説明

安全地下足袋

【課題】保護芯に相当しながら、足甲の自由度を奪わない保護部材を内蔵し、チェーンソーや草刈機による足甲の切創事故を防止できる安全地下足袋を提供する。
【解決手段】足指を覆う形状の金属面材又は樹脂面材からなる保護芯11を足先に内蔵した安全地下足袋において、前縁241が保護芯11の開口縁111に沿い、後縁242が足首に掛からない大きさで足甲を覆う形状の金属ネット24と、前記金属ネット24の外側を覆う表布21とから構成される防刃カバー2を甲皮12の外側に被せて一体化したことを特徴とする安全地下足袋である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーンソーや草刈機の刃による足の切創事故を防止する安全地下足袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、落下物から足を保護するため、足先に内蔵した金属面材又は樹脂面材からなる保護芯(鉄芯、樹脂芯)により足指を保護する安全地下足袋(特許文献1〜特許文献3)が提案されている。特許文献1〜特許文献3が開示する安全地下足袋は、指股を形成するため、親指を覆う保護芯と残る四指を覆う保護芯とをそれぞれ個別に内蔵する。同様に、保護芯を内蔵する安全靴も見られる。安全靴の場合、基本的には足指をすべて覆う保護芯を1個だけ内蔵するが、地下足袋様に親指及び四指を個別に覆う2個の保護芯を内蔵するものもある(特許文献4及び特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-204801公報
【特許文献2】特開平09-191903公報
【特許文献3】特開平09-098801公報
【特許文献4】特開2001-327306公報
【特許文献5】特開2003-079403公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
山林における伐採作業や草刈作業は、作業靴として専ら地下足袋が好んで使用される。しかし、作業現場は傾斜地で、しかも足下が不安定なので、地下足袋であっても安定してチェーンソーや草刈り機を取り扱うことが難しく、作業者自身がチェーンソーや草刈機の刃を足下に向けてしまい、足を傷つける切創事故が起きてしまうことがある。この場合、チェーンソーや草刈機の刃は、足指よりも、むしろ足甲に当たることが多い。これから、特許文献1〜特許文献3が開示する安全地下足袋を参考に、足指だけでなく、足甲に対して保護芯を内蔵することが考えられる。
【0005】
しかし、足甲は、足指の付け根を軸として上下に動く部分であり、剛性の高い保護芯で覆われると自由度が奪われ、安全地下足袋として利用し難くなる。このように、足甲を保護するには、確かに特許文献1〜特許文献3が開示する保護芯を内蔵する安全地下足袋の構造が好ましいが、内蔵した保護芯で足甲を覆うと、前記足甲の自由度が奪われ、安全靴として利用し難くなる問題点がある。そこで、保護芯に相当しながら、足甲の自由度を奪わない保護部材を内蔵し、チェーンソーや草刈機による足甲の切創事故を防止できる安全地下足袋を開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
検討の結果開発したものが、足指を覆う形状の金属面材又は樹脂面材からなる保護芯を足先に内蔵した安全地下足袋において、前縁が保護芯の開口縁に沿い、後縁が足首に掛からない大きさで足甲を覆う形状の金属ネットと、前記金属ネットの外側を覆う表布とから構成される防刃カバーを甲皮の外側に被せて一体化したことを特徴とする安全地下足袋である。本発明の安全地下足袋は、保護芯を足先に内蔵した安全地下足袋の足甲を保護する保護部材として、表布で覆った金属ネットから構成される防刃カバーを甲皮に被せて一体化し、前記金属ネットによりチェーンソーや草刈機の刃から足甲を保護する。これから、本発明は保護芯を内蔵した安全靴にも適用でき、権利範囲は前記安全靴にも及ぶ。
【0007】
金属ネットは、防錆性能の高いステンレス条で織成又は編成されることが好ましい。この金属ネットは、可撓性のある金属面材として、足甲に倣う大きさを有すれば外形状を問わないが、少なくとも「前縁が保護芯の開口縁に沿い、後縁が足首に掛からない」ことが望ましい。ここで、「前縁が保護芯の開口縁に沿」うとは、金属ネットの前縁が足指を挿入する保護芯の後方に設けられた開口の縁部=開口縁に沿っていることを意味する。「後縁が足首に掛からない」とは、金属ネットの後縁が足甲を越えて屈曲する足首に至らないことを意味する。金属ネットやカバー保護布(後述)の外側は、安全地下足袋の内外に従った上面側を、同じく内側は、安全地下足袋の内外に従った下面側をそれぞれ意味する。
【0008】
表布は、前記金属ネットを覆う大きさの面材で、金属ネットが外部に露出させない大きさであれば素材を問わない。しかし、安全地下足袋の外観に一体性を持たせる観点から、甲皮と同じ生地を用いることが望ましい。この場合、表布は、前縁、後縁及び側縁をそれぞれ甲皮に縫着する。こうして、防刃カバーを構成する金属ネットは、表布と甲皮とに挟まれた閉空間に閉じ込められる。これから、金属ネットが前記閉空間に相似な外形状であれば、金属ネットを位置ずれさせることなく、閉空間に閉じ込めて位置固定できる。
【0009】
甲皮は、保護芯の開口縁と金属ネットの前縁との間に架け渡す範囲で、アラミド繊維で織成又は編成された甲皮保護布を内側に設けるとよい。アラミド繊維(例えばケブラー(登録商標)等)は、防刃服にも利用される強化繊維である。こうしたアラミド繊維で織成又は編成された甲皮保護布は、保護芯の開口縁と金属ネットの前縁との間からチェーンソーや草刈機の刃が侵入することを難くし、甲皮を破って前記刃が足指及び足甲を傷つけることを防止する。しかし、甲皮保護布は、可撓性のある面材であるから、足甲の自由度を阻害しない。
【0010】
防刃カバーは、樹脂シート又はゴムシートを金属ネットの内側に宛てがうとよい。金属ネットの内側に宛てがった樹脂シート又はゴムシートは、金属ネットと甲皮との間に介装され、金属ネットが甲皮を傷つけることを防止すると共に、前記甲皮を介した金属ネットの足甲に対する触感を柔らかくする。また、防刃カバーは、樹脂シート又はゴムシートを金属ネットの外側に被せるとよい。金属ネットの外側に被せた樹脂シート又はゴムシートは、金属ネットと表布との間に介装され、金属ネットが表布を傷つけることを防止する。
【0011】
防刃カバーは、アラミド繊維で織成又は編成されたカバー保護布を金属ネットの内側に宛てがうとよい。本発明の安全地下足袋は、防刃カバーを構成する金属ネットによりチェーンソーや草刈機の刃を防ぎ、足甲を保護するが、前記刃の当たり具合によっては金属ネットといえども切断される可能性がある。金属ネットの内側に宛てがったカバー保護布は、金属ネットを切断して勢いの削がれたチェーンソーや草刈機の刃を受け止めて、前記刃が甲皮を破って足甲を傷つけることを防止する。これから、金属ネットの内側に宛てがったカバー保護布は、フェールセーフ部材として働く。
【0012】
また、防刃カバーは、足甲から足首に架け渡す範囲で、アラミド繊維で織成又は編成されたカバー保護布を金属ネットの後縁から突出させ、前記カバー保護布の外側に表布を被せるとよい。金属ネットの後縁から突出させたカバー保護布は、金属ネットの内側に宛てがったカバー保護布を足首に向けて延長した部分から構成してもよい。本発明の安全靴は、防刃カバーがチェーンソーや草刈機の刃を通さないことにより、足甲を保護するが、このために前記刃が足甲に沿って足首に向かう可能性がある。金属ネットの後縁から突出させたカバー保護布は、勢いが殺されて足甲に沿って足首に向かうチェーンソーや草刈機の刃を受け止めて、前記刃が甲皮を破って足甲を傷つけることを防止する。これから、金属ネットの後縁から突出させたカバー保護布は、フェールセーフ部材として働く。
【発明の効果】
【0013】
本発明の安全地下足袋は、足指を覆う形状の金属面材又は樹脂面材からなる保護芯を足先に内蔵した安全地下足袋に、甲皮に被さる防刃カバーを加えることにより、足指から足甲に至る範囲がチェーンソーや草刈機の刃によって傷つけられる虞をなくす。これにより、山林における伐採作業や草刈作業に際する足甲の切創事故が防止できる。また、本発明における防刃カバーは、可撓性のある金属ネットから構成されるため、足甲の動きを損ねず、保護芯だけを備えた従来の安全地下足袋同様に足甲の自由度を確保できる利点を有する。
【0014】
甲皮保護布は、保護芯の開口縁と金属ネットの前縁との間からチェーンソーや草刈機の刃が侵入することを難くし、本発明の安全地下足袋の安全性を高める。樹脂シート又はゴムシートは、それぞれ金属ネットから甲皮及び表布を保護し、足甲に対する金属ネットの触感を柔らかくして、本発明の安全地下足袋の装着感を損ねないようにする。カバー保護布は、金属ネットを破ったり、防刃カバーにずれて当たるチェーンソーや草刈機の刃から足甲や足首を保護し、本発明の安全地下足袋の安全性を高める。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した安全地下足袋の一例を表した斜視図である。
【図2】本例の安全地下足袋の断面図である。
【図3】防刃カバーの平面図である。
【図4】防刃カバーの金属ネット及びカバー保護布のみを表した図3相当平面図である。
【図5】本例の防刃カバーの積層関係を表した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の安全地下足袋は、例えば図1及び図2に見られるように、親指と残る四指とをそれぞれ別に覆う2個の保護芯11,11を内蔵して構成できる。本例の安全地下足袋1は、足首から延びる前後一対の合わせ部121,121それぞれに小鉤122及び掛糸123を設けた甲皮12の足先に2個の保護芯11,11を内蔵し、前後保護芯11を覆う範囲の甲皮12の足先を先皮15で覆い、スパイク付きの靴底14を設けた安全対策仕様で、更に本発明の防刃カバー2を甲皮12の足甲部分に被せて一体にしている。
【0017】
保護芯11は、甲皮12の足先の内側に内蔵され、靴底14の上面に固定される中敷13との間に形成される空間に足指を挿入させることにより、上方からの外力に対して前記足指を保護する。本例の安全地下足袋1は、いわゆる地下足袋での一種であるから、指股を形成するため、親指と四指とを個別に覆う保護芯11,11が2個ある。これから、指股の必要のない安全靴であれば、親指と四指とを一体に覆う保護芯を1個だけ内蔵すればよい。これに対し、指股付き安全靴の場合、本例の安全地下足袋1同様、2個の保護芯を内蔵する。また、本例の安全地下足袋1は、スパイク付きの靴底14を用いているが、従来通り、蛇行又は屈曲する溝が刻まれた扁平な靴底であってもよい。
【0018】
防刃カバー2は、図3〜図5に見られるように、外側から内側に向けて表布21、フェルト22、外側ゴムシート23、金属ネット24、内側ゴムシート25及びカバー保護布26を積層し、各層が位置ズレしないように複数の縫着線28で一体にし、更に前縁及び後縁に縁布27を縫着して構成され、例えば本例のような安全地下足袋1の甲皮12に被せて前記前縁、後縁及び側縁をそれぞれ縫着し、前記甲皮12と一体化する。フェルト22は、チェーンソーや草刈機の刃が金属ネット24に届くまでの緩衝部材として働く。外側ゴムシート23は、金属ネット24が表布21を傷つけることを防止する。内側ゴムシート25は、金属ネット24が甲皮12を傷つけることを防止し、甲皮12を解した金属ネット24の足甲に対する触感を柔らかくする。
【0019】
外側ゴムシート23、金属ネット24及び内側ゴムシート25は、前記金属ネット24に揃えて外形状が整形されている。金属ネット24は、防錆性能の高いステンレス条で編成された網体である。前縁241は、保護芯11,11それぞれの開口縁111に沿った円弧を左右対称に足指に向けて突出させた平面視W字状をしている。後縁242は、足首に掛からない範囲で中央を足首に向けて凸とした緩やかな平面視W字状をしている。そして、前記前縁241及び後縁242の両端を直線の側縁243,243で結ぶと、前縁241を台形の狭い上辺、後縁242を台形の広い下辺として、金属ネット24全体が平面視略台形(図4参照)をしている。外側ゴムシート23及び内側ゴムシート25は、いずれも金属ネット24に等しい平面視略台形(図5参照)に整形されている。
【0020】
表布21、フェルト22及びカバー保護布26は、前記カバー保護布26に揃えて外形状が整形されている。カバー保護布26は、アラミド繊維で編成された生地である。カバー保護布26全体は、上記金属ネット24に相当する平面視略台形の外形状から、防刃カバー2を甲皮12に一体とした際に足首に向かって突出する平面視略ホームベース形状の突出部261を設けた平面視形状(図4参照)になっている。表布21及びフェルト22は、いずれもカバー保護布26に等しい平面視形状で、それぞれ同様な突出部211,221(図5参照)を有する。
【0021】
表布21、フェルト22、外側ゴムシート23、金属ネット24、内側ゴムシート25及びカバー保護布26をすべて積層した防刃カバー2の6層構造部分は、まずフェルト22によりチェーンソーや草刈機の刃の勢いを殺し、金属ネット24で前記チェーンソーや草刈機の刃を受け止めるほか、万一金属ネット24が破られてもカバー保護布26でチェーンソーや草刈機の刃を受け止めることにより、足甲を保護する。金属ネット24は、カバー保護布26ほどではないが一定の可撓性を有するため、足甲を変に拘束することはなく、安全地下足袋1の装着感を損ねない。
【0022】
また、表布21、フェルト22及びカバー保護布26のみを積層した防刃カバー2の3層構造部分は、上記6層部分に当たって逸れたチェーンソーや草刈機の刃を、フェルト22により更に勢いを殺し、カバー保護布26で受け止めることにより、足首を保護する。前記防刃カバー2の3層構造部分は、金属ネット24の後縁242に対して中央から特定の幅で足首に向けて突出しているだけであり、また可撓性の高い表布21、フェルト22及びカバー保護布26のみで構成されているため、前記金属ネット24を含む上記6層部分より柔軟であり、足首の自由度を阻害しない。
【0023】
本例の安全地下足袋1は、上記防刃カバー2のほか、保護芯11の開口縁111と金属ネット24の前縁241との間124に架け渡す範囲(図2参照)で、アラミド繊維で編成された帯状の甲皮保護布16を甲皮12の内側に縫着している。これにより、保護芯11の開口縁111と金属ネット24の前縁241との間124は、外側に甲皮12、内側に甲皮保護布16が積層された部分となり、防刃カバー2の6層部分に当たって逸れたチェーンソーや草刈機の刃が甲皮12を破っても甲皮保護布16で受け止められることで、足指を保護する。
【符号の説明】
【0024】
1 安全地下足袋
11 保護芯
111 開口縁
12 甲皮
124 保護芯の開口縁と金属ネットの前縁との間
16 甲皮保護布
2 防刃カバー
21 表布
22 フェルト
23 外側ゴムシート
24 金属ネット
25 内側ゴムシート
26 カバー保護布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足指を覆う形状の金属面材又は樹脂面材からなる保護芯を足先に内蔵した安全地下足袋において、
前縁が保護芯の開口縁に沿い、後縁が足首に掛からない大きさで足甲を覆う形状の金属ネットと、前記金属ネットの外側を覆う表布とから構成される防刃カバーを甲皮の外側に被せて一体化したことを特徴とする安全地下足袋。
【請求項2】
甲皮は、保護芯の開口縁と金属ネットの前縁との間に架け渡す範囲で、アラミド繊維で織成又は編成された甲皮保護布を内側に設けた請求項1記載の安全地下足袋。
【請求項3】
防刃カバーは、樹脂シート又はゴムシートを金属ネットの内側に宛てがった請求項1又は2いずれか記載の安全地下足袋。
【請求項4】
防刃カバーは、樹脂シート又はゴムシートを金属ネットの外側に被せた請求項1〜3いずれか記載の安全地下足袋。
【請求項5】
防刃カバーは、アラミド繊維で織成又は編成されたカバー保護布を金属ネットの内側に宛てがった請求項1〜4いずれか記載の安全地下足袋。
【請求項6】
防刃カバーは、足甲から足首に架け渡す範囲で、アラミド繊維で織成又は編成されたカバー保護布を金属ネットの後縁から突出させ、前記カバー保護布の外側に表布を被せた請求項1〜5いずれか記載の安全地下足袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−75701(P2012−75701A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223843(P2010−223843)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(504037922)株式会社荘快堂 (5)
【Fターム(参考)】