安全スイッチ
【課題】安全スイッチが人の手の届かない場所に設置されている場合であっても、遠隔操作によりロック解除部を作動させることが可能な安全スイッチを提供する。
【解決手段】スイッチ本体101の操作部に進入・後退自在にアクチュエータ102が設けられ、アクチュエータ102がスイッチ本体101の操作部に進入した場合にアクチュエータ102をロックするロック部と、アクチュエータのロックを解除するロック解除部と、ロック解除部のロック解除のための動力とは関係なしに手動操作によりロック解除できる手動ロック解除部Mを備える。手動ロック解除部Mは、引張力を付与する引張り遠隔操作機構Gを備える。引張り遠隔操作機構Gは、手動ロック解除部Mを作動させるための引張力を付与する遠隔操作部Aと、遠隔操作部Aの操作により付与された引張力を手動ロック解除部Mに伝達する伝達部Bと、伝達部Bと手動ロック解除部Mを連結する連結部Cを有する。
【解決手段】スイッチ本体101の操作部に進入・後退自在にアクチュエータ102が設けられ、アクチュエータ102がスイッチ本体101の操作部に進入した場合にアクチュエータ102をロックするロック部と、アクチュエータのロックを解除するロック解除部と、ロック解除部のロック解除のための動力とは関係なしに手動操作によりロック解除できる手動ロック解除部Mを備える。手動ロック解除部Mは、引張力を付与する引張り遠隔操作機構Gを備える。引張り遠隔操作機構Gは、手動ロック解除部Mを作動させるための引張力を付与する遠隔操作部Aと、遠隔操作部Aの操作により付与された引張力を手動ロック解除部Mに伝達する伝達部Bと、伝達部Bと手動ロック解除部Mを連結する連結部Cを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械が設置される領域の出入口などの壁面及びその出入口の扉付近に装着され、扉が開かれたときには産業機械等への電源供給を停止する安全スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業機械が設置された部屋では、作業者が機械に巻き込まれて負傷するといったトラブルの発生を防止することを目的として、当該部屋の出入口の扉が完全に閉まっていないときには、機械の駆動をロックするシステムを設けることが要求されており、このような要求に応じるために安全スイッチが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この安全スイッチは、安全スイッチ本体部が部屋の出入口周辺の壁面に装着され、その出入口の扉を閉じたときに扉に固着された専用のアクチュエータが安全スイッチ本体部の挿入口から挿入されると、安全スイッチ本体部内の駆動カムが回転し、その駆動カムの回転に応じて操作ロッドが移動して接点の接続状態が切り替わる構造のスイッチであって、このような接点の切り替わり動作で回路接続が主回路(産業機械への電源供給回路)側へと切り換わって部屋内の機械が運転可能な状態となるとともに、ロック機構がアクチュエータに対し自動的にロックする、つまり扉を開けられないように機械的にロックするようになっている。一方、産業機械への電源供給を遮断するように操作されたときに、その作動オフ信号により、ソレノイドが励磁してロック機構によるロックを解除し、扉を開放可能状態にする構成になっている。
【0003】
ところで、このようなロック機構付きの安全スイッチでは、停電時・メンテナンス時等において、ソレノイドを動作させずに手動でロックを解除することが必要となる場合があり、その解除方式として、従来、スイッチ側面に設けた隠しねじを外してロックを解除する方法や、手動ロック解除キーを操作してロックを解除する方法が採られているが、これらの方式は、いずれも部屋(機械室等)外部からの手動操作を対象としたものであるため、作業者が何らかの理由により部屋内部に閉じ込められた時には、ロックを解除する手段がなく、自力では脱出できないという問題が残されている。
【0004】
そこで、産業機械等が設置された部屋の内部側(具体的にはスイッチ本体の取付面側)からの手動操作によりアクチュエータのロック機構を解除することが可能なロック解除部を備えた安全スイッチが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−76675号公報
【特許文献2】特開平10−302580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、安全スイッチを扉の上端部近傍、若しくは扉の上端面に設置することが要望されている。これは、部屋内部の存在する機械が例えば工作機械等の場合、切削クズや切削油が室内に浮遊するので、安全スイッチが低い位置に設置されていると、使用されていないアクチュエータ挿入口からそれらが侵入し、安全スイッチの故障の原因となる。そこで、上記のように安全スイッチを扉の上端部近傍、若しくは扉の上端面に設置することが要望されている。
【0007】
しかしながら、安全スイッチを扉の上端部近傍、若しくは扉の上端面に設置した場合、誤って扉が閉められて作業者が部屋に閉じ込められた場合に、それを解除するために、手動ロック解除部を操作しようとしても手が届かない、又は手が届いたとしても操作性が悪いという事態が招来する。
【0008】
本発明は、上記の実情を鑑みて考え出されたものであり、その目的は、安全スイッチが人の手の届かない場所に設置されている場合であっても、遠隔操作により手動ロック解除部を作動させることが可能な安全スイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、スイッチ本体の操作部に進入・後退自在にアクチュエータが設けられ、アクチュエータがスイッチ本体の操作部に進入した場合に、アクチュエータをロックするロック部と、アクチュエータのロックを解除するロック解除部を備えると共に、ロック解除部のロック解除のための動力とは関係なしに手動操作によりロック解除できる手動ロック解除部を備えた安全スイッチであって、前記手動ロック解除部が、スイッチ外部からの引張り操作によってロック解除できるように構成されていることを要旨とする。
【0010】
用語「ロック部」とは、例えば実施の形態における操作部111に設けられた機械的なロック機構を意味する。
用語「ロック解除部」とは、例えば実施の形態におけるソレノイド機構部113を意味する。
用語「ロック解除のための動力とは関係なしに」とは、例えば実施の形態におけるソレノイド機構部113の作動とは関係なしにという意味である。
上記構成により、外部からの引張り操作によってロック解除できる安全スイッチが構成される。従って、外部からの操作によって引張力を付与する何らかの操作機構を付加すれば、遠隔操作によってロック解除が可能となる。この結果、安全スイッチが人の手の届かない場所に設置された場合であっても、遠隔操作によりロック解除部を作動させることが可能なので、作業者が部屋に閉じ込められた場合に容易に脱出することができ、作業者の安全性が確保される。
【0011】
本発明は、手動ロック解除部に外部からの操作によって引張力を付与する引張り遠隔操作機構が設けられている場合がある。この引張り遠隔操作機構の具体的態様としては、手動ロック解除部を作動させるための引張力を付与する遠隔操作部と、遠隔操作部の操作により付与された引張力を手動ロック解除部に伝達する伝達部と、伝達部と手動ロック解除部とを連結する連結部とを有するのが好ましい。
【0012】
さらに、本発明は、遠隔操作部が、遠隔操作部の操作を停止しても遠隔操作部の操作により付与された引張力を保持する保持手段を備えている場合もある。このような構成であると、遠隔操作部の操作力を一時的に解除しても、ロック解除状態を保持することができるので、遠隔操作部を扉から離れた位置に設けることができる。なぜなら、部屋内に閉じ込められた作業者は、ロック解除のために遠隔操作部を操作し、ロック解除状態となった後、遠隔操作部から離れてもロック解除状態が保持されているので、扉を開くことが可能だからである。
【0013】
また、本発明は、前記ロック解除部は、ロック解除のための動力を発生するロック解除動力部と、ロック解除動力部で発生した動力をロック部に伝達してアクチュエータのロックを解除するロック解除機構部と、前記手動ロック解除部の解除操作に連動してロック解除機構部を作動させる作動軸とを備え、前記手動ロック解除部は、前記作動軸が差し込まれるカム溝と、前記連結部が取り付けられる取付部とを備えると共に、スイッチ本体に回転可能に取り付けられており、前記遠隔操作部の操作により前記手動ロック解除部に引張力が付与された場合には、前記手動ロック解除部が回転し、この手動ロック解除部の回転により前記作動軸がカム溝に案内されて所定方向に移動することにより、前記ロック解除機構部を作動させるように構成されている場合もある。ここで、用語「ロック解除動力部」とは、例えば実施の形態におけるソレノイド及び作動ロッド10を意味する。用語「ロック解除機構部」とは、例えば実施の形態における操作板11を意味する。なお、ロック解除動力部とロック解除機構部と作動軸とは一体的に形成されていてもよいし、ロック解除動力部とロック解除機構部とを作動軸により連結固定した構造であってもよい。後者の場合、作動軸は作動軸としての本来の機能に加えて、ロック解除動力部とロック解除機構部とを連結固定するロックピンの機能をも併せ持つことになる。
【0014】
前記手動ロック解除部は、時計方向及び反時計方向のいずれの方向にも回転可能に構成されているのが望ましい。時計回り及び反時計回りのいずれの方向にも回転可能に構成することにより、使い勝手が向上する。
【0015】
前記手動ロック解除部には、ロック解除状態を保持する保持手段が設けられているのが望ましい。保持手段は手動ロック解除部と遠隔操作部のいずれに設けてもよいが、手動ロック解除部に設ける場合は、遠隔操作部の構造の自由度が上がる。実施の形態に沿って説明すれば、例えば図24の構造では遠隔操作部に保持手段を設けることは無理である。このような場合は、必然的に手動ロック解除部側に保持手段を設けざるをえない。このようにして、保持手段を手動ロック解除部に設ける場合は、遠隔操作部の構造の自由度が上がることになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外部からの引張り操作によってロック解除できる安全スイッチが構成される。従って、外部からの操作によって引張力を付与する何らかの操作機構を付加すれば、遠隔操作によってロック解除が可能となる。この結果、安全スイッチが人の手の届かない場所に設置された場合であっても、遠隔操作によりロック解除部を作動させることが可能なので、作業者が部屋に閉じ込められた場合に容易に脱出することができ、作業者の安全性が確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔本発明の概念〕
先ず、具体的な構成を説明する前に、本発明の概念について、図1に基づいて、以下に説明する。図1は本発明の概念を模式的に示した図である。
本発明に係る安全スイッチ100は、スイッチ本体101と、アクチュエータ102とから構成されている。スイッチ本体101は、アクチュエータ102のロック状態を手動で解除する手動ロック解除部Mを備えている。更に、手動ロック解除部Mが、スイッチ外部からの引張り操作によってロック解除できるように構成されている。
【0018】
そして、スイッチ外部からの引張り操作を実現する手段として、引張り遠隔操作機構Gが設けられており、この引張り遠隔操作機構の具体的態様としては、手動ロック解除部Mを作動させるための引張力を付与する遠隔操作部Aと、遠隔操作部Aの操作により付与された引張力を手動ロック解除部Mに伝達する伝達部Bと、伝達部Bと手動ロック解除部Mとを連結する連結部Cとを有している。
【0019】
ここで、遠隔操作部Aには、(1)伝達部Bの端部に握り操作部を設け、この握り操作部を引っ張る操作により伝達部Bに引張力を付与する構成、(2)レバー、押しボタン、引きボタン等の操作部と、該操作部に連動して伝達部Bに引張力を付与する引張力付与機構とを備え、レバー等の操作部の操作により引張力付与機構を介して伝達部Bに引張力を付与する構成等が含まれる。
【0020】
伝達部Bには、ワイヤ、ロープ、ケーブル、チェーン等の索条、棒等の長手状剛体、その他、遠隔操作部Aの操作により付与された引張力を手動ロック解除手段Mに伝達できるものであれば、特に限定されず如何なるものも含まれる。
【0021】
連結部Cは、伝達部Bの端部を手動ロック解除部Mに連結できる構造のものであれば、如何なるものも含まれる。尚、連結の態様としては、伝達部Bの端部に回転の自由が許容されている場合(例えば、実施の形態3の場合のように、伝達部Bの端部にリング状係止部を設け、このリング状係止部をロック解除部Mに設けたボルトの軸部に装着する場合)、伝達部Bの端部に回転の自由が許容されていない場合(例えば、実施の形態1、2の場合のように、ボルト、ナット等の締結金具で伝達部Bの端部を締結固定する場合)のいずれであってもよい。
【0022】
以下、本発明に係る安全スイッチを、実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
[実施の形態1]
先ず、安全スイッチの概略構造を図2を参照しつつ説明する。
この例の安全スイッチ100は、部屋に設置される産業機械に電気的に接続されるスイッチで、スイッチ本体101とアクチュエータ102を主として構成されており、そのスイッチ本体101には、操作部111、スイッチ部112、及び、操作部111に設けられた機械的なロック機構(後述)の解除を行うためのソレノイド機構部113が配置されている。
【0024】
スイッチ本体101は部屋の出入口の周縁の壁150の上部近傍(人の手の届かない位置)に固着され、またアクチュエータ102は扉103に固着される。そのアクチュエータ102の位置はスイッチ本体101の挿入孔101aに対向する位置で、扉103を閉鎖した状態のときにスイッチ本体101の操作部111内に進入する。
そして、アクチュエータ102の進入により、スイッチ部112に内蔵の接点ブロック(図示せず)の接続接点が切り換わり、部屋内の機械が駆動可能な状態となる。一方、扉103の開放によりアクチュエータ102が操作部111から抜けたときには元の状態に復帰して機械への電源供給がオフされる。
【0025】
なお、アクチュエータ102は、操作部111への挿入部が先端部の押圧片121とこれを支持する一対の支持片122,123によって構成されている。その押圧片121には、両端部に位置する凸部押圧面121b,121bと、この間に位置する凹部押圧面121aが形成されている。
また、スイッチ本体101には、先の挿入孔101aに加えて、本体上面側にも挿入孔101bが設けられており、設置場所の状況に応じていずれかの挿入孔101aもしくは101bを選択することができる。
【0026】
次に、この実施の形態のスイッチ本体の機構を、以下、図3〜図5を参照しつつ説明する。尚、図3は図2のスィッチ本体を180度回転し、この180度回転した状態のスィッチ本体において操作部111とソレノイド機構部113のカバーを除いて前面側から見た場合を示す平面図で、図4及び図5はそれぞれ図3のX−X断面図及びY−Y断面図である。
まず、操作部111には、駆動カム1とその両側に位置する左右一対の規制カム2,2が設けられている。これらの駆動カム1と規制カム2,2はカムシャフト3に、それぞれ互いに独立して回動自在に支承されている。
【0027】
それらの3つのカムのうち、中央の駆動カム1は、図2に示したアクチュエータ102の凹部押圧面121aに対応するカムで、また、左右一対の規制カム2,2はそれぞれアクチュエータ102の凸部押圧面121bに対応するカムである。
【0028】
駆動カム1と各規制カム2の外周面には、それぞれ、挿入孔101a及び101bに対応して、矩形状の凹部1a及び1b,2a及び2bが形成されており、それらの凹部に対しカムシャフト3を挟んだ反対側の位置にロック段部1d,2d〔図6(a)参照〕が形成されている。また駆動カム1と各規制カム2には、それぞれ、ロック段部1d,2dに対応する位置から約90°の角度の位置にまで延びる形状の溝カム1c,2cが形成されている。各溝カム1c,2cの始端部にはカムフォロワピン4が嵌まり込む半円形状の切欠き1e,2e〔図6(a)参照〕が形成されている。
【0029】
これら溝カム1c,2cにはカムフォロワピン4が差し込まれている。カムフォロワピン4には、操作ロッド5の端部が連結されており、このカムフォロワピン4の移動に伴って操作ロッド5が前進・後退してスイッチ部112の接点接続が切り換わる。なお、カムフォロワピン4は、その両端を支持するピンガイド体(図示せず)によって移動方向が一方向(操作ロッド5の移動方向)に規制されている。
駆動カム1と一対の規制カム2の上方位置にはロックレバー6が配設されている。このロックレバー6は、係止片6aとその両端を支持するアーム6b、及びそれらのアーム端を支持する作動片6cが一体形成された部材で、左右2か所にそれぞれ配設された圧縮コイルばね7,8の弾性力により係止片6aが各カム1,2外周面に対して押圧された状態で接触するように構成されている。
【0030】
一方、ソレノイド機構部113は、操作部111のロック機構を解除する力を発生するソレノイド(図示せず)を備えており、そのソレノイドの作動ロッド10の先端部に操作板11がロックピン12によって固着されている。操作板11の操作部111側の端部は、ロックレバー6の作動片6cの下端部の前側に接触している。
そして、以上の構造において、駆動カム1と規制カム2とは、図4に示す初期状態において、その両者間に、アクチュエータ102の凹部押圧面121aと凸部押圧面121bとの段差に相当する分の回転位相差〔図6(a)参照〕が生じるような位置関係で配置されている。
【0031】
以上の構成の操作部111とソレノイド機構部113の作用を図6を参照しつつ説明する。まず、扉103が開いてアクチュエータ102が操作部111から抜けているときには、図6(a)に示すように、駆動カム1と規制カム2とは、アクチュエータ102の凹部押圧面121aと凸部押圧面121bとの段差に相応する分の回転位相差で静止した状態となっており、それら各カム1,2の溝カム1c,2cがカムフォロワピン4をガイドできる状態となっている。
【0032】
従って、駆動カム1及び各規制カム2をアクチュエータ102の凹部押圧面121aと凸部押圧面121bによって押して、それぞれを初期の回転位相差を保持して同期回動させない限りは、カムフォロワピン4が、各カム1,2のいずれかの切欠き1e,2eに嵌まり込んで各カム1,2の回動が阻止される。
次に、扉103が閉じて、アクチュエータ102が挿入孔101aを通じて操作部111の内部に進入すると、これに応じて駆動カム1及び各規制カム2が回動(図中反時計方向)し、この回動によりカムフォロワピン4が溝カム1c,2cによって後方へと押し出されて操作ロッド5が移動する〔図6(b)〕。
そして、アクチュエータ102が挿入端まで進んだ時点で接続接点が切り換わるとともに、図6(b)に示すようにアクチュエータ102の押圧片121が駆動カム1及び規制カム2の各凹部1a,2aに嵌まり込む。
【0033】
このとき、ロックレバー6の係止片6aが、圧縮コイルばね7,8の押圧力によって駆動カム1,規制カム2のロック段部1d,2dに引っ掛かる位置に変位し、これにより駆動カム1及び規制カム2の復帰方向(時計方向)への回動が阻止される。従って、扉103を開けようとしてアクチュエータ102に抜け方向の力が作用しても、回動阻止状態の駆動カム1及び規制カム2の凹部1a,2aに押圧片121が引っ掛かって、アクチュエータ102の抜けは阻止される。
【0034】
一方、機械への電源供給を遮断したときの作動オフ信号に応じてソレノイド機構部113が作動すると、図6(c)に示すように、ソレノイドの作動ロッド10が後退し操作板11が移動する。この操作板11の移動により、ロックレバー6の係止片6a側が持ち上げられ、係止片6aが各カム1,2のロック段部1d,2dから外れ、これにより各カム1,2の回動阻止つまりアクチュエータ102の機械的なロックが解除されて扉103が開放可能な状態となる。
【0035】
なお、以上の作用説明では、2つの挿入孔101a,101bのうち、操作部111の正面側に設けた挿入孔101aにアクチュエータ102を挿入した場合の動作を示したが、操作部111の上面側の挿入孔101bにアクチュエータ102を挿入した場合でも、先の図6(a)〜(c)と同様な動作で駆動カム1及び規制カム2が回動し、これに伴って操作ロッド5が前進して接続接点が切り換わるとともに、アクチュエータ102の押圧片121が各カム1の凹部1b,2bに嵌まり込む。
【0036】
次に、手動ロック解除部の構成について、図7〜図10及び先の図5を参照しつつ説明する。これら図5、図7〜図10に示す例では、ソレノイドの作動ロッド10に対して操作板11を固着するロックピン12の端部が、ロッドを貫通して底壁101cの近傍まで臨む構造とし、このロックピン12をロック解除用のピンとして利用するように構成するとともに、ロックピン12を移動する解除用レバー13が設けられている。
【0037】
解除用レバー13は、図9の斜視図に示すように、ロックピン12を押圧するレバー片13a、支点となる回転軸13b、及びハンドル13dを備えた操作部13cからなり、図5に示すように回転軸13bがスイッチ本体101の底壁101cに、ロックピン12の中心と平行な軸を中心として回動自在に支承されている。
【0038】
そして、このような構造の解除用レバー13、つまり操作部13cがスイッチ本体101の取付面側(背面側)に露出する構造の解除用レバー13を備えた安全スイッチは、図7、図8に示すように、扉150に操作用穴150aを開口しておくことにより、機械室内部から操作することができる。ここで、解除用レバー13(より具体的にはハンドル13d)には本発明に係る引張り遠隔操作機構Gが設けられており、この引張り遠隔操作機構Gにより解除用レバー13に引張力が付与され、解除用レバー13が回転するようになっている。なお、引張り遠隔操作機構Gの具体的な説明は、後述する。
【0039】
次に、以上の構造の解除用レバー13の作用を図10を参照しつつ説明する。なお、解除用レバー13の動作は、引張り遠隔操作機構Gの引張力の付与によるものである。まず、扉103が閉まって、アクチュエータ102が操作部111に進入すると、先の図6(b)に示したように、ロックレバー6により各カム1,2が回動阻止されてアクチュエータ102が機械的にロックが掛かった状態となる。この状態で解除用レバー13のレバー片13aは、図10(A)に示すように、ロックピン12の前方側に、このロックピン12の移動方向と直交する姿勢で静止した状態となっており、またハンドル13dはロックピン12の移動方向と平行な方向に沿っている。
【0040】
以上の状態から、引張り遠隔操作機構Gの操作により、解除用レバー13のハンドル13dが図10(B)に示すように反時計方向に回動すると、レバー片13aが回転軸13bを中心として回動し、このレバー片13aの回動によりロックピン12が後退方向に押され操作板11が後退する。これにより、先の図6(c)に示した動作と同じ動きでロックレバー6の係止片6aが各カム1,2のロック段部1d,2dから外れ、アクチュエータ102のロックが解除されて扉103が開放可能な状態となる。
【0041】
従って、停電時やメンテナンス時において、作業員が機械室の内部に入っているときに、作業員が誤って扉103を閉めたり、あるいは何らかの原因により扉103が閉まってしまったとしても、機械室内側からの引張り遠隔操作機構Gの操作によりアクチュエータ102の機械的なロックを解除することができるので、作業員が機械室内に閉じ込められる虞れがなくなる。
【0042】
(本発明の特徴部分)
次いで、本発明の特徴部分である引張り遠隔操作機構Gについて説明する。
図11は引張り遠隔操作機構Gの全体構成を示す図、図12は引張り遠隔操作機構Gを構成する連結部C付近の側面図、図13は引張り遠隔操作機構Gを構成する遠隔操作部A付近の斜視図、図14は遠隔操作部Aの操作状態を示す図である。なお、図14(1)は安全スイッチがロック状態の場合の遠隔操作部Aの状態を示し、図14(2)は安全スイッチがロック解除状態の場合の遠隔操作部Aの状態を示している。
以下、これらの図面及び図5、図7、図8、図9をも参照して、引張り遠隔操作機構Gについて詳述する。
【0043】
解除用レバー13のハンドル13dの先端には連結体20が固着されている。なお、固着に限らず、解除用レバー13と連結体20が一体形成することも可能である。この連結体20にはハンドル13dに垂直な方向に延びる貫通孔20a(図12参照)が形成されており、この貫通孔20a内をワイヤ(伝達部Bに相当)21の一端が挿通している。また、この連結体20には、貫通孔20a内のワイヤ21を押えて固定する押さえネジ22が装着されている。この押さえネジ22によりワイヤ21が連結体20に固定されることにより、ハンドル13dとワイヤ21が連結されることになる。従って、連結体20及び押さえネジ22は連結部Cを構成する。
【0044】
ワイヤ21は、スイッチ本体101から壁150の内壁150bに沿って敷設され、その他端に遠隔操作部Aが設けられている。遠隔操作部Aは人の手が届く高さ位置に設けられている。本実施の形態1に係る遠隔操作部Aは、図13に示すように、壁150に固定された取付金具24と、取付金具24に回転自在に取り付けられたレバー25とを備える。レバー25は、ボルト26の軸回りに回転可能となっている。また、取付金具24の立上部24aには挿入孔24a1が形成されており、この挿入孔24a1をワイヤ21の他端が挿通してレバー25に固定されている。そして、安全スイッチがロック状態であるときは、レバー25は図14(1)に示すように、レバー25の基端部25aが取付金具24の立上部24aに当接して静止状態となっている。そして、ロック解除のために、図14(2)に示すようにレバー25を矢印26方向に押し下げると、ワイヤ21が矢印27方向に引っ張られる。これにより、ワイヤ21の一端に連結されているハンドル13dが、図10(A)の状態から図10(B)の状態に回動する。これにより、安全スイッチのロック状態が解除される。このように遠隔操作部の操作により引張力を、ワイヤ21を介して手動ロック解除部M(より具体的にはハンドル13d)に付与して、ハンドル13dを回動させることが可能となる。
【0045】
このように、遠隔操作部Aを人の手が届く高さ位置に設けることにより、手動ロック解除部Mを直接操作できない作業者は、遠隔操作部Aを操作することにより、手動ロック解除部Mに引張力を付与してロック状態を解除することができる。この結果、扉を開くことが可能となり、部屋内に閉じ込められていた作業者は、部屋から脱出することができる。
【0046】
[実施の形態2]
図15は連結部Cの他の実施の形態を示す斜視図、図16はその側面図である。
この実施の形態2に係る連結部Cは、ハンドル13dの先端に固定されたジョイントボルト30と、ロックナット31とを有する。ジョイントボルト30の軸部30aには、その軸心方向に対して垂直方向に延びる貫通孔32が形成されている。この貫通孔32をワイヤ21の一端が挿通している。そして、ロックナット31の締結によりジョイントボルト30の頭部30bとロックナット31間にワイヤ21が挟みこまれて固定されている。このような構成により、ワイヤ21に矢印方向33の引張力が付与されると、ロックナット31が図15に示すように矢印方向34に回転して解除レバー13cを矢印35方向に回動させることができる。従って、上記構成の連結部Cにより、遠隔操作部Aの操作によりワイヤ21を介して伝達される引張力を手動ロック解除部Mに確実に伝達することができる。
【0047】
[実施の形態3]
図17は連結部Cのさらに他の実施の形態を示す斜視図、図18はその側面図、図19はその分解斜視図、図20は連結部Cの作動状態を示す図であり、そのうち図20(1)は安全スイッチがロック状態の場合の連結部Cの状態を示し、図20(2)は安全スイッチがロック解除状態の場合の連結部Cの状態を示している。
この実施の形態3に係る連結部Cは、ハンドル13dの先端に固定されたジョイントボルト40と、スペーサ41と、ナット42とを有する。また、ワイヤ21の一端側は、ジョイントボルト40に挿入することが可能なようにリング状の係止部44が形成できるように折り曲げられて留め具43によって固定されている。そして、係止部44はジョイントボルト40に挿入され、ナット42の締結により、ジョイントボルト40の頭部40aとナット42間に挟まれて固定されている。なお、ナット42の締結状態は、係止部44がジョイントボルト40の軸部40bの回りに回動可能な程度とされている。従って、ワイヤ21に引張力が付与された際、図20に示すように、係止部44が回動しながらハンドル13dを矢印方向45に引っ張るので、ワイヤ21を一方向に引っ張ることで、ハンドル13dを回転させることができる。
【0048】
なお、上記実施の形態1,2における連結部Cは、ボルトの軸回りの回動が許容されていないので、ワイヤ21の引っ張り操作中において、若干の引っかかりが生じる場合もある。この点、実施の形態3における連結部Cでは、係止部44がジョイントボルト40の軸部40bの回りに回動可能であるため、ハンドル13dの回転に応じて係止部44が回転するので、ワイヤ21を矢印方向45に引っ張る際に、その途中で引っかかることなく、円滑に一方向への引張でハンドル13dを回転させることができる。
【0049】
[実施の形態4]
図21は実施の形態4に係る遠隔操作部Aの外観構成を示す斜視図、図22は実施の形態4に係る遠隔操作部Aの内部構成を示す断面図である。なお、図22(1)は安全スイッチがロック状態の場合における遠隔操作部Aの内部構成を示し、図22(2)は安全スイッチがロック解除状態の場合における遠隔操作部Aの内部構成を示している。
【0050】
部屋内壁150にはカバー体50が取り付けられている。このカバー体50は、その上面部50aにワイヤ21が挿通する挿入孔51が形成され、前面部50bに押しボタン52が装着されている。この押しボタン52は、操作部52aと押し込み方向に延びる操作軸52bとを有する。カバー体50の前面部50bには、操作軸52bが挿通する挿入孔53aを有する円筒体53が装着されており、押しボタン52の操作軸52bが挿入孔53aを挿通している。また、カバー体50内には、押しボタンの押し込み方向に垂直な方向に移動可能な移動体54が配設されている。この移動体54の上面にはワイヤ21の他端が固定されている。また、操作軸52bの先端部には傾斜面55が形成されている。移動体54の前面は、操作軸52bの傾斜面55とほぼ同一傾斜角を有する傾斜面56とされ、操作軸52bの傾斜面55に当接している。また、移動体54は案内部材57の案内孔57aに嵌まり込んでおり、案内孔57aに沿って上下方向に移動自在となっている。なお、案内部材57は、カバー体50の前面部50bに支持固定されている。また、操作軸52bの外周面には、押しボタンの抜け止め防止用突起58が形成されている。また、移動体54の下端部には、移動体45の上方への移動を規制するストッパ54aが設けられている。
【0051】
次いで、上記構成の遠隔操作部の動作について説明する。先ず、安全スイッチがロック状態の場合において、部屋から脱出するために、ロック状態を解除する。具体的には、押しボタン52を矢印方向59に押し込む。これにより、移動体54が矢印方向60に移動し、ワイヤ21が引っ張られて図22(1)の状態から図22(2)の状態となる。即ち、押しボタン52の押し込み操作により、ワイヤ21に引張力が付与される。これにより、ワイヤ21を介してロック解除部のハンドル13dが回動して、ロック解除状態となる。
上記押しボタン52は、押圧力を解除すると、ロック手段の圧縮コイルばね7,8のばね力によって元の状態に復帰する。
【0052】
押しボタン52としては、上記の構造に代えて、押し込み状態で保持される保持機能付押しボタンであってもよい。このような保持機能付押しボタンを用いると、安全スイツチ側でのロック解除状態を保持することが可能となる。即ち、安全スイッチのロック状態を解除するため、押しボタンを押し込むと、図22(2)に示す状態となる。そして、押しボタンの押圧力を取除いても、この図22(2)に示す状態を保持している。この保持状態を解除するためには、押しボタンを図22(2)に示す状態から引くまたは回すと、押しボタンの保持状態が解除され、ロック手段の圧縮コイルばね7,8のばね力によって図22(2)に示す状態から図22(1)に示す元の状態に復帰する。
【0053】
このように遠隔操作部Aが保持機能付押しボタンを備えた構造の場合、遠隔操作部Aの操作力を一時的に解除しても、ロック解除状態を保持することができる。従って、遠隔操作部Aを扉から離れた位置に設けることができる。なぜなら、部屋内に閉じ込められた作業者は、ロック解除のために押しボタンを押し、ロック解除状態となった後、遠隔操作部Aから離れてもロック解除状態が保持されているので、扉を開くことが可能となっているからである。通常の押しボタンの場合は、押しボタンを押し続けると共に扉を開ける必要があるので、遠隔操作部Aは、扉から離れた位置に設けることはできない。これに対して、保持機能付押しボタンを備えた遠隔操作部Aでは、ロック解除状態を保持できるので、押しボタンを押し続けると共に扉を開ける必要がないからである。
【0054】
但し、ロック解除状態のままでは、扉を閉めても機械が作動許可状態とならないので、保持機能付押しボタンを備えた遠隔操作部Aの場合には、部屋から脱出した作業者は、手動ロック解除部Mを元の状態に復帰させておくことが必要となる。一方、通常の押しボタンを備えた遠隔操作部Aでは、ロック解除状態を強制的に元の状態に復帰するように構成されているので、別途復帰操作は不要である。
【0055】
要約すれば、遠隔操作部Aが引張力の付与状態(ロック解除状態)を保持する保持手段を備えている場合は、遠隔操作部Aを扉から離れて設けることが可能であり、人の手の届く高さ位置であれば、その他の設置場所に制約を受けない。一方、手動ロック解除部Mを作動させて一旦ロック解除状態を得た後、機械を作動許可状態とするため、遠隔操作部Aを再度操作して引張力の付与保持状態を解除して安全スイッチのロック解除部を元の状態に復帰させておくことが必要である。
一方、遠隔操作部Aが引張力の付与状態(ロック解除状態)を保持する保持手段を備えていない場合は、遠隔操作部Aを操作すると共に扉を開く必要があるので、遠隔操作部Aの設置場所としては、人の手の届く高さ位置に加えて、扉の近傍であることが必要となる。一方、遠隔操作部Aを操作して手動ロック解除部Mを作動させた後、遠隔操作部Aの操作を解除すると、強制的に手動ロック解除部Mが元の状態に復帰する。従って、作業者が部屋から脱出した後、手動ロック解除部Mを元に戻す操作が不要となる。
従って、押しボタンの保持機能の有無については、使用する状態に応じて適宜選択すればよい。
【0056】
[実施の形態5]
図23は実施の形態5に係る遠隔操作部Aの内部構成を示す断面図である。なお、図23(1)は安全スイッチがロック状態の場合における遠隔操作部Aの内部構成を示し、図23(2)は安全スイッチがロック解除状態の場合における遠隔操作部Aの内部構成を示している。
【0057】
この実施の形態5は、上記実施の形態4と同様に押しボタン52を押し込むことにより、引張力を付与するものである。但し、実施の形態4と異なり、実施の形態5では、押しボタン52に連動するリンク機構により引張力を付与するものである。即ち、押しボタン52の操作軸52bの先端にはL字状のリンク部材70の一端部(図23の上端部)がピン71により回動自在に結合されている。リンク部材70には長孔72が形成されており、この長孔72にピン71が嵌まり込んでいる。このリンク部材70は支持体73に支軸74より回転自在に支持されている。リンク部材70の他端部には、ワイヤ21の他端が固定されている。なお、支持体73は、カバー体50の前面部50bに固定されている。
【0058】
上記構成の遠隔操作部Aにおいて、図23(1)の状態で押しボタン52を矢印方向75に押し込むと、それに応じてリンク部材70が支持体の支軸74の回りに回動する。これにより、図23(2)に示すように、ワイヤ21が矢印方向76に引っ張られる。この結果、ワイヤ21を介して手動ロック解除部Mのハンドル13dが回動して、ロック解除状態となる。
【0059】
このように、押しボタン52と、押しボタン52に連動するリンク機構とを備えた遠隔操作部Aによってもまた、ロック解除を遠隔操作により行うことができる。
【0060】
[実施の形態6]
図27〜図43は実施の形態6に係る安全スイッチを示している。本実施の形態6は手動ロック解除部Mに特徴を有している。以下に具体的な構成を説明する。本実施の形態6に係る手動ロック解除部Mは、上記実施の形態1に係る手動ロック解除部Mと同様に、扉150の操作用孔150aから機械室内部側に露出している(図27参照)。この本実施の形態6に係る手動ロック解除部Mは、円板状の取付部200と、カム溝201を備えたカム板部202と、取付部200とカム板部202とを連結する連結支持部203とを備えている。この手動ロック解除部Mは、ねじ204によりスイッチ本体101の取付面(背面)に取り付けられている。即ち、スイッチ本体101の取付面側(背面側)に形成されている取付孔205にスペーサ206の一端を嵌め込むと共に、このスペーサ206を取付部200とカム板部202との間に配置し、この状態で、ねじ204を、取付部200の挿通孔207、スペーサ206の挿通孔208を順次緩やかに挿通させると共に、ねじ204がねじ加工が施された挿通孔209により固定されている。これにより、取付部200及びカム板部202は、ねじ204の軸回りに時計方向(矢印H1方向)及び反時計方向(矢印H2方向)のいずれ方向にも回転可能となっている。
【0061】
取付部200には連結部Cが設けられており、この連結部Cにワイヤ等の伝達部Bの一端が連結固定されている。なお、本実施の形態の手動ロック解除部Mは、ねじ204の軸回りに時計方向(矢印H1方向)及び反時計方向(矢印H2方向)のいずれ方向にも回転可能となっているので、伝達部Bの引張力の方向は、矢印方向H5(図28参照)に限らず、その反対方向であってよい。カム板部202を回転できれば、ロックピン12(作動軸)を矢印H3方向に移動させることができるからである。
【0062】
カム板部202のハート形状のカム溝201には、カムフォロワピンとして機能するロックピン12が差し込まれている。ロック状態の場合は、ロックピン12は図28及び図29に示すカム溝201の頂部K3に位置した状態となっており、カム板部202の回転に伴ってカム溝201に案内されてロックピン12は矢印方向H3に移動する。そして、ロックピン12が、図36及び図37に示すカム溝201の両端部K1,K2のいずれかの位置に到達した状態となった時、ロック解除状態となる。
【0063】
ここで、カム溝201をハート形状としている理由を図38を参照して説明する。なお、図38は図28のスィッチ本体を180度回転し、この180度回転した状態のスィッチ本体を前面側から見た場合のカム溝201付近を示す図である。従って、時計方向H1及び反時計方向H2の向きが図28とは逆方向になっている。即ち、図38では、時計方向H1は反時計方向の向きで、反時計方向H2は時計方向の向きに示されている。図38を上記方向から見ることにしたのは、スィッチ本体の見る方向が図3、図10の見る方向と同一となるので、実施の形態6に係る手動ロック解除部Mの動きを、実施の形態1に係る手動ロック解除部Mと対応させて理解し易くすることによる。また、同様の理由により、図39〜図45は図38と同一の方向から見た図面となっている。従って、図39〜図45においても、図38と同様に、時計方向H1及び反時計方向H2の向きが図28とは逆方向になっている。
【0064】
手動操作によりロック解除するためには、カム板部202の回転によりカム溝201に案内されてロックピン12を矢印方向H3に移動することが必要とされる。そして、カム板部202の回転は時計方向H1及び反時計方向H2に回動可能であるので、カム板部202が時計方向H1に回動する場合のカム溝201aと、カム板部202が反時計方向H2に回動する場合のカム溝201bとが存在していればよい。従って、手動操作によるロック解除のみを考慮すれば、カム溝201aとカム溝201bとを連ねた形状とすればよい。しかしながら、本実施の形態における安全スイッチにおいては、手動操作によらないソレノイドによるロック解除がなされる場合があり、その場合にはロックピン12は図28及び図29に示す位置から、カム板部202が回転せずに、矢印H3方向に所定距離移動する。そのため、ソレノイドによる場合のカム溝201cを存在させておくことが必要となる。そこで、本実施の形態におけるカム溝201は、カム溝201aとカム溝201bとカム溝201cとを存在させるために、ハート形状としている。
【0065】
なお、端部K1に位置している場合のロックピン12とねじ204との距離をr1とし、端部K2に位置している場合のロックピン12とねじ204との距離をr2とし、頂部K3に位置している場合のロックピン12とねじ204との距離をr3とすると、r1<r3、且つr2<r3を満たしている。このような条件を満たすことにより、ロックピン12を矢印方向H3に移動させることが可能となる。従って、カム溝201のハート形状としては、上記の条件を満たせば、どのような形状であってもよい。
【0066】
また、ソレノイドによるロック解除がない場合は、カム溝201cは不要である。また、カム板部202の回転方向がH1,H2のいずれか一方のみの場合は、カム溝は201aまたは201bのいずれか一方のみでよい。
【0067】
また、カム溝201a及びカム溝201bの傾きは、カム板部202の回転角度に応じて調整されている。即ち、図39に示すように、カム溝201aとカム溝201bの傾きが大きい構成の場合には、カム板部202を大きく回転させないとロック解除状態が得られない。これに対して、図41に示すように、カム溝201aとカム溝201bの傾きが小さい構成の場合には、カム板部202を僅かに回転させるだけで、ロック解除状態が得られる。図40に示す場合は、カム溝201a及びカム溝201bの傾きは、図39と図41との間であり、従って、図39の場合と図41の場合の中間の回転角度でロック解除状態が得られることになる。なお、カム溝201aとカム溝201bの傾きが小さい構成の場合には、カム板部202を僅かに回転させるだけでロック解除状態が得られるので、遠隔操作部Aの操作に対する応答性は良好であるが、遠隔操作部Aの誤操作により誤ってロック解除状態となる恐れがある。一方、カム溝201aとカム溝201bの傾きが大きい構成の場合には、遠隔操作部Aの誤操作によるロック解除状態の発生はないが、遠隔操作部Aの操作時間や操作力が大きくなりすぎる恐れがある。従って、両者のメリット・デメリットを考慮して、最適な角度に決定すればよい。
【0068】
また、上記実施の形態4では遠隔操作部Aが引張力の付与状態(ロック解除状態)を保持する保持手段が設けられていたが、本実施の形態においては、手動ロック解除部Mに、手動ロック解除状態を保持する保持手段設けられている。この本実施の形態における保持手段は、スイッチ本体101の取付面側に設けられた支持体221と、支持体221の収納凹部222に収納されているコイルバネ223と、コイルバネ223の先端側(図29の下端側)に配置された球体224と、取付部200に形成され、球体224が部分的に嵌り込む係止孔225a,225bとを有する。係止孔225aと係止孔225bとは、図28のロック状態において取付部200の上下2分割線に関して上下対称に配置されており、係止孔225aは時計方向H1の回転時におけるロック解除状態保持用であり、係止孔225bは反時計方向H2の回転時におけるロック解除状態保持用である。
【0069】
次いで、上記構成の手動ロック解除部Mの動作を図42を参照して説明する。
ロック状態(図42(1)参照)で、遠隔操作部Aの操作により矢印方向H5とは反対方向の引張力がワイヤ等の伝達部Bを介して取付部200に付与されると、カム板部202は時計方向H1に回転する。これにより、ロックピン12はカム溝201に案内され矢印方向H3に移動する(図42(2)参照)。このロックピン12の移動により、操作板11も矢印方向H3に移動する。これにより、先の図6(c)に示した動作と同じ動きでロックレバーの係止片6aが各カム1,2のロック段部1d,2dから外れ、これにより各カム1,2の回転阻止つまりアクチュエータ102の機械的なロック状態が解除されて扉103が開放可能な状態となる。このとき、球体224は係止孔225aに嵌り込むことにより、ロック解除状態が保持されることになる。なお、取付部200に付与される引張力が反対方向(矢印方向H5)の場合は、カム板部202は反時計方向H2に回転し、カム溝201により案内されてロックピン12はカム溝201に案内され矢印方向H3に移動し、操作板11も矢印方向H3に移動してロック解除状態となる。この場合においては、球体224は係止孔225bに嵌り込むことにより、ロック解除状態が保持されることになる(図37参照)。
【0070】
また、ソレノイドが駆動された場合は、カム板部202は回転することなくロックピン12が矢印方向H3に移動してロック状態(図43(1))からロック解除状態(図43(2))となる。
【0071】
このように、本実施の形態6に係る手動ロック解除部Mは、時計回り及び反時計回りの何れの方向にも回転可能に構成しているので、レバーを時計回りにしか回転させることができない上記実施の形態1に示す手動ロック解除部Mに比べて、使い勝手が向上する。また、本実施の形態6に係る手動ロック解除部Mは円板状の取付部を有することから、ワイヤの取付自由度が高められる。
【0072】
(その他の事項)
(1)遠隔操作部Aの他の例として、図24に示すようにワイヤ21の他端部に握り操作部80を設けるようにしてもよい。ロック解除の遠隔操作としては握り操作部80を下側に引っ張れば引張力がロック解除部に付与される。
【0073】
(2)上記実施の形態4、5では、遠隔操作部Aとして押しボタン52を用いたけれども、引きボタンを用いるようにしてもよい。即ち、引きボタンと上記実施の形態4の移動体等を含む構成の組み合わせや、引きボタンと上記実施の形態5のリンク機構との組み合わせにより、遠隔操作部Aを構成してもよい。
【0074】
(3)上実施の形態1〜5では、伝達部Bとしてはワイヤ21を使用したけれども、ロープ、ケーブル、チェーン等の索条を用いてもよく、また、棒等の剛体を用いてもよい。要は、遠隔操作部Aの操作により付与された引張力をロック解除部に伝達できるものであれば、特に限定されず如何なるものも含まれる。
【0075】
(4)上記実施の形態1〜5の連結部C、伝達部B、遠隔操作部Aを適宜組み合わせてもよい。
【0076】
(5)上記実施の形態では、スイッチ本体部101は出入口の壁150の上部近傍に設けられたけれども、図25に示すように、壁150の上面150cに設けるようにしてもよい。なお、この場合は、壁150の上面150cの一部を切り欠いて手動ロック解除部Mのハンドル13d等を収納するようにしておけばよい。
【0077】
(6)上記実施の形態では、スプリングロックタイプ(アクチュエータ進入にてスプリングによりロック、ソレノイド励磁にてロック解除)の安全スイッチを使用した例を挙げたが、ソレノイドロックタイプ(アクチュエータ進入後ソレノイド励磁にてロック、ソレノイド無励磁にてロック解除)の安全スイッチを使用しても構わない。
【0078】
(7)本発明における「ロック部のロック機能」及び「ロック解除部のロック解除機能」としては、ばねを用いてロック・ロック解除する構成、動力源を用いてロック・ロック解除する構成、又はキーによりロック・ロック解除する構成のいずれであってもよい。なお、動力源としては、ソレノイド、空気圧、油圧等を用いることができる。
【0079】
(8)上記実施の形態6では、ハート形状のカム溝を用いたけれども、本発明はこれに限定されず、カム溝201aとカム溝201bとカム溝201cとが存在しておればよく、例えば図44に示すような形状であってもよい。
【0080】
(9)手動ロック解除状態を保持する保持手段としては、図45(1)に示すように、カム溝201a及びカム溝201bの端部近傍の周面に突出部230を形成するようにしてもよい。このように構成すれば、カム板部202の回転によりロックピン12が突出部230を乗り越えてカム溝201の端部K1に移動してロック解除状態となった場合(図45(2)参照)に、突出部230によりロックピン12をカム溝の端部K1に保持することが可能となる。
【0081】
(9)本発明に係る安全スイッチは、上記実施の形態6の手動ロック解除部と、実施の形態1〜5における連結部C、伝達部B、遠隔操作部Aを適宜組み合わせ構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、産業機械が設置される領域の出入口などの壁面及びその出入口の扉付近に装着され、扉が開かれたときには産業機械等への電源供給を停止する安全スイッチに好適に実施される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の概念を模式的に示した図。
【図2】本発明の実施の形態1の使用状態で示す斜視図。
【図3】実施の形態1の操作部111とソレノイド機構部113の構成図でカバーを取り外して示す平面図。
【図4】図3のX−X断面図。
【図5】図3のY−Y断面図。
【図6】図3に示す操作部111の動作過程を示す図。
【図7】本発明の実施の形態1を使用状態で示す側面図。
【図8】図7のZ矢視図。
【図9】本発明の実施の形態1で用いる解除用レバー13の構造を示す斜視図。
【図10】その解除用レバー13の作用説明図。
【図11】引張り遠隔操作機構Gの全体構成を示す図。
【図12】引張り遠隔操作機構Gを構成する連結部C付近の側面図。
【図13】引張り遠隔操作機構Gを構成する遠隔操作部A付近の斜視図。
【図14】遠隔操作部Aの操作状態を示す図であり、そのうち図14(1)は安全スイッチがロック状態の場合の遠隔操作部Aの状態を示し、図14(2)は安全スイッチがロック解除状態の場合の遠隔操作部Aの状態を示している。
【図15】実施の形態2に係る連結部Cを示す斜視図。
【図16】実施の形態2に係る連結部Cの側面図。
【図17】実施の形態3に係る連結部Cの斜視図。
【図18】実施の形態3に係る連結部Cの側面図。
【図19】実施の形態3に係る連結部Cの分解斜視図。
【図20】実施の形態3に係る連結部Cの作動状態を示す図であり、そのうち図20(1)は安全スイッチがロック状態の場合の連結部Cの状態を示し、図20(2)は安全スイッチがロック解除状態の場合の連結部Cの状態を示している。
【図21】実施の形態4に係る遠隔操作部Aの外観構成を示す斜視図。
【図22】実施の形態4に係る遠隔操作部Aの内部構成を示す断面図であり、そのうち図22(1)は安全スイッチがロック状態の場合における遠隔操作部Aの内部構成を示し、図22(2)は安全スイッチがロック解除状態の場合における遠隔操作部Aの内部構成を示している。
【図23】実施の形態5に係る遠隔操作部Aの内部構成を示す断面図であり、そのうち図23(1)は安全スイッチがロック状態の場合における遠隔操作部Aの内部構成を示し、図23(2)は安全スイッチがロック解除状態の場合における遠隔操作部Aの内部構成を示している。
【図24】遠隔操作部Aの他の例を示す斜視図。
【図25】安全スイッチの設置場所の他の例を示す斜視図。
【図26】図25の安全スイッチを部屋内部から見た図。
【図27】実施の形態6に係る手動ロック解除部の使用状態を示す側面図。
【図28】実施の形態6に係る安全スイッチの背面図(ロック状態)。
【図29】図28のA1−A1矢視断面図。
【図30】実施の形態6に係る安全スイッチの手動ロック解除部の平面図。
【図31】実施の形態6に係る安全スイッチの手動ロック解除部の底面図。
【図32】実施の形態6に係る安全スイッチの手動ロック解除部の側面図。
【図33】図30のA2−A2矢視断面図。
【図34】実施の形態6に係る安全スイッチの手動ロック解除部の底面側から見た斜視図。
【図35】実施の形態6に係る安全スイッチの手動ロック解除部の平面側から見た斜視図。
【図36】実施の形態6に係る安全スイッチの背面図(ロック解除状態)。
【図37】図36のA3−A3矢視断面図。
【図38】カム溝201がハート形状としている理由を説明するための図。
【図39】カム溝201aとカム溝201bの傾きが大きい場合の構成を示す図。
【図40】カム溝201aとカム溝201bの傾きが中間の場合の構成を示す図。
【図41】カム溝201aとカム溝201bの傾きが小さい場合の構成を示す図。
【図42】実施の形態6に係る手動ロック解除部Mの動作を説明するための図。
【図43】ソレノイドによるロック解除の場合のロックピン12とカム溝201の状態を示す図。
【図44】カム溝の他の例を示す図。
【図45】保持手段の他の例を示す図。
【符号の説明】
【0084】
A:遠隔操作部 B:伝達部
C:連結部 G:引張り遠隔操作機構
M:手動ロック解除部 12:ロックピン(作動軸)
13:解除用レバー 13c:操作部
13d:ハンドル 20:連結体
21:ワイヤ 22:押さえネジ
24:取付金具 25:レバー
30,40:ジョイントボルト 31,42:ロックナット
32:貫通孔 43:係止部
52:押しボタン 54:移動体
70:リンク部材 80:握り操作部
100:安全スイッチ 101:スイッチ本体
102:アクチュエータ
200:取付部 201:カム溝
202:カム板部 203:連結部
204:ねじ(回転軸) 221:支持体
222:収納凹部 223:コイルバネ
224:球体 225a,225b:係止孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械が設置される領域の出入口などの壁面及びその出入口の扉付近に装着され、扉が開かれたときには産業機械等への電源供給を停止する安全スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業機械が設置された部屋では、作業者が機械に巻き込まれて負傷するといったトラブルの発生を防止することを目的として、当該部屋の出入口の扉が完全に閉まっていないときには、機械の駆動をロックするシステムを設けることが要求されており、このような要求に応じるために安全スイッチが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この安全スイッチは、安全スイッチ本体部が部屋の出入口周辺の壁面に装着され、その出入口の扉を閉じたときに扉に固着された専用のアクチュエータが安全スイッチ本体部の挿入口から挿入されると、安全スイッチ本体部内の駆動カムが回転し、その駆動カムの回転に応じて操作ロッドが移動して接点の接続状態が切り替わる構造のスイッチであって、このような接点の切り替わり動作で回路接続が主回路(産業機械への電源供給回路)側へと切り換わって部屋内の機械が運転可能な状態となるとともに、ロック機構がアクチュエータに対し自動的にロックする、つまり扉を開けられないように機械的にロックするようになっている。一方、産業機械への電源供給を遮断するように操作されたときに、その作動オフ信号により、ソレノイドが励磁してロック機構によるロックを解除し、扉を開放可能状態にする構成になっている。
【0003】
ところで、このようなロック機構付きの安全スイッチでは、停電時・メンテナンス時等において、ソレノイドを動作させずに手動でロックを解除することが必要となる場合があり、その解除方式として、従来、スイッチ側面に設けた隠しねじを外してロックを解除する方法や、手動ロック解除キーを操作してロックを解除する方法が採られているが、これらの方式は、いずれも部屋(機械室等)外部からの手動操作を対象としたものであるため、作業者が何らかの理由により部屋内部に閉じ込められた時には、ロックを解除する手段がなく、自力では脱出できないという問題が残されている。
【0004】
そこで、産業機械等が設置された部屋の内部側(具体的にはスイッチ本体の取付面側)からの手動操作によりアクチュエータのロック機構を解除することが可能なロック解除部を備えた安全スイッチが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−76675号公報
【特許文献2】特開平10−302580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、安全スイッチを扉の上端部近傍、若しくは扉の上端面に設置することが要望されている。これは、部屋内部の存在する機械が例えば工作機械等の場合、切削クズや切削油が室内に浮遊するので、安全スイッチが低い位置に設置されていると、使用されていないアクチュエータ挿入口からそれらが侵入し、安全スイッチの故障の原因となる。そこで、上記のように安全スイッチを扉の上端部近傍、若しくは扉の上端面に設置することが要望されている。
【0007】
しかしながら、安全スイッチを扉の上端部近傍、若しくは扉の上端面に設置した場合、誤って扉が閉められて作業者が部屋に閉じ込められた場合に、それを解除するために、手動ロック解除部を操作しようとしても手が届かない、又は手が届いたとしても操作性が悪いという事態が招来する。
【0008】
本発明は、上記の実情を鑑みて考え出されたものであり、その目的は、安全スイッチが人の手の届かない場所に設置されている場合であっても、遠隔操作により手動ロック解除部を作動させることが可能な安全スイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、スイッチ本体の操作部に進入・後退自在にアクチュエータが設けられ、アクチュエータがスイッチ本体の操作部に進入した場合に、アクチュエータをロックするロック部と、アクチュエータのロックを解除するロック解除部を備えると共に、ロック解除部のロック解除のための動力とは関係なしに手動操作によりロック解除できる手動ロック解除部を備えた安全スイッチであって、前記手動ロック解除部が、スイッチ外部からの引張り操作によってロック解除できるように構成されていることを要旨とする。
【0010】
用語「ロック部」とは、例えば実施の形態における操作部111に設けられた機械的なロック機構を意味する。
用語「ロック解除部」とは、例えば実施の形態におけるソレノイド機構部113を意味する。
用語「ロック解除のための動力とは関係なしに」とは、例えば実施の形態におけるソレノイド機構部113の作動とは関係なしにという意味である。
上記構成により、外部からの引張り操作によってロック解除できる安全スイッチが構成される。従って、外部からの操作によって引張力を付与する何らかの操作機構を付加すれば、遠隔操作によってロック解除が可能となる。この結果、安全スイッチが人の手の届かない場所に設置された場合であっても、遠隔操作によりロック解除部を作動させることが可能なので、作業者が部屋に閉じ込められた場合に容易に脱出することができ、作業者の安全性が確保される。
【0011】
本発明は、手動ロック解除部に外部からの操作によって引張力を付与する引張り遠隔操作機構が設けられている場合がある。この引張り遠隔操作機構の具体的態様としては、手動ロック解除部を作動させるための引張力を付与する遠隔操作部と、遠隔操作部の操作により付与された引張力を手動ロック解除部に伝達する伝達部と、伝達部と手動ロック解除部とを連結する連結部とを有するのが好ましい。
【0012】
さらに、本発明は、遠隔操作部が、遠隔操作部の操作を停止しても遠隔操作部の操作により付与された引張力を保持する保持手段を備えている場合もある。このような構成であると、遠隔操作部の操作力を一時的に解除しても、ロック解除状態を保持することができるので、遠隔操作部を扉から離れた位置に設けることができる。なぜなら、部屋内に閉じ込められた作業者は、ロック解除のために遠隔操作部を操作し、ロック解除状態となった後、遠隔操作部から離れてもロック解除状態が保持されているので、扉を開くことが可能だからである。
【0013】
また、本発明は、前記ロック解除部は、ロック解除のための動力を発生するロック解除動力部と、ロック解除動力部で発生した動力をロック部に伝達してアクチュエータのロックを解除するロック解除機構部と、前記手動ロック解除部の解除操作に連動してロック解除機構部を作動させる作動軸とを備え、前記手動ロック解除部は、前記作動軸が差し込まれるカム溝と、前記連結部が取り付けられる取付部とを備えると共に、スイッチ本体に回転可能に取り付けられており、前記遠隔操作部の操作により前記手動ロック解除部に引張力が付与された場合には、前記手動ロック解除部が回転し、この手動ロック解除部の回転により前記作動軸がカム溝に案内されて所定方向に移動することにより、前記ロック解除機構部を作動させるように構成されている場合もある。ここで、用語「ロック解除動力部」とは、例えば実施の形態におけるソレノイド及び作動ロッド10を意味する。用語「ロック解除機構部」とは、例えば実施の形態における操作板11を意味する。なお、ロック解除動力部とロック解除機構部と作動軸とは一体的に形成されていてもよいし、ロック解除動力部とロック解除機構部とを作動軸により連結固定した構造であってもよい。後者の場合、作動軸は作動軸としての本来の機能に加えて、ロック解除動力部とロック解除機構部とを連結固定するロックピンの機能をも併せ持つことになる。
【0014】
前記手動ロック解除部は、時計方向及び反時計方向のいずれの方向にも回転可能に構成されているのが望ましい。時計回り及び反時計回りのいずれの方向にも回転可能に構成することにより、使い勝手が向上する。
【0015】
前記手動ロック解除部には、ロック解除状態を保持する保持手段が設けられているのが望ましい。保持手段は手動ロック解除部と遠隔操作部のいずれに設けてもよいが、手動ロック解除部に設ける場合は、遠隔操作部の構造の自由度が上がる。実施の形態に沿って説明すれば、例えば図24の構造では遠隔操作部に保持手段を設けることは無理である。このような場合は、必然的に手動ロック解除部側に保持手段を設けざるをえない。このようにして、保持手段を手動ロック解除部に設ける場合は、遠隔操作部の構造の自由度が上がることになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外部からの引張り操作によってロック解除できる安全スイッチが構成される。従って、外部からの操作によって引張力を付与する何らかの操作機構を付加すれば、遠隔操作によってロック解除が可能となる。この結果、安全スイッチが人の手の届かない場所に設置された場合であっても、遠隔操作によりロック解除部を作動させることが可能なので、作業者が部屋に閉じ込められた場合に容易に脱出することができ、作業者の安全性が確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔本発明の概念〕
先ず、具体的な構成を説明する前に、本発明の概念について、図1に基づいて、以下に説明する。図1は本発明の概念を模式的に示した図である。
本発明に係る安全スイッチ100は、スイッチ本体101と、アクチュエータ102とから構成されている。スイッチ本体101は、アクチュエータ102のロック状態を手動で解除する手動ロック解除部Mを備えている。更に、手動ロック解除部Mが、スイッチ外部からの引張り操作によってロック解除できるように構成されている。
【0018】
そして、スイッチ外部からの引張り操作を実現する手段として、引張り遠隔操作機構Gが設けられており、この引張り遠隔操作機構の具体的態様としては、手動ロック解除部Mを作動させるための引張力を付与する遠隔操作部Aと、遠隔操作部Aの操作により付与された引張力を手動ロック解除部Mに伝達する伝達部Bと、伝達部Bと手動ロック解除部Mとを連結する連結部Cとを有している。
【0019】
ここで、遠隔操作部Aには、(1)伝達部Bの端部に握り操作部を設け、この握り操作部を引っ張る操作により伝達部Bに引張力を付与する構成、(2)レバー、押しボタン、引きボタン等の操作部と、該操作部に連動して伝達部Bに引張力を付与する引張力付与機構とを備え、レバー等の操作部の操作により引張力付与機構を介して伝達部Bに引張力を付与する構成等が含まれる。
【0020】
伝達部Bには、ワイヤ、ロープ、ケーブル、チェーン等の索条、棒等の長手状剛体、その他、遠隔操作部Aの操作により付与された引張力を手動ロック解除手段Mに伝達できるものであれば、特に限定されず如何なるものも含まれる。
【0021】
連結部Cは、伝達部Bの端部を手動ロック解除部Mに連結できる構造のものであれば、如何なるものも含まれる。尚、連結の態様としては、伝達部Bの端部に回転の自由が許容されている場合(例えば、実施の形態3の場合のように、伝達部Bの端部にリング状係止部を設け、このリング状係止部をロック解除部Mに設けたボルトの軸部に装着する場合)、伝達部Bの端部に回転の自由が許容されていない場合(例えば、実施の形態1、2の場合のように、ボルト、ナット等の締結金具で伝達部Bの端部を締結固定する場合)のいずれであってもよい。
【0022】
以下、本発明に係る安全スイッチを、実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
[実施の形態1]
先ず、安全スイッチの概略構造を図2を参照しつつ説明する。
この例の安全スイッチ100は、部屋に設置される産業機械に電気的に接続されるスイッチで、スイッチ本体101とアクチュエータ102を主として構成されており、そのスイッチ本体101には、操作部111、スイッチ部112、及び、操作部111に設けられた機械的なロック機構(後述)の解除を行うためのソレノイド機構部113が配置されている。
【0024】
スイッチ本体101は部屋の出入口の周縁の壁150の上部近傍(人の手の届かない位置)に固着され、またアクチュエータ102は扉103に固着される。そのアクチュエータ102の位置はスイッチ本体101の挿入孔101aに対向する位置で、扉103を閉鎖した状態のときにスイッチ本体101の操作部111内に進入する。
そして、アクチュエータ102の進入により、スイッチ部112に内蔵の接点ブロック(図示せず)の接続接点が切り換わり、部屋内の機械が駆動可能な状態となる。一方、扉103の開放によりアクチュエータ102が操作部111から抜けたときには元の状態に復帰して機械への電源供給がオフされる。
【0025】
なお、アクチュエータ102は、操作部111への挿入部が先端部の押圧片121とこれを支持する一対の支持片122,123によって構成されている。その押圧片121には、両端部に位置する凸部押圧面121b,121bと、この間に位置する凹部押圧面121aが形成されている。
また、スイッチ本体101には、先の挿入孔101aに加えて、本体上面側にも挿入孔101bが設けられており、設置場所の状況に応じていずれかの挿入孔101aもしくは101bを選択することができる。
【0026】
次に、この実施の形態のスイッチ本体の機構を、以下、図3〜図5を参照しつつ説明する。尚、図3は図2のスィッチ本体を180度回転し、この180度回転した状態のスィッチ本体において操作部111とソレノイド機構部113のカバーを除いて前面側から見た場合を示す平面図で、図4及び図5はそれぞれ図3のX−X断面図及びY−Y断面図である。
まず、操作部111には、駆動カム1とその両側に位置する左右一対の規制カム2,2が設けられている。これらの駆動カム1と規制カム2,2はカムシャフト3に、それぞれ互いに独立して回動自在に支承されている。
【0027】
それらの3つのカムのうち、中央の駆動カム1は、図2に示したアクチュエータ102の凹部押圧面121aに対応するカムで、また、左右一対の規制カム2,2はそれぞれアクチュエータ102の凸部押圧面121bに対応するカムである。
【0028】
駆動カム1と各規制カム2の外周面には、それぞれ、挿入孔101a及び101bに対応して、矩形状の凹部1a及び1b,2a及び2bが形成されており、それらの凹部に対しカムシャフト3を挟んだ反対側の位置にロック段部1d,2d〔図6(a)参照〕が形成されている。また駆動カム1と各規制カム2には、それぞれ、ロック段部1d,2dに対応する位置から約90°の角度の位置にまで延びる形状の溝カム1c,2cが形成されている。各溝カム1c,2cの始端部にはカムフォロワピン4が嵌まり込む半円形状の切欠き1e,2e〔図6(a)参照〕が形成されている。
【0029】
これら溝カム1c,2cにはカムフォロワピン4が差し込まれている。カムフォロワピン4には、操作ロッド5の端部が連結されており、このカムフォロワピン4の移動に伴って操作ロッド5が前進・後退してスイッチ部112の接点接続が切り換わる。なお、カムフォロワピン4は、その両端を支持するピンガイド体(図示せず)によって移動方向が一方向(操作ロッド5の移動方向)に規制されている。
駆動カム1と一対の規制カム2の上方位置にはロックレバー6が配設されている。このロックレバー6は、係止片6aとその両端を支持するアーム6b、及びそれらのアーム端を支持する作動片6cが一体形成された部材で、左右2か所にそれぞれ配設された圧縮コイルばね7,8の弾性力により係止片6aが各カム1,2外周面に対して押圧された状態で接触するように構成されている。
【0030】
一方、ソレノイド機構部113は、操作部111のロック機構を解除する力を発生するソレノイド(図示せず)を備えており、そのソレノイドの作動ロッド10の先端部に操作板11がロックピン12によって固着されている。操作板11の操作部111側の端部は、ロックレバー6の作動片6cの下端部の前側に接触している。
そして、以上の構造において、駆動カム1と規制カム2とは、図4に示す初期状態において、その両者間に、アクチュエータ102の凹部押圧面121aと凸部押圧面121bとの段差に相当する分の回転位相差〔図6(a)参照〕が生じるような位置関係で配置されている。
【0031】
以上の構成の操作部111とソレノイド機構部113の作用を図6を参照しつつ説明する。まず、扉103が開いてアクチュエータ102が操作部111から抜けているときには、図6(a)に示すように、駆動カム1と規制カム2とは、アクチュエータ102の凹部押圧面121aと凸部押圧面121bとの段差に相応する分の回転位相差で静止した状態となっており、それら各カム1,2の溝カム1c,2cがカムフォロワピン4をガイドできる状態となっている。
【0032】
従って、駆動カム1及び各規制カム2をアクチュエータ102の凹部押圧面121aと凸部押圧面121bによって押して、それぞれを初期の回転位相差を保持して同期回動させない限りは、カムフォロワピン4が、各カム1,2のいずれかの切欠き1e,2eに嵌まり込んで各カム1,2の回動が阻止される。
次に、扉103が閉じて、アクチュエータ102が挿入孔101aを通じて操作部111の内部に進入すると、これに応じて駆動カム1及び各規制カム2が回動(図中反時計方向)し、この回動によりカムフォロワピン4が溝カム1c,2cによって後方へと押し出されて操作ロッド5が移動する〔図6(b)〕。
そして、アクチュエータ102が挿入端まで進んだ時点で接続接点が切り換わるとともに、図6(b)に示すようにアクチュエータ102の押圧片121が駆動カム1及び規制カム2の各凹部1a,2aに嵌まり込む。
【0033】
このとき、ロックレバー6の係止片6aが、圧縮コイルばね7,8の押圧力によって駆動カム1,規制カム2のロック段部1d,2dに引っ掛かる位置に変位し、これにより駆動カム1及び規制カム2の復帰方向(時計方向)への回動が阻止される。従って、扉103を開けようとしてアクチュエータ102に抜け方向の力が作用しても、回動阻止状態の駆動カム1及び規制カム2の凹部1a,2aに押圧片121が引っ掛かって、アクチュエータ102の抜けは阻止される。
【0034】
一方、機械への電源供給を遮断したときの作動オフ信号に応じてソレノイド機構部113が作動すると、図6(c)に示すように、ソレノイドの作動ロッド10が後退し操作板11が移動する。この操作板11の移動により、ロックレバー6の係止片6a側が持ち上げられ、係止片6aが各カム1,2のロック段部1d,2dから外れ、これにより各カム1,2の回動阻止つまりアクチュエータ102の機械的なロックが解除されて扉103が開放可能な状態となる。
【0035】
なお、以上の作用説明では、2つの挿入孔101a,101bのうち、操作部111の正面側に設けた挿入孔101aにアクチュエータ102を挿入した場合の動作を示したが、操作部111の上面側の挿入孔101bにアクチュエータ102を挿入した場合でも、先の図6(a)〜(c)と同様な動作で駆動カム1及び規制カム2が回動し、これに伴って操作ロッド5が前進して接続接点が切り換わるとともに、アクチュエータ102の押圧片121が各カム1の凹部1b,2bに嵌まり込む。
【0036】
次に、手動ロック解除部の構成について、図7〜図10及び先の図5を参照しつつ説明する。これら図5、図7〜図10に示す例では、ソレノイドの作動ロッド10に対して操作板11を固着するロックピン12の端部が、ロッドを貫通して底壁101cの近傍まで臨む構造とし、このロックピン12をロック解除用のピンとして利用するように構成するとともに、ロックピン12を移動する解除用レバー13が設けられている。
【0037】
解除用レバー13は、図9の斜視図に示すように、ロックピン12を押圧するレバー片13a、支点となる回転軸13b、及びハンドル13dを備えた操作部13cからなり、図5に示すように回転軸13bがスイッチ本体101の底壁101cに、ロックピン12の中心と平行な軸を中心として回動自在に支承されている。
【0038】
そして、このような構造の解除用レバー13、つまり操作部13cがスイッチ本体101の取付面側(背面側)に露出する構造の解除用レバー13を備えた安全スイッチは、図7、図8に示すように、扉150に操作用穴150aを開口しておくことにより、機械室内部から操作することができる。ここで、解除用レバー13(より具体的にはハンドル13d)には本発明に係る引張り遠隔操作機構Gが設けられており、この引張り遠隔操作機構Gにより解除用レバー13に引張力が付与され、解除用レバー13が回転するようになっている。なお、引張り遠隔操作機構Gの具体的な説明は、後述する。
【0039】
次に、以上の構造の解除用レバー13の作用を図10を参照しつつ説明する。なお、解除用レバー13の動作は、引張り遠隔操作機構Gの引張力の付与によるものである。まず、扉103が閉まって、アクチュエータ102が操作部111に進入すると、先の図6(b)に示したように、ロックレバー6により各カム1,2が回動阻止されてアクチュエータ102が機械的にロックが掛かった状態となる。この状態で解除用レバー13のレバー片13aは、図10(A)に示すように、ロックピン12の前方側に、このロックピン12の移動方向と直交する姿勢で静止した状態となっており、またハンドル13dはロックピン12の移動方向と平行な方向に沿っている。
【0040】
以上の状態から、引張り遠隔操作機構Gの操作により、解除用レバー13のハンドル13dが図10(B)に示すように反時計方向に回動すると、レバー片13aが回転軸13bを中心として回動し、このレバー片13aの回動によりロックピン12が後退方向に押され操作板11が後退する。これにより、先の図6(c)に示した動作と同じ動きでロックレバー6の係止片6aが各カム1,2のロック段部1d,2dから外れ、アクチュエータ102のロックが解除されて扉103が開放可能な状態となる。
【0041】
従って、停電時やメンテナンス時において、作業員が機械室の内部に入っているときに、作業員が誤って扉103を閉めたり、あるいは何らかの原因により扉103が閉まってしまったとしても、機械室内側からの引張り遠隔操作機構Gの操作によりアクチュエータ102の機械的なロックを解除することができるので、作業員が機械室内に閉じ込められる虞れがなくなる。
【0042】
(本発明の特徴部分)
次いで、本発明の特徴部分である引張り遠隔操作機構Gについて説明する。
図11は引張り遠隔操作機構Gの全体構成を示す図、図12は引張り遠隔操作機構Gを構成する連結部C付近の側面図、図13は引張り遠隔操作機構Gを構成する遠隔操作部A付近の斜視図、図14は遠隔操作部Aの操作状態を示す図である。なお、図14(1)は安全スイッチがロック状態の場合の遠隔操作部Aの状態を示し、図14(2)は安全スイッチがロック解除状態の場合の遠隔操作部Aの状態を示している。
以下、これらの図面及び図5、図7、図8、図9をも参照して、引張り遠隔操作機構Gについて詳述する。
【0043】
解除用レバー13のハンドル13dの先端には連結体20が固着されている。なお、固着に限らず、解除用レバー13と連結体20が一体形成することも可能である。この連結体20にはハンドル13dに垂直な方向に延びる貫通孔20a(図12参照)が形成されており、この貫通孔20a内をワイヤ(伝達部Bに相当)21の一端が挿通している。また、この連結体20には、貫通孔20a内のワイヤ21を押えて固定する押さえネジ22が装着されている。この押さえネジ22によりワイヤ21が連結体20に固定されることにより、ハンドル13dとワイヤ21が連結されることになる。従って、連結体20及び押さえネジ22は連結部Cを構成する。
【0044】
ワイヤ21は、スイッチ本体101から壁150の内壁150bに沿って敷設され、その他端に遠隔操作部Aが設けられている。遠隔操作部Aは人の手が届く高さ位置に設けられている。本実施の形態1に係る遠隔操作部Aは、図13に示すように、壁150に固定された取付金具24と、取付金具24に回転自在に取り付けられたレバー25とを備える。レバー25は、ボルト26の軸回りに回転可能となっている。また、取付金具24の立上部24aには挿入孔24a1が形成されており、この挿入孔24a1をワイヤ21の他端が挿通してレバー25に固定されている。そして、安全スイッチがロック状態であるときは、レバー25は図14(1)に示すように、レバー25の基端部25aが取付金具24の立上部24aに当接して静止状態となっている。そして、ロック解除のために、図14(2)に示すようにレバー25を矢印26方向に押し下げると、ワイヤ21が矢印27方向に引っ張られる。これにより、ワイヤ21の一端に連結されているハンドル13dが、図10(A)の状態から図10(B)の状態に回動する。これにより、安全スイッチのロック状態が解除される。このように遠隔操作部の操作により引張力を、ワイヤ21を介して手動ロック解除部M(より具体的にはハンドル13d)に付与して、ハンドル13dを回動させることが可能となる。
【0045】
このように、遠隔操作部Aを人の手が届く高さ位置に設けることにより、手動ロック解除部Mを直接操作できない作業者は、遠隔操作部Aを操作することにより、手動ロック解除部Mに引張力を付与してロック状態を解除することができる。この結果、扉を開くことが可能となり、部屋内に閉じ込められていた作業者は、部屋から脱出することができる。
【0046】
[実施の形態2]
図15は連結部Cの他の実施の形態を示す斜視図、図16はその側面図である。
この実施の形態2に係る連結部Cは、ハンドル13dの先端に固定されたジョイントボルト30と、ロックナット31とを有する。ジョイントボルト30の軸部30aには、その軸心方向に対して垂直方向に延びる貫通孔32が形成されている。この貫通孔32をワイヤ21の一端が挿通している。そして、ロックナット31の締結によりジョイントボルト30の頭部30bとロックナット31間にワイヤ21が挟みこまれて固定されている。このような構成により、ワイヤ21に矢印方向33の引張力が付与されると、ロックナット31が図15に示すように矢印方向34に回転して解除レバー13cを矢印35方向に回動させることができる。従って、上記構成の連結部Cにより、遠隔操作部Aの操作によりワイヤ21を介して伝達される引張力を手動ロック解除部Mに確実に伝達することができる。
【0047】
[実施の形態3]
図17は連結部Cのさらに他の実施の形態を示す斜視図、図18はその側面図、図19はその分解斜視図、図20は連結部Cの作動状態を示す図であり、そのうち図20(1)は安全スイッチがロック状態の場合の連結部Cの状態を示し、図20(2)は安全スイッチがロック解除状態の場合の連結部Cの状態を示している。
この実施の形態3に係る連結部Cは、ハンドル13dの先端に固定されたジョイントボルト40と、スペーサ41と、ナット42とを有する。また、ワイヤ21の一端側は、ジョイントボルト40に挿入することが可能なようにリング状の係止部44が形成できるように折り曲げられて留め具43によって固定されている。そして、係止部44はジョイントボルト40に挿入され、ナット42の締結により、ジョイントボルト40の頭部40aとナット42間に挟まれて固定されている。なお、ナット42の締結状態は、係止部44がジョイントボルト40の軸部40bの回りに回動可能な程度とされている。従って、ワイヤ21に引張力が付与された際、図20に示すように、係止部44が回動しながらハンドル13dを矢印方向45に引っ張るので、ワイヤ21を一方向に引っ張ることで、ハンドル13dを回転させることができる。
【0048】
なお、上記実施の形態1,2における連結部Cは、ボルトの軸回りの回動が許容されていないので、ワイヤ21の引っ張り操作中において、若干の引っかかりが生じる場合もある。この点、実施の形態3における連結部Cでは、係止部44がジョイントボルト40の軸部40bの回りに回動可能であるため、ハンドル13dの回転に応じて係止部44が回転するので、ワイヤ21を矢印方向45に引っ張る際に、その途中で引っかかることなく、円滑に一方向への引張でハンドル13dを回転させることができる。
【0049】
[実施の形態4]
図21は実施の形態4に係る遠隔操作部Aの外観構成を示す斜視図、図22は実施の形態4に係る遠隔操作部Aの内部構成を示す断面図である。なお、図22(1)は安全スイッチがロック状態の場合における遠隔操作部Aの内部構成を示し、図22(2)は安全スイッチがロック解除状態の場合における遠隔操作部Aの内部構成を示している。
【0050】
部屋内壁150にはカバー体50が取り付けられている。このカバー体50は、その上面部50aにワイヤ21が挿通する挿入孔51が形成され、前面部50bに押しボタン52が装着されている。この押しボタン52は、操作部52aと押し込み方向に延びる操作軸52bとを有する。カバー体50の前面部50bには、操作軸52bが挿通する挿入孔53aを有する円筒体53が装着されており、押しボタン52の操作軸52bが挿入孔53aを挿通している。また、カバー体50内には、押しボタンの押し込み方向に垂直な方向に移動可能な移動体54が配設されている。この移動体54の上面にはワイヤ21の他端が固定されている。また、操作軸52bの先端部には傾斜面55が形成されている。移動体54の前面は、操作軸52bの傾斜面55とほぼ同一傾斜角を有する傾斜面56とされ、操作軸52bの傾斜面55に当接している。また、移動体54は案内部材57の案内孔57aに嵌まり込んでおり、案内孔57aに沿って上下方向に移動自在となっている。なお、案内部材57は、カバー体50の前面部50bに支持固定されている。また、操作軸52bの外周面には、押しボタンの抜け止め防止用突起58が形成されている。また、移動体54の下端部には、移動体45の上方への移動を規制するストッパ54aが設けられている。
【0051】
次いで、上記構成の遠隔操作部の動作について説明する。先ず、安全スイッチがロック状態の場合において、部屋から脱出するために、ロック状態を解除する。具体的には、押しボタン52を矢印方向59に押し込む。これにより、移動体54が矢印方向60に移動し、ワイヤ21が引っ張られて図22(1)の状態から図22(2)の状態となる。即ち、押しボタン52の押し込み操作により、ワイヤ21に引張力が付与される。これにより、ワイヤ21を介してロック解除部のハンドル13dが回動して、ロック解除状態となる。
上記押しボタン52は、押圧力を解除すると、ロック手段の圧縮コイルばね7,8のばね力によって元の状態に復帰する。
【0052】
押しボタン52としては、上記の構造に代えて、押し込み状態で保持される保持機能付押しボタンであってもよい。このような保持機能付押しボタンを用いると、安全スイツチ側でのロック解除状態を保持することが可能となる。即ち、安全スイッチのロック状態を解除するため、押しボタンを押し込むと、図22(2)に示す状態となる。そして、押しボタンの押圧力を取除いても、この図22(2)に示す状態を保持している。この保持状態を解除するためには、押しボタンを図22(2)に示す状態から引くまたは回すと、押しボタンの保持状態が解除され、ロック手段の圧縮コイルばね7,8のばね力によって図22(2)に示す状態から図22(1)に示す元の状態に復帰する。
【0053】
このように遠隔操作部Aが保持機能付押しボタンを備えた構造の場合、遠隔操作部Aの操作力を一時的に解除しても、ロック解除状態を保持することができる。従って、遠隔操作部Aを扉から離れた位置に設けることができる。なぜなら、部屋内に閉じ込められた作業者は、ロック解除のために押しボタンを押し、ロック解除状態となった後、遠隔操作部Aから離れてもロック解除状態が保持されているので、扉を開くことが可能となっているからである。通常の押しボタンの場合は、押しボタンを押し続けると共に扉を開ける必要があるので、遠隔操作部Aは、扉から離れた位置に設けることはできない。これに対して、保持機能付押しボタンを備えた遠隔操作部Aでは、ロック解除状態を保持できるので、押しボタンを押し続けると共に扉を開ける必要がないからである。
【0054】
但し、ロック解除状態のままでは、扉を閉めても機械が作動許可状態とならないので、保持機能付押しボタンを備えた遠隔操作部Aの場合には、部屋から脱出した作業者は、手動ロック解除部Mを元の状態に復帰させておくことが必要となる。一方、通常の押しボタンを備えた遠隔操作部Aでは、ロック解除状態を強制的に元の状態に復帰するように構成されているので、別途復帰操作は不要である。
【0055】
要約すれば、遠隔操作部Aが引張力の付与状態(ロック解除状態)を保持する保持手段を備えている場合は、遠隔操作部Aを扉から離れて設けることが可能であり、人の手の届く高さ位置であれば、その他の設置場所に制約を受けない。一方、手動ロック解除部Mを作動させて一旦ロック解除状態を得た後、機械を作動許可状態とするため、遠隔操作部Aを再度操作して引張力の付与保持状態を解除して安全スイッチのロック解除部を元の状態に復帰させておくことが必要である。
一方、遠隔操作部Aが引張力の付与状態(ロック解除状態)を保持する保持手段を備えていない場合は、遠隔操作部Aを操作すると共に扉を開く必要があるので、遠隔操作部Aの設置場所としては、人の手の届く高さ位置に加えて、扉の近傍であることが必要となる。一方、遠隔操作部Aを操作して手動ロック解除部Mを作動させた後、遠隔操作部Aの操作を解除すると、強制的に手動ロック解除部Mが元の状態に復帰する。従って、作業者が部屋から脱出した後、手動ロック解除部Mを元に戻す操作が不要となる。
従って、押しボタンの保持機能の有無については、使用する状態に応じて適宜選択すればよい。
【0056】
[実施の形態5]
図23は実施の形態5に係る遠隔操作部Aの内部構成を示す断面図である。なお、図23(1)は安全スイッチがロック状態の場合における遠隔操作部Aの内部構成を示し、図23(2)は安全スイッチがロック解除状態の場合における遠隔操作部Aの内部構成を示している。
【0057】
この実施の形態5は、上記実施の形態4と同様に押しボタン52を押し込むことにより、引張力を付与するものである。但し、実施の形態4と異なり、実施の形態5では、押しボタン52に連動するリンク機構により引張力を付与するものである。即ち、押しボタン52の操作軸52bの先端にはL字状のリンク部材70の一端部(図23の上端部)がピン71により回動自在に結合されている。リンク部材70には長孔72が形成されており、この長孔72にピン71が嵌まり込んでいる。このリンク部材70は支持体73に支軸74より回転自在に支持されている。リンク部材70の他端部には、ワイヤ21の他端が固定されている。なお、支持体73は、カバー体50の前面部50bに固定されている。
【0058】
上記構成の遠隔操作部Aにおいて、図23(1)の状態で押しボタン52を矢印方向75に押し込むと、それに応じてリンク部材70が支持体の支軸74の回りに回動する。これにより、図23(2)に示すように、ワイヤ21が矢印方向76に引っ張られる。この結果、ワイヤ21を介して手動ロック解除部Mのハンドル13dが回動して、ロック解除状態となる。
【0059】
このように、押しボタン52と、押しボタン52に連動するリンク機構とを備えた遠隔操作部Aによってもまた、ロック解除を遠隔操作により行うことができる。
【0060】
[実施の形態6]
図27〜図43は実施の形態6に係る安全スイッチを示している。本実施の形態6は手動ロック解除部Mに特徴を有している。以下に具体的な構成を説明する。本実施の形態6に係る手動ロック解除部Mは、上記実施の形態1に係る手動ロック解除部Mと同様に、扉150の操作用孔150aから機械室内部側に露出している(図27参照)。この本実施の形態6に係る手動ロック解除部Mは、円板状の取付部200と、カム溝201を備えたカム板部202と、取付部200とカム板部202とを連結する連結支持部203とを備えている。この手動ロック解除部Mは、ねじ204によりスイッチ本体101の取付面(背面)に取り付けられている。即ち、スイッチ本体101の取付面側(背面側)に形成されている取付孔205にスペーサ206の一端を嵌め込むと共に、このスペーサ206を取付部200とカム板部202との間に配置し、この状態で、ねじ204を、取付部200の挿通孔207、スペーサ206の挿通孔208を順次緩やかに挿通させると共に、ねじ204がねじ加工が施された挿通孔209により固定されている。これにより、取付部200及びカム板部202は、ねじ204の軸回りに時計方向(矢印H1方向)及び反時計方向(矢印H2方向)のいずれ方向にも回転可能となっている。
【0061】
取付部200には連結部Cが設けられており、この連結部Cにワイヤ等の伝達部Bの一端が連結固定されている。なお、本実施の形態の手動ロック解除部Mは、ねじ204の軸回りに時計方向(矢印H1方向)及び反時計方向(矢印H2方向)のいずれ方向にも回転可能となっているので、伝達部Bの引張力の方向は、矢印方向H5(図28参照)に限らず、その反対方向であってよい。カム板部202を回転できれば、ロックピン12(作動軸)を矢印H3方向に移動させることができるからである。
【0062】
カム板部202のハート形状のカム溝201には、カムフォロワピンとして機能するロックピン12が差し込まれている。ロック状態の場合は、ロックピン12は図28及び図29に示すカム溝201の頂部K3に位置した状態となっており、カム板部202の回転に伴ってカム溝201に案内されてロックピン12は矢印方向H3に移動する。そして、ロックピン12が、図36及び図37に示すカム溝201の両端部K1,K2のいずれかの位置に到達した状態となった時、ロック解除状態となる。
【0063】
ここで、カム溝201をハート形状としている理由を図38を参照して説明する。なお、図38は図28のスィッチ本体を180度回転し、この180度回転した状態のスィッチ本体を前面側から見た場合のカム溝201付近を示す図である。従って、時計方向H1及び反時計方向H2の向きが図28とは逆方向になっている。即ち、図38では、時計方向H1は反時計方向の向きで、反時計方向H2は時計方向の向きに示されている。図38を上記方向から見ることにしたのは、スィッチ本体の見る方向が図3、図10の見る方向と同一となるので、実施の形態6に係る手動ロック解除部Mの動きを、実施の形態1に係る手動ロック解除部Mと対応させて理解し易くすることによる。また、同様の理由により、図39〜図45は図38と同一の方向から見た図面となっている。従って、図39〜図45においても、図38と同様に、時計方向H1及び反時計方向H2の向きが図28とは逆方向になっている。
【0064】
手動操作によりロック解除するためには、カム板部202の回転によりカム溝201に案内されてロックピン12を矢印方向H3に移動することが必要とされる。そして、カム板部202の回転は時計方向H1及び反時計方向H2に回動可能であるので、カム板部202が時計方向H1に回動する場合のカム溝201aと、カム板部202が反時計方向H2に回動する場合のカム溝201bとが存在していればよい。従って、手動操作によるロック解除のみを考慮すれば、カム溝201aとカム溝201bとを連ねた形状とすればよい。しかしながら、本実施の形態における安全スイッチにおいては、手動操作によらないソレノイドによるロック解除がなされる場合があり、その場合にはロックピン12は図28及び図29に示す位置から、カム板部202が回転せずに、矢印H3方向に所定距離移動する。そのため、ソレノイドによる場合のカム溝201cを存在させておくことが必要となる。そこで、本実施の形態におけるカム溝201は、カム溝201aとカム溝201bとカム溝201cとを存在させるために、ハート形状としている。
【0065】
なお、端部K1に位置している場合のロックピン12とねじ204との距離をr1とし、端部K2に位置している場合のロックピン12とねじ204との距離をr2とし、頂部K3に位置している場合のロックピン12とねじ204との距離をr3とすると、r1<r3、且つr2<r3を満たしている。このような条件を満たすことにより、ロックピン12を矢印方向H3に移動させることが可能となる。従って、カム溝201のハート形状としては、上記の条件を満たせば、どのような形状であってもよい。
【0066】
また、ソレノイドによるロック解除がない場合は、カム溝201cは不要である。また、カム板部202の回転方向がH1,H2のいずれか一方のみの場合は、カム溝は201aまたは201bのいずれか一方のみでよい。
【0067】
また、カム溝201a及びカム溝201bの傾きは、カム板部202の回転角度に応じて調整されている。即ち、図39に示すように、カム溝201aとカム溝201bの傾きが大きい構成の場合には、カム板部202を大きく回転させないとロック解除状態が得られない。これに対して、図41に示すように、カム溝201aとカム溝201bの傾きが小さい構成の場合には、カム板部202を僅かに回転させるだけで、ロック解除状態が得られる。図40に示す場合は、カム溝201a及びカム溝201bの傾きは、図39と図41との間であり、従って、図39の場合と図41の場合の中間の回転角度でロック解除状態が得られることになる。なお、カム溝201aとカム溝201bの傾きが小さい構成の場合には、カム板部202を僅かに回転させるだけでロック解除状態が得られるので、遠隔操作部Aの操作に対する応答性は良好であるが、遠隔操作部Aの誤操作により誤ってロック解除状態となる恐れがある。一方、カム溝201aとカム溝201bの傾きが大きい構成の場合には、遠隔操作部Aの誤操作によるロック解除状態の発生はないが、遠隔操作部Aの操作時間や操作力が大きくなりすぎる恐れがある。従って、両者のメリット・デメリットを考慮して、最適な角度に決定すればよい。
【0068】
また、上記実施の形態4では遠隔操作部Aが引張力の付与状態(ロック解除状態)を保持する保持手段が設けられていたが、本実施の形態においては、手動ロック解除部Mに、手動ロック解除状態を保持する保持手段設けられている。この本実施の形態における保持手段は、スイッチ本体101の取付面側に設けられた支持体221と、支持体221の収納凹部222に収納されているコイルバネ223と、コイルバネ223の先端側(図29の下端側)に配置された球体224と、取付部200に形成され、球体224が部分的に嵌り込む係止孔225a,225bとを有する。係止孔225aと係止孔225bとは、図28のロック状態において取付部200の上下2分割線に関して上下対称に配置されており、係止孔225aは時計方向H1の回転時におけるロック解除状態保持用であり、係止孔225bは反時計方向H2の回転時におけるロック解除状態保持用である。
【0069】
次いで、上記構成の手動ロック解除部Mの動作を図42を参照して説明する。
ロック状態(図42(1)参照)で、遠隔操作部Aの操作により矢印方向H5とは反対方向の引張力がワイヤ等の伝達部Bを介して取付部200に付与されると、カム板部202は時計方向H1に回転する。これにより、ロックピン12はカム溝201に案内され矢印方向H3に移動する(図42(2)参照)。このロックピン12の移動により、操作板11も矢印方向H3に移動する。これにより、先の図6(c)に示した動作と同じ動きでロックレバーの係止片6aが各カム1,2のロック段部1d,2dから外れ、これにより各カム1,2の回転阻止つまりアクチュエータ102の機械的なロック状態が解除されて扉103が開放可能な状態となる。このとき、球体224は係止孔225aに嵌り込むことにより、ロック解除状態が保持されることになる。なお、取付部200に付与される引張力が反対方向(矢印方向H5)の場合は、カム板部202は反時計方向H2に回転し、カム溝201により案内されてロックピン12はカム溝201に案内され矢印方向H3に移動し、操作板11も矢印方向H3に移動してロック解除状態となる。この場合においては、球体224は係止孔225bに嵌り込むことにより、ロック解除状態が保持されることになる(図37参照)。
【0070】
また、ソレノイドが駆動された場合は、カム板部202は回転することなくロックピン12が矢印方向H3に移動してロック状態(図43(1))からロック解除状態(図43(2))となる。
【0071】
このように、本実施の形態6に係る手動ロック解除部Mは、時計回り及び反時計回りの何れの方向にも回転可能に構成しているので、レバーを時計回りにしか回転させることができない上記実施の形態1に示す手動ロック解除部Mに比べて、使い勝手が向上する。また、本実施の形態6に係る手動ロック解除部Mは円板状の取付部を有することから、ワイヤの取付自由度が高められる。
【0072】
(その他の事項)
(1)遠隔操作部Aの他の例として、図24に示すようにワイヤ21の他端部に握り操作部80を設けるようにしてもよい。ロック解除の遠隔操作としては握り操作部80を下側に引っ張れば引張力がロック解除部に付与される。
【0073】
(2)上記実施の形態4、5では、遠隔操作部Aとして押しボタン52を用いたけれども、引きボタンを用いるようにしてもよい。即ち、引きボタンと上記実施の形態4の移動体等を含む構成の組み合わせや、引きボタンと上記実施の形態5のリンク機構との組み合わせにより、遠隔操作部Aを構成してもよい。
【0074】
(3)上実施の形態1〜5では、伝達部Bとしてはワイヤ21を使用したけれども、ロープ、ケーブル、チェーン等の索条を用いてもよく、また、棒等の剛体を用いてもよい。要は、遠隔操作部Aの操作により付与された引張力をロック解除部に伝達できるものであれば、特に限定されず如何なるものも含まれる。
【0075】
(4)上記実施の形態1〜5の連結部C、伝達部B、遠隔操作部Aを適宜組み合わせてもよい。
【0076】
(5)上記実施の形態では、スイッチ本体部101は出入口の壁150の上部近傍に設けられたけれども、図25に示すように、壁150の上面150cに設けるようにしてもよい。なお、この場合は、壁150の上面150cの一部を切り欠いて手動ロック解除部Mのハンドル13d等を収納するようにしておけばよい。
【0077】
(6)上記実施の形態では、スプリングロックタイプ(アクチュエータ進入にてスプリングによりロック、ソレノイド励磁にてロック解除)の安全スイッチを使用した例を挙げたが、ソレノイドロックタイプ(アクチュエータ進入後ソレノイド励磁にてロック、ソレノイド無励磁にてロック解除)の安全スイッチを使用しても構わない。
【0078】
(7)本発明における「ロック部のロック機能」及び「ロック解除部のロック解除機能」としては、ばねを用いてロック・ロック解除する構成、動力源を用いてロック・ロック解除する構成、又はキーによりロック・ロック解除する構成のいずれであってもよい。なお、動力源としては、ソレノイド、空気圧、油圧等を用いることができる。
【0079】
(8)上記実施の形態6では、ハート形状のカム溝を用いたけれども、本発明はこれに限定されず、カム溝201aとカム溝201bとカム溝201cとが存在しておればよく、例えば図44に示すような形状であってもよい。
【0080】
(9)手動ロック解除状態を保持する保持手段としては、図45(1)に示すように、カム溝201a及びカム溝201bの端部近傍の周面に突出部230を形成するようにしてもよい。このように構成すれば、カム板部202の回転によりロックピン12が突出部230を乗り越えてカム溝201の端部K1に移動してロック解除状態となった場合(図45(2)参照)に、突出部230によりロックピン12をカム溝の端部K1に保持することが可能となる。
【0081】
(9)本発明に係る安全スイッチは、上記実施の形態6の手動ロック解除部と、実施の形態1〜5における連結部C、伝達部B、遠隔操作部Aを適宜組み合わせ構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、産業機械が設置される領域の出入口などの壁面及びその出入口の扉付近に装着され、扉が開かれたときには産業機械等への電源供給を停止する安全スイッチに好適に実施される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の概念を模式的に示した図。
【図2】本発明の実施の形態1の使用状態で示す斜視図。
【図3】実施の形態1の操作部111とソレノイド機構部113の構成図でカバーを取り外して示す平面図。
【図4】図3のX−X断面図。
【図5】図3のY−Y断面図。
【図6】図3に示す操作部111の動作過程を示す図。
【図7】本発明の実施の形態1を使用状態で示す側面図。
【図8】図7のZ矢視図。
【図9】本発明の実施の形態1で用いる解除用レバー13の構造を示す斜視図。
【図10】その解除用レバー13の作用説明図。
【図11】引張り遠隔操作機構Gの全体構成を示す図。
【図12】引張り遠隔操作機構Gを構成する連結部C付近の側面図。
【図13】引張り遠隔操作機構Gを構成する遠隔操作部A付近の斜視図。
【図14】遠隔操作部Aの操作状態を示す図であり、そのうち図14(1)は安全スイッチがロック状態の場合の遠隔操作部Aの状態を示し、図14(2)は安全スイッチがロック解除状態の場合の遠隔操作部Aの状態を示している。
【図15】実施の形態2に係る連結部Cを示す斜視図。
【図16】実施の形態2に係る連結部Cの側面図。
【図17】実施の形態3に係る連結部Cの斜視図。
【図18】実施の形態3に係る連結部Cの側面図。
【図19】実施の形態3に係る連結部Cの分解斜視図。
【図20】実施の形態3に係る連結部Cの作動状態を示す図であり、そのうち図20(1)は安全スイッチがロック状態の場合の連結部Cの状態を示し、図20(2)は安全スイッチがロック解除状態の場合の連結部Cの状態を示している。
【図21】実施の形態4に係る遠隔操作部Aの外観構成を示す斜視図。
【図22】実施の形態4に係る遠隔操作部Aの内部構成を示す断面図であり、そのうち図22(1)は安全スイッチがロック状態の場合における遠隔操作部Aの内部構成を示し、図22(2)は安全スイッチがロック解除状態の場合における遠隔操作部Aの内部構成を示している。
【図23】実施の形態5に係る遠隔操作部Aの内部構成を示す断面図であり、そのうち図23(1)は安全スイッチがロック状態の場合における遠隔操作部Aの内部構成を示し、図23(2)は安全スイッチがロック解除状態の場合における遠隔操作部Aの内部構成を示している。
【図24】遠隔操作部Aの他の例を示す斜視図。
【図25】安全スイッチの設置場所の他の例を示す斜視図。
【図26】図25の安全スイッチを部屋内部から見た図。
【図27】実施の形態6に係る手動ロック解除部の使用状態を示す側面図。
【図28】実施の形態6に係る安全スイッチの背面図(ロック状態)。
【図29】図28のA1−A1矢視断面図。
【図30】実施の形態6に係る安全スイッチの手動ロック解除部の平面図。
【図31】実施の形態6に係る安全スイッチの手動ロック解除部の底面図。
【図32】実施の形態6に係る安全スイッチの手動ロック解除部の側面図。
【図33】図30のA2−A2矢視断面図。
【図34】実施の形態6に係る安全スイッチの手動ロック解除部の底面側から見た斜視図。
【図35】実施の形態6に係る安全スイッチの手動ロック解除部の平面側から見た斜視図。
【図36】実施の形態6に係る安全スイッチの背面図(ロック解除状態)。
【図37】図36のA3−A3矢視断面図。
【図38】カム溝201がハート形状としている理由を説明するための図。
【図39】カム溝201aとカム溝201bの傾きが大きい場合の構成を示す図。
【図40】カム溝201aとカム溝201bの傾きが中間の場合の構成を示す図。
【図41】カム溝201aとカム溝201bの傾きが小さい場合の構成を示す図。
【図42】実施の形態6に係る手動ロック解除部Mの動作を説明するための図。
【図43】ソレノイドによるロック解除の場合のロックピン12とカム溝201の状態を示す図。
【図44】カム溝の他の例を示す図。
【図45】保持手段の他の例を示す図。
【符号の説明】
【0084】
A:遠隔操作部 B:伝達部
C:連結部 G:引張り遠隔操作機構
M:手動ロック解除部 12:ロックピン(作動軸)
13:解除用レバー 13c:操作部
13d:ハンドル 20:連結体
21:ワイヤ 22:押さえネジ
24:取付金具 25:レバー
30,40:ジョイントボルト 31,42:ロックナット
32:貫通孔 43:係止部
52:押しボタン 54:移動体
70:リンク部材 80:握り操作部
100:安全スイッチ 101:スイッチ本体
102:アクチュエータ
200:取付部 201:カム溝
202:カム板部 203:連結部
204:ねじ(回転軸) 221:支持体
222:収納凹部 223:コイルバネ
224:球体 225a,225b:係止孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ本体の操作部に進入・後退自在にアクチュエータが設けられ、アクチュエータがスイッチ本体の操作部に進入した場合に、アクチュエータをロックするロック部と、アクチュエータのロックを解除するロック解除部を備えると共に、ロック解除部のロック解除のための動力とは関係なしに手動操作によりロック解除できる手動ロック解除部を備えた安全スイッチであって、
前記手動ロック解除部が、スイッチ外部からの引張り操作によってロック解除できるように構成されていることを特徴とする安全スイッチ。
【請求項2】
前記手動ロック解除部に外部からの操作によって引張力を付与する引張り遠隔操作機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の安全スイッチ。
【請求項3】
前記引張り遠隔操作機構は、
手動ロック解除部を作動させるための引張力を付与する遠隔操作部と、
遠隔操作部の操作により付与された引張力を手動ロック解除部に伝達する伝達部と、
伝達部と手動ロック解除部とを連結する連結部と、
を有することを特徴とする請求項2記載の安全スイッチ。
【請求項4】
前記遠隔操作部は、遠隔操作部の操作を停止しても遠隔操作部の操作により付与された引張力を保持する保持手段を備えていることを特徴とする請求項3記載の安全スイッチ。
【請求項5】
前記ロック解除部は、ロック解除のための動力を発生するロック解除動力部と、ロック解除動力部で発生した動力をロック部に伝達してアクチュエータのロックを解除するロック解除機構部と、前記手動ロック解除部の解除操作に連動してロック解除機構部を作動させる作動軸とを備え、
前記手動ロック解除部は、前記作動軸が差し込まれるカム溝と、前記連結部が取り付けられる取付部とを備えると共に、スイッチ本体に回転可能に取り付けられており、
前記遠隔操作部の操作により前記手動ロック解除部に引張力が付与された場合には、前記手動ロック解除部が回転し、この手動ロック解除部の回転により前記作動軸がカム溝に案内されて所定方向に移動することにより、前記ロック解除機構部を作動させるように構成されていることを特徴とする請求項3記載の安全スイッチ。
【請求項6】
前記手動ロック解除部は、時計方向及び反時計方向のいずれの方向にも回転可能に構成されていることを特徴とする請求項5記載の安全スイッチ。
【請求項7】
前記手動ロック解除部には、ロック解除状態を保持する保持手段が設けられていることを特徴とする請求項6記載の安全スイッチ。
【請求項1】
スイッチ本体の操作部に進入・後退自在にアクチュエータが設けられ、アクチュエータがスイッチ本体の操作部に進入した場合に、アクチュエータをロックするロック部と、アクチュエータのロックを解除するロック解除部を備えると共に、ロック解除部のロック解除のための動力とは関係なしに手動操作によりロック解除できる手動ロック解除部を備えた安全スイッチであって、
前記手動ロック解除部が、スイッチ外部からの引張り操作によってロック解除できるように構成されていることを特徴とする安全スイッチ。
【請求項2】
前記手動ロック解除部に外部からの操作によって引張力を付与する引張り遠隔操作機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載の安全スイッチ。
【請求項3】
前記引張り遠隔操作機構は、
手動ロック解除部を作動させるための引張力を付与する遠隔操作部と、
遠隔操作部の操作により付与された引張力を手動ロック解除部に伝達する伝達部と、
伝達部と手動ロック解除部とを連結する連結部と、
を有することを特徴とする請求項2記載の安全スイッチ。
【請求項4】
前記遠隔操作部は、遠隔操作部の操作を停止しても遠隔操作部の操作により付与された引張力を保持する保持手段を備えていることを特徴とする請求項3記載の安全スイッチ。
【請求項5】
前記ロック解除部は、ロック解除のための動力を発生するロック解除動力部と、ロック解除動力部で発生した動力をロック部に伝達してアクチュエータのロックを解除するロック解除機構部と、前記手動ロック解除部の解除操作に連動してロック解除機構部を作動させる作動軸とを備え、
前記手動ロック解除部は、前記作動軸が差し込まれるカム溝と、前記連結部が取り付けられる取付部とを備えると共に、スイッチ本体に回転可能に取り付けられており、
前記遠隔操作部の操作により前記手動ロック解除部に引張力が付与された場合には、前記手動ロック解除部が回転し、この手動ロック解除部の回転により前記作動軸がカム溝に案内されて所定方向に移動することにより、前記ロック解除機構部を作動させるように構成されていることを特徴とする請求項3記載の安全スイッチ。
【請求項6】
前記手動ロック解除部は、時計方向及び反時計方向のいずれの方向にも回転可能に構成されていることを特徴とする請求項5記載の安全スイッチ。
【請求項7】
前記手動ロック解除部には、ロック解除状態を保持する保持手段が設けられていることを特徴とする請求項6記載の安全スイッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
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【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
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【図40】
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【図44】
【図45】
【公開番号】特開2008−277291(P2008−277291A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99712(P2008−99712)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
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