説明

安全具及びこれを係着する手摺

【課題】支柱の存在に関わらず簡単に昇降することができ、作業者の階段からの転落を防止することができる、製作容易な、安全具及びこれを係着する手摺を提供する。
【解決手段】作業者が着用している安全帯に取り付け、作業者の転落等を防ぐ安全具及び安全具を係着する手摺であって、手摺100は、軸方向にスリット部114が設けられた管状部材110である手摺枠部101と、手摺枠部を適切な高さで支持する支持部材105とから成り、安全具10は、手摺枠部の管状部材の中空部分に挿入され、移動可能に取り付けられる係着部材11と、係着部材の一端側に取り付けられたロープ状部材15と、ロープ状部材の他端側に取り付けられ、安全帯に掛止する掛止部材13とから成り、係着部材を、手摺枠部内に移動可能に取り付けることにより、手摺に安全帯を繋いだ状態を保ちつつ、作業者が移動できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段の昇降時等に使用する安全具に係り、特に加工処理を施した手摺等と作業者が着用している安全帯とを繋ぎ、作業者の階段からの転落等を防止する、安全具及びこれを係着する手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、階段、窓、ベランダなどには手摺が設けられている。これらの手摺にはその設置目的によって、手で掴んで身体等を支えるための補助手摺としての機能を有するものと、外側への墜落を防止するための墜落防止柵としての機能を有するものに分類される。
階段に設置される手摺は、階段の昇降の補助し、下方への転落を防ぐ補助手摺としての機能を有し、さらに階段の踏み板の縁に沿って、支柱により設置される手摺には、階段外側への墜落を防ぐための墜落防止柵としての機能も併せ持っている。
【0003】
建築物の階段の寸法については、建築基準法施行令に規定があり、建物の用途等によって異なる。通常は、安全で手摺を掴まることなく昇降可能なように、蹴上げの高さ、踏み面の大きさ等が規定されているので、手摺は、主に高齢者や脚に障害のある人等に使用されている。
ところが、特殊な用途に使用される専用階段等については、前述のような規定の適用外である。例えば、設備の点検作業等に用いられる、原油タンク側面の廻り階段等は比較的急勾配である。手摺は、支柱によって踏み板のタンク反対側の端部に沿って設けられおり、これらは、補助手摺としての機能と墜落防止柵としての機能を有している。
それでも、原油タンクの階段等は外階段であり、強風時には煽られてバランスを崩したり、雨が降ると滑って階段から転落してしまうことがある。また、場合によっては、手摺の柵の上から、階段外下方に墜落してしまう場合もある。
【0004】
このような事故を防ぐためには、安全帯を着用し、命綱のロープ部の先端のフック等を手摺に掛着することが望ましい。しかし、手摺は、複数の支柱によって取り付けられているので、支柱の設置箇所でフックが引っ掛かってしまう。そのため、支柱設置箇所でフックを外して再度掛け直す必要がある。また、支柱は墜落防止柵としての機能も有するので、狭い間隔で、例えば一段ごとに取り付けられている。よって、タンクが大きい場合には、階段下部からタンク上部、又はタンク上部から階段下部に移動する間に、数十回以上掛け直さなければならない。作業者にとって負担であり、作業自体にも支障をきたすため、実際には使用されていない。つまり、墜落防止等の措置が取られておらず、何かあった際には身体を手で支える以外にないのが現状である。
また、手摺が支柱ではなく、壁に支持部材によって取り付けられている場合においても、昇降の際には、支持部材の設置箇所でフックが引っ掛かってしまうので、各設置場所で、フックを外して再度掛け直す必要があり、手間がかかってしまう。
【0005】
階段の昇降を補助する装置としては、例えば、特許文献1の特開平10−179663号「階段昇降補助装置」などが提案されている。この階段昇降補助装置は、階段に沿って傾斜して設置された手摺状のガイドレールと、このガイドレールにガイドされて摺動可能なスライダー部と、その側面に取付けられるハンドル部と、スライダー部が階段上昇方向に摺動するときにフリーに動き、スライダー部が階段下降方向に摺動するときにはロック又は抵抗を与える一方向運動規制手段を備え、リハビリテーション動作をも兼ねて安全に階段を昇降することを補助できる階段昇降補助装置である。手摺に装着して安全に階段を昇降することを補助するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−179663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、「階段昇降補助装置」は、リハビリテーション動作をも兼ねて階段の昇降を補助するものであるので、設備の点検等の作業者が使用するには、必要以上に昇降動作を制限してしまうというという問題があった。
また、前述のスライダー部の構成が複雑であるので、製作が困難であり、経済的でなかった。そして、何らかの原因によってハンドル部を放してしまうと、補助手摺としての機能を発揮し得ないという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するために提案されたものである。すなわち本発明の目的は、 支柱の存在に関わらず簡単に昇降することができ、作業者の階段からの転落を防止することができる、製作容易な、安全具及びこれを係着する手摺を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様の安全具及び該安全具を係着する手摺は、作業者が着用している安全帯に取り付け、作業者の転落や墜落を防ぐ安全具及び該安全具を係着する手摺であって、前記手摺(100,200,300)は、軸方向にスリット部(114)が設けられた管状部材(110)である手摺枠部(101,201,202,301)と、該手摺枠部を適切な高さで支持する支持部材(105)とから成り、前記安全具(10,10x,20,30)は、前記手摺枠部の管状部材の中空部分(112)に挿入され、移動可能に取り付けられる係着部材(11,12,21,31)と、該係着部材の一端側に取り付けられたロープ状部材(15)と、該ロープ状部材の他端側に取り付けられ、前記安全帯に掛止する掛止部材(13)とから成り、前記係着部材を、前記手摺枠部内に移動可能に取り付けることにより、前記手摺に安全帯を繋いだ状態を保ちつつ、作業者が移動できるように構成したことを特徴とする。また、前記スリット部(114)は、下側部分(114b)に下向きに切欠部(116,316)が設けられてもよい。
【0010】
本発明の第2の態様の安全具及び該安全具を係着する手摺は、切欠部(116,316)が設けられている第1の態様において、前記スリット部(114)の空間に、該スリット部と略平行に係止棒(218,218x)を配設したことを特徴とする。また、前記手摺(200)は、前記係止棒(218,218x)と前記ロープ状部材(15)とを、該係止棒に沿って移動可能に保持する移動留め具(219)をさらに備えてもよい。
【0011】
本発明の第3の態様の安全具及び該安全具を係着する手摺は、第1の態様において、前記ロープ状部材(15)の断面が略円状であり、前記切欠部(316)の開口部分(316a)における管状部材(110)間の垂線の長さが、ロープ状部材の断面直径と略同じであることを特徴とする。また、前記切欠部(316)は、スリット部(114)の上側部分(114a)にさらに設けてもよい。
【0012】
前記安全具(10x)は、前記係着部材(12)の表面に複数の回転体(16)がさらに配設され、該回転体が回転することによって、前記係着部材が前記管状部材(110)の中空部分(112)を移動するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
第1の態様の安全具及びこの安全具を係着する手摺によれば、安全具(10,10x,20,30)によって、作業者が着用している安全帯と手摺(100,200,300)とを簡単に繋ぐことができ、作業者が墜落するのを防ぐことができる。
また、作業者は、階段を上る前に安全具(10,10x,20,30)の取り付け作業を行うだけでよく、支柱等の存在に関わらず移動することができる。取り付け・取り外しも楽にできるので、時間を取られることなく行うことができ、作業者の負担が軽い。さらに、既存の手摺を手摺(100,200,300)の構成に加工することも、既存の手摺の支柱上部階段側に手摺枠部(101,201,202,301)を設けることも可能である。これらの安全具(10,10x,20,30)及びこれを係着する手摺(100,200,300)は簡単な構造であるので、製作容易であり経済的である。
さらに、スリット部(114)の下側部分(114b)に切欠部(116,316)を設けることによって、作業者が階段から転落することを防止することが可能である。
【0014】
第2の態様の安全具及びこの安全具を係着する手摺によれば、スリット部(114)の空間に係止棒(218,218x)を配設するので、作業者は安全具(20)を取り付ける際に掛止部材(13)を通す位置に注意を払うだけで、管状部材(110)のスリット部(114)におけるロープ状部材(15)の位置を気にすることなく、階段を移動することができる。
【0015】
さらに、移動留め具(219)を備えた構成とすれば、転倒した際に、ロープ状部材(15)が移動留め具(219)から容易に外れるので、作業者に掛かる衝撃をより少なくすることができる。
【0016】
第3の態様の安全具及びこの安全具を係着する手摺によれば、切欠部(316)の開口部分(316a)における管状部材(110)間の垂線の長さが、ロープ状部材(15)の断面の直径と略同じである。よって、階段昇降時にロープ状部材(15)が切欠部(316)に落ち込むことを防ぐことができる。また、スリットの上側部分(114a)にも切欠部(316)を設ければ、手摺(300)の上方から階段外側へ作業者が墜落してしまうことを防ぐことができる。
【0017】
安全具の係着部材(12)の表面に複数の回転体(16)を配設した構成とすれば、管状部材(110)の内壁面に接する面積が小さくなるので、摩擦を減らすことができ、係着部材(12)をよりスムーズに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の安全具及びこの安全具を係着する手摺の使用時の状態を示した概略正面図である。
【図2】実施例1の安全具及びこの安全具を係着する手摺を示した図であり、(a)は安全具の説明斜視図、(b)は階段側から見た手摺の正面図である。
【図3】実施例1の手摺枠部の細部を示した説明図であり、(a)は図2(b)の破線円部分の拡大図、(b)は図2(b)のA−A部における拡大断面図、(c)は切欠部の説明斜視図、(d)は手摺枠部の右側面図及び左側面図である。
【図4】作業者が階段を昇降する際の、管状部材と、安全具の係着部材及びロープ状部材との関係を示した概略図であり、(a)は管状部材の上側半分を取り除いた状態を示す説明平面図、(b)は(a)のB−B部における説明断面図である。
【図5】作業者が階段で転倒等した際の、管状部材と、安全具の係着部材及びロープ状部材との関係を示した概略図であり、(a)は管状部材の上側半分を取り除いた状態を示す説明平面図、(b)は(a)のC−C部における説明断面図である。
【図6】実施例1の安全具の変形例についての概略図であり、(a)は安全具の斜視図、(b)は作業者が昇降中の安全具と管状部材との関係を示す説明断面図、(c)は作業者が転倒し係止された際の安全具と管状部材との関係を示す説明断面図である。
【図7】実施例2の安全具及びこの安全具を係着する手摺を示した図であり、(a)は安全具の説明斜視図、(b)は階段側から見た手摺の正面図である。
【図8】実施例2の手摺枠部の細部を示した説明図であり、(a)は図7(b)の破線円部分の拡大図、(b)は図7(b)のD−D部における拡大断面図、(c)は係止棒の説明斜視図、(d)は手摺枠部の右側面図及び左側面図である。
【図9】管状部材と、安全具の係着部材及びロープ状部材との関係を示した概略図であり、(a)は作業者が階段を上る際の状態を示す断面図及び平面図、(b)は作業者が階段を下りる際の状態を示す断面図及び平面図、(c)転倒等した際に作業者の転落を防止する状態を示す断面図及び平面図である。
【図10】実施例2の手摺枠部の変形例を示した図であり、(a)は管状部材を階段側から見た正面図、(b)は移動留め具の正面図及び側面図、(c)は階段を下りる際の移動留め具の使用状態を示した説明斜視図である。
【図11】実施例3の安全具及びこの安全具を係着する手摺を示した図であり、(a)は安全具の説明斜視図、(b)は階段側から見た手摺の正面図である。
【図12】実施例3の手摺枠部の細部を示した説明図であり、(a)は図11(b)の破線円部分の拡大図、(b)は切欠部の説明斜視図である。
【図13】作業者が階段を昇降する際の手摺枠部と安全具との関係を示した説明図であり、(a)はロープ状部材が切欠部以外の箇所を通過している状態を示す説明斜視図であり、(b)はロープ状部材が切欠部の開口部分上を通過している状態を示す説明平面図である。
【図14】作業者が階段を上がる際に転倒等した場合の、スリットの下側部分と安全具の係着部材及びロープ状部材との関係を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の安全具及びこれを係着する手摺の好ましい実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は実施例1の安全具10及びこの安全具10を係着する手摺100の使用時の状態を示した概略正面図である。
【0021】
図1に示すように、安全具10は、一端を作業者が身につけている安全帯1に取り付け、他端を階段の手摺100に係着して使用するものである。
安全帯1は、一般高所作業用の胴ベルト型安全帯であって、命綱としてのロープ部1aと、作業者の胴部分に取り付け、転落時などに人体を保持するベルト1bと、ロープ部1aを支持物等に掛止めるフック部1cとからなる。なお、安全帯1は、作業者の転落や墜落を防止するための物であれば、このようなベルト型に限られない。
安全具10は、係着部材11とロープ状部材15と掛止部材13とからなる。安全具10の掛止部材13を安全帯1のフック部1cに取り付け、係着部材11を後述する手摺100の手摺枠部101に移動可能に取り付けることによって、作業者と手摺100とを繋ぎ、移動する作業者の安全を確保する。
【0022】
図2は実施例1の安全具10及びこの安全具10を係着する手摺100を示した図であり、(a)は安全具10の説明斜視図、(b)は階段側から見た手摺100の正面図である。
図2(a)に示すように、安全具10は、手摺枠部101の管状部材110内に挿入される係着部材11と、安全帯1のフック部1cに掛止するための掛止部材13と、これらを繋ぐロープ状部材15とからなる。
【0023】
係着部材11は、略球状の本体部11aと、本体部11aの球面に設けられた保持部11bとからなる。本体部11aの表面は加工され、滑らかである。保持部11bは舌状形状の部材であり、その基部は本体部11aに固着されている。また、保持部11bの略中央部分にはロープ状部材15を取り付けるための取付孔Xが設けられている。
係着部材11は、安全具10の掛止部材13が引っ張られたときに、ロープ状部材15が弛まず、かつ作業者の負担とならない重量を有する。
【0024】
掛止部材13は、金属製のリング状の部材であり、ロープ状部材15の一端側が取り付けられている。また、この掛止部材13には、前述したように安全帯1のフック部1cが着脱可能に掛け止められる。
ロープ状部材15の他端側は、係着部材11の保持部11bの取付孔Xに取り付けられている。このロープ状部材15は、断面が略円形であり、階段から転落した時などに、作業者の体重及び作業者が装備している工具等の荷重が掛かっても耐え得る強度を有する素材からなる。さらに、ロープ状部材15は、係着部材11及び掛止部材13の取付部分に前述した体重及び荷重が掛かっても、外れることのないように取り付けられている。
【0025】
手摺100は、図2(b)に示すように、身体を支えたり、階段の昇降を補助する際に手で保持される手摺枠部101と、手摺枠部101を適切な高さで階段の傾斜に沿って支持し、手摺枠部101の下方から階段外側への墜落を防ぐために、略等間隔に柵状に設けられた複数の支持部材105とからなる。
手摺枠部101は、細長いスリット部114を設けた略円柱状の管状部材110である。スリット部114は、管状部材110の階段側の側壁の一部を、管状部材110の中心軸方向と平行に直線状に切り欠いて設けたものであり、後述するように安全具10のロープ状部材15がこのスリット部114を通過する。手摺枠部101の下端部110a及び上端部110bは、管状部材110を鉛直方向に切断したような形状となっている。
【0026】
図3は実施例1の手摺枠部101の細部を示した説明図であり、(a)は図2(b)の破線円部分の拡大図、(b)は図2(b)のA−A部における拡大断面図、(c)は切欠部116の説明斜視図、(d)は手摺枠部101の右側面図及び左側面図である。
図3(a)に示すように、スリット部114の鉛直方向上側部分114aは略直線状であるが、下側部分114bには、開口部分116aを有する、正面視略レ字状の切欠部116が形成されている。切欠部116の正面視右端部は、スリットの下側部分114bとなだらかにつながるように形成されている。切欠部116の鉛直方向下側の底面部分116bの縁は、正面視で階段の踏板と平行である。また、切欠部116は、図2(b)に示すように踏板の略中央部に立設された支持部材105間の、略中央部分に位置するように複数設けられている。
【0027】
手摺枠部101の管状部材110の断面(図2(b)のA−A部)は、図3(b)に示すように略C字形状であり、略円形の中空部分112を有する。管状部材110の中心軸に平行に切り欠かれたスリット部114は、断面視略ドーナツ形状の階段側側面のやや上側に設けられている。スリットの上側部分114a及び下側部分114bの内壁側及び外壁側は曲面、中央部分は略直線状であり、ロープ状部材15を傷つけることのないように形成されている。また、ロープ状部材15との摩擦係数が少なくなるように、研磨加工がなされている。
【0028】
図3(c)は、切欠部116の説明斜視図である。
切欠部116は、スリットの下側部分114bを、前述のように鉛直方向下側に略レ字形状に切り欠くように設けられている。切欠部116の四角形状の底面部分116bは、内壁側の辺及び外壁側の辺が階段の踏面と平行であり、なだらかな斜面となっている。具体的には、内壁側の辺よりも外壁側の辺の位置が鉛直方向の下側となるように形成されている。
【0029】
図3(d)は、手摺枠部101の左側面図(下端部110a)及び右側面図(上端側110b)を示す。手摺枠部101の下端部110a及び上端部110bは、管状部材110を鉛直方向に切断するように形成され、側面視で略楕円形状をしている。手摺枠部101は前述のような管状部材110であるので、それぞれの中空部分112も楕円形状となっている。
手摺枠部101の下端部110aにおいては、中空部分112の上部側は安全具10の係着部材11を出し入れするために略円形の出入孔112aとして使用され、下部側は係着部材11が中空部分112から落下しないように受け部112xが形成されている。一方、上端側110bについては、中空部分112をそのまま出入孔112bとして使用するので、受け部112xは設けていない。
【0030】
次に各構成部材の大きさ等の関係について説明する。
図3(b)に示すように、係着部材11の本体部11aの球の直径rは、手摺枠部101の中心軸方向と垂直な断面の内周円の直径よりも小さく、中空部分112を容易に移動することができる。また、係着部材11自体にどのような力が掛かっても、スリット部114や切欠部116に嵌まったり、スリット部114や切欠部116から抜け落ちたりすることのない大きさとなっている。
スリットの下側部分114bに設けられた切欠部116の底面部分116bの、管状部材110の中心軸方向の長さは、ロープ状部材15の中心軸方向に垂直な断面の直径と略同じ長さである。
【0031】
実施例1の安全具10及びこの安全具10を係着する手摺100の使用方法について、以下説明する。
まず、作業者は、着用している安全帯1のフック部1cを、安全具10の一端側にある掛止部材13に取り付ける。そして、階段を上がる際には、安全具10の他端側にある係着部材11を前述した手摺枠部101の下端部110aの出入孔112aから管状部材110の中空部分112に挿入する。前述したように下端部110aには受け部112xが形成されているので、安全具10から手を離しても係着部材11が管状部材110から落下することはない(図3(d)参照)。また、階段を下りる際には、係着部材11を前述した手摺枠部101の上端部110bの出入孔112bに挿入する。係着部材11は、自重により、管状部材110の中空部分112の下の方に降りていく。このような準備をすることにより、安全具10を介して、作業者の身体が手摺枠部101に繋げられた状態となる。
【0032】
係着部材11を出入孔112a又は出入孔112bに挿入した後、作業者は、安全具10のロープ状部材15をスリット部114に通し、手摺枠部101に沿って階段を移動する。
図4は、作業者が階段を昇降する際の、管状部材110と、安全具10の係着部材11及びロープ状部材15との関係を示した概略図であり、(a)は管状部材110の上側半分を取り除いた状態を示す説明平面図、(b)は(a)のB−B部における説明断面図である。なお、図面の上方向が階段上部側である。
安全具10は図1に示すように、作業者が階段を上がる際、作業者の移動に伴い、着用している安全帯1のフック部1cが、掛止部材13を介してロープ状部材15及び係着部材11を引っ張る。よって、図4(a)及び(b)に示すように、作業者の移動に伴い、ロープ状部材15はスリットの上側部分114aに接した状態で移動する。さらに、係着部材11はロープ状部材15に引っ張られて、管状部材110の内壁面底部を滑るように移動する。
階段を下りる際にも係着部材11は、自重により作業者よりも前方(下方)の管状部材110の中空部分112を、管状部材110の内壁に球面下側を滑らせながら、先に降りていく。よって、作業者が係着部材11の後からついていくようになる。つまり階段を上るときも下りるときも、安全具10の係着部材11及びロープ状部材15は、管状部材110に対して、略同様の位置関係(図4参照)で移動する。
【0033】
なお、作業者は、昇降する際、ロープ状部材15の係着部材11bに取り付けられた一端部分が、図4に示すように上側部分114aに軽く擦るような位置か、又は、手摺枠部101のスリットの下側部分114bに触れないような位置にくるようにして移動する。具体的には、ロープ状部材15又は安全帯1のロープ部1aの長さ、階段を上がる位置(手摺枠101部分からの距離)等を調節する。このようにすることで、ロープ状部材15が、スリットの下側部分114bに設けられた切欠部116に引っ掛かり、作業者の移動を妨げることを防ぐことができる。
【0034】
図5は、作業者が階段で転倒等した際の、管状部材110と、安全具10の係着部材11及びロープ状部材15との関係を示した概略図であり、(a)は管状部材110の上側半分を取り除いた状態を示す説明平面図、(b)は(a)のC−C部における説明断面図である。なお、図面の上方向が階段上部側である。
作業者が階段を昇降している際に転倒すると、作業者の腰の位置が下がるので、安全帯1に装着されている安全具10は鉛直方向下方に引っ張られる。そのため、ロープ状部材15によって斜め上方に引っ張られていた略球状の係着部材11は、図5(a)に示すように、保持部11bが管状部材110の内壁面に近づくように回転する(矢印の方向)。また、ロープ状部材15はスリットの下側部分114bを鉛直方向下方に押さえ付けるように階段の下方に移動する。スリットの下側部分114bには、前述したように切欠部116が設けられている。よって、ロープ状部材15の係着部材11側の一端部分及び係着部材11の保持部11bは、切欠部116の開口部分116aから底面部分116bに落ち込むように移動し、図5(a)及び(b)に示すように、係着部材11の本体部11aが抜け止めとなって、切欠部116で係止される。これにより、作業者の階段からの転落を防ぐことができる。
【0035】
作業者は階段を上がりきったら、又は下りきったら、ロープ状部材15を手等で引っ張って、管状部材110の出入孔112b、又は出入孔112aから、係着部材11を取り出す。そして安全帯10のフック部1cから掛止部材13を取り外す。このようにして、作業者は安全を確保しつつ、階段を昇降することができる。
【0036】
実施例1においては、階段を昇降する際に切欠部116にロープ状部材15が引っ掛かることがないようにする必要がある。安全具10をこのように保つには、以下のような構造とすることが望ましい。
係着部材11の半径は、管状部材110の内周底面から切欠部116の開口部分116aまでの鉛直方向における高さs(図4(b)参照)よりも大きいことが望ましい。ロープ状部材15の係着部材11側の一端部分及び係着部材11の保持部11bが切欠部116の開口部分116aに接触するのを防ぐためである。また、係着部材11の重心の位置は、図4(b)に示す状態の係着部材11の本体部11aの鉛直方向下側の管状部材110と接している部分にあることが望ましい。ロープ状部材15がスリットの上側部分114aと接するような姿勢を保って移動させることができるからである。また、本体部11aが転がりながらではなく、滑るように移動させることで、ロープ状部材15や安全帯1のロープ部1aが捻れてしまうのも防ぐことができる。
【0037】
切欠部116は、図2(b)に示すように踏板の略中央部に立設された支持部材105間の、略中央部分に位置するように設けられている。作業者が転倒しロープ状部材15が切欠部116に係止されたときに、作業者の体重等が一つの支持部材105のみに掛かるのを防ぐためである。また、階段を昇降する際に、一段上がるごとに膝をまっすぐ伸ばす作業者である場合には、作業者の腰の位置、すなわち安全帯1は、略水平方向と略鉛直方向に交互に波打つように移動する。具体的には、図1に示したように、前の足に体重を乗せかけている体勢の前後では略水平方向に動く。そして、作業者が体重を乗せた前の足を伸ばして階段を一段上がるときには略鉛直方向に動く。このことを考慮して、本実施例では、略鉛直方向に動くとき、すなわちロープ状部材15が上方に引っ張られるときに、切欠部116の開口部116aの上方を通るように切欠部116の位置を設けてある。このようにすれば、ロープ状部材15が切欠部116の開口部116aに触れるのを防ぐことができる。
【0038】
本実施例では、スリット部114は、断面視略ドーナツ形状の階段側側面のやや上側に設けられている。作業者の昇降のみを考慮するならばスリット部114の位置は、係着部材11が抜けない程度により上側に大きくすることが望ましい。しかし、手摺枠部101を作業者が掴んで昇降することを考慮し、さらに前述のような安全具10の係着部材11及びロープ状部材15と、管状部材110との位置関係を確保した形状としてある。
また、前述した切欠部116の底面部分116bの斜面形状は、係止されたロープ状部材15が底面部分116bの外壁側の辺で切断されてしまうのを防ぐと共に、作業者と支持部材105との衝突を緩和するためである。
【0039】
安全具10や手摺100の形状や各部の大きさ等は、実施例1の構成に限られない。例えば、実施例1の係着部材11の形状は略球状であるが、雫状や、楕球形状であっても良い。球状よりも表面がなだらかであるので、内壁面に凹凸があった場合でもスムーズに移動することができる。
また、実施例1の掛止部材13の形状はリング状であるが、安全帯1に掛け止めることができれば良く、例えば、フック状等であってもよい。
手摺100も直線状だけでなく、螺旋階段に設けられたものでも良く、壁に取り付けられた支持部材105を使用しているものでも良い。また、踊り場等があり、屈曲している箇所を有する手摺100であれば屈曲部分前後で、係着部材11を出し入れ可能にしたり、屈曲部を通過できるような大きさの係着部材11を使用しても良い。また、屈曲部を通過できるのであれば、踊り場の水平な手摺100については、切欠部116を設けていないスリット部114とすれば、作業者は係着部材11を出し入れせずに済み、スムーズに移動することができる。
【0040】
ロープ状部材15については、係着部材11側の一端側の、スリットの上側部分114aに接する部分に、金属製のカバー等の保護パーツを取り付け、摩耗して切れてしまうことを防ぐようにしても良い。また、保護パーツに、転倒時の衝撃を緩和する緩衝材の役目を持たせても良い。また、この保護パーツは係着部材11の保持部11bも覆うようにしても良い。
さらに、係着部材11の移動による、ロープ状部材15又は係着部材11の保持部11bの捻れを前述のように重心の位置で調節するのではなく、保持部11bとロープ状部材15とを回転環を介して接続してもよい。
【0041】
実施例1の安全具10及びこの安全具10を係着する手摺100によれば、安全具10によって、作業者が着用している安全帯1と手摺100とを簡単に繋ぐことができ、作業者が階段から転落することを防止することが可能である。つまり、作業者が足を滑らせてしまった際等には、安全具10の係着部材11が、手摺枠部101の管状部材110に係合され、ロープ状部材15等が切欠部116に係止されることによって、作業者の転落を確実に防ぐことができる。
作業者は、階段を上る前に安全具10の取り付け作業を行うだけでよい。そして、係着部材11は管状部材110の中空部分112を移動するので、支柱の存在に関わらず移動することができる。前述したように取り付け・取り外しも楽にできるので、時間を取られることなく行うことができ、作業者の負担が軽い。さらに、既存の手摺を手摺100の構成に加工することも、既存の手摺の支柱上部階段側に手摺枠部101を設けることも可能である。これらの安全具10及びこれを係着する手摺100は簡単な構造であるので、製作容易であり経済的である。
【0042】
実施例1の安全具10の変形例である安全具10xについて、以下、図面を参照して説明する。安全具10が管状部材110の中空部分112を滑るように動くのに対して、安全具10xは、転がる部材を有するものである。
図6は、実施例1の安全具10の変形例(安全具10x)についての概略図であり、(a)は安全具10xの斜視図、(b)は作業者が昇降中の安全具10xと管状部材110との関係を示す説明断面図、(c)は作業者が転倒し係止された際の安全具10xと管状部材110との関係を示す説明断面図である。なお、安全具10や管状部材110と同じ構成については図1〜5と同じ符号を付してある。
【0043】
図6(a)に示すように、安全具10xの係着部材12は略半円柱状の本体部12aと、本体部分12aの平面部分に設けられた、ロープ状部材15の一端部を保持する保持部12bとからなる。ロープ状部材15と掛止部材13については安全具10と同様であるので説明を省略する。
本体部12aの略半円状の左側面及び右側面は、図6(a)に示すように、平面部分側を少しすぼめたような形状となっている。本体部12aの平面部分と外周壁とが接する部分は、凹状となっており、柱状の緩衝部14が取り付けられている。作業者が転倒し、管状部材110の内壁に当接したときに、衝撃を和らげると共に、転落速度を緩めるために、摩擦係数の大きい素材でできている。また、本体部12aの外周壁には、本体部12aの平面部分と平行な平面上にくるように、4つの球状の回転体16が取り付けられている。これらの回転体16は、その4つの中心点が略矩形の各頂点上にくるように配設されている。また、回転体16は、図6(b)に示すように、その一部が本体部12aから突出し、本体部12aに保持された状態を保ちつつ自由に回転する。
【0044】
図6(b)に示すように、作業者の移動時には、回転体16が管状部材110の内壁面上を回転することで、回転体16に支えられている本体部12aが移動する。安全具10xは、本体部12aがロープ部材15に引っ張られたときに管状部材110の内壁底部から浮くことがないような重量を有する。係着部材12の大きさはスリット部114等から抜けることのない大きさであることは安全具10と同様である。
作業者の転倒時には、ロープ状部材15が引っ張られ、本体部12aは時計回りに回転し、緩衝部14が管状部材110の内壁に押しつけられるようにして移動する。そして、図6(c)に示すように、スリットの下側部分114bの切欠部116の位置で、保持部12bに保持されたロープ状部材15の一端側が、管状部材110の切欠部116の底面部分116bに落ち込み、係着部材12の移動を妨げる。このようにして、作業者の転落を防ぐことができる。
【0045】
変形例である安全具10xの形状や各部の大きさ等も、本実施例の構成に限られない。安全具10が管状部材110の内壁面を滑らせるのに対して、回転体を使用することが安全具10xの特徴である。そして、例えば、手摺枠部101の管状部材110の形状が四角柱状であれば、係着部材12の形状もそれに合わせて四角柱状とすることができる。本実施例では、ロープ状部材15を本体部12aの平面部分に中心軸方向と垂直になるように取り付けたが、ロープ状部材15を掛止部材13に引っ張られる方向に沿って設けても良い。また、緩衝部14の形状、回転体16の位置や数等もこれに限られない。
【0046】
安全具10xによれば、本体部12aの平面部分(保持部12b)の位置が、スリットの下側部分114bよりも高い位置にあるので、ロープ状部材15の本体部12a側一端が、管状部材110のスリット部114の空間を移動するように安定して保持される。よって、ロープ状部材15が切欠部116に引っ掛かることを防ぐことができる。回転体16が管状部材110の中心軸方向にのみ回転するようにすれば、係着部材12の動きはさらに安定する。よって、作業者はロープ状部材15と管状部材110との関係を注意することなく、階段の昇降が可能である。また回転体16を使用することによって、摩擦を少なくして動き易くすることができる。
【実施例2】
【0047】
実施例2の安全具20及びこの安全具20を係着する手摺200は、スリット部114に係止棒218が配設される点、使用方法等が異なるが、各部材の形状等は実施例1とほとんど変わらない。以下、実施例1と異なる部分を説明し、実施例1と同じ構成や部材については、同じ符号を付す。
【0048】
図7は、実施例2の安全具20及びこの安全具20を係着する手摺200を示した図であり、(a)は安全具20の説明斜視図、(b)は階段側から見た手摺200の正面図である。
図7(a)に示すように、安全具20は安全具10に比べて、係着部材21が小さい。係着部材21が管状部材110の中空部分112を移動する際に、後述する係止棒218に接触しない程度の大きさとなっている。また、実施例2においては、後述するようにロープ状部材15がスリットの下側部分114bに接して移動してもよい。よって、係着部材21の半径は、管状部材110の内周底面から切欠部116の開口部分116aまでの鉛直方向における高さs(図4(b)参照)よりも小さくてもかまわない(図8(b)参照)。
手摺枠部201は、図7(b)に示すように、細長いスリット部114を設けた略円柱状の管状部材110に、係止棒218を取り付けたものである。係止棒218は、スリットの上側部分114aと下側部分114bとの、鉛直方向略中央の位置には配設される。
【0049】
図8は実施例2の手摺枠部201の細部を示した説明図であり、(a)は図7(b)の破線円部分の拡大図、(b)は図7(b)のD−D部における拡大断面図、(c)は係止棒218の説明斜視図、(d)は手摺枠部201の右側面図及び左側面図である。
図8(a)、(b)、(c)に示すように、係止棒218は、スリットの上側部分114aの略鉛直方向下方に位置しており、手摺枠部201の外周壁よりも管状部材110の中心軸よりに配設されている。中心側に設けることによって、作業者が手摺枠部201を掴んだとき、係止棒218には余分な力が掛からないように構成してある。また、係止棒218の表面は摩擦係数が小さくなるように研磨されている。
【0050】
係止棒218は係着部材21及びロープ状部材15の重量が掛かっても、切断されたり、撓んだりしない強度を有する素材からなる。また、作業者が転落した際等に、ロープ状部材15又は係着部材21の保持部21b等によって作業者の体重等が掛かると、その箇所が容易に切断されたり、伸びたりするような構造又は素材で構成されている。例えば、ロープ状部材15等により一定の力が掛かると。その部分が切断されるような弾性素材等や細い木製の係止棒218であれば、その下側部分114bの、切欠部116に対向する位置にV字状の切り込みを入れて折れやすくしても良い(図示せず)。なお、その際に部材の一部等が落下することのないような構造又は素材とする。
【0051】
実施例2においては、後述するように、階段を上る場合と降りる場合とで、ロープ状部材15が移動する場所が異なる。図8(b)に示すように、作業者が階段を上るときには係止棒218とスリットの下側部分114bとの間(空間a)に、作業者が階段を下るときにはスリットの上側部分114aと係止棒218との間(空間b)に、ロープ状部材15を通過させる。これらの間隔は、それぞれロープ状部材15が容易に移動できる長さとなっている。
【0052】
図7(b)、図8(d)に示すように、棒状素材からなる係止棒218の両端には、略鋭角三角形状の平板の連結部218aが、対向するように設けられている。そして、連結部218aの基部はスリットの上側部分114aの各側面(下端側110a及び上端側110b)において係止具等により固定されている。また、管状部材110の両端の、連結部218aの基部が固定される部分は、連結部218aの厚さと略同じ幅、管状部材110の中心部方向に切り欠かれ、突出しないように配設されている。
【0053】
実施例2の安全具20及びこの安全具20を係着する手摺200の使用方法を、階段を上がる場合と下りる場合について、以下説明する。なお、取り外し段階については、実施例1と同様であるので省略する。
図9は、管状部材110と、安全具20の係着部材21及びロープ状部材15との関係を示した概略図であり、(a)は作業者が階段を上る際の状態を示す断面図及び平面図、(b)は作業者が階段を下りる際の状態を示す断面図及び平面図、(c)転倒等した際に作業者の転落を防止する状態を示す断面図及び平面図である。なお、図面の上方向が階段上部側である。
まず、階段を上がる場合について説明する。
作業者は、掛止部材13を係止棒218とスリットの下側部分114bとの間(図8(b)に示した空間a)に通した後に、着用している安全帯1のフック部1cに掛止める。係止棒218は連結部218aによって管状部材110に取り付けられているからである。そして、係着部材21を手摺枠部201の管状部材110の下端部110aの出入孔112aから管状部材110の中空部分112に挿入する。このような準備をすることにより、安全具10を介して、作業者の身体が手摺枠部201に繋げられた状態となる。
【0054】
係着部材21を出入孔112aに挿入したら、作業者は、階段の手摺枠部201に沿って階段を上がっていく。作業者が移動するのに伴い、着用している安全帯1のフック部1cが、掛止部材13を介してロープ状部材15及び係着部材21を引っ張る。よって作業者が移動するのに伴い、図9(a)に示すように、ロープ状部材15はスリットの下側部分114b及び切欠部116(図8(b)に示した空間b)を滑るように移動する。さらに、係着部材21はロープ状部材15に引っ張られて、管状部材110の内壁面底部を滑るように移動する。なお、切欠部116の正面視右側部分は図8(c)に示すようになだらかな斜面となっているので、ロープ状部材15が切欠部116の底面部分116bに落ち込んでも、ロープ状部材15は切欠部116に引っ掛かることなく作業者はスムーズに移動することができる。
【0055】
作業者が階段を上がっているときに転倒すると、ロープ状部材15の係着部材21側の一端部分及び係着部材21の保持部21bは、底面部分116bで係止される。詳細については、実施例1の場合と同様なので省略する。
【0056】
次に、階段を下りる場合について説明する。
作業者は、まず掛止部材13を係止棒218とスリットの上側部分114aとの間(図8(b)に示した空間b)に通した後に、着用している安全帯1のフック部1cに掛止める。係止棒218は連結部218aによって管状部材110に取り付けられているからである。そして、係着部材21を手摺枠部201の管状部材110の上端部110bの出入孔112bから管状部材110の中空部分112に挿入する。係着部材21は自重等によって、管状部材110の内側下方に入っていく。このような準備をすることにより、安全具10を介して、作業者の身体が手摺枠部201に繋げられた状態となる。
【0057】
係着部材21を出入孔112bに挿入したら、作業者は、階段の手摺枠部201に付近を下りていく。作業者が移動するのに伴い、係着部材21は、その自重等によりロープ状部材15を引っ張りながら管状部材110の中空部分112を下りていく。よって、図9(b)に示すように作業者が移動するのに伴い、ロープ状部材15は、図8(b)に示した空間bを係止棒218に沿って滑るように移動する。係止棒218の表面は摩擦係数が小さいので、ロープ状部材15が引っ掛かることなく作業者はスムーズに移動することができる。
【0058】
作業者が階段を下りているときに転倒した場合、作業者の腰の位置が下がるので、安全帯1に装着されている安全具10は鉛直方向下方に引っ張られる。そのため、まず係着部材21が、作業者が転倒した位置付近まで引っ張り上げられ、その直後ロープ状部材15が係止棒218に鉛直方向下方に押しつけられる。前述したように係止棒218は、ロープ状部材15等により、作業者の体重が掛かると容易に切断等される素材や構造となっている。よって、作業者が転倒すると係止棒218の切断部分からスリットの下側部分114bに落ち込み、前述した階段を上がるときに転倒した場合と同様の状況となる。
よって、図9(c)に示すように、ロープ状部材15等は、切欠部116の底面部分116bで係止される。これにより、作業者の階段からの転落を防ぐことができる。
【0059】
このように、実施例2に示した安全具20及びこの安全具20を係着する手摺200を使用すれば、係着時に掛止部材13を通す位置に注意を払うだけで、作業者はよりスムーズに移動することができ、階段からの転落事故からも守ることができる。具体的には、実施例1の場合と異なり、係止棒218が配設されているので、ロープ状部材15等がスリットの上側部分114aに接するような角度を保つよう、注意しながら移動する必要がない。すなわち、作業者の腰の高さ(掛止部材13が掛け止められる高さ)や、作業者が移動する際の手摺200との間隔等に関わらず、作業者は容易にかつ安全に階段の昇降をすることができる。
【0060】
次に、実施例2の手摺枠部201の変形例である手摺枠部202について、以下、図面を参照して説明する。手摺枠部202は、手摺枠部201と異なる方法で係止棒218xが形成されている。階段を下りる際に、この係止棒218xに後述する移動留め具219を取り付け、この移動留め具219を使ってロープ状部材15を移動させるものである。
図10は、手摺枠部202を示した図であり、(a)は管状部材110を階段側から見た正面図、(b)は移動留め具219の正面図及び側面図、(c)は階段を下りる際の移動留め具219の使用状態を示した説明斜視図である。なお、手摺枠部201と同じ部分については図7〜9と同じ符号が付してある。
【0061】
図10(a)に示すように、手摺枠部202は、手摺枠部201と異なり、管状部材110に、その中心軸方向と平行に、管状部材110にスリット部114x及びスリット部114yからなるスリット部114を設けて係止棒218xを形成する。よって、手摺枠部201と異なり、係止棒218に連結部218aを設ける必要がない。また、図示していないが、係止棒218xに強度を持たせるために係止棒218xの下端部分に返しを設けるように形成しても良い。管状部材110の中心軸方向に対する断面視で、中心軸方向に半円弧状の返しを設ければ、階段を上がる際のロープ状部材15の摩耗も防ぐこともできる。
【0062】
移動留め具219は、図10(b)に示すように、弾性素材からなる略楕円形状の線状部材であり、その両端部分は外側に反り返った形状で、開口部219xを形成する。移動留め具219は、係止棒218xに容易に掛止められ、またロープ状部材15を容易に着脱できる弾性力を有する。また、作業者が階段を昇降する際にはロープ状部材15が外れることがなく、作業者が転倒等して作業者の体重が掛かるとロープ状部材15のみが開口部219xから容易に外れる弾性力を有するものである。
【0063】
作業者は階段を下りる前に、移動留め具219をスリット部114xに平行に差し込み、図10(c)に示すように、開口部219xが下向きになるように、開口部219xを利用して係止棒218xに掛け止める。
さらに作業者は、係止棒218xの移動留め具219の開口部219x側に、開口部219xを利用して、安全具10のロープ状部材15を取り付ける(図示せず)。これにより、ロープ状部材15は移動留め具219と一緒に係止棒218xに沿って動くことが可能となる。
移動留め具219は、係止棒218x及びロープ状部材15を容易に取り付け・取り外しができ、ロープ状部材15を保持しつつ係止棒218xに沿って容易に移動ができるような大きさや太さにする。また、移動留め具219は上記効果を有するものであれば、線状部材等に限られない。
【0064】
実施例2の手摺枠部202を使用した場合の効果は、以下のようである。手摺枠部202は、手摺枠部201のように連結部218aを設ける必要がないので、係止棒218xを簡単に作成できる。また、前述のように強度を有する係止棒218xを形成することができる。さらに、弾性素材からなる移動留め具219を使用することで転倒した際に、ロープ状部材15が移動留め具219から容易に外れるので、作業者に掛かる衝撃をより少なくすることができる。なお、階段を下る時だけでなく、上がる時にも移動留め具29を利用しても良い。
【0065】
安全具20や手摺200の形状や各部の大きさ等が、本実施例の構成に限られないのは、実施例1と同様である。係止棒218,218xの位置、構造、素材、移動留め具219の構造、素材等も本実施例に限られない。例えば、図示しないが、移動留め具219は、開口部219xを楕円の長軸方向に二段に設け、係止棒218xに二重に掛け止めるような構造として、係止棒218xからより外れにくい構造としてもよい。係止棒218xとロープ状部材15が擦れるのも防ぐことができ、より移動が容易になる。
【実施例3】
【0066】
実施例3の安全具30及びこの安全具30を係着する手摺300は、実施例1と本体部31a及び切欠部316の形状等が異なるが、各部材の形状等は実施例1とほとんど変わらない。以下、実施例1と異なる部分を説明し、実施例1と同じ構成や部材については、同じ符号を付す。
【0067】
図11は、実施例3の安全具30及びこの安全具30を係着する手摺300を示した図であり、(a)は安全具30の説明斜視図、(b)は階段側から見た手摺300の正面図である。
図11(a)に示すように、係着部材31は、略球状の本体部31aと、本体部31aに設けられた、円形の凹部の縁に形成された環状の平面からなる緩衝部34と、円形の凹部底面に基部が固着された突起部31bとからなる。本体部31aの表面は滑らかに加工されているが、緩衝部34の表面は摩擦係数が大きくなるように作られている。突起部31b自体の形状は、実施例1の突起部11bと同様なので省略する。なお、突起部31bの先端部分は、本体部31aの緩衝部34を含む平面から突出することのない大きさとなっている。
実施例3の手摺300の手摺枠部301は、図11(b)に示すように、実施例1と同様、略円柱状の管状部材110には細長いスリット部114が設けてあるが、切欠部316の形状が異なっている。
【0068】
図12は実施例3の手摺枠部301の細部を示した説明図であり、(a)は図10(b)の破線円部分の拡大図、(b)は切欠部316の説明斜視図である。
図12(a)に示すように、スリットの下側部分114bには、鉛直方向に略I字状に、開口部分316aを有する切欠部316が形成されている。
手摺枠部301の断面は、図12(b)に示すように実施例1同様、略C字状である。管状部材110の中心軸に平行に切り欠かれたスリット部114は、断面視略円環形状の階段側側面やや上側に設けられている。スリット部114の上側部分114a及び下側部分114bの内壁側及び外壁側は、ロープ状部材15を傷つけることのないように曲面となっている。また、中央部分は略直線状であり、ロープ状部材15との摩擦係数が少なくなるように、研磨加工がなされている。
切欠部316の開口部分316aにおける管状部材110間の垂線の長さtは、ロープ状部材15の軸方向に垂直な断面の直径と略同じ大きさになっている。切欠部316の四角形状の底面部分316bは、実施例1と同様、内壁側の辺及び外壁側の辺が階段の踏面と平行であり、内壁側の辺よりも外壁側の辺の位置が鉛直方向の下側となるように形成され、なだらかな斜面となっている。
【0069】
実施例3の安全具30及びこの安全具30を係着する手摺300の使用方法については、実施例1と略同様であるので省略する。以下、管状部材110と安全具30の係着部材31及びロープ状部材15との関係について説明する。
図13は、作業者が階段を昇降する際の手摺枠部301と安全具30との関係を示した説明図であり、(a)はロープ状部材15が切欠部316以外の箇所を通過している状態を示す説明斜視図であり、(b)はロープ状部材15が切欠部316の開口部分316a上を通過している状態を示す説明平面図である。なお、図面の上方向が階段上部側である。
図13(a)に示すように、本実施例においても実施例1と同様、階段を上がる際にはロープ状部材15は手摺枠部301のスリットの上側部分114aに接するように引っ張られながら移動する。また、階段を下りる際、すなわち矢印Yで示したように下方に移動する場合でも、実施例1と同様、係着部材31は所望の重量を有するので、ロープ状部材15が弛まないようになっている。
【0070】
図13(b)は切欠部316の開口部分316aをロープ状部材15が通過する様子を示した説明平面図である。切欠部316の開口部分316aにおける管状部材110間の垂線の長さtは前述したようにロープ状部材15の軸方向に垂直な断面の直径と略同じ大きさである。そして、ロープ状部材15は切欠部316の開口部分316a上を斜めに通過し、ロープ状部材15はその軸方向の断面の直径よりも大きい幅でスリットの下側部分114b上を移動する。つまり、図13(b)に示すように、ロープ状部材15が開口部分316aを跨ぐように移動する。よって、作業者の腰の位置が低く、ロープ状部材15の掛止部材13の位置が少し下がり、スリットの下側部分114bに軽く接するように移動した場合でも、開口部分316aから切欠部316に落ち込むこともない。
【0071】
なお、切欠部316の開口部分316a上側に位置する外壁側部分(P)や開口部分316a下側に位置する内壁側部分(Q)が実際に位置より少し低くなるように形成すると、多少ロープ状部材15が弛むことがあっても、引っ掛かるのを防ぐことができる。また、本実施例では、切欠部316の開口部分316aを管状部材110の中心軸方向に垂直になるように設けたが、引っ張られているロープ状部材15の軸方向と垂直に設けると、ロープ状部材15が開口部分316a上をより跨ぎやすくなるので、スムーズに移動することが可能である。
【0072】
図14は、作業者が階段を上がる際に転倒等した場合の、スリットの下側部分114bと安全具30の係着部材31及びロープ状部材15との関係を示した概略図である。なお、図面の上方向が階段上部側である。
詳細は実施例1で説明したが、作業者の転倒により係着部材31は、図14に示すように、保持部31bが管状部材110の内壁面に近づくように回転しながら(矢印)移動する。そして、実施例1と同様にロープ状部材15は、切欠部316の開口部316aから底面部分316bに落ち込み、切欠部316の底面部分316bで係止される。本実施例の係着部材31においては摩擦係数の大きい緩衝部34が設けられている。安全具30の突起部31bが、本体部31aの緩衝部34を含む平面から突出することのないように配設されているので、管状部材110の内壁面に緩衝部34が押し付けられて、作業者の転落の速度を緩め、作業者の受ける衝撃を緩和することができる。また、緩衝部34に弾力性のある素材等を使えば、さらに衝撃を和らげることができる。
【0073】
安全具30や手摺300の形状や各部の大きさ等が、本実施例の構成に限られないのは、実施例1,2と同様である。また、図示しないが切欠部316は、その開口部分316aを塞ぐように、プラスチックなどの素材でできた舌状部材や蓋状部材を備えたものとしても良い。このようにすることで、通常の昇降時には作業者は切欠部316に注意を払うことなく移動することができ、ロープ状部材15が弛むようなことがあっても、安全に移動することができる。そして、転倒時には舌状部材等が湾曲したり外れる等して、開口部分316aから底面部分316bにロープ状部材15が入り込むように構成すれば、衝撃を和らげると共に、作業者の転落を防止することができる。
【0074】
このように、実施例3に示した安全具30及びこの安全具30を係着する手摺300を使用すれば、より安全に階段を移動することができ、かつ緩衝部34が設けられているので、転倒した際の作業者の衝撃をより効果的に和らげることができる。
切欠部316の開口部316aにおける管状部材の間隔を前述のように狭くすることで、階段昇降時にロープ状部材15が底面部316bに落ち込むことを防ぐことができ、簡単な切欠部316を形成することにより、作業者は安全に階段の昇降を行なうことができる。また、開口部316aが狭いので、舌状部材等を被せることも容易である。さらに、本実施例では、切欠部316をスリットの下側部分114bにのみに設けたが、上側部分114aにも設ければ、手摺300の上方から階段外側へ作業者が墜落してしまうことを防ぐことができる。
【0075】
なお、本発明は上述した発明の実施の形態に限定されず、手摺と作業者とを安全具で繋ぎ、転落等を防止することできれば、図示したような構成に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
また、階段等の斜めに設置される手摺だけでなく、高所等で使用される平行な手摺が設置されているところであっても、墜落防止等のために利用することができる。なお、この場合には、鉛直方向の動きのみを係止すればよいので、切欠部は不要である。つまり、階段を上がった後の高所の作業において、手摺から安全具を取り外すことなく作業に取りかかり、高所作業が終了したら、そのまま階段を下りていくことができる。
手摺の管状部材の上端部と下端部とは、袖口などを引っ掛けやすいので、安全のため、下向きや壁面へ近づくよう横向きに曲げられる場合がある。このような場合には、上端部や下端部の先端部分や屈曲部分等の適切な位置に、出入孔を設ければよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の安全具及びこの安全具を係着する手摺は、作業場所に限らず、転落や墜落の防止のために手摺が設置される様々な場所において使用する事ができる。
【符号の説明】
【0077】
1 安全帯
10,10x,20,30 安全具
11,12,21,31 係着部材
11a,12a,31a 本体部
11b,12b,21b,31b 保持部
13 掛止部材
14,34 緩衝部
15 ロープ状部材
100,200,300 手摺
101,201,202,301 手摺枠部
105 支持部材
110 管状部材
114,114x,114y スリット部
114a 上側部分
114b 下側部分
116,316 切欠部
116a,316a 開口部分
116b,316b 底面部分
218,218x 係止棒
218a 連結部
219 移動留め具



【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が着用している安全帯に取り付け、作業者の転落や墜落を防ぐ安全具及び該安全具を係着する手摺であって、
前記手摺(100,200,300)は、
軸方向にスリット部(114)が設けられた管状部材(110)である手摺枠部(101,201,202,301)と、
該手摺枠部を適切な高さで支持する支持部材(105)と、から成り、
前記安全具(10,10x,20,30)は、
前記手摺枠部の管状部材の中空部分(112)に挿入され、移動可能に取り付けられる係着部材(11,12,21,31)と、
該係着部材の一端側に取り付けられたロープ状部材(15)と、
該ロープ状部材の他端側に取り付けられ、前記安全帯に掛止する掛止部材(13)と、から成り、
前記係着部材を、前記手摺枠部内に移動可能に取り付けることにより、前記手摺に安全帯を繋いだ状態を保ちつつ、作業者が移動できるように構成した、ことを特徴とする安全具及び該安全具を係着する手摺。
【請求項2】
前記スリット部(114)は、下側部分(114b)に下向きに切欠部(116,316)が設けられた、ことを特徴とする請求項1に記載の安全具及び該安全具を係着する手摺。
【請求項3】
前記スリット部(114)の空間に、該スリット部と略平行に係止棒(218,218x)を配設した、ことを特徴とする請求項2に記載の安全具及び該安全具を係着する手摺。
【請求項4】
前記手摺(200)が、前記係止棒(218,218x)と前記ロープ状部材(15)とを、該係止棒に沿って移動可能に保持する移動留め具(219)をさらに備えた、ことを特徴とする請求項3に記載の安全具及び該安全具を係着する手摺。
【請求項5】
前記ロープ状部材(15)の断面が略円状であり、
前記切欠部(316)の開口部分(316a)における管状部材(110)間の垂線の長さが、ロープ状部材の断面直径と略同じである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の安全具及び該安全具を係着する手摺。
【請求項6】
前記切欠部(316)がスリット部(114)の上側部分(114a)にさらに設けられた、ことを特徴とする請求項5に記載の安全具及び該安全具を係着する手摺。
【請求項7】
前記安全具(10x)は、前記係着部材(12)の表面に複数の回転体(16)がさらに配設され、該回転体が回転することによって、前記係着部材が前記管状部材(110)の中空部分(112)を移動する、ことを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれか1つに記載の安全具及び該安全具を係着する手摺。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−161443(P2012−161443A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23486(P2011−23486)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】