説明

安全剃刀

【課題】
ひげ剃り接線から内部方向に皮膚の入り込みを抑制できるとともに、刃縁にひげ剃りができない部分を極力へらすことができ、さらに部品点数及び組み付け工数を減らすことができる安全剃刀を提供する。
【解決手段】
安全剃刀10は刃台20に対し複数の刃体支持体30を支持するとともにキャップ部材80を被せ、各刃体支持体30の上部に対し前方へ屈曲された刃体取付片34を設けて、各刃体取付片34の下面に第1剃刀刃40、第2剃刀刃50及び第3剃刀刃60を固定する。刃体支持体30の刃先前方に安全ガード70を配置し、剃刀刃40、50、60の後方にキャップ部材80の後部を配置する。各刃体取付片34の上面に皮膚係合部39を設けて、刃先と皮膚係合部39が安全ガード70上面とキャップ部材80の後部上面を結ぶひげ剃り接線S又はひげ剃り接線Sの近位に位置するように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全剃刀に関する。
【背景技術】
【0002】
安全剃刀は、刃体の刃先の前方にガード部材が配置されるとともに、刃先の後方にキャップ部材が配置されており、そのガード部材とキャップ部材の頂点を結んだひげ剃り接線上に前記刃体の刃先が臨むように配置されている。ひげ剃り時には、ひげ剃り接線上に位置する刃体の刃先により、カンナの原理でひげを剃ることができるとともに、ガード部材が刃先の直前の皮膚を伸長するため、刃先が皮膚に食い込むことなく安全にひげ剃りを行うことができる。
【0003】
ところで、人間の皮膚は柔らかく弾力性に富むため、仮にガード部材とキャップ部材との間隔が広すぎる場合は、皮膚がひげ剃り接線より内部方向に入り込みやすくなり、そのため刃先で切り傷を負いやすくなる。
【0004】
このため、特許文献1、特許文献2で提案されている二枚刃安全剃刀は、第1刃(前刃)と第2刃(後刃)の間に皮膚係合部材(特許文献1,2では挟着部で説明されている)が設けられている。この皮膚係合部材により、ひげ剃り時に皮膚がひげ剃り接線より内部方向に入り込むことが防止できるようにしている。
【0005】
また、特許文献3、及び特許文献4に開示されている複数枚を有する安全剃刀では、刃体間に刃体間隔を保持するためのスペーサが配置され、該スペーサの櫛歯が刃体間から前方に突出するように設けられている。そして、該櫛歯の上面には上向きの突起が形成されて、該突起により、刃先と皮膚との接触を部分的に防止できるようにしている。
【0006】
特許文献5で開示されている安全剃刀では、ブレード支持構造体の屈曲した上部に刃体を固定し、該刃体の上面にインターブレードガードを設けることにより、インターブレードガードの皮膚係合面が、ひげ剃り時に皮膚に当接して、インターブレードガードと、該インターブレードガードの後方の刃体の刃先間に皮膚が入り込むことを防止するようにしている。
【0007】
特許文献6及び特許文献7は、本明細書の出願時の技術水準を示すためのものである。特許文献6には、刃体支持部(本明細書の刃体支持体に相当)の上面に刃体をのせてスポット溶接が行われていることが開示されている。特許文献7には、ひげかす排除板の前縁に交互に凹凸が形成されている構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平4−25664号公報
【特許文献2】実開平4−36972号公報
【特許文献3】特開平9−135972号公報
【特許文献4】特表2006−516464号公報
【特許文献5】特表2008−543374号公報
【特許文献6】特開2007−215591号公報
【特許文献7】実開昭60−116986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1及び特許文献2の皮膚係合部材(挟着部)は、安全剃刀の幅方向(すなわち、刃先を前とする前後方向)への寸法が長くなり、ひげ剃り時に小回りのきかないものとなるとともに、係合部材の部品が増加する問題がある。
【0010】
又、特許文献3及び特許文献4は、突起により刃先と皮膚との接触を部分的に防止できるようにしているが、この突起が刃縁の直前で立ち上がっているため、突起が直前に存在する刃縁部分ではひげ剃りができないことになる。
【0011】
特許文献5は、インターブレードガード専用の部品を新たに設ける必要があることから部品点数が増えるとともに、組み付け工数が増加し、コスト高となる問題がある。
本発明の目的は、ひげ剃り接線から内部方向に皮膚の入り込みを抑制できるとともに、刃縁にひげ剃りができない部分をなくすことができ、さらに部品点数及び組み付け工数を増やすことがない安全剃刀を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するために請求項1に記載の発明は、刃台に対して、複数の刃体支持体が支持されるとともにキャップ部材が被せられ、前記刃体支持体の上部に対して前方へ屈曲された刃体取付片が設けられて、刃体取付片の下面に刃体が固定され、前記刃体の刃先前方には、ガード部材が配置され、前記刃体の後方に前記キャップ部材の後部が配置され、前記刃体取付片の上面に、直前の刃体の刃先と直後の刃体の刃先の間への皮膚の入り込みを抑制する皮膚係合部が設けられ、前記刃先と前記皮膚係合部が、前記ガード部材上面と前記キャップ部材の後部上面を結ぶひげ剃り接線上又はひげ剃り接線の近位に位置するように配置されていることを特徴とする安全剃刀を要旨としている。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1において、前記刃体の刃先は、前記皮膚係合部よりも前方に位置するとともに前記皮膚係合部は左右方向に凹凸が交互に並ぶように形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記刃体及び前記刃体支持体は鉄製であり、前記刃体は、前記刃体支持体の刃体取付片下面に対して、スポット溶接されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、ひげ剃り接線から内部方向に皮膚の入り込みを抑制できるとともに、刃縁にひげ剃りができない部分をなくすことができ、さらに部品点数及び組み付け工数を増やすことがない。すなわち、ガード部材とキャップ部材の後部とを結ぶひげ剃り接線上又はひげ剃り接線の近位に位置するように刃先と皮膚係合部が位置するため、皮膚の入り込みを抑制できて安全性が増大するとともに、肌当たりが優しくなる。
【0016】
また、従来技術と異なり、刃体の上面及び刃先の後方にインターブレードガードを設ける必要がないとともに部品点数及び組み付け工数を増やすことがなくコスト低減を図ることができる。
【0017】
また、刃体支持体に対して前方へ屈曲された刃体取付片下面に刃体が固定されているため、刃体の強度アップを行うことができる。特に、ひげは、同径の黄銅線と同じ硬度があり、ひげ剃り時に、刃体には刃先の前方から後方へひげ剃り抵抗がかかるため、仮に刃体が刃体取付片の表面(上面)に設けられている場合は、刃体がめくれ上がる方向へ力が加わり、刃先がびびることがある。しかし、本発明によれば、刃体が刃体取付片下面に設けられているため、そのようなことがなく刃先のびびりを抑制できる。
【0018】
請求項2の発明によれば、皮膚係合部には皮膚に係合しない凹部が設けられるため、刃体、特に刃先の目視による識別が容易となる。すなわち、刃先の位置をしっかり認識できることになり、安全剃刀を肌に当てる際の安全性を担保することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、スポット溶接により、刃体が刃体支持体の刃体取付片下面に取付けられているため、刃体と刃体支持体とを一体化して刃体の強度アップを図ることができるとともに、刃体のスポット溶接痕が、刃体上方(すなわち、皮膚係合部側)から見えにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を具体化した一実施形態の安全剃刀の表側から見た全体斜視図。
【図2】安全剃刀の裏面側から見た全体斜視図。
【図3】安全剃刀の分解斜視図。
【図4】図1の4−4線断面図。
【図5】図1の5−5線断面図。
【図6】図1の6−6線断面図。
【図7】剃刀刃と刃体支持体の分解斜視図。
【図8】他の実施形態の図6に相当する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態の構成)
以下、本発明の安全剃刀を具体化した一実施形態を図1〜7を参照して説明する。
なお、本明細書において、安全剃刀において、前とは刃体の刃先が向く方向をいい、後はその180度反対方向をいう。又、左右は、安全剃刀10の前部に人が向かったときを基準にして左右という。
【0022】
まず、安全剃刀10の概略を説明する。図1及び図3に示すように、安全剃刀10は、刃台20と、刃台20に取付けられた複数の刃体支持体30と、各刃体支持体30の上部に対して前方へ屈曲された刃体取付片34の下面に固定された複数の剃刀刃(第1剃刀刃40、第2剃刀刃50及び第3剃刀刃60)と、刃台20の前部に取付けられたガード部材としての安全ガード70と、刃台20に対して取付けられたキャップ部材80を主要な部材として構成されている。
【0023】
図3に示すように刃台20は合成樹脂からなり、前枠部21、後枠部22及び前枠部21と後枠部22の前後両端を連結した左枠部23、及び右枠部24により四角枠状に形成されている。刃台20は、図示しないホルダに装着可能である。また、図2、図3に示すように前枠部21と後枠部22間には、複数の連結部25が架設されている。本実施形態では、連結部25の数は4個としているが、4個に限定されるものではなく、他の数であってもよい。
【0024】
図3、図4に示すように左枠部23の内側面には、有底の凹部23aが形成されている。また、図3に示すように、右枠部24の内側部には、前記凹部23aと相対するように有底の凹部24aが形成されている。
【0025】
前記凹部23a,24aの底部及び左枠部23,右枠部24の側壁からは前後方向に並ぶようにして、上方に突出する4つの突起23b,24bが形成されている。また、各連結部25の上面、前枠部21及び後枠部22には、前後方向に並ぶようにして、上方に突出する4つの突起25bが形成されている。
【0026】
突起23b間、突起24b間、及び突起25b間には、それぞれ前方から順に第1取付溝p、第2取付溝q、及び第3取付溝rが設けられている。突起23b間、突起24b間、及び突起25b間に設けられた第1取付溝pは、同一平面上に並ぶように配置されている。突起23b間、突起24b間、及び突起25b間に設けられた第2取付溝qは、第1取付溝pと平行になるように同一平面上に並ぶように配置されている。また、突起23b間、突起24b間、及び突起25b間に設けられた第3取付溝rは、第1取付溝pと平行になるように同一平面上に並ぶように配置されている。
【0027】
第1取付溝p、第2取付溝q及び第3取付溝rには、それぞれ刃体支持体30が平行に取り付けられている。各取付溝に取り付けられた刃体支持体30は、同じ構成であるとともに、同様に取付溝に対して保持されている。このため、第1取付溝pに取り付けられた刃体支持体30について説明し、他の取付溝に取り付けられた刃体支持体30の構成については同一符号を付す。
【0028】
刃体支持体30は、鉄製であって、左右方向に延びる支持板32と、支持板32の上部が前方に屈曲された刃体取付片34により形成されている。本実施形態では、支持板32に対して刃体取付片34の屈曲角度は弱90度にしているが、支持板32に対する刃体取付片34の前方への屈曲角度は限定されるものではない。
【0029】
支持板32は、突起23b間、突起24b間及び突起25bの各第1取付溝pに対して差し込みされることにより一対の突起23b、一対の突起24b、及び一対の突起25bにより、それぞれ挟着されて保持されている。
【0030】
また、刃体取付片34の下面に対して、刃体としての第1剃刀刃40が固定されている。本実施形態では、第1剃刀刃40は、薄いステンレス板からなり、刃体取付片34に対して下面からのレーザスポット溶接により固定されている。なお、刃体支持体30は、鉄製に限定されず、プラスチック或いは非鉄金属であってもよい。この場合は、第1剃刀刃40は接着剤により刃体取付片34に対して固定される。
【0031】
図7に示すように、刃体取付片34の左右方向(長手方向)に延在する前縁は、第1剃刀刃40の刃先が前方に位置するように後方に配置されるとともに、凹部37及び凸部38が交互に形成されている。また、凹部37と凸部38の上部は面取りがされて、皮膚係合部39として形成されている。
【0032】
また、刃体取付片34の左右両端は、図3、図7に示すように、凹部37と凸部38が設けられた前縁部よりも前方に突出された突出部36が設けられている。突出部36は、図4に示すように、第1剃刀刃40の刃先と略一致する位置まで、すなわち、刃先を覆う位置まで延びている。
【0033】
また、第2取付溝q及び第3取付溝rに対して取付られたそれぞれ刃体支持体30も第1取付溝pに取り付けられた刃体支持体30と同様の構成を有するとともに、それぞれの刃体支持体30の刃体取付片34の下面には、第1剃刀刃40と同様に刃体としての第2剃刀刃50及び第3剃刀刃60が刃先が相互に平行になるように配置固定されている。
【0034】
図2、図3に示すように、最も左側に位置する連結部25において、各突起25bが突出した部位の左側面からは、上下動可能に弾性を有するアーム27aが左方に向かってかつ斜め上方に突出され、前記第1剃刀刃40、第2剃刀刃50及び第3剃刀刃60の左端部側の下面に弾性的に当接されている。
【0035】
また、図2、図3に示すように、最も右側に位置する連結部25において、各突起25bが突出した部位の右側面からは、上下動可能に弾性を有するアーム27bが右方に向かってかつ斜め上方に突出され、前記第1剃刀刃40、第2剃刀刃50及び第3剃刀刃60の右端部側の下面に弾性的に当接されている。
【0036】
これらのアーム27a,27bにより、ひげ剃り時に、第1剃刀刃40、第2剃刀刃50及び第3剃刀刃60がひげ剃りの抵抗に応じて下方へ移動して皮膚の損傷防止となり滑らかな剃り心地に寄与する。
【0037】
キャップ部材80は、合成樹脂からなり、前枠81、後枠82、左枠83及び右枠84により、四角枠状に形成されている。
前枠81は、図5、図6に示すように前枠部21の上面に重なるように取り付けられるとともに、図3に示すように左右に一対の取付片81a,81bが下方に突出されて、前枠部21に形成された一対の係合孔21a,21bに挿入されている。取付片81a,81bの下部には、図3に示すように爪81cが形成されて、図2に示すように係合孔21a,21bの下縁に掛け止めされている。
【0038】
図3〜図6に示すように前枠部21の上面には、左右方向に延びる凹溝21dが形成されている。凹溝21d内には、安全ガード70の下部が係入されている。安全ガード70は、前枠81内側面と前枠部21外側面間に挟着されている。
【0039】
安全ガード70の上部の上面には、左右方向に延びて互いに平行に配置された複数の突条72が形成されている。安全ガード70は、軟質樹脂、特にエラストマ樹脂で成形されるのが好ましく、複数の突条72は剃刀刃の前方で皮膚を引き伸ばし、毛を引き起こす引っ張り力をもたらす。
【0040】
後枠82は、図5、図6に示すように後枠部22の上面に重なるように取り付けられている。後枠82の上面には、左右方向に延びた収納凹部82aが凹設されるとともに、図3に示すように収納凹部82aの底部には左右方向に並ぶように複数個の係合孔85が透設されている。そして、後枠部22上面から突出された複数の係止爪22aが図5に示すように挿通されて係合孔85の上縁に掛け止められることにより、後枠82が後枠部22に対して保持されている。また、収納凹部82a内には、左右方向に延びるスムーサ90が収納されて固定されている。
【0041】
左枠83の下面は、図4に示すように、複数の段部83a、83b,83cが形成されて、第1剃刀刃40、第2剃刀刃50及び第3剃刀刃60を支持する刃体支持体30の左端側の突出部36に対して押圧するように当接されている。また、図示はしないが、右枠84の下面には、同様に複数の段部が形成され、各段部が第1剃刀刃40、第2剃刀刃50及び第3剃刀刃60を支持する刃体支持体30の右端側の突出部36に対して押圧するように当接されている。
【0042】
また、本実施形態では、図5に示すように、安全ガード70の突条72上面と、後枠82(すなわち、キャップ部材80の後部)の上面を結ぶ線を基準としてひげ剃り接線Sが規定されている。
【0043】
このひげ剃り接線S上、又はひげ剃り接線Sの近位(例えば、ひげ剃り接線から±1mm以内)の位置に、前記第1剃刀刃40、第2剃刀刃50及び第3剃刀刃60の刃先が位置するとともに、刃体取付片34の皮膚係合部39が位置するように設定されている。なお、ひげ剃り接線Sに近位とは、ひげ剃り接線Sから±1mm以内に限定するものではなく、異なる数値であってもよい。ひげ剃り接線Sから上方に刃先、皮膚係合部が突出してもひげ剃りが可能な範囲、或いはひげ剃り接線Sから下方に位置してもひげ剃りが可能な範囲を含む趣旨である。ひげ剃り接線上、或いは近位の位置に刃先、皮膚係合部を位置させることにより、安全剃刀のコンセプトを異ならしめることができるため、髭剃りが可能な範囲であれば、上記数値は限定されるものではない。
【0044】
また、上記のように平行に配置された第1剃刀刃40、第2剃刀刃50及び第3剃刀刃60間では、前方に位置する刃体支持体30と後方に位置する刃体の刃先間にひげカス排出通路100の開口(入口)が形成されている。本実施形態では前記開口の左右方向の長さは、左枠83及び右枠84間の長さと一致させているが、限定するものではない。
【0045】
図5に示すように、ひげカス排出通路100は、前方に位置する第1剃刀刃40を支持する刃体支持体30と後方に位置する第2剃刀刃50を支持する刃体支持体30間、及び前方に位置する第2剃刀刃50を支持する刃体支持体30と後方に位置する第3剃刀刃60を支持する刃体支持体30間に設けられている。
【0046】
両ひげカス排出通路100は、同じであるため、前方に位置する第1剃刀刃40を支持する刃体支持体30と後方に位置する第2剃刀刃50を支持する刃体支持体30間のひげカス排出通路100を具体的に説明する。
【0047】
ひげカス排出通路100は、前方に位置する刃体支持体30と後方に位置する刃体支持体30の刃先間に前記開口を有するとともに、前記前方に位置して第1剃刀刃40を支持する刃体支持体30と後方に位置する第2剃刀刃50(刃体)間、並びに前記前方に位置して第1剃刀刃40を支持する刃体支持体30の後面と後方に位置する第2剃刀刃50を支持する刃体支持体30の前面間で区切られる空間により構成されている。ひげカス排出通路100の後端は、図5に示すように刃台20の下方空間に連通している。
【0048】
また、図5に示すように、安全ガード70の後部上部側面70a及び前枠部21の後面21cと、第1剃刀刃40下面及び刃体支持体30前面間をひげカス排出通路110とし、第1剃刀刃40の刃先と安全ガード70の最後部の突条72間をその開口としている。
【0049】
安全ガード70の最後部の突条72と第1剃刀刃40の刃先間の開口、第1剃刀刃40の刃体支持体30と第2剃刀刃50の刃先間の開口、及び第2剃刀刃50の刃体支持体30と第3剃刀刃60の刃先間の開口は、前後方向長さが同一又は略同じ長さを有するように設定されている。すなわち、ひげカス排出通路100及びひげカス排出通路110の開口は前後方向長さが同一又は略同じ長さを有するように、かつ、ひげ剃り時に、刃先に当たった皮膚が隆起して開口内に大きく入らないような大きさに設定されている。このことによって、開口内に入った隆起した皮膚に対する刃先の当接角度が、ひげ剃りを阻害しない浅い角度となるようにしている。
【0050】
(実施形態の作用)
次に上記のように構成した安全剃刀10の作用について説明する。
安全剃刀10は、刃台20に対して、複数の刃体支持体30が支持されるとともにキャップ部材80が被せられ、各刃体支持体30の上部に対して前方へ屈曲された刃体取付片34が設けられて、各刃体取付片34の下面に第1剃刀刃40、第2剃刀刃50及び第3剃刀刃60がそれぞれ固定されている。さらに、刃体支持体30の刃先前方には、安全ガード70が配置され、第1剃刀刃40、第2剃刀刃50、第3剃刀刃60の後方にキャップ部材80の後部が配置されている。また、各刃体取付片34の上面に皮膚係合部39が設けられて、刃先と皮膚係合部39が、安全ガード70上面とキャップ部材80の後部上面を結ぶひげ剃り接線上又はひげ剃り接線の近位に位置するように配置されている。このため、安全剃刀10は、皮膚係合部39によりひげ剃り接線Sから内部方向、すなわち、ひげカス排出通路100内に皮膚の入り込みを抑制できる。
【0051】
また、ひげを剃る場合、第1剃刀刃40、第2剃刀刃50及び第3剃刀刃60の刃先によって剃られた皮脂を含むひげカスは図5に示すひげカス排出通路110,100の開口を介して、ひげカス排出通路110、100内に入り、下方へ流される。
【0052】
また、本実施形態では、刃体取付片34の前縁に皮膚係合部39の凹部37及び凸部38が交互に並ぶように形成されている。そして、凹部37が複数設けられているため、刃先との目視による識別が容易となる。すなわち、刃先の位置をしっかり認識できることになり、安全剃刀を肌に当てる際の安全性が担保される。
【0053】
さらに、第1剃刀刃40、第2剃刀刃50、及び第3剃刀刃60は刃体取付片34の下面に対して、刃体側からレーザスポット溶接により固定されているため、刃体からのスポット溶接の跡が、刃体上方(すなわち、皮膚係合部側)からは見えに難いものとなる。
【0054】
さらに、刃体取付片34の前縁に交互に凹部37、凸部38が形成されているため、ひげ剃り時の皮膚の横方向(刃体の長さ方向)への抵抗が増え、安全剃刀10のひげ剃り方向とは交差する方向である横方向のすべり、すなわち、横すべりを防止する。
【0055】
さて、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 本実施形態の安全剃刀10は、刃台20に対して、複数の刃体支持体30が支持されるとともにキャップ部材80が被せられ、各刃体支持体30の上部に対して前方へ屈曲された刃体取付片34が設けられて、各刃体取付片34の下面に第1剃刀刃40、第2剃刀刃50及び第3剃刀刃60が固定されている。また、刃体支持体30の刃先前方には、安全ガード70(ガード部材)が配置され、第1剃刀刃40、第2剃刀刃50、第3剃刀刃60(刃体)の後方にキャップ部材80の後部が配置されている。また、各刃体取付片34の上面に、直前の刃体の刃先と直後の刃体の刃先の間への皮膚の入り込みを抑制する皮膚係合部39が設けられて、刃先と皮膚係合部39が、安全ガード70(ガード部材)上面とキャップ部材80の後部上面を結ぶひげ剃り接線S又はひげ剃り接線Sの近位に位置するように配置されている。
【0056】
この結果、本実施形態の安全剃刀10は、ひげ剃り接線Sから内部方向、すなわち、皮膚係合部39により、該皮膚係合部39の直前の刃体の刃先と直後の刃体の刃先の間への皮膚の入り込みを抑制することができる。
【0057】
また、特許文献3及び特許文献4と異なり、突起により刃先と皮膚との接触を部分的に防止する構成を有しないため、刃縁にひげ剃りができない部分をなくすことができ、さらに部品点数及び組み付け工数を増やすことがない。すなわち、安全ガード70(ガード部材)とキャップ部材80の後部とを結ぶひげ剃り接線S又はひげ剃り接線の近位に刃先と皮膚係合部39が位置するため、皮膚の入り込みを抑制できて安全性が増大するとともに、肌当たりが優しくなる。
【0058】
また、特許文献5と異なり、第1剃刀刃40、第2剃刀刃50、第3剃刀刃60(刃体)の上面及び刃先の後方にインターブレードガードを設ける必要がなく、部品点数及び組み付け工数を減らすことができコスト低減を図ることができる。
【0059】
また、刃体支持体30に対して前方へ屈曲された刃体取付片34下面に第1剃刀刃40、第2剃刀刃50、及び第3剃刀刃60が固定されているため、これらの第1剃刀刃40、第2剃刀刃50、及び第3剃刀刃60の強度アップを行うことができる。特に、ひげは、同径の黄銅線と同じ硬度があり、ひげ剃り時に、刃体には刃先の前方から後方へひげ剃り抵抗がかかるため、仮に第1剃刀刃40、第2剃刀刃50、第3剃刀刃60が刃体取付片34の表面(上面)に設けられている場合は、これらがめくれ上がる方向へ力が加わり、刃先がびびることがあるが、本実施形態によれば、第1剃刀刃40、第2剃刀刃50、第3剃刀刃60が刃体取付片34下面に設けられているため、そのようなことがなく刃先のびびりを抑制できる。
【0060】
(2) 本実施形態の安全剃刀10は、刃体支持体30が複数個前後に位置するように平行に配置され、前方に位置する刃体支持体30と後方に位置する刃体支持体30の刃先間に開口するとともに、前記前方に位置する刃体支持体30と後方に位置する刃体支持体30間で区切られる空間を、ひげカス排出通路100とする。この結果、本実施形態によれば、ひげ剃り時のひげカスを、前方に位置する刃体支持体30と後方に位置する刃先間の開口から、前方の刃体支持体30の背面に沿わせてひげカス排出通路100へ好適にひげカスを排除することができる。
【0061】
(3) 本実施形態の安全剃刀10は、第1剃刀刃40、第2剃刀刃50、及び第3剃刀刃60(刃体)の刃先は、皮膚係合部39よりも前方に位置するとともに左右方向に凹凸が交互に並ぶように形成されて皮膚に係合しない凹部が設けられるため、刃体、特に刃先の目視による識別が容易となる。すなわち、刃先の位置を、鏡を介してひげを剃る人が刃先の位置をしっかり認識できることになり、安全剃刀を肌に当てる際の安全性を担保することができる。
【0062】
(4) 本実施形態の安全剃刀10は、第1剃刀刃40、第2剃刀刃50、及び第3剃刀刃60(刃体)及び刃体支持体30は金属製であり、第1剃刀刃40、第2剃刀刃50、及び第3剃刀刃60は、刃体支持体30の刃体取付片34下面に対して、レーザスポット溶接されている。このため、レーザスポット溶接により、第1剃刀刃40、第2剃刀刃50、及び第3剃刀刃60(刃体)が刃体支持体30の刃体取付片34下面に取り付けられているため、刃体と刃体支持体とを一体化して刃体の強度アップを図ることができるとともに、刃体のスポット溶接痕を、刃体上方(すなわち、皮膚係合部側)からは見えにくくすることができる。
【0063】
例えば、刃体の厚みを0.1mmとし、刃体支持体30の刃体取付片34の厚みを0.3mmとした場合、溶接痕は見えない程度のものとなる。
なお、特許文献6では、刃体支持部(本明細書の刃体支持体に相当)の上面に刃体をのせてスポット溶接が行われた場合、溶接痕は上面から見えてしまう。
【0064】
なお、前記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 前記実施形態では、3枚刃の安全剃刀に具体化したが、例えば、前記実施形態の構成中、第3剃刀刃60等を省略して2枚刃の安全剃刀に具体化してもよく、さらに、第2剃刀刃50を省略して一枚刃の安全剃刀に具体化してもよい。
【0065】
・ 前記実施形態では、3枚刃の安全剃刀に具体化したが、剃刀刃の枚数を増やして、4枚刃、5枚刃、或いはこれを超える枚数の安全剃刀としてもよい。
・ 前記実施形態では、第1剃刀刃40、第2剃刀刃50、及び第3剃刀刃60は、ステンレス製からなり、刃体取付片34に対して下面からのレーザスポット溶接により固定されていたが、他のスポット溶接、或いは、接着剤による固定、或いは機械的な取付固定であってもよい。
【0066】
・ 前記実施形態では、刃体取付片34の前縁に凹部37,凸部38を交互に設けたが、凹部37及び凸部38を省略して、刃体取付片34の前縁を左右方向に延びるように直線状に形成してもよい。
【0067】
・ 前記各実施形態の構成において、刃体取付片34の前部の上面に左右方向に延出した突部としての突条31を図8に示すように形成し、この突条31を皮膚係合部とするようにしてもよい。なお、突条31の代わりに、断続的に左右方向に並ぶように複数の突起を突部として形成してもよい。このように構成すれば、皮膚係合部を、刃体取付片34から上方へ突出する突条31(突部)により構成することによっても、上記各実施形態に記載の効果を容易に実現できる。
【0068】
次に、上記のように説明した各実施形態の中から把握できる技術的思想を下記に記述する。
(1) 請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項の安全剃刀において、前記刃体支持体が複数個前後に位置するように平行に配置され、前方に位置する刃体支持体の皮膚係合部と後方に位置する刃体の刃先間に開口するとともに、前記前方に位置する刃体支持体と後方に位置する刃体、並びに前記前方に位置する刃体支持体と後方に位置する刃体支持体間で区切られる空間を、ひげカス排出通路とすることを特徴とする安全剃刀。上記のように構成すると、前方に位置する刃体支持体の皮膚係合部と後方に位置する刃体の刃先間に開口するとともに、前記前方に位置する刃体支持体と後方に位置する刃体、並びに前記前方に位置する刃体支持体と後方に位置する刃体支持体間で区切られる空間を、ひげカス排出通路としているため、ひげ剃り時のひげカスを、前方に位置する皮膚係合部と後方に位置する刃先間から、該皮膚係合部に沿わせてひげカス排出通路へ好適にひげカスを排除することができる。
【0069】
(2) 請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項又は上記(2)において、前記皮膚係合部を、前記刃体支持体の刃体取付片から上方へ突出する突部により構成したことを特徴とする安全剃刀。上記のように構成すると、皮膚係合部を、前記刃体取付片から上方へ突出する突部によっても、請求項1乃至請求項4又は上記(1)のいずれかに記載の効果を容易に実現できる。
【符号の説明】
【0070】
10…安全剃刀、20…刃台、30…刃体支持体、31…突条(突部)、
34…刃体取付片、39…皮膚係合部、40…第1剃刀刃(刃体)、
50…第2剃刀刃(刃体)、60…第3剃刀刃(刃体)、
70…安全ガード(ガード部材)、80…キャップ部材、90…スムーサ、
100…ひげカス排出通路、S…ひげ剃り接線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃台に対して、複数の刃体支持体が支持されるとともにキャップ部材が被せられ、
前記刃体支持体の上部に対して前方へ屈曲された刃体取付片が設けられて、刃体取付片の下面に刃体が固定され、
前記刃体の刃先前方には、ガード部材が配置され、前記刃体の後方に前記キャップ部材の後部が配置され、
前記刃体取付片の上面に、直前の刃体の刃先と直後の刃体の刃先の間への皮膚の入り込みを抑制する皮膚係合部が設けられ、
前記刃先と前記皮膚係合部が、前記ガード部材上面と前記キャップ部材の後部上面を結ぶひげ剃り接線上又はひげ剃り接線の近位に位置するように配置されていることを特徴とする安全剃刀。
【請求項2】
前記刃体の刃先は、前記皮膚係合部よりも前方に位置するとともに前記皮膚係合部は左右方向に凹凸が交互に並ぶように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の安全剃刀。
【請求項3】
前記刃体及び前記刃体支持体は鉄製であり、
前記刃体は、前記刃体支持体の刃体取付片下面に対して、スポット溶接されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の安全剃刀。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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