宇宙通信システム
【課題】人工衛星内における各種ビームフォーミングに関する処理の負担を軽減させる。
【解決手段】地球上における各観測領域の電磁波放射状態を検出する1又は複数のアンテナ素子21と、検出された電磁波放射状態に基づく信号をそれぞれAD変換するAD変換部24と、AD変換されたアンテナ素子毎の信号を地上通信ネットワーク5内の通信プロトコルに基づいてそれぞれアンテナ素子21に対応させてフレーム化処理を施して生成したフレーム化データを地上通信ネットワーク5へ送信する人工衛星2と、人工衛星群3からフレーム化データを受信する地上局51と、地上局51を介してフレーム化データが送信される複数の通信端末53とを有し、通信端末53は、受信したフレーム化データの各アンテナ素子21に対応したフレームから観測領域に応じて指向性を適応的に変化させることにより、その電磁波放射状態を識別可能とされている。
【解決手段】地球上における各観測領域の電磁波放射状態を検出する1又は複数のアンテナ素子21と、検出された電磁波放射状態に基づく信号をそれぞれAD変換するAD変換部24と、AD変換されたアンテナ素子毎の信号を地上通信ネットワーク5内の通信プロトコルに基づいてそれぞれアンテナ素子21に対応させてフレーム化処理を施して生成したフレーム化データを地上通信ネットワーク5へ送信する人工衛星2と、人工衛星群3からフレーム化データを受信する地上局51と、地上局51を介してフレーム化データが送信される複数の通信端末53とを有し、通信端末53は、受信したフレーム化データの各アンテナ素子21に対応したフレームから観測領域に応じて指向性を適応的に変化させることにより、その電磁波放射状態を識別可能とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、宇宙空間における地球周回軌道を周回する人工衛星等により、地球上の地上局や、海上の船舶あるいは航空機等との間で通信を行い、或いは地球上の地上局からの要求に従って地球上の2点間の中継通信を行う宇宙通信システムの実用化が進展している。また特に近年において、地球上の各観測領域において電磁波がどれだけ放射されているかを人工衛星により検出し、これを地球上へと送信する宇宙通信システムも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような宇宙通信システムにおいて、いわゆるデジタルビームフォーミング(DBF)技術を利用して地球上と無線通信を行い、或いは地球上の各観測領域の電磁波放射状態を検出するニーズが高まっている。ちなみに、このDBFは、共通の信号源からの信号を複数のアンテナ素子により受信し、これらに信号を位相遅延処理や振幅制御を施した後に合成することにより、複数のアンテナを介して一つの指向性を与える技術である。このDBFでは、受信したアンテナ素子毎の信号について、それぞれAD変換することにより、デジタル的に信号の処理を行うものである。従来において、デジタルビームフォーミングを適用した宇宙通信技術として、例えば特許文献2の開示技術が提案されている。
【特許文献1】特開平11−261464号公報
【特許文献2】特開平11−127098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなデジタルビームフォーミングを適用した宇宙通信技術において、例えば各アンテナ素子において受信した信号につき施すべき位相遅延処理や、その他各種ビームフォーミングに関する処理は、人工衛星内で行うのが一般的である。しかしながら、これらの各種処理は、その人工衛星に搭載可能な信号処理能力と、人工衛星が供給できる消費電力による制限を受けることになる。即ち、人工衛星に対して多大な信号処理を担わせることなく、また衛星内の電力の消費を抑制することにより、人工衛星自体の軽量化、低消費電力化を図ることが可能な宇宙通信システムを提案する必要性があった。
【0005】
また、各種ビームフォーミングに関する処理を人工衛星内で実行する従来型のシステムにおいては、ビームフォーミング処理回路を人工衛星に搭載して宇宙空間に打ち上げた後、新たに開発された信号処理アルゴリズム等を事後的にこれに組み込むことが不可能であった。このため、ビームフォーミング処理回路を逐次バージョンアップすることが困難であり、宇宙通信システム全体の汎用性や柔軟性を低下させているという問題点があった。
【0006】
また、特に地球上に構築された例えばL2/L3ネットワークとの間で宇宙通信する人工衛星では、これら地球上のネットワークに応じたアドレスをフレームデータに挿入しておくことにより、データの伝送効率を向上させる必要性もあった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した課題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、デジタルビームフォーミングを適用した宇宙通信技術において、特に人工衛星内における各種ビームフォーミングに関する処理の負担を軽減させることにより、人工衛星自体の軽量化、低消費電力化を図ることができ、ひいてはシステム全体の汎用性や柔軟性、データの伝送効率を向上可能な宇宙通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の宇宙通信システムは、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムにおいて、上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星は、地球上における各観測領域が放射する電磁波を検出する1又は複数のアンテナ素子と、上記各アンテナ素子により検出された電磁波に基づく信号をそれぞれAD変換するAD変換手段と、上記AD変換手段によりAD変換されたアンテナ素子毎の信号を上記地上通信ネットワーク内の通信プロトコルに基づいてそれぞれアンテナ素子に対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成するフレーム化処理手段と、上記フレーム化処理手段により生成されたフレーム化データを直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記地上通信ネットワークへ送信する衛星通信手段とを有し、上記地上通信ネットワークは、上記人工衛星群から上記フレーム化データを受信する地上局と、上記地上局を介して上記フレーム化データが送信される複数の通信端末とを有し、上記通信端末は、上記受信した各アンテナ素子に対応したフレーム化データから地球上における所望観測領域に応じたアンテナの指向性を適応的に形成することにより、特定の観測領域の電磁波放射状態を識別可能とされていることを特徴とする。
【0009】
請求項8記載の宇宙通信システムは、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムにおいて、上記地上通信ネットワークは、所定の通信プロトコルに基づいた、地球上における宛先領域に関する情報を含むヘッダを付したフレーム化データを送信する通信端末と、上記1以上の通信端末から上記フレーム化データを受信した場合にこれに含まれる宛先領域に関する情報に基づいて合成した新たなフレーム化処理を施すことにより新たなフレーム化データを生成し、これを上記人工衛星群へと送信する地上局とを有し、上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星は、上記地上局から直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記フレーム化データを受信する衛星通信手段と、各宛先領域に対してそれぞれ信号を送信可能な1又は複数のアンテナ素子と、上記衛星通信手段により受信した上記フレーム化データを上記ヘッダに含まれている情報に基づいて上記アンテナ素子毎に振り分け、フレームに含まれる実情報を抽出するフレーム分配・分解手段と、上記フレーム分配・分解手段により得られたアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、これを上記アンテナ素子へそれぞれ供給するDA変換手段とを有し、上記地上局又は通信端末は、上記宛先領域に応じて指向性を適応的に変化させるための信号処理を各宛先アンテナ素子に対応するフレーム毎に実施することを特徴とする。
【0010】
請求項13記載の宇宙通信システムは、移動端末間における無線信号の送受信を有線ネットワークに接続された複数の基地局を介して実行する無線通信システムにおいて、一の基地局は、一の移動端末から送信される無線信号を一の方向から検出する1又は複数の第1のアンテナ素子と、上記各第1のアンテナ素子により検出された信号をそれぞれAD変換するAD変換手段と、上記AD変換手段によりAD変換された第1のアンテナ素子毎の信号を上記有線ネットワーク内の通信プロトコルに基づいてそれぞれフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成するフレーム化処理手段と、上記フレーム化処理手段により生成されたフレーム化データを上記有線ネットワークへ送出する送信手段とを有し、他の基地局は、上記有線ネットワークを介して受信したフレーム化データを上記宛先情報に基づいて上記第1のアンテナ素子毎に分解するフレーム分解手段と、上記フレーム分解手段により分解されたアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換するDA変換手段と、上記DA変換手段によりDA変換されたデータに基づく無線信号を他の移動端末へ送信する1又は複数の第2のアンテナ素子とを有し、上記有線ネットワークにおける通信を制御する制御局は、上記フレーム化データから、上記第1のアンテナ素子と上記一の移動端末との間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別するとともに、当該フレーム化データに記述されている宛先としての他の移動端末に関する情報から、上記第2のアンテナ素子と上記他の移動端末との間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別し、これら識別した各アンテナ指向性に基づいて一の基地局における第1のアンテナ素子と、上記他の基地局における第2のアンテナ素子がそれぞれ移動端末との間でビームフォーミングを行うための制御を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項18記載の宇宙通信システムは、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムにおいて、上記地上通信ネットワークは、所定の通信プロトコルに基づいた、地球上における宛先領域に関する情報又は上記人工衛星群内における宛先アンテナ素子に関する情報を含むヘッダを付したフレーム化データを送信する通信端末と、上記1以上の通信端末から送信されてきた上記データを上記人工衛星群へと送信する地上局とを有し、上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星は、上記地上局から直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記フレーム化データを受信する衛星通信手段と、地球上における上記宛先領域に対してそれぞれ信号を送信可能な1又は複数のアンテナ素子と、上記衛星通信手段により受信した上記フレーム化データを上記ヘッダに含まれている宛先領域に関する情報又は使用すべきアンテナ素子に関する情報に基づいて分類するスイッチング手段と、上記スイッチング手段により分類されたアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、これを上記アンテナ素子へそれぞれ供給するDA変換手段とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項22記載の宇宙通信システムは、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムにおいて、上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星は、地球上における各観測領域から発信される、互いに宛先が異なる無線信号を複数の端末から検出する1又は複数のアンテナ素子と、上記各アンテナ素子により検出された信号をそれぞれAD変換するAD変換手段と、上記AD変換手段によりAD変換されたアンテナ素子毎の信号にビームフォーミング処理を施して複数のビーム方向又はビームパターンにおける受信信号としてこれを分離する移相器ネットワークと、上記地上通信ネットワーク内の通信プロトコルに基づいて各ヘッダに上記ビーム方向又はビームパターンに関する情報を含めつつそれぞれに対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成するフレーム化処理手段と、上記フレーム化処理手段により生成されたフレーム化データを上記ヘッダ情報に基づいて多重化する多重化手段と、上記多重化手段により多重化されたフレーム化データを直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記地上通信ネットワークへ送信する衛星通信手段とを有し、上記地上通信ネットワークは、上記人工衛星群から上記フレーム化データを受信する地上局と、上記地上局を介して上記フレーム化データが送信される複数の通信端末とを有し、上記通信端末又は上記地上局は、上記観測領域に対応する特定のビーム方向又はビームパターンで放射された信号のみを検出することを特徴とする。
【0013】
請求項25記載の宇宙通信システムは、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信方法において、上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星では、地球上における各観測領域が放射する電磁波を1又は複数のアンテナ素子を介して検出し、上記各アンテナ素子により検出した電磁波に基づく信号をそれぞれAD変換し、上記AD変換したアンテナ素子毎の信号を上記地上通信ネットワーク内の通信プロトコルに基づいてそれぞれアンテナ素子に対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成し、上記生成したフレーム化データを直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記地上通信ネットワークへ送信し、上記地上通信ネットワークでは、上記人工衛星群から地上局により上記フレーム化データを受信し、上記地上局を介して上記フレーム化データを複数の通信端末へ送信し、上記通信端末では、上記受信した各アンテナ素子に対応したフレーム化データから地球上における所望観測領域に応じたアンテナの指向性を適応的に形成することにより、特定の観測領域の電磁波放射状態を識別可能とすることを特徴とする。
【0014】
請求項27記載の宇宙通信方法は、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信方法において、上記地上通信ネットワークでは、所定の通信プロトコルに基づいた、地球上における宛先領域に関する情報を含むヘッダを付したフレーム化データを通信端末から送信し、地上局が上記1以上の通信端末から上記フレーム化データを受信した場合にこれに含まれる宛先領域に関する情報に基づいて合成した新たなフレーム化処理を施すことにより新たなフレーム化データを生成し、これを上記人工衛星群へと送信し、上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星では、上記地上局から直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記フレーム化データを受信し、上記衛星通信手段により受信した上記フレーム化データを上記ヘッダに含まれている情報に基づいて、各宛先領域に対してそれぞれ信号を送信可能な1又は複数の上記アンテナ素子毎に振り分け、フレームに含まれる実情報を抽出し、上記フレーム分配・分解手段により得られたアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、これを上記アンテナ素子へそれぞれ供給し、上記地上局又は通信端末では、上記宛先領域に応じて指向性を適応的に変化させるための信号処理を各宛先アンテナ素子に対応するフレーム毎に実施することを特徴とする。
【0015】
請求項28記載の宇宙通信方法は、移動端末間における無線信号の送受信を有線ネットワークに接続された複数の基地局を介して実行する無線通信方法において、一の基地局では、一の移動端末から送信される無線信号を一の方向から1又は複数の第1のアンテナ素子を介して検出し、上記各第1のアンテナ素子により検出した信号をそれぞれAD変換し、上記AD変換した第1のアンテナ素子毎の信号を上記有線ネットワーク内の通信プロトコルに基づいてそれぞれフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成し、上記生成したフレーム化データを上記有線ネットワークへ送出し、他の基地局では、上記有線ネットワークを介して受信したフレーム化データを上記宛先情報に基づいて上記第1のアンテナ素子毎に分解し、分解したアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、上記DA変換したデータに基づく無線信号を1又は複数の第2のアンテナ素子を介して他の移動端末へ送信し、上記有線ネットワークにおける通信を制御する制御局では、上記フレーム化データから、上記第1のアンテナ素子と上記一の移動端末との間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別するとともに、当該フレーム化データに記述されている宛先としての他の移動端末に関する情報から、上記第2のアンテナ素子と上記他の移動端末との間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別し、これら識別した各アンテナ指向性に基づいて一の基地局における第1のアンテナ素子と、上記他の基地局における第2のアンテナ素子がそれぞれ移動端末との間でビームフォーミングを行うための制御を行うことを特徴とする。
【0016】
請求項29記載の宇宙通信方法は、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信方法において、上記地上通信ネットワークでは、所定の通信プロトコルに基づいた、地球上における宛先領域に関する情報又は上記人工衛星群内における宛先アンテナ素子に関する情報を含むヘッダを付したフレーム化データを通信端末から送信し、上記1以上の通信端末から送信されてきた上記データを地上局により上記人工衛星群へと送信し、上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星では、上記地上局から直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記フレーム化データを受信し、上記受信した上記フレーム化データを上記ヘッダに含まれている宛先領域に関する情報又は使用すべきアンテナ素子に関する情報に基づいて分類し、上記分類したアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、これを上記アンテナ素子へそれぞれ供給し、上記信号を1又は複数のアンテナ素子により、地球上における上記宛先領域に対してそれぞれ送信することを特徴とする。
【0017】
請求項30記載の宇宙通信方法は、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信方法において、上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星では、地球上における各観測領域から発信される、互いに宛先が異なる無線信号を1又は複数のアンテナ素子を介して検出し、上記各アンテナ素子により検出した信号をそれぞれAD変換し、上記AD変換したアンテナ素子毎の信号にビームフォーミング処理を施して複数のビーム方向又はビームパターンにおける受信信号としてこれを分離し、上記地上通信ネットワーク内の通信プロトコルに基づいて各ヘッダに上記ビーム方向又はビームパターンに関する情報を含めつつそれぞれに対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成し、上記生成したフレーム化データを上記ヘッダ情報に基づいて多重化し、上記多重化手段により多重化されたフレーム化データを直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記地上通信ネットワークへ送信し、上記地上通信ネットワークでは、上記人工衛星群から地上局を介して上記フレーム化データを受信し、上記地上局を介して上記フレーム化データを複数の通信端末へ送信し、上記通信端末又は上記地上局では、上記観測領域に対応する特定のビーム方向又はビームパターンで放射された信号のみを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上述した構成からなる本発明によれば、従来において人工衛星内において行われていた、各アンテナ素子において受信した信号につき施すべき位相遅延処理や、その他各種ビームフォーミングに関する処理を、通信端末側において実行させつつ、所望領域における電磁波放射状態を識別することが可能となる。このため、本発明では、かかるビームフォーミングに基づく多大な信号処理負担を人工衛星に負担させることが無くなり、また人工衛星内の電力の消費を抑制することにより、人工衛星自体の軽量化、低消費電力化、および汎用化を図ることが可能なシステム構成とすることが可能となる。またこの通信端末53において実行するビームフォーミング処理は、従来のように人工衛星に搭載可能な信号処理能力や、人工衛星が供給できる消費電力による制限を受けることも無くなることから、本来のところ人工衛星において搭載が困難であった大きな消費電力が必要となる高度かつ高速なビームフォーミングの計算処理を行うことが可能なシステム構成とすることも可能となる。
【0019】
また本発明では、ビームフォーミング処理を地上通信ネットワークにおける通信端末に担わせることが可能となることから、事後的に信号処理アルゴリズム等が開発された場合においても、これをその通信端末へ容易に組み込むことが可能となる。また、ビームフォーミング処理回路を逐次バージョンアップできるシステムとすることで、宇宙通信システム全体の汎用性や柔軟性を向上させることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、地上の通信ネットワークと人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明を適用した宇宙通信システム1の全体構成を示している。この宇宙通信システム1は、地球4における周回軌道を周回する複数の人工衛星2からなる人工衛星群3と、地球4上に構築された地上通信ネットワーク5とを備えている。
【0022】
この宇宙通信システム1は、人工衛星群3のうち何れか一の人工衛星2aにより地球上のある観測領域A〜Cの電磁波放射状態を検出し、これを他の人工衛星2bを介して地球上の地上通信ネットワーク5へと送信するものである。
【0023】
人工衛星群3は、いわゆる地球の自転周期と一致する軌道周期をもつ地球周回軌道としての対地同期軌道(GEO:Geostationary Earth Orbit)を周回するものであってもよいし、地上高約500〜2000kmに位置する軌道上にあって地球の自転周期とは無関係に回る低軌道(LEO: Low Earth Orbit)を周回するものであってもよい。また、これらGEO,LEOを周回するものに限定されるものではなく、他のいかなる周回軌道を周回するものであってもよい。
【0024】
人工衛星群3は、少なくとも2体の人工衛星2からなる。以下の例では、人工衛星群3について、一の人工衛星2aと他の人工衛星2bの2体で構成している場合を例にとり説明をするが、3体以上で構成されていてもよいことは勿論である。また、この人工衛星2aにより検出された電磁波放射状態をあくまで人工衛星2bを介することなく、この人工衛星2aから地上通信ネットワーク5へ直接送信するようにしてもよく、また人工衛星2a又は人工衛星2bからの送出すべき信号を更なる他の図示しない人工衛星を介した複数の通信リンクで地上通信ネットワーク5へ送信するようにしてもよい。
【0025】
図2は、人工衛星2aのシステムブロック構成図である。人工衛星2aは、k個からなる広ビームのアンテナ素子21_1〜21_kと、このアンテナ素子21_1〜21_kの出力端に接続されている受信部22と、この受信部22に接続されているAD変換部24_1〜24_kと、このAD変換部24_1〜24_kからデジタルデータが供給されるフレーム化処理部25と、フレーム化処理部25からフレームデータが供給される電気−光変換部26と、電気−光変換部26の出力側に接続されている多重化処理部27と、多重化処理部27において多重化されたデータを他の人工衛星2b又は地球4上の地上通信ネットワーク5へ向けて送信するための衛星通信部29とを備えている。また、この人工衛星2aは、アンテナ素子21_1〜21_kや受信部22を制御するためのアンテナ・周波数制御部30と、フレーム化処理部25におけるフレーム化処理を制御するフレーム化制御部31とをさらに備えている。
【0026】
アンテナ素子21_1〜21_kは、地球4上の広覆域にある複数の電波源からの電磁信号を捉え、この捕捉したこの電波信号を出力する。即ち、この複数のアンテナ素子21_1〜21_kにより、地球4上における各観測領域の電磁波放射状態を検出することが可能となる。
【0027】
受信部22は、このアンテナ素子21_1〜21_kからの出力信号が供給され、これを高周波増幅するとともに、アンテナ・周波数制御部30による制御の下で、入力信号を低域周波数の信号へ周波数変換する。
【0028】
AD変換部24_1〜24_kは、いわゆるADコンバータで構成され、受信部22から供給されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、これをフレーム化処理部25へと出力する。ちなみに、このAD変換部24_nは、アンテナ素子21_nの受信信号をそれぞれAD変換することになる。
【0029】
フレーム化処理部25は、フレーム化制御部31による制御の下で、AD変換部24_1〜24_kから供給されるデジタル信号をフレーム化データ列に変換する。フレーム化処理部25は、IPプロトコル用のIPヘッダやイーサネット(登録商標)用のMACヘッダを付加する、更には適切なラベルやタグを挿入する等のフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成する。
【0030】
なお、以下の説明においては、地上通信ネットワーク5がL2/L3スイッチネットワークとして構成されている場合において、フレーム化処理部25は、かかる地上通信ネットワーク5としてのL2/L3スイッチネットワークで交換可能なL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付すTCP/IPフレーム化処理を施す場合を例にとり説明をするが、これに限定されるものではない。即ち、このフレーム化処理部25は、地上通信ネットワーク5内の通信プロトコルに基づいたフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成するものであればよい。フレーム化処理部25は、それぞれアンテナ素子に対応したフレーム化データを生成することになる。
【0031】
電気−光変換部26は、フレーム化処理部25において生成されたフレーム化データを電気−光変換して光フレーム化データに変換するための素子で構成される。この電気−光変換部26は、供給される電気信号を光信号に変換する、いわゆるレーザダイオード(LD)等で構成されていてもよい。
【0032】
多重化処理部27は、電気−光変換部26において生成された光フレーム化データを多重化させ、これを衛星通信部29へ伝送する。衛星通信部29は、この多重化された光フレーム化データからなる光信号を直接的に又は他の人工衛星2bを介して間接的に地上通信ネットワーク5へ送信する。
【0033】
アンテナ・周波数制御部30は、予め実装されたソフトウェアに基づいて、アンテナ素子21_1〜21_kや受信部22を制御する制御ユニットとして構成されるが、地上通信ネットワーク5からの適応的なソフトウェアダウンロードによって再構成可能な装置として構成されたものでもよい。
【0034】
フレーム化制御部31は、予め実装されたソフトウェアに基づいて、フレーム化処理部25を制御する制御ユニットとして構成されるが、地上通信ネットワーク5からの適応的なソフトウェアダウンロードによって再構成可能な装置として構成されたものでもよい。
【0035】
図3は、地上通信ネットワーク5の構成を示している。
【0036】
地上通信ネットワーク5は、人工衛星群3からフレーム化データを受信する地上局51と、この地上局51に対してスイッチ52を介して接続された複数の通信端末53a〜53cと、ネットワーク全体を制御するための制御局54とを備えている。ちなみに、この地上通信ネットワーク5を構成する各デバイスは光ファイバ50を介して接続され、互いに光通信でデータを伝送することを前提としているが、これに限定されるものではなく、電気信号を介してデータを伝送するようにしてもよい。かかる場合には、各デバイス間を接続する光ファイバ50の代替として、電線や無線回線が用いられることになる。
【0037】
地上局51は、人工衛星群3から送信されてくる光信号を受信し、これをスイッチ52を介して通信端末53へと送信する。ちなみに、この地上通信ネットワーク5が電気信号を介してデータを伝送するシステムとされている場合に、この地上局51は、これを光−電気変換することで電気信号からなるフレーム化データ列を生成することになる。
【0038】
スイッチ52は、例えばイーサネット(登録商標)プロトコル規格のいわゆるイーサスイッチに準拠したIPルータやL2/L3スイッチ、ATMスイッチ等である。このスイッチ52には、小規模LANで使用される安価なスイッチで適用されていてもよく、光ファイバ50を接続するためのポートが複数に亘り設けられている。図3に示す例では、スイッチ52とスイッチ52とが光ファイバ50を介して接続されており、このスイッチ52と光スイッチ52とで接続される地上通信ネットワーク5をイーサネット(登録商標)として活用している。また、地上通信ネットワーク5をイーサネット(登録商標)で構成する場合のみならず、IPネットワークやATMネットワークで構成するようにしてもよい。
【0039】
制御局54は、この地上通信ネットワーク5において必要とされる制御処理全般と変復調処理、また必要に応じて地上局51経由で受信するフレーム化データに含まれる電磁波信号の復調と復調データの再フレーム化処理を行う。例えば、制御局54は、スイッチ52から伝送されてきた光信号を分波し、これを光−電気変換することにより電気フレーム化データ列を生成する。また、この制御局54は、生成した電気信号につき、更にデフレーム化処理を施して抽出した実データ部をDA変換してアナログ信号を生成し、これを復調器で復調することで情報データが復調される。更に必要に応じてこれを地上通信ネットワーク5へ送出する際には、適切なフレーム化処理を施して送出する。
【0040】
通信端末53は、光ファイバ50を介してスイッチ52ひいては地上局51との間でデータを送受信することが可能なデバイスとして構成され、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等である。但し、この通信端末53としては、無線通信を介して地上通信ネットワークにアクセス可能なものであってもよい。
【0041】
次に、本発明を適用した宇宙通信システム1の動作について説明をする。
【0042】
先ず、アンテナ素子21_1〜21_kにより、地球4上における各観測領域の電磁波を検出する。ここでは、地球4上の観測領域A〜Cにおいて放射される電磁波もこのアンテナ素子21_1〜21_kにより検出されることになる。このアンテナ素子21_1〜21_kにより検出された電磁波信号は、受信部22へと送られる。
【0043】
アンテナ素子21_1〜21_kから電磁波信号が送られてきた受信部22では、これを先ず低雑音増幅し、さらに低域周波数の信号へ周波数変換する。受信部22から出力された低域周波数信号は、AD変換部24_1〜24_kにおいてそれぞれAD変換される。
【0044】
次にフレーム化処理部25において、AD変換部24_1〜24_kから供給されるデジタル信号に、IPプロトコル用のIPヘッダやイーサネット(登録商標)用のMACヘッダを付加する。
【0045】
図4(a)は、フレーム化処理部25において生成されるフレームデータの構成例を示している。なお、MACフレーム構成はいわゆるMPLS技術や、タグVLAN技術を用いる場合にはこの構成に限られるものではない。この生成されるフレーム6はIEEE802.3に規定するMACフレーム構成に準拠しており、フレームの開始を予告する7オクテットのプリアンブル61と、実際のフレーム開始を表す1オクテットのSFD(Start Frame Delimiter)62と、フレームの送信先を表す6オクテットの発信先MACアドレス63と、フレーム送信元を表す6オクテットの発信元MACアドレス64と、データの長さやフレームのタイプを表す2オクテットのフレーム長/フレームタイプ65と、46〜1500オクテットのデータ部66と、データ確認用の4オクテットのFCS(Frame Check Sequence)67とから構成されている。データ部66は、IPヘッダ66aと、AD変換部35が出力した低域周波数の電磁波信号がデジタル信号に変換された実データ部66bとからなる。なお、以下では、プリアンブル61〜IPヘッダ66aに至る部分までをヘッダ部68という。
【0046】
ちなみに、このヘッダ部68には、宛先情報として宛先地上局や宛先通信端末に関する情報が含まれており、発信元情報として発信元衛星や発信元アンテナ素子に関する情報が含まれている。また発信元の情報として発信元衛星を特定する情報や上記衛星内の対応するアンテナ素子を特定する情報が含まれる。更にこのフレーム6におけるヘッダ部68には、制御部30が用いた周波数変換に関わる情報を含めてもよい。
【0047】
フレーム化処理部25では、このようなフレームを、それぞれアンテナ素子21_1〜21_kに対応させてそれぞれ生成するフレーム化処理を行う。この例では、フレーム6の数nを、kとが等しい場合を想定している。図4(b)は、各アンテナ素子21毎に対応させて個別に生成したフレーム6_1〜6_nを示している。即ち、この図4(b)では、#n番目のアンテナ素子21_nに対応するフレーム6がフレーム6_nとなる。各フレーム6_1〜6_nは、それぞれ上述したヘッダ部68と実データ部66bとから構成されることになる。このフレーム化処理部25における処理段階において各フレーム6_1〜6_nは未だ互いに独立したフレームとして構成されている。そして、これら各フレーム6_1〜6_nは、互いに異なるMACアドレス、並びにIPアドレスがヘッダ部68に割り当てられている。
【0048】
次に、この各フレーム6_1〜6_nは、電気−光変換部26において電気−光変換され、さらに多重化処理部27において多重化され、衛星通信部29から直接的に又は他の人工衛星2bを介して間接的に地上通信ネットワーク5へ送信される。
【0049】
人工衛星群3からフレーム化データを受信した地上局51は、これを地上通信ネットワーク5を構成する各通信端末53a〜53cに対してスイッチ52を介して送信する。スイッチ52では、マルチキャスト機能に基づいて人工衛星群3から受信したフレーム化データをコピーし、これを複数の各通信端末53a〜53cへ分配することも可能になる。ちなみに、このスイッチ52は、受信したフレーム化データにおけるフレーム6のヘッダ部68のみを読み取り、これに記述された宛先アドレスやラベル、タグ等情報を検出して、これを宛先となる次のスイッチ52や、宛先となる制御局54宛先となる通信端末53へと導くことが可能となる。
【0050】
上述したフレーム6_1〜6_nからなるフレーム化データがスイッチ52を介して配信されてきた通信端末53においては、これを解析することにより、所望の観測領域における電磁波放射状態を識別する。
【0051】
例えば、通信端末53を操作するユーザが、地球上におけるある観測領域の電磁波放射状態の確認を希望する場合、この通信端末53を通じてその希望観測領域を入力する。仮に通信端末53aを通じて地球上の観測領域Aの電磁波放射状態を確認したい旨が入力されたものとする。かかる場合において、通信端末53aは、フレーム6の転送をリクエストする。このリクエストを受けた地上通信ネットワーク5は、かかる通信端末53aに対してフレーム6_1〜6_nを転送することになる。これらフレーム6は、フレーム化処理部25において、L2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダが付されていることから、この地上通信ネットワーク5内においてもこれらのヘッダを介して所望の宛先の通信端末53aへの伝送が容易に実現可能となる。
【0052】
通信端末53aは、フレーム6_1〜6_nを受信し、個々のフレーム6_1〜6_nから得た実データ部に対して、所望の観測領域Aに応じた適切な実時間遅延制御又は振幅制御を加えて合成処理することにより、所望の観測領域Aの信号のみを抽出し、その電磁波の放射状態を識別することが可能となる。希望観測領域として、他の観測領域BやCが入力された場合についても同様に、フレーム6_1〜6_nを受信し、個々のフレーム6_1〜6_nに対して、所望の観測領域BやCに応じた適切な実時間遅延制御又は振幅制御を加えて合成処理することにより、その電磁波の放射状態を識別することが可能となる。
【0053】
またスイッチ52では、マルチキャスト機能に基づいて人工衛星群3から受信したフレーム化データをコピーし、これを各通信端末53a〜53cへ分配することが可能なため、各端末装置53a〜53cにおいて、互いに同一又は異なる観測領域の電磁波放射状態を同時に識別することも可能となる。
【0054】
このように本発明を適用した宇宙通信システム1においては、地球4上における各観測領域A〜Cの電磁波放射状態を複数のビームフォーミング用のアンテナ素子21_1〜21_kにより受信し、そのアナログ波形を維持した状態で、換言すればこの受信した信号を復調することなく、これをデジタル信号化した上で、地上通信ネットワーク5におけるL2/L3スイッチネットワークに対応するように、L2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付すTCP/IPフレーム化処理を施す。また、かかるフレームデータを受信した地上通信ネットワーク5上の通信端末は、各アンテナ素子21_1〜21_kに対応したフレームから観測領域に応じて指向性を適応的に変化させることにより、その電磁波放射状態を識別する。
【0055】
これにより、従来において人工衛星内において行われていた、各アンテナ素子において受信した信号につき施すべき位相遅延処理や、その他各種ビームフォーミングに関する処理を、通信端末53側において実行させつつ、所望領域における電磁波放射状態を識別することが可能となる。このため、本発明では、かかるビームフォーミングに基づく多大な信号処理負担を人工衛星2に負担させることが無くなり、また人工衛星2内の電力の消費を抑制することにより、人工衛星2自体の軽量化、低消費電力化を図ることが可能なシステム構成とすることが可能となる。またこの通信端末53において実行するビームフォーミング処理は、従来のように人工衛星に搭載可能な信号処理能力や、人工衛星が供給できる消費電力による制限を受けることも無くなることから、本来のところ人工衛星において搭載が困難であった大きな消費電力が必要となる高度かつ高速なビームフォーミングの計算処理を行うことが可能なシステム構成とすることも可能となる。
【0056】
また本発明では、ビームフォーミング処理や変復調に関わる信号処理をすべて地上通信ネットワーク5における通信端末53又は制御局54などに担わせることが可能となることから、事後的に信号処理アルゴリズム等が開発された場合や、復調すべき情報の変調方式が変更された場合においても、これをその通信端末53へ容易に組み込むことが可能となる。また、ビームフォーミング処理回路を逐次バージョンアップできるシステムとすることで、宇宙通信システム1全体の汎用性や柔軟性を向上させることも可能となる。
【0057】
しかも本発明では、L2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付すTCP/IPフレーム化処理が施されているため、地上通信ネットワーク5におけるL2/L3スイッチネットワークにおいて、複数の通信端末53が同じアンテナ素子21の信号を要求した場合においても、地上通信ネットワーク5上の各ノードを構成するスイッチ52においてフレーム6を複製して分配するマルチキャスト機能やブロードキャスト機能の利用が可能となる。このため、地上通信ネットワーク5内におけるフレームデータの伝送負荷を最小限に低減させることが可能となる。
【0058】
なお、上述した例において、フレーム化処理部25は、地上通信ネットワーク5としてのL2/L3スイッチネットワークで交換可能なL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付す場合を例にとり説明をしたが、これに限定されるものではない。アンテナ素子21_1〜21_k毎のフレーム6_1〜6_kに対して更にL4(トランスポート層)ヘッダを付すようにしてもよい。これにより、地上通信ネットワーク5においてL4を介したデータの配信も可能となり、より汎用性を向上させることも可能となる。
【0059】
なお、この宇宙通信システム1においては、各アンテナ素子21_1〜21_kにより検出された電磁波が予め変調されていた場合にこれを復調することなくそれぞれAD変換する。そして、実際にビームフォーミング処理を行う通信端末53が受信したフレーム化データを復調するように制御する。これにより、人工衛星2において、信号を復調するためのシステムを組み込む必要が無くなることから、人工衛星2に対する処理負担を軽減でき、更なる軽量化、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0060】
また、ビームフォーミング処理を通信端末53に担わせる場合に限定されるものではなく、これを制御局54や地上局51において実行するようにしてもよい。かかる場合には、通信端末53は、制御局54に対して所望の観測領域を通知し、これを受けた制御局54がその観測領域に応じて適切な実時間遅延制御又は振幅制御を加えて合成処理することにより、その電磁波の放射状態を識別し、その結果を通信端末53へ通知する処理を行うことになる。
【0061】
また、この宇宙通信システム1では、あくまで人工衛星群3と地上通信ネットワーク5との間で光通信によりデータを伝送する以外に、電波を介して伝送するようにしてもよい。
【0062】
また、この宇宙通信システム1では、必ずしも1機の人工衛星2を介して電磁波を検出する場合に限定されず、複数の人工衛星2により、電磁波を検出し、それぞれ上述したプロセスに基づいてフレームデータ化した後に地上通信ネットワーク5へそれぞれ送出するようにしてもよい。比較的少数のアンテナ素子21を搭載した人工衛星2を複数機に亘って地球4上を周回させ、これらから得たフレームデータを集約して信号処理することにより、事実上、1機の人工衛星2に膨大な数のアンテナ素子21を搭載したのと同等の効果を得ることができ、鋭いビーム特性を実現することが可能となる。また、任意の方向から放射されてくる微弱な電磁波をこれら複数の人工衛星2で漏れなく検出することも可能となる。
【0063】
更に、この宇宙通信システム1では、フレーム化処理部25において生成したフレーム化データ6_1〜6_nを、多重化処理部27bにおいて複数に分離し、これを衛星通信部29を介して他の図示しない人工衛星へ送信し、当該他の図示しない人工衛星から地球4上の図示しない地上通信ネットワークへと送信するようにしてもよい。この図示しない地上通信ネットワークは、上述した地上通信ネットワーク5とは異なるものである。
【0064】
かかる場合では、分離したフレーム化データ6_1〜6_5を、図示しない一の人工衛星へ送信し、この一の人工衛星は、図示しない一の地上通信ネットワークへとこれを送信し、また分離したフレーム化データ6_6〜6_10を、図示しない他の人工衛星へ送信し、この他の人工衛星は、図示しない他の地上通信ネットワークへとこれを送信し、更に残りのフレーム化データ6_11〜6_nを地上通信ネットワーク5へと送信するようにしてもよい。これによりいわゆるダイバーシチーと同様の効果を発揮させることが可能となる。なお、このプロセスにおいては、多重化処理部27において、L2/L3スイッチと同様の機能を実装させることにより、これらを自動的に分離させることができる。
【0065】
なお、本発明において、地上局51又は通信端末53は、受信したフレーム化データから受信品質を解析し、この解析した受信品質に基づいて、人工衛星2に対して分解能を可変制御するための制御信号を送信し、人工衛星2は、受信した制御信号に基づいてAD変換部24におけるAD変換の分解能を制御するようにしてもよい。 特に本発明においては、システムの柔軟性を向上できる代わりに、通信ネットワークに対するデータ伝送量の負荷が大きくなる虞もある。ちなみに、この通信ネットワークにおけるデータ伝送量は、AD変換部24におけるサンプリングレートと、AD変換部24における分解能の双方に比例する。
【0066】
ちなみにこのAD変換部24におけるサンプリングレートは、検出を望む無線帯域幅により支配され、最低でも帯域幅の2倍のサンプリングレートが必要となる。これに対してAD変換部24における分解能は、伝送すべきフレーム化データのSN比に関する品質を決定する。このAD変換部24において分解能を減少させると、ネットワーク全体に対する負荷、即ち、所要伝送レートを減少させることができるが、却って信号品質が悪化してしまう。しかしながら、アプリケーションによっては、このAD変換部24における分解能がオーバースペックとなる場合もある。このため、地上局51又は通信端末53は、信号品質が多少悪化しても問題が無いものと判断した場合に、人工衛星2に対して上記制御信号を送信する。人工衛星2は、制御信号を受けた場合に、これに基づいてAD変換部24における分解能を減少させるための制御を行うことになる。
【0067】
また本発明では、いわゆる電波監視のようにストリーミング的に常時受信電波を伝送し続ける必要は無く、上述した処理自体を間欠的に行うものであってもよいことは勿論である。
【0068】
次に、本発明を適用した宇宙通信システム1において、図5に示すように地球4上の地上通信ネットワーク5から人工衛星群7を構成する人工衛星8a、8bを介して地球4上のある宛先領域A〜Cへデータを送信する場合について図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0069】
図6は、かかる地上通信ネットワーク5からのデータを宛先領域A〜Cへ中継する人工衛星群7を構成する一の人工衛星8aの構成を示している。ちなみにこの人工衛星8の構成において、上述した人工衛星2と同一の構成要素、部材は、同一の符号を付すことにより、以下での説明を省略する。この人工衛星8aには、地上通信ネットワーク5から直接データが送られてくる場合もあれば、人工衛星8bを介して間接的にデータが送られてくる場合もある。
【0070】
人工衛星8aは、k個からなるビームフォーミング用のアンテナ素子21_1〜21_kと、このアンテナ素子21_1〜21_kの入力端に接続されている送信部72と、この送信部72に接続されているDA変換部74_1〜74_kと、このDA変換部74_1〜74_kに接続されているフレーム化処理部75と、フレーム化処理部75に接続されている光−電気変換部76と、光−電気変換部76の入力側に接続されている逆多重化処理部77と、逆多重化処理部77の入力端に接続され、他の人工衛星8b又は地球4上の地上通信ネットワーク5との間でデータを送受信する衛星通信部79とを備えている。また、この人工衛星8aは、アンテナ素子21_1〜21_kや送信部72を制御するためのアンテナ・周波数制御部30と、フレーム化処理部25における処理を制御するフレーム化制御部31とをさらに備えている。
【0071】
衛星通信部79は、地上通信ネットワーク5から直接的に又は他の人工衛星8bを介して間接的に送信されてくる、多重化された光信号からなるフレーム化データを受信する。
【0072】
逆多重化処理部77は、衛星通信部79から送られてくるフレーム化データを、その宛先アンテナ情報にもとづき各アンテナ素子21_1〜21_kに対応したn(=k)個のフレーム6_1〜6_kに分割し、これを光−電気変換部76へと出力する。
【0073】
光−電気変換部76は、逆多重化処理部77から送られてくるフレーム化データとしてのフレーム6_1〜6_kを光−電気変換するための素子で構成される。光−電気変換部76は、供給される光信号を電気信号に変換する、いわゆるホトダイオード(PD)等で構成されていてもよい。
【0074】
フレーム化処理部75では、それぞれアンテナ素子21_1〜21_kに対応させてフレーム6_1〜6_kについて各種フレーム処理を行う。このフレーム化処理部75で行うフレーム処理としては、TCP/IPフレーム化された信号からヘッダ部68を取り除く他、各フレーム化データに送信タイミング同期用に挿入されたヘッダ情報をもとに、異なるアンテナ素子間での信号送出タイミングの同期を実現するための処理を行う。なお、逆多重化処理部77の構成を省略する場合には、光−電気変換部76で光フレーム信号をシリアルに受信し、これからフレーム化処理部の中で必要に応じてパラレルなk個のフレームを抽出するという構成としてもよい。また。このフレーム化処理部75は、送られてくるフレーム6_1〜6_kから少なくとも実データ部66bに記述されている情報を抽出し、これをDA変換部74_1〜74_kへと送信する。
【0075】
DA変換部74_1〜74_kは、いわゆるDAコンバータで構成され、フレーム化処理部75から供給されるデジタル信号からなる実データをアナログ信号に変換し、これを送信部72へと出力する。
【0076】
送信部72は、アンテナ・周波数制御部30による制御の下で、RF周波数へ周波数変換する。
【0077】
アンテナ素子21_1〜21_kは、地球4上における各宛先領域に対してそれぞれ信号を送信する。ここでは、地球4上の宛先領域A〜Cに対してビームフォーミングにより信号を送信する場合を例にとる。ちなみに、各アンテナ素子21_1〜21_kに供給される信号は、既にその前段において予め各アンテナ素子21_1〜21_kに対応したフレームに分割されている。
【0078】
なお、この図5に示す宇宙通信システム1における地上通信ネットワーク5は、上述した図3の構成を同一にするため、以下での説明を省略する。
【0079】
次に、この図5に示す宇宙通信システム1により、地球4上の地上通信ネットワーク5から人工衛星群7を構成する人工衛星8a、8bを介して地球4上のある宛先領域A〜Cへデータを送信する動作について説明をする。
【0080】
先ずユーザは、通信端末53を介して、情報を送信したい宛先領域を指定する。例えばユーザが通信端末53aを介して、宛先領域Aを指定した場合には、送信フレーム6のヘッダ部68においてその宛先領域Aの関する情報が記述されることになる。ちなみに、このヘッダ部68は、上述したようにTCP/IPフレームに対応したものであるため、L2/L3スイッチネットワークとして構成される地上通信ネットワーク5において所望のデバイスに自在に配信することが可能となる。通信端末53aからの上述したフレームデータ6は、スイッチ52を介して地上局51へと送信され、この地上局51においてフレーム6_1〜6_kに複製されると同時にビームフォーミングのための適切な信号処理が上記各フレーム6に施される。次にこれらフレーム6_1〜6_kは電気−光変換された上で人工衛星群7へと光通信により送信される。
【0081】
このように地上局51では、宛先領域に関する情報に応じて指向性を適応的に変化させるための信号処理を各宛先アンテナ素子に対応するフレーム6_1〜6_k毎実施する。この信号処理は、地上局51に行わせる場合に限定されるものではなく、通信端末53側において実行させるようにしてもよい。
【0082】
ちなみに、この地上通信ネットワーク5における他の通信端末53b、53cから同時にそれぞれ異なる宛先領域に関する情報がヘッダ部68に付されたフレームデータ6が送信された場合には、地上局はこれらを上記と同様の手段にて、すなわち6_1〜6_kのフレーム化データに複製すると同時にビームフォーミングのための適切な信号処理が各上記各フレーム化データに施した後に合成して、人工衛星群7へ送信する。
【0083】
地上通信ネットワーク5から直接的に又は他の人工衛星8bを介して間接的にフレーム6が送られてきた人工衛星8aは、これを衛星通信部79を介して受信し、逆多重化処理部77においてこれを各アンテナ素子21_1〜21_kに対応したフレーム化データ6_1〜6_kに分割する。
【0084】
逆多重化処理部77において分割されたフレーム化データとしてのフレーム化データ6_1〜6_kは、光−電気変換部76において光−電気変換された上で、フレーム化処理部75において各種フレーム処理が行われる。
【0085】
その後段において、各フレーム6_1〜6_kは、DA変換部74_1〜74_kにおいてそれぞれDA変換され、さらに送信部72においてRF周波数へと周波数変換される。このとき送信部72は、地上通信ネットワーク5からの制御情報に基づき、アンテナ・周波数制御部30による制御の下で、その周波数変換が制御されるものであってもよい。
【0086】
送信部72から出力される信号は、アンテナ素子21_1〜21_kを介してビームフォーミングの原理により地球4上における各宛先領域A〜Cへと送信されることになる。このとき、各アンテナ素子より送信される信号はフレーム6_1〜6_kの実データ部66bをDA変換して生成される信号であるが、それぞれのアンテナ素子からの送出タイミングは、ヘッダ部68の復調によって得られる送信タイミングを用いて、アンテナ間の時間同期を行うようにしてもよい。また、複数の通信端末53a〜53cにより複数の宛先領域A〜Cが指定されていた場合には、このアンテナ素子21_1〜21_kを介してビームフォーミングにより当該宛先領域A〜Cへと信号を送信することになる。
【0087】
このように本発明を適用した宇宙通信システム1においては、地上通信ネットワーク5内の地上局51又は通信端末53において、宛先領域A〜Cが指定された信号を予めアンテナ21_1〜21_kに応じてビームフォーミング用にフレーム化しておく。具体的には、宛先領域に関する情報に応じて指向性を適応的に変化させるための信号処理を各宛先アンテナ素子に対応するフレーム6_1〜6_n毎実施しておき、これを人工衛星8aを中継させてビームフォーミング用のアンテナ素子21_1〜21_kを介して各宛先領域A〜Cに信号を送信する。
【0088】
このため、従来において人工衛星内において行われていた、各アンテナ素子から送信すべき信号につき施す位相遅延処理や、その他各種ビームフォーミングに関する処理を、通信端末53や制御局54、又は地上局51側において実行させつつ、所望の宛先領域に信号を送信することが可能となる。このため、本発明では、かかるビームフォーミングに基づく多大な信号処理負担を人工衛星8に負担させることが無くなり、また人工衛星8内の電力の消費を抑制することにより、人工衛星8自体の軽量化、低消費電力化を図ることが可能なシステム構成とすることが可能となる。またこの通信端末53や制御局54又は地上局51において実行するビームフォーミングに関する処理は、従来のように人工衛星に搭載可能な信号処理能力や、人工衛星が供給できる消費電力による制限を受けることも無くなることから、本来のところ人工衛星において搭載が困難であった大きな消費電力が必要となる高度かつ高速なビームフォーミングの計算処理を行うことが可能なシステム構成とすることも可能となる。
【0089】
また本発明では、ビームフォーミング処理を地上通信ネットワーク5側に担わせることが可能となることから、事後的に信号処理アルゴリズム等が開発された場合においても、これをその通信端末53へ容易に組み込むことが可能となる。また、ビームフォーミング処理回路を逐次バージョンアップできるシステムとすることで、宇宙通信システム1全体の汎用性や柔軟性を向上させることも可能となる。
【0090】
なお、上述した例において、地上通信ネットワーク5としてのL2/L3スイッチネットワークで交換可能なL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付す場合を例にとり説明をしたが、これに限定されるものではなくL4(トランスポート層)ヘッダを付すようにしてもよい。これにより、地上通信ネットワーク5においてL4を介したデータの配信も可能となり、より汎用性を向上させることも可能となる。
【0091】
なお、この図5に示す宇宙通信システム1においては、各アンテナ素子21_1〜21_kにより検出された電磁波が予め変調されていた場合にこれを復調することなくそれぞれAD変換するようにしてもよい。
【0092】
また地上局51又は制御局54又は通信端末53が、送信すべきデータとして既に変調が施された信号を実データ部に有するフレーム化データを送信した場合、人工衛星8は、受信したフレーム化データから抽出した実データ部を復調することなく、これらを複数のアンテナ素子21を介して各宛先領域に対して送信するようにしてもよい。これにより、人工衛星8において、信号を復調するためのシステムを組み込む必要が無くなることから、人工衛星8に対する処理負担を軽減でき、更なる軽量化、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0093】
また、本発明を適用した宇宙通信システム1では、例えば人工衛星2と人工衛星8のそれぞれの機能を併せ持つようにしてもよい。即ち、図1に示すように、人工衛星群3のうち何れか一の人工衛星2aにより地球上のある観測領域A〜Cの電磁波を検出し、これを他の人工衛星2bを介して地球上の地上通信ネットワーク5へと送信する動作と、図5に示すように地球4上の地上通信ネットワーク5から人工衛星群7を構成する人工衛星8a、8bを介して地球4上のある宛先領域へデータを送信する機能を一つの宇宙通信システム1の下で実行するようにしてもよい。
【0094】
次に本発明を適用した宇宙通信システム1の技術的思想を、地球4上の移動端末間の通信に適用する場合について説明をする。
【0095】
図7は、かかる宇宙通信システム1の技術的思想を適用した無線通信システム101の構成例を示している。この無線通信システム101は、いわゆるROF(Radio over Fiber)技術を用いる無線伝送システムで得られる効果に加えて、無線信号の有線ネットワーク内での柔軟な交換機能を備えるシステムであり、歩行者が携帯可能な移動体端末としての移動端末111a、111bと、移動端末111aとの間で無線信号の送受信を行うことにより通信を中継するための基地局112aと、移動端末111bとの間で無線信号の送受信を行うことにより通信を中継するための基地局112bと、各基地局112a、112bに接続される光ファイバ114を介して連結される複数のスイッチ113と、一のスイッチ113に光ファイバ114を介して接続される制御局54とを備えている。スイッチ113並びに光ファイバ114により構成されるネットワークを、以下有線通信ネットワーク119という。
【0096】
なお、この図7は、無線通信システム101における基地局112と光ファイバ114との接続形態の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。また、光ファイバ114の代替として電気的信号を送受信する図示しない電線や無線回線で構成してもよい。かかる場合には、後述する光−電気変換並びに電気−光変換のステップは全て省略されることになる。
【0097】
以下では、移動端末111aからの電波を基地局112aにより捕捉し、これを光ファイバ114、スイッチ113を介して基地局112bへと送信し、さらにこの基地局112bから移動端末111bに向けてビームフォーミングにより電波を放射することにより信号を送信する場合を例にとり説明をする。
【0098】
図8(a)は、この基地局112aの構成を、また図8(b)は、この基地局112bの構成を示している。
【0099】
基地局112aは、k個からなるビームフォーミング用のアンテナ素子121_1〜121_kと、このアンテナ素子121_1〜121_kの出力端に接続されている受信部122と、この受信部122に接続されているAD変換部124_1〜124_kと、このAD変換部124_1〜124_kからデジタルデータが供給されるフレーム化処理部125と、フレーム化処理部125からフレームデータが供給される電気−光変換部126と、電気−光変換部126の出力側に接続されている多重化部127と、この多重化処理部127の出力端側に設けられたインターフェース128と、制御部129を備えている。
【0100】
基地局112bは、k個からなるビームフォーミング用のアンテナ素子131_1〜131_kと、このアンテナ素子131_1〜131_kに接続されている送信部132と、この送信部132に接続されているDA変換部134_1〜134_kと、このDA変換部134_1〜134_kに接続されているフレーム化処理部135と、フレーム化処理部135に接続されている光−電気変換部136と、光−電気変換部136の出力側に接続されている逆多重化処理部137と、この逆多重化処理部137の入力端側に設けられたインターフェース138と、制御部139とを備えている。
【0101】
アンテナ素子121_1〜21_kは、基地局112a近傍の複数の電波源からの電磁信号を捉え、この捕捉したこの電波信号を出力する。即ち、この複数のアンテナ素子121_1〜121_kにより、基地局112aの近傍領域の電波源を検出することが可能となる。ここでは領域D〜Fから電波を受信する場合を例にとり説明をする。
【0102】
受信部122は、アンテナ素子121_1〜121_kからの出力信号が供給され、これを高周波増幅するとともに、制御部129による制御の下で、入力信号を低域周波数の信号へ周波数変換する。
【0103】
AD変換部124_1〜124_kは、いわゆるADコンバータで構成され、受信部122から供給されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、これをフレーム化処理部125へと出力する。ちなみに、このAD変換部124は、アンテナ素子121の受信信号をそれぞれAD変換することになる。
【0104】
フレーム化処理部125は、制御部129による制御の下で、AD変換部124_1〜124_kから供給されるデジタル信号をフレーム化データ列に変換する。フレーム化処理部125は、IPプロトコル用のIPヘッダやイーサネット(登録商標)用のMACヘッダを付加する、更には適切なラベルやタグを挿入する等のMAC処理を施すことによりMACフレームを生成する。
【0105】
なお、以下の説明においては、スイッチ113と、光ファイバ114からなる有線通信ネットワーク119がL2/L3スイッチネットワークとして構成されている場合において、フレーム化処理部125は、かかるL2/L3スイッチネットワークで交換可能なL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付すTCP/IPフレーム化処理を施す場合を例にとり説明をするが、これに限定されるものではない。フレーム化処理部125は、それぞれアンテナ素子に対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成することになる。
【0106】
電気−光変換部126は、フレーム化処理部125において生成されたフレームデータを電気−光変換するためのLD等の光素子で構成される。
【0107】
多重化処理部127は、電気−光変換部126からの光フレーム化データを多重し、これをインターフェース128へ出力する。インターフェース128、138は、L(レイヤー)1による物理的なインターフェースであり、接続された光ファイバ114を介して信号が送受信されることになる。
【0108】
逆多重化処理部137は、有線通信ネットワーク119を介してインターフェース138から送信されてくるフレーム化データを各アンテナ素子131_1〜131_kに対応したフレーム6_1〜6_kに分割し、これを光−電気変換部136へと出力する。
【0109】
光−電気変換部136は、逆多重化処理部137から送られてくるフレーム化データとしてのフレーム6_1〜6_kを光−電気変換するためのPD等で構成されている。
【0110】
フレーム化処理部135では、それぞれアンテナ素子131_1〜131_kに対応させてフレーム6_1〜6_kについて各種フレーム処理を行う。
【0111】
DA変換部134_1〜134_kは、いわゆるDAコンバータで構成され、フレーム化処理部135から供給されるデジタル信号からなる実データをアナログ信号に変換し、これを送信部132へと出力する。
【0112】
送信部132は、制御部139による制御の下で、RF周波数へ周波数変換する。
【0113】
アンテナ素子131_1〜131_kは、基地局112b周囲における各宛先領域に対してそれぞれ信号を送信する。ちなみに、このアンテナ素子131は、アンテナ素子121と同様にk個で構成される場合を想定しているがこれに限定されるものではなく、k個よりも増減してもよいことは勿論である。ここでは、宛先領域G〜Iに対してビームフォーミングにより信号を送信する場合を例にとり説明をする。
【0114】
スイッチ113は、例えばイーサネット(登録商標)プロトコル規格のいわゆるイーサスイッチに準拠したIPルータやL2/L3スイッチ、ATMスイッチ等である。このスイッチ113には、小規模LANで使用される安価なスイッチで適用されていてもよく、光ファイバ114を接続するためのポートが複数に亘り設けられている。図7に示す例では、スイッチ113とスイッチ113とが光ファイバ114を介して接続されており、このスイッチ113と光スイッチ113とで接続される有線通信ネットワーク119をイーサネット(登録商標)として活用している。
【0115】
制御局54は、この有線通信ネットワーク119において必要とされる制御処理全般と変復調処理、また必要に応じてスイッチ113を経由して受信したフレーム化データに含まれる電磁波信号の復調と復調データの再フレーム化処理とネットワークへの再送信を実施する。
【0116】
移動端末111は、基地局112との間でデータを送受信することが可能なデバイスとして構成され、例えば携帯電話、ノート型PC等である。
【0117】
次に、本発明を適用した無線通信システム101において、実際に移動端末111aから移動端末111bに向けて情報を送信する動作について説明をする。
【0118】
先ず、アンテナ素子121_1〜121_kにより、基地局112a周囲の各領域D〜Fにおける電波を検出する。ここでは、アンテナ素子121_1〜121_kにより、電波が検出されることになる。
【0119】
アンテナ素子121_1〜121_kからの実データが送られてきた受信部122では、これを先ず低雑音増幅し、さらに低域周波数の信号へ周波数変換する。受信部122から出力された実データは、AD変換部124_1〜124_kにおいてそれぞれAD変換される。デジタルビームフォーミングを行うためにはこの段においてデジタル信号に変換する必要があるためである。
【0120】
次にフレーム化処理部125において、AD変換部124_1〜124_kから供給されるデジタル信号に、IPプロトコル用のIPヘッダやイーサネット(登録商標)用のMACヘッダを付加する。実際にこのフレーム化処理部125において生成されるフレームデータの構成例は、図4に示すものとほぼ同様であり、またフレーム化処理の詳細も上述したフレーム化処理部125と同様であるため、以下での説明は省略する。
【0121】
次に、フレーム化処理部125において各種処理がなされた各フレーム6_1〜6_kは、電気−光変換部126において電気−光変換され、さらに多重化処理部127においてこれらが互いに合波され、インターフェース128を介して有線通信ネットワーク119へと送出されることになる。
【0122】
フレーム6が基地局112aから送出されてきた有線通信ネットワーク119では、これをスイッチ113を介して宛先となる制御局54もしくは基地局112へと送信する。スイッチ113では、マルチキャスト機能に基づいてフレーム化データをコピーし、これを複数の基地局112bや制御局54へ分配する役割を担うことになる。ちなみに、このスイッチ113は、受信したフレーム化データにおけるフレーム6のヘッダ部68のみを読み取り、上記ヘッダ部に付された宛先アドレスやラベル、タグ等を検出して、これを宛先となる制御局54や次の宛先となるスイッチ113、基地局112bへと導くことも可能となる。
【0123】
基地局112bは、インターフェース138を介してこのフレーム6を受信し、更に逆多重化処理部137によりこれをフレーム6_1〜6_kに分割する。更に、光−電気変換部136において各フレーム6_1〜6_kを光−電気変換した上で、フレーム化処理部135において各種フレーム処理が行われる。フレーム化処理としては、主に各フレーム化データに含まれる実データ部のみを抽出する処理と、ヘッダ部からは異なるアンテナ間で送信される信号間の時間同期をとるためのタイミング情報を検出する。
【0124】
その後段において、各フレーム6_1〜6_kは、DA変換部134_1〜134_kにおいてそれぞれDA変換され、さらに送信部132においてRF周波数へと周波数変換される。このとき送信部132は、フレーム化処理部135においてヘッダ部68から抽出したフレームの属性に基づいて、制御部139による制御の下、使用するRF周波数の制御を行うようにしてもよい。また、ヘッダ部68の復調により得られる送信タイミングをクロックとしてフレーム6_1〜6_n間の時間同期をとるようにしてもよい。
【0125】
最後に、上記処理に基づき、フレーム6_1〜6_kの実データ部から得られた信号は、それぞれ、それぞれがアンテナ素子131_1〜131_kを介してビームフォーミングの原理により、各宛先領域G〜Iへと送信される。
【0126】
ここで、上述した無線通信システム101の制御について、更に別観点から説明をする。
【0127】
k個のアンテナ素子121_1〜121_kが観測した信号を表す観測信号ベクトルをX1とし、これから所望のビーム方向からのみの信号を検出するために適切な重みづけ信号処理を行うための受信重みづけベクトルをW1とした場合、所望のビーム方向から到来した信号Y1の抽出はY1=W1X1の行列演算信号処理により可能となる。このため、基地局112aに対して所定方向に位置する各領域D〜Fの信号Y1も、このステアリングベクトルW1をコントロールすることにより、読み出すことが可能となる。
【0128】
また、地上局112bについても、l個のアンテナ素子131_1〜131_lが観測した信号を表す観測信号ベクトルをX2とし、これに適切な重みづけ信号処理を行うためのステアリングベクトルをW2とした場合、所望のビーム方向の信号Y2の抽出はY2=W2X2の行列演算信号処理により可能となる。このため、基地局112bに対して所定方向に位置する各領域G〜Iの信号Y2も、このステアリングベクトルW2をコントロールすることにより、読み出すことが可能となる。
【0129】
逆に、送信すべき信号方向に対応するステアリングベクトルW2の逆行列を用いて、W2-1Y2=X2の行列演算により、所望の方向に(所望の領域G〜Iに)信号を各アンテナ素子131_1〜131_lから放射することが可能となる。
【0130】
このため、基地局112aが受信可能な任意の方向からの到来波を、基地局112bが任意の方向へ送信するためには、基地局112bが基地局112aにおけるアンテナ素子121_1〜121_kから信号を受信し、W2-1W1X1=X2の演算で得られる送信信号ベクトルX2に対応する信号を、基地局112bのアンテナ素子131_1〜131_lが送信すれば、これが実現可能になる。これは基地局112aにおいてビームフォーミングに関する各信号処理を実施することなく、その処理負担を基地局112bに負わせることが可能となる。即ち、有線通信ネットワーク119を介した受信ビームと送信ビーム間のシームレスなリンクを実現することが可能となる。
【0131】
このように本発明を適用した無線通信システム101では、送信元の移動端末111aから、例えば宛先領域Gにある移動端末111bが指定された信号をフレーム化しておき、これを有線通信ネットワーク119を中継させて基地局112bへと送信する。このフレーム化の段階において、基地局112aが一の方向から無線信号を検出する際の受信重みづけベクトルと、他の地上局112bが他の方向へ無線信号を送信する際の送信重みづけベクトルの逆数に基づいて、当該地上局112bが各アンテナ素子131_1〜131_lの送信信号を生成する。これにより、従来において地上局112a、基地局112bにおいてそれぞれ行われていた、各アンテナ素子から送信すべき信号につき施す位相遅延処理や、その他各種ビームフォーミングに関する処理を、基地局112b側において実行させつつ、所望の宛先領域に信号を送信することが可能となる。このため、本発明では、かかるビームフォーミングに基づく多大な信号処理負担を双方の基地局112に負担させることが無くなる。
【0132】
ちなみに、これら重み付けベクトルを取得する方法として、GPS(Global Positioning System)等を利用し、基地局112自身が移動端末111自身の地理的な座標を特定するようにしてもよいし、移動端末111が既知の制御信号を送信することにより、これを受信した基地局112や別途設置された制御局54が到来方向推定と呼ばれる信号処理を施すことにより、あくまで基地局112や制御局54から見た移動端末の方向を取得するようにしてもよい。この到来方向推定により、移動端末の座標を取得する際には、例えば、ESPRIやMUSIC等のアルゴリズムを使用するようにしてもよい。
【0133】
なお、上記では説明を簡単化するために、送信および受信に関するビームフォーミングの処理を一括してフレーム化データをネットワークから受信する側の基地局で実施する例を示したが、上記一括信号処理を地上ネットワーク上に配した制御局のほか、フレーム化データをネットワークを経由して送信する側の基地局によって実施してもよい。
【0134】
すなわち、無線通信システム101は、基地局112aが備えるk個のアンテナ素子121_1〜121_kが各々受信する信号を有線通信ネットワーク119を介して制御局54が受信して信号処理するステップ、基地局112aが備えるk個のアンテナ素子121_1〜121_kが各々送信すべき信号を有線通信ネットワーク119を介して制御局54が供給するステップ、基地局112bが備えるk個のアンテナ素子131_1〜131_lが各々受信する信号を有線通信ネットワーク119を介して制御局54が受信して信号処理するステップ、基地局112bが備えるl個のアンテナ素子131_1〜131_lが各々送信すべき信号を有線通信ネットワーク119を介して制御局54が供給するステップの1以上を実行するものであってもよい。
【0135】
これにより、基地局112aが移動端末111aに提供するビームパターンDと基地局112bが移動端末111bに向けて提供するビームパターンGの間で無線リンクを確立することが可能となる。なお、各基地局112a、112bは、移動端末111a、111bに対する信号の変復調機能はもちろんのこと、ビームフォーミング処理のための機能を実装する必要が無くなり、設備コストを抑えるとともに、高機能なビームフォーミング技術を搭載した基地局112を設置することが可能となる。即ち、無線通信システムの低コスト化と高機能化の双方を実現することができる。
【0136】
また、このビーム間で送受信されるRF信号については、必ずしも制御局54で復調してブリッジする必要はなく、コネクションを形成する(信号をブリッジする)時点でデータの伝送宛先や宛先基地局におけるビームフォーミング情報さえ分ければよい。データがいかなる変調方式で変調されていても、またいかなる符号化方式によって符号化されたものであっても、システム内において復調・復号するステップを設けることなく通信相手の移動端末111まで伝送すること可能となる。これにより、極めてセキュアな無線リンクの形成を実現できる。
【0137】
かかるプロセスについて詳細に説明する。基地局112a付近にて通信可能となった端末111aは、先ず自局の登録を制御局54に対して行うべく、制御フレームを送信する。この制御フレームを含む信号は基地局112aが有するアンテナ素子121_1〜121_kによって受信され、それぞれがAD変換されて有線通信ネットワーク119において伝送交換が可能になるようにフレーム化処理が施されて送信される。
【0138】
制御局54は、かかる基地局112aにおいて生成されたフレームを受け取ることで端末111aをデータベースに登録する。このとき、受信したフレーム信号121_1〜121_kを解析することで基地局112aからみた移動端末111aが送信した無線信号の到来方向を知ることが可能となる。これにより、制御局54は基地局112aが移動端末111aとの間で送受信すべき信号をどのような重みづけベクトルWaによって信号処理し、また基地局112aにおいて各アンテナ素子121_1〜121_kが送受信すべき信号とすればよいかを知ることができる。
【0139】
これと同様に、移動端末111bについても基地局112bから送られてきたフレームを解析することにより、基地局112aが移動端末111aとの間で送受信すべき信号をどのような重みづけベクトルWbによって信号処理し、また基地局112bにおいて各アンテナ素子131_1〜131_kが送受信すべき信号とすればよいかを知ることができる。
【0140】
移動端末111aが送信する無線信号Yaは、基地局112aの各アンテナ素子121_1〜121_kで受信された信号(本信号ベクトルをXaとする)が更にフレーム化されて制御局54まで伝送されるが、制御局54はこれらから不要なヘッダ情報など取り除き、以下の如くビームフォーミング処理を施して、移動端末111aが送信した無線信号Yaを得る。
【0141】
Ya=WaXa (1)
さらに、ここで取得したYaは、基地局112bを介してビームパターンGにて通信相手となる移動端末111bへと伝送される必要があるが、基地局112bと移動端末111b間で無線通信を行うためビームパターンG形成に必要となる重みづけベクトルWbについても、上記と同様の手段にて制御局54にては既に把握されている状況とする。すなわち、ビームパターンGは、
Yb=WbXb (2)
【0142】
また、ビームフォーミング処理は線形演算のため、送信信号ベクトルXbが必要な際には、
Xb =Wb-1Yb (3)
により得ることが可能である。(1)と(3)式から基地局112bは、
Xb=Wb-1Ya= Wb-1 WaXa (4)
を送信ベクトルとして、l個のアンテナ素子131_1〜131_lの送信信号を得て送信すれば、所望のビームパターンGで無線信号Yaが送信されることになる。
【0143】
以上のプロセスは、フレーム化データから、アンテナ素子121と一の移動端末111aとの間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別するとともに、フレーム化データに記述されている宛先としての他の移動端末111bに関する情報から、アンテナ素子131と移動端末111bとの間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別し、これら識別した各アンテナ指向性に基づいて基地局112aにおけるアンテナ素子121と、他の基地局112bにおけるアンテナ素子131がそれぞれ移動端末111a、111bとの間でビームフォーミングを行うための制御を行うことを意味している。
【0144】
なお、実際に移動端末111aが移動端末111bとの通信を要求した場合、まずその通信要求フレームが制御局54宛で伝送されると同時に、制御局54はその通信要求に関する情報を移動端末111b宛に伝送する。そして、移動端末111bは、これに応じることを示す制御フレームを制御局54宛に返信し、さらにその旨を制御局54が端末111aに返信することにより、移動端末111aと移動端末111bとの間で通信コネクションが確立されることになる。
【0145】
因みに、無線端末111bが送信する無線信号が基地局112bおよび制御局54を経由して、更に基地局111aからビームパターンDにて送信される過程は上記と同様である。
【0146】
また、(1)〜(4)の線形演算から、基地局112aが備えるアンテナ素子数と、基地局112bが備えるアンテナ素子数が必ずしも同一である必要がないことは勿論である。
【0147】
なお、上記のような双方向通信における通信セッションの開始には、特に近年において、SIP(Session Initiation Protocol)を用いることが多く、本通信システムにおいても端末間の通信セッション開始のプロトコルとしてSIPを用いるようにしてもよい。
【0148】
なお、本発明を適用した無線通信システム101は、互いに通信を実行する複数の移動端末111a、111b間において、基地局112a、112bを介したいわゆるピア ・ツー・ピア (P2P)通信方式で通信を実行するものであってもよい。
【0149】
このP2P通信方式に基づいて、例えば移動端末111aと移動端末111bとの間で通信を開始する際には、基地局112aから先ず制御局54へアクセスする。そして、このアクセスされた制御局54により移動端末111a、111b間のP2P通信リンクが確立される。これとともに制御局54から移動端末111aのアドレス及び/又は移動端末111aが属する基地局112aのアドレスおよびビーム方向に関する情報が、通信相手となる移動端末111b及び/又は移動端末111bが属する基地局112bへ通知される。また、制御局54から、移動端末111bのアドレス及び/又は移動端末111bが属する基地局112bのアドレスおよびビーム方向に関する情報が、それぞれ通信相手となる移動端末111a及び/又は移動端末111aが属する基地局112bへと通知される。移動端末111a並びに移動端末111bは、その通知された各アドレスに基づいて、P2P通信リンクを介してその後の通信を実行していくことになる。
【0150】
このP2P通信リンクの確立や上記アドレスの管理は、上述したSIP(Session Initiation Protocol)に基づいて実行するようにしてもよい。この場合、制御局54がSIPサーバーの役目を担うことになる
【0151】
次に、本発明を適用した宇宙通信システム1の他の実施の形態について説明をする。図9は、他の実施の形態としての宇宙通信システム201の全体構成を示している。宇宙通信システム201は、地球における周回軌道を周回する複数の人工衛星202からなる人工衛星群203と、地球上に構築された地上通信ネットワーク5とを備えている。
【0152】
この宇宙通信システム201は、地球上の地上通信ネットワーク5から人工衛星202を介して地球上のある宛先領域A〜Dへデータを送信するものである。なお、宛先領域A〜Dは、4箇所に限定されるものではないことは勿論である。
【0153】
人工衛星202は、図10に示すように、k個からなるビームフォーミング用のアンテナ素子221_1〜221_kと、このアンテナ素子221_1〜221_kの入力端に接続されている送受信部222と、送受信部222に接続されているAD/DA変換部223と、k個のアンテナ素子221に対応したk個のポートを介してAD/DA変換部223に接続されている移相器ネットワーク224と、後述するn個のフレーム数に応じてn個のポート232_1〜232_kを介して移相器ネットワーク224に接続されているフレーム化処理部225と、フレーム化処理部225に接続されているL2/L3スイッチ226と、L2/L3スイッチ226に接続されている光モデム228とを備え、更に地上通信ネットワーク5との間でデータを送受信する衛星通信部229が光モデム228に接続され、L2/L3スイッチ226、フレーム化処理225、移相器ネットワーク224、送受信部222が制御部230にそれぞれ接続されている。ちなみに、この人工衛星202においては、アンテナ素子221の数kと、フレーム数nとは互いに異なる場合を想定している。
【0154】
衛星通信部229は、地上通信ネットワーク5から直接的に又は他の人工衛星202を介して間接的に送信されてくる、光フレーム化データを受信する。また、この衛星通信部229は、光モデム228から送信されてくる光フレーム化データを地上通信ネットワーク5へと送信する。
【0155】
光モデム228は、衛星通信部229において受信した光信号を増幅し、さらに光−電気変換する処理、或いはL2/L3スイッチ226から出力されてきた電気フレーム化データを電気−光変換する処理、その他各種信号処理を行う。
【0156】
L2/L3スイッチ226は、光モデム228から送信されてくるフレームデータについて、L2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダに基づいてこれを対応する入出力ポート231_1〜231_nに伝送するためのスイッチで構成されている。この入出力ポート231_1〜231_nは、フレーム化データがヘッダ部に情報として持つことのできる宛先RFビームパターン数nに対応したものである。
【0157】
フレーム化処理部225は、それぞれフレーム化データの入力ポート231_1〜231_nとデータ出力ポート232_1〜232_n数nを対応させて各種フレーム処理を行う。このフレーム化処理部225で行うフレーム処理としては、例えばヘッダ部68に含まれている情報を読み出し、制御部230の制御の下で、後段における移相器ネットワーク224において電波の発信時のタイミング制御をする等の処理を行うようにしてもよい。このフレーム化処理部225では、入力ポート231_1〜231_nに入力されたフレーム化データからヘッダ部68を除去して実データ部66bの信号のみを抽出して出力ポート232_1〜232_nに対応させて出力する。このように、このフレーム化処理部225は、送られてくるフレーム6から少なくとも実データ部66bに記述されている情報を読み取り、これを対応する移相器ネットワーク224の入力ポートへと送出する。
【0158】
移相器ネットワーク224には、フレーム化処理部225から送信データが送信RFビームパターンに対応する入力ポート232_1〜232_nに送信されてくる。移相器ネットワーク224は、各入力ポート232_1〜232_nに入力された信号が対応するRFビームパターンで送信されるように、各入力データについてそれぞれビームフォーミングを実現するために送信データの6_1〜6_kへの分配と各分配された信号の移相量の調整、或いは時間遅延処理を施す。この移相器ネットワーク224は、上記信号処理により得られた送信データ6_1〜6_kをアンテナ素子221_1〜221_kに対応するAD/DA変換器の入出力ポートに供給する。なお、この移相器ネットワーク224における上述した制御では、制御部230による制御の下で、ヘッダ部68に記述されている情報を読み取ることにより、移相量を制御するようにしてもよい。
【0159】
AD/DA変換部223は、移相器ネットワーク223から送られてくるデジタル信号としての各アンテナ素子221_1〜221_kに対応したデータをアナログ信号に変換し、これを送受信部222へと出力する。また、AD/DA変換部223は、送受信部222から供給されるアナログ信号をAD変換して、これを移相器ネットワーク223へと出力する。ちなみに、移相器ネットワーク224が実行すべき信号処理は、アナログ領域で行うようにしてもよい。かかる場合において、このAD/DA変換部223と、移相器ネットワーク224との位置は逆転することになる。
【0160】
送受信部222は、AD/DA変換部223から入力されてくる信号を制御部230による制御の下で、RF周波数へ周波数変換し、これを各アンテナ素子221_1〜221_kへ出力する。また送受信部222は、各アンテナ素子221_1〜221_kから入力されてくる信号を制御部230による制御の下で、低域周波数の信号へ周波数変換し、これをAD/DA変換部223へ出力する。
【0161】
アンテナ素子221_1〜221_kは、地球上における各宛先領域A〜Dに対してそれぞれビームフォーミングにより信号を送信する。
【0162】
なお、この図9に示す宇宙通信システム201における地上通信ネットワーク5は、上述した図3の構成を同一にするため、以下での説明を省略する。
【0163】
次に、この図9に示す宇宙通信システム201により、地球上の地上通信ネットワーク5から人工衛星群203を構成する人工衛星202を介して地球上のある宛先領域A〜Dへデータを送信する動作について説明をする。
【0164】
先ずユーザは、通信端末53を介して、情報を送信したい宛先領域を指定する。例えばユーザが通信端末53aを介して、宛先領域Aを指定した場合には、ヘッダ部68においてその宛先Aに関する宛先情報が記述されることになる。この宛先情報は、宛先領域からそこに存在する一の宛先端末に至るまでのあらゆる情報を含む概念である。ちなみに、このヘッダ部68は、上述したようにTCP/IPフレームに対応したものであるため、L2/L3スイッチネットワークとして構成される地上通信ネットワーク5において所望のデバイスを自在に配信することが可能となる。通信端末53aからの上述したフレーム化データ6は、スイッチ52を介して地上局51へと送信され、この地上局51において電気−光変換した上で人工衛星群203へと光通信により送信される。
【0165】
ちなみに、この地上通信ネットワーク5における他の通信端末53からそれぞれ宛先領域に関する情報がヘッダ部68に付されたフレームデータ6が送信された場合には、地上局51はこれらを多重化して人工衛星群203へ送信する。
【0166】
地上通信ネットワーク5から直接的に又は他の人工衛星202を介して間接的にフレーム化データ6が送られてきた人工衛星202は、これを衛星通信部229を介して受信し、光モデム228において増幅し、光電変換する。
【0167】
光モデム228から出力されたフレーム化データ6は、L2/L3スイッチ226において出力ポート231_1〜231_nに振り分けられる。フレームデータ6は、予めL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダに送信ビーム方向やビームパターンを指定する情報のほか、宛先領域、宛先端末に関する情報を有している。更に特別な場合として衛星が使用すべきアンテナ素子221_1〜221_kに関する情報を有していてもよい。このL2/L3スイッチ226は、あくまで地上通信ネットワーク5に形成されたL2/L3スイッチに対応させたものである。これにより、地上通信ネットワーク5と同様に、このL2/L3スイッチ226においても同様にフレーム6の配信制御を行うことが可能となる。
【0168】
L2/L3スイッチ226が分配したフレーム化データは、その後段のフレーム化処理部225において、入力フレーム化データ6からその実データ部66bが抽出されて移相器ネットワーク224へと送信される。
【0169】
移相器ネットワーク224に送出されたデータは、n個の入力ポート232_1〜232_nに応じたビームフォーミングが形成されるように、入力データをアンテナ素子221_1〜221_kのk個分に対応させて導かれ、またそれぞれのアンテナ素子221_1〜221_kの信号毎に移相量を調整し、或いは時間遅延を施すことによりビームフォーミングを実現する。この移相器ネットワーク224から出力された各信号は、AD/DA変換部223へと送られて、それぞれDA変換され、さらに送信部222においてRF周波数へと周波数変換される。このとき送信部222は、地上通信ネットワーク5からの制御情報に基づき、制御部230による制御の下で、その周波数変換が制御されるものであってもよい。
【0170】
送信部222から出力された各RF信号は、アンテナ素子221_1〜221_kからビームフォーミングにより地球上における各宛先領域A〜Dへと送信されることになる。
【0171】
このように本発明を適用した宇宙通信システム201においては、地上通信ネットワーク5に適用されたL2/L3ネットワークに対応可能なTCP/IPフレーム化を予め行っておく。即ち、フレームデータ6には、予めL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダに宛先情報が付されている状態とした上でこれを人工衛星202へ送信する。この人工衛星202内においても、L2/L3スイッチ226を設けておくことにより、地上通信ネットワーク5から送信されてきたフレーム化データ6をヘッダ68に含まれている情報に基づいて所望の入出力ポート231_1〜231_nへ配信可能とされている。このため、本発明では、ビームフォーミングネットワークを構成する上で、極めて簡略な構成でこれを実現でき、人工衛星202内において特別に複雑な制御デバイスを設ける必要も無くなることから、人工衛星202自体の軽量化、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0172】
なお、この宇宙通信システム201では、人工衛星202により地球上のある観測領域A〜Dから、互いに異なる宛先に関する情報が付加された信号を複数の端末から検出し、これを人工衛星202を介して間接的に又はこれを介さず直接的に地球上の地上通信ネットワーク5へと送信するようにしてもよい。
【0173】
かかる場合には、アンテナ素子221_1〜221_kにより、地球上における各観測領域の電磁波を検出し、送受信部222における低雑音増幅、低域周波数への周波数変換、AD/DA変換部223におけるAD変換がなされて移相器ネットワーク224へと供給されることになる。ちなみに、この移相器ネットワーク224には、このアンテナ素子221の素子数であるk個の信号が供給されることになる。ちなみに、この移相器ネットワーク224の処理は、アナログ領域で行ってもよいことは勿論であることから、かかる場合には、移相器ネットワーク224の位置とAD/DA変換部223の位置とが逆転することになる。この移相器ネットワーク224からは、上記k個のアンテナ素子により形成可能なn個のビーム方向やビームパターンに対応した受信デジタル信号が出力されてフレーム化処理部225へと送られることになる。このフレーム化処理部225では、受け取ったデジタル信号についてヘッダ部68に上記n個のビームに関する情報や宛先に関する情報を含めたL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付すことによりTCP/IPフレーム化をする。
【0174】
また、フレーム化処理部225においてTCP/IPフレーム化されたフレームデータ6は、入出力ポート231_1〜231_nを介してL2/L3スイッチ226へと出力され、予めL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダに宛先情報が付されているため、これに基づいて所望の出力先へと伝送することが可能となる。このL2/L3スイッチ226において出力先の配信制御がなされた後に、フレーム化データ6は、光モデム228を経て衛星通信部229へと送られることになる。衛星通信部229では、この送られてきたフレームデータ6を地上通信ネットワーク5へ送出する。
【0175】
人工衛星202からフレーム化データを受信した地上局51は、これを地上通信ネットワーク5を構成する各通信端末53に対してスイッチ52を介して送信する。スイッチ52は、L2/L3スイッチで構成されていることから、この受信したフレームデータ6を、コピーし、これを異なる複数の通信端末53へ分配することも可能になる。
【0176】
このように本発明を適用した宇宙通信システム201においては、地球上のある観測領域A〜Dの複数の端末から互いに異なる宛先情報が付された信号を検出し、これを人工衛星202を介して地上通信ネットワーク5へと送信する場合においても同様に、L2/L3ネットワークに対応可能なTCP/IPフレーム化をフレーム化処理部224において実行し、またこれを自動的に所望の出力端子へと配信可能なL2/L3スイッチ226を設けておくことにより、ビームフォーミングネットワークを構成する上で、極めて簡略な構成でこれを実現でき、人工衛星202内において特別に複雑な制御デバイスを設ける必要も無くなることから、人工衛星202自体の軽量化、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0177】
また、上述したフレームデータ6について、予めL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付しておくことにより、L2/L3スイッチ226を用いて簡易なビーム切り替えや、制御情報に基づいたビームの高速な制御も可能となる。
【0178】
なお宇宙通信システム201は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、ヘッダ68に付される宛先情報をそれぞれ波長により区別した波長アドレス情報とした上で、いわゆる波長ラベルスイッチングにより、フレームデータを配信するシステムを採用するようにしてもよい。
【0179】
図11は、光フレーム化データが搬送波周波数として用いる光波長で宛先を識別する、いわゆる波長ラベルスイッチングが可能な場合の、人工衛星252の構成例を示している。この人工衛星252において、上述した人工衛星202と同一の構成要素、回路については、同一の符号を付すことにより、以下での説明を省略する。
【0180】
この人工衛星252は、k個からなるビームフォーミング用のアンテナ素子221_1〜221_kと、このアンテナ素子221_1〜221_kの入力端に接続されている送受信部222と、送受信部222に接続されているAD/DA変換部223と、AD/DA変換部223に接続されているフレーム化処理部225と、フレーム化処理部225に接続されている変換部235と、変換部235に接続されているAWG(Arrayed Waveguide Grating)236と、AWG236に接続されている光増幅部238とを備え、更に地上通信ネットワーク5との間でデータを送受信する衛星通信部229が光増幅部238に接続され、AWG236、変換部235、フレーム化処理部225、送受信部222が制御部230にそれぞれ接続されている。
【0181】
光増幅部238は、衛星通信部229から送られてくる光信号、又はAWG236から送られてくる光信号を増幅する。
【0182】
AWG236は、アレイ導波路回折格子等に代表される波長選択素子で構成される。即ち、このAWG236は、わずかずつ長さの異なる多数の光導波路アレイによる波長ごとの位相変化が、出口の扇状スラブ導波路で回折角の変化に変換され、波長毎に分離されて出射可能な素子である。ちなみに、このAWG236は、光増幅部238から送信されてきた波長の異なる信号を波長毎に分離する機能を担うとともに、変換部から送信されてきた複数の波長の異なる信号を合波して、これを光増幅部238へと出力する機能をも担う。
【0183】
変換部235は、AWG236から出射されてくる光信号を光−電気変換するPD、またフレーム化処理部225から送信されてくる電気信号を電気−光変換するLD等で構成される。
【0184】
フレーム化処理部225は、変換部235から送信されてくるフレーム化データから実データ部66bのみ抽出して、これをAD/DA変換部223へ送信する。またフレーム化処理部225は、AD/DA変換部223から送られてくる信号について、TCP/IPフレーム化し、変換部235へと出力する。その結果、この変換部235を構成するLDを通じて、光TCP/IPフレームを作り出すことが可能となる。
【0185】
このような構成からなる人工衛星252を介して地上通信ネットワーク5から所望の宛先領域A〜Dへデータを送る際には、その宛先領域に応じたRFビームパターンにより、人工衛星202がRF信号を送信するように、地上局51ないしは図示されない制御局などにおいて光フレーム信号を生成することになる。人工衛星252においては、この光フレーム化データを、AWG236において各信号を分波していくことになる。光フレーム化データは、宛先アンテナ素子情報に応じて予め波長により区別されているものであることから、この波長選択素子としてのAWG236を通過させることにより、自動的に宛先情報に応じて所望の入出力ポートにデータを配信させることが可能となる。
【0186】
このような構成からなる人工衛星252を介して領域A〜Dから地上通信ネットワーク5へデータを送る際には、その宛先領域や宛先端末に応じた宛先情報をフレーム化処理部225において生成する。またフレーム化処理部225から出力されたデータは、変換部235において電気−光変換する際に、宛先情報を波長で区別した光フレーム化データを生成することになる。
【0187】
AWG236では、この変換部235から供給されてきた、波長の異なる光フレーム化データを合波し、これを増幅部238へと出力する。
【0188】
このように、図11に示すような波長ラベルスイッチングを行う人工衛星252では、宛先情報を波長により区別した光フレーム化データをAWG236に通過させることにより、ビームフォーミングネットワークを構成する上で、極めて簡略な構成でこれを実現でき、人工衛星252内において特別に複雑な制御デバイスを設ける必要も無くなることから、人工衛星252自体の軽量化、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0189】
また、地上通信ネットワーク5におけるフレームデータにおいて、ヘッダ部68に宛先情報についてのラベリングを施すことにより、フレームデータのアドレスを介して容易にアンテナ素子221_1〜221_kによるビーム放射エリアを指定することが可能となる。
【0190】
図12は、波長ラベルスイッチングを行う人工衛星202の他の実施の形態を示している。この他の形態としての人工衛星258は、人工衛星202における、AD/DA変換部223から衛星通信部229に至るまで、変換部235、n個のポート231_1〜231_n、光移相器ネットワーク281、k個のポート232_1〜232_k、AWG236、EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)260が順次接続されている。この人工衛星258において、上述した人工衛星202と同一の構成要素、回路については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
【0191】
EDFA260は、衛星通信部229からの光信号、或いはAWG236からの光信号を直接増幅する。
【0192】
また、n個のポート231_1〜231_n、k個のポート232_1〜232_kとの間に設けられた光移相器ネットワーク281は、それぞれn×k個のマトリクス回路を構成するものである。AWG236において波長毎に分離された各光信号は、それぞれn個のポート231_1〜231_n、k個のポート232_1〜232_kは、それぞれ波長と放射方向が対応するものであり、各波長について所望の遅延長となるように調整が行われていることによりビームフォーミングが実現可能となる。これにより、送受信部222におけるビームフォーミングのための各種処理量を軽減することが可能となる。
【0193】
図13は、人工衛星258におけるn個のポート231_1〜231_n、k個のポート232_1〜232_k、AWG236の代替として、高分散ファイバ271と、分光器272を配設した例を示している。
【0194】
分光器272は、波長毎に光を分離するスプリッタにより構成されている。また、波長と放射方向を一対一で対応させることにより、各波長ごとに経路を異ならせることが可能となり、これにより、各波長ごとに所望の遅延長を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】本発明を適用した宇宙通信システムの全体構成図である。
【図2】人工衛星のシステムブロック構成図である。
【図3】地上通信ネットワークの構成図である。
【図4】フレームデータの構成例を示す図である。
【図5】地上通信ネットワークから人工衛星を介して地球上のある宛先領域を送信する宇宙通信システムの全体構成図である。
【図6】人工衛星の他のシステムブロック構成図である。
【図7】宇宙通信システムの技術的思想を適用した無線通信システムの構成例を示す図である。
【図8】図7に示すシステムの基地局の構成について説明するための図である。
【図9】本発明を適用した宇宙通信システムの他の実施の形態について説明するための図である。
【図10】図9に示すシステムにおける人工衛星のブロック構成について説明するための図である。
【図11】波長ラベルスイッチングを行う人工衛星の構成例を示す図である。
【図12】波長ラベルスイッチングを行う人工衛星の他の実施の形態を示す図である。
【図13】図12の形態のAWGの代替として、高分散ファイバと、分光器を配設した例を示す図である。
【符号の説明】
【0196】
1 宇宙通信システム
2 人工衛星
3 人工衛星群
4 地球
5 地上通信ネットワーク
21 アンテナ素子
22 受信部
24 AD変換部
25 フレーム化処理部
26 電気−光変換部
27 多重化処理部
29 衛星通信部
30 アンテナ・周波数制御部
31 フレーム化制御部
50 光ファイバ
51 地上局
52 スイッチ
53 通信端末
54 制御局
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、宇宙空間における地球周回軌道を周回する人工衛星等により、地球上の地上局や、海上の船舶あるいは航空機等との間で通信を行い、或いは地球上の地上局からの要求に従って地球上の2点間の中継通信を行う宇宙通信システムの実用化が進展している。また特に近年において、地球上の各観測領域において電磁波がどれだけ放射されているかを人工衛星により検出し、これを地球上へと送信する宇宙通信システムも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような宇宙通信システムにおいて、いわゆるデジタルビームフォーミング(DBF)技術を利用して地球上と無線通信を行い、或いは地球上の各観測領域の電磁波放射状態を検出するニーズが高まっている。ちなみに、このDBFは、共通の信号源からの信号を複数のアンテナ素子により受信し、これらに信号を位相遅延処理や振幅制御を施した後に合成することにより、複数のアンテナを介して一つの指向性を与える技術である。このDBFでは、受信したアンテナ素子毎の信号について、それぞれAD変換することにより、デジタル的に信号の処理を行うものである。従来において、デジタルビームフォーミングを適用した宇宙通信技術として、例えば特許文献2の開示技術が提案されている。
【特許文献1】特開平11−261464号公報
【特許文献2】特開平11−127098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなデジタルビームフォーミングを適用した宇宙通信技術において、例えば各アンテナ素子において受信した信号につき施すべき位相遅延処理や、その他各種ビームフォーミングに関する処理は、人工衛星内で行うのが一般的である。しかしながら、これらの各種処理は、その人工衛星に搭載可能な信号処理能力と、人工衛星が供給できる消費電力による制限を受けることになる。即ち、人工衛星に対して多大な信号処理を担わせることなく、また衛星内の電力の消費を抑制することにより、人工衛星自体の軽量化、低消費電力化を図ることが可能な宇宙通信システムを提案する必要性があった。
【0005】
また、各種ビームフォーミングに関する処理を人工衛星内で実行する従来型のシステムにおいては、ビームフォーミング処理回路を人工衛星に搭載して宇宙空間に打ち上げた後、新たに開発された信号処理アルゴリズム等を事後的にこれに組み込むことが不可能であった。このため、ビームフォーミング処理回路を逐次バージョンアップすることが困難であり、宇宙通信システム全体の汎用性や柔軟性を低下させているという問題点があった。
【0006】
また、特に地球上に構築された例えばL2/L3ネットワークとの間で宇宙通信する人工衛星では、これら地球上のネットワークに応じたアドレスをフレームデータに挿入しておくことにより、データの伝送効率を向上させる必要性もあった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した課題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、デジタルビームフォーミングを適用した宇宙通信技術において、特に人工衛星内における各種ビームフォーミングに関する処理の負担を軽減させることにより、人工衛星自体の軽量化、低消費電力化を図ることができ、ひいてはシステム全体の汎用性や柔軟性、データの伝送効率を向上可能な宇宙通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の宇宙通信システムは、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムにおいて、上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星は、地球上における各観測領域が放射する電磁波を検出する1又は複数のアンテナ素子と、上記各アンテナ素子により検出された電磁波に基づく信号をそれぞれAD変換するAD変換手段と、上記AD変換手段によりAD変換されたアンテナ素子毎の信号を上記地上通信ネットワーク内の通信プロトコルに基づいてそれぞれアンテナ素子に対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成するフレーム化処理手段と、上記フレーム化処理手段により生成されたフレーム化データを直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記地上通信ネットワークへ送信する衛星通信手段とを有し、上記地上通信ネットワークは、上記人工衛星群から上記フレーム化データを受信する地上局と、上記地上局を介して上記フレーム化データが送信される複数の通信端末とを有し、上記通信端末は、上記受信した各アンテナ素子に対応したフレーム化データから地球上における所望観測領域に応じたアンテナの指向性を適応的に形成することにより、特定の観測領域の電磁波放射状態を識別可能とされていることを特徴とする。
【0009】
請求項8記載の宇宙通信システムは、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムにおいて、上記地上通信ネットワークは、所定の通信プロトコルに基づいた、地球上における宛先領域に関する情報を含むヘッダを付したフレーム化データを送信する通信端末と、上記1以上の通信端末から上記フレーム化データを受信した場合にこれに含まれる宛先領域に関する情報に基づいて合成した新たなフレーム化処理を施すことにより新たなフレーム化データを生成し、これを上記人工衛星群へと送信する地上局とを有し、上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星は、上記地上局から直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記フレーム化データを受信する衛星通信手段と、各宛先領域に対してそれぞれ信号を送信可能な1又は複数のアンテナ素子と、上記衛星通信手段により受信した上記フレーム化データを上記ヘッダに含まれている情報に基づいて上記アンテナ素子毎に振り分け、フレームに含まれる実情報を抽出するフレーム分配・分解手段と、上記フレーム分配・分解手段により得られたアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、これを上記アンテナ素子へそれぞれ供給するDA変換手段とを有し、上記地上局又は通信端末は、上記宛先領域に応じて指向性を適応的に変化させるための信号処理を各宛先アンテナ素子に対応するフレーム毎に実施することを特徴とする。
【0010】
請求項13記載の宇宙通信システムは、移動端末間における無線信号の送受信を有線ネットワークに接続された複数の基地局を介して実行する無線通信システムにおいて、一の基地局は、一の移動端末から送信される無線信号を一の方向から検出する1又は複数の第1のアンテナ素子と、上記各第1のアンテナ素子により検出された信号をそれぞれAD変換するAD変換手段と、上記AD変換手段によりAD変換された第1のアンテナ素子毎の信号を上記有線ネットワーク内の通信プロトコルに基づいてそれぞれフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成するフレーム化処理手段と、上記フレーム化処理手段により生成されたフレーム化データを上記有線ネットワークへ送出する送信手段とを有し、他の基地局は、上記有線ネットワークを介して受信したフレーム化データを上記宛先情報に基づいて上記第1のアンテナ素子毎に分解するフレーム分解手段と、上記フレーム分解手段により分解されたアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換するDA変換手段と、上記DA変換手段によりDA変換されたデータに基づく無線信号を他の移動端末へ送信する1又は複数の第2のアンテナ素子とを有し、上記有線ネットワークにおける通信を制御する制御局は、上記フレーム化データから、上記第1のアンテナ素子と上記一の移動端末との間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別するとともに、当該フレーム化データに記述されている宛先としての他の移動端末に関する情報から、上記第2のアンテナ素子と上記他の移動端末との間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別し、これら識別した各アンテナ指向性に基づいて一の基地局における第1のアンテナ素子と、上記他の基地局における第2のアンテナ素子がそれぞれ移動端末との間でビームフォーミングを行うための制御を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項18記載の宇宙通信システムは、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムにおいて、上記地上通信ネットワークは、所定の通信プロトコルに基づいた、地球上における宛先領域に関する情報又は上記人工衛星群内における宛先アンテナ素子に関する情報を含むヘッダを付したフレーム化データを送信する通信端末と、上記1以上の通信端末から送信されてきた上記データを上記人工衛星群へと送信する地上局とを有し、上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星は、上記地上局から直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記フレーム化データを受信する衛星通信手段と、地球上における上記宛先領域に対してそれぞれ信号を送信可能な1又は複数のアンテナ素子と、上記衛星通信手段により受信した上記フレーム化データを上記ヘッダに含まれている宛先領域に関する情報又は使用すべきアンテナ素子に関する情報に基づいて分類するスイッチング手段と、上記スイッチング手段により分類されたアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、これを上記アンテナ素子へそれぞれ供給するDA変換手段とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項22記載の宇宙通信システムは、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムにおいて、上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星は、地球上における各観測領域から発信される、互いに宛先が異なる無線信号を複数の端末から検出する1又は複数のアンテナ素子と、上記各アンテナ素子により検出された信号をそれぞれAD変換するAD変換手段と、上記AD変換手段によりAD変換されたアンテナ素子毎の信号にビームフォーミング処理を施して複数のビーム方向又はビームパターンにおける受信信号としてこれを分離する移相器ネットワークと、上記地上通信ネットワーク内の通信プロトコルに基づいて各ヘッダに上記ビーム方向又はビームパターンに関する情報を含めつつそれぞれに対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成するフレーム化処理手段と、上記フレーム化処理手段により生成されたフレーム化データを上記ヘッダ情報に基づいて多重化する多重化手段と、上記多重化手段により多重化されたフレーム化データを直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記地上通信ネットワークへ送信する衛星通信手段とを有し、上記地上通信ネットワークは、上記人工衛星群から上記フレーム化データを受信する地上局と、上記地上局を介して上記フレーム化データが送信される複数の通信端末とを有し、上記通信端末又は上記地上局は、上記観測領域に対応する特定のビーム方向又はビームパターンで放射された信号のみを検出することを特徴とする。
【0013】
請求項25記載の宇宙通信システムは、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信方法において、上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星では、地球上における各観測領域が放射する電磁波を1又は複数のアンテナ素子を介して検出し、上記各アンテナ素子により検出した電磁波に基づく信号をそれぞれAD変換し、上記AD変換したアンテナ素子毎の信号を上記地上通信ネットワーク内の通信プロトコルに基づいてそれぞれアンテナ素子に対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成し、上記生成したフレーム化データを直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記地上通信ネットワークへ送信し、上記地上通信ネットワークでは、上記人工衛星群から地上局により上記フレーム化データを受信し、上記地上局を介して上記フレーム化データを複数の通信端末へ送信し、上記通信端末では、上記受信した各アンテナ素子に対応したフレーム化データから地球上における所望観測領域に応じたアンテナの指向性を適応的に形成することにより、特定の観測領域の電磁波放射状態を識別可能とすることを特徴とする。
【0014】
請求項27記載の宇宙通信方法は、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信方法において、上記地上通信ネットワークでは、所定の通信プロトコルに基づいた、地球上における宛先領域に関する情報を含むヘッダを付したフレーム化データを通信端末から送信し、地上局が上記1以上の通信端末から上記フレーム化データを受信した場合にこれに含まれる宛先領域に関する情報に基づいて合成した新たなフレーム化処理を施すことにより新たなフレーム化データを生成し、これを上記人工衛星群へと送信し、上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星では、上記地上局から直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記フレーム化データを受信し、上記衛星通信手段により受信した上記フレーム化データを上記ヘッダに含まれている情報に基づいて、各宛先領域に対してそれぞれ信号を送信可能な1又は複数の上記アンテナ素子毎に振り分け、フレームに含まれる実情報を抽出し、上記フレーム分配・分解手段により得られたアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、これを上記アンテナ素子へそれぞれ供給し、上記地上局又は通信端末では、上記宛先領域に応じて指向性を適応的に変化させるための信号処理を各宛先アンテナ素子に対応するフレーム毎に実施することを特徴とする。
【0015】
請求項28記載の宇宙通信方法は、移動端末間における無線信号の送受信を有線ネットワークに接続された複数の基地局を介して実行する無線通信方法において、一の基地局では、一の移動端末から送信される無線信号を一の方向から1又は複数の第1のアンテナ素子を介して検出し、上記各第1のアンテナ素子により検出した信号をそれぞれAD変換し、上記AD変換した第1のアンテナ素子毎の信号を上記有線ネットワーク内の通信プロトコルに基づいてそれぞれフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成し、上記生成したフレーム化データを上記有線ネットワークへ送出し、他の基地局では、上記有線ネットワークを介して受信したフレーム化データを上記宛先情報に基づいて上記第1のアンテナ素子毎に分解し、分解したアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、上記DA変換したデータに基づく無線信号を1又は複数の第2のアンテナ素子を介して他の移動端末へ送信し、上記有線ネットワークにおける通信を制御する制御局では、上記フレーム化データから、上記第1のアンテナ素子と上記一の移動端末との間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別するとともに、当該フレーム化データに記述されている宛先としての他の移動端末に関する情報から、上記第2のアンテナ素子と上記他の移動端末との間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別し、これら識別した各アンテナ指向性に基づいて一の基地局における第1のアンテナ素子と、上記他の基地局における第2のアンテナ素子がそれぞれ移動端末との間でビームフォーミングを行うための制御を行うことを特徴とする。
【0016】
請求項29記載の宇宙通信方法は、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信方法において、上記地上通信ネットワークでは、所定の通信プロトコルに基づいた、地球上における宛先領域に関する情報又は上記人工衛星群内における宛先アンテナ素子に関する情報を含むヘッダを付したフレーム化データを通信端末から送信し、上記1以上の通信端末から送信されてきた上記データを地上局により上記人工衛星群へと送信し、上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星では、上記地上局から直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記フレーム化データを受信し、上記受信した上記フレーム化データを上記ヘッダに含まれている宛先領域に関する情報又は使用すべきアンテナ素子に関する情報に基づいて分類し、上記分類したアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、これを上記アンテナ素子へそれぞれ供給し、上記信号を1又は複数のアンテナ素子により、地球上における上記宛先領域に対してそれぞれ送信することを特徴とする。
【0017】
請求項30記載の宇宙通信方法は、地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信方法において、上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星では、地球上における各観測領域から発信される、互いに宛先が異なる無線信号を1又は複数のアンテナ素子を介して検出し、上記各アンテナ素子により検出した信号をそれぞれAD変換し、上記AD変換したアンテナ素子毎の信号にビームフォーミング処理を施して複数のビーム方向又はビームパターンにおける受信信号としてこれを分離し、上記地上通信ネットワーク内の通信プロトコルに基づいて各ヘッダに上記ビーム方向又はビームパターンに関する情報を含めつつそれぞれに対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成し、上記生成したフレーム化データを上記ヘッダ情報に基づいて多重化し、上記多重化手段により多重化されたフレーム化データを直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記地上通信ネットワークへ送信し、上記地上通信ネットワークでは、上記人工衛星群から地上局を介して上記フレーム化データを受信し、上記地上局を介して上記フレーム化データを複数の通信端末へ送信し、上記通信端末又は上記地上局では、上記観測領域に対応する特定のビーム方向又はビームパターンで放射された信号のみを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上述した構成からなる本発明によれば、従来において人工衛星内において行われていた、各アンテナ素子において受信した信号につき施すべき位相遅延処理や、その他各種ビームフォーミングに関する処理を、通信端末側において実行させつつ、所望領域における電磁波放射状態を識別することが可能となる。このため、本発明では、かかるビームフォーミングに基づく多大な信号処理負担を人工衛星に負担させることが無くなり、また人工衛星内の電力の消費を抑制することにより、人工衛星自体の軽量化、低消費電力化、および汎用化を図ることが可能なシステム構成とすることが可能となる。またこの通信端末53において実行するビームフォーミング処理は、従来のように人工衛星に搭載可能な信号処理能力や、人工衛星が供給できる消費電力による制限を受けることも無くなることから、本来のところ人工衛星において搭載が困難であった大きな消費電力が必要となる高度かつ高速なビームフォーミングの計算処理を行うことが可能なシステム構成とすることも可能となる。
【0019】
また本発明では、ビームフォーミング処理を地上通信ネットワークにおける通信端末に担わせることが可能となることから、事後的に信号処理アルゴリズム等が開発された場合においても、これをその通信端末へ容易に組み込むことが可能となる。また、ビームフォーミング処理回路を逐次バージョンアップできるシステムとすることで、宇宙通信システム全体の汎用性や柔軟性を向上させることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、地上の通信ネットワークと人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明を適用した宇宙通信システム1の全体構成を示している。この宇宙通信システム1は、地球4における周回軌道を周回する複数の人工衛星2からなる人工衛星群3と、地球4上に構築された地上通信ネットワーク5とを備えている。
【0022】
この宇宙通信システム1は、人工衛星群3のうち何れか一の人工衛星2aにより地球上のある観測領域A〜Cの電磁波放射状態を検出し、これを他の人工衛星2bを介して地球上の地上通信ネットワーク5へと送信するものである。
【0023】
人工衛星群3は、いわゆる地球の自転周期と一致する軌道周期をもつ地球周回軌道としての対地同期軌道(GEO:Geostationary Earth Orbit)を周回するものであってもよいし、地上高約500〜2000kmに位置する軌道上にあって地球の自転周期とは無関係に回る低軌道(LEO: Low Earth Orbit)を周回するものであってもよい。また、これらGEO,LEOを周回するものに限定されるものではなく、他のいかなる周回軌道を周回するものであってもよい。
【0024】
人工衛星群3は、少なくとも2体の人工衛星2からなる。以下の例では、人工衛星群3について、一の人工衛星2aと他の人工衛星2bの2体で構成している場合を例にとり説明をするが、3体以上で構成されていてもよいことは勿論である。また、この人工衛星2aにより検出された電磁波放射状態をあくまで人工衛星2bを介することなく、この人工衛星2aから地上通信ネットワーク5へ直接送信するようにしてもよく、また人工衛星2a又は人工衛星2bからの送出すべき信号を更なる他の図示しない人工衛星を介した複数の通信リンクで地上通信ネットワーク5へ送信するようにしてもよい。
【0025】
図2は、人工衛星2aのシステムブロック構成図である。人工衛星2aは、k個からなる広ビームのアンテナ素子21_1〜21_kと、このアンテナ素子21_1〜21_kの出力端に接続されている受信部22と、この受信部22に接続されているAD変換部24_1〜24_kと、このAD変換部24_1〜24_kからデジタルデータが供給されるフレーム化処理部25と、フレーム化処理部25からフレームデータが供給される電気−光変換部26と、電気−光変換部26の出力側に接続されている多重化処理部27と、多重化処理部27において多重化されたデータを他の人工衛星2b又は地球4上の地上通信ネットワーク5へ向けて送信するための衛星通信部29とを備えている。また、この人工衛星2aは、アンテナ素子21_1〜21_kや受信部22を制御するためのアンテナ・周波数制御部30と、フレーム化処理部25におけるフレーム化処理を制御するフレーム化制御部31とをさらに備えている。
【0026】
アンテナ素子21_1〜21_kは、地球4上の広覆域にある複数の電波源からの電磁信号を捉え、この捕捉したこの電波信号を出力する。即ち、この複数のアンテナ素子21_1〜21_kにより、地球4上における各観測領域の電磁波放射状態を検出することが可能となる。
【0027】
受信部22は、このアンテナ素子21_1〜21_kからの出力信号が供給され、これを高周波増幅するとともに、アンテナ・周波数制御部30による制御の下で、入力信号を低域周波数の信号へ周波数変換する。
【0028】
AD変換部24_1〜24_kは、いわゆるADコンバータで構成され、受信部22から供給されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、これをフレーム化処理部25へと出力する。ちなみに、このAD変換部24_nは、アンテナ素子21_nの受信信号をそれぞれAD変換することになる。
【0029】
フレーム化処理部25は、フレーム化制御部31による制御の下で、AD変換部24_1〜24_kから供給されるデジタル信号をフレーム化データ列に変換する。フレーム化処理部25は、IPプロトコル用のIPヘッダやイーサネット(登録商標)用のMACヘッダを付加する、更には適切なラベルやタグを挿入する等のフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成する。
【0030】
なお、以下の説明においては、地上通信ネットワーク5がL2/L3スイッチネットワークとして構成されている場合において、フレーム化処理部25は、かかる地上通信ネットワーク5としてのL2/L3スイッチネットワークで交換可能なL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付すTCP/IPフレーム化処理を施す場合を例にとり説明をするが、これに限定されるものではない。即ち、このフレーム化処理部25は、地上通信ネットワーク5内の通信プロトコルに基づいたフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成するものであればよい。フレーム化処理部25は、それぞれアンテナ素子に対応したフレーム化データを生成することになる。
【0031】
電気−光変換部26は、フレーム化処理部25において生成されたフレーム化データを電気−光変換して光フレーム化データに変換するための素子で構成される。この電気−光変換部26は、供給される電気信号を光信号に変換する、いわゆるレーザダイオード(LD)等で構成されていてもよい。
【0032】
多重化処理部27は、電気−光変換部26において生成された光フレーム化データを多重化させ、これを衛星通信部29へ伝送する。衛星通信部29は、この多重化された光フレーム化データからなる光信号を直接的に又は他の人工衛星2bを介して間接的に地上通信ネットワーク5へ送信する。
【0033】
アンテナ・周波数制御部30は、予め実装されたソフトウェアに基づいて、アンテナ素子21_1〜21_kや受信部22を制御する制御ユニットとして構成されるが、地上通信ネットワーク5からの適応的なソフトウェアダウンロードによって再構成可能な装置として構成されたものでもよい。
【0034】
フレーム化制御部31は、予め実装されたソフトウェアに基づいて、フレーム化処理部25を制御する制御ユニットとして構成されるが、地上通信ネットワーク5からの適応的なソフトウェアダウンロードによって再構成可能な装置として構成されたものでもよい。
【0035】
図3は、地上通信ネットワーク5の構成を示している。
【0036】
地上通信ネットワーク5は、人工衛星群3からフレーム化データを受信する地上局51と、この地上局51に対してスイッチ52を介して接続された複数の通信端末53a〜53cと、ネットワーク全体を制御するための制御局54とを備えている。ちなみに、この地上通信ネットワーク5を構成する各デバイスは光ファイバ50を介して接続され、互いに光通信でデータを伝送することを前提としているが、これに限定されるものではなく、電気信号を介してデータを伝送するようにしてもよい。かかる場合には、各デバイス間を接続する光ファイバ50の代替として、電線や無線回線が用いられることになる。
【0037】
地上局51は、人工衛星群3から送信されてくる光信号を受信し、これをスイッチ52を介して通信端末53へと送信する。ちなみに、この地上通信ネットワーク5が電気信号を介してデータを伝送するシステムとされている場合に、この地上局51は、これを光−電気変換することで電気信号からなるフレーム化データ列を生成することになる。
【0038】
スイッチ52は、例えばイーサネット(登録商標)プロトコル規格のいわゆるイーサスイッチに準拠したIPルータやL2/L3スイッチ、ATMスイッチ等である。このスイッチ52には、小規模LANで使用される安価なスイッチで適用されていてもよく、光ファイバ50を接続するためのポートが複数に亘り設けられている。図3に示す例では、スイッチ52とスイッチ52とが光ファイバ50を介して接続されており、このスイッチ52と光スイッチ52とで接続される地上通信ネットワーク5をイーサネット(登録商標)として活用している。また、地上通信ネットワーク5をイーサネット(登録商標)で構成する場合のみならず、IPネットワークやATMネットワークで構成するようにしてもよい。
【0039】
制御局54は、この地上通信ネットワーク5において必要とされる制御処理全般と変復調処理、また必要に応じて地上局51経由で受信するフレーム化データに含まれる電磁波信号の復調と復調データの再フレーム化処理を行う。例えば、制御局54は、スイッチ52から伝送されてきた光信号を分波し、これを光−電気変換することにより電気フレーム化データ列を生成する。また、この制御局54は、生成した電気信号につき、更にデフレーム化処理を施して抽出した実データ部をDA変換してアナログ信号を生成し、これを復調器で復調することで情報データが復調される。更に必要に応じてこれを地上通信ネットワーク5へ送出する際には、適切なフレーム化処理を施して送出する。
【0040】
通信端末53は、光ファイバ50を介してスイッチ52ひいては地上局51との間でデータを送受信することが可能なデバイスとして構成され、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等である。但し、この通信端末53としては、無線通信を介して地上通信ネットワークにアクセス可能なものであってもよい。
【0041】
次に、本発明を適用した宇宙通信システム1の動作について説明をする。
【0042】
先ず、アンテナ素子21_1〜21_kにより、地球4上における各観測領域の電磁波を検出する。ここでは、地球4上の観測領域A〜Cにおいて放射される電磁波もこのアンテナ素子21_1〜21_kにより検出されることになる。このアンテナ素子21_1〜21_kにより検出された電磁波信号は、受信部22へと送られる。
【0043】
アンテナ素子21_1〜21_kから電磁波信号が送られてきた受信部22では、これを先ず低雑音増幅し、さらに低域周波数の信号へ周波数変換する。受信部22から出力された低域周波数信号は、AD変換部24_1〜24_kにおいてそれぞれAD変換される。
【0044】
次にフレーム化処理部25において、AD変換部24_1〜24_kから供給されるデジタル信号に、IPプロトコル用のIPヘッダやイーサネット(登録商標)用のMACヘッダを付加する。
【0045】
図4(a)は、フレーム化処理部25において生成されるフレームデータの構成例を示している。なお、MACフレーム構成はいわゆるMPLS技術や、タグVLAN技術を用いる場合にはこの構成に限られるものではない。この生成されるフレーム6はIEEE802.3に規定するMACフレーム構成に準拠しており、フレームの開始を予告する7オクテットのプリアンブル61と、実際のフレーム開始を表す1オクテットのSFD(Start Frame Delimiter)62と、フレームの送信先を表す6オクテットの発信先MACアドレス63と、フレーム送信元を表す6オクテットの発信元MACアドレス64と、データの長さやフレームのタイプを表す2オクテットのフレーム長/フレームタイプ65と、46〜1500オクテットのデータ部66と、データ確認用の4オクテットのFCS(Frame Check Sequence)67とから構成されている。データ部66は、IPヘッダ66aと、AD変換部35が出力した低域周波数の電磁波信号がデジタル信号に変換された実データ部66bとからなる。なお、以下では、プリアンブル61〜IPヘッダ66aに至る部分までをヘッダ部68という。
【0046】
ちなみに、このヘッダ部68には、宛先情報として宛先地上局や宛先通信端末に関する情報が含まれており、発信元情報として発信元衛星や発信元アンテナ素子に関する情報が含まれている。また発信元の情報として発信元衛星を特定する情報や上記衛星内の対応するアンテナ素子を特定する情報が含まれる。更にこのフレーム6におけるヘッダ部68には、制御部30が用いた周波数変換に関わる情報を含めてもよい。
【0047】
フレーム化処理部25では、このようなフレームを、それぞれアンテナ素子21_1〜21_kに対応させてそれぞれ生成するフレーム化処理を行う。この例では、フレーム6の数nを、kとが等しい場合を想定している。図4(b)は、各アンテナ素子21毎に対応させて個別に生成したフレーム6_1〜6_nを示している。即ち、この図4(b)では、#n番目のアンテナ素子21_nに対応するフレーム6がフレーム6_nとなる。各フレーム6_1〜6_nは、それぞれ上述したヘッダ部68と実データ部66bとから構成されることになる。このフレーム化処理部25における処理段階において各フレーム6_1〜6_nは未だ互いに独立したフレームとして構成されている。そして、これら各フレーム6_1〜6_nは、互いに異なるMACアドレス、並びにIPアドレスがヘッダ部68に割り当てられている。
【0048】
次に、この各フレーム6_1〜6_nは、電気−光変換部26において電気−光変換され、さらに多重化処理部27において多重化され、衛星通信部29から直接的に又は他の人工衛星2bを介して間接的に地上通信ネットワーク5へ送信される。
【0049】
人工衛星群3からフレーム化データを受信した地上局51は、これを地上通信ネットワーク5を構成する各通信端末53a〜53cに対してスイッチ52を介して送信する。スイッチ52では、マルチキャスト機能に基づいて人工衛星群3から受信したフレーム化データをコピーし、これを複数の各通信端末53a〜53cへ分配することも可能になる。ちなみに、このスイッチ52は、受信したフレーム化データにおけるフレーム6のヘッダ部68のみを読み取り、これに記述された宛先アドレスやラベル、タグ等情報を検出して、これを宛先となる次のスイッチ52や、宛先となる制御局54宛先となる通信端末53へと導くことが可能となる。
【0050】
上述したフレーム6_1〜6_nからなるフレーム化データがスイッチ52を介して配信されてきた通信端末53においては、これを解析することにより、所望の観測領域における電磁波放射状態を識別する。
【0051】
例えば、通信端末53を操作するユーザが、地球上におけるある観測領域の電磁波放射状態の確認を希望する場合、この通信端末53を通じてその希望観測領域を入力する。仮に通信端末53aを通じて地球上の観測領域Aの電磁波放射状態を確認したい旨が入力されたものとする。かかる場合において、通信端末53aは、フレーム6の転送をリクエストする。このリクエストを受けた地上通信ネットワーク5は、かかる通信端末53aに対してフレーム6_1〜6_nを転送することになる。これらフレーム6は、フレーム化処理部25において、L2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダが付されていることから、この地上通信ネットワーク5内においてもこれらのヘッダを介して所望の宛先の通信端末53aへの伝送が容易に実現可能となる。
【0052】
通信端末53aは、フレーム6_1〜6_nを受信し、個々のフレーム6_1〜6_nから得た実データ部に対して、所望の観測領域Aに応じた適切な実時間遅延制御又は振幅制御を加えて合成処理することにより、所望の観測領域Aの信号のみを抽出し、その電磁波の放射状態を識別することが可能となる。希望観測領域として、他の観測領域BやCが入力された場合についても同様に、フレーム6_1〜6_nを受信し、個々のフレーム6_1〜6_nに対して、所望の観測領域BやCに応じた適切な実時間遅延制御又は振幅制御を加えて合成処理することにより、その電磁波の放射状態を識別することが可能となる。
【0053】
またスイッチ52では、マルチキャスト機能に基づいて人工衛星群3から受信したフレーム化データをコピーし、これを各通信端末53a〜53cへ分配することが可能なため、各端末装置53a〜53cにおいて、互いに同一又は異なる観測領域の電磁波放射状態を同時に識別することも可能となる。
【0054】
このように本発明を適用した宇宙通信システム1においては、地球4上における各観測領域A〜Cの電磁波放射状態を複数のビームフォーミング用のアンテナ素子21_1〜21_kにより受信し、そのアナログ波形を維持した状態で、換言すればこの受信した信号を復調することなく、これをデジタル信号化した上で、地上通信ネットワーク5におけるL2/L3スイッチネットワークに対応するように、L2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付すTCP/IPフレーム化処理を施す。また、かかるフレームデータを受信した地上通信ネットワーク5上の通信端末は、各アンテナ素子21_1〜21_kに対応したフレームから観測領域に応じて指向性を適応的に変化させることにより、その電磁波放射状態を識別する。
【0055】
これにより、従来において人工衛星内において行われていた、各アンテナ素子において受信した信号につき施すべき位相遅延処理や、その他各種ビームフォーミングに関する処理を、通信端末53側において実行させつつ、所望領域における電磁波放射状態を識別することが可能となる。このため、本発明では、かかるビームフォーミングに基づく多大な信号処理負担を人工衛星2に負担させることが無くなり、また人工衛星2内の電力の消費を抑制することにより、人工衛星2自体の軽量化、低消費電力化を図ることが可能なシステム構成とすることが可能となる。またこの通信端末53において実行するビームフォーミング処理は、従来のように人工衛星に搭載可能な信号処理能力や、人工衛星が供給できる消費電力による制限を受けることも無くなることから、本来のところ人工衛星において搭載が困難であった大きな消費電力が必要となる高度かつ高速なビームフォーミングの計算処理を行うことが可能なシステム構成とすることも可能となる。
【0056】
また本発明では、ビームフォーミング処理や変復調に関わる信号処理をすべて地上通信ネットワーク5における通信端末53又は制御局54などに担わせることが可能となることから、事後的に信号処理アルゴリズム等が開発された場合や、復調すべき情報の変調方式が変更された場合においても、これをその通信端末53へ容易に組み込むことが可能となる。また、ビームフォーミング処理回路を逐次バージョンアップできるシステムとすることで、宇宙通信システム1全体の汎用性や柔軟性を向上させることも可能となる。
【0057】
しかも本発明では、L2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付すTCP/IPフレーム化処理が施されているため、地上通信ネットワーク5におけるL2/L3スイッチネットワークにおいて、複数の通信端末53が同じアンテナ素子21の信号を要求した場合においても、地上通信ネットワーク5上の各ノードを構成するスイッチ52においてフレーム6を複製して分配するマルチキャスト機能やブロードキャスト機能の利用が可能となる。このため、地上通信ネットワーク5内におけるフレームデータの伝送負荷を最小限に低減させることが可能となる。
【0058】
なお、上述した例において、フレーム化処理部25は、地上通信ネットワーク5としてのL2/L3スイッチネットワークで交換可能なL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付す場合を例にとり説明をしたが、これに限定されるものではない。アンテナ素子21_1〜21_k毎のフレーム6_1〜6_kに対して更にL4(トランスポート層)ヘッダを付すようにしてもよい。これにより、地上通信ネットワーク5においてL4を介したデータの配信も可能となり、より汎用性を向上させることも可能となる。
【0059】
なお、この宇宙通信システム1においては、各アンテナ素子21_1〜21_kにより検出された電磁波が予め変調されていた場合にこれを復調することなくそれぞれAD変換する。そして、実際にビームフォーミング処理を行う通信端末53が受信したフレーム化データを復調するように制御する。これにより、人工衛星2において、信号を復調するためのシステムを組み込む必要が無くなることから、人工衛星2に対する処理負担を軽減でき、更なる軽量化、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0060】
また、ビームフォーミング処理を通信端末53に担わせる場合に限定されるものではなく、これを制御局54や地上局51において実行するようにしてもよい。かかる場合には、通信端末53は、制御局54に対して所望の観測領域を通知し、これを受けた制御局54がその観測領域に応じて適切な実時間遅延制御又は振幅制御を加えて合成処理することにより、その電磁波の放射状態を識別し、その結果を通信端末53へ通知する処理を行うことになる。
【0061】
また、この宇宙通信システム1では、あくまで人工衛星群3と地上通信ネットワーク5との間で光通信によりデータを伝送する以外に、電波を介して伝送するようにしてもよい。
【0062】
また、この宇宙通信システム1では、必ずしも1機の人工衛星2を介して電磁波を検出する場合に限定されず、複数の人工衛星2により、電磁波を検出し、それぞれ上述したプロセスに基づいてフレームデータ化した後に地上通信ネットワーク5へそれぞれ送出するようにしてもよい。比較的少数のアンテナ素子21を搭載した人工衛星2を複数機に亘って地球4上を周回させ、これらから得たフレームデータを集約して信号処理することにより、事実上、1機の人工衛星2に膨大な数のアンテナ素子21を搭載したのと同等の効果を得ることができ、鋭いビーム特性を実現することが可能となる。また、任意の方向から放射されてくる微弱な電磁波をこれら複数の人工衛星2で漏れなく検出することも可能となる。
【0063】
更に、この宇宙通信システム1では、フレーム化処理部25において生成したフレーム化データ6_1〜6_nを、多重化処理部27bにおいて複数に分離し、これを衛星通信部29を介して他の図示しない人工衛星へ送信し、当該他の図示しない人工衛星から地球4上の図示しない地上通信ネットワークへと送信するようにしてもよい。この図示しない地上通信ネットワークは、上述した地上通信ネットワーク5とは異なるものである。
【0064】
かかる場合では、分離したフレーム化データ6_1〜6_5を、図示しない一の人工衛星へ送信し、この一の人工衛星は、図示しない一の地上通信ネットワークへとこれを送信し、また分離したフレーム化データ6_6〜6_10を、図示しない他の人工衛星へ送信し、この他の人工衛星は、図示しない他の地上通信ネットワークへとこれを送信し、更に残りのフレーム化データ6_11〜6_nを地上通信ネットワーク5へと送信するようにしてもよい。これによりいわゆるダイバーシチーと同様の効果を発揮させることが可能となる。なお、このプロセスにおいては、多重化処理部27において、L2/L3スイッチと同様の機能を実装させることにより、これらを自動的に分離させることができる。
【0065】
なお、本発明において、地上局51又は通信端末53は、受信したフレーム化データから受信品質を解析し、この解析した受信品質に基づいて、人工衛星2に対して分解能を可変制御するための制御信号を送信し、人工衛星2は、受信した制御信号に基づいてAD変換部24におけるAD変換の分解能を制御するようにしてもよい。 特に本発明においては、システムの柔軟性を向上できる代わりに、通信ネットワークに対するデータ伝送量の負荷が大きくなる虞もある。ちなみに、この通信ネットワークにおけるデータ伝送量は、AD変換部24におけるサンプリングレートと、AD変換部24における分解能の双方に比例する。
【0066】
ちなみにこのAD変換部24におけるサンプリングレートは、検出を望む無線帯域幅により支配され、最低でも帯域幅の2倍のサンプリングレートが必要となる。これに対してAD変換部24における分解能は、伝送すべきフレーム化データのSN比に関する品質を決定する。このAD変換部24において分解能を減少させると、ネットワーク全体に対する負荷、即ち、所要伝送レートを減少させることができるが、却って信号品質が悪化してしまう。しかしながら、アプリケーションによっては、このAD変換部24における分解能がオーバースペックとなる場合もある。このため、地上局51又は通信端末53は、信号品質が多少悪化しても問題が無いものと判断した場合に、人工衛星2に対して上記制御信号を送信する。人工衛星2は、制御信号を受けた場合に、これに基づいてAD変換部24における分解能を減少させるための制御を行うことになる。
【0067】
また本発明では、いわゆる電波監視のようにストリーミング的に常時受信電波を伝送し続ける必要は無く、上述した処理自体を間欠的に行うものであってもよいことは勿論である。
【0068】
次に、本発明を適用した宇宙通信システム1において、図5に示すように地球4上の地上通信ネットワーク5から人工衛星群7を構成する人工衛星8a、8bを介して地球4上のある宛先領域A〜Cへデータを送信する場合について図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0069】
図6は、かかる地上通信ネットワーク5からのデータを宛先領域A〜Cへ中継する人工衛星群7を構成する一の人工衛星8aの構成を示している。ちなみにこの人工衛星8の構成において、上述した人工衛星2と同一の構成要素、部材は、同一の符号を付すことにより、以下での説明を省略する。この人工衛星8aには、地上通信ネットワーク5から直接データが送られてくる場合もあれば、人工衛星8bを介して間接的にデータが送られてくる場合もある。
【0070】
人工衛星8aは、k個からなるビームフォーミング用のアンテナ素子21_1〜21_kと、このアンテナ素子21_1〜21_kの入力端に接続されている送信部72と、この送信部72に接続されているDA変換部74_1〜74_kと、このDA変換部74_1〜74_kに接続されているフレーム化処理部75と、フレーム化処理部75に接続されている光−電気変換部76と、光−電気変換部76の入力側に接続されている逆多重化処理部77と、逆多重化処理部77の入力端に接続され、他の人工衛星8b又は地球4上の地上通信ネットワーク5との間でデータを送受信する衛星通信部79とを備えている。また、この人工衛星8aは、アンテナ素子21_1〜21_kや送信部72を制御するためのアンテナ・周波数制御部30と、フレーム化処理部25における処理を制御するフレーム化制御部31とをさらに備えている。
【0071】
衛星通信部79は、地上通信ネットワーク5から直接的に又は他の人工衛星8bを介して間接的に送信されてくる、多重化された光信号からなるフレーム化データを受信する。
【0072】
逆多重化処理部77は、衛星通信部79から送られてくるフレーム化データを、その宛先アンテナ情報にもとづき各アンテナ素子21_1〜21_kに対応したn(=k)個のフレーム6_1〜6_kに分割し、これを光−電気変換部76へと出力する。
【0073】
光−電気変換部76は、逆多重化処理部77から送られてくるフレーム化データとしてのフレーム6_1〜6_kを光−電気変換するための素子で構成される。光−電気変換部76は、供給される光信号を電気信号に変換する、いわゆるホトダイオード(PD)等で構成されていてもよい。
【0074】
フレーム化処理部75では、それぞれアンテナ素子21_1〜21_kに対応させてフレーム6_1〜6_kについて各種フレーム処理を行う。このフレーム化処理部75で行うフレーム処理としては、TCP/IPフレーム化された信号からヘッダ部68を取り除く他、各フレーム化データに送信タイミング同期用に挿入されたヘッダ情報をもとに、異なるアンテナ素子間での信号送出タイミングの同期を実現するための処理を行う。なお、逆多重化処理部77の構成を省略する場合には、光−電気変換部76で光フレーム信号をシリアルに受信し、これからフレーム化処理部の中で必要に応じてパラレルなk個のフレームを抽出するという構成としてもよい。また。このフレーム化処理部75は、送られてくるフレーム6_1〜6_kから少なくとも実データ部66bに記述されている情報を抽出し、これをDA変換部74_1〜74_kへと送信する。
【0075】
DA変換部74_1〜74_kは、いわゆるDAコンバータで構成され、フレーム化処理部75から供給されるデジタル信号からなる実データをアナログ信号に変換し、これを送信部72へと出力する。
【0076】
送信部72は、アンテナ・周波数制御部30による制御の下で、RF周波数へ周波数変換する。
【0077】
アンテナ素子21_1〜21_kは、地球4上における各宛先領域に対してそれぞれ信号を送信する。ここでは、地球4上の宛先領域A〜Cに対してビームフォーミングにより信号を送信する場合を例にとる。ちなみに、各アンテナ素子21_1〜21_kに供給される信号は、既にその前段において予め各アンテナ素子21_1〜21_kに対応したフレームに分割されている。
【0078】
なお、この図5に示す宇宙通信システム1における地上通信ネットワーク5は、上述した図3の構成を同一にするため、以下での説明を省略する。
【0079】
次に、この図5に示す宇宙通信システム1により、地球4上の地上通信ネットワーク5から人工衛星群7を構成する人工衛星8a、8bを介して地球4上のある宛先領域A〜Cへデータを送信する動作について説明をする。
【0080】
先ずユーザは、通信端末53を介して、情報を送信したい宛先領域を指定する。例えばユーザが通信端末53aを介して、宛先領域Aを指定した場合には、送信フレーム6のヘッダ部68においてその宛先領域Aの関する情報が記述されることになる。ちなみに、このヘッダ部68は、上述したようにTCP/IPフレームに対応したものであるため、L2/L3スイッチネットワークとして構成される地上通信ネットワーク5において所望のデバイスに自在に配信することが可能となる。通信端末53aからの上述したフレームデータ6は、スイッチ52を介して地上局51へと送信され、この地上局51においてフレーム6_1〜6_kに複製されると同時にビームフォーミングのための適切な信号処理が上記各フレーム6に施される。次にこれらフレーム6_1〜6_kは電気−光変換された上で人工衛星群7へと光通信により送信される。
【0081】
このように地上局51では、宛先領域に関する情報に応じて指向性を適応的に変化させるための信号処理を各宛先アンテナ素子に対応するフレーム6_1〜6_k毎実施する。この信号処理は、地上局51に行わせる場合に限定されるものではなく、通信端末53側において実行させるようにしてもよい。
【0082】
ちなみに、この地上通信ネットワーク5における他の通信端末53b、53cから同時にそれぞれ異なる宛先領域に関する情報がヘッダ部68に付されたフレームデータ6が送信された場合には、地上局はこれらを上記と同様の手段にて、すなわち6_1〜6_kのフレーム化データに複製すると同時にビームフォーミングのための適切な信号処理が各上記各フレーム化データに施した後に合成して、人工衛星群7へ送信する。
【0083】
地上通信ネットワーク5から直接的に又は他の人工衛星8bを介して間接的にフレーム6が送られてきた人工衛星8aは、これを衛星通信部79を介して受信し、逆多重化処理部77においてこれを各アンテナ素子21_1〜21_kに対応したフレーム化データ6_1〜6_kに分割する。
【0084】
逆多重化処理部77において分割されたフレーム化データとしてのフレーム化データ6_1〜6_kは、光−電気変換部76において光−電気変換された上で、フレーム化処理部75において各種フレーム処理が行われる。
【0085】
その後段において、各フレーム6_1〜6_kは、DA変換部74_1〜74_kにおいてそれぞれDA変換され、さらに送信部72においてRF周波数へと周波数変換される。このとき送信部72は、地上通信ネットワーク5からの制御情報に基づき、アンテナ・周波数制御部30による制御の下で、その周波数変換が制御されるものであってもよい。
【0086】
送信部72から出力される信号は、アンテナ素子21_1〜21_kを介してビームフォーミングの原理により地球4上における各宛先領域A〜Cへと送信されることになる。このとき、各アンテナ素子より送信される信号はフレーム6_1〜6_kの実データ部66bをDA変換して生成される信号であるが、それぞれのアンテナ素子からの送出タイミングは、ヘッダ部68の復調によって得られる送信タイミングを用いて、アンテナ間の時間同期を行うようにしてもよい。また、複数の通信端末53a〜53cにより複数の宛先領域A〜Cが指定されていた場合には、このアンテナ素子21_1〜21_kを介してビームフォーミングにより当該宛先領域A〜Cへと信号を送信することになる。
【0087】
このように本発明を適用した宇宙通信システム1においては、地上通信ネットワーク5内の地上局51又は通信端末53において、宛先領域A〜Cが指定された信号を予めアンテナ21_1〜21_kに応じてビームフォーミング用にフレーム化しておく。具体的には、宛先領域に関する情報に応じて指向性を適応的に変化させるための信号処理を各宛先アンテナ素子に対応するフレーム6_1〜6_n毎実施しておき、これを人工衛星8aを中継させてビームフォーミング用のアンテナ素子21_1〜21_kを介して各宛先領域A〜Cに信号を送信する。
【0088】
このため、従来において人工衛星内において行われていた、各アンテナ素子から送信すべき信号につき施す位相遅延処理や、その他各種ビームフォーミングに関する処理を、通信端末53や制御局54、又は地上局51側において実行させつつ、所望の宛先領域に信号を送信することが可能となる。このため、本発明では、かかるビームフォーミングに基づく多大な信号処理負担を人工衛星8に負担させることが無くなり、また人工衛星8内の電力の消費を抑制することにより、人工衛星8自体の軽量化、低消費電力化を図ることが可能なシステム構成とすることが可能となる。またこの通信端末53や制御局54又は地上局51において実行するビームフォーミングに関する処理は、従来のように人工衛星に搭載可能な信号処理能力や、人工衛星が供給できる消費電力による制限を受けることも無くなることから、本来のところ人工衛星において搭載が困難であった大きな消費電力が必要となる高度かつ高速なビームフォーミングの計算処理を行うことが可能なシステム構成とすることも可能となる。
【0089】
また本発明では、ビームフォーミング処理を地上通信ネットワーク5側に担わせることが可能となることから、事後的に信号処理アルゴリズム等が開発された場合においても、これをその通信端末53へ容易に組み込むことが可能となる。また、ビームフォーミング処理回路を逐次バージョンアップできるシステムとすることで、宇宙通信システム1全体の汎用性や柔軟性を向上させることも可能となる。
【0090】
なお、上述した例において、地上通信ネットワーク5としてのL2/L3スイッチネットワークで交換可能なL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付す場合を例にとり説明をしたが、これに限定されるものではなくL4(トランスポート層)ヘッダを付すようにしてもよい。これにより、地上通信ネットワーク5においてL4を介したデータの配信も可能となり、より汎用性を向上させることも可能となる。
【0091】
なお、この図5に示す宇宙通信システム1においては、各アンテナ素子21_1〜21_kにより検出された電磁波が予め変調されていた場合にこれを復調することなくそれぞれAD変換するようにしてもよい。
【0092】
また地上局51又は制御局54又は通信端末53が、送信すべきデータとして既に変調が施された信号を実データ部に有するフレーム化データを送信した場合、人工衛星8は、受信したフレーム化データから抽出した実データ部を復調することなく、これらを複数のアンテナ素子21を介して各宛先領域に対して送信するようにしてもよい。これにより、人工衛星8において、信号を復調するためのシステムを組み込む必要が無くなることから、人工衛星8に対する処理負担を軽減でき、更なる軽量化、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0093】
また、本発明を適用した宇宙通信システム1では、例えば人工衛星2と人工衛星8のそれぞれの機能を併せ持つようにしてもよい。即ち、図1に示すように、人工衛星群3のうち何れか一の人工衛星2aにより地球上のある観測領域A〜Cの電磁波を検出し、これを他の人工衛星2bを介して地球上の地上通信ネットワーク5へと送信する動作と、図5に示すように地球4上の地上通信ネットワーク5から人工衛星群7を構成する人工衛星8a、8bを介して地球4上のある宛先領域へデータを送信する機能を一つの宇宙通信システム1の下で実行するようにしてもよい。
【0094】
次に本発明を適用した宇宙通信システム1の技術的思想を、地球4上の移動端末間の通信に適用する場合について説明をする。
【0095】
図7は、かかる宇宙通信システム1の技術的思想を適用した無線通信システム101の構成例を示している。この無線通信システム101は、いわゆるROF(Radio over Fiber)技術を用いる無線伝送システムで得られる効果に加えて、無線信号の有線ネットワーク内での柔軟な交換機能を備えるシステムであり、歩行者が携帯可能な移動体端末としての移動端末111a、111bと、移動端末111aとの間で無線信号の送受信を行うことにより通信を中継するための基地局112aと、移動端末111bとの間で無線信号の送受信を行うことにより通信を中継するための基地局112bと、各基地局112a、112bに接続される光ファイバ114を介して連結される複数のスイッチ113と、一のスイッチ113に光ファイバ114を介して接続される制御局54とを備えている。スイッチ113並びに光ファイバ114により構成されるネットワークを、以下有線通信ネットワーク119という。
【0096】
なお、この図7は、無線通信システム101における基地局112と光ファイバ114との接続形態の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。また、光ファイバ114の代替として電気的信号を送受信する図示しない電線や無線回線で構成してもよい。かかる場合には、後述する光−電気変換並びに電気−光変換のステップは全て省略されることになる。
【0097】
以下では、移動端末111aからの電波を基地局112aにより捕捉し、これを光ファイバ114、スイッチ113を介して基地局112bへと送信し、さらにこの基地局112bから移動端末111bに向けてビームフォーミングにより電波を放射することにより信号を送信する場合を例にとり説明をする。
【0098】
図8(a)は、この基地局112aの構成を、また図8(b)は、この基地局112bの構成を示している。
【0099】
基地局112aは、k個からなるビームフォーミング用のアンテナ素子121_1〜121_kと、このアンテナ素子121_1〜121_kの出力端に接続されている受信部122と、この受信部122に接続されているAD変換部124_1〜124_kと、このAD変換部124_1〜124_kからデジタルデータが供給されるフレーム化処理部125と、フレーム化処理部125からフレームデータが供給される電気−光変換部126と、電気−光変換部126の出力側に接続されている多重化部127と、この多重化処理部127の出力端側に設けられたインターフェース128と、制御部129を備えている。
【0100】
基地局112bは、k個からなるビームフォーミング用のアンテナ素子131_1〜131_kと、このアンテナ素子131_1〜131_kに接続されている送信部132と、この送信部132に接続されているDA変換部134_1〜134_kと、このDA変換部134_1〜134_kに接続されているフレーム化処理部135と、フレーム化処理部135に接続されている光−電気変換部136と、光−電気変換部136の出力側に接続されている逆多重化処理部137と、この逆多重化処理部137の入力端側に設けられたインターフェース138と、制御部139とを備えている。
【0101】
アンテナ素子121_1〜21_kは、基地局112a近傍の複数の電波源からの電磁信号を捉え、この捕捉したこの電波信号を出力する。即ち、この複数のアンテナ素子121_1〜121_kにより、基地局112aの近傍領域の電波源を検出することが可能となる。ここでは領域D〜Fから電波を受信する場合を例にとり説明をする。
【0102】
受信部122は、アンテナ素子121_1〜121_kからの出力信号が供給され、これを高周波増幅するとともに、制御部129による制御の下で、入力信号を低域周波数の信号へ周波数変換する。
【0103】
AD変換部124_1〜124_kは、いわゆるADコンバータで構成され、受信部122から供給されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、これをフレーム化処理部125へと出力する。ちなみに、このAD変換部124は、アンテナ素子121の受信信号をそれぞれAD変換することになる。
【0104】
フレーム化処理部125は、制御部129による制御の下で、AD変換部124_1〜124_kから供給されるデジタル信号をフレーム化データ列に変換する。フレーム化処理部125は、IPプロトコル用のIPヘッダやイーサネット(登録商標)用のMACヘッダを付加する、更には適切なラベルやタグを挿入する等のMAC処理を施すことによりMACフレームを生成する。
【0105】
なお、以下の説明においては、スイッチ113と、光ファイバ114からなる有線通信ネットワーク119がL2/L3スイッチネットワークとして構成されている場合において、フレーム化処理部125は、かかるL2/L3スイッチネットワークで交換可能なL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付すTCP/IPフレーム化処理を施す場合を例にとり説明をするが、これに限定されるものではない。フレーム化処理部125は、それぞれアンテナ素子に対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成することになる。
【0106】
電気−光変換部126は、フレーム化処理部125において生成されたフレームデータを電気−光変換するためのLD等の光素子で構成される。
【0107】
多重化処理部127は、電気−光変換部126からの光フレーム化データを多重し、これをインターフェース128へ出力する。インターフェース128、138は、L(レイヤー)1による物理的なインターフェースであり、接続された光ファイバ114を介して信号が送受信されることになる。
【0108】
逆多重化処理部137は、有線通信ネットワーク119を介してインターフェース138から送信されてくるフレーム化データを各アンテナ素子131_1〜131_kに対応したフレーム6_1〜6_kに分割し、これを光−電気変換部136へと出力する。
【0109】
光−電気変換部136は、逆多重化処理部137から送られてくるフレーム化データとしてのフレーム6_1〜6_kを光−電気変換するためのPD等で構成されている。
【0110】
フレーム化処理部135では、それぞれアンテナ素子131_1〜131_kに対応させてフレーム6_1〜6_kについて各種フレーム処理を行う。
【0111】
DA変換部134_1〜134_kは、いわゆるDAコンバータで構成され、フレーム化処理部135から供給されるデジタル信号からなる実データをアナログ信号に変換し、これを送信部132へと出力する。
【0112】
送信部132は、制御部139による制御の下で、RF周波数へ周波数変換する。
【0113】
アンテナ素子131_1〜131_kは、基地局112b周囲における各宛先領域に対してそれぞれ信号を送信する。ちなみに、このアンテナ素子131は、アンテナ素子121と同様にk個で構成される場合を想定しているがこれに限定されるものではなく、k個よりも増減してもよいことは勿論である。ここでは、宛先領域G〜Iに対してビームフォーミングにより信号を送信する場合を例にとり説明をする。
【0114】
スイッチ113は、例えばイーサネット(登録商標)プロトコル規格のいわゆるイーサスイッチに準拠したIPルータやL2/L3スイッチ、ATMスイッチ等である。このスイッチ113には、小規模LANで使用される安価なスイッチで適用されていてもよく、光ファイバ114を接続するためのポートが複数に亘り設けられている。図7に示す例では、スイッチ113とスイッチ113とが光ファイバ114を介して接続されており、このスイッチ113と光スイッチ113とで接続される有線通信ネットワーク119をイーサネット(登録商標)として活用している。
【0115】
制御局54は、この有線通信ネットワーク119において必要とされる制御処理全般と変復調処理、また必要に応じてスイッチ113を経由して受信したフレーム化データに含まれる電磁波信号の復調と復調データの再フレーム化処理とネットワークへの再送信を実施する。
【0116】
移動端末111は、基地局112との間でデータを送受信することが可能なデバイスとして構成され、例えば携帯電話、ノート型PC等である。
【0117】
次に、本発明を適用した無線通信システム101において、実際に移動端末111aから移動端末111bに向けて情報を送信する動作について説明をする。
【0118】
先ず、アンテナ素子121_1〜121_kにより、基地局112a周囲の各領域D〜Fにおける電波を検出する。ここでは、アンテナ素子121_1〜121_kにより、電波が検出されることになる。
【0119】
アンテナ素子121_1〜121_kからの実データが送られてきた受信部122では、これを先ず低雑音増幅し、さらに低域周波数の信号へ周波数変換する。受信部122から出力された実データは、AD変換部124_1〜124_kにおいてそれぞれAD変換される。デジタルビームフォーミングを行うためにはこの段においてデジタル信号に変換する必要があるためである。
【0120】
次にフレーム化処理部125において、AD変換部124_1〜124_kから供給されるデジタル信号に、IPプロトコル用のIPヘッダやイーサネット(登録商標)用のMACヘッダを付加する。実際にこのフレーム化処理部125において生成されるフレームデータの構成例は、図4に示すものとほぼ同様であり、またフレーム化処理の詳細も上述したフレーム化処理部125と同様であるため、以下での説明は省略する。
【0121】
次に、フレーム化処理部125において各種処理がなされた各フレーム6_1〜6_kは、電気−光変換部126において電気−光変換され、さらに多重化処理部127においてこれらが互いに合波され、インターフェース128を介して有線通信ネットワーク119へと送出されることになる。
【0122】
フレーム6が基地局112aから送出されてきた有線通信ネットワーク119では、これをスイッチ113を介して宛先となる制御局54もしくは基地局112へと送信する。スイッチ113では、マルチキャスト機能に基づいてフレーム化データをコピーし、これを複数の基地局112bや制御局54へ分配する役割を担うことになる。ちなみに、このスイッチ113は、受信したフレーム化データにおけるフレーム6のヘッダ部68のみを読み取り、上記ヘッダ部に付された宛先アドレスやラベル、タグ等を検出して、これを宛先となる制御局54や次の宛先となるスイッチ113、基地局112bへと導くことも可能となる。
【0123】
基地局112bは、インターフェース138を介してこのフレーム6を受信し、更に逆多重化処理部137によりこれをフレーム6_1〜6_kに分割する。更に、光−電気変換部136において各フレーム6_1〜6_kを光−電気変換した上で、フレーム化処理部135において各種フレーム処理が行われる。フレーム化処理としては、主に各フレーム化データに含まれる実データ部のみを抽出する処理と、ヘッダ部からは異なるアンテナ間で送信される信号間の時間同期をとるためのタイミング情報を検出する。
【0124】
その後段において、各フレーム6_1〜6_kは、DA変換部134_1〜134_kにおいてそれぞれDA変換され、さらに送信部132においてRF周波数へと周波数変換される。このとき送信部132は、フレーム化処理部135においてヘッダ部68から抽出したフレームの属性に基づいて、制御部139による制御の下、使用するRF周波数の制御を行うようにしてもよい。また、ヘッダ部68の復調により得られる送信タイミングをクロックとしてフレーム6_1〜6_n間の時間同期をとるようにしてもよい。
【0125】
最後に、上記処理に基づき、フレーム6_1〜6_kの実データ部から得られた信号は、それぞれ、それぞれがアンテナ素子131_1〜131_kを介してビームフォーミングの原理により、各宛先領域G〜Iへと送信される。
【0126】
ここで、上述した無線通信システム101の制御について、更に別観点から説明をする。
【0127】
k個のアンテナ素子121_1〜121_kが観測した信号を表す観測信号ベクトルをX1とし、これから所望のビーム方向からのみの信号を検出するために適切な重みづけ信号処理を行うための受信重みづけベクトルをW1とした場合、所望のビーム方向から到来した信号Y1の抽出はY1=W1X1の行列演算信号処理により可能となる。このため、基地局112aに対して所定方向に位置する各領域D〜Fの信号Y1も、このステアリングベクトルW1をコントロールすることにより、読み出すことが可能となる。
【0128】
また、地上局112bについても、l個のアンテナ素子131_1〜131_lが観測した信号を表す観測信号ベクトルをX2とし、これに適切な重みづけ信号処理を行うためのステアリングベクトルをW2とした場合、所望のビーム方向の信号Y2の抽出はY2=W2X2の行列演算信号処理により可能となる。このため、基地局112bに対して所定方向に位置する各領域G〜Iの信号Y2も、このステアリングベクトルW2をコントロールすることにより、読み出すことが可能となる。
【0129】
逆に、送信すべき信号方向に対応するステアリングベクトルW2の逆行列を用いて、W2-1Y2=X2の行列演算により、所望の方向に(所望の領域G〜Iに)信号を各アンテナ素子131_1〜131_lから放射することが可能となる。
【0130】
このため、基地局112aが受信可能な任意の方向からの到来波を、基地局112bが任意の方向へ送信するためには、基地局112bが基地局112aにおけるアンテナ素子121_1〜121_kから信号を受信し、W2-1W1X1=X2の演算で得られる送信信号ベクトルX2に対応する信号を、基地局112bのアンテナ素子131_1〜131_lが送信すれば、これが実現可能になる。これは基地局112aにおいてビームフォーミングに関する各信号処理を実施することなく、その処理負担を基地局112bに負わせることが可能となる。即ち、有線通信ネットワーク119を介した受信ビームと送信ビーム間のシームレスなリンクを実現することが可能となる。
【0131】
このように本発明を適用した無線通信システム101では、送信元の移動端末111aから、例えば宛先領域Gにある移動端末111bが指定された信号をフレーム化しておき、これを有線通信ネットワーク119を中継させて基地局112bへと送信する。このフレーム化の段階において、基地局112aが一の方向から無線信号を検出する際の受信重みづけベクトルと、他の地上局112bが他の方向へ無線信号を送信する際の送信重みづけベクトルの逆数に基づいて、当該地上局112bが各アンテナ素子131_1〜131_lの送信信号を生成する。これにより、従来において地上局112a、基地局112bにおいてそれぞれ行われていた、各アンテナ素子から送信すべき信号につき施す位相遅延処理や、その他各種ビームフォーミングに関する処理を、基地局112b側において実行させつつ、所望の宛先領域に信号を送信することが可能となる。このため、本発明では、かかるビームフォーミングに基づく多大な信号処理負担を双方の基地局112に負担させることが無くなる。
【0132】
ちなみに、これら重み付けベクトルを取得する方法として、GPS(Global Positioning System)等を利用し、基地局112自身が移動端末111自身の地理的な座標を特定するようにしてもよいし、移動端末111が既知の制御信号を送信することにより、これを受信した基地局112や別途設置された制御局54が到来方向推定と呼ばれる信号処理を施すことにより、あくまで基地局112や制御局54から見た移動端末の方向を取得するようにしてもよい。この到来方向推定により、移動端末の座標を取得する際には、例えば、ESPRIやMUSIC等のアルゴリズムを使用するようにしてもよい。
【0133】
なお、上記では説明を簡単化するために、送信および受信に関するビームフォーミングの処理を一括してフレーム化データをネットワークから受信する側の基地局で実施する例を示したが、上記一括信号処理を地上ネットワーク上に配した制御局のほか、フレーム化データをネットワークを経由して送信する側の基地局によって実施してもよい。
【0134】
すなわち、無線通信システム101は、基地局112aが備えるk個のアンテナ素子121_1〜121_kが各々受信する信号を有線通信ネットワーク119を介して制御局54が受信して信号処理するステップ、基地局112aが備えるk個のアンテナ素子121_1〜121_kが各々送信すべき信号を有線通信ネットワーク119を介して制御局54が供給するステップ、基地局112bが備えるk個のアンテナ素子131_1〜131_lが各々受信する信号を有線通信ネットワーク119を介して制御局54が受信して信号処理するステップ、基地局112bが備えるl個のアンテナ素子131_1〜131_lが各々送信すべき信号を有線通信ネットワーク119を介して制御局54が供給するステップの1以上を実行するものであってもよい。
【0135】
これにより、基地局112aが移動端末111aに提供するビームパターンDと基地局112bが移動端末111bに向けて提供するビームパターンGの間で無線リンクを確立することが可能となる。なお、各基地局112a、112bは、移動端末111a、111bに対する信号の変復調機能はもちろんのこと、ビームフォーミング処理のための機能を実装する必要が無くなり、設備コストを抑えるとともに、高機能なビームフォーミング技術を搭載した基地局112を設置することが可能となる。即ち、無線通信システムの低コスト化と高機能化の双方を実現することができる。
【0136】
また、このビーム間で送受信されるRF信号については、必ずしも制御局54で復調してブリッジする必要はなく、コネクションを形成する(信号をブリッジする)時点でデータの伝送宛先や宛先基地局におけるビームフォーミング情報さえ分ければよい。データがいかなる変調方式で変調されていても、またいかなる符号化方式によって符号化されたものであっても、システム内において復調・復号するステップを設けることなく通信相手の移動端末111まで伝送すること可能となる。これにより、極めてセキュアな無線リンクの形成を実現できる。
【0137】
かかるプロセスについて詳細に説明する。基地局112a付近にて通信可能となった端末111aは、先ず自局の登録を制御局54に対して行うべく、制御フレームを送信する。この制御フレームを含む信号は基地局112aが有するアンテナ素子121_1〜121_kによって受信され、それぞれがAD変換されて有線通信ネットワーク119において伝送交換が可能になるようにフレーム化処理が施されて送信される。
【0138】
制御局54は、かかる基地局112aにおいて生成されたフレームを受け取ることで端末111aをデータベースに登録する。このとき、受信したフレーム信号121_1〜121_kを解析することで基地局112aからみた移動端末111aが送信した無線信号の到来方向を知ることが可能となる。これにより、制御局54は基地局112aが移動端末111aとの間で送受信すべき信号をどのような重みづけベクトルWaによって信号処理し、また基地局112aにおいて各アンテナ素子121_1〜121_kが送受信すべき信号とすればよいかを知ることができる。
【0139】
これと同様に、移動端末111bについても基地局112bから送られてきたフレームを解析することにより、基地局112aが移動端末111aとの間で送受信すべき信号をどのような重みづけベクトルWbによって信号処理し、また基地局112bにおいて各アンテナ素子131_1〜131_kが送受信すべき信号とすればよいかを知ることができる。
【0140】
移動端末111aが送信する無線信号Yaは、基地局112aの各アンテナ素子121_1〜121_kで受信された信号(本信号ベクトルをXaとする)が更にフレーム化されて制御局54まで伝送されるが、制御局54はこれらから不要なヘッダ情報など取り除き、以下の如くビームフォーミング処理を施して、移動端末111aが送信した無線信号Yaを得る。
【0141】
Ya=WaXa (1)
さらに、ここで取得したYaは、基地局112bを介してビームパターンGにて通信相手となる移動端末111bへと伝送される必要があるが、基地局112bと移動端末111b間で無線通信を行うためビームパターンG形成に必要となる重みづけベクトルWbについても、上記と同様の手段にて制御局54にては既に把握されている状況とする。すなわち、ビームパターンGは、
Yb=WbXb (2)
【0142】
また、ビームフォーミング処理は線形演算のため、送信信号ベクトルXbが必要な際には、
Xb =Wb-1Yb (3)
により得ることが可能である。(1)と(3)式から基地局112bは、
Xb=Wb-1Ya= Wb-1 WaXa (4)
を送信ベクトルとして、l個のアンテナ素子131_1〜131_lの送信信号を得て送信すれば、所望のビームパターンGで無線信号Yaが送信されることになる。
【0143】
以上のプロセスは、フレーム化データから、アンテナ素子121と一の移動端末111aとの間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別するとともに、フレーム化データに記述されている宛先としての他の移動端末111bに関する情報から、アンテナ素子131と移動端末111bとの間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別し、これら識別した各アンテナ指向性に基づいて基地局112aにおけるアンテナ素子121と、他の基地局112bにおけるアンテナ素子131がそれぞれ移動端末111a、111bとの間でビームフォーミングを行うための制御を行うことを意味している。
【0144】
なお、実際に移動端末111aが移動端末111bとの通信を要求した場合、まずその通信要求フレームが制御局54宛で伝送されると同時に、制御局54はその通信要求に関する情報を移動端末111b宛に伝送する。そして、移動端末111bは、これに応じることを示す制御フレームを制御局54宛に返信し、さらにその旨を制御局54が端末111aに返信することにより、移動端末111aと移動端末111bとの間で通信コネクションが確立されることになる。
【0145】
因みに、無線端末111bが送信する無線信号が基地局112bおよび制御局54を経由して、更に基地局111aからビームパターンDにて送信される過程は上記と同様である。
【0146】
また、(1)〜(4)の線形演算から、基地局112aが備えるアンテナ素子数と、基地局112bが備えるアンテナ素子数が必ずしも同一である必要がないことは勿論である。
【0147】
なお、上記のような双方向通信における通信セッションの開始には、特に近年において、SIP(Session Initiation Protocol)を用いることが多く、本通信システムにおいても端末間の通信セッション開始のプロトコルとしてSIPを用いるようにしてもよい。
【0148】
なお、本発明を適用した無線通信システム101は、互いに通信を実行する複数の移動端末111a、111b間において、基地局112a、112bを介したいわゆるピア ・ツー・ピア (P2P)通信方式で通信を実行するものであってもよい。
【0149】
このP2P通信方式に基づいて、例えば移動端末111aと移動端末111bとの間で通信を開始する際には、基地局112aから先ず制御局54へアクセスする。そして、このアクセスされた制御局54により移動端末111a、111b間のP2P通信リンクが確立される。これとともに制御局54から移動端末111aのアドレス及び/又は移動端末111aが属する基地局112aのアドレスおよびビーム方向に関する情報が、通信相手となる移動端末111b及び/又は移動端末111bが属する基地局112bへ通知される。また、制御局54から、移動端末111bのアドレス及び/又は移動端末111bが属する基地局112bのアドレスおよびビーム方向に関する情報が、それぞれ通信相手となる移動端末111a及び/又は移動端末111aが属する基地局112bへと通知される。移動端末111a並びに移動端末111bは、その通知された各アドレスに基づいて、P2P通信リンクを介してその後の通信を実行していくことになる。
【0150】
このP2P通信リンクの確立や上記アドレスの管理は、上述したSIP(Session Initiation Protocol)に基づいて実行するようにしてもよい。この場合、制御局54がSIPサーバーの役目を担うことになる
【0151】
次に、本発明を適用した宇宙通信システム1の他の実施の形態について説明をする。図9は、他の実施の形態としての宇宙通信システム201の全体構成を示している。宇宙通信システム201は、地球における周回軌道を周回する複数の人工衛星202からなる人工衛星群203と、地球上に構築された地上通信ネットワーク5とを備えている。
【0152】
この宇宙通信システム201は、地球上の地上通信ネットワーク5から人工衛星202を介して地球上のある宛先領域A〜Dへデータを送信するものである。なお、宛先領域A〜Dは、4箇所に限定されるものではないことは勿論である。
【0153】
人工衛星202は、図10に示すように、k個からなるビームフォーミング用のアンテナ素子221_1〜221_kと、このアンテナ素子221_1〜221_kの入力端に接続されている送受信部222と、送受信部222に接続されているAD/DA変換部223と、k個のアンテナ素子221に対応したk個のポートを介してAD/DA変換部223に接続されている移相器ネットワーク224と、後述するn個のフレーム数に応じてn個のポート232_1〜232_kを介して移相器ネットワーク224に接続されているフレーム化処理部225と、フレーム化処理部225に接続されているL2/L3スイッチ226と、L2/L3スイッチ226に接続されている光モデム228とを備え、更に地上通信ネットワーク5との間でデータを送受信する衛星通信部229が光モデム228に接続され、L2/L3スイッチ226、フレーム化処理225、移相器ネットワーク224、送受信部222が制御部230にそれぞれ接続されている。ちなみに、この人工衛星202においては、アンテナ素子221の数kと、フレーム数nとは互いに異なる場合を想定している。
【0154】
衛星通信部229は、地上通信ネットワーク5から直接的に又は他の人工衛星202を介して間接的に送信されてくる、光フレーム化データを受信する。また、この衛星通信部229は、光モデム228から送信されてくる光フレーム化データを地上通信ネットワーク5へと送信する。
【0155】
光モデム228は、衛星通信部229において受信した光信号を増幅し、さらに光−電気変換する処理、或いはL2/L3スイッチ226から出力されてきた電気フレーム化データを電気−光変換する処理、その他各種信号処理を行う。
【0156】
L2/L3スイッチ226は、光モデム228から送信されてくるフレームデータについて、L2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダに基づいてこれを対応する入出力ポート231_1〜231_nに伝送するためのスイッチで構成されている。この入出力ポート231_1〜231_nは、フレーム化データがヘッダ部に情報として持つことのできる宛先RFビームパターン数nに対応したものである。
【0157】
フレーム化処理部225は、それぞれフレーム化データの入力ポート231_1〜231_nとデータ出力ポート232_1〜232_n数nを対応させて各種フレーム処理を行う。このフレーム化処理部225で行うフレーム処理としては、例えばヘッダ部68に含まれている情報を読み出し、制御部230の制御の下で、後段における移相器ネットワーク224において電波の発信時のタイミング制御をする等の処理を行うようにしてもよい。このフレーム化処理部225では、入力ポート231_1〜231_nに入力されたフレーム化データからヘッダ部68を除去して実データ部66bの信号のみを抽出して出力ポート232_1〜232_nに対応させて出力する。このように、このフレーム化処理部225は、送られてくるフレーム6から少なくとも実データ部66bに記述されている情報を読み取り、これを対応する移相器ネットワーク224の入力ポートへと送出する。
【0158】
移相器ネットワーク224には、フレーム化処理部225から送信データが送信RFビームパターンに対応する入力ポート232_1〜232_nに送信されてくる。移相器ネットワーク224は、各入力ポート232_1〜232_nに入力された信号が対応するRFビームパターンで送信されるように、各入力データについてそれぞれビームフォーミングを実現するために送信データの6_1〜6_kへの分配と各分配された信号の移相量の調整、或いは時間遅延処理を施す。この移相器ネットワーク224は、上記信号処理により得られた送信データ6_1〜6_kをアンテナ素子221_1〜221_kに対応するAD/DA変換器の入出力ポートに供給する。なお、この移相器ネットワーク224における上述した制御では、制御部230による制御の下で、ヘッダ部68に記述されている情報を読み取ることにより、移相量を制御するようにしてもよい。
【0159】
AD/DA変換部223は、移相器ネットワーク223から送られてくるデジタル信号としての各アンテナ素子221_1〜221_kに対応したデータをアナログ信号に変換し、これを送受信部222へと出力する。また、AD/DA変換部223は、送受信部222から供給されるアナログ信号をAD変換して、これを移相器ネットワーク223へと出力する。ちなみに、移相器ネットワーク224が実行すべき信号処理は、アナログ領域で行うようにしてもよい。かかる場合において、このAD/DA変換部223と、移相器ネットワーク224との位置は逆転することになる。
【0160】
送受信部222は、AD/DA変換部223から入力されてくる信号を制御部230による制御の下で、RF周波数へ周波数変換し、これを各アンテナ素子221_1〜221_kへ出力する。また送受信部222は、各アンテナ素子221_1〜221_kから入力されてくる信号を制御部230による制御の下で、低域周波数の信号へ周波数変換し、これをAD/DA変換部223へ出力する。
【0161】
アンテナ素子221_1〜221_kは、地球上における各宛先領域A〜Dに対してそれぞれビームフォーミングにより信号を送信する。
【0162】
なお、この図9に示す宇宙通信システム201における地上通信ネットワーク5は、上述した図3の構成を同一にするため、以下での説明を省略する。
【0163】
次に、この図9に示す宇宙通信システム201により、地球上の地上通信ネットワーク5から人工衛星群203を構成する人工衛星202を介して地球上のある宛先領域A〜Dへデータを送信する動作について説明をする。
【0164】
先ずユーザは、通信端末53を介して、情報を送信したい宛先領域を指定する。例えばユーザが通信端末53aを介して、宛先領域Aを指定した場合には、ヘッダ部68においてその宛先Aに関する宛先情報が記述されることになる。この宛先情報は、宛先領域からそこに存在する一の宛先端末に至るまでのあらゆる情報を含む概念である。ちなみに、このヘッダ部68は、上述したようにTCP/IPフレームに対応したものであるため、L2/L3スイッチネットワークとして構成される地上通信ネットワーク5において所望のデバイスを自在に配信することが可能となる。通信端末53aからの上述したフレーム化データ6は、スイッチ52を介して地上局51へと送信され、この地上局51において電気−光変換した上で人工衛星群203へと光通信により送信される。
【0165】
ちなみに、この地上通信ネットワーク5における他の通信端末53からそれぞれ宛先領域に関する情報がヘッダ部68に付されたフレームデータ6が送信された場合には、地上局51はこれらを多重化して人工衛星群203へ送信する。
【0166】
地上通信ネットワーク5から直接的に又は他の人工衛星202を介して間接的にフレーム化データ6が送られてきた人工衛星202は、これを衛星通信部229を介して受信し、光モデム228において増幅し、光電変換する。
【0167】
光モデム228から出力されたフレーム化データ6は、L2/L3スイッチ226において出力ポート231_1〜231_nに振り分けられる。フレームデータ6は、予めL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダに送信ビーム方向やビームパターンを指定する情報のほか、宛先領域、宛先端末に関する情報を有している。更に特別な場合として衛星が使用すべきアンテナ素子221_1〜221_kに関する情報を有していてもよい。このL2/L3スイッチ226は、あくまで地上通信ネットワーク5に形成されたL2/L3スイッチに対応させたものである。これにより、地上通信ネットワーク5と同様に、このL2/L3スイッチ226においても同様にフレーム6の配信制御を行うことが可能となる。
【0168】
L2/L3スイッチ226が分配したフレーム化データは、その後段のフレーム化処理部225において、入力フレーム化データ6からその実データ部66bが抽出されて移相器ネットワーク224へと送信される。
【0169】
移相器ネットワーク224に送出されたデータは、n個の入力ポート232_1〜232_nに応じたビームフォーミングが形成されるように、入力データをアンテナ素子221_1〜221_kのk個分に対応させて導かれ、またそれぞれのアンテナ素子221_1〜221_kの信号毎に移相量を調整し、或いは時間遅延を施すことによりビームフォーミングを実現する。この移相器ネットワーク224から出力された各信号は、AD/DA変換部223へと送られて、それぞれDA変換され、さらに送信部222においてRF周波数へと周波数変換される。このとき送信部222は、地上通信ネットワーク5からの制御情報に基づき、制御部230による制御の下で、その周波数変換が制御されるものであってもよい。
【0170】
送信部222から出力された各RF信号は、アンテナ素子221_1〜221_kからビームフォーミングにより地球上における各宛先領域A〜Dへと送信されることになる。
【0171】
このように本発明を適用した宇宙通信システム201においては、地上通信ネットワーク5に適用されたL2/L3ネットワークに対応可能なTCP/IPフレーム化を予め行っておく。即ち、フレームデータ6には、予めL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダに宛先情報が付されている状態とした上でこれを人工衛星202へ送信する。この人工衛星202内においても、L2/L3スイッチ226を設けておくことにより、地上通信ネットワーク5から送信されてきたフレーム化データ6をヘッダ68に含まれている情報に基づいて所望の入出力ポート231_1〜231_nへ配信可能とされている。このため、本発明では、ビームフォーミングネットワークを構成する上で、極めて簡略な構成でこれを実現でき、人工衛星202内において特別に複雑な制御デバイスを設ける必要も無くなることから、人工衛星202自体の軽量化、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0172】
なお、この宇宙通信システム201では、人工衛星202により地球上のある観測領域A〜Dから、互いに異なる宛先に関する情報が付加された信号を複数の端末から検出し、これを人工衛星202を介して間接的に又はこれを介さず直接的に地球上の地上通信ネットワーク5へと送信するようにしてもよい。
【0173】
かかる場合には、アンテナ素子221_1〜221_kにより、地球上における各観測領域の電磁波を検出し、送受信部222における低雑音増幅、低域周波数への周波数変換、AD/DA変換部223におけるAD変換がなされて移相器ネットワーク224へと供給されることになる。ちなみに、この移相器ネットワーク224には、このアンテナ素子221の素子数であるk個の信号が供給されることになる。ちなみに、この移相器ネットワーク224の処理は、アナログ領域で行ってもよいことは勿論であることから、かかる場合には、移相器ネットワーク224の位置とAD/DA変換部223の位置とが逆転することになる。この移相器ネットワーク224からは、上記k個のアンテナ素子により形成可能なn個のビーム方向やビームパターンに対応した受信デジタル信号が出力されてフレーム化処理部225へと送られることになる。このフレーム化処理部225では、受け取ったデジタル信号についてヘッダ部68に上記n個のビームに関する情報や宛先に関する情報を含めたL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付すことによりTCP/IPフレーム化をする。
【0174】
また、フレーム化処理部225においてTCP/IPフレーム化されたフレームデータ6は、入出力ポート231_1〜231_nを介してL2/L3スイッチ226へと出力され、予めL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダに宛先情報が付されているため、これに基づいて所望の出力先へと伝送することが可能となる。このL2/L3スイッチ226において出力先の配信制御がなされた後に、フレーム化データ6は、光モデム228を経て衛星通信部229へと送られることになる。衛星通信部229では、この送られてきたフレームデータ6を地上通信ネットワーク5へ送出する。
【0175】
人工衛星202からフレーム化データを受信した地上局51は、これを地上通信ネットワーク5を構成する各通信端末53に対してスイッチ52を介して送信する。スイッチ52は、L2/L3スイッチで構成されていることから、この受信したフレームデータ6を、コピーし、これを異なる複数の通信端末53へ分配することも可能になる。
【0176】
このように本発明を適用した宇宙通信システム201においては、地球上のある観測領域A〜Dの複数の端末から互いに異なる宛先情報が付された信号を検出し、これを人工衛星202を介して地上通信ネットワーク5へと送信する場合においても同様に、L2/L3ネットワークに対応可能なTCP/IPフレーム化をフレーム化処理部224において実行し、またこれを自動的に所望の出力端子へと配信可能なL2/L3スイッチ226を設けておくことにより、ビームフォーミングネットワークを構成する上で、極めて簡略な構成でこれを実現でき、人工衛星202内において特別に複雑な制御デバイスを設ける必要も無くなることから、人工衛星202自体の軽量化、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0177】
また、上述したフレームデータ6について、予めL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付しておくことにより、L2/L3スイッチ226を用いて簡易なビーム切り替えや、制御情報に基づいたビームの高速な制御も可能となる。
【0178】
なお宇宙通信システム201は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、ヘッダ68に付される宛先情報をそれぞれ波長により区別した波長アドレス情報とした上で、いわゆる波長ラベルスイッチングにより、フレームデータを配信するシステムを採用するようにしてもよい。
【0179】
図11は、光フレーム化データが搬送波周波数として用いる光波長で宛先を識別する、いわゆる波長ラベルスイッチングが可能な場合の、人工衛星252の構成例を示している。この人工衛星252において、上述した人工衛星202と同一の構成要素、回路については、同一の符号を付すことにより、以下での説明を省略する。
【0180】
この人工衛星252は、k個からなるビームフォーミング用のアンテナ素子221_1〜221_kと、このアンテナ素子221_1〜221_kの入力端に接続されている送受信部222と、送受信部222に接続されているAD/DA変換部223と、AD/DA変換部223に接続されているフレーム化処理部225と、フレーム化処理部225に接続されている変換部235と、変換部235に接続されているAWG(Arrayed Waveguide Grating)236と、AWG236に接続されている光増幅部238とを備え、更に地上通信ネットワーク5との間でデータを送受信する衛星通信部229が光増幅部238に接続され、AWG236、変換部235、フレーム化処理部225、送受信部222が制御部230にそれぞれ接続されている。
【0181】
光増幅部238は、衛星通信部229から送られてくる光信号、又はAWG236から送られてくる光信号を増幅する。
【0182】
AWG236は、アレイ導波路回折格子等に代表される波長選択素子で構成される。即ち、このAWG236は、わずかずつ長さの異なる多数の光導波路アレイによる波長ごとの位相変化が、出口の扇状スラブ導波路で回折角の変化に変換され、波長毎に分離されて出射可能な素子である。ちなみに、このAWG236は、光増幅部238から送信されてきた波長の異なる信号を波長毎に分離する機能を担うとともに、変換部から送信されてきた複数の波長の異なる信号を合波して、これを光増幅部238へと出力する機能をも担う。
【0183】
変換部235は、AWG236から出射されてくる光信号を光−電気変換するPD、またフレーム化処理部225から送信されてくる電気信号を電気−光変換するLD等で構成される。
【0184】
フレーム化処理部225は、変換部235から送信されてくるフレーム化データから実データ部66bのみ抽出して、これをAD/DA変換部223へ送信する。またフレーム化処理部225は、AD/DA変換部223から送られてくる信号について、TCP/IPフレーム化し、変換部235へと出力する。その結果、この変換部235を構成するLDを通じて、光TCP/IPフレームを作り出すことが可能となる。
【0185】
このような構成からなる人工衛星252を介して地上通信ネットワーク5から所望の宛先領域A〜Dへデータを送る際には、その宛先領域に応じたRFビームパターンにより、人工衛星202がRF信号を送信するように、地上局51ないしは図示されない制御局などにおいて光フレーム信号を生成することになる。人工衛星252においては、この光フレーム化データを、AWG236において各信号を分波していくことになる。光フレーム化データは、宛先アンテナ素子情報に応じて予め波長により区別されているものであることから、この波長選択素子としてのAWG236を通過させることにより、自動的に宛先情報に応じて所望の入出力ポートにデータを配信させることが可能となる。
【0186】
このような構成からなる人工衛星252を介して領域A〜Dから地上通信ネットワーク5へデータを送る際には、その宛先領域や宛先端末に応じた宛先情報をフレーム化処理部225において生成する。またフレーム化処理部225から出力されたデータは、変換部235において電気−光変換する際に、宛先情報を波長で区別した光フレーム化データを生成することになる。
【0187】
AWG236では、この変換部235から供給されてきた、波長の異なる光フレーム化データを合波し、これを増幅部238へと出力する。
【0188】
このように、図11に示すような波長ラベルスイッチングを行う人工衛星252では、宛先情報を波長により区別した光フレーム化データをAWG236に通過させることにより、ビームフォーミングネットワークを構成する上で、極めて簡略な構成でこれを実現でき、人工衛星252内において特別に複雑な制御デバイスを設ける必要も無くなることから、人工衛星252自体の軽量化、低消費電力化を図ることが可能となる。
【0189】
また、地上通信ネットワーク5におけるフレームデータにおいて、ヘッダ部68に宛先情報についてのラベリングを施すことにより、フレームデータのアドレスを介して容易にアンテナ素子221_1〜221_kによるビーム放射エリアを指定することが可能となる。
【0190】
図12は、波長ラベルスイッチングを行う人工衛星202の他の実施の形態を示している。この他の形態としての人工衛星258は、人工衛星202における、AD/DA変換部223から衛星通信部229に至るまで、変換部235、n個のポート231_1〜231_n、光移相器ネットワーク281、k個のポート232_1〜232_k、AWG236、EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)260が順次接続されている。この人工衛星258において、上述した人工衛星202と同一の構成要素、回路については、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
【0191】
EDFA260は、衛星通信部229からの光信号、或いはAWG236からの光信号を直接増幅する。
【0192】
また、n個のポート231_1〜231_n、k個のポート232_1〜232_kとの間に設けられた光移相器ネットワーク281は、それぞれn×k個のマトリクス回路を構成するものである。AWG236において波長毎に分離された各光信号は、それぞれn個のポート231_1〜231_n、k個のポート232_1〜232_kは、それぞれ波長と放射方向が対応するものであり、各波長について所望の遅延長となるように調整が行われていることによりビームフォーミングが実現可能となる。これにより、送受信部222におけるビームフォーミングのための各種処理量を軽減することが可能となる。
【0193】
図13は、人工衛星258におけるn個のポート231_1〜231_n、k個のポート232_1〜232_k、AWG236の代替として、高分散ファイバ271と、分光器272を配設した例を示している。
【0194】
分光器272は、波長毎に光を分離するスプリッタにより構成されている。また、波長と放射方向を一対一で対応させることにより、各波長ごとに経路を異ならせることが可能となり、これにより、各波長ごとに所望の遅延長を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0195】
【図1】本発明を適用した宇宙通信システムの全体構成図である。
【図2】人工衛星のシステムブロック構成図である。
【図3】地上通信ネットワークの構成図である。
【図4】フレームデータの構成例を示す図である。
【図5】地上通信ネットワークから人工衛星を介して地球上のある宛先領域を送信する宇宙通信システムの全体構成図である。
【図6】人工衛星の他のシステムブロック構成図である。
【図7】宇宙通信システムの技術的思想を適用した無線通信システムの構成例を示す図である。
【図8】図7に示すシステムの基地局の構成について説明するための図である。
【図9】本発明を適用した宇宙通信システムの他の実施の形態について説明するための図である。
【図10】図9に示すシステムにおける人工衛星のブロック構成について説明するための図である。
【図11】波長ラベルスイッチングを行う人工衛星の構成例を示す図である。
【図12】波長ラベルスイッチングを行う人工衛星の他の実施の形態を示す図である。
【図13】図12の形態のAWGの代替として、高分散ファイバと、分光器を配設した例を示す図である。
【符号の説明】
【0196】
1 宇宙通信システム
2 人工衛星
3 人工衛星群
4 地球
5 地上通信ネットワーク
21 アンテナ素子
22 受信部
24 AD変換部
25 フレーム化処理部
26 電気−光変換部
27 多重化処理部
29 衛星通信部
30 アンテナ・周波数制御部
31 フレーム化制御部
50 光ファイバ
51 地上局
52 スイッチ
53 通信端末
54 制御局
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムにおいて、
上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星は、
地球上における各観測領域が放射する電磁波を検出する1又は複数のアンテナ素子と、
上記各アンテナ素子により検出された電磁波に基づく信号をそれぞれAD変換するAD変換手段と、
上記AD変換手段によりAD変換されたアンテナ素子毎の信号を上記地上通信ネットワーク内の通信プロトコルに基づいてそれぞれアンテナ素子に対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成するフレーム化処理手段と、
上記フレーム化処理手段により生成されたフレーム化データを直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記地上通信ネットワークへ送信する衛星通信手段とを有し、
上記地上通信ネットワークは、
上記人工衛星群から上記フレーム化データを受信する地上局と、
上記地上局を介して上記フレーム化データが送信される複数の通信端末とを有し、
上記通信端末は、上記受信した各アンテナ素子に対応したフレーム化データから地球上における所望観測領域に応じたアンテナの指向性を適応的に形成することにより、特定の観測領域の電磁波放射状態を識別可能とされていること
を特徴とする宇宙通信システム。
【請求項2】
上記地上通信ネットワークは、L2/L3スイッチネットワークとして構成され、
上記フレーム化処理手段は、上記アンテナ素子毎の信号に対して、上記地上通信ネットワークとしてのL2/L3スイッチネットワークで交換可能なL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付すTCP/IPフレーム化処理を施すこと
を特徴とする請求項1記載の宇宙通信システム。
【請求項3】
上記フレーム化処理手段は、上記アンテナ素子毎の信号に対して、更にL4(トランスポート層)ヘッダを付すこと
を特徴とする請求項2記載の宇宙通信システム。
【請求項4】
上記AD変換手段は、上記各アンテナ素子により検出された電磁波に基づく信号が予め変調されていた場合にこれを復調することなくそれぞれAD変換し、
上記地上局又は上記通信端末は、受信した上記フレーム化データから元の電磁波信号を再生して、これを復調すること
を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項記載の宇宙通信システム。
【請求項5】
上記衛星通信手段は、上記フレーム化処理手段により生成されたフレーム化データを電気−光変換した上で送信し、
上記地上局は、受信した上記フレーム化データを光−電気変換すること
を特徴とする請求項1〜4のうち何れか1項記載の宇宙通信システム。
【請求項6】
上記地上局又は通信端末は、上記受信したフレーム化データから受信品質を解析し、この解析した受信品質に基づいて、上記一の人工衛星に対して分解能を可変制御するための制御信号を送信し、
上記一の人工衛星は、受信した上記制御信号に基づいて、上記AD変換手段におけるAD変換の分解能を制御すること
を特徴とする請求項1〜5のうち何れか1項記載の宇宙通信システム。
【請求項7】
フレーム化処理手段において生成されたフレーム化データを、送信すべき1以上の他の人工衛星に応じて交換するスイッチング手段を更に備え、
上記衛星通信手段は、上記スイッチング手段により交換されたフレーム化データをそれぞれ上記1以上の他の人工衛星へ送信し、
上記他の人工衛星は、受信した上記フレーム化データを互いに異なる上記地上局へ送信すること
を特徴とする請求項1〜6のうち何れか1項記載の宇宙通信システム。
【請求項8】
地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムにおいて、
上記地上通信ネットワークは、
所定の通信プロトコルに基づいた、地球上における宛先領域に関する情報を含むヘッダを付したフレーム化データを送信する通信端末と、
上記1以上の通信端末から上記フレーム化データを受信した場合にこれに含まれる宛先領域に関する情報に基づいて合成した新たなフレーム化処理を施すことにより新たなフレーム化データを生成し、これを上記人工衛星群へと送信する地上局とを有し、
上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星は、
上記地上局から直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記フレーム化データを受信する衛星通信手段と、
各宛先領域に対してそれぞれ信号を送信可能な1又は複数のアンテナ素子と、
上記衛星通信手段により受信した上記フレーム化データを上記ヘッダに含まれている情報に基づいて上記アンテナ素子毎に振り分け、フレームに含まれる実情報を抽出するフレーム分配・分解手段と、
上記フレーム分配・分解手段により得られたアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、これを上記アンテナ素子へそれぞれ供給するDA変換手段とを有し、
上記地上局又は通信端末は、上記宛先領域に応じて指向性を適応的に変化させるための信号処理を各宛先アンテナ素子に対応するフレーム毎に実施すること
を特徴とする宇宙通信システム。
【請求項9】
上記地上通信ネットワークは、L2/L3スイッチネットワークとして構成され、
上記通信端末は、上記地上通信ネットワークとしてのL2/L3スイッチネットワークで交換可能なL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付すTCP/IPフレーム化処理を施すこと
を特徴とする請求項8記載の宇宙通信システム。
【請求項10】
上記通信端末は、上記TCP/IPフレーム化処理において更にL4(トランスポート層)ヘッダを付すこと
を特徴とする請求項9記載の宇宙通信システム。
【請求項11】
上記地上局又は上記通信端末は、送信すべきデータに変調を施し、
上記人工衛星は、受信した上記フレーム化データを復調することなく、これを上記複数のアンテナ素子に導くことにより、上記変調されたデータが各宛先領域に対応するビームとして送信されること
を特徴とする請求項8〜10のうち何れか1項記載の宇宙通信システム。
【請求項12】
上記地上局は、送信すべき上記フレーム化データを電気−光変換し、
上記衛星通信手段は、受信した上記フレーム化データを光−電気変換すること
を特徴とする請求項8〜11のうち何れか1項記載の宇宙通信システム。
【請求項13】
移動端末間における無線信号の送受信を有線ネットワークに接続された複数の基地局を介して実行する無線通信システムにおいて、
一の基地局は、
一の移動端末から送信される無線信号を一の方向から検出する1又は複数の第1のアンテナ素子と、
上記各第1のアンテナ素子により検出された信号をそれぞれAD変換するAD変換手段と、
上記AD変換手段によりAD変換された第1のアンテナ素子毎の信号を上記有線ネットワーク内の通信プロトコルに基づいてそれぞれフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成するフレーム化処理手段と、
上記フレーム化処理手段により生成されたフレーム化データを上記有線ネットワークへ送出する送信手段とを有し、
他の基地局は、
上記有線ネットワークを介して受信したフレーム化データを上記宛先情報に基づいて上記第1のアンテナ素子毎に分解するフレーム分解手段と、
上記フレーム分解手段により分解されたアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換するDA変換手段と、
上記DA変換手段によりDA変換されたデータに基づく無線信号を他の移動端末へ送信する1又は複数の第2のアンテナ素子とを有し、
上記有線ネットワークにおける通信を制御する制御局は、
上記フレーム化データから、上記第1のアンテナ素子と上記一の移動端末との間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別するとともに、当該フレーム化データに記述されている宛先としての他の移動端末に関する情報から、上記第2のアンテナ素子と上記他の移動端末との間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別し、これら識別した各アンテナ指向性に基づいて一の基地局における第1のアンテナ素子と、上記他の基地局における第2のアンテナ素子がそれぞれ移動端末との間でビームフォーミングを行うための制御を行うこと
を特徴とする無線通信システム。
【請求項14】
上記有線ネットワークは、L2/L3スイッチネットワークとして構成され、
上記フレーム化処理手段は、上記第1のアンテナ素子毎の信号に対して、上記地上通信ネットワークとしてのL2/L3スイッチネットワークで交換可能なL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付すTCP/IPフレーム化処理を施すこと
を特徴とする請求項13記載の無線通信システム。
【請求項15】
上記一の基地局又は他の基地局は、上記制御局において実行すべき処理を代替して行うこと
を特徴とする請求項13又は14記載の無線通信システム。
【請求項16】
上記一の基地局は、上記一の移動端末より検出された無線信号が予め変調されていた場合にこれを復調することなく上記有線ネットワークへ送出し、
上記他の基地局は、上記有線ネットワークを介して受信したフレーム化データを変調することなく他の通信端末へ送信すること
を特徴とする請求項13〜15のうち何れか1項記載の無線通信システム。
【請求項17】
上記移動端末間の通信は、上記有線ネットワークに接続された複数の基地局を介してピア・ツー・ピア(P2P)通信方式で実行されること
を特徴とする請求項13記載の無線通信システム。
【請求項18】
地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムにおいて、
上記地上通信ネットワークは、
所定の通信プロトコルに基づいた、地球上における宛先領域に関する情報又は上記人工衛星群内における宛先アンテナ素子に関する情報を含むヘッダを付したフレーム化データを送信する通信端末と、
上記1以上の通信端末から送信されてきた上記データを上記人工衛星群へと送信する地上局とを有し、
上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星は、
上記地上局から直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記フレーム化データを受信する衛星通信手段と、
地球上における上記宛先領域に対してそれぞれ信号を送信可能な1又は複数のアンテナ素子と、
上記衛星通信手段により受信した上記フレーム化データを上記ヘッダに含まれている宛先領域に関する情報又は使用すべきアンテナ素子に関する情報に基づいて分類するスイッチング手段と、
上記スイッチング手段により分類されたアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、これを上記アンテナ素子へそれぞれ供給するDA変換手段とを有すること
を特徴とする宇宙通信システム。
【請求項19】
上記地上通信ネットワーク並びに上記スイッチング手段は、L2/L3スイッチネットワークとして構成されていること
を特徴とする請求項18記載の宇宙通信システム。
【請求項20】
上記地上局は、送信すべき上記フレーム化データを衛星に転送する前に、上記宛先情報に対応した波長を有する光フレーム化データに変換し
上記衛星通信手段は、受信した上記光フレーム化データを受信し、
上記スイッチング手段は、上記光フレーム化データが有する波長アドレス情報基づいてこれを各出力端へ分波する波長分波器であり、
更に上記人工衛星は、上記波長分波器により分波された各光フレーム化データを光-電気変換し、これを上記DA変換手段へ供給する光-電気変換手段を更に備えること
を特徴とする請求項18記載の宇宙通信システム。
【請求項21】
上記波長分波器により分波された各フレーム化データについて、上記波長アドレス情報に基づいてビームフォーミング用に位相調整を施すための位相調整手段を更に備えること
を特徴とする請求項20記載の宇宙通信システム。
【請求項22】
地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムにおいて、
上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星は、
地球上における各観測領域から発信される、互いに宛先が異なる無線信号を複数の端末から検出する1又は複数のアンテナ素子と、
上記各アンテナ素子により検出された信号をそれぞれAD変換するAD変換手段と、
上記AD変換手段によりAD変換されたアンテナ素子毎の信号にビームフォーミング処理を施して複数のビーム方向又はビームパターンにおける受信信号としてこれを分離する移相器ネットワークと、
上記地上通信ネットワーク内の通信プロトコルに基づいて各ヘッダに上記ビーム方向又はビームパターンに関する情報を含めつつそれぞれに対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成するフレーム化処理手段と、
上記フレーム化処理手段により生成されたフレーム化データを上記ヘッダ情報に基づいて多重化する多重化手段と、
上記多重化手段により多重化されたフレーム化データを直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記地上通信ネットワークへ送信する衛星通信手段とを有し、
上記地上通信ネットワークは、
上記人工衛星群から上記フレーム化データを受信する地上局と、
上記地上局を介して上記フレーム化データが送信される複数の通信端末とを有し、
上記通信端末又は上記地上局は、上記観測領域に対応する特定のビーム方向又はビームパターンで放射された信号のみを検出すること
を特徴とする宇宙通信システム。
【請求項23】
上記地上通信ネットワーク並びに上記スイッチング手段は、L2/L3スイッチネットワークとして構成されていること
を特徴とする請求項22記載の宇宙通信システム。
【請求項24】
上記人工衛星は、上記フレーム化処理手段から出力されたフレーム化データを上記フレーム化データに含まれる宛先に関する情報を波長に変換した光フレーム化データに変換する変換手段を更に備え、
上記スイッチング手段は、上記光フレーム化データを合波する光波長合波器であること
を特徴とする請求項22記載の宇宙通信システム。
【請求項25】
地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信方法において、
上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星では、
地球上における各観測領域が放射する電磁波を1又は複数のアンテナ素子を介して検出し、
上記各アンテナ素子により検出した電磁波に基づく信号をそれぞれAD変換し、
上記AD変換したアンテナ素子毎の信号を上記地上通信ネットワーク内の通信プロトコルに基づいてそれぞれアンテナ素子に対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成し、
上記生成したフレーム化データを直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記地上通信ネットワークへ送信し、
上記地上通信ネットワークでは、
上記人工衛星群から地上局により上記フレーム化データを受信し、
上記地上局を介して上記フレーム化データを複数の通信端末へ送信し、
上記通信端末では、上記受信した各アンテナ素子に対応したフレーム化データから地球上における所望観測領域に応じたアンテナの指向性を適応的に形成することにより、特定の観測領域の電磁波放射状態を識別可能とすること
を特徴とする宇宙通信方法。
【請求項26】
一の人工衛星において生成した上記フレーム化データを、送信すべき1以上の他の人工衛星に応じて交換し、
上記交換したフレーム化データをそれぞれ上記1以上の他の人工衛星へ送信し、
上記他の人工衛星は、受信した上記フレーム化データを互いに異なる上記地上局へ送信すること
を特徴とする請求項25記載の宇宙通信方法。
【請求項27】
地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信方法において、
上記地上通信ネットワークでは、
所定の通信プロトコルに基づいた、地球上における宛先領域に関する情報を含むヘッダを付したフレーム化データを通信端末から送信し、
地上局が上記1以上の通信端末から上記フレーム化データを受信した場合にこれに含まれる宛先領域に関する情報に基づいて合成した新たなフレーム化処理を施すことにより新たなフレーム化データを生成し、これを上記人工衛星群へと送信し、
上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星では、
上記地上局から直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記フレーム化データを受信し、
上記衛星通信手段により受信した上記フレーム化データを上記ヘッダに含まれている情報に基づいて、各宛先領域に対してそれぞれ信号を送信可能な1又は複数の上記アンテナ素子毎に振り分け、フレームに含まれる実情報を抽出し、
上記フレーム分配・分解手段により得られたアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、これを上記アンテナ素子へそれぞれ供給し、
上記地上局又は通信端末では、上記宛先領域に応じて指向性を適応的に変化させるための信号処理を各宛先アンテナ素子に対応するフレーム毎に実施すること
を特徴とする宇宙通信方法。
【請求項28】
移動端末間における無線信号の送受信を有線ネットワークに接続された複数の基地局を介して実行する無線通信方法において、
一の基地局では、
一の移動端末から送信される無線信号を一の方向から1又は複数の第1のアンテナ素子を介して検出し、
上記各第1のアンテナ素子により検出した信号をそれぞれAD変換し、
上記AD変換した第1のアンテナ素子毎の信号を上記有線ネットワーク内の通信プロトコルに基づいてそれぞれフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成し、
上記生成したフレーム化データを上記有線ネットワークへ送出し、
他の基地局では、
上記有線ネットワークを介して受信したフレーム化データを上記宛先情報に基づいて上記第1のアンテナ素子毎に分解し、
分解したアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、
上記DA変換したデータに基づく無線信号を1又は複数の第2のアンテナ素子を介して他の移動端末へ送信し、
上記有線ネットワークにおける通信を制御する制御局では、
上記フレーム化データから、上記第1のアンテナ素子と上記一の移動端末との間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別するとともに、当該フレーム化データに記述されている宛先としての他の移動端末に関する情報から、上記第2のアンテナ素子と上記他の移動端末との間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別し、これら識別した各アンテナ指向性に基づいて一の基地局における第1のアンテナ素子と、上記他の基地局における第2のアンテナ素子がそれぞれ移動端末との間でビームフォーミングを行うための制御を行うこと
を特徴とする無線通信方法。
【請求項29】
地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信方法において、
上記地上通信ネットワークでは、
所定の通信プロトコルに基づいた、地球上における宛先領域に関する情報又は上記人工衛星群内における宛先アンテナ素子に関する情報を含むヘッダを付したフレーム化データを通信端末から送信し、
上記1以上の通信端末から送信されてきた上記データを地上局により上記人工衛星群へと送信し、
上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星では、
上記地上局から直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記フレーム化データを受信し、
上記受信した上記フレーム化データを上記ヘッダに含まれている宛先領域に関する情報又は使用すべきアンテナ素子に関する情報に基づいて分類し、
上記分類したアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、これを上記アンテナ素子へそれぞれ供給し、
上記信号を1又は複数のアンテナ素子により、地球上における上記宛先領域に対してそれぞれ送信すること
を特徴とする宇宙通信方法。
【請求項30】
地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信方法において、
上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星では、
地球上における各観測領域から発信される、互いに宛先が異なる無線信号を1又は複数のアンテナ素子を介して検出し、
上記各アンテナ素子により検出した信号をそれぞれAD変換し、
上記AD変換したアンテナ素子毎の信号にビームフォーミング処理を施して複数のビーム方向又はビームパターンにおける受信信号としてこれを分離し、
上記地上通信ネットワーク内の通信プロトコルに基づいて各ヘッダに上記ビーム方向又はビームパターンに関する情報を含めつつそれぞれに対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成し、
上記生成したフレーム化データを上記ヘッダ情報に基づいて多重化し、
上記多重化手段により多重化されたフレーム化データを直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記地上通信ネットワークへ送信し、
上記地上通信ネットワークでは、
上記人工衛星群から地上局を介して上記フレーム化データを受信し、
上記地上局を介して上記フレーム化データを複数の通信端末へ送信し、
上記通信端末又は上記地上局では、上記観測領域に対応する特定のビーム方向又はビームパターンで放射された信号のみを検出すること
を特徴とする宇宙通信方法。
【請求項1】
地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムにおいて、
上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星は、
地球上における各観測領域が放射する電磁波を検出する1又は複数のアンテナ素子と、
上記各アンテナ素子により検出された電磁波に基づく信号をそれぞれAD変換するAD変換手段と、
上記AD変換手段によりAD変換されたアンテナ素子毎の信号を上記地上通信ネットワーク内の通信プロトコルに基づいてそれぞれアンテナ素子に対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成するフレーム化処理手段と、
上記フレーム化処理手段により生成されたフレーム化データを直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記地上通信ネットワークへ送信する衛星通信手段とを有し、
上記地上通信ネットワークは、
上記人工衛星群から上記フレーム化データを受信する地上局と、
上記地上局を介して上記フレーム化データが送信される複数の通信端末とを有し、
上記通信端末は、上記受信した各アンテナ素子に対応したフレーム化データから地球上における所望観測領域に応じたアンテナの指向性を適応的に形成することにより、特定の観測領域の電磁波放射状態を識別可能とされていること
を特徴とする宇宙通信システム。
【請求項2】
上記地上通信ネットワークは、L2/L3スイッチネットワークとして構成され、
上記フレーム化処理手段は、上記アンテナ素子毎の信号に対して、上記地上通信ネットワークとしてのL2/L3スイッチネットワークで交換可能なL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付すTCP/IPフレーム化処理を施すこと
を特徴とする請求項1記載の宇宙通信システム。
【請求項3】
上記フレーム化処理手段は、上記アンテナ素子毎の信号に対して、更にL4(トランスポート層)ヘッダを付すこと
を特徴とする請求項2記載の宇宙通信システム。
【請求項4】
上記AD変換手段は、上記各アンテナ素子により検出された電磁波に基づく信号が予め変調されていた場合にこれを復調することなくそれぞれAD変換し、
上記地上局又は上記通信端末は、受信した上記フレーム化データから元の電磁波信号を再生して、これを復調すること
を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項記載の宇宙通信システム。
【請求項5】
上記衛星通信手段は、上記フレーム化処理手段により生成されたフレーム化データを電気−光変換した上で送信し、
上記地上局は、受信した上記フレーム化データを光−電気変換すること
を特徴とする請求項1〜4のうち何れか1項記載の宇宙通信システム。
【請求項6】
上記地上局又は通信端末は、上記受信したフレーム化データから受信品質を解析し、この解析した受信品質に基づいて、上記一の人工衛星に対して分解能を可変制御するための制御信号を送信し、
上記一の人工衛星は、受信した上記制御信号に基づいて、上記AD変換手段におけるAD変換の分解能を制御すること
を特徴とする請求項1〜5のうち何れか1項記載の宇宙通信システム。
【請求項7】
フレーム化処理手段において生成されたフレーム化データを、送信すべき1以上の他の人工衛星に応じて交換するスイッチング手段を更に備え、
上記衛星通信手段は、上記スイッチング手段により交換されたフレーム化データをそれぞれ上記1以上の他の人工衛星へ送信し、
上記他の人工衛星は、受信した上記フレーム化データを互いに異なる上記地上局へ送信すること
を特徴とする請求項1〜6のうち何れか1項記載の宇宙通信システム。
【請求項8】
地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムにおいて、
上記地上通信ネットワークは、
所定の通信プロトコルに基づいた、地球上における宛先領域に関する情報を含むヘッダを付したフレーム化データを送信する通信端末と、
上記1以上の通信端末から上記フレーム化データを受信した場合にこれに含まれる宛先領域に関する情報に基づいて合成した新たなフレーム化処理を施すことにより新たなフレーム化データを生成し、これを上記人工衛星群へと送信する地上局とを有し、
上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星は、
上記地上局から直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記フレーム化データを受信する衛星通信手段と、
各宛先領域に対してそれぞれ信号を送信可能な1又は複数のアンテナ素子と、
上記衛星通信手段により受信した上記フレーム化データを上記ヘッダに含まれている情報に基づいて上記アンテナ素子毎に振り分け、フレームに含まれる実情報を抽出するフレーム分配・分解手段と、
上記フレーム分配・分解手段により得られたアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、これを上記アンテナ素子へそれぞれ供給するDA変換手段とを有し、
上記地上局又は通信端末は、上記宛先領域に応じて指向性を適応的に変化させるための信号処理を各宛先アンテナ素子に対応するフレーム毎に実施すること
を特徴とする宇宙通信システム。
【請求項9】
上記地上通信ネットワークは、L2/L3スイッチネットワークとして構成され、
上記通信端末は、上記地上通信ネットワークとしてのL2/L3スイッチネットワークで交換可能なL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付すTCP/IPフレーム化処理を施すこと
を特徴とする請求項8記載の宇宙通信システム。
【請求項10】
上記通信端末は、上記TCP/IPフレーム化処理において更にL4(トランスポート層)ヘッダを付すこと
を特徴とする請求項9記載の宇宙通信システム。
【請求項11】
上記地上局又は上記通信端末は、送信すべきデータに変調を施し、
上記人工衛星は、受信した上記フレーム化データを復調することなく、これを上記複数のアンテナ素子に導くことにより、上記変調されたデータが各宛先領域に対応するビームとして送信されること
を特徴とする請求項8〜10のうち何れか1項記載の宇宙通信システム。
【請求項12】
上記地上局は、送信すべき上記フレーム化データを電気−光変換し、
上記衛星通信手段は、受信した上記フレーム化データを光−電気変換すること
を特徴とする請求項8〜11のうち何れか1項記載の宇宙通信システム。
【請求項13】
移動端末間における無線信号の送受信を有線ネットワークに接続された複数の基地局を介して実行する無線通信システムにおいて、
一の基地局は、
一の移動端末から送信される無線信号を一の方向から検出する1又は複数の第1のアンテナ素子と、
上記各第1のアンテナ素子により検出された信号をそれぞれAD変換するAD変換手段と、
上記AD変換手段によりAD変換された第1のアンテナ素子毎の信号を上記有線ネットワーク内の通信プロトコルに基づいてそれぞれフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成するフレーム化処理手段と、
上記フレーム化処理手段により生成されたフレーム化データを上記有線ネットワークへ送出する送信手段とを有し、
他の基地局は、
上記有線ネットワークを介して受信したフレーム化データを上記宛先情報に基づいて上記第1のアンテナ素子毎に分解するフレーム分解手段と、
上記フレーム分解手段により分解されたアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換するDA変換手段と、
上記DA変換手段によりDA変換されたデータに基づく無線信号を他の移動端末へ送信する1又は複数の第2のアンテナ素子とを有し、
上記有線ネットワークにおける通信を制御する制御局は、
上記フレーム化データから、上記第1のアンテナ素子と上記一の移動端末との間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別するとともに、当該フレーム化データに記述されている宛先としての他の移動端末に関する情報から、上記第2のアンテナ素子と上記他の移動端末との間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別し、これら識別した各アンテナ指向性に基づいて一の基地局における第1のアンテナ素子と、上記他の基地局における第2のアンテナ素子がそれぞれ移動端末との間でビームフォーミングを行うための制御を行うこと
を特徴とする無線通信システム。
【請求項14】
上記有線ネットワークは、L2/L3スイッチネットワークとして構成され、
上記フレーム化処理手段は、上記第1のアンテナ素子毎の信号に対して、上記地上通信ネットワークとしてのL2/L3スイッチネットワークで交換可能なL2(MAC)ヘッダ及びL3(IP)ヘッダを付すTCP/IPフレーム化処理を施すこと
を特徴とする請求項13記載の無線通信システム。
【請求項15】
上記一の基地局又は他の基地局は、上記制御局において実行すべき処理を代替して行うこと
を特徴とする請求項13又は14記載の無線通信システム。
【請求項16】
上記一の基地局は、上記一の移動端末より検出された無線信号が予め変調されていた場合にこれを復調することなく上記有線ネットワークへ送出し、
上記他の基地局は、上記有線ネットワークを介して受信したフレーム化データを変調することなく他の通信端末へ送信すること
を特徴とする請求項13〜15のうち何れか1項記載の無線通信システム。
【請求項17】
上記移動端末間の通信は、上記有線ネットワークに接続された複数の基地局を介してピア・ツー・ピア(P2P)通信方式で実行されること
を特徴とする請求項13記載の無線通信システム。
【請求項18】
地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムにおいて、
上記地上通信ネットワークは、
所定の通信プロトコルに基づいた、地球上における宛先領域に関する情報又は上記人工衛星群内における宛先アンテナ素子に関する情報を含むヘッダを付したフレーム化データを送信する通信端末と、
上記1以上の通信端末から送信されてきた上記データを上記人工衛星群へと送信する地上局とを有し、
上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星は、
上記地上局から直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記フレーム化データを受信する衛星通信手段と、
地球上における上記宛先領域に対してそれぞれ信号を送信可能な1又は複数のアンテナ素子と、
上記衛星通信手段により受信した上記フレーム化データを上記ヘッダに含まれている宛先領域に関する情報又は使用すべきアンテナ素子に関する情報に基づいて分類するスイッチング手段と、
上記スイッチング手段により分類されたアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、これを上記アンテナ素子へそれぞれ供給するDA変換手段とを有すること
を特徴とする宇宙通信システム。
【請求項19】
上記地上通信ネットワーク並びに上記スイッチング手段は、L2/L3スイッチネットワークとして構成されていること
を特徴とする請求項18記載の宇宙通信システム。
【請求項20】
上記地上局は、送信すべき上記フレーム化データを衛星に転送する前に、上記宛先情報に対応した波長を有する光フレーム化データに変換し
上記衛星通信手段は、受信した上記光フレーム化データを受信し、
上記スイッチング手段は、上記光フレーム化データが有する波長アドレス情報基づいてこれを各出力端へ分波する波長分波器であり、
更に上記人工衛星は、上記波長分波器により分波された各光フレーム化データを光-電気変換し、これを上記DA変換手段へ供給する光-電気変換手段を更に備えること
を特徴とする請求項18記載の宇宙通信システム。
【請求項21】
上記波長分波器により分波された各フレーム化データについて、上記波長アドレス情報に基づいてビームフォーミング用に位相調整を施すための位相調整手段を更に備えること
を特徴とする請求項20記載の宇宙通信システム。
【請求項22】
地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信システムにおいて、
上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星は、
地球上における各観測領域から発信される、互いに宛先が異なる無線信号を複数の端末から検出する1又は複数のアンテナ素子と、
上記各アンテナ素子により検出された信号をそれぞれAD変換するAD変換手段と、
上記AD変換手段によりAD変換されたアンテナ素子毎の信号にビームフォーミング処理を施して複数のビーム方向又はビームパターンにおける受信信号としてこれを分離する移相器ネットワークと、
上記地上通信ネットワーク内の通信プロトコルに基づいて各ヘッダに上記ビーム方向又はビームパターンに関する情報を含めつつそれぞれに対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成するフレーム化処理手段と、
上記フレーム化処理手段により生成されたフレーム化データを上記ヘッダ情報に基づいて多重化する多重化手段と、
上記多重化手段により多重化されたフレーム化データを直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記地上通信ネットワークへ送信する衛星通信手段とを有し、
上記地上通信ネットワークは、
上記人工衛星群から上記フレーム化データを受信する地上局と、
上記地上局を介して上記フレーム化データが送信される複数の通信端末とを有し、
上記通信端末又は上記地上局は、上記観測領域に対応する特定のビーム方向又はビームパターンで放射された信号のみを検出すること
を特徴とする宇宙通信システム。
【請求項23】
上記地上通信ネットワーク並びに上記スイッチング手段は、L2/L3スイッチネットワークとして構成されていること
を特徴とする請求項22記載の宇宙通信システム。
【請求項24】
上記人工衛星は、上記フレーム化処理手段から出力されたフレーム化データを上記フレーム化データに含まれる宛先に関する情報を波長に変換した光フレーム化データに変換する変換手段を更に備え、
上記スイッチング手段は、上記光フレーム化データを合波する光波長合波器であること
を特徴とする請求項22記載の宇宙通信システム。
【請求項25】
地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信方法において、
上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星では、
地球上における各観測領域が放射する電磁波を1又は複数のアンテナ素子を介して検出し、
上記各アンテナ素子により検出した電磁波に基づく信号をそれぞれAD変換し、
上記AD変換したアンテナ素子毎の信号を上記地上通信ネットワーク内の通信プロトコルに基づいてそれぞれアンテナ素子に対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成し、
上記生成したフレーム化データを直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記地上通信ネットワークへ送信し、
上記地上通信ネットワークでは、
上記人工衛星群から地上局により上記フレーム化データを受信し、
上記地上局を介して上記フレーム化データを複数の通信端末へ送信し、
上記通信端末では、上記受信した各アンテナ素子に対応したフレーム化データから地球上における所望観測領域に応じたアンテナの指向性を適応的に形成することにより、特定の観測領域の電磁波放射状態を識別可能とすること
を特徴とする宇宙通信方法。
【請求項26】
一の人工衛星において生成した上記フレーム化データを、送信すべき1以上の他の人工衛星に応じて交換し、
上記交換したフレーム化データをそれぞれ上記1以上の他の人工衛星へ送信し、
上記他の人工衛星は、受信した上記フレーム化データを互いに異なる上記地上局へ送信すること
を特徴とする請求項25記載の宇宙通信方法。
【請求項27】
地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信方法において、
上記地上通信ネットワークでは、
所定の通信プロトコルに基づいた、地球上における宛先領域に関する情報を含むヘッダを付したフレーム化データを通信端末から送信し、
地上局が上記1以上の通信端末から上記フレーム化データを受信した場合にこれに含まれる宛先領域に関する情報に基づいて合成した新たなフレーム化処理を施すことにより新たなフレーム化データを生成し、これを上記人工衛星群へと送信し、
上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星では、
上記地上局から直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記フレーム化データを受信し、
上記衛星通信手段により受信した上記フレーム化データを上記ヘッダに含まれている情報に基づいて、各宛先領域に対してそれぞれ信号を送信可能な1又は複数の上記アンテナ素子毎に振り分け、フレームに含まれる実情報を抽出し、
上記フレーム分配・分解手段により得られたアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、これを上記アンテナ素子へそれぞれ供給し、
上記地上局又は通信端末では、上記宛先領域に応じて指向性を適応的に変化させるための信号処理を各宛先アンテナ素子に対応するフレーム毎に実施すること
を特徴とする宇宙通信方法。
【請求項28】
移動端末間における無線信号の送受信を有線ネットワークに接続された複数の基地局を介して実行する無線通信方法において、
一の基地局では、
一の移動端末から送信される無線信号を一の方向から1又は複数の第1のアンテナ素子を介して検出し、
上記各第1のアンテナ素子により検出した信号をそれぞれAD変換し、
上記AD変換した第1のアンテナ素子毎の信号を上記有線ネットワーク内の通信プロトコルに基づいてそれぞれフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成し、
上記生成したフレーム化データを上記有線ネットワークへ送出し、
他の基地局では、
上記有線ネットワークを介して受信したフレーム化データを上記宛先情報に基づいて上記第1のアンテナ素子毎に分解し、
分解したアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、
上記DA変換したデータに基づく無線信号を1又は複数の第2のアンテナ素子を介して他の移動端末へ送信し、
上記有線ネットワークにおける通信を制御する制御局では、
上記フレーム化データから、上記第1のアンテナ素子と上記一の移動端末との間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別するとともに、当該フレーム化データに記述されている宛先としての他の移動端末に関する情報から、上記第2のアンテナ素子と上記他の移動端末との間でビームフォーミングを実現するためのアンテナ指向性を識別し、これら識別した各アンテナ指向性に基づいて一の基地局における第1のアンテナ素子と、上記他の基地局における第2のアンテナ素子がそれぞれ移動端末との間でビームフォーミングを行うための制御を行うこと
を特徴とする無線通信方法。
【請求項29】
地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信方法において、
上記地上通信ネットワークでは、
所定の通信プロトコルに基づいた、地球上における宛先領域に関する情報又は上記人工衛星群内における宛先アンテナ素子に関する情報を含むヘッダを付したフレーム化データを通信端末から送信し、
上記1以上の通信端末から送信されてきた上記データを地上局により上記人工衛星群へと送信し、
上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星では、
上記地上局から直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記フレーム化データを受信し、
上記受信した上記フレーム化データを上記ヘッダに含まれている宛先領域に関する情報又は使用すべきアンテナ素子に関する情報に基づいて分類し、
上記分類したアンテナ素子毎の信号をそれぞれDA変換し、これを上記アンテナ素子へそれぞれ供給し、
上記信号を1又は複数のアンテナ素子により、地球上における上記宛先領域に対してそれぞれ送信すること
を特徴とする宇宙通信方法。
【請求項30】
地球上に構築された地上通信ネットワークと、地球周回軌道を周回する人工衛星群との間で宇宙通信する宇宙通信方法において、
上記人工衛星群を構成する少なくとも一の人工衛星では、
地球上における各観測領域から発信される、互いに宛先が異なる無線信号を1又は複数のアンテナ素子を介して検出し、
上記各アンテナ素子により検出した信号をそれぞれAD変換し、
上記AD変換したアンテナ素子毎の信号にビームフォーミング処理を施して複数のビーム方向又はビームパターンにおける受信信号としてこれを分離し、
上記地上通信ネットワーク内の通信プロトコルに基づいて各ヘッダに上記ビーム方向又はビームパターンに関する情報を含めつつそれぞれに対応させてフレーム化処理を施すことによりフレーム化データを生成し、
上記生成したフレーム化データを上記ヘッダ情報に基づいて多重化し、
上記多重化手段により多重化されたフレーム化データを直接的に又は他の人工衛星を介して間接的に上記地上通信ネットワークへ送信し、
上記地上通信ネットワークでは、
上記人工衛星群から地上局を介して上記フレーム化データを受信し、
上記地上局を介して上記フレーム化データを複数の通信端末へ送信し、
上記通信端末又は上記地上局では、上記観測領域に対応する特定のビーム方向又はビームパターンで放射された信号のみを検出すること
を特徴とする宇宙通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−16485(P2010−16485A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172628(P2008−172628)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】
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