途中で間違っていた場合、これを類型3とする。この場合は、少なくともCBの1,2,7のいずれかを満たすのである。これ以外のCBは満たし得ない。
【0052】
更に、ある受験者が(X+7)*(X−1)+15=X*16−13の立式は出来たものの式変形で間違いがある場合、これを類型4とする。この場合、CBの1,2,3,8を満たすのである。また、CBの7については満たす場合と満たさない場合があり得るのである。これ以外のCBは満たし得ない。
【0053】
すなわち、図11の如く、類型0〜4についてCBとの関係を客観的に求めることができるのである。
【0054】
ところで、図11において、例えば、CB1+2+3+4+5や、CB1+2+3+4+5+7は類型2に、すなわち、(X+7)*(X−1)+15=X*16−13を解いて、X=3,7と答えているか、これに近いことがわかるのである。また、例えば、CBの1,2,3を満たし、CBの7については満たす場合と満たさない場合があるという類型9’は、類型4に近く、式の変形まで出来ていながら、解答を誤ったことがわかるのである。かかるようなCBを用いれば、受験者間の理解項目の連関などを解析することができて、例えば、各種教育における問題点の抽出などが容易且つ明確にできるのである。
【0055】
なお、上記した実施例において、CBは必要に応じて更に細かく分けることもできる。これによれば、類型0〜4に属さなかったその他に属する類型、すなわちCB0となる類型について、これを更にいくつかの類型に分けることができるのである。従来の予め用意された模範解答と受験者との解答手続の記載との対比により採点を行おうとするシステムでは、全受験者の3割近いサンプリングを行ったとしても、分類不能な類型が十数%存在していたが、本実施例のシステムを用いて類型分けすれば、数%以下にこれを抑えることが出来るのである。つまり、CBを細かく設定することによって、類型を更に細かく分類できて、所定の学習項目についての理解度を客観的に更に細かく測定し分析することができるのである。
【0056】
上記した実施例は、予め用意された模範解答と受験者の解答手続の記載との対比により採点を行おうとするシステムではない。すなわち、問題作成時に決定された所定の学習項目に対応する情報要素に関連するチェックボックスで所定の学習項目についての理解度を測定するのである。故に、数十人の少人数から数万人、数十万人といった規模の複数の受験者であっても、その求解手続から所定の学習項目についての理解度を客観的に判断することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の1つの実施例のシステムの図である。
【図2】本発明の1つの実施例で使用される問題文の一部である。
【図3】本発明の1つの実施例で使用される問題文の一部である。
【図4】本発明の1つの実施例で使用される問題文である。
【図5】本発明の1つの実施例のシステムの手段において行われる処理の一部を示すものである。
【図6】本発明の1つの実施例のシステムの手段において行われる処理の一部を示すものである。
【図7】本発明の1つの実施例のシステムの手段において行われる処理の一部を示すものである。
【図8】本発明の1つの実施例のシステムの手段において行われる処理の一部を示すものである。
【図9】本発明の1つの実施例のシステムの手段において行われる処理の一部を示すものである。
【図10】本発明の1つの実施例のシステムの手段において行われる処理の一部を示すものである。
【図11】本発明の1つの実施例のシステムの手段において行われる処理の一部を示すものである。
【符号の説明】
【0058】
10 カレンダー
15 問題文
CB チェックボックス
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求め、所定の学習項目についての理解度を判断する学習理解度分析処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
能力検定試験によって受験者の能力を測定するためには採点者による採点毎のばらつきを排して客観性を担保することが要求される。特に、多数の受験者の採点を行わなければならないような能力検定試験では、複数の採点者の採点毎のばらつきについての頻度が増すため、採点の客観性の維持が非常に困難となる。そこで受験者に正解を含むいくつかの選択肢を与えてこの中から正解を選択させる多肢選択式試験が多く採用されている。かかる試験では、受験者はマークカードに解答を作成し、これを収集してマークカードリーダーにて受験者の選択した選択肢を読み取って採点及び集計処理を機械的に行うのである。すなわち、機械的に採点処理を行うことで、採点毎のばらつきを排して採点の客観性を担保することができるのである。
【0003】
一方で、このような多肢選択式の能力検定試験では問題作成者の選択肢の切り分け方に受験者の解答が拘束されてしまうため、多くの受験者の幅広い能力をきめ細かく測定することは困難である。特に、個々の受験者の能力のばらつきが大きいと予想されるような場合には、例えば、各種教育における学習理解度を細かく測定して問題点を分析しようとするような場合には、選択肢の切り分けが複雑となって分析が困難なのである。そこで一定の自由記述を含めた能力検定試験の採用が検討される。
【0004】
ところで、一定の自由記述を含めた能力検定試験における問題文の作成は、問うべき知識とその組み合わせを決めてその表現形式を決定する。これにより作題意図に基づいた採点基準が決定される。しかし、このようにして決定される採点基準は曖昧さを伴い、受験者の解答を同基準にあてはめて画一的に採点をすることが困難である。換言すれば同基準の適用について各採点者の解釈に委ねる部分を大としてしまうのである。その結果、採点毎のばらつきは非常に大きくなってしまうのである。
【0005】
特許文献1では、自由記述式の試験における受験者の解答を機械的に採点するための自動採点システムが開示されている。かかるシステムでは、受験者によって作成された自由記述を含む求解手続を言語解析して解答モデルを作成し、予め格納されている模範解答とこの解答モデルとを比較した上で正解の有無を判定するのである。解答及び模範解答に対してともに曖昧性を解消する手段を設けて、これらの曖昧性を解消することによって採点における客観性を維持しようとしているのである。
【0006】
また、特許文献2では、正答の一意に定まらない自由記述式の試験における受験者の解答を採点するための採点システムが開示されている。1の採点者の採点結果の修正をシステム上で行うことが可能となっている。すなわち、複数の採点者の間で採点結果が一致せず、採点の客観性に疑問が持たれるような場合にはこれを修正できるのである。つまり採点結果及び採点根拠を複数の採点者が共有して解答を再評価できるので、自らが行った主観的な採点結果にとらわれず、様々な視点から答案を再評価することができるのである。結果として、複数の採点者の適正な採点を行うことができると述べている。
【0007】
上記した特許文献1及び2に開示のシステムは、いずれも予め用意された模範解答と受験者の解答手続の記載との対比による採点を客観性を担保して行おうとするシステムである。つまり、対比における曖昧性を排除することで採点の客観性を担保しようとしているのである。
【0008】
一方、特許文献3では、項目反応理論を修正した部分得点モデルを採用して、採点の際に単なる正誤の2値だけでなく、複数の段階を有する部分得点としての評価も許容する試験システムを開示している。かかる試験システムでは、1人の受験者にn問の問題を出題し、出題されたn問の問題に対する受験者の反応から受験者の能力θを推定するのである。ここでは、1つの問題に対する採点毎のばらつきを小さくするための方法は開示されていない。
【特許文献1】特開2001−56634号公報
【特許文献2】特開2006−277086号公報
【特許文献3】特許第3645901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、数万人、数十万人といった規模の複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えて、これに対する求解手続の記載を求め所定の学習項目についての理解度を判断する学習理解度を分析する能力検定試験がある。かかる能力検定試験では、一連の求解手続の結果としての最終解答について採点するだけでなく、途中経過についても所定の学習項目の理解度を測定して分析する必要がある。すなわち、一連の求解手続の途中において間違いがあったとしても、その後の求解手続自体にミスがない場合には、その求解手続についての学習項目の理解を有していると分析できなければならないのである。つまり、多くの受験生の求解手続に対して、問題に対応して想定されている全ての学習項目の理解の有無について客観的に分析することが要求されるのである。
【0010】
ここで特許文献1に開示のシステムでは、求解手続の途中に間違いがあるとその後は模範解答とはもはや完全な一致はあり得ず、しかも解答及び模範解答に対してともに曖昧性を解消する手段を設けているから、その後の求解手続の途中経過については、所定の学習項目の理解度を測定し、分析することはできないのである。
【0011】
また特許文献2に開示のシステムでは、受験者数が多くなると最終解答のバリエーションが膨大となるため、複数の採点者の採点をすりあわせて最終解答を再評価することは困難となるのである。つまり、最終解答だけでなく求解手続の途中経過についてまで採点をすりあわせるべく、再評価を行うことは不可能なのである。
【0012】
つまり、予め用意された模範解答と受験者の解答手続の記載との対比による採点を客観性を担保して行おうとするシステムでは、数万人、数十万人といった規模の受験生の求解手続に対して、問題に対応して想定されている全ての学習項目の理解の有無について客観的に分析することはできないのである。
【0013】
本発明は上記したような点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的とするところは、数十人の少人数から数万人、数十万人といった規模の複数の受験者であっても、これに情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求め所定の学習項目についての理解度を客観的に判断することのできる学習理解度分析処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のシステムは、複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求めて受験者毎の所定の学習項目についての理解度を判断する学習理解度分析処理システムである。前記問題文中から前記情報要素を抽出する抽出手段と、抽出された前記情報要素毎にこれを特徴づけるタームを選択してチェックボックスを作成するチェックボックス作成手段と、前記受験者の1の前記求解手続の記載において前記タームの有無を判断するチェック手段と、前記受験者の1を特定するための受験者特定符号を付するとともに有と判断された前記タームに対応する前記チェックボックスを特定するチェックボックス特定符号を前記受験者特定符号と関連付けて情報群を作成する情報群作成手段と、複数の前記受験者の前記求解手続の記載に対して、前記チェック手段及び前記情報群作成手段を繰り返し行う手段と、前記情報群の類型を収集して統計処理を行う手段と、を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明は、予め用意された模範解答と受験者との解答手続の記載との対比により採点を行おうとするシステムではない。すなわち、問題作成時に決定された所定の学習項目に対応する情報要素と関連するチェックボックスによって所定の学習項目についての理解度を測定するのである。所定数の受験者の採点をあらかじめ行って模範解答のバリエーションを収集し解答手続の客観性を担保する必要もない。故に、数十人の少人数から数万人、数十万人といった規模の複数の受験者であっても、その求解手続から所定の学習項目についての理解度を客観的に判断することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の1つの実施例によるシステムは、複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求めて受験者毎の所定の学習項目についての理解度を判断する学習理解度分析処理システムである。複数の受験者は、数十人の少人数規模から数万人、数十万人といった大人数規模の複数の受験者であってもよい。
【0017】
まず、能力検定試験の如き、受験者の能力を測定する試験では、試験問題作成者は、問うべき知識とその組み合わせを決定して、これを表現する形式を定める。つまり、問題文はこの表現形式に沿った複数の情報要素を含むように作成されるのである。
【0018】
以下、図1を用いて、本発明の1つの実施例について説明する。
【0019】
本発明の1つの実施例のシステムにおける抽出手段(S1)では、上記したように作成される能力検定試験の問題文中から情報要素を抽出するのである。つまり、問題文を分節して得られた文毎に情報要素を抽出してもよい。また、抽出手段(S1)において、問題文を分析して間接的に表現された情報要素である「制約」や「条件」などを抽出する間接抽出手段を含んでいても良い。更に、問題文分析手段は、問題文全体から間接的に表現される情報要素として、最終的な解答を抽出する解答抽出手段を含んでいても良い。ここで抽出手段において抽出される情報要素は、間接抽出手段及び解答抽出手段で得られる情報要素を含めて、全て問題文の作成時において問題作成者によって必ず決定されているものである。故に、抽出手段S1は、典型的にはこれらを収集するのである。
【0020】
次に、チェックボックス(以下、「CB」と表記する。)作成手段では、抽出手段において抽出された情報要素毎にそのポイントを列挙するCBポイント抽出手段を含む。更に、CBポイント抽出手段によって抽出されたCBポイントを特徴づけるタームを選択してCBを作成するのである(S2)。このCBタームを基に受験者の求解手続の採点を行うのである。
【0021】
CBは問題文中の情報要素として表された問題作成者の問おうとする知識についてこれを更に明確に表現しようとするものである。よってCBを基に受験者の求解手続の採点を行うことで、複数の採点者が採点しても採点毎のばらつきを排して採点の客観性を担保することができるのである。すなわち後述するようなキーワードなどを用いた機械による採点が可能となるのである。しかも各CBは、問題作成者の問おうとする知識に直接に関連しているから、CBを基に受験者の求解手続の採点を行うことで、所定の学習項目についての理解度を客観的に測定し分析することが可能なのである。
【0022】
CBを基にした受験者の求解手続の採点では、まずCBチェック手段(S3)において、1人の受験者の求解手続の記載からCBの全てのタームについての「有」「無」、すなわちタームの内容が含まれているか含まれていないかを検索する。例えば、ターム毎に複数のキーワードを作成して、これらが求解手続の記載に含まれているかどうかを機械的に判断しても良い。かかる構成によれば、チェック手段を機械検索によって処理することができて、チェック手段を自動化しより素早く行うことが可能となるのである。
【0023】
また、タームの有無のいくつかを外部判断して、その結果を入力する入力手段を含んでいてもよい。かかる構成によれば、機械検索に併せて、多様な外部判断の結果、例えば、人的判断などを加えることができて、より詳細且つ多面的な判断が可能になるのである。
【0024】
次に、情報群作成手段(S4)では、受験者を特定するための受験者特定符号を付するとともに、「有」と判断されたタームに対応するCBを特定するCB特定符号を受験者特定符号と関連付けて情報群を作成する。
【0025】
以上、CBチェック手段(S3)及び情報群作成手段(S4)による処理を複数の受験者の求解手続の記載に対して繰り返し行ってデータベースを得るのである(S5)。上記したようにデータベースの作成は機械検索により自動処理することが可能であって、数万人、数十万人といった規模の複数の受験者であってもデータベースを素早く作成することが可能となるのである。
【0026】
次に、得られたデータベースから1の情報群におけるCB特定符号の類型を収集して必要に応じた統計処理をする(S6)。複数の受験者の求解手続から情報群の類型を収集、統計処理して所定の学習項目についての理解度を客観的に測定し分析することができるのである。
【0027】
例えば、所定の学習項目の理解度の有無に関して想定される想定求解手続の記載を作成して、上記したと同様に、この想定求解手続の記載においてもCBでタームの有無を検索するのである。つまり、想定求解手続の記載を特定するための想定求解特定符号を付するとともに、「有」と判断されたタームに対応するCBを特定するCB特定符号を想定求解特定符号に関連付けて情報群を作成するのである。このようにして得られた想定情報群と上記した情報群とを比較することで所定の学習項目の理解度の有無を明確に判断することができるのである。
【0028】
なお、上記した1つの実施例における手段及び処理において、CBポイントを細かく挙げてCBを作成することで、所定の学習項目への理解に対する個人の乖離度なども含めて判断することが可能なのである。
【0029】
以上、本実施例は、予め用意された模範解答と受験者との解答手続の記載との対比により採点を行おうとするシステムではない。すなわち、問題作成時に決定された所定の学習項目に対応する情報要素と関連するチェックボックスによって所定の学習項目についての理解度を測定するのである。所定数の受験者の採点をあらかじめ行って模範解答のバリエーションを収集し解答手続の客観性を担保する必要もない。故に、数十人の少人数から数万人、数十万人といった規模の複数の受験者であっても、その求解手続から所定の学習項目についての理解度を客観的に判断することができるのである。このようにして得られる情報は、詳細に分析、仕分けして教育などに生かすことができるのである。
【実施例】
【0030】
以下においては、1つの実施例について、図2乃至図11を使ってより詳細に説明する。
【0031】
まず、「任意の数がXであることを問題文中で指定した上で、これを用いた一元二次方程式を立式して、この方程式を解かせ解答を得られること」との学習項目の理解度を本システムで判断する場合の実施例について説明する。
【0032】
図2に示すように、問題作成者は、たまたま目にしたある月のカレンダー10を用いて問題の作成を考えたとする。この問題作成者は、学習項目中の、<1>任意の数がXであることを問題文中で指定する、<2>一元二次方程式を立式させる、<3>一元二次方程式を解かせる、<4>解答を得させる、の各項目について問題文中で表現することをまず考慮するのである。
【0033】
すなわち、図3に示すように、問題の前提となるカレンダー10を示しつつ(図2参照。なお図3では図示せず。)、これを受験者に確認するため、「ある月のカレンダーがある。」と問題文の最初で述べることを考慮するのである。その上で、「<1>任意の数がXであることを問題文中で指定する」ため、問題文中で「このカレンダーの中にある数字をXとする。」という一文を入れる。また、「<3>一元二次方程式を解かせる」ため、問題文中に「求める過程も書きなさい。」という一文を入れる。また、「<4>解答を得させる」ことを表現するまでもないが、これを明確にするために、「このカレンダーの中にある数Xを求めなさい。」との一文を問題文中に入れるのである。
【0034】
以上の後、「<2>一元二次方程式を立式させる」ための問題としての条件を考えるのである。
【0035】
図4に示すように、ここで問題作成者は、「<2>一元二次方程式を立式させる」上で、単に数字の列ではなくカレンダー10を用いた問題としての特徴を問題に取り込むことを考える。すなわち、カレンダー10から「<5>Xは1〜31の数字のみ」なのであるが、「Xの真下の数にXの左隣の数をかけて15を加えた数は、Xに16をかけて13を引いた数と等しくなる。」という条件を入れたのである。かかる問題文15からは、「Xの真下の数」がなければならないから、「<6>X=25〜31は除外」、また、「左隣の数」がなければならないから、「<7>日曜であるX=7,14,21,28は除外」という条件を問題文中に間接的に表現しているのである。
【0036】
以上の如く、図4に示す問題文15ができあがるのである。問題文15は1つの例であるが、全ての問題文の作成において、試験問題作成者は、問うべき知識とその組み合わせを決定して、これを表現する形式を定める。そして問題文はこの表現形式に沿った複数の情報要素を含むように作成されるのである。
【0037】
次に、このように作成された問題文15に対して、本発明の1つの実施例によるシステムを適用する。
【0038】
図5に示すように、問題文中から情報要素を抽出する手段(抽出手段)において、例えば、問題文をn1〜n5までの5つの文章に分節して、情報要素を抽出する。
【0039】
図6を併せて更に参照すると、n2からは「(a)任意の数がX」であることが抽出できる。n3からは、「{(Xの真下の数)に(Xの左隣の数)をかけて(15を加えた数)}は、{(X)に(16)をかけて(13)を引いた数}と等しくなる。」と更に分節できる。つまり、
「(b){(Xの真下の数)に(Xの左隣の数)をかけて(15を加えた数)}、よって、(X+7)*(X−1)+15
(c){(X)に(16)をかけて(13)を引いた数}、よって、X*16−13
(d)上記した(b)と(c)が一致するXを求める」
の4つの情報要素が抽出できるのである。
【0040】
更に、図7を併せて参照すると、図5のn1からは「カレンダー」であること、すなわち、カレンダーを前提の制約として、
「(a)1から31まで数字のみ
(b)真下の数がなければならず25から31以外の数字
(c)左があるので日曜以外の曜日の数字」
の3つが問題文15に解答する上での「制約」の情報要素となるのである。
【0041】
さらに、図8に示すように、求解手続は、方程式として(X+7)*(X−1)+15=X*16−13からX=3,7と導かれる。ここで上記したカレンダーの「制約」によりXは7は不適であって3だけとなる。
【0042】
以上が情報要素の抽出手段における処理であるが、情報要素はいずれも問題作成時に問題作成者によって決定されているものである。つまり、上記したように問題文15を分節等して抽出しても良いが、問題文15の作成者から情報として得てもよい。
【0043】
次に、図9に示すように、抽出された情報要素毎にチェックボックス(CB)ポイントを列挙するのである。すなわち、
「(a)「Xの真下の数にXの左隣の数をかけて15を加えた数」を立式できる。
(b)「Xに16をかけて13を引いた数」を立式できる。
(c)(X+7)*(X−1)+15=X*16−13の方程式を立式できる。
(d)式の変形に誤りがない。(分配法則、移項など誤りやすいポイントがある)
(e)課題の前提(カレンダー制約)を意識している。
(f)過程を説明として書けている。(立式の説明、式変形の途中過程の明示、前提条件からの解制約、結論の明示)」
となる。
【0044】
更に、図10に示すように、上記したCBポイントをより具体的に表したタームに置き換えてCBは作成される。すなわち、CBは、例えば、
「CB1 条件の解釈が
(X+7)*(X−1)+15
と出来ている。
CB2 条件の解釈が
X*16−13
と出来ている。
CB3 (X+7)*(X−1)+15=X*16−13
の式が出来ている。
CB4 (X−3)(X−7)=0
と式変形出来ている。
CB5 X=3,7と2つとも答えられている。
CB6 カレンダーの制約からX=3のみ答えとしている。
CB7 結論が明示出来ている。
CB8 式の変形に誤りがある。」
となるのである。
【0045】
このCBを基に受験者の求解手続の採点を行うのである。
【0046】
CBは問題文中の情報要素として表された問題作成者の問おうとする知識についてこれをより明確に表現しようとするものである。よってCBを基に受験者の求解手続の採点を行うことで複数の採点者の採点毎のばらつきを排して採点の客観性を担保することができるのである。しかも各CBは、問題作成者の問おうとする知識に直接に関連するから、CBを基に受験者の求解手続の採点を行うことで、所定の学習項目についての理解度を客観的に測定し分析することが可能なのである。
【0047】
次にCBを基に受験者の求解手続の採点を行う方法の実施例について図10及び図11を用いて説明する。
【0048】
まず、ある受験者が白紙の答案用紙を提出したような無回答の場合(これを類型0とする。)は、CB1乃至8のいずれにも当てはまらないのである。かかる場合を図10に示すCBに「CB0 その他」として追加する。すると、全ての受験者の求解手続は、CB0を加えた図10に示すCBの少なくともいずれか一にあてはまるのである。
【0049】
次に、ある受験者がある数XについてX=3と答えており、(X+7)*(X−1)+15=X*16−13を解いてこの解を求めている場合を類型1とする。これは、CB1,2,3,6を満たすのである。また、CBの4,5,7については満たす場合と満たさない場合があり得るが、CB8については満たす場合がないのである。なお、図11において、カッコ書きは満たす場合と満たさない場合があり得るが、列記されていないCBの数字は満たし得ないことを示している。このように、ある受験者の求解手続について、CBは具体的な内容を表現しているので採点者による採点毎のばらつきを排して採点の客観性を担保することができるのである。
【0050】
更に、ある受験者が(X+7)*(X−1)+15=X*16−13を解いて、X=3,7と答えている場合、これを類型2とする。この場合、少なくともCBの1,2,3,5を満たすのである。また、CBの4,7については満たす場合と満たさない場合があり得るのである。これ以外のCBは満たし得ない。
【0051】
更に、ある受験者が立式を途中で間違っていた場合、これを類型3とする。この場合は、少なくともCBの1,2,7のいずれかを満たすのである。これ以外のCBは満たし得ない。
【0052】
更に、ある受験者が(X+7)*(X−1)+15=X*16−13の立式は出来たものの式変形で間違いがある場合、これを類型4とする。この場合、CBの1,2,3,8を満たすのである。また、CBの7については満たす場合と満たさない場合があり得るのである。これ以外のCBは満たし得ない。
【0053】
すなわち、図11の如く、類型0〜4についてCBとの関係を客観的に求めることができるのである。
【0054】
ところで、図11において、例えば、CB1+2+3+4+5や、CB1+2+3+4+5+7は類型2に、すなわち、(X+7)*(X−1)+15=X*16−13を解いて、X=3,7と答えているか、これに近いことがわかるのである。また、例えば、CBの1,2,3を満たし、CBの7については満たす場合と満たさない場合があるという類型9’は、類型4に近く、式の変形まで出来ていながら、解答を誤ったことがわかるのである。かかるようなCBを用いれば、受験者間の理解項目の連関などを解析することができて、例えば、各種教育における問題点の抽出などが容易且つ明確にできるのである。
【0055】
なお、上記した実施例において、CBは必要に応じて更に細かく分けることもできる。これによれば、類型0〜4に属さなかったその他に属する類型、すなわちCB0となる類型について、これを更にいくつかの類型に分けることができるのである。従来の予め用意された模範解答と受験者との解答手続の記載との対比により採点を行おうとするシステムでは、全受験者の3割近いサンプリングを行ったとしても、分類不能な類型が十数%存在していたが、本実施例のシステムを用いて類型分けすれば、数%以下にこれを抑えることが出来るのである。つまり、CBを細かく設定することによって、類型を更に細かく分類できて、所定の学習項目についての理解度を客観的に更に細かく測定し分析することができるのである。
【0056】
上記した実施例は、予め用意された模範解答と受験者の解答手続の記載との対比により採点を行おうとするシステムではない。すなわち、問題作成時に決定された所定の学習項目に対応する情報要素に関連するチェックボックスで所定の学習項目についての理解度を測定するのである。故に、数十人の少人数から数万人、数十万人といった規模の複数の受験者であっても、その求解手続から所定の学習項目についての理解度を客観的に判断することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の1つの実施例のシステムの図である。
【図2】本発明の1つの実施例で使用される問題文の一部である。
【図3】本発明の1つの実施例で使用される問題文の一部である。
【図4】本発明の1つの実施例で使用される問題文である。
【図5】本発明の1つの実施例のシステムの手段において行われる処理の一部を示すものである。
【図6】本発明の1つの実施例のシステムの手段において行われる処理の一部を示すものである。
【図7】本発明の1つの実施例のシステムの手段において行われる処理の一部を示すものである。
【図8】本発明の1つの実施例のシステムの手段において行われる処理の一部を示すものである。
【図9】本発明の1つの実施例のシステムの手段において行われる処理の一部を示すものである。
【図10】本発明の1つの実施例のシステムの手段において行われる処理の一部を示すものである。
【図11】本発明の1つの実施例のシステムの手段において行われる処理の一部を示すものである。
【符号の説明】
【0058】
10 カレンダー
15 問題文
CB チェックボックス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求めて受験者毎の所定の学習項目についての理解度を判断する学習理解度分析処理システムであって、
前記問題文中から前記情報要素を抽出する抽出手段と、
抽出された前記情報要素毎にこれを特徴づけるタームを選択してチェックボックスを作成するチェックボックス作成手段と、
前記受験者の1の前記求解手続の記載において前記タームの有無を判断するチェック手段と、
前記受験者の1を特定するための受験者特定符号を付するとともに有と判断された前記タームに対応する前記チェックボックスを特定するチェックボックス特定符号を前記受験者特定符号と関連付けて情報群を作成する情報群作成手段と、
複数の前記受験者の前記求解手続の記載に対して、前記チェック手段及び前記情報群作成手段を繰り返し行う手段と、
前記情報群の類型を収集して統計処理を行う手段と、を含むことを特徴とする学習理解度分析処理システム。
【請求項2】
前記チェックボックス作成手段は、前記所定の学習項目を特徴づけるタームを更に追加する手段を含むことを特徴とする請求項1記載の学習理解度分析処理システム。
【請求項3】
前記チェックボックス作成手段は前記タームに関連するキーワードを作成する手段を含み、前記チェック手段は前記求解手続の記載において前記キーワードの有無を判断して前記タームの有無を判断する手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の学習理解度分析処理システム。
【請求項4】
前記問題文の一部を前記キーワードに割り当てることを特徴とする請求項3記載の学習理解度分析処理システム。
【請求項5】
前記問題文の最終解答を前記キーワードに割り当てることを特徴とする請求項4記載の学習理解度分析処理システム。
【請求項1】
複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求めて受験者毎の所定の学習項目についての理解度を判断する学習理解度分析処理システムであって、
前記問題文中から前記情報要素を抽出する抽出手段と、
抽出された前記情報要素毎にこれを特徴づけるタームを選択してチェックボックスを作成するチェックボックス作成手段と、
前記受験者の1の前記求解手続の記載において前記タームの有無を判断するチェック手段と、
前記受験者の1を特定するための受験者特定符号を付するとともに有と判断された前記タームに対応する前記チェックボックスを特定するチェックボックス特定符号を前記受験者特定符号と関連付けて情報群を作成する情報群作成手段と、
複数の前記受験者の前記求解手続の記載に対して、前記チェック手段及び前記情報群作成手段を繰り返し行う手段と、
前記情報群の類型を収集して統計処理を行う手段と、を含むことを特徴とする学習理解度分析処理システム。
【請求項2】
前記チェックボックス作成手段は、前記所定の学習項目を特徴づけるタームを更に追加する手段を含むことを特徴とする請求項1記載の学習理解度分析処理システム。
【請求項3】
前記チェックボックス作成手段は前記タームに関連するキーワードを作成する手段を含み、前記チェック手段は前記求解手続の記載において前記キーワードの有無を判断して前記タームの有無を判断する手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の学習理解度分析処理システム。
【請求項4】
前記問題文の一部を前記キーワードに割り当てることを特徴とする請求項3記載の学習理解度分析処理システム。
【請求項5】
前記問題文の最終解答を前記キーワードに割り当てることを特徴とする請求項4記載の学習理解度分析処理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−103890(P2009−103890A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275126(P2007−275126)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(502194735)株式会社教育測定研究所 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(502194735)株式会社教育測定研究所 (10)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]