説明

安全性の高いカニューレホルダー

【課題】患者にとって快適で、操作者にとって取り付け取り外し作業の容易さを保ちながら、カニューレの抜けが防止できる安全性の高いカニューレホルダーの提供。
【解決手段】 気管切開患者に挿入されているカニューレの抜けを防止するため、カニューレを固定する面ファスナー製のタブをさらに上から押さえつける別の面ファスナー製のタブを有するカニューレホルダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気管切開術により前頸部に気管切開口を形成し、その気管切開口に挿入されているカニューレを確実に固定するカニューレホルダーに関するもので、従来製品よりも確実にカニューレを固定できるカニューレホルダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上気道に閉塞のある患者や長期に人工呼吸器を使用する患者に対して、患者の前頸部に気管切開口を形成し、その気管切開口にカニューレと呼ばれる専用のチューブを挿入することが行われている。このカニューレの機能は、気道を確保し、また必要に応じて人工呼吸器などの呼吸管理機器を接続する場所となるという重要なものであり、カニューレが気管切開口から抜けてしまうことは重大な医療事故につながる。
通常、そのようなことのないようにカニューレの左右に設けられた2つの固定孔に綿テープ(綿製のひも)をそれぞれ結びつけて、さらにこの綿テープを患者の首の後ろに回して結ぶことで、カニューレの抜けの防止を図っている。しかし、綿テープは細いひもなので、患者の首に擦れて擦過傷をつけることがあり、患者に苦痛を与えることがある。また3カ所(カニューレの左右、首の後ろ)で結ぶ操作が必要であり、またその結び目は事故で外れることのないよう固結びにしてあるため、はずすときにはハサミを必要とし、取り付け取り外しの操作が煩雑である。さらに首の回りにきつすぎず、緩すぎず適切な長さに調整するのも容易ではない。
【0003】
綿テープではこのようなデメリットがあるため近年では専用のカニューレホルダーが数社より市販され、用いられてきている。例えば特許文献1に記載のカニューレホルダーは、柔らかな素材でできた幅の広いバンド状の製品であるため、肌あたりがよく患者に苦痛を与えることがない。またカニューレとの固定や長さの調整は面ファスナー製のタブを貼り付けることで行えるため、操作が非常に容易である。
現在市販されているカニューレホルダーの1例を図1に示す。カニューレホルダーは首のまわりに回すバンド部分(3)およびそのバンド部分の両端についているカニューレを固定する面ファスナー製の細長い小片(以下、カニューレ固定用タブという)(1)からなる。バンド部分の表面は面ファスナーが貼り付けられるように不織布でできている。バンド部分は首の太さに合わせて長さが調整できるように2つのバンド(3aおよび3b)に分割されていて、一方のバンドの一端には面ファスナー(以下、長さ調整用タブという)が取り付けられており、この面ファスナーをもう一方のバンドの適当な位置の表面に貼り付けて、一体化して使用する。頸の動きに対して常にフィットできるようバンドの一部にゴムバンド(5)が挿入されているものもある。
バンドの両端に付いている2つのカニューレ固定用タブは、それぞれカニューレ(7)の両端にある固定孔(8)に通し、折り返してバンドの表面に貼り付ける。バンド自体は患者の首にまわしてある。これによってカニューレは気管切開口から抜け落ちないように固定される。
このようにカニューレホルダーは綿テープと比較すると、柔らかな素材で幅の広いバンド状のものであるため、患者の皮膚を痛めないため快適であり、また面ファスナーでカニューレの固定やバンドの長さ調整ができるのでその操作も極めて容易である。
反面、面ファスナーの貼り付け方が不十分であると面ファスナーが外れてしまう、あるいは小児や意識が混濁している患者に使用した場合に、患者自身が意図せず面ファスナーを外してしまう可能性があり、そのような場合にはカューレが抜けてしまう事故につながる。綿テープでは通常、固結びに結んでいるので、そのような事故は起こらない。
快適で操作が容易という長所は持ちつつ、カニューレの抜けが防止できる安全性の高いカニューレホルダーが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開番号WO2005/084740
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、患者の皮膚を痛めず、また簡単に装着およびカニューレの固定ができ、なおかつカニューレの抜けが防止できる安全性の高いカニューレホルダーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は、バンドの両端に付いている2つのカニューレ固定用タブの他に、そのタブが容易にバンド表面から剥がれないように上から押さえつける別の面ファスナー製のタブを有していることを特徴とする。すなわちカニューレの固定孔を通ったカニューレ固定用タブが折り返されてバンド部表面に貼り付けられた後、カニューレ固定用タブよりも幅が広い別のタブをその上に貼り付け、二重に固定することで事故によるカニューレのはずれを防止するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るカニューレホルダーは、カニューレの両端部にある固定用孔にタブを挿通、折り返してカニューレを患者の頸部に固定すると共に、タブの折り返し部分を上から他の幅広の面ファスナーよりなるタブで抑え二重に固定することによって確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】現在市販されているカニューレホルダーおよびカニューレの斜視図
【図2】本発明にかかる実施例1のカニューレホルダーの斜視図
【図3】本発明にかかる実施例2のカニューレホルダーの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明にかかるカニューレホルダーについて実施例をあげて詳細に述べる。
【実施例1】
【0010】
図2は本発明にかかるカニューレホルダーの斜視図である。患者の首に巻くバンド部分と、その両端についたカニューレ固定用タブ、さらにそのタブをバンド表面に貼り付けたときに容易に剥がれないようにするために、上から押さえつける幅が広めの面ファスナー製のタブ(以後、押さえ用タブという)とからなっている。
カニューレ固定用タブは、カニューレの固定孔を通す必要があるため、幅は細く約5〜6mm程度である必要がある。
押さえ用タブは、その機能を果たすため、幅が15〜20mm程度あり、それはバンド部分の端部から数cm離れた場所でバンド部分に固定されている。
患者の頸部に巻くバンド部分の幅は25mm程度であり、材質は特に限定されるものではないが、患者の頸部に擦過傷を生じさせないような柔らかく、かつカニューレが保持できる強度のある素材が望まれる。その表面は面ファスナーが容易に貼り付くようなものが好ましく、具体的には不織布などが好ましい。また、バンド部分は異なる素材を用いた層構造になっていてもよく、例えば肌に接する裏側は綿の布、中心部はウレタンフォーム、タブが貼り付く表側は不織布のように3層構造になっていてもよい。バンド部は2つに分割でき、一方のバンドに固定されている長さ調整用の面ファスナーでもう一方のバンド表面上の任意の場所で固定できた方が、幅広い範囲で長さの調整ができるので好ましい。またバンド部分の途中にゴムバンドが入っていた方が、頸の動きに対して常にフィットするので好ましい。
【0011】
本発明にかかるカニューレホルダーの使用に際しては、カニューレ固定用タブをカューレの固定用孔に通した後、折り返して、バンドの表面に貼り付ける。その後、カニューレ固定用タブを覆い隠すように押さえ用タブをバンドの表面に貼り付ける。これによって、カニューレ固定用タブがバンドの表面から外れてしまう危険性を大幅に低減できる。カニューレを外すには押さえ用タブを外し、さらにカニューレ固定用タブを外すという2段階の操作が必要なので、小児や意識が混濁している患者が自分で誤って外してしまう可能性も大幅に低下する。
固定あるいは外す際に、2段階の操作があるため、従来のカニューレホルダーよりはわずかに操作性が劣るが、それでも綿テープを用いる場合と比べると操作性は遙かによい。
【実施例2】
【0012】
実施例1の押さえ用タブのバンド部分への固定箇所を当該タブの上端としたもの。
【産業上の利用可能性】
【0013】
患者にとって快適で、操作者にとって取り付け取り外し作業の容易さを保ちながら、カニューレの抜けが防止できる安全性の高いカニューレホルダーを提供することができたので、その産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0014】
1 カニューレ固定用タブ
2 押さえ用タブ
3 バンド部分
3a、3b バンド部分が2分割した場合のそれぞれ
4 長さ調整用タブ
5 ゴムバンド
6 カニューレホルダー
7 カニューレ
8 カニューレの固定孔
9 押さえ用タブのバンドへの固定箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気管切開患者に挿入されるカニューレを固定するためカニューレホルダーで、その両端にカニューレと接続する面ファスナー製の細長いタブを有し、カニューレホルダーのバンド部分に貼り付けられた当該タブが容易に剥がれないように、さらにその上に、面ファスナー製の別のタブを貼り付ける構造をもつカニューレホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−72379(P2011−72379A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224621(P2009−224621)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(591071104)株式会社高研 (38)