説明

安全ヘルメットのストラップを調整して留めるための係留装置

【課題】 ストラップが偶発的に外れにくい、ストラップを留めて調整するための係留装置を提供する。
【解決手段】 この装置は、ストラップの少なくとも一部分の挿入を可能にする基部と、基部に回転可能に拘束されており、ストラップの少なくとも一部分と係合するように適合化された結合部を有しているラチェットと、ラチェットを、ストラップとの係合位置に保つために、ラチェットと基部との間に配置されている第1の弾性手段とを備えている。この装置は、さらに、第1の弾性手段の抵抗力に打ち勝って、ラチェットを、ストラップとの係合位置から、ストラップからの脱係合位置に回転させるための操作レバーを備えている。操作レバーは、与えられた角度間隔で回転することが可能であるように、ラチェットに拘束されている。この装置は、さらに、この角度間隔において、ラチェットに相対的な、操作レバーの回転を抑制するための第2の弾性手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストラップを調整して留めるための装置、詳細には、安全ヘルメットをユーザに固定することができる顎ストラップを、ヘルメットが外れないように調整して留めるための係留装置に関する。オートバイ等の分野において現在用いられている安全ヘルメットは、ユーザの喉頸に密着するように、長さを調整して留められ、したがって、安全ヘルメットが、ユーザの頭部から偶発的に、特に転倒の際に外れるのを防止するための顎ストラップを備えている。本明細書において、ストラップの長さとは、ヘルメットをユーザに固定するために有効に働いている部分のストラップの長さのことである。
【0002】
顎ストラップは、一般に、ヘルメットの両下端のうちの一方に拘束されており、かつ係留装置によって、ヘルメットの両下端のうちの他方に恒久的に留められる。
【0003】
通例、顎ストラップは、2つ以上の部分から成っている。それらの2つ以上の部分の一端と一体になっている係留装置によって、それらの2つ以上の部分を、相互に拘束させて、調整することができる。
【0004】
以下の説明においては、特に、オートバイの分野において用いられる安全ヘルメットについて言及するが、本発明による係留装置は、ユーザの頭部を保護するために用いられる全ての安全ヘルメット、例えば二輪車用や雪上車用などの安全ヘルメットに一般的に利用することができ、さらには、より一般的に、衣服や装身具の2つの垂下物を相互に固定するために用いられる適宜のストラップを、留めて調整するために使用することができる。
【背景技術】
【0005】
長年にわたって、安全ヘルメットの顎ストラップを留めて、その長さを調整するための多くのシステム、例えば顎ストラップ(通常、リボン状の)の少なくとも一部分を、2つのリングの間に挿入するようになっているシステムが開発されている。
【0006】
このシステムは、製造は非常に簡単であるが、顎ストラップを留めるには、あらかじめ定めた順序にしたがって、顎ストラップを、2つのリングの間に通す必要があるため、あまり直感的ではなく、また使い方が容易ではない。
【0007】
また、リボン状の顎ストラップを、2つのリングの間に挿入した後、顎ストラップの自由端部がはためかないように、顎ストラップの自由端部を、例えばベルクロ(Verlcro、登録商標)テープ、または同様の手段を用いて、適切に固定しなければならない。
【0008】
さらに、顎ストラップを留めるためのバックルを有するシステムも公知である。これによると、バックルの内部に、バックルとの結合位置に達するように構成された、顎ストラップの相補的な形状の部分を挿入する。バックルから、相補的な形状の部分を離脱させるボタンを操作することによって、装置による係留が解かれる。基本的に2つの位置、すなわち顎ストラップとの結合位置と離脱位置との間で変位可能な雄部分と、対応する雌部分とを有する、このタイプの装置においては、顎ストラップの長さのきめ細かい調整を、簡単かつ迅速に行うことができない。
【0009】
これに関連して、顎ストラップを調整して留めるために、顎ストラップに形成されている、対応する鋸歯状部分と噛み合うようになっている1つ以上の歯を有しており、かつ連結されたケーシングの内部で回動するラチェットを備える装置が開発されている。顎ストラップの鋸歯状部分と、ラチェットの鋸歯状部分との噛み合いによって、顎ストラップの鋸歯状部分を装置の内部に留めることができ、それによって、ラチェットを操作しない限り、装置からの顎ストラップの引き抜きは防止される。
【0010】
同時に、このような装置においては、装置のケーシングの内部で、ストラップの鋸歯状部分を、所望の位置に達するまで、ラチェットとの各係合位置で滑らせることによって、顎ストラップの長さを調整することができる。これにより、顎ストラップの長さのきめ細かい調整が可能であるため、当技術分野において、「高精度」結合として知られている。これによって、複数のユーザに対し、顎ストラップを高水準で適応させることができる。
【0011】
このような装置においては、ラチェットは、通常、ばねによって、ストラップとの係合位置に保たれている。ユーザが、自分の頭部から安全ヘルメットを取り外すために、ストラップを留めるための装置からストラップを引き抜こうとするときには、ユーザは、ストラップの鋸歯状部分との係合位置からラチェットを離すような力を、手動でラチェットに加え、これにより、ストラップの係留を解いて、ストラップを自由に滑らせることができる。
【0012】
このような装置には、手動操作のために、ラチェットを、装置の基部、すなわちケーシングから突き出させなければならないという事実に基づく、いくつかの欠点が存在する。実際、このことに起因して、ラチェットが、顎ストラップを留めている位置から、偶発的で望ましくない変位をする場合がある。
【0013】
特に、オートバイの運転者のジャケットの一部分との偶然の接触などの、外部物体との偶発的な接触によって、またはユーザが、無意識に顎ストラップの係留を解いてしまうことによって、ラチェットの突出部が持ち上がる場合がある。
【0014】
これらの欠点を克服するために、ラチェットが突き出さないように、ラチェットの寸法を小とし、さらに、ユーザが顎ストラップの係留を解こうとするときに、ユーザによるラチェットの操作を容易にするために、ラチェットにテープを拘束させる場合がある。
【0015】
別の係留装置においては、ラチェットに動力学的に結合されており、装置のケーシングに相対的に回動する、追加的な操作レバーを操作することによって、ラチェットが、顎ストラップを留めている位置から解かれるようになっている。このような装置においては、操作レバーへの力の印加によって、ラチェットは、ストラップとの係合位置から変位させられる。操作レバーは、ラチェットとの接触位置に保たれており、ラチェットによる顎ストラップの係留を解くことができるようになっている。
【0016】
このような装置は、EDC社によって出願された特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている係留装置においては、装置のケーシングに回転可能に拘束されている操作レバーを用いて、ラチェットを回転操作することによって、顎ストラップを脱係合させることができる。
【0017】
特許文献1に開示されている係留装置においては、ラチェットの直接操作を防ぐ操作レバーが設けられているが、この操作レバーとラチェットとは常に接触しており、このことは、操作レバーの偶発的な操作によって、ストラップの係留が解かれないようにするために、ラチェットとの係合面を、小さい角度間隔でも、初動回転において、ラチェットになんらの作用も与えないようなものとするように、操作レバーを形成しなければならないということを意味している。
【0018】
さらに、装置のケーシングに枢支されているラチェットと操作レバーの結合には、ごく狭い許容差範囲を順守するために、一定の精度が必要である。
【0019】
これは、特許文献1に開示されている係留装置が、特別の形状の操作レバーを必要とするということと、ごく狭い許容差範囲を要求されるということとの両方によって、製造が複雑となり、したがって、高価になるということを意味している。
【0020】
さらに、顎ストラップを留めるためのこの装置においては、その基部を、ラチェットと操作レバーとの両方を拘束することができるような寸法としなければならないから、この装置は、相当に大きくすることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】ヨーロッパ特許公開第0772983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、ストラップ、特に安全ヘルメットの顎ストラップを留めて調整するための係留装置であって、上述した従来技術の問題を簡単に解決することができる装置を提供することを目的としている。
【0023】
詳細には、本発明は、コンパクトなサイズであり、したがって軽量であると同時に、ストラップの係留の偶発的な解除および離脱の可能性を小として、ストラップの効果的な係留および調整を行うことを可能にする、ストラップを留めて調整するための装置を提供することを1つの目的としている。
【0024】
さらに、本発明は、ストラップの係留の強さ、およびストラップの長さをきめ細かく調整することができ、かつ製造および使用方法が簡単な、ストラップを留めて調整するための係留装置を提供することを別の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記した目的およびその他の目的を達成するために、本発明は、ストラップの少なくとも一部を挿入しうるようになっている基部またはケーシングと、基部に回転可能に拘束されており、かつストラップの対応する少なくとも一部分と係合するようになっている結合部を有する、少なくとも1つのラチェットとを備えている、ストラップを留めて調整するための装置を提供するものである。この装置は、さらに、ラチェットを、少なくとも1つの、ストラップとの係合位置に可逆的に保つために、ラチェットと基部との間に配置されている第1の弾性手段と、第1の弾性手段の抵抗力に打ち勝って、可逆的に、ラチェットを、少なくとも1つの、ストラップとの係合位置から、少なくとも1つの、ストラップからの脱係合位置に回転させるための、少なくとも1つの操作レバーとを備えている。
【0026】
本発明の装置は、操作レバーが、少なくとも1つの与えられた角度間隔で回転することができるように、ラチェットに拘束されていることを特徴としている。
【0027】
本発明の装置は、さらに、前記した角度間隔において、ラチェットに相対的な、操作レバーの回転を抑制するための第2の弾性手段を備えている。
【0028】
ラチェットに相対的な、操作レバーの回転を抑制するための第2の弾性手段は、変形していない状態、すなわち始動状態において、操作レバーを、ラチェットとの接触位置と一致しない、少なくとも1つの基準位置に保つようになっている。
【0029】
操作レバーを、ラチェットに直接拘束させるようにすると、装置全体の寸法を縮小させることができるので有利である。
【0030】
さらに、この構造においては、操作レバーにおけるラチェットとの係合面を、特別の形状と形成する必要はなく、またラチェットへの操作レバーの取り付けに対する寸法上の許容範囲を、極度に小さくする必要もない。
【0031】
本発明の装置の一態様によれば、ラチェットに対する、操作レバーの相対的回転の角度範囲中には、ラチェットに対する操作レバーの少なくとも1つの接触位置における角度が含まれ、ラチェットに相対的な操作レバーの回転は、接触位置において妨げられる。
【0032】
操作レバーとラチェットとの間の接触位置は、ラチェットに相対的な、操作レバーの回転のあらかじめ定められた角度間隔の少なくとも一方の端にあることが好ましい。これにより、操作レバーは、ラチェットを、基部に相対的な初期回転をさせることなく、与えられた全角度間隔にわたって、ラチェットに対して相対的に回転可能である。操作レバーが、前述したラチェットとの接触位置に達すると、操作レバーのさらなる回転によって、ラチェットを操作レバーとともに回転させる。
【0033】
装置1の基部と相対的にラチェットを回転させるために、操作レバーを、ラチェットとの接触位置に来る前に、ラチェットと相対的に回転させなければならないので、ストラップからの、ラチェット望ましくない離脱が発生する可能性を著しく減少させることができる。
【0034】
実際、ラチェットを持ち上げて、ストラップからの脱係合位置に変位させるためには、操作レバーを、前述したラチェットとの接触位置とさせなければならない。
【0035】
さらに、前述のように、この装置は、ラチェットを、少なくとも1つの、ストラップとの係合位置に可逆的に保つために、ラチェットと基部との間に配置されている第1の弾性手段を備えている。この第1の弾性手段は、ラチェットを、ストラップとの係合位置に保つような付勢力を加えており、かつストラップとの係合位置から、ストラップからの脱係合位置への、基部と相対的な、ラチェットの回転運動を抑制することができる、少なくとも1つのばねを有している。
【0036】
さらに、前述したように、操作レバーの回転の角度間隔において、ラチェットに相対的な、操作レバーの回転を抑制するための第2の弾性手段が設けられており、この第2の弾性手段は、操作レバーを、ラチェットとの接触位置とは一致しない、少なくとも1つの基準位置に保たせるように構成されており、予付勢力を付与しているばねを有している。
【0037】
本発明の一態様によれば、基部に相対的な、ラチェットの回転運動を抑制するために必要なばねに付与されている予付勢力は、ラチェットと相対的な、操作レバーの回転運動を抑制するために必要なばねに付与されている最大付勢力よりも大きい。
【0038】
言い換えると、基部に相対的な、ラチェットの回転運動を抑制するようになっているばねの弾性応答特性と、ラチェットに相対的な、操作レバーの回転運動を抑制するようになっているばねの弾性応答特性とは異なっている。詳細には、基部と相対的な、ラチェットの回転運動を抑制するためのばねに付与されている付勢力は、ラチェットと相対的な、操作レバーの回転運動を抑制するためのばねにおける付勢力よりも大きい。
【0039】
このようにして、ラチェットを、操作レバーとラチェットとの間の接触位置に達するまで、基部と相対的に回転させることなく、操作レバーを、ラチェットと相対的に回転させることができる。
【0040】
このような構成のために、ユーザは、装置からストラップを離脱させるために、ストラップの係留を解こうとするときには、操作レバーをラチェットと相対的に回転させるような力を、操作レバーに加える。
【0041】
ラチェットに作用しているばねの予付勢力の方が、より大きいから、操作レバーのラチェットと相対的な回転中に、ラチェットは、装置の基部に対して相対的には回転せず、ストラップとの係合位置に保たれる。
【0042】
操作レバーが、ラチェットとの接触位置に達した後でしか、ラチェットは、操作レバーに接触しない。ラチェットは、操作レバーに接触した後、ストラップとの係合位置から離れて、基部と相対的に回転し、したがって、係留装置から、ストラップを自由に引き抜くことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ストラップを留めている状態の、本発明による係留装置の斜視図である。
【図2】本発明による係留装置の基部の斜視図である。
【図3】図1の装置の縦断側面図である。
【図4】操作レバーがラチェットとの接触位置にあるときの、本発明による係留装置の縦断側面図である。
【図5】ラチェットがストラップからの脱係合位置にあるときの、本発明による係留装置の縦断側面図である。
【図6】本発明による係留装置の分解斜視図である。
【図7】ヘルメットのシェルへの拘束を可能にする、ストラップのリボン状部分に連結された状態の、本発明による係留装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
純粋に非限定的な例を示す、添付図面を参照して、本発明のいくつかの好適な実施形態について説明する。
【0045】
ユーザの頭部に安全ヘルメットを固定するために、安全ヘルメットに用いられているストラップ10を留めて調整するための係留装置1の好適な一実施形態について説明する。
【0046】
公知のように、例えばオートバイおよび自動車の分野において用いられる安全ヘルメットは、一般に、通常、ポリカーボネートまたは他の熱可塑性樹脂、または複合材料から成る外側シェルを備えている。外側シェルの内側には、転倒の際に、より一般的には、地面や物体などとの衝突の際に、ユーザの頭部を保護することができる緩衝材料層[例えばEPS(発泡スチロール)から成る]が挿入されている。
【0047】
保護ライナーとも呼ばれる緩衝材料層の内側には、一般に、ユーザの頭部と保護層、したがって緩衝材料とが直接に接しないようにするための、キャップまたは内張りとも呼ばれる「コンフォート(快適)」ライナーがある。
【0048】
図1の斜視図に示されているように、ストラップ10を調整して留めるための、本発明による係留装置1は、ストラップ10の少なくとも一部分を挿入しうるようになっている基部2、および基部2に回転可能に拘束されており、ストラップ10の、対応する少なくとも1つの鋸歯状部分11と噛み合うようになっている結合部(歯4.1および凹み4.2が形成されている部分)を有する少なくとも1つのラチェット3を備えている。
【0049】
図7に示すように、この係留装置1は、顎ストラップを留めて調整するために、好ましく用いられるものである。この顎ストラップは、一般に、ヘルメットの側部に拘束されており、また任意選択にヘルメットの後ろ下部にも拘束されている2つのリボン状部分50および51を備える2つの部分から成っており、これらの2つの部分は、係留装置1によって連結されて、相互に留め合わされる。係留装置1によって相互に留め合わされる、ストラップの2つの部分は、さまざまなユーザへの適応を可能にするために、長さの調整ができるようになっている。係留装置1は、通常、ストラップのうちのリボン状を呈している部分の一端に取付けられている。
【0050】
図1、図3〜図6には、ストラップ10におけるリボン状部分51に拘束されている部分(以下、係合ブロックとも言う)しか示されていないことに注意されたい。この係合ブロックは、係留装置1によって留められて調整され、係留装置1の内部に挿入されて、ラチェット3の結合部に接するように、すなわち歯4.1および凹み4.2と噛み合うように作られている。図7は、さらに、顎ストラップの第2のリボン状部分50が、本発明による係合装置1の基部2に拘束されていることを示している。
【0051】
実際、ストラップ10は、ラチェット3の対応する結合部との係合位置をとって、係合装置1の内部に留められるようになっている鋸歯状部分11を備えている。
【0052】
ストラップ10は、さらに、例えば適切なブラケット52によって、係合ブロックをリボン状部分51に、したがってヘルメットに拘束させる手段を備えている。リボン状部分51は、ブラケット52の内部に挿入されており、ブラケット52は、ストラップ10の係合ブロックに形成されている孔12に嵌め込まれたリベット(または他の同様の公知の手段)を介して、ストラップ10の係合ブロックに連結されている。
【0053】
リボン状部分51は、接続プレート53に形成されている孔に嵌め込まれたリベット、および任意選択にタブ54に形成されている孔に嵌め込まれたリベットなどの公知の手段を介して、ヘルメットのシェルに拘束されている。
【0054】
当然ながら、係留装置1に挿入される、ストラップ10の係合ブロックと、顎ストラップの一部分とを連結することができる、当技術分野において公知である他の構成とすることが可能である。
【0055】
図2および図6の実施形態のように、基部2は、例えばヘルメットに拘束されている顎ストラップの他端を介して、係留装置1をヘルメットに拘束させるために、その下面2.3に開口2.1を有している。詳細には、開口2.1は、図7に示すように、ストラップのリボン状部分50を、係留装置1の基部2へ固定しうるようになっている。リボン状部分50は、係留装置1の内部に挿入されるようになっている鋸歯状部分11が連結されている、ストラップのリボン状部分51が拘束されている側と反対側の、ヘルメットのシェルの側面に接続されている接続プレート53に設けられている孔に嵌め込まれたリベット、および任意選択的にタブ54に形成されている孔に嵌め込まれたリベットなどの公知の手段を介して、ヘルメットのシェルに固定されている。
【0056】
当然ながら、係留装置1の基部2と顎ストラップの一部分とを連結することができる、当技術分野において公知である他の形態とすることも可能である。
【0057】
用語「ラチェット3の結合部」とは、係留装置1内にストラップを挿入して、この係留装置1の内部において、ストラップを、少なくとも1つの、ラチェット3との係合位置に留めることができ、同時に、ラチェット3が、少なくとも1つの、ストラップ10からの脱係合位置に変位しないようにして、係留装置1からのストラップの離脱を防止することができる任意の手段を意味しているものである。
【0058】
図面に示されている実施形態においては、ラチェット3の結合部は、ストラップの、少なくとも1つの歯を有する鋸歯状部分11と係合するようになっている鋸歯状部分を備えている。
【0059】
ここで、用語「ストラップの鋸歯状部分」とは、ラチェットの鋸歯状の面に形成されている少なくとも1つの凹み、および/または少なくとも1つの歯とそれぞれ噛み合って、係合位置に達するようになっている少なくとも1つの突き出た歯、および/または少なくとも1つの凹みを備える、ストラップの少なくとも一部分を意味するものである。
【0060】
より詳細には、ラチェット3は、ストラップ10の鋸歯状部分11の少なくとも1つの凹み11.2、および/または少なくとも1つの歯11.1と、それぞれ噛み合うようになっている少なくとも1つの歯4.1、および/または少なくとも1つの凹み4.2を有する結合部を備えている。したがって、ラチェット3は、ストラップ10の鋸歯状部分11と係合して、鋸歯状部分11が離脱しないようにすることができる。
【0061】
各図面に示されている実施形態においては、ラチェット3は、その下部に、中間に1つの凹み4.2が形成された2つの歯4.1を有する鋸歯状部分を備えている。
【0062】
それに対して、ストラップ10の鋸歯状部分11は、凹み11.2によって互いに分離された2つ以上の歯11.1を備えている。
【0063】
本明細書においては、ラチェットの結合部が、ストラップ10の対応する鋸歯状部分11と噛み合うようになっている鋸歯状部分を備えている実施形態について特定的に言及するが、ラチェットの結合部との係合位置に導くことによって、ストラップを留めることができる別の手段を採用することも可能である。
【0064】
例えばストラップ10の、ラチェット3と組み合っている部分(鋸歯状部分11に相当する部分)の係留が解かれることを防止し、それによって、その部分が係留装置1から離脱しないようにするために、ストラップ10のその部分を圧迫して、その部分が係留装置1の基部の内部で滑ることを防止するように、ラチェット3の結合部を構成することができる。
【0065】
ラチェットがストラップとの係合位置にある、図3の縦断断面図に示されているように、ラチェット3の鋸歯状の結合部の歯4.1は、ストラップ10の鋸歯状部分11との係合位置、より詳細には、ストラップ10の歯11.1の間の空間である凹み11.2の内部に部分的に挿入されている。
【0066】
他方において、ストラップ10の鋸歯状部分11の歯11.1の1つは、ラチェット3の結合部の2つの歯4.1の間に設けられている凹み4.2の内部に、少なくとも部分的に挿入されている。
【0067】
各図面に示されているように、ラチェット3の鋸歯状の結合部、およびストラップ10の鋸歯状部分11にそれぞれ属する歯4.1および11.1の各々は、「鋸歯」を形成する傾斜面および垂直面を有している。
【0068】
各図面において、係留装置1内へのストラップの挿入中、ストラップを滑り易くするために、特許文献1に開示されているように、ラチェット3の結合部、およびストラップ10の鋸歯状部分11のそれぞれの歯4.1および11.1は、鋭い縁を有しておらず、かなり湾曲した輪郭を有していることに注意されたい。
【0069】
ストラップ10を、係留装置1の基部2内に挿入すると、ラチェット3の歯4.1の傾斜面と、ストラップ10の歯11.1の傾斜面とが接するようになり、ストラップ10の歯11.1の傾斜面は、ラチェット3の歯4.1の傾斜面上で滑ることができる。係留装置1の基部2からのストラップ10の離脱は、その向きでは、ラチェット3の歯4.1の垂直面と、ストラップ10の歯11.1の垂直面とが接するようになるために、防止されることとなる。
【0070】
したがって、ラチェットの鋸歯状の結合部と、ストラップ10の鋸歯状部分11との係合位置が、鋸歯状部分11に形成されている歯、および/または凹みの数だけ定まるから、本発明による係留装置1によると、ストラップの長さのきめ細かい調整(すなわち微調整)が可能となっている。
【0071】
特に、当然ながら、ピッチなどの、歯の幾何学的な断面を、構造上の要件にしたがって変更することができること、およびこれらの特性の変更を通じて、ストラップとラチェットとの間の結合の強さ、および係留装置1の抗張力、すなわち、係留装置1からのストラップの引き抜き耐性を調整することができることに留意されたい。
【0072】
ラチェット3は、少なくとも1つの、ストラップ10との係合位置、および少なくとも1つの、ストラップ10からの脱係合位置に達することができるように、係留装置1の基部2に回転可能に支持されている。各図面に示されている実施形態によれば、ラチェット3は、適切な形状のラチェット3の胴体を貫通しているピボット30を中心として、係留装置1の基部2上で回動することができる。ピボット30は、リベット(図示せず)によって、係留装置1の基部2の両側壁2.2上の向かい合った位置に1つずつ設けられた孔31および32を介して、基部2に拘束されている。ピボット30によって、ラチェット3は、基部2に回転可能に拘束されている。言い換えると、ラチェット3は、係留装置1の基部2と相対的に、ピボット30によって構成される回転軸のまわりに回転可能である。図5に、よりよく示されているように、ピボット30は、ラチェット3の胴体に形成されている孔3.2内を貫通している。
【0073】
さらに係留装置1は、ラチェット3と基部2との間に、ラチェット3を、少なくとも1つの、ストラップ10との係合位置(図3の側面断面図に示されている)に可逆的に復帰させるための第1の弾性手段20を備えている。
【0074】
第1の弾性手段20は、さらに、係留装置1の基部2と相対的な、ラチェット3の回転運動を抑制する機能を遂行し、特に、ストラップ10との係合位置から、ストラップ10からの脱係合位置(図5の側面断面図に示されている)への、ラチェット3の変位運動に抗する。
【0075】
本発明の好適な一実施形態によれば、係留装置1の第1の弾性手段20は、ラチェット3を、ストラップ10との係合位置に保つように、さらに、ラチェット3がストラップとの係合位置から、ストラップからの脱係合位置へ変位する、基部2に相対的なラチェット3の回転運動を抑制するような付勢力が付与された少なくとも1つのばねを有している。
【0076】
本発明による係留装置1は、さらに、第1の弾性手段20(具体的には、基部2と相対的なラチェット3の回転運動を抑制するばね)の抗力に打ち勝って、ラチェット3を、ストラップ10との係合位置から、少なくとも1つの、ストラップ10からの脱係合位置へ可逆的に回転させるための操作レバー5を備えている。
【0077】
操作レバー5は、少なくとも1つの与えられた角度間隔だけ回転するように、ラチェット3に拘束されている。
【0078】
各図面に示されている実施形態において、図3〜図5の断面図、および図6の組立分解図に示されているように、操作レバー5は、操作レバー5の円形の座部5.2内を貫通しており、かつナーリング(ギザギザ模様)による滑り止めによって、ラチェット3に形成された特殊な座部3.3に拘束されているピボット33を中心として、ラチェット3上で回動することができる。
【0079】
操作レバー5の回転は、ある角度間隔内で可能である。この角度間隔の間に、操作レバー5とラチェット3とは、互いに接触して、ラチェット3に相対的な操作レバー5の回転が妨げられる、少なくとも1つの接触位置を占める。
【0080】
図4の断面図に示されているように、操作レバー5とラチェット3との間の接触位置は、ラチェット3に相対的な、操作レバー5の回転のあらかじめ定められた角度間隔の少なくとも一方の端の角度において生じることが好ましい。
【0081】
各図面に示されている実施形態においては、操作レバー5とラチェット3との接触位置で、操作レバー5の上面5.1は、ラチェット3の内部横断面3.1に接触する。操作レバー5の上面5.1が、ラチェット3の内部横断面3.1に接触すると、ラチェット3に相対的な、操作レバー5のさらなる回転は妨げられ、したがって、接触位置が、ラチェット3に相対的な、操作レバー5の回転の角度間隔の一方の端の角度に対応することは明白である。
【0082】
当然ながら、上述と違うやり方で、操作レバー5とラチェット3との接触位置を定めることが可能である。もちろん、この接触位置においては、ラチェット3と相対的な、操作レバー5の回転が可能になってはいけないということに留意する必要がある。
【0083】
本発明の特定の一態様によれば、係留装置1は、さらに、(自由)回転の角度間隔中に、ラチェット3に相対的な、操作レバー5の回転を抑制するための、ばねを有する第2の弾性手段21を備えている。このばねは、ラチェット3に相対的な、操作レバー5の回転を抑制するように構成され、装着されている。
【0084】
第2の弾性手段21のばねは、変形していない状態において、操作レバー5を、ラチェット3との接触位置と一致しない、少なくとも1つの基準位置に保つようになっていることが好ましい。第2の弾性手段21のばねが予付勢力を及ぼしている、操作レバー5の基準位置が図3に示されている。この基準位置において、操作レバーは、係留装置1の基部2から突き出ないように低下した位置にある。
【0085】
各図面に示されている実施形態において、特に、図3と図4とによって、操作レバー5の回転の角度間隔は、ラチェット3と操作レバー5との接触位置と、操作レバー5の基準位置(操作レバー5が低下している)との間の、操作レバー5のなす角度間隔であることは明白である。基準位置から、ラチェットとの接触位置までの、ラチェット3に相対的な、操作レバー5の回転のこの角度間隔は、60°〜90°の範囲にあることが好ましい。この角度間隔は約85°であることが、さらに好ましい。
【0086】
接触位置に達した後、ユーザによってなされる操作レバー5のさらなる回転は、係留装置1の基部2に相対的な、ラチェット3と一体の回転となる。
【0087】
基部2に相対的な、ラチェット3の回転によって、ラチェット3は、ストラップ10との係合位置(図3に示されている)から、ストラップ10からの脱係合位置(図5に示されている)に移る。この脱係合位置においては、ラチェット3の結合部と、ストラップ10の対応する鋸歯状部分11とは接しておらず、したがって、ストラップ10を、装置1から、矢印Oの向きに自由に引き抜くことができる。
【0088】
係留装置1の基部2に相対的な、ラチェット3の回転運動を抑制する第1の弾性手段20は、ラチェット3に相対的な、操作レバー5の回転運動を抑制する第2の弾性手段21より、回転に対して、より強い抵抗を及ぼす。
【0089】
詳細には、基部2に相対的な、ラチェット3の回転運動を抑制するために必要な、第1の弾性手段20のばねの予付勢力は、ラチェットに相対的な、操作レバー5の回転運動を抑制するために必要な、第2の弾性手段21のばねの最大付勢力より大きい。
【0090】
言い換えると、基部2に相対的な、ラチェット3の回転運動、およびラチェット3に相対的な、操作レバー5の回転運動をそれぞれ抑制するようになっている、第1の弾性手段20および第2の弾性手段21のばねの弾性応答特性は、互いに異なる。具体的には、基部2に相対的な、ラチェット3の回転運動を抑制するために、第1の弾性手段20のばねに与えられている付勢力は、ラチェット3に相対的な、操作レバー5の回転運動を抑制するために、第2の弾性手段21のばねに与えられている付勢力よりも強い。
【0091】
従って、操作レバー5とラチェット3との間の接触位置に達するまで、基部2に相対的な、ラチェット3の回転を防止しながら、操作レバー5を、ラチェット3に相対的に回転させることができる。
【0092】
従って、操作レバー5を、ラチェット3から独立に、操作レバー5のピボット33のまわりに回転するように操作し終わって、操作レバー5とラチェット3との間の接触位置に達してからでなければ、ラチェット3のピボット30のまわりの、係留装置1の基部2と相対的な、操作レバー5とラチェット3との一体回転によって、ストラップ10からの脱係合を起こすことができないから、係留装置1の望ましくない偶発的な動作を防止することができる。
【0093】
本発明による係留装置1の基部2は、さらに、基部2と相対的な、ラチェット3の回転を制限するための対抗手段6を備えている。図2の斜視図で示されている実施形態においては、対抗手段6は、基部2の側壁2.2から内側に突き出た突出部を有している。
【0094】
対抗手段6の突出部の根元は、ラチェット3の外側面に形成されている、対応する座部内に収容されている。
【0095】
ストラップ10が、装置1の基部2内に挿入されていないときには、ラチェット3の回転に対する対抗手段6は、ラチェット3、したがってラチェット3に拘束されている操作レバー5が、基部2の下面2.3と接触するまで、第1の弾性手段20のばねの作用によって回転することを防止する。
【0096】
さらに、図5に示すように、装置1からストラップ10を引き抜こうとするとき、および操作レバー5とのラチェット3の接触後に、ストラップ10からの脱係合位置に向かって、ラチェット3を持ち上がるときに、対抗手段6は、ラチェット3の過度の回転を防止することができる。
【0097】
ラチェット3の過度の回転によって、第1の弾性手段20のばねに圧力が印加されて、ばねが押しつぶされる場合があり、および/またはその結果、故障する場合があるから、ラチェット3の過度の回転は防止しなければならない。
【0098】
好適な一実施形態によれば、ストラップとの係合位置から、ストラップからの脱係合位置までの、基部2に相対的な、ラチェット3の回転の角度間隔は、5°〜15°の範囲にある。この角度間隔は、約11°であることが好ましい。
【0099】
当然ながら、ラチェット3に相対的な、操作レバー5の回転の角度間隔、および装置1の基部2に相対的な、ラチェット3の回転の角度間隔は、ストラップの意図的および偶発的な脱係合のし易さ、およびストラップの係留中に得られる抗張力の大きさなどの、装置1の技術・機能特性に影響を与えるから、これらの角度間隔は、上述の値と異なる値を有している場合がある。
【0100】
一般的に言って、係留装置1の構造およびサイズは、係留装置1の単純かつ効果的な手動操作を可能にするための人間工学的な要件を満たすように定められる。
【0101】
ここで、ストラップ10を留めて調整するための装置の上述の実施形態を参照しながら、安全ヘルメットの顎ストラップを留めて調整するための、本発明による装置を使用する際の手順について説明する。
【0102】
現在の法規は、ユーザが、特にオートバイのための安全ヘルメットを装着するときに、顎ストラップを留めて、顎ストラップが、ユーザの喉頸に、またはいかなる場合にも、ユーザの顔の、顎より下方の部分に十分に密着するように、その長さを調整しなければならないことを定めている。
【0103】
図3に、矢印Iによって示されているように、ストラップ10が、係留装置1の基部2内に挿入されて、ラチェット3の結合部が、ストラップ10の鋸歯状部分11との係合位置に至る。
【0104】
詳細には、各図面に示されている実施形態において、特に、ラチェットが、ストラップ10との係合位置にあることを示している図3の側面断面図において、ラチェット3の鋸歯状の結合部は、ストラップ10の対応する鋸歯状部分11と噛み合っている。
【0105】
上述したように、ラチェット3の鋸歯状の結合部、およびストラップ10の鋸歯状部分11の構造によって、図5に示すように、ラチェットが少なくとも1つの、ストラップ10からの脱係合位置に達するまで持ち上げられることがない限り、係留装置1の基部からの、ストラップ10の引き抜きが防止される。
【0106】
ラチェット3とストラップ10との両方に、鋸歯状の部分が存在することによって、ユーザは、顎ストラップの長さをきめ細かく調整することができるということに注意されたい。実際、係留装置1の基部内へのストラップの挿入によって、ラチェットを、ストラップとのさまざまな係合位置に配置することができ、長さの「高精細な」調整が可能になる。
【0107】
ラチェット3を、ピボット30のまわりで、基部2と相対的に一時的に回転させることによって、係留装置1の基部2内にストラップ10を挿入することができること、およびラチェット3を、ストラップ10の鋸歯状部分11の各歯と順次に噛み合わせることができることは明白である。
【0108】
言い換えると、ストラップの挿入中、ラチェット3は、ラチェット3を、ストラップ10と噛み合っている、低い位置に保持するように付勢している第1の弾性手段20のばねの作用に打ち勝つ力によって、一時的に持ち上げられている。
【0109】
この操作によって、操作レバー5とラチェット3との間の相対的な回転を伴わずに、操作レバー5が駆動される。
【0110】
係留装置1の基部内への、ストラップの漸進的な挿入によって、ストラップの長さを調整すると、図3に示すように、ラチェット3の結合部は、ストラップ10の鋸歯状部分11との係合位置をとる。ストラップの引き抜きは、この係合位置においては、ラチェットによって、より特定的には、ストラップ10およびラチェット3の歯の幾何学的な構造によって防止され、ラチェット3が、ストラップ10からの脱係合位置に達するまで持ち上げられた後でしか生じることはない。
【0111】
さらに、操作レバー5が、ラチェットに直接拘束されているため、この係合位置において、係合装置1は、非常にコンパクトとなることに留意されたい。さらに、操作レバー5は、操作レバー5を、低下した位置(図3に示されている)に保つように付勢して、操作レバーの偶発的な動きを防止している第2の弾性手段21のばねの作用により、基準位置に保たれることに注意されたい。
【0112】
さらに、係留装置1の基部2は、基部2内への、ストラップ10の鋸歯状部分11の挿入を容易にするように、適切な形状に形成されていることに注意されたい。具体的には、係留装置1の基部2は、側壁2.2の下方に、横断面で見て、係留装置1の基部2内への(又はからの)、ストラップ10の挿入/引き抜きを容易にするための一種のガイドを形成している幅広部分を有している。
【0113】
さらに、基部2、ラチェット3、および操作レバー5の全ての縁、より一般的には、本発明の係留装置1の全ての部品の全ての縁は、ユーザと、特にユーザの衣服と偶発的に絡むことを防止するために面取りされている。
【0114】
ユーザは、ストラップ10の係留を解いて、それを係留装置1から外そうとするときに、操作レバー5が拘束されているラチェット3と相対的に、ピボット33のまわりに操作レバー5を回転させるような力を、手動で操作レバー5に加える。ユーザは、操作レバー5を基準位置に保つように付勢している第2の弾性手段21のばねの予付勢力に打ち勝つ。操作レバー5は、図4に示すように、ラチェット3との接触位置に達するまで回転する。
【0115】
この接触位置においては、操作レバー5の上面5.1が、ラチェット3の内部横断面3.1と接触しているから、操作レバー5の回転は妨げられる。
【0116】
操作レバー5の下部には、係留装置1をストラップから外している間に、したがって操作レバー5を回転させている間に、ユーザの指が滑らないように、ユーザが指でしっかりと握ることができる隆起した部分、および/または楔状部材などが適切に設けられていることに留意されたい。
【0117】
さらに、図6に示すように、ラチェット3(一般にアルミニウムで作られている)は、その前部に、係留装置1の基部2内へのラチェット3の組み込みを容易にするための2つの側面ノッチ3.4を有している。これらの側面ノッチ3.4がなければ、基部2の内側側面に対抗手段6が存在する場合には、ラチェット3の組み込みが複雑になる。
【0118】
既に説明したように、ラチェット3と基部2との間に配置されている第1の弾性手段20のばねの予付勢力(ラチェット3を動かすためには、これ以上の力が必要である)が、ラチェット3に相対的な、操作レバー5の回転運動を抑制するための第2の弾性手段21のばねの最大付勢力より大きいから、接触位置に達するまでは、ユーザによってなされる、ラチェット3に相対的な、操作レバー5の回転によって、係留装置1の基部2に相対的な、ラチェット3の回転が生じることはない。
【0119】
言い換えると、第1および第2の弾性手段20および21のばねの弾性特性は、基部2と相対的な、ラチェット3の回転運動を抑制するための第1の弾性手段20のばねの付勢力が、ラチェット3と相対的な、操作レバー5の回転運動を抑制するための第2の弾性手段21のばねの付勢力より大きくなるように定められる。
【0120】
したがって、操作レバー5とラチェット3との間の接触位置(図4に示されている)に達した後でなければ、ユーザは、操作レバー5に対して回転力を印加し続けながら、さらに、係留装置1の基部2と相対的に、ピボット30のまわりに、ラチェット3の回転を起こすことはできず、したがって、ラチェット3を、ストラップ10との係合位置(図3に示されている)から、ストラップ10からの脱係合位置(図5に示されている)へ変位させることはできない。
【0121】
この脱係合位置においては、ラチェット3の結合部が、もはや、ストラップ10の対応する鋸歯状部分11と噛み合っていないから、係留装置1から、図5の矢印Oの向きに、ストラップを自由に引き抜くことができることは明らかである。
【0122】
ストラップ10を外すためには、操作レバー5とラチェット3との接触位置に達することが必要であるため、ストラップを留めるための、本発明の装置の安全性は、非常に改善されている。実際、ラチェット3が偶発的に回転し、そのために、ストラップ10から外れる可能性は極めて低い。
【符号の説明】
【0123】
1 係留装置
2 基部
2.1 開口
2.2 側壁
2.3 下面
3 ラチェット
3.1 内部横断面
3.2 孔
3.3、5.2 座部
3.4 側面ノッチ
4.1 歯
4.2 凹み
5 操作レバー
5.1 上面
6 対抗手段
10 ストラップ
11 鋸歯状部分
11.1 歯
11.2 凹み
12 孔
20 第1の弾性手段
21 第2の弾性手段
30 ピボット
31、32 孔
33 ピボット
50、51 リボン状部分(係合ブロック)
52 ブラケット
53 接続プレート
54 タブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安全ヘルメットのストラップ(10)の少なくとも一部分を挿入しうるように構成されている少なくとも1つの基部(2)と、前記基部に回転可能に拘束されており、かつ前記ストラップの対応する少なくとも一部分(11)と係合しうるようになっている少なくとも1つの結合部を有している、少なくとも1つのラチェット(3)と、前記ラチェットを、少なくとも1つの、前記ストラップとの係合位置に可逆的に保つために、前記ラチェットと前記基部(2)との間に配置されている第1の弾性手段(20)とを備えている、安全ヘルメットのストラップ(10)を留めて調整するための係留装置(1)であって、前記第1の弾性手段(20)の抵抗力に打ち勝って、可逆的に、前記少なくとも1つのラチェット(3)を、前記少なくとも1つの、前記ストラップ(10)との係合位置から、少なくとも1つの、前記ストラップからの脱係合位置に回転させるための、少なくとも1つの操作レバー(5)をさらに備えている装置において、前記操作レバー(5)は、少なくとも1つの与えられた角度間隔で回転することが可能であるように、前記ラチェット(3)に拘束されていることを特徴とする係留装置。
【請求項2】
前記ラチェット(3)に相対的な、前記操作レバー(5)の回転の前記角度間隔中には、前記ラチェット(3)との、前記操作レバー(5)の少なくとも1つの接触位置における角度が含まれ、前記ラチェットに相対的な、前記操作レバーの回転は、前記接触位置において妨げられている、請求項1に記載の係留装置。
【請求項3】
前記操作レバー(5)と前記ラチェット(3)との間の前記少なくとも1つの接触位置は、前記ラチェットと相対的な、前記操作レバーの回転の前記あらかじめ定められた角度間隔の少なくとも一方の端の角度において定められていることを特徴とする、請求項2に記載の係留装置。
【請求項4】
前記ラチェット(3)は、前記ラチェットに相対的な、前記操作レバーの回転の前記角度間隔中の、前記接触位置における角度において、前記操作レバー(5)の少なくとも上面(5.1)と係合する、少なくとも1つの内部横断面(3.1)を有している、請求項1〜3のいずれか1つに記載の係留装置。
【請求項5】
前記第1の弾性手段(20)は、前記ラチェット(3)を、前記ストラップ(10)との前記係合位置に保つような予付勢力を付与された少なくとも1つのばねを有しており、前記少なくとも1つの、前記ストラップとの係合位置から、前記少なくとも1つの、前記ストラップからの脱係合位置への、前記基部(2)と相対的な、前記ラチェット(3)の回転は、前記ばねによって抑制されている、請求項1に記載の係留装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの角度間隔において、前記ラチェット(3)に相対的な、前記操作レバー(5)の回転を抑制するための第2の弾性手段(21)を備えていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1つに記載の係留装置。
【請求項7】
前記ラチェット(3)に相対的な、前記操作レバー(5)の回転を抑制するための前記第2の弾性手段(21)は、少なくとも1つのばねを有している、請求項6に記載の係留装置。
【請求項8】
前記ラチェット(3)に相対的な、前記操作レバー(5)の回転を抑制するための、前記少なくとも1つのばね(21)は、変形していない状態において、前記操作レバーを、前記ラチェットとの前記接触位置に一致しない、少なくとも1つの基準位置に保つようになっている、請求項7に記載の係留装置。
【請求項9】
前記基部(2)に相対的な、前記ラチェット(3)の回転運動を抑制するための、前記少なくとも1つのばね(20)の弾性特性と、前記ラチェット(3)に相対的な、前記操作レバー(5)の回転運動を抑制するための、前記少なくとも1つのばね(21)の弾性特性とは互いに異なり、前記基部(2)に相対的な、前記ラチェット(3)の回転運動を抑制するための、前記少なくとも1つのばね(20)に付与されている付勢力は、前記ラチェット(3)に相対的な、前記操作レバー(5)の回転運動を抑制するための、前記少なくとも1つのばね(21)に付与されている付勢力より大きい、請求項7に記載の係留装置。
【請求項10】
前記基部(2)に相対的な、前記ラチェット(3)の回転を制限するための対抗手段(6)を備えていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1つに記載の係留装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの基準位置から、前記少なくとも1つの、前記ラチェットとの接触位置までの、前記ラチェット(3)に相対的な、前記操作レバー(5)の回転の前記角度間隔は、60°〜90°の範囲にある、請求項8に記載の係留装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの、前記ストラップ(10)との係合位置から、前記少なくとも1つの、前記ストラップ(10)からの脱係合位置までの、前記基部(2)と相対的な、前記少なくとも1つのラチェット(3)の回転の角度間隔は、5°〜15°の範囲にある、請求項1に記載の係留装置。
【請求項13】
前記ラチェット(3)の前記少なくとも1つの結合部は、鋸歯状の部分であること、および前記ストラップ(10)は、前記ラチェットの前記鋸歯状の結合部と噛み合うように適合化されている、少なくとも1つの鋸歯状の部分(11)を有していることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1つに記載の係留装置。
【請求項14】
前記ラチェットの前記少なくとも1つの鋸歯状の部分(4)は、前記ストラップ(10)の前記少なくとも1つの鋸歯状の部分(11)に形成されている、対応する少なくとも1つの凹み(11.2)および/または対応する少なくとも1つの歯(11.1)と噛み合うように適合化された少なくとも1つの歯(4.1)、および/または少なくとも1つの凹み(4.2)を有している、請求項13に記載の係留装置。
【請求項15】
前記ラチェット(3)および前記ストラップ(10)の鋸歯状の部分の前記少なくとも1つの歯(4.1、11.1)、および/または前記少なくとも1つの凹み(4.2、11.2)は、前記ラチェットが、前記少なくとも1つの、前記ストラップとの係合位置にあるときに、前記基部からの前記ストラップの引き抜きを防止するように構成されている、請求項14に記載の係留装置。
【請求項16】
前記ストラップは、顎ストラップであることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1つに記載の係留装置。
【請求項17】
少なくとも1つの顎ストラップと、該少なくとも1つの顎ストラップを留めて調整するための、少なくとも1つの、請求項1〜16のいずれか1つに記載の係留装置(1)とを備えている安全ヘルメット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−36159(P2013−36159A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−170885(P2012−170885)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(502336829)ノラングループ ソチエタ ペル アツィオーニ (7)
【Fターム(参考)】