説明

宅地地盤補強工法選択システム

【課題】宅地地盤に合った最適な補強工法を自動的に選択することが可能な地盤補強工法の選択システムを提供する。
【解決手段】工法選択システムは、制御装置であるコンピュータ、キーボート等からなる入力手段、液晶ディスプレイ、プリンタ等からなる出力手段等によって構成されている。そして、入力手段によって入力された地盤強度の測定試験の結果から、所定の複数の深度における地盤の強度値を読み取り、それらの強度値に基づいて記憶手段に記憶されている補強工法の中の一つを選択するとともに、その選択された補強工法の種別を出力手段によって出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宅地地盤に適した補強工法を自動的に選択するための工法選択システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱な宅地地盤を補強するための工事方法として、地盤の表層を改良する表層改良工法(浅層地盤改良工法)、地盤中に強度の高い柱状物を形成する柱状改良工法(深層地盤改良工法)や、堅固な支持地盤まで至る小径の鋼管杭を地盤中に複数埋設し、その鋼管杭により荷重を支持地盤で直接的に支える鋼管杭埋設工法等が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平2003−3462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、宅地地盤にどの種類の補強工法による工事を施すかについては、補強工事業者の経験と勘に頼るところが大きく、必ずしも、宅地地盤に合った最適な工事を施しているとは言えなかった。それゆえ、宅地地盤に合った最適な補強工法を選択し得るシステムの構築が望まれていたが、そのようなシステムはこれまで存在しなかった。
【0005】
本発明の目的は、上記従来の補強工法の選択における問題点を解消し、宅地地盤の状態に合った最適な補強工法を自動的に選択することが可能な地盤補強工法の選択システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる本発明の内、請求項1に記載された発明は、宅地地盤に適した補強工法を選択するための宅地地盤補強工法選択システムであって、予め実施された地盤強度の測定試験の結果を入力するための入力手段と、地盤強度を増加させる各種の補強工法の種別を記憶した記憶手段と、入力手段によって入力された地盤強度の測定試験の結果から、所定の深度における宅地地盤の強度値に基づいて、前記記憶手段に記憶されている補強工法の中の一つを選び出す補強方法選択手段と、補強工法選択手段によって選択された補強工法の種別を出力する出力手段とを有することを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、選択された補強工法の種別を出力した後に、その選択された補強工法を採用するか否かの問い合わせを実行し、前記入力手段により採用する旨の入力があった後には、前記出力手段により、保険による一定期間の保証が可能である旨を出力することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の工法選択システムは、地盤強度の測定試験の結果から求められる所定の深度における宅地地盤の強度値に基づいて補強工法を選び出すものであるため、補強工事を施す宅地地盤に適した補強工法を容易に選択することができる。
【0009】
請求項2の工法選択システムは、選択された補強工法を採用する旨の入力がなされた場合に、保険による一定期間の保証が可能である旨が出力されるため、補強工事依頼者に工事後の宅地地盤に対する安心感を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る工法選択システムの一実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は、工法選択システムの構成を示すブロック図であり、工法選択システム1は、制御装置であるコンピュータ2、キーボート等からなる入力手段3、液晶ディスプレイ、プリンタ等からなる出力手段4等によって構成されている。コンピュータ2には、演算手段であるCPU5、およびROM、RAM等からなる記憶手段6等が内蔵されており、CPU5は、インターフェイス7を介して、入力端子8、出力端子9等と接続されている。そして、コンピュータ2は、それらの入力端子8、出力端子9を介して、入力手段3、出力手段4と接続された状態になっている。
【0011】
上記の如く構成された工法選択システム1は、記憶手段に記憶されている「工法選択プログラム」にしたがって、補強工事が施工される宅地地盤に適した補強工法を選択する。図2は、「工法選択プログラム」の作動内容を示すフローチャートであり、かかる「工法選択プログラム」においては、ステップ(以下、単にSという)1で、事前に行われた地盤強度の測定試験(たとえば、スウェーデン式サウンディング試験)の結果が入力されたか否か判断され、“YES”と判断された場合には、S2で、その試験結果から、所定の複数の深度(たとえば、深度0.5m〜10.0mまでにおける0.25m毎の深度)における地盤の強度(N値)が読み取られる。しかる後、S3で、S2における所定深度毎の強度の読み取り結果に基づいて、深度2.0mまでにN=10以上の硬い層(厚さ1m以上)が存在するか否か判断される。
【0012】
そして、S3で“YES”と判断された場合(深度2.0mまでに硬い層が存在すると判断された場合)には、S4で、宅地地盤に適した補強工事として表層改良工法を選択し、S8で、出力手段4によって、表層改良工法が選択された旨を表示する。
【0013】
一方、S3で“NO”と判断された場合(硬い層が深度2.0mまでに存在しないと判断された場合)には、S5で、S2における所定深度毎の強度の読み取り結果に基づいて、深度6.0mまでにN=10以上の硬い層(厚さ1m以上)が存在するか否か判断される。
【0014】
そして、S5で“YES”と判断された場合(深度6.0mまでに硬い層が存在すると判断された場合)には、S6で、宅地地盤に適した補強工事として柱状改良工法を選択し、S8で、出力手段4によって、柱状改良工法が選択された旨を表示する。
【0015】
一方、S5で“NO”と判断された場合(深度6.0mまでに硬い層が存在しないと判断された場合)には、S7で、宅地地盤に適した補強工事として鋼管杭埋設工法を選択し、S8で、出力手段4によって、鋼管杭埋設工法が選択された旨を表示する。
【0016】
上記の如く、S8で選択された補強工法の種別を表示した後には、S9で、出力手段4によって、選択された補強工法を採用するか否かを問い合わせる旨を表示する。かかる問い合わせの表示が実行された後には、ユーザーは、入力手段3により、その補強工法を採用する旨を入力することが可能となる。
【0017】
S10では、補強工法を採用する旨が所定時間内に入力されたか否か判断され、“YES”と判断された場合には、S11で、保険による一定期間の保証が可能である旨を、出力手段4によって表示する(たとえば、「10年保証OK」等の文字を液晶ディスプレイに映し出す)。
【0018】
工法選択システム1は、上記の如く、入力手段3によって入力された地盤強度の測定試験の結果から、所定の深度における宅地地盤の強度値(すなわち、深度0.5m〜10.0mまでの0.25m毎の深度におけるN値)に基づいて、記憶手段6に記憶されている補強工法の中の一つを選び出す補強工法選択手段(「工法選択プログラム」におけるS1〜S8)と、補強工法選択手段によって選択された補強工法の種別を出力する出力手段4とを有しているため、補強工事を施す宅地地盤に適した補強工法を容易に選択することができる。
【0019】
また、工法選択システム1は、選択された補強工法の種別を出力した後に、その選択された補強工法を採用するか否かの問い合わせを実行し、入力手段3により採用する旨の入力があった後には、出力手段4により、保険による一定期間の保証が可能である旨を出力するものであるため、補強工事依頼者に工事後の宅地地盤に対する安心感を与えることができる。
【0020】
なお、本発明の工法選択システムの構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、コンピュータ(CPU、記憶手段等)、入力手段、出力手段等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。また、工法選択システムにおいて補強工法を選択する際に用いるプログラム(上記実施形態における「工法選択プログラム」)の内容も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0021】
たとえば、本発明の工法選択システムにおいて補強工法を選択したり合否の判定をしたりする際に用いるプログラムは、上記実施形態における「工法選択プログラム」の如く、所定の深度における宅地地盤の強度値のみに基づいて補強工法を選択するものに限定されず、強度値以外のパラメーターをも考慮して補強工法を選択するもの等に変更することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の工法選択システムは、上記の如く優れた効果を奏するものであるため、宅地地盤に適した補強工法を選択するためのシステムとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】工法選択システムの概念を示す説明図である。
【図2】工法選択システムにおいて実行される「工法選択プログラム」の内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0024】
1・・工法選択システム
2・・コンピュータ
3・・入力手段
4・・出力手段
5・・CPU
6・・記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
宅地地盤に適した補強工法を選択するための宅地地盤補強工法選択システムであって、
予め実施された地盤強度の測定試験の結果を入力するための入力手段と、
地盤強度を増加させる各種の補強工法の種別を記憶した記憶手段と、
入力手段によって入力された地盤強度の測定試験の結果から、所定の深度における宅地地盤の強度値に基づいて、前記記憶手段に記憶されている補強工法の中の一つを選び出す補強方法選択手段と、
補強工法選択手段によって選択された補強工法の種別を出力する出力手段と
を有することを特徴とする宅地地盤補強工法選択システム。
【請求項2】
選択された補強工法の種別を出力した後に、その選択された補強工法を採用するか否かの問い合わせを実行し、前記入力手段により採用する旨の入力があった後には、前記出力手段により、保険による一定期間の保証が可能である旨を出力することを特徴とする請求項1に記載の宅地地盤補強工法選択システム。

【図1】
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【図2】
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