説明

宇宙環境装置用シュラウド装置

【課題】シュラウドを配置したフレームを効率よく冷却することができ、フレームからの伝熱、輻射の影響を防止するとともに、液体窒素の消費量も低減することができる宇宙環境装置用シュラウド装置を提供する。
【解決手段】方形に枠組みした下部フレーム21a及び上部フレーム21bを有するフレーム21内にシュラウド12を構成する複数の冷却管12aを配置した宇宙環境装置用シュラウド装置11であって、前記フレーム21を金属パイプで形成するとともに、該金属パイプ内を冷却流体の流路とし、この流路に、シュラウド12から導出した冷却流体を導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宇宙環境装置用シュラウド装置に関し、詳しくは、宇宙環境を模擬した冷暗黒環境で人工衛星などの供試体の試験を行う宇宙環境試験装置(スペースチャンバー)内に設置されるシュラウドに関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙環境装置は、真空容器の内部にシュラウドと呼ばれる熱吸収壁を設置し、該シュラウドを液体窒素により冷却するとともに、真空容器の内部を真空ポンプで排気することにより、真空容器内に宇宙の冷暗黒及び高真空を模擬し、宇宙区間で使用する人工衛星などの供試体の試験を行うものである。前記シュラウドとして、直方体状に枠組みしたフレーム内にシュラウドを構成する複数の冷却管を配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−257452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フレーム内にシュラウドを配置した構造では、フレームからの伝熱、輻射の影響を避けて供試体を十分に冷却するためには、大量の液体窒素をシュラウドに供給する必要があった。このため、液体窒素の消費量が多くなり、試験コストの上昇を招くという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、シュラウドを配置したフレームを効率よく冷却することができ、フレームからの伝熱、輻射の影響を防止するとともに、液体窒素の消費量も低減することができる宇宙環境装置用シュラウド装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の宇宙環境装置用シュラウド装置は、枠組みしたフレーム内にシュラウドを構成する複数の冷却管を配置した宇宙環境装置用シュラウド装置において、前記フレームを金属パイプで形成するとともに、該金属パイプ内を冷却流体の流路としたことを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の宇宙環境装置用シュラウド装置は、前記フレームの金属パイプ内に導入する冷却流体が、前記冷却管の冷却流体出口部から導出された冷却流体であること、また、前記冷却流体は、前記複数の冷却管を連結して一端の冷却流体入口部から他端の冷却流体出口部まで一つの連続した冷却管内流路を流れた後、該冷却管の前記冷却流体出口部と前記フレームの冷却流体入口部とを接続する接続管を通ってフレームの金属パイプ内に流入し、フレームの冷却流体入口部から冷却流体出口部まで一つの連続した金属パイプ内流路を流れた後にフレームの前記冷却流体出口部から外部に導出されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の宇宙環境装置用シュラウド装置によれば、フレームを冷却流体によって直接冷却することができるので、フレームと冷却管とを同程度の温度にすることができ、フレームからの伝熱、輻射の影響を防止することができる。また、冷却管で間接的にフレームを冷却する場合に比べて熱効率を高めることができるので、冷却流体の消費量を低減することができ、シュラウドの小型化も図れる。
【0009】
特に、フレームに導入する冷却流体を冷却管から導出した冷却流体とすることにより、冷却流体の利用効率を向上させることができ、冷却流体の消費量を更に低減できる。さらに、複数の冷却管及びフレーム内の冷却流体の流路を、それぞれ一つの連続した流路で形成することにより、シュラウド全体の冷却を確実に行えるとともに、構造の簡略化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の宇宙環境装置用シュラウド装置の一形態例を示す斜視図である。
【図2】冷却流体の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本形態例に示す宇宙環境装置用のシュラウド装置11は、直方体状に枠組みしたフレーム21内にシュラウド12を構成する複数の冷却管12aを配置したものであって、宇宙環境装置を構成する真空容器の内部には、このように形成した複数のシュラウド装置11が所定位置にそれぞれ設けられている。
【0012】
シュラウド12の各冷却管12aは、軸線を水平方向に向けて設けられており、冷却流体入口部13となる一つの冷却管の端部と、冷却流体出口部14となる他の一つの冷却管の端部とを除いて、各冷却管12aの端部同士はU字状の連結管12bによって連結されており、複数の冷却管12aの内部及び連結管12bの内部には、冷却流体入口部13から冷却流体出口部14に至る一つの冷却管内流路が形成されている。
【0013】
また、前記フレーム21は、金属パイプ、例えば鋼製角パイプを溶接接合して形成したものであって、シュラウド12の下部側に水平方向に設けられる長方形状の下部フレーム21aと、シュラウド12の上部側に水平方向に設けられる長方形状の上部フレーム21bと、下部フレーム21a及び上部フレーム21bの四隅部を相互に連結する鉛直方向の連結部材21cとで形成されている。
【0014】
下部フレーム21a及び上部フレーム21bは、四隅部を留め切りあるいは適宜な継手を用いて鋼製角パイプの内部が連通するように接合したものであって、下部フレーム21a内には、下部冷却流体入口部22から下部冷却流体出口部23に至る一つの連続した金属パイプ内下部流路24が形成され、上部フレーム21b内には、上部冷却流体入口部25から上部冷却流体出口部26に至る一つの連続した金属パイプ内上部流路27が形成されている。また、下部フレーム21aの下部冷却流体出口部23と上部フレーム21bの上部冷却流体入口部25とは、連結パイプ28により連結されている。
【0015】
これにより、フレーム21には、下部フレーム21aの下部冷却流体入口部22から金属パイプ内下部流路24、下部冷却流体出口部23、連結パイプ28、上部フレーム21bの上部冷却流体入口部25、金属パイプ内上部流路27、上部冷却流体出口部26に至る一つの連続した金属パイプ内流路が形成される。
【0016】
そして、シュラウド12の冷却流体出口部14と、下部フレーム21aの下部冷却流体入口部22とを接続管15にて接続することにより、シュラウド装置11には、シュラウド12の冷却流体入口部13からフレーム21の上部冷却流体出口部26に至る一つの連続した一筆書き状態の冷却流体流路を形成している。
【0017】
すなわち、冷却流体供給部から供給された冷却流体、例えば液体窒素は、入口ヘッダー管31から各入口分岐管32を介して冷却流体入口部13から各シュラウド12に導入され、シュラウド12の冷却管内流路を流れた後、接続管15を経てフレーム21の金属パイプ内流路に流入する。シュラウド12及びフレーム21を冷却することによって気化した窒素ガスは、上部冷却流体出口部26から導出され、各出口分岐管33から出口ヘッダー管34に合流して導出される。したがって、フレーム21は、シュラウド12を冷却後にシュラウド12から導出された冷却流体である液体窒素あるいは液体窒素が気化した低温窒素ガスによって直接冷却されるため、フレーム21をシュラウド12と同程度の低温に冷却することができる。
【0018】
これにより、供試体に対するフレーム21からの伝熱や輻射の影響を大幅に軽減することができるとともに、液体窒素等の冷却流体の消費量を少なくすることができ、シュラウド12の小型化を図ることができる。さらに、試験終了後などにシュラウド12を加温するために使用する加温流体、例えば加温窒素ガスの消費量も低減することができ、シュラウドや供試体の冷却、加温に要するコストを大幅に削減することができる。
【0019】
また、前述のように、シュラウド装置11の冷却流体流路を一筆書き状態に形成することにより、シュラウド装置11に温度分布が生じることはなく、シュラウド装置11の唯一の流体出口である上部冷却流体出口部26から導出される流体の温度を測定することにより、シュラウド全体が所定の温度に、確実に冷却又は加温されたことを知ることができる。
【0020】
さらに、シュラウド12の各冷却管12aや下部フレーム21a及び上部フレーム21bを、流体の流れ方向に対して下り勾配のない水平方向とし、また、連結パイプ28を上向きの流れになるように設置することにより、冷却流体流路内で液体窒素が気化して発生した窒素ガスの気泡が液体窒素の流れを阻害することがないので、液体窒素のような冷却流体を冷却流体流路内に確実に流通させることができる。
【符号の説明】
【0021】
11…シュラウド装置、12…シュラウド、12a…冷却管、12b…連結管、13…冷却流体入口部、14…冷却流体出口部、15…接続管、21…フレーム、21a…下部フレーム、21b…上部フレーム、21c…連結部材、22…下部冷却流体入口部、23…下部冷却流体出口部、24…金属パイプ内下部流路、25…上部冷却流体入口部、26…上部冷却流体出口部、27…金属パイプ内上部流路、28…連結パイプ、31…入口ヘッダー管、32…入口分岐管、33…出口分岐管、34…出口ヘッダー管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠組みしたフレーム内にシュラウドを構成する複数の冷却管を配置した宇宙環境装置用シュラウド装置において、前記フレームを金属パイプで形成するとともに、該金属パイプ内を冷却流体の流路としたことを特徴とする宇宙環境装置用シュラウド装置。
【請求項2】
前記フレームの金属パイプ内に導入する冷却流体は、前記冷却管の冷却流体出口部から導出された冷却流体であることを特徴とする請求項1記載の宇宙環境装置用シュラウド装置。
【請求項3】
前記冷却流体は、前記複数の冷却管を連結して一端の冷却流体入口部から他端の冷却流体出口部まで一つの連続した冷却管内流路を流れた後、該冷却管の前記冷却流体出口部と前記フレームの冷却流体入口部とを接続する接続管を通ってフレームの金属パイプ内に流入し、フレームの冷却流体入口部から冷却流体出口部まで一つの連続した金属パイプ内流路を流れた後にフレームの前記冷却流体出口部から外部に導出されることを特徴とする請求項2記載の宇宙環境装置用シュラウド装置。

【図1】
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【図2】
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