説明

安全カミソリのカートリッジ式替刃を収納するためのケース

【課題】 本発明は、ケースに収納されている替刃を結合する際のホルダーの方向が不適切であるときに、ホルダーの替刃への接近を遮断し、不適切な方向であることを使用者に即座に認識させることを課題とする。
【解決手段】 ケースに収納された替刃を結合する際のホルダーの方向が不適切である場合に、その結合部と結合構造との結合を遮断するための突部がホルダー又はケースの一方に設けられると共に、他方にはその突部が当たる遮断部が設けられ、突部がホルダーにあるときは替刃を装着するときの装着方向に向けて突出しており、突部がケースにあるときはその逆方向に向けて突出しており、突部と遮断部が協働してそれらの結合が遮断される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に一般大衆が使用する安全カミソリのカートリッジ式替刃を収納するためのケースに関する。
【背景技術】
【0002】
ケースに収納されているカートリッジ式の替刃にホルダーを結合して引き出す構成は公知である。また、ケースに収納されている替刃を結合しようとするホルダーの方向が不適切であるとき、例えばホルダーの前後を逆にして替刃に結合しようとしたときに、ホルダーの替刃への接近を遮断する構成も公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特表2001−512351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ケースに収納されている替刃を結合しようとするホルダーの方向が不適切であるときに、ホルダーの替刃への接近を遮断し、不適切な方向であることを使用者に即座に認識させることを課題とする。
【0004】
前記特許文献1は、ケース内の前方傾斜ディバイダーと後方傾斜ディバイダーの間に替刃が収納される構成であり、ハンドルのハンドル接続構造体を、替刃の替刃接続構造体に向かって接続軸に沿って動かすことによって替刃をハンドルに接続させるものである。さらに、ハンドルに前記接続軸に対して非対称形である遮断構造体を設け、ハンドルが不適切な方向にあるとき、その遮断構造体が後方傾斜ディバイダーに近接した側にきてこの後方傾斜ディバイダーによって遮断される。ハンドルが適切な方向にあるとき、ハンドル上の遮断構造体が後方傾斜ディバイダーから離れた側にきてこの後方傾斜ディバイダーを越えられるようになっている。
【0005】
前記特許文献1は、ハンドルに設けた遮断構造体はハンドルのボタンである。ハンドルが不適切な方向にあるときにボタンが後方傾斜ディバイダーに当たって、ハンドルのハンドル接続構造体と替刃の替刃接続構造体が整合しない構成である。したがってハンドル接続構造体が替刃接続構造体に挿入することができず、両者が接続されない構成である。すなわち、ハンドル接続構造体が、替刃接続構造体に対して接続軸に沿って正しく移動しないのでハンドル接続構造体が替刃接続構造体に挿入されず両者が接続されないのである。
【0006】
特許文献1は、ハンドル接続構造体が替刃接続構造体に挿入されずに接続できないが、ハンドルの後端を接続軸からやや浮き上がらせると、ハンドル接続構造体は替刃接続構造体に接触するまでは移動できる構成である。ただ、ハンドル接続構造体が接続軸に対して斜めになるので替刃接続構造体に挿入しないのであるが、ハンドルの後端を不自然なほど浮き上がらせなくてもハンドル接続構造体は替刃接続構造体に接触するのである。このように特許文献1はハンドルが不適切な方向であってもハンドル接続構造体が容易に替刃接続構造体に届くので、使用者が即座に不適切であると認識せずに、何度も挿入を試みることが考えられる。そこで、本発明は、ケースに収納されている替刃を結合しようとするホルダーの方向が不適切であるときに、ホルダーの替刃への接近を遮断し、さらに不適切な方向であることを使用者に即座に認識させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1は、所定の構造を有するホルダーに交換可能に取り付けることのできるカートリッジ式替刃を収納するためのケースであって、前記ホルダーは、その上部に替刃を結合するための結合部を有し、前記替刃は、前記ホルダーの結合部と結合する結合構造を有し、前記ケースは少なくとも1つの収納室が設けられ、該収納室は上方に開放口を有し長手方向に延びる一対の側壁とその両端の一対の端壁に囲まれ且つ底部を有しており、替刃の結合構造が開放口側を向く状態で替刃を収納室に固定するための係止手段が収納室に設けられており、収納室の替刃をホルダーに結合して引き出すときは、ホルダーの結合部を替刃の結合構造に結合して替刃を引き抜く構成であり、替刃を結合する際のホルダーの方向が不適切である場合においてホルダーの結合部を替刃の結合構造に近づけようとするときに、その結合部と結合構造との結合を遮断するための突部がホルダー又はケースの一方に設けられると共に、他方にはその突部が当たる遮断部が設けられ、突部がホルダーにあるときは替刃を装着するときの装着方向に向けて突出しており、突部がケースにあるときはその逆方向に向けて突出しており、突部と遮断部が協働して前記結合部と結合構造が一定以上近づかず、それらの結合が遮断される構成である。
【0008】
請求項2は、替刃を結合する際のホルダーの方向が適切である場合においてホルダーの結合部を替刃の結合構造に近づけようとするときに、ホルダーと替刃の結合中心を通り替刃の長手方向に延びる結合線を中心として、前記突部と遮断部は異なる側に偏倚していて互いに当たらず、替刃を結合する際のホルダーの方向が不適切である場合においてホルダーの結合部を替刃の結合構造に近づけようとするときに、遮断部と突部は前記結合線の同じ側に偏倚して両者が当たる要素が請求項1に付加された構成である。
【0009】
請求項3は、ホルダーの上部に一対のアームが設けられ且つ一対の結合部がこれらのアームの先端にそれぞれ設けられており、前記突部はホルダーに設けられ、ホルダーの上部から両アームの間に突出し替刃を下から押すプッシャーがその突部であり、刃を結合する際のホルダーの方向が適切であるときに、このプッシャーと係合する係合部が替刃に形成されている要素が請求項1又は請求項2に付加された構成である。
【0010】
請求項4は、収納室の一方の側壁の上端に沿ってフランジが延在し、該フランジの両端は端壁に接続しておらず、遮断部はフランジの構成部分としてフランジの中央部に存在している要素が請求項2又は請求項3に付加された構成である。
【0011】
請求項5は、替刃を収納室に収納したときに、替刃の結合構造の全部又は一部を露出させるための凹部がフランジに形成され、凹部を構成するフランジの外周線が、収納された替刃の結合構造の外周線と整合している要素が請求項4に付加された構成である。
【0012】
請求項6は、所定の構造を有するホルダーに交換可能に取り付けることのできるカートリッジ式替刃を収納するためのケースであって、前記ホルダーは、その上部に替刃を結合するための結合部を有し、前記替刃は、前記ホルダーの結合部と結合する結合構造を有し、前記ケースは少なくとも1つの収納室が設けられ、該収納室は上方に開放口を有し長手方向に延びる一対の側壁とその両端の一対の端壁に囲まれ且つ底部を有しており、替刃の結合構造が開放口側を向く状態で替刃を収納室に固定するための係止手段が収納室に設けられており、収納室の替刃をホルダーに結合して引き出すときは、ホルダーの結合部を替刃の結合構造に結合して替刃を引き抜く構成であり、替刃を結合する際のホルダーの方向が不適切である場合においてホルダーの結合部を替刃の結合構造に近づけようとするときに、その結合部と結合構造との結合を遮断する遮断部が収納室の一方の側壁上端から、対向する他方の側壁に向かって収納室の底部と平行に張り出している構成である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1は、結合部と結合構造との結合を遮断するための突部がホルダー又はケースの一方に設けられると共に、他方にはその突部が当たる遮断部が設けられ、突部がホルダーにあるときは替刃を装着するときの装着方向に向けて突出しており、突部がケースにあるときはその逆方向に向けて突出しており、突部と遮断部が協働して前記結合部と結合構造が一定以上近づかず、それらの結合が遮断される構成である。遮断するための突部がホルダーにあるときは替刃を装着するときの装着方向に向けて突出し、突部がケースにあるときはその逆方向に向けて突出している。特許文献1と異なり、請求項1は、ホルダーの方向が不適切であるときもホルダーは装着方向に沿って移動させて行く構成であり、装着方向又はその逆方向を向く突部が遮断部に当たってそれ以上移動することができず遮断される。このために、結合部と結合構造の間に突部の高さだけの間隔があいてそれらが接触することがない。使用者は、それを見て結合部と結合構造の接触が不可能であることをすぐに認識できるので、ホルダーの方向が不適切であることを即座に認識できるという効果を奏する。
【0014】
請求項2は、替刃を結合する際のホルダーの方向が適切である場合においてホルダーの結合部を替刃の結合構造に近づけようとするときに、ホルダーと替刃の結合中心を通り替刃の長手方向に延びる結合線を中心として、突部と遮断部は異なる側に偏倚していて互いに当たらず、替刃を結合する際のホルダーの方向が不適切である場合においてホルダーの結合部を替刃の結合構造に近づけようとするときに、遮断部と突部は結合線の同じ側に偏倚して両者が当たる構成である。替刃を結合する際のホルダーの方向が不適切である場合には遮断部と突部が結合線の同じ側にあるから、突部が遮断部に当たるよりも前に両者が当たることは一目瞭然である。したがって、使用者を悩ませることなくホルダーの方向を適切にすることができる。
【0015】
請求項3は、ホルダーの上部に一対のアームが設けられ且つ一対の結合部がこれらのアームの先端にそれぞれ設けられており、突部はホルダーに設けられ、ホルダーの上部から両アームの間に突出し替刃を下から押すプッシャーがその突部であり、刃を結合する際のホルダーの方向が適切であるときに、このプッシャーと係合する係合部が替刃に形成されている。プッシャーは主に替刃を下から弾性的に支持するためにホルダーに取り付けられる部品である。例えば、首振り式安全カミソリに取り付けられている。首振り式安全カミソリは、替刃がその長手方向に延びる揺動軸線を中心に揺動可能にホルダーに取り付けられたものである。そして、プッシャーが替刃の係合部を弾性的に押圧することにより、揺動した替刃を元の位置に自然に復帰させる。このように通常は替刃を下から押して支持するプッシャーを遮断するための突部として使用するので、1つの部品を有効利用することにより構造を簡単としてコストを抑えることができる。
【0016】
請求項4は、収納室の一方の側壁の上端に沿ってフランジが延在し、フランジの両端は端壁に接続しておらず、遮断部はフランジの構成部分としてフランジの中央部に存在している構成である。遮断部がフランジの構成部分であるから、遮断部の強度はフランジと同等であって大きくなる。したがって、遮断するための突部が遮断部に当たっても遮断部が変形したり破損したりすることがない。また、フランジが側壁の上端に沿って延在しているので、このフランジ自身又はフランジの底面に設けたリブなどによって収納されている替刃を押さえることができる。これにより、フランジは遮断作用と替刃の押さえ作用の2つの作用を果たすので、その分だけ構成を簡単にしてコストを抑えることができる。
【0017】
請求項5は、替刃を収納室に収納したときに、替刃の結合構造の全部又は一部を露出させるための凹部がフランジに形成され、凹部を構成するフランジの外周線が、収納された替刃の結合構造の外周線と整合している。アーム先端に結合部が設けられているから、アームの先端をフランジの凹部に宛がうことによって結合部を自動的に替刃の結合構造に合致させて結合することができる。これにより、替刃をホルダーに結合させる作業が円滑になる。
【0018】
請求項6は、替刃を結合する際のホルダーの方向が不適切である場合においてホルダーの結合部を替刃の結合構造に近づけようとするときに、その結合部と結合構造との結合を遮断する遮断部が収納室の一方の側壁上端から、対向する他方の側壁に向かって底部と平行に張り出している構成である。これにより使用者は、替刃を結合する際のホルダーの方向が不適切であるときに、結合部と結合構造との結合を遮断している要素が側壁上端から他方の側壁に向かって延びている遮断部であることが一目瞭然に理解できる。したがって、何度も試行錯誤を繰り返すことなく即座にホルダーを適切な方向に変更することができる。また、収納されている替刃を遮断部を利用して上から押さえて固定できるので、遮断部は2つの作用をなす。これにより、構造を簡単にしてコストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に本発明を実施するための最良の形態について説明する。本形態における安全カミソリはいわゆる首振り式のものであって、替刃1がその長手方向に延びる揺動軸線を中心に揺動可能にホルダー2に取り付けられている。なお、本発明に使用される安全カミソリは首振り式のものに限定されるものでなく、替刃を着脱自在に装着できるものであればよく、替刃がホルダーに対して固定され揺動などしないものでもよい。
【0020】
まず、替刃1がホルダー2に揺動可能に取り付けられる構成について説明する。図6はホルダー2の上部の替刃結合機構を示している。図6はアーム3,3が閉じた状態であって替刃1を取り付ける前の状態である。アーム3,3に替刃1が取り付けられるときは、図7に示すようにアーム3,3は両側に開いて替刃1と結合する。図6に示すように、アーム3,3はそれらの基部4,4が軸5に回動可能に結合されている。替刃結合機構は摺動部材7を有する。図6はこの摺動部材がその摺動範囲の最も前方に位置している状態である。摺動部材7は、図8に記載されている押しボタン6と一体に形成されている。また、摺動部材7の前方にはプッシャー押圧部8が一体に形成されている。したがって、当然であるが図7に示すように摺動部材7が一杯に後退しているときに、押しボタン6を押すと摺動部材7が前方へ摺動し、同時にプッシャー押圧部8も一体に移動し、両者は一体に前進する。
【0021】
前述したように、図6はアーム3,3が閉じた状態であって替刃1を取り付ける前の状態である。この状態で、プッシャー9はプッシャー押圧部8に押圧されて固定されている。プッシャー9の先端をある程度の力で押さなければプッシャー9はホルダー2の中に後退しない。プッシャー9が固定され押されなければ後退しない理由は、プッシャー押圧部8の両弾性部16,16に設けられた突部10,10がホルダーの係止凹部11,11に係止しているからである。このことは、同時に摺動部材7も固定されていることを意味する。そして、摺動部材7に設けられた側圧部12,12が、アーム基部4,4に設けられた切欠き凹部13,13を外側から内側に押圧するので、両アーム3,3は閉じられた状態で固定されている。
【0022】
図7は、替刃1をホルダー2に取り付けた状態を示している。図6の、アーム3,3が閉じた状態から、図7のようにアーム3,3が開いて替刃1を結合する作用について説明する。まず、プッシャー9の先端を替刃1の係合部14に宛がってホルダー2を強く押し付ける。すると、プッシャー9の後端傾斜面15,15がプッシャー押圧部8の両弾性部16,16を内方に押圧し、突部10,10と係止凹部11,11との係止状態が解除されて、プッシャー9は、プッシャー押圧部8及びそれと一体の摺動部材7と共に後退する。また、摺動部材7の両側圧部12,12も後退して切欠き凹部13,13から外れる。そして、プッシャー押圧部8の後端部17がアーム3,3のあご部18,18に当たってアーム3,3を押し開く。アーム3,3が開くことによって、アーム3,3の先端に設けられたジャーナル軸19,19が替刃1のジャーナル軸受20,20に結合して替刃1は揺動可能に取り付けられる。この際、アーム3,3を押し開いたプッシャー押圧部8は、コイルスプリング21で弾性的に押圧されているから、アーム3,3は開いたままの状態に支持される。また、プッシャー9は係合部14を弾性的に押圧する。
【0023】
替刃1をホルダー2から取り外すときは、替刃1がホルダー2に結合している図7の状態から、押しボタン6を前方に押すことによって摺動部材7が前進し、これと一体のプッシャー押圧部8がプッシャー9を押す。同時に摺動部材7の側圧部12,12が切欠き凹部13,13に当たってこれらの切欠き部13,13を外側から内側に押圧して両アーム3,3が閉じる。両アーム3,3が閉じると、ジャーナル軸19,19はジャーナル軸受20,20から抜けて替刃1は外れる。以上が、替刃1がホルダー2に揺動可能に取り付けられる構成及び操作である。
【0024】
図6及び図7に示すホルダー2の替刃結合機構は前述したとおりの構成である。図8に示すようにホルダー2は、細長い柄22の上端に替刃結合機構を有する頭部23が設けられている。そして、前述したようにこの頭部23に両アーム3,3が取り付けられている。アーム3,3の先端に設けられたジャーナル軸19,19が替刃1のジャーナル軸受20,20にジャーナル結合して替刃1はホルダー2に取り付けられる。また、図5において収納されている各替刃1の刃先58が向く方向をケース27の前方とし反対方向を後方としたときに、両ジャーナル軸19,19を結ぶ直線に対して、プッシャー9は後方(図5では右側)にずれている。
【0025】
図7に示すように、替刃1はその底部に一対の結合構造24,24が設けられている。この結合構造24,24は替刃1の底部に設けられた凹部25,25と、その凹部25,25に連通するジャーナル軸受20,20とから成る。閉じられた両アーム3,3の先端部は、まず凹部25,25に入り、次いで図7に示すように両アーム3,3が開いたときに、ジャーナル軸19,19がジャーナル軸受20,20に入る。このジャーナル結合によって、替刃1はジャーナル軸線を中心に揺動可能となる。替刃1の底部に設けられた係合部14の表面はカム面26に形成されている。図1に示すようにカム面26は、替刃1の両結合構造24,24を結ぶ直線に対して後ろ側にずれている。弾性的に押圧するプッシャー9とカム面26が協働して揺動した替刃1を元の位置に復帰させる。
【0026】
図1乃至図5に示すようにケース27は4つの収納室を有している。ケース27は透明のプラスチックで一体に形成されている。収納室28の前側には、収納された替刃1の刃先側である前側部に隣接する前方側壁29が底部31から垂直に立ち上がっている。この前方側壁29に対向する後方側壁30が底部31から垂直に立ち上がっている。前方側壁29と後方側壁30で収納室28の前後を囲っている。また、各収納室28の両端部は底部31から端壁32,32が垂直に立ち上がって収納室28を囲っている。収納室28を含む全収納室の同じ側の端壁32は一体に連なってそれぞれケース27の長い外周壁33,33を構成している。なお、符号55は各収納室の底部に設けられた長孔で、底部を向いている替刃1の上面を乾燥させるためのものである。符号57は各収納室の底部に設けられた小孔で、底部を向いている替刃1の上面を乾燥させるためのものである。符号56は補強リブで各側壁の下部を補強している。
【0027】
後方側壁30の両端は端壁32,32に接続していない。後方側壁30の両端と端壁32,32との間に係止片34,34が底部31から立ち上がっている。後方側壁30の両端と係止片34,34の間には溝35,35が設けられている。なお、図に符号は付していないが、係止片34,34と端壁32,32の間にも溝が設けられている。係止片34,34はその両側の溝によって弾性的に撓む。係止片34,34の上部に前方側壁29側に向く係止突部36,36が一体に設けられている。この係止突起36,36は、図5に示すように収納された替刃1の後部に係止して替刃1が抜け出すことを防止する。替刃1の出し入れの際には、係止片34,34が撓んで出し入れを可能にする。
【0028】
前方側壁29の両端も後方側壁30と同様に端壁32,32に接続していない。前方側壁29の両端と端壁32,32との間に係止片38,38が底部31から立ち上がっている。前方側壁29の両端と係止片38,38の間には溝46,46が設けられている。係止片38,38の上部に前記係止突部36,36と同じ方向を向く係止突部39,39が一体に設けられている。前方側壁29の上端から後方側壁30に向かってフランジ37が一体に張り出している。フランジ37は前方側壁29の全長に亘って延びている。フランジ37は底部31と平行に張り出している。フランジ37の縁は、その中央付近で凹の弧状をなしている。その中央付近が後述する遮断部40として機能する。各側壁中、一番外側の側壁の2つと、その間の仕切り側壁の3つとで合計5つ存在するが、一番外側の2つの側壁の間の3つの仕切り側壁はすべて同じ構成である。一番前側の側壁44には、係止片34と同等のものは存在しない。それよりも前に収納室が存在せず不要だからである。一番後ろ側の側壁45にはフランジ37と同等のものは存在しない。それよりも後ろに収納室が存在せず不要だからである。
【0029】
図3に示すように前方側壁29の内面からフランジ37の下面にかけてリブ41が一体に設けられている。単一の前方側壁29に一対のリブ41,41が設けられている。また、両端壁32,32の内面にそれぞれ底部31と接続する替刃支持部42が一体に設けられている。替刃1は替刃支持部42によって底部31から浮いた状態で支持される。したがって、刃体の刃先58が底部31などに接触しないという効果を奏する。図5の最も左側の替刃を除き他の3つの替刃1は替刃支持部42の上に裏返しでやや斜めに支持され、係止突部36とリブ41によって係止されて収納室28に収納される。前方側壁29と後方側壁30は底部31から垂直に立ち上がっているのに替刃がやや斜めであるのは、図5で明らかなように替刃1は前後側壁29,30に接しているのではなく、係止片34に設けられた係止突部36と前方側壁29に設けられたリブ41に接しているからである。なお、図5の最も左側の替刃1はホルダー2に結合して引き出すときに、係止突部36の係止が解除された直後の状態を示している。このように、替刃1は図5で反時計回りに旋廻しながら引き出される。
【0030】
前述したように、また図4に示すようにフランジ37の縁は、その中央付近で凹の弧状をなしている。その中央付近が遮断部40である。遮断部40の縁は、収納された替刃1の一対の結合構造24,24を結ぶ直線を越えて張り出していない。カム面26は、替刃1の両結合構造24,24を結ぶ直線に対して後ろ側にずれている。したがって、収納された替刃1のカム面26は遮断部40に覆われずに露出する。また前述したように、また図5に示すように両ジャーナル軸19,19を結ぶ直線に対して、プッシャー9は後方(図5では右側)にずれている。このことは、ホルダー2の方向が適切であるときに、ジャーナル軸線すなわち替刃1とホルダー2との結合軸線に対してカム面26とプッシャー9は同じ側、すなわちケースの後ろ側にずれる。そして、カム面26は遮断部40に覆われていないので、プッシャー9は遮断部40に遮断されることなくカム面26に係合可能である。
【0031】
図4に示すようにフランジ37の両端の角部に凹部43,43が形成されている。替刃1が結合構造24,24を上にして収納されたときに、替刃1の結合構造24,24の凹部25,25が前記凹部43,43に整合して露出する。したがって、ホルダー2の方向が適正であるときは、アーム3,3の先端を凹部43,43に合わせれば自然に凹部25,25に入り、替刃1を簡単に結合することができる。図5は、ホルダー2の方向が適切である場合を示している。この状態からさらにホルダー2を進めると、アーム3,3が凹部43,43を通って替刃1の結合構造24,24の凹部25,25に入る。そして、プッシャー9の先端がカム面26に当たる。ホルダー2をさらに押すと、前述したようにプッシャー9が後退してアーム3,3が開き替刃1はホルダー2に結合される。そこで、ホルダー2を図5で反時計回りに旋廻すると、それと一緒に替刃1も旋廻する。旋廻によって一番左側の替刃1のように係止突部36を乗り越え、さらに替刃1はフランジ37をくぐり抜けて引き出すことができる。
【0032】
ホルダー2に替刃1を結合する場合において、ホルダー2の方向が不適切であるというのは、ホルダー2の前後を逆にして替刃1に結合しようとしたときである。アーム3,3の先端を替刃1の結合構造24,24に近づけようとするときは、ホルダー2が前後逆であるから、プッシャー9は替刃1とホルダー2との結合軸線よりも前側にずれる。これにより、アーム3,3の先端が結合構造24,24の凹部25,25に入る前にプッシャー9が遮断部40に当たるので、結合することができない。また、前述したように、プッシャー9はその先端をある程度の力で押さなければホルダー2の中に後退しない構成となっている。したがって、プッシャー9が遮断部40に当たっても容易に後退することはなく、アーム3,3の先端が結合構造24,24の凹部25,25に入ることを確実に遮断する。仮に、プッシャー9を強い力で押してホルダー2の中に後退させたときは、前述したようにアーム3,3が開いてしまうので、全く結合が不可能になる。
【0033】
図9は、替刃1を結合したホルダー2をトレー47に装着した状態を示す図である。ホルダー2の首部48はトレー47の挟持部49に挟持される。ホルダー2の後端部50はトレー47の支持台部51に下から支持される。図10は図9を底部から見た図である。トレー47の底面にはケース27を保持するための4つの爪部52が設けられている。この4つの爪部52がケース27の短い外周壁53,53の縁に係止してケース27をトレー47の底部に保持する。ケース27はトレー47に着脱自在である。符号54は水抜き孔であってこの部分は低くなっており、ホルダー2に取り付けられている替刃1などから落下した水がここに集まって排出される。なお、ケース27の短い外周壁53の長さは約43mmであり、長い外周壁33の長さは約73mmであり、ケース27の高さは約11mmである。図2に示すようにケース27には矢印59の記号が設けてある。これは、ホルダー2に替刃1を結合するときにホルダー2の上端を矢印方向に向ければ、ホルダー2の方向が適切であることを示している。また、ケース27をトレー47にセットするときに、そのトレー27にセットされているホルダー2の上端方向に矢印59が向くようにセットすれば適切であることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】替刃を収納した本発明の斜視図
【図2】本発明の上面図
【図3】本発明の断面図
【図4】替刃を収納した本発明の上面図
【図5】本発明のケースにホルダーを近づける状態の正面図
【図6】ホルダーの上部の替刃結合機構の断面図
【図7】替刃を結合したホルダーの上部の替刃結合機構の断面図
【図8】ホルダーの斜視図
【図9】本発明とホルダーをトレーに取り付けた状態の斜視図
【図10】図8を底部から見た斜視図
【符号の説明】
【0035】
1 替刃
2 ホルダー
3 アーム
4 アームの基部
5 軸
6 押しボタン
7 摺動部材
8 プッシャー押圧部
9 プッシャー
10 突部
11 係止凹部
12 側圧部
13 切欠き凹部
14 係合部
15 後端傾斜面
16 弾性部
17 後端部
18 あご部
19 ジャーナル軸
20 ジャーナル軸受
21 コイルスプリング
22 柄
23 頭部
24 結合構造
25 凹部
26 カム面
27 ケース
28 収納室
29 前方側壁
30 後方側壁
31 底部
32 端壁
33 長い外周壁
34 係止片
35 溝
36 係止突部
37 フランジ
38 係止片
39 係止突部
40 遮断部
41 リブ
42 替刃支持部
43 凹部
44 一番前の側壁
45 一番後ろの側壁
46 溝
47 トレー
48 首部
49 挟持部
50 後端部
51 支持台部
52 爪部
53 短い外周壁
54 水抜き孔
55 長孔
56 補強リブ
57 小孔
58 刃先
59 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の構造を有するホルダーに交換可能に取り付けることのできるカートリッジ式替刃を収納するためのケースであって、
前記ホルダーは、その上部に替刃を結合するための結合部を有し、
前記替刃は、前記ホルダーの結合部と結合する結合構造を有し、
前記ケースは少なくとも1つの収納室が設けられ、該収納室は上方に開放口を有し長手方向に延びる一対の側壁とその両端の一対の端壁に囲まれ且つ底部を有しており、替刃の結合構造が開放口側を向く状態で替刃を収納室に固定するための係止手段が収納室に設けられており、収納室の替刃をホルダーに結合して引き出すときは、ホルダーの結合部を替刃の結合構造に結合して替刃を引き抜く構成であり、
替刃を結合する際のホルダーの方向が不適切である場合においてホルダーの結合部を替刃の結合構造に近づけようとするときに、その結合部と結合構造との結合を遮断するための突部がホルダー又はケースの一方に設けられると共に、他方にはその突部が当たる遮断部が設けられ、突部がホルダーにあるときは替刃を装着するときの装着方向に向けて突出しており、突部がケースにあるときはその逆方向に向けて突出しており、突部と遮断部が協働して前記結合部と結合構造が一定以上近づかず、それらの結合が遮断されることを特徴とする替刃のケース。
【請求項2】
替刃を結合する際のホルダーの方向が適切である場合においてホルダーの結合部を替刃の結合構造に近づけようとするときに、ホルダーと替刃の結合中心を通り替刃の長手方向に延びる結合線を中心として、前記突部と遮断部は異なる側に偏倚していて互いに当たらず、替刃を結合する際のホルダーの方向が不適切である場合においてホルダーの結合部を替刃の結合構造に近づけようとするときに、遮断部と突部は前記結合線の同じ側に偏倚して両者が当たる請求項1記載の替刃のケース。
【請求項3】
ホルダーの上部に一対のアームが設けられ且つ一対の結合部がこれらのアームの先端にそれぞれ設けられており、前記突部はホルダーに設けられ、ホルダーの上部から両アームの間に突出し替刃を下から押すプッシャーがその突部であり、刃を結合する際のホルダーの方向が適切であるときに、このプッシャーと係合する係合部が替刃に形成されている請求項1又は請求項2記載のケース
【請求項4】
収納室の一方の側壁の上端に沿ってフランジが延在し、該フランジの両端は端壁に接続しておらず、遮断部はフランジの構成部分としてフランジの中央部に存在している請求項2又は請求項3記載のケース。
【請求項5】
替刃を収納室に収納したときに、替刃の結合構造の全部又は一部を露出させるための凹部がフランジに形成され、凹部を構成するフランジの外周線が、収納された替刃の結合構造の外周線と整合している請求項4記載のケース。
【請求項6】
所定の構造を有するホルダーに交換可能に取り付けることのできるカートリッジ式替刃を収納するためのケースであって、
前記ホルダーは、その上部に替刃を結合するための結合部を有し、
前記替刃は、前記ホルダーの結合部と結合する結合構造を有し、
前記ケースは少なくとも1つの収納室が設けられ、該収納室は上方に開放口を有し長手方向に延びる一対の側壁とその両端の一対の端壁に囲まれ且つ底部を有しており、替刃の結合構造が開放口側を向く状態で替刃を収納室に固定するための係止手段が収納室に設けられており、収納室の替刃をホルダーに結合して引き出すときは、ホルダーの結合部を替刃の結合構造に結合して替刃を引き抜く構成であり、
替刃を結合する際のホルダーの方向が不適切である場合においてホルダーの結合部を替刃の結合構造に近づけようとするときに、その結合部と結合構造との結合を遮断する遮断部が収納室の一方の側壁上端から、対向する他方の側壁に向かって収納室の底部と平行に張り出していることを特徴とする替刃のケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−232325(P2006−232325A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49648(P2005−49648)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)